(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】引き出しの動作機構および引き出し付きキャビネット
(51)【国際特許分類】
A47B 88/467 20170101AFI20220614BHJP
F16F 1/10 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A47B88/467
F16F1/10
(21)【出願番号】P 2017007206
(22)【出願日】2017-01-19
【審査請求日】2019-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一朗
(72)【発明者】
【氏名】大野 正博
(72)【発明者】
【氏名】松本 憲治
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-239849(JP,A)
【文献】米国特許第07901017(US,B1)
【文献】特開昭56-143829(JP,A)
【文献】特開2015-208591(JP,A)
【文献】特開2007-187219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00-88/994
F16F 1/10- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット本体内に形成された収納領域から引き出された引き出しを全閉する直前において、前記引き出しを閉方向に付勢する付勢手段を備えた引き出しの動作機構であって、
前記引き出しの動作機構は、
前記引き出しが前記付勢手段によって閉方向に付勢される第1の状態と、
前記第1の状態より前記引き出しが開方向にあって、前記引き出しに対する前記付勢手段によって閉方向に付勢されなくなる第2の状態と、を有し、
前記第1の状態は、前記引き出しが開方向へ移動するにつれて前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が低減する付勢力低減状態を有
し、
前記付勢力低減状態においては、前記引き出しの動作機構が前記第2の状態になるまで前記引き出しが開方向へ移動するにつれて前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が連続的に低減し続けることを特徴とする引き出しの動作機構。
【請求項2】
前記付勢手段は、直線状に設けられた直線部と、前記直線部の後端部から繋がっており、螺旋状に設けられた螺旋部と、を備えた渦巻きばねであり、
前記渦巻きばねへ外力が加えられることで、前記螺旋部が徐々に直線状になり、
巻き状態から直線状になる際に必要な抗力が、直線状になった前記螺旋部の開閉方向における長さが大きくなるにしたがって、低下することを特徴とする請求項1に記載の引き出しの動作機構。
【請求項3】
キャビネット本体と、
前記キャビネット本体に形成された収納領域から引き出し可能に設けられた引き出しと、
前記引き出しを全閉する直前において、前記引き出しを閉方向に付勢する付勢手段と、
を備えた引き出し付きキャビネットであって、
前記収納領域は、前記引き出しが前記付勢手段の影響を受ける第1の領域と、前記引き出しに対する前記付勢手段の影響が無くなる第2の領域と、を有し、
前記第1の領域は、前記引き出しが前記第2の領域に近づくにつれ前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が低減する付勢力低減領域を有
し、
前記付勢力低減領域においては、前記引き出しが前記第2の領域に入るまで前記引き出しが開方向へ移動するにつれて前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が連続的に低減し続けることを特徴とする引き出し付きキャビネット。
【請求項4】
前記付勢手段は、直線状に設けられた直線部と、前記直線部の後端部から繋がっており、螺旋状に設けられた螺旋部と、を備えた渦巻きばねであり、
前記渦巻きばねへ外力が加えられることで、前記螺旋部が徐々に直線状態になり、
巻き状態から直線状態になる際に必要な抗力が、直線状態になった前記螺旋部の開閉方向における長さが大きくなるにしたがって、低下することを特徴とする請求項
3に記載の引き出し付きキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、システムキッチンや洗面化粧台などに用いられるキャビネットに備えられた引き出しの動作機構、および、引き出し付きキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばシステムキッチンや洗面化粧台などのキャビネットに取り付けられる引き出しには、引き出しを全閉する直前において、バネ等の付勢手段によって閉方向に付勢することで引き出しが確実に閉まるようにしたものが主流となってきている(特許文献1)。また、このような引き出しでは、全閉状態の引き出しが付勢手段によって閉方向に付勢され続けていることで、キャビネットを持ち運びした際や、地震が発生した際などに、引き出しが意図せず開いてしまうことを抑制できる。
この付勢手段を設けた引き出しにおいては、引き出しを開く際には、引き出し始めにバネ等の付勢手段の抗力(付勢力)に逆らって引き出しを引き出す必要がある。
【0003】
