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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】柱梁の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20220614BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
E04B1/58 508A
E04B1/21 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018236290
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020097844
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】掛 悟史
(72)【発明者】
【氏名】小倉 史崇
(72)【発明者】
【氏名】中根 一臣
(72)【発明者】
【氏名】津司 巧
(72)【発明者】
【氏名】田邊 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小林 楓子
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-031036(JP,A)
【文献】特開2017-214803(JP,A)
【文献】特開2016-204862(JP,A)
【文献】特開2017-179997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁との柱梁仕口部と、
前記柱梁仕口部と前記梁の中央部を接合する接合端部と、
前記接合端部の中に配置され、前記柱梁仕口部から突出する接合鉄筋と前記梁の中央部から突出する梁主筋とを接続する機械式継手と、
前記柱梁仕口部と前記接合端部とに跨って配筋され、前記接合端部が非降伏ヒンジ領域となるよう前記接合端部を補強する補強筋と、
前記補強筋の端部に取付けられ前記接合端部に位置する定着部と、
を有する柱梁の接合構造。
【請求項2】
前記機械式継手は、前記接合端部の中央部で前記接合鉄筋と前記梁主筋とを接続し、
前記接合端部は、現場打ちコンクリートで構成されている、
請求項1に記載の柱梁の接合構造。
【請求項3】
前記接合端部と前記柱梁仕口部は、プレキャストコンクリートによって一体的に構成されており、
プレキャストコンクリートで構成された前記梁の中央部が、前記接合端部に接合されている、
請求項1に記載の柱梁の接合構造。
【請求項4】
前記梁の中央部と前記接合端部は、プレキャストコンクリートによって一体的に構成されており、
プレキャストコンクリートで構成された前記柱梁仕口部に、前記接合端部が接合されている、
請求項1に記載の柱梁の接合構造。
【請求項5】
前記機械式継手は上下に一対配置され、
一対の前記機械式継手の間で、前記接合端部を横方向へ貫通する貫通孔と、
前記接合端部において前記接合鉄筋と前記梁主筋に各々巻き掛けられ、前記接合鉄筋及び前記梁主筋の長手方向に互いに間隔を開けて配置された複数のせん断補強筋と、
を備え、
前記機械式継手が配置されている領域に配置されている前記せん断補強筋の間隔は、前記機械式継手が配置されている領域以外の領域に配置されている前記せん断補強筋の間隔より広くされている、
請求項2に記載の柱梁の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
梁又は柱の柱梁仕口部との接合端部は、一般的に降伏ヒンジ領域とされている。このため、梁又は柱に配筋された主筋と柱梁仕口部に配筋された接合鉄筋とを機械式継手で接続する場合、従来、接合端部を避けた位置に機械式継手を配置する必要があった。
【0003】
一方、近年、降伏ヒンジ領域の位置をずらして接合端部を非降伏ヒンジ領域とすることで、機械式継手を接合端部に配置することを可能とするヒンジリロケーションと呼ばれる技術が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、仕口部と梁端部とに跨って配筋される接合鉄筋として、径の太い鉄筋や高強度鉄筋を用いることで、接合端部である梁端部が非降伏ヒンジ領域となるよう補強された梁部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-155058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す梁部材では、一般的な丸鋼からなる梁主筋と、径の太い又は高強度の接合鉄筋とをスリーブ(機械式継手)で接続している。このため、同鋼種の鉄筋同士を接続する場合と比較して、鉄筋の管理が煩雑となるとともに、場合によっては高性能の機械式継手を用いる必要があった。
