(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】クランプユニット及びこれを備える透析装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20220614BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M1/36 103
(21)【出願番号】P 2017115403
(22)【出願日】2017-06-12
【審査請求日】2020-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩司
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 隼也
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/030184(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/036652(WO,A1)
【文献】特開2014-083091(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024236(WO,A1)
【文献】特開平05-280470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0192380(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/36
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット本体と、
前記ユニット本体を開閉する蓋部と、を備えるクランプユニットであって、
前記蓋部の閉鎖時に、前記ユニット本体と前記蓋部との間に配置される液体が流通するチューブをクランプするクランプ部と、
前記チューブが配置されるチューブ配置部において前記クランプ部に並んで配置され、前記チューブからの圧力による荷重を検出する荷重検出部と、
前記チューブ配置部において前記荷重検出部に並んで配置され、前記チューブの内部を流通する液体中に含まれる気泡を検知する気泡検知部と、を備え、
前記クランプ部は、前記ユニット本体に配置される本体側可動クランプ部と、前記蓋部に配置される蓋部側クランプ部と、を有し、
前記クランプ部は、前記本体側可動クランプ部を進退させて、液体流通ラインを構成する前記チューブを押し潰したり開放して、前記液体流通ラインの流路を開閉
し、
前記気泡検知部は、前記チューブ配置部において、前記クランプ部よりも液体の流通方向の下流側に配置される、クランプユニット。
【請求項2】
前記荷重検出部は、前記ユニット本体に配置されるフォースセンサを有し、前記蓋部の閉鎖時に前記蓋部が前記チューブを前記フォースセンサに押さえ付けることで、前記フォースセンサが前記チューブからの圧力による荷重を検出する請求項
1に記載のクランプユニット。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のクランプユニットと、
前記クランプユニットが取り付けられる装置本体と、
前記荷重検出部により検出された検出値に基づいて、前記チューブの閉塞を判定する閉塞判定部と、を備える透析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブを保持するクランプユニット及びこれを備える透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体が流通するチューブと、チューブからの圧力による荷重を検出する荷重検出部と、荷重検出部により検出された検出値に基づいてチューブの閉塞を判定する閉塞判定部と、を備える透析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の透析装置においては、長時間の透析治療を行う場合に、チューブの閉塞の判定を精度よく行うためには、チューブが安定して保持されることが必要となる。そのため、チューブの閉塞を判定するために、チューブを安定して保持できることが望まれる。
【0005】
本発明は、チューブの閉塞を判定するために、チューブを安定して保持できるクランプユニット及びこれを備える透析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ユニット本体と、前記ユニット本体を開閉する蓋部と、を備えるクランプユニットであって、前記蓋部の閉鎖時に、前記ユニット本体と前記蓋部との間に配置される液体が流通するチューブをクランプするクランプ部と、前記チューブが配置されるチューブ配置部において前記クランプ部に並んで配置され、前記チューブからの圧力による荷重を検出する荷重検出部と、を備えるクランプユニットに関する。
【0007】
また、前記チューブ配置部において前記荷重検出部に並んで配置され、前記チューブの内部を流通する液体中に含まれる気泡を検知する気泡検知部を更に備えることが好ましい。