しかしながら、付勢手段が伸長することで付勢力を蓄える一般的なバネであった場合、引き出し操作性の面で課題が発生する。例えば、付勢手段が伸長することで付勢力を蓄える一般的なバネであった場合、引き出しを全閉状態から引き出す際には、引き出しの引き出し量に応じて増大するようにバネからの閉方向への付勢力が引き出しに掛かることになる(
図25の矢印A参照)。また、引き出しを更に引き出すことで付勢力の蓄積が完了した際には、それまで増大するように引き出しに掛かっていた付勢力が急に消失することになる(
図25の矢印B参照)。
このように、引き出しを開く際には、引き出し量に応じて増大するようにバネから閉方向への付勢力が掛かっていた引き出しに対して、使用者はこの付勢力に抗するように力を増大させつつ付与しなければならないうえに、その後急にこの付勢力が消失するため、使用者は意図せず勢いよく引き出しを開いてしまうことを防ぐために引き出しに対して付与している力を急激に弱める必要があり、引き出しの引き出し操作性が悪いといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、付勢手段によって閉方向に付勢することで引き出しが確実に閉まるようにしつつも、引き出しを全閉状態から引き出す際に、使用者が引き出しに付与する力を増大させたのちに急激に弱めるといった一連の力の大きな緩急制御を行う必要がなく、引き出しの引き出し操作性が向上する引き出しの動作機構および引き出し付きキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、キャビネット本体内に形成された収納領域から引き出された引き出しを全閉する直前において、前記引き出しを閉方向に付勢する付勢手段を備えた引き出しの動作機構であって、前記引き出しの動作機構は、前記引き出しが前記付勢手段によって閉方向に付勢される第1の状態と、前記第1の状態より前記引き出しが開方向にあって、前記引き出しに対する前記付勢手段によって閉方向に付勢されなくなる第2の状態と、を有し、前記第1の状態は、前記引き出しが開方向へ移動するにつれて前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が低減する付勢力低減状態を有することを特徴とする引き出しの動作機構である。
【0007】
この引き出しの動作機構によれば、引き出しを全閉状態から引き出す際には、付勢力低減状態では、付勢手段の影響が無くなる第2の状態に近づくにつれ、付勢手段による引き出しに対する閉方向への付勢力が低減されるようになる。このため、引き出しを開く際には、引き出しは、引き出し量に応じて増大するように付勢手段からの閉方向への付勢力が掛かった後に急に付勢力が消失する状態を経由することが無く、よりスムーズに第2の状態に進入できるようになる。したがって、付勢手段によって閉方向に付勢することで引き出しが確実に閉まるようにしつつも、引き出しの引き出し操作性を向上させることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記付勢力低減状態においては、前記引き出しが開方向へ移動するにつれて前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が、徐々に小さく低減することを特徴とする引き出しの動作機構である。
【0009】
この引き出しの動作機構によれば、引き出しが付勢力低減状態に進んだ際には、初期は急激に、その後は徐々に滑らかに、引き出しが第2の状態に近づくにつれ付勢手段による引き出しに対する閉方向への付勢力を低減させることができるため、引き出し操作性を低減させることを抑制しつつも、引き出しがより軽く引き出せる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記付勢力低減状態においては、前記引き出しの動作機構が前記第2の状態になるまで前記引き出しが開方向へ移動するにつれて前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が連続的に低減し続けることを特徴とする引き出しの動作機構である。
【0011】
この引き出しの動作機構によれば、付勢力低減状態においては、引き出しの動作機構が第2の状態になるまで引き出しが開方向へ移動するにつれて連続的に低減し続けることから、より滑らかに引き出しの動作機構が第2の状態に進むことができるため、引き出しの開動作がよりスムーズに行われるようになる。また、付勢手段による引き出しの閉動作もよりスムーズに行われるようになる。
【0012】
第4の発明は、第1~3の何れか1つの発明において、前記付勢手段は、直線状に設けられた直線部と、前記直線部の後端部から繋がっており、螺旋状に設けられた螺旋部と、を備えた渦巻きばねであり、前記渦巻きばねへ外力が加えられることで、前記螺旋部が徐々に直線状になり、巻き状態から直線状になる際に必要な抗力が、直線状になった前記螺旋部の開閉方向における長さが大きくなるにしたがって、低下することを特徴とする引き出しの動作機構である。
【0013】
この引き出しの動作機構によれば、付勢手段をこのような渦巻きばねとすることによって、非常に簡易な構成で、引き出しを開く際には、引き出しは、引き出し量に応じて増大するように付勢手段からの閉方向への付勢力が掛かった後に、急に付勢力が消失する状態を経由することがなくなり、よりスムーズに第2の状態に進入できるようになる。したがって、付勢手段によって閉方向に付勢することで引き出しが確実に閉まるようにしつつも、引き出しの引き出し操作性を向上させることができる。
【0014】