【0007】
本発明は上記事実に鑑み、高性能の機械式継手を用いることなく機械式継手を梁又は柱の柱梁仕口部との接合端部に設けることができる柱梁の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の柱梁の接合構造は、柱と梁との柱梁仕口部と、前記柱梁仕口部と前記梁の中央部を接合する接合端部と、前記接合端部の中に配置され、前記柱梁仕口部から突出する接合鉄筋と前記梁の中央部から突出する梁主筋とを接続する機械式継手と、前記柱梁仕口部と前記接合端部とに跨って配筋され、前記接合端部が非降伏ヒンジ領域となるよう前記接合端部を補強する補強筋と、前記補強筋の端部に取付けられ前記接合端部に位置する定着部と、を有する。
【0009】
上記構成によれば、補強筋が柱又は梁の接合端部と柱梁仕口部とに跨って配筋され、定着部によって接合端部に定着されているため、梁又は柱の柱梁仕口部との接合端部を非降伏ヒンジ領域とすることができる。これにより、梁又は柱に配筋された主筋と柱梁仕口部に配筋された接合鉄筋とを接続する機械式継手を、梁又は柱の柱梁仕口部との接合端部に設けることができる。
【0010】
ここで、梁又は柱に配筋された主筋と柱梁仕口部に配筋された接合鉄筋とが、同鋼種とされているため、主筋と接合鉄筋が異鋼種とされている場合と比較して、高性能の機械式継手を用いる必要がない。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の柱梁の接合構造において、前記機械式継手は、前記接合端部の中央部で前記接合鉄筋と前記梁主筋とを接続し、前記接合端部は、現場打ちコンクリートで構成されている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の柱梁の接合構造において、前記接合端部と前記柱梁仕口部は、プレキャストコンクリートによって一体的に構成されており、プレキャストコンクリートで構成された前記梁の中央部が、前記接合端部に接合されている
【0012】
上記構成によれば、接合端部がプレキャストコンクリートによって柱梁仕口部と一体的に構成されており、プレキャストコンクリートで構成された梁の中央部又は柱の中央部が接合端部に接合されている。このため、接合端部が現場打ちコンクリートで構成されている場合と比較して、現場での作業を減らすことができ、施工性を高めることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の柱梁の接合構造において、前記梁の中央部と前記接合端部は、プレキャストコンクリートによって一体的に構成されており、プレキャストコンクリートで構成された前記柱梁仕口部に、前記接合端部が接合されている。
【0014】
上記構成によれば、接合端部がプレキャストコンクリートによって梁の中央部又は柱の中央部と一体的に構成されており、プレキャストコンクリートで構成された柱梁仕口部に接合端部が接合されている。このため、接合端部が現場打ちコンクリートで構成されている場合と比較して、現場での作業を減らすことができ、施工性を高めることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の柱梁の接合構造において、前記機械式継手は上下に一対配置され、一対の前記機械式継手の間で、前記接合端部を横方向へ貫通する貫通孔と、前記接合端部において前記接合鉄筋と前記梁主筋に各々巻き掛けられ、前記接合鉄筋及び前記梁主筋の長手方向に互いに間隔を開けて配置された複数のせん断補強筋と、を備え、前記機械式継手が配置されている領域に配置されている前記せん断補強筋の間隔は、前記機械式継手が配置されている領域以外の領域に配置されている前記せん断補強筋の間隔より広くされている。
【0016】
上記構成によれば、機械式継手によって主筋の座屈を抑制することで、機械式継手が配置されている領域に配置されているせん断補強筋の間隔を、機械式継手が配置されている領域以外の領域に配置されているせん断補強筋の間隔より広くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る柱梁の接合構造によれば、高性能の機械式継手を用いることなく機械式継手を梁又は柱の柱梁仕口部との接合端部に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る柱梁の接合構造を示す立面図である。