【0008】
また、前記荷重検出部は、前記ユニット本体に配置されるフォースセンサを有し、前記蓋部の閉鎖時に前記蓋部が前記チューブを前記フォースセンサに押さえ付けることで、前記フォースセンサが前記チューブからの圧力による荷重を検出し、前記クランプ部は、前記ユニット本体に配置される本体側クランプ部と、前記蓋部に配置される蓋部側クランプ部と、を有し、前記蓋部の閉鎖時に前記本体側クランプ部と前記蓋部側クランプ部とで挟み込むことにより前記チューブをクランプすることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記クランプユニットと、前記クランプユニットが取り付けられる装置本体と、前記荷重検出部により検出された検出値に基づいて、前記チューブの閉塞を判定する閉塞判定部と、を備える透析装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チューブの閉塞を判定するために、チューブを安定して保持できるクランプユニット及びこれを備える透析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る血液透析装置の全体構成を示す図である。
【
図2】クランプユニットの構成を示す正面図である。
【
図4】クランプユニットの閉鎖状態を示す斜視図である。
【
図8】チューブの硬度が異なる場合の荷重検出部の出力電圧を示すイメージ図である。
【
図9】基準電圧Vkaを設定した場合における閾値及び各時間経過の関係を示すグラフである。
【
図10】基準電圧Vkbを設定した場合における閾値及び各時間経過の関係を示すグラフである。
【
図11】時間経過に応じた基準電圧の推移を示すグラフイメージである。
【
図12】基準電圧を時間経過に応じて変化させた場合の荷重検出部の出力電圧の変化を示すグラフイメージであって、(a)は、チューブが閉塞しない場合を示すグラフであり、(b)は、脱血中又は透析中にチューブが閉塞した場合を示すグラフであり、(c)は、返血中にチューブが閉塞した場合を示すグラフである。
【
図13】基準電圧を時間経過に応じて変化させない場合の荷重検出部の出力電圧の変化を示すグラフであって、(a)は、チューブが閉塞しない場合を示すグラフであり、(b)は、脱血中又は透析中にチューブが閉塞した場合を示すグラフであり、(c)は、返血中にチューブが閉塞した場合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の血液透析装置の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の血液透析装置は、腎不全患者や薬物中毒患者の血液を浄化すると共に、血液中の余分な水分を除去し、必要に応じて血液中に水分を補充(補液)する。
まず、本実施形態の血液透析装置1の全体構成につき、
図1を参照しながら説明する。透析装置としての血液透析装置1は、血液透析器としてのダイアライザ10と、血液回路20と、透析液回路30と、補充液ライン38と、装置本体としてのコンソール100と、を備える。コンソール100には、操作パネル70、クランプユニット60、血液回路20の一部、透析液回路30の一部、温度調節部としてのヒータ40、薬液ポンプ231、補液ポンプ39、及び制御装置50が配置されている。
【0013】
ダイアライザ10は、筒状に形成された容器本体11と、この容器本体11の内部に収容された透析膜(図示せず)と、を備え、容器本体11の内部は、透析膜により血液側流路と透析液側流路とに区画される(いずれも図示せず)。容器本体11には、血液側流路に連通する血液導入口111及び血液導出口112と、透析液側流路に連通する透析液導入口113及び透析液導出口114と、が形成される。
【0014】
血液回路20は、動脈側ライン21と、静脈側ライン22と、薬剤ライン23と、オーバーフローライン24と、を備える。動脈側ライン21、静脈側ライン22、薬剤ライン23及びオーバーフローライン24は、いずれも液体が流通可能な可撓性を有するチューブを主体として構成される。
【0015】
本実施形態においては、動脈側ライン21、静脈側ライン22、薬剤ライン23及びオーバーフローライン24を構成するチューブは、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコン(Si)等の可撓性のチューブで形成される。チューブとしては、例えば、外径が5.5mm、内径が3.3mmのものなどが用いられる。チューブの硬度は、例えば、50~85程度(JIS K7215)のものなどが用いられる。
【0016】
動脈側ライン21は、一端側が対象者(透析患者)の動脈に接続され、他端側がダイアライザ10の血液導入口111に接続される。動脈側ライン21の途中には、コンソール100が配置される。コンソール100において、動脈側ライン21が通る部分には、クランプユニット60及び血液ポンプ212が配置される。クランプユニット60における動脈側ライン21が通る部分には、動脈側クランプ部(クランプ部)65、荷重検出部66、及び動脈側気泡センサ(気泡検知部)67が配置される。クランプユニット60の詳細については後述する。