第5の発明は、キャビネット本体と、前記キャビネット本体に形成された収納領域から引き出し可能に設けられた引き出しと、前記引き出しを全閉する直前において、前記引き出しを閉方向に付勢する付勢手段と、を備えた引き出し付きキャビネットであって、前記収納領域は、前記引き出しが前記付勢手段の影響を受ける第1の領域と、前記引き出しに対する前記付勢手段の影響が無くなる第2の領域と、を有し、前記第1の領域は、前記引き出しが前記第2の領域に近づくにつれ前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が低減する付勢力低減領域を有することを特徴とする引き出し付きキャビネットである。
【0015】
この引き出し付きキャビネットによれば、引き出しを全閉状態から引き出す際には、付勢力低減領域では、付勢手段の影響が無くなる第2の領域に近づくにつれ、付勢手段による引き出しに対する閉方向への付勢力が低減されるようになる。このため、引き出しを開く際には、引き出しは、引き出し量に応じて増大するように付勢手段からの閉方向への付勢力が掛かった後に急に付勢力が消失する状態を経由することが無く、よりスムーズに第2の領域に進入できるようになる。したがって、付勢手段によって閉方向に付勢することで引き出しが確実に閉まるようにしつつも、引き出しの引き出し操作性を向上させることができる。
【0016】
第6の発明は、第5の発明において、前記付勢力低減領域においては、前記引き出しが開方向へ移動するにつれて前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が、徐々に小さく低減することを特徴とする引き出し付きキャビネットである。
【0017】
この引き出し付きキャビネットによれば、引き出しが付勢力領域に進んだ際には、初期は急激に、その後は徐々に滑らかに、引き出しが第2の領域に近づくにつれ付勢手段による引き出しに対する閉方向への付勢力を低減させることができるため、引き出し操作性を低減させることを抑制しつつも、引き出しがより軽く引き出せる。
【0018】
第7の発明は、第5又は第6の発明において、前記付勢力低減領域においては、前記引き出しが前記第2の領域に入るまで前記引き出しが開方向へ移動するにつれて前記付勢手段による前記引き出しに対する閉方向への付勢力が連続的に低減し続けることを特徴とする引き出し付きキャビネットである。
【0019】
この引き出し付きキャビネットによれば、付勢力低減領域においては、引き出しの動作機構が第2の状態になるまで引き出しが開方向へ移動するにつれて連続的に低減し続けることから、より滑らかに引き出しが第2の領域に進むことができるため、引き出しの開動作がよりスムーズに行われるようになる。また、付勢手段による引き出しの閉動作もよりスムーズに行われるようになる。
【0020】
第8の発明は、第5~7の何れか1つの発明において、前記付勢手段は、直線状に設けられた直線部と、前記直線部の後端部から繋がっており、螺旋状に設けられた螺旋部と、を備えた渦巻きばねであり、前記渦巻きばねへ外力が加えられることで、前記螺旋部が徐々に直線状態になり、巻き状態から直線状態になる際に必要な抗力が、直線状態になった前記螺旋部の開閉方向における長さが大きくなるにしたがって、低下することを特徴とする記載の引き出し付きキャビネットである。
【0021】
この引き出し付きキャビネットによれば、付勢手段をこのような渦巻きばねとすることによって、非常に簡易な構成で、引き出しを開く際には、引き出しは、引き出し量に応じて増大するように付勢手段からの閉方向への付勢力が掛かった後に、急に付勢力が消失する状態を経由することがなくなり、よりスムーズに第2の領域に進入できるようになる。したがって、付勢手段によって閉方向に付勢することで引き出しが確実に閉まるようにしつつも、引き出しの引き出し操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の態様によれば、付勢手段によって閉方向に付勢することで引き出しが確実に閉まるようにしつつも、引き出しを全閉状態から引き出す際に、使用者が引き出しに付与する力を増大させたのちに急激に弱めるといった一連の力の大きな緩急制御を行う必要がなく、引き出しの引き出し操作性が向上する引き出しの動作機構および引き出し付きキャビネットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る引き出し付きキャビネットを示す模式的側面図である。
【
図2】
図1の引き出し付きキャビネットを示す模式的側断面図である。
【
図3】
図2の引き出し付きキャビネットにおける引き出し動作機構部を示す模式的側断面図である。
【
図4】
図3の引き出し動作機構部における付勢手段を示す模式的側断面図である。
【
図5】
図3の引き出し動作機構部における付勢手段(伸長した状態)を示す模式的側断面図である。
【
図7】
図3において引き出しが全閉状態の際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【
図8】
図3の引き出し付きキャビネットにおいて引き出しが全閉状態の際の引き出し動作機構部を示す模式的側断面図である。
【
図9】
図3において引き出しを開き始めた状態で且つ引き出しが第1の状態である際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【
図10】
図3の引き出し付きキャビネットにおいて引き出しを開き始めた状態で且つ引き出しが第1の状態である際の引き出し動作機構部を示す模式的側断面図である。
【
図11】