図2】(A)~(C)は第1実施形態に係る柱梁の接合構造の施工手順を示す工程図である。
図3】第2実施形態に係る柱梁の接合構造を示す立面図である。
図4】第3実施形態に係る柱梁の接合構造を示す立面図である。
図5】第4実施形態に係る柱梁の接合構造を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1~第4実施形態に係る柱梁の接合構造について、図1図5を用いて順に説明する。なお、図中において、矢印Xは水平方向、矢印Yは鉛直方向を指す。
【0020】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る柱梁の接合構造について、図1図2を用いて説明する。
【0021】
(構造)
図1に示すように、本実施形態の柱梁の接合構造10は、鉛直方向に延びる下部柱12及び上部柱14と、水平方向に延びる梁16と、上面及び下面に上部柱14及び下部柱12がそれぞれ接合され、側面に梁16が接合された柱梁仕口部18と、を有している。
【0022】
下部柱12は、プレキャストコンクリートで構成された四角柱であり、鉛直方向に配筋されて上面に突設された複数の柱主筋12Aと、柱主筋12Aに巻掛けられた図示しない複数のせん断補強筋と、を有している。
【0023】
上部柱14は、下部柱12と同様にプレキャストコンクリートで構成された四角柱であり、鉛直方向に配筋された複数の柱主筋14Aと、柱主筋14Aに巻掛けられた図示しない複数のせん断補強筋と、を有している。また、上部柱14の下面には、複数の機械式継手20が埋設されており、後述する柱梁仕口部18のシース管26に挿通された下部柱12の柱主筋12Aと、上部柱14の柱主筋14Aとが、機械式継手20によって接続されている。
【0024】
梁16は、柱梁仕口部18との接合端部22である長手方向の端部が現場打ちコンクリートで構成されており、長手方向の中央部を構成する梁部材24がプレキャストコンクリートで構成されている。
【0025】
また、梁16は、水平方向に配筋され、梁16の上部及び下部にそれぞれ鉛直方向に間隔をあけて並設された複数の梁主筋16Aと、上下の梁主筋16Aに巻掛けられ、梁主筋16Aの長手方向(水平方向)に互いに間隔をあけて配置された複数のせん断補強筋36と、を有している。
【0026】
なお、柱主筋12A、14A、梁主筋16A、及びせん断補強筋36としては、鉄筋コンクリートを構成する鉄筋として一般的に用いられている異形棒鋼等の鋼材が用いられている。
【0027】
柱梁仕口部18は、プレキャストコンクリートで構成された角形のブロック形状の部材であり、外形(幅)が上部柱14及び下部柱12の外形(幅)と略同じ大きさとされている。また、柱梁仕口部18には、下部柱12の柱主筋12Aがそれぞれ挿通された複数のシース管26が設けられている。
【0028】
また、柱梁仕口部18には、水平方向に複数の接合鉄筋18Aが配筋されている。本実施形態では、複数の接合鉄筋18Aは、梁主筋16Aと同鋼種かつ同径とされており、柱梁仕口部18の上部及び下部にそれぞれ鉛直方向に間隔をあけて並設され、端部が柱梁仕口部18の側面に突設されている。
【0029】
また、梁16の接合端部22(長手方向の端部)には、柱梁仕口部18の側面に突設された接合鉄筋18Aの端部と、梁主筋16Aの端部とをそれぞれ接続する複数の機械式継手28が埋設されている。
【0030】
さらに、梁16には、柱梁仕口部18と接合端部22とに跨って複数の補強筋30が配筋されている。本実施形態では、補強筋30は、梁主筋16Aに沿って水平方向に延びるとともに、上下の梁主筋16Aの間に鉛直方向に間隔をあけて上下二段に配筋されている。また、補強筋30の接合端部22側の端部には、定着部としての機械式定着板32が設けられており、機械式定着板32によって補強筋30が接合端部22に定着されている。
【0031】
梁16の接合端部22は、端部に機械式定着板32が設けられた補強筋30によって補強されることにより、非降伏ヒンジ領域Rとされている。換言すれば、梁16の接合端部22に非降伏ヒンジ領域Rが設けられている。なお、本発明において「非降伏ヒンジ領域」とは、剛性化されることで、梁の他の領域に比べて所定の曲げに対して塑性変形(及び弾性変形)が生じ難くされた領域を指す。
【0032】
また、梁16の接合端部22において、補強筋30の梁16側の端部(図1における右側端部)は、機械式継手28の梁16側の端部(図1における右側端部)より、梁16側(図1における右側)とされている。すなわち、機械式継手28は、非降伏ヒンジ領域R内に設けられている。
【0033】