【0017】
血液ポンプ212は、動脈側ライン21におけるクランプユニット60よりも下流側に配置される。血液ポンプ212は、動脈側ライン21を構成するチューブをローラでしごくことにより、動脈側ライン21の内部の血液やプライミング液等の液体を送り出す。
【0018】
静脈側ライン22は、一端側がダイアライザ10の血液導出口112に接続され、他端側が対象者(透析患者)の静脈に接続される。静脈側ライン22の途中には、静脈側チャンバ222及びコンソール100が配置される。コンソール100において、静脈側ライン22が通る部分には、クランプユニット60が配置される。クランプユニット60における静脈側ライン22が通る部分には、静脈側クランプ部69及び静脈側気泡センサ68が配置される。クランプユニット60の詳細については後述する。
【0019】
静脈側チャンバ222は、静脈側ライン22におけるダイアライザ10とコンソール100との間に配置される。静脈側チャンバ222は、所定量(例えば、20ml)の血液を貯留する。
【0020】
薬剤ライン23は、血液透析中に必要な薬剤を動脈側ライン21に供給する。薬剤ライン23は、一端側(基端側)が薬剤を送り出す薬液ポンプ231に接続され、他端側(先端側)が動脈側ライン21における血液ポンプ212とダイアライザ10との間に接続される。
【0021】
オーバーフローライン24は、一端側(基端側)が静脈側チャンバ222に接続される。オーバーフローライン24は、プライミング工程において静脈側ライン22を流通する生理食塩液、空気等を外部に排出する。オーバーフローライン24には、オーバーフロークランプ241が配置される。オーバーフロークランプ241は、オーバーフローライン24の流路を開閉する。
【0022】
以上の血液回路20によれば、対象者(透析患者)の動脈から取り出された血液は、血液ポンプ212により動脈側ライン21を流通してダイアライザ10の血液側流路に導入される。ダイアライザ10に導入された血液は、透析膜を介して後述する透析液回路30を流通する透析液により浄化される。ダイアライザ10において浄化された血液は、静脈側ライン22を流通して対象者の静脈に返血される。
【0023】
透析液回路30は、本実施形態では、いわゆる密閉容量制御方式の透析液回路30により構成される。この透析液回路30は、透析液チャンバ31と、透析液供給ライン32と、透析液導入ライン33と、透析液導出ライン34と、排液ライン35と、バイパスライン36と、除水/逆ろ過ポンプ37と、を備える。
【0024】
透析液チャンバ31は、一定容量(例えば、300ml~500ml)の透析液を収容可能な硬質の容器311と、この容器311の内部を区画する軟質の隔膜(ダイアフラム)312と、を備える。透析液チャンバ31の内部は、隔膜312により送液収容部313及び排液収容部314に区画される。
【0025】
透析液供給ライン32は、基端側が透析液供給装置(図示せず)に接続され、先端側が透析液チャンバ31に接続される。透析液供給ライン32は、透析液チャンバ31の送液収容部313に透析液を供給する。
【0026】
透析液導入ライン33は、透析液チャンバ31とダイアライザ10の透析液導入口113とを接続し、透析液チャンバ31の送液収容部313に収容された透析液をダイアライザ10の透析液側流路に導入する。
【0027】
透析液導出ライン34は、ダイアライザ10の透析液導出口114と透析液チャンバ31とを接続し、ダイアライザ10から排出された透析液を透析液チャンバ31の排液収容部314に導出する。
排液ライン35は、基端側が透析液チャンバ31に接続され、排液収容部314に収容された透析液の排液を排出する。
【0028】
バイパスライン36は、透析液導出ライン34と排液ライン35とを接続する。
除水/逆ろ過ポンプ37は、バイパスライン36に配置される。除水/逆ろ過ポンプ37は、バイパスライン36の内部の透析液を排液ライン35側に流通させる方向(除水方向)及び透析液導出ライン34側に流通させる方向(逆ろ過方向)に送液可能に駆動するポンプにより構成される。
【0029】
ヒータ40は、透析液回路30を流通する透析液を所定の温度に加温する。
【0030】
補充液ライン38は、透析液を血液回路20に直接供給するためのラインである。
図1に示すように、補充液ライン38の上流側は、透析液回路30の透析液導入ライン33における透析液チャンバ31とダイアライザ10の透析液導入口113との間に接続されている。補充液ライン38には、補充液用クランプ381が設けられている。
図1の実線で示すように、補充液ライン38の下流側が、動脈側ライン21における血液ポンプ212とダイアライザ10との間に接続される場合は、前希釈方式の血液濾過透析となる。また、
図1の破線で示すように、