図3において引き出しが第2の状態となった際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【
図12】
図3の引き出し付きキャビネットにおいて引き出しが第2の状態である際の引き出し動作機構部を示す模式的側断面図である。
【
図13】
図3において引き出しが全開状態となった際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【
図14】本発明の第1の実施の形態に係る引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフである。
【
図15】本発明の第2の実施の形態に係る、引き出しが全閉状態の際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【
図16】
図15において引き出しを開き始めた状態で且つ引き出しが第1の状態である際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【
図17】
図16において引き出しが第2の状態となった際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【
図18】
図17において引き出しが全開状態となった際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【
図19】本発明の他の実施の形態に係る引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフである。
【
図20】本発明の他の実施の形態に係る引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフである。
【
図21】本発明の他の実施の形態に係る引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフである。
【
図22】本発明の他の実施の形態に係る引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフである。
【
図23】本発明の他の実施の形態に係る引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフである。
【
図24】本発明の他の実施の形態に係る引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフである。
【
図25】従来の付勢手段を用いた引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
なお、本発明の実施の形態において、図面に記載した「前方」へ向かう方向が、引き出しの開方向である。また、本発明の実施の形態において、図面に記載した「後方」へ向かう方向が、引き出しの閉方向である。さらに、本発明の実施の形態においては、引き出しが前後方向(開閉方向)へ移動することが、引き出しが摺動することである。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る引き出し付きキャビネットを示す模式的側面図である。
図2は、
図1の引き出し付きキャビネットを示す模式的側断面図である。
【0026】
図1及び
図2に示すように、収納機能付きの家具である引き出し付きキャビネット100は、内部にある収納領域が設けられた、例えば木製のキャビネット本体1と、キャビネット本体1の上方に設けられた、例えば樹脂製のカウンター2と、キャビネット本体1の収納領域内に少なくとも一部が収納された引き出し4と、同じく収納領域内に設けられた、引き出し4の引き出し動作に影響を与える引き出し動作機構部6と、を備えている。なお、本発明の第1の実施の形態においては、引き出し4は、キャビネット本体1内において上下に並んで2つ設置されている。引き出し4は、上方から物品を挿入することで、内部に該物品を収納可能である。
【0027】
引き出し4は、引き出し4を使用者が引き出す際に把持するための取っ手8と、取っ手8が取り付けられている前板10と、キャビネット本体1の収納領域内に収納された引き出し本体12と、を有している。引き出し本体12の底板14の下面には、突起16が設けられている。
【0028】
図3は、
図2の引き出し付きキャビネットにおける引き出し動作機構部を示す模式的側断面図である。
【0029】
図3に示すように、引き出し動作機構部6は、上面に凹部18aが設けられたトリガー部18と、後方方向への付勢力を発生する付勢手段20と、トリガー部18と付勢手段20とを接続する接続部22と、を有する。接続部22は、トリガー部18に対して、回転自在に接続されている。付勢手段20の後端近傍(後端部)は、キャビネット本体1の背面板に接続及び固定されている。付勢手段20の詳細構造は、後に詳述する。
【0030】
引き出し動作機構部6においては、トリガー部18は、付勢手段20によって発生している後方方向(引き出し4における閉方向)への付勢力によって、不意の外力によって前方方向(引き出し4における開方向)へ移動することを抑制されている。そして、トリガー部18の上面の凹部18aには、引き出し本体12の底板14の下面に設けられた突起16が挿入されている。このことより、例えば、引き出し付きキャビネット100を持ち運びした際や、地震が発生した際などに、引き出し4が使用者の意図せずに開いてしまうことを抑制できる。
【0031】
図4は、
図3の引き出し動作機構部における付勢手段を示す模式的側断面図である。