(施工手順)
次に、本実施形態の柱梁の接合構造の施工手順について説明する。まず、プレキャストコンクリート造の下部柱12、上部柱14、及び柱梁仕口部18を予め工場等で製作しておく。また、接合端部22側の端面に梁主筋16Aが突設され、梁16の長手方向の中央部を構成するプレキャストコンクリート造の梁部材24を、予め工場等で製作しておく。
【0034】
次に、現場にて、柱梁仕口部18のシース管26に挿通した下部柱12の柱主筋12Aを、上部柱14の下面に埋設された機械式継手20によって上部柱14の柱主筋14Aに接続する。そして、上部柱14の下面と柱梁仕口部18の上面との間、及び下部柱12の上面と柱梁仕口部18の下面との間に、それぞれグラウト等の充填材34を充填することで、図2(A)に示すように、上部柱14、下部柱12、及び柱梁仕口部18を接合する。
【0035】
また、柱梁仕口部18の側面に突設された接合鉄筋18Aの端部に機械式継手28を接合するとともに、柱梁仕口部18の側面に突設された補強筋30の端部に機械式定着板32を接合する。さらに、複数のせん断補強筋36を予めまとめて機械式継手28に巻掛けておく。
【0036】
次に、図2(B)に示すように、接合鉄筋18Aの端部に接合された機械式継手28に梁部材24の端面に突設された梁主筋16Aを挿入する。そして、機械式継手28内に図示しないグラウト等の充填材を充填して固化させることで、機械式継手28によって接合鉄筋18Aと梁主筋16Aを接続する。その後、機械式継手28に予め巻掛けておいた複数のせん断補強筋36をそれぞれスライド移動させ、接合鉄筋18A及び梁主筋16Aの周囲に互いに間隔をあけて配置する。
【0037】
次に、図2(C)に示すように、柱梁仕口部18と梁部材24との間に図示しない型枠を設置し、型枠内にコンクリートを打設して梁16の接合端部22を構築することで、柱梁仕口部18に接合された梁16を構築する。なお、上記の手順は一例であり、手順が異なっていたり、他の手順が含まれたりしても構わない。
【0038】
(作用、効果)
本実施形態によれば、補強筋30が梁16の接合端部22と柱梁仕口部18とに跨って配筋され、機械式定着板32によって接合端部22に定着されているため、梁16の接合端部22を非降伏ヒンジ領域Rとすることができる。これにより、梁16に配筋された梁主筋16Aと柱梁仕口部18に配筋された接合鉄筋18Aとを接続する機械式継手28を、梁16の接合端部22に設けることができる。
【0039】
ここで、梁主筋16Aと接合鉄筋18Aとが、同鋼種とされているため、梁主筋16Aと接合鉄筋18Aが異鋼種とされている場合と比較して、梁主筋16A及び接合鉄筋18Aの管理が簡易となるとともに、高性能の機械式継手28を用いる必要がない。
【0040】
また、上部柱14、下部柱12、柱梁仕口部18、及び梁16の中央部を構成する梁部材24がプレキャストコンクリートで構成されている。このため、現場で上部柱14、下部柱12、柱梁仕口部18、及び梁16をそれぞれ構築する場合と比較して、現場での作業を減らすことができる。
【0041】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る柱梁の接合構造について、図3を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、差異点を中心に説明する。
【0042】
(構造)
図3に示すように、本実施形態の柱梁の接合構造40は、鉛直方向に延びる下部柱12及び上部柱14と、水平方向に延びる梁46と、上面及び下面に上部柱14及び下部柱12がそれぞれ接合され、側面に梁46が接合された柱梁仕口部48と、を有している。なお、下部柱12及び上部柱14は、第1実施形態と同様の構成とされている。
【0043】
第1実施形態では、梁16の接合端部22が現場打ちコンクリートで構成されていた。これに対し、本実施形態では、梁46の柱梁仕口部48との接合端部42は、プレキャストコンクリートによって柱梁仕口部48と一体的に構成されており、梁46の長手方向中央部を構成する梁部材44が接合端部42に接合されている。
【0044】
梁46の接合端部42には、柱梁仕口部48と接合端部42とに跨って水平方向に延びる複数の接合鉄筋48Aが配筋されている。また、接合鉄筋48Aの接合端部42側の端部(図3における右側端部)は、接合端部42の梁部材44との接合面42Sに埋設された機械式継手58に接合されている。
【0045】