図5は、
図3の引き出し動作機構部における付勢手段(伸長した状態)を示す模式的側断面図である。
図6は、
図5の付勢手段を示す模式的上面図である。
【0032】
図4及び
図5に示すように、付勢手段20は、例えば金属製のばねである。より詳述すると、先端を中心に渦巻き状に巻かれた渦巻きばねである。この渦巻きばねは、
図4の状態で形状記憶されており、この渦巻きばねに外力を加え伸ばした場合でも、外力を取り除けば
図4の状態に戻る。付勢手段20は、直線状に設けられた直線部20aと、直線部20aの後端近傍(後端部)から繋がっており、螺旋状に設けられた螺旋部20bと、を有している。本発明の第1の実施の形態における付勢手段20においては、曲げ加工された螺旋部20bが外力によって直線状に形状変換される際に、外力に抗するように、即ち直線状に形状変換された螺旋部20bが曲げ状態に戻るように付勢力を発揮する。
【0033】
図6に示すように、付勢手段20の螺旋部20bは、外力によって伸ばされた状態において、少なくとも一部分が、前方方向(引き出し4における開方向)に向かうにつれ幅が小さくなるように形成されている。詳述すると、螺旋部20bは、外力によって伸ばされた状態において、少なくとも一部分が、前方方向(引き出し4における開方向)へ向かうにつれ略線形的に幅が小さくなるように形成されている。言い換えると、螺旋部20bは、直線部20aから離れるにしたがって、徐々に幅が小さくなるように形成されている。
【0034】
本発明の第1の実施の形態における付勢手段20においては、曲げ加工された螺旋部20bが外力によって直線状に形状変換される際に、外力に抗するように、即ち直線状に形状変換された螺旋部20bが曲げ状態に戻るように付勢力を発揮するが、その付勢力は、外力によって曲げ状態が直線状に形状変換される螺旋部20bの幅の大きさに比例する。このことから、螺旋部20bを、前方方向(引き出し4における開方向)へ向かうにつれ徐々に幅が小さくなるように形成することで、付勢手段20である渦巻きばねが伸ばされる毎に、徐々に付勢力が小さくなる。
【0035】
図7は、
図3において引き出しが全閉状態の際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
図8は、
図3の引き出し付きキャビネットにおいて引き出しが全閉状態の際の引き出し動作機構部を示す模式的側断面図である。
【0036】
図7及び
図8に示すように、接続部22は、リンク部22a及び軸部22bを有している。リンク部22aの一端側は、トリガー部18に対して回転自在に接続されている。リンク部22aの他端側は、軸部22bに対して回転自在に接続されている。軸部22bは、付勢手段20である渦巻きばねの先端に接続されている。
【0037】
図7及び
図8の状態は、引き出し4の動作機構部6が、引き出し4が付勢手段20の影響を受けている第1の状態である。言い換えると、引き出し本体12の突起16は、引き出し4が付勢手段20の影響を受けている収納領域の範囲である第1の領域に位置しているといえる。即ち、付勢手段20である渦巻きばねによって、接続部22及び接続部22に接続されているトリガー部18は、後方方向(引き出し4における閉方向)に付勢力を受けている。
図7及び
図8の状態においては、引き出し本体12の突起16がトリガー部18の凹部18aに挿入された状態であることから、引き出し4が不意の外力によって前方方向(引き出し4における開方向)へ移動することを抑制されている。
【0038】
図9は、
図3において引き出しを開き始めた状態で且つ引き出しが第1の状態である際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
図10は、
図3の引き出し付きキャビネットにおいて引き出しを開き始めた状態で且つ引き出しが第1の状態である際の引き出し動作機構部を示す模式的側断面図である。
【0039】
図9及び
図10に示すように、引き出し4を全閉状態から徐々に開き始めると、引き出し本体12の突起16がトリガー部18の凹部18aに挿入された状態で前方方向(開方向)へ移動する。その結果、トリガー部18及びトリガー部18に接続している接続部22も、前方方向(開方向)へ移動する。すると、付勢手段20である渦巻きばねに前方方向への力が加わり、曲げ加工された螺旋部20bが徐々に直線状に形状変換される。この際、上述したような後方方向への付勢力が発生するが、
図6で示したように、螺旋部20bは、前方方向(開方向)へ向かうにつれ徐々に幅が小さくなるように形成されているため、トリガー部18及びトリガー部18に接続している接続部22が前方方向(開方向)へ移動するにつれ、徐々に発生する付勢力が低減(減少)していくこととなる。その結果、引き出し4を全閉状態から徐々に開き始めると、引き出し本体12の突起16に加わる後方方向への付勢力が、徐々に低減されていく。
【0040】
言い換えると、
図10に示すように、付勢手段20である渦巻きばねへ外力が加えられることで、螺旋部20bが徐々に直線状になり、巻き状態から直線状になる際に必要な抗力は、直線状になった螺旋部20bの前後方向(引き出し4における開閉方向)における長さが大きくなるにしたがって、低下する。
【0041】
図9及び
図10の状態は、引き出し4の動作機構部6が、引き出し4が付勢手段20の影響を受けている第1の状態である。言い換えると、引き出し本体12の突起16は、引き出し4が付勢手段20の影響を受けている収納領域の範囲である第1の領域に位置しているといえる。また、
図9及び