接合端部42には、柱梁仕口部48と接合端部42とに跨って水平方向に延びる複数の補強筋50が配筋されている。また、補強筋50の接合端部42側の端部には、定着部としての機械式定着板52が設けられており、端部に機械式定着板52が設けられた補強筋50によって梁46の接合端部42が非降伏ヒンジ領域Rとされている。なお、機械式定着板52の先端は接合端部42の接合面42Sに露出している。
【0046】
梁部材44は、プレキャストコンクリートで構成されており、水平方向に配筋された複数の梁主筋46Aが接合端部42との接合面44Sに突設されている。梁主筋46Aは、接合鉄筋48Aと同鋼種かつ同径とされており、梁部材44の接合面44Sに突設された梁主筋46Aの端部は、接合端部42の接合面42Sに埋設された機械式継手58に接合されることで接合鉄筋48Aに接続されている。
【0047】
また、梁部材44は、接合面42S、44S間に充填された充填材54によって接合端部42に接合されている。なお、第1実施形態と同様に、柱梁仕口部48、接合端部42、及び梁部材44には、図示しない複数のせん断補強筋が配筋されている。
【0048】
(施工方法)
次に、本実施形態の柱梁の接合構造の施工手順について説明する。まず、工場等でプレキャストコンクリート造の下部柱12、上部柱14、及び梁部材44を製作するとともに、プレキャストコンクリート造の柱梁仕口部48及び接合端部42を一体形成する。
【0049】
次に、現場にて、第1実施形態と同様の手順によって柱梁仕口部48の上面及び下面に上部柱14及び下部柱12をそれぞれ接合する。また、接合端部42の接合面42Sに埋設され、接合鉄筋48Aの端部が接合された機械式継手58に、梁部材44の接合面44Sに突設された梁主筋46Aを挿入する。そして、機械式継手58内にグラウト等の充填材56を充填して固化させることで、接合鉄筋48Aと梁主筋46Aを接続する。
【0050】
その後、接合端部42の接合面42Sと梁部材44の接合面44Sとの間に補強筋50の端部に接合された機械式定着板52の先端を位置させた状態で、接合面42S、44S間に充填材54を充填して固化させることで、柱梁仕口部48に接合された梁46を構築する。なお、上記の手順は一例であり、手順が異なっていたり、他の手順が含まれたりしても構わない。
【0051】
(作用、効果)
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、補強筋50が梁46の接合端部42と柱梁仕口部48とに跨って配筋されているため、梁46の接合端部42を非降伏ヒンジ領域Rとすることができる。これにより、梁46に配筋された梁主筋46Aと柱梁仕口部48に配筋された接合鉄筋48Aとを接続する機械式継手58を、梁46の接合端部42に設けることができる。
【0052】
また、梁主筋46Aと接合鉄筋48Aとが、同鋼種とされているため、梁主筋46Aと接合鉄筋48Aが異鋼種とされている場合と比較して、梁主筋46A及び接合鉄筋48Aの管理が簡易となるとともに、高性能の機械式継手58を用いる必要がない。
【0053】
さらに、本実施形態では、非降伏ヒンジ領域Rとされた接合端部42と、柱梁仕口部48とが、プレキャストコンクリートによって一体的に構成されており、梁46の長手方向の中央部を構成するプレキャストコンクリート造の梁部材44が接合端部42に接合されている。
【0054】
すなわち、柱梁仕口部48及び梁46を全てプレキャストコンクリートで構成することができるため、接合端部42(非降伏ヒンジ領域R)が現場打ちコンクリートで構成されている場合と比較して、現場での作業を減らすことができ、施工性を高めることができる。
【0055】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る柱梁の接合構造について、図4を用いて説明する。なお、第1、第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、差異点を中心に説明する。
【0056】
(構造)
図4に示すように、本実施形態の柱梁の接合構造60は、鉛直方向に延びる下部柱12及び上部柱14と、水平方向に延びる梁66と、上面及び下面に上部柱14及び下部柱12がそれぞれ接合され、側面に梁66が接合された柱梁仕口部68と、を有している。なお、下部柱12及び上部柱14は、第1実施形態と同様の構成とされている。
【0057】
第1実施形態では、梁16の接合端部22が現場打ちコンクリートで構成され、第2実施形態では、梁46の接合端部42が柱梁仕口部48と一体的に構成されていた。これに対し、本実施形態では、梁66の接合端部62は梁66の長手方向の中央部を構成する梁部材64とプレキャストコンクリートによって一体的に構成されており、接合端部62が柱梁仕口部68に接合されている。
【0058】