図10の状態は、引き出し4が前方方向(開方向)へ移動するにつれて付勢手段20による引き出し4に対する後方方向(閉方向)への付勢力が低減する付勢力低減状態であるともいえる。言い換えると、引き出し本体12の突起16は、引き出し4が付勢手段20の影響を受けていない第2の領域に近づくにつれ付勢手段20による引き出し4に対する後方方向(閉方向)への付勢力が低減する付勢力低減領域に位置している、ともいえる。
【0042】
図11は、
図3において引き出しが第2の状態となった際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
図12は、
図3の引き出し付きキャビネットにおいて引き出しが第2の状態である際の引き出し動作機構部を示す模式的側断面図である。
図13は、
図3において引き出しが全開状態となった際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【0043】
図11に示すように、
図9の状態から更に引き出し4を開くと、突起16によって前方方向(開方向)へ移動されたトリガー部18が、キャビネット本体1に凹状に設けられたトリガー受け部24へ移動し、係合することで、付勢手段20である渦巻きばねが一定量だけ伸びた状態で、保持される。トリガー部18とトリガー受け部24との係合は、例えば、トリガー部18及びトリガー受け部24それぞれが磁石を有しており、これら磁石の接着により実現される。トリガー部18がトリガー受け部24と係合すると、突起16とトリガー部18との係合状態が解除され、突起16のみが前方方向(開方向)へ移動可能となる。この際の引き出し動作機構部を示す図が、
図12である。
【0044】
図12に示すように、トリガー部18がトリガー受け部24と係合し、突起16とトリガー部18との係合状態が解除された状態において、付勢手段20である渦巻きばねの螺旋部20bの全てが直線状になるわけではない。言い換えると、トリガー部18がトリガー受け部24と係合し、突起16とトリガー部18の凹部18aとの係合状態が解除される際には、付勢手段20である渦巻きばねは、螺旋部20bの少なくとも一部が曲げ状態で保持される。このことより、トリガー部18がトリガー受け部24と係合し、突起16とトリガー部18の凹部18aとの係合状態が解除された際にも、付勢手段20である渦巻きばねには、付勢力が多少残った状態で保持されるため、引き出し4を後方方向(閉方向)へ動かして全閉させる際に、引き出し4が第1の領域に進入した直後から引き出し4は付勢力を受けることができる。
【0045】
図11及び
図12の状態は、引き出し4の動作機構部6が、引き出し4が付勢手段20の影響を受けている第1の状態から、引き出し4が付勢手段20の影響を受けていない第2の状態となった直後の状態である。言い換えると、引き出し本体12の突起16は、引き出し4が付勢手段20の影響を受けている収納領域の範囲である第1の領域から、引き出し4が付勢手段20の影響を受けていない収納領域の範囲である第2の領域に位置した直後の状態といえる。
【0046】
図13に示すように、
図11の状態から更に引き出し4を開くと、突起16とトリガー部18との係合状態が解除された状態であることから、引き出し4のみ前方方向(開方向)へ移動されることになる。本発明の第1の実施形態においては、引き出し本体12の突起16がキャビネット本体1の開口部の下枠26と当接することで、引き出し4は全開状態となる。
【0047】
図13の状態は、引き出し4が付勢手段20の影響を受けていない第2の状態である。言い換えると、引き出し本体12の突起16は、引き出し4が付勢手段20の影響を受けていない収納領域の範囲である第2の領域にある、といえる。
【0048】
図14は、本発明の第1の実施の形態に係る引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフである。
【0049】
図14に示すように、本発明の第1の実施の形態においては、引き出し本体12の突起16が収納領域の範囲である第1の領域に位置している場合、即ち、引き出し4の動作機構部6が第1の状態である場合、引き出し4は付勢手段20の影響を受けている。また、本発明の第1の実施の形態においては、第1の領域が付勢力低減領域であり、第1の状態が付勢力低減状態である。引き出し本体12の突起16が付勢力低減領域に位置している場合、即ち、引き出し4が付勢力低減状態である場合、引き出し4を引き出す量に応じて、即ち前方方向(開方向)へ移動させる量に応じて、引き出し4に発生する、移動に抗する力である付勢力が、低減する。したがって、使用者は、引き出し4を全閉状態から引き出す際には、徐々に引き出すための操作力を小さくすることができる。なお、本発明の第1の実施の形態においては、付勢手段20による後方方向(閉方向)への付勢力は、引き出し開始初期では約10ニュートン(N)であり、引き出し本体12の突起16が第1の領域から第2の領域に進入する直前、即ち、引き出し4の動作機構部6が第1の状態から第2の状態となる直前では約3Nである。
【0050】
本発明の第1の実施の形態においては、付勢力低減領域(付勢力低減状態)は、引き出し量でいうと3センチメートル(cm)の大きさである。なお、本発明において、付勢力低減領域(付勢力低減状態)は、引き出し量でいうと2cm以上の大きさであることが好ましい。なお、本発明において、付勢力低減領域(付勢力低減状態)は、第1の領域(第1の状態)のうち、半分(50パーセント)以上を占めていることが好ましい。
【0051】