梁66の接合端部62には、梁部材64と接合端部62とに跨って水平方向に延びる複数の梁主筋66Aが配筋されている。また、梁主筋66Aの接合端部62側の端部(図4における左側端部)は、接合端部62の柱梁仕口部68との接合面62Sに埋設された機械式継手78に接合されている。
【0059】
また、接合端部62には、水平方向に延びる複数の梁側補強筋70Aが配筋されている。梁側補強筋70Aの梁部材64側の端部(図4における右側端部)には、定着部としての機械式定着板72が設けられており、柱梁仕口部68側の端部(図4における左側端部)は、接合端部62の柱梁仕口部68との接合面62Sに埋設された機械式継手80に接合されている。
【0060】
柱梁仕口部68は、プレキャストコンクリートで構成されており、水平方向に配筋された複数の接合鉄筋68A及び複数の仕口側補強筋70Bが、接合端部62との接合面68S(側面)にそれぞれ突設されている。
【0061】
接合鉄筋68Aは、梁主筋66Aと同鋼種かつ同径とされており、柱梁仕口部68の接合面68Sに突設された接合鉄筋68Aの端部は、接合端部62の接合面62Sに埋設された機械式継手78に接合されることで梁主筋66Aに接続されている。
【0062】
一方、柱梁仕口部68の接合面68Sに突設された仕口側補強筋70Bの端部は、接合端部62の接合面62Sに埋設された機械式継手80に接合されることで梁側補強筋70Aに接続されている。
【0063】
この機械式継手80によって互いに接続された梁側補強筋70Aと仕口側補強筋70Bにより、柱梁仕口部68と接合端部62とに跨って延びる補強筋70が構成されている。また、端部に機械式定着板72が設けられた補強筋70で補強されることにより、梁66の接合端部62が非降伏ヒンジ領域Rとされている。
【0064】
また、接合端部62(梁66)は、接合面62S、68S間に充填されたグラウト等の充填材74によって柱梁仕口部68に接合されている。なお、第1、第2実施形態と同様に、柱梁仕口部68、接合端部62、及び梁部材64には、図示しない複数のせん断補強筋が配筋されている。
【0065】
(施工方法)
次に、本実施形態の柱梁の接合構造の施工手順について説明する。まず、工場等でプレキャストコンクリート造の下部柱12、上部柱14、及び柱梁仕口部68を製作するとともに、プレキャストコンクリート造の梁部材64及び接合端部62を一体形成する。
【0066】
次に、現場にて、第1実施形態と同様の手順によって柱梁仕口部68の上面及び下面に上部柱14及び下部柱12をそれぞれ接合する。また、接合端部62の接合面62Sに埋設され、梁主筋66Aの端部が接合された機械式継手78に、柱梁仕口部68の接合面68Sに突設された接合鉄筋68Aを挿入する。そして、機械式継手78内にグラウト等の充填材82を充填して固化させることで、接合鉄筋68Aと梁主筋66Aを接続する。
【0067】
同様に、接合端部62の接合面62Sに埋設され、梁側補強筋70Aの端部が接合された機械式継手80に、柱梁仕口部68の接合面68Sに突設された仕口側補強筋70Bを挿入する。そして、機械式継手80内にグラウト等の充填材84を充填して固化させることで、梁側補強筋70Aと仕口側補強筋70Bを接続して補強筋70を構成する。
【0068】
その後、接合端部62の接合面62Sと柱梁仕口部68の接合面68Sとの間に充填材74を充填して固化させることで、柱梁仕口部68と梁66とを接合する。なお、上記の手順は一例であり、手順が異なっていたり、他の手順が含まれたりしても構わない。
【0069】
(作用、効果)
本実施形態によれば、第1、第2実施形態と同様に、補強筋70が梁66の接合端部62と柱梁仕口部68とに跨って配筋されているため、梁66の接合端部62を非降伏ヒンジ領域Rとすることができる。これにより、梁66に配筋された梁主筋66Aと柱梁仕口部68に配筋された接合鉄筋68Aとを接続する機械式継手78を、梁66の接合端部62に設けることができる。
【0070】
また、梁主筋66Aと接合鉄筋68Aとが、同鋼種とされているため、梁主筋66Aと接合鉄筋68Aが異鋼種とされている場合と比較して、梁主筋66A及び接合鉄筋68Aの管理が簡易となるとともに、高性能の機械式継手を用いる必要がない。
【0071】
さらに、本実施形態では、非降伏ヒンジ領域Rとされた接合端部62と、梁66の長手方向の中央部を構成する梁部材64とが、プレキャストコンクリートによって一体的に構成されており、プレキャストコンクリート造の柱梁仕口部68が接合端部62に接合されている。
【0072】