また、本発明の第1の実施の形態においては、引き出し本体12の突起16が収納領域の範囲である第2の領域に位置している場合、即ち、引き出し4の動作機構部6が第2の状態である場合、引き出し4は付勢手段20の影響を受けていない。即ち、引き出し4には、付勢手段20からの付勢力が掛かっていない。
【0052】
以上より、引き出し4を全閉状態から引き出す際には、付勢力低減状態(付勢力低減領域)では、付勢手段20の影響が無くなる第2の状態(第2の領域)に近づくにつれ、付勢手段20による引き出し4に対する閉方向への付勢力が低減されるようになる。このため、引き出し4を開く際には、引き出し4は、引き出し量に応じて増大するように付勢手段20からの閉方向への付勢力が掛かった後に急に付勢力が消失する状態を経由することがなく、よりスムーズに第2の状態(第2の領域)に進入できるようになる。したがって、付勢手段20によって閉方向に付勢することで引き出し4が確実に閉まるようにしつつも、引き出し4の引き出し操作性を向上させることができる。
【0053】
引き出し4が全開状態から、後方方向(閉方向)へ動かされ、全閉状態となる過程は、
図13から
図11、
図11から
図9、
図9から
図7、という過程を経ることとなる。
詳述すると、
図13の全開状態から引き出し4を後方方向(閉方向)へ動かすと、
図11の状態となり、
図11の状態から引き出し4をさらに後方方向(閉方向)へ動かすと、引き出し本体12の突起16が、トリガー部18の下壁面(
図11では右壁面)と当接する。トリガー部18と当接すると、トリガー部18とトリガー受け部24との係合状態が解除され、トリガー部18が起き上がるように回転する。トリガー部18が起き上がるように回転すると、突起16とトリガー部18の凹部18aとが係合する。この際、トリガー部18は、付勢手段20である渦巻きばねによって、後方方向(閉方向)へ付勢されることとなる。付勢手段20である渦巻きばねによる付勢力は、
図14で示したように、全閉状態に近づくにつれ徐々に増大するため、従来の付勢手段が伸長することで付勢力を蓄える付勢手段を有する引き出し4の動作機構と比べ、より確実に、引き出し4を全閉状態にさせることができる。なお、図示は省略しているが、本発明の実施の形態における引き出し付きキャビネット100は、ダンパー機構を備えており、引き出し4が全閉する直前に、後方方向(閉方向)へ付勢を和らげる。
【0054】
図14に示すように、付勢力低減状態(付勢力低減領域)においては、引き出し4の動作機構部6が第2の状態(第2の領域)になるまで、引き出し4が開方向へ移動するにつれて連続的に低減し続ける。言い換えると、付勢力低減領域は第2の領域に隣接した領域であり、付勢力低減状態と第2の状態との間には、付勢力低減状態及び第2の状態以外の状態が存在しない。このことにより、付勢力低減状態(付勢力低減領域)においては、引き出し4の動作機構部6が第2の状態(第2の領域)になるまで、引き出し4が開方向へ移動するにつれて連続的に低減し続けることから、より滑らかに引き出し4の動作機構部6が第2の状態(第2の領域)に進むことができるため、引き出し4の開動作がよりスムーズに行われるようになる。また、付勢手段20による引き出し4の閉動作もよりスムーズに行われるようになる。
なお、付勢力低減状態(付勢力低減領域)においては、引き出し4の動作機構部6が第2の状態(第2の領域)になるまで引き出し4が開方向へ移動するにつれて連続的に低減し続けるが、例えば、トリガー部18とトリガー受け部24とが係合し、突起16とトリガー部18の凹部18aとの係合状態が解除される間に、低減していない状態(領域)が多少存在しても良い。その低減していない状態(領域)は、引き出し量でいうと、例えば2cm以内であり、範囲内で低減していない状態(領域)が存在していても、「引き出し4の動作機構部6が第2の状態(第2の領域)になるまで引き出し4が開方向へ移動するにつれて連続的に低減し続ける」ものとする。
【0055】
図15~18は、本発明の第2の実施の形態に係る引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る、引き出しが全閉状態の際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
図16は、
図15において引き出しを開き始めた状態で且つ引き出しが第1の状態である際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
図17は、
図16において引き出しが第2の状態となった際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
図18は、
図17において引き出しが全開状態となった際の引き出し付きキャビネットを示す模式的部分側断面図である。
【0056】
図15~18に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る引き出し付きキャビネット100Aは、本発明の第1の実施の形態に係る引き出し付きキャビネット100と異なり、付勢手段20である渦巻きばねは、直線部20aの後端近傍(後端部)がトリガー部18と直接接続されており、螺旋部20bの先端が、キャビネット本体1に接続・固定されている。この際、付勢手段20の螺旋部20bは、第1の実施の形態と同様に、外力によって伸ばされた状態において、少なくとも一部分が、前方方向(引き出し4における開方向)に向かうにつれ幅が小さくなるように形成されている。詳述すると、螺旋部20bは、外力によって伸ばされた状態において、少なくとも一部分が、前方方向(引き出し4における開方向)へ略線形的に幅が小さくなるように形成されている。螺旋部20bは、直線部20aから離れるにしたがって、徐々に幅が小さくなるように形成されている。
【0057】
このことより、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、引き出し4が前方方向(開方向)へ移動するにつれて付勢手段20による引き出し4に対する後方方向(閉方向)への付勢力が低減する。第2の実施の形態に係る引き出しの動作機構における、引き出し量に対して引き出しに加わる付勢力を表す模式的なグラフは、
図14と同様である。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
【0059】
本発明の実施の形態においては、付勢手段20を渦巻きばねとし、螺旋部20bを前方方向(引き出し4における開方向)へ向かうにつれ幅が小さくなるように形成した。しかし、本発明はそれに限らない。
【0060】
例えば、螺旋部20bを前方方向(引き出し4における開方向)へ向かうにつれ厚みが小さくなるように形成しても良い。また、例えば、螺旋部20bに開口部分を形成し、前方方向(引き出し4における開方向)へ向かうにつれ開口部分が広くなるように形成しても良い。また、例えば、螺旋部20bを前方方向(引き出し4における開方向)へ向かうにつれ、より曲がりやすい部材で形成しても良い。
【0061】
本発明の実施の形態においては、直線部20aの幅の大きさは一定であったが、本発明はそれに限らず、螺旋部20bと同様に、幅方向の大きさが前後方向(引き出し4における開閉方向)で異なるものであっても良い。
【0062】
本発明の実施の形態においては、トリガー受け部24はキャビネット本体1に設けられていたが、本発明はそれに限らず、例えば、引き出し4を引き出すためにキャビネット本体1に設置されたレール(図示せず)内に設けても良い。同様にして、例えば、動作機構部6を、レール(図示せず)内に設けても良い。
【0063】
本発明の実施の形態においては、引き出し量に対して引き出し4に加わる付勢力を表す模式的なグラフは、
図14で示した。しかし、本発明はそれに限らない。
【0064】
例えば、
図19で示すように、引き出し4の引き出し量に応じて、付勢手段20による後方方向(閉方向)への付勢力がほぼゼロとなるまで徐々に低減させ、ほぼゼロになった際に第2の領域(第2の状態)に進入するものであっても良い。
【0065】
例えば、
図20で示すように、引き出し4の引き出し量に応じて、付勢手段20による付勢力を、引き出し開始初期は大幅に低減させ、その後、付勢力の低減率を減少させるようなものであっても良い。即ち、付勢力低減領域(付勢力低減状態)においては、引き出し4が前方方向(開方向)へ移動するにつれて付勢手段20による引き出し4に対する後方方向(閉方向)への付勢力が、徐々に小さく低減するようにしている。言い換えると、付勢力低減領域(付勢力低減状態)においては、引き出し4が前方方向(開方向)へ移動するにつれて付勢手段20による引き出し4に対する後方方向(閉方向)への付勢力の低減率が、減少する。
このことより、引き出し4が付勢力低減領域(付勢力低減状態)に進んだ際には、急激に且つ滑らかに、引き出し4が第2の領域(第2の状態)に近づくにつれ付勢手段20による引き出し4に対する後方方向(閉方向)への付勢力を低減させることができるため、引き出し操作性を低減させることを抑制しつつも、引き出し4がより軽く引き出せる。
【0066】
例えば、
図21で示すように、引き出し4の引き出し量に応じて、付勢手段20による付勢力の低減率を、徐々に上昇させるようなものであっても良い。
【0067】
例えば、
図22で示すように、引き出し4の引き出し量に応じて、引き出し開始初期は付勢手段20による付勢力を一定とし、その後、徐々に低減させるようなものであっても良い。
【0068】
例えば、
図23で示すように、引き出し4の引き出し量に応じて、引き出し開始初期は付勢手段20による付勢力を徐々に低減させ、その後、付勢力をほぼ一定とさせるようなものであっても良い。
【0069】
例えば、
図24で示すように、引き出し4の引き出し量に応じて、引き出し開始初期は付勢手段20による付勢力を上昇させ、その後、徐々に低減させるようなものであっても良い。
【0070】
本発明における「引き出し」には、キャビネット等に設けられる引き戸も含まれる。
【0071】
本発明における「直線」には、多少角度が付いているものも含まれる。
【0072】
本発明における「螺旋」は、先端を中心に、外側を覆っていくように回転して形成される「渦巻き」の意味も含まれる。
【0073】
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、引き出し4の動作機構や引出し付きキャビネット100、100A、付勢手段20などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0074】
1 キャビネット本体、 2 カウンター、 4 引き出し(摺動家具部材)、 6 動作機構部、 8 取っ手、 10 前板、 12 引き出し本体、 14 底板、 16 突起、 18 トリガー部、 18a 凹部、 20 付勢手段(家具用ばね)、 20a 直線部、 20b 螺旋部、 22 接続部、 22a リンク部、 22b 軸部、 24 トリガー受け部、 26 下枠部、 100、100A 引き出し付きキャビネット