すなわち、柱梁仕口部68及び梁66を全てプレキャストコンクリートで構成することができるため、接合端部62(非降伏ヒンジ領域R)が現場打ちコンクリートで構成されている場合と比較して、現場での作業を減らすことができ、施工性を高めることができる。
【0073】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る柱梁の接合構造について、図5を用いて説明する。なお、第1~第3実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、差異点を中心に説明する。
【0074】
(構造)
図5に示すように、本実施形態の柱梁の接合構造90は、鉛直方向に延びる下部柱12及び上部柱14と、水平方向に延びる梁96と、上面及び下面に上部柱14及び下部柱12がそれぞれ接合され、側面に梁96が接合された柱梁仕口部98と、を有している。なお、下部柱12及び上部柱14は、第1実施形態と同様の構成とされている。
【0075】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、梁96の柱梁仕口部98との接合端部92である長手方向の端部が現場打ちコンクリートで構成されており、長手方向の中央部を構成する梁部材94がプレキャストコンクリートで構成されている。
【0076】
また、第1実施形態と同様に、梁96に配筋された複数の梁主筋96Aと、プレキャストコンクリート造の柱梁仕口部98に配筋され、梁主筋96Aと同鋼種かつ同径とされた複数の接合鉄筋98Aとが、接合端部92に埋設された機械式継手108によって接続されている。
【0077】
また、梁96には、柱梁仕口部98と接合端部92とに跨って複数の補強筋100が配筋されており、補強筋100の接合端部92側の端部(図5における右側端部)には、定着部としての機械式定着板102が設けられている。
【0078】
梁96の接合端部92は、端部に機械式定着板102が設けられた補強筋100で補強されることにより、非降伏ヒンジ領域Rとされている。すなわち、梁96の接合端部92に非降伏ヒンジ領域Rが設けられている。なお、機械式継手108は、非降伏ヒンジ領域R内に設けられている。
【0079】
さらに、本実施形態では、梁96の接合端部92(非降伏ヒンジ領域R)に、梁96の側面を水平方向に貫通する貫通孔104が形成されている。貫通孔104は、例えば真円形状とされており、上下の機械式継手108間及び補強筋100間において平面視で機械式継手108に重なる位置に設けられている。なお、貫通孔104の周囲には、貫通孔104を囲むように開口補強筋106が配筋されている。
【0080】
また、梁96には、梁主筋96A、接合鉄筋98A、及び梁主筋96Aと接合鉄筋98Aとを接続する機械式継手108に巻掛けられた複数のせん断補強筋110が配筋されている。せん断補強筋110は、貫通孔104と干渉しない位置に配置されているとともに、梁主筋96Aの長手方向(水平方向)に互いに間隔をあけて配置されている。
【0081】
ここで、本実施形態では、機械式継手108が配置されている領域に配置されているせん断補強筋110の間隔L1は、機械式継手108が配置されている領域以外の領域に配置されているせん断補強筋110の間隔L2より広くされている。
【0082】
すなわち、機械式継手108の両端部の内側において機械式継手108に巻掛けられているせん断補強筋110の間隔L1は、機械式継手108の両端部の外側において梁主筋96Aや接合鉄筋98Aに巻掛けられているせん断補強筋110の間隔L2より広くされている。なお、非降伏ヒンジ領域R(接合端部92)において、配筋されているせん断補強筋110の総数、総量は、必要とされる総数、総量(総必要数、総必要量)を満たしている。
【0083】
(施工方法)
次に、本実施形態の柱梁の接合構造の施工手順について説明する。まず、第1実施形態と同様に、プレキャストコンクリート造の下部柱12、上部柱14、柱梁仕口部98、及び梁部材94を、予め工場等で製作しておく。
【0084】
次に、現場にて、柱梁仕口部98の上面及び下面に上部柱14及び下部柱12をそれぞれ接合する。また、柱梁仕口部98の側面に突設された接合鉄筋98Aと梁部材94の端面に突設された梁主筋96Aとを、機械式継手108によって接続する。
【0085】
そして、機械式継手108によって接続された接合鉄筋98A及び梁主筋96Aの周囲に、第1実施形態と同様の方法によってせん断補強筋110を配筋する。このとき、機械式継手108に巻掛けるせん断補強筋110の間隔L1を、梁主筋96A及び接合鉄筋98Aに巻掛けるせん断補強筋110の間隔L2よりも広くしておく。
【0086】
その後、柱梁仕口部98と梁部材94との間に図示しない型枠、及び貫通孔104を形成する図示しない箱抜きをそれぞれ設置し、型枠内にコンクリートを打設することで、貫通孔104が形成された梁96の接合端部92を構築する。なお、上記の手順は一例であり、手順が異なっていたり、他の手順が含まれたりしても構わない。
【0087】
(作用、効果)
本実施形態によれば、第1~第3実施形態と同様に、補強筋100が梁96の接合端部92と柱梁仕口部98とに跨って配筋されているため、梁96の接合端部92を非降伏ヒンジ領域Rとすることができる。これにより、梁96に配筋された梁主筋96Aと柱梁仕口部98に配筋された接合鉄筋98Aとを接続する機械式継手108を、梁96の接合端部92に設けることができる。
【0088】
また、梁主筋96Aと接合鉄筋98Aとが、同鋼種とされているため、梁主筋96Aと接合鉄筋98Aが異鋼種とされている場合と比較して、梁主筋96A及び接合鉄筋98Aの管理が簡易となるとともに、高性能の機械式継手108を用いる必要がない。
【0089】
さらに、本実施形態では、非降伏ヒンジ領域Rとされた梁96の接合端部92に、貫通孔104が形成されている。このため、貫通孔104を利用して、空調ダクト等の図示しない設備配管を梁96に通すことができる。
【0090】
また、梁主筋96Aの端部及び接合鉄筋98Aの端部は、機械式継手108に接合されていることにより、座屈が抑制されている。このため、機械式継手108が配置されている領域、すなわち機械式継手108の両端部の内側に配置されているせん断補強筋110の間隔L1を、機械式継手108が配置されている領域以外の領域、すなわち機械式継手108の両端部の外側に配置されているせん断補強筋110の間隔L2より広くすることができる。
【0091】
一般的に、貫通孔104の上下にせん断補強筋110を配筋する場合、せん断補強筋110の加工や施工が煩雑となる。しかし、本実施形態では、機械式継手108が配置されている領域のせん断補強筋110の間隔L1を広くすることができるため、貫通孔104の上下に配筋されるせん断補強筋110の数を無くす、もしくは減らすことができ、施工性を高めることができる。
【0092】
<その他の実施形態>
以上、本発明について第1~第4実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。また、第1~第4実施形態の構成は、適宜組み合わせることが可能である。
【0093】
例えば、上記実施形態では、梁16、46、66、96の柱梁仕口部18、48、68、98との接合端部22、42、62、92に非降伏ヒンジ領域Rが設けられていた。しかし、梁ではなく柱の柱梁仕口部との接合端部を補強することで、柱の接合端部に非降伏ヒンジ領域を設ける構成としてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、補強筋30、50、70、100の端部に定着部としての機械式定着板32、52、72、102が接合されていたが、定着部は、少なくとも補強筋を接合端部に定着させることができる構成とされていればよい。このため、例えば上下の補強筋の端部を繋げて横U字状としたり、補強筋の端部をフック状に折曲げたりすることで、定着部を構成してもよい。
【0095】
なお、上記実施形態では、定着部として機械式定着板32、52、72、102を用いているため、例えば第2実施形態において、補強筋の端部がフック状等とされている場合と比較して、接合端部42の接合面42Sに突出する定着部の突出長さを短くすることができる。
【0096】
さらに、上記実施形態では、柱梁が立面視でト形とされていた。すなわち、柱梁仕口部18、48、68、98に上部柱14、下部柱12、及び1本の梁16、46、66、96が接合されていた。しかし、柱梁はト形に限らず、T形(柱梁仕口部に下部柱と2本の梁が接合されている構成)や、L形(柱梁仕口部に下部柱と1本の梁が接合されている構成)、十字形(柱梁仕口部に下部柱と上部柱、及び2本の梁が接合されている構成)等とされていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10、40、60、90 接合構造
16、46、66、96 梁
16A、46A、66A、96A 梁主筋(主筋)
18、48、68、98 柱梁仕口部
18A、48A、68A、98A 接合鉄筋
22、42、62、92 接合端部
28、58、78、108 機械式継手
30、50、70、100 補強筋
32、52、72、102 機械式定着板(定着部の一例)
36、110 せん断補強筋
104 貫通孔
R 非降伏ヒンジ領域
図1
図2
図3
図4
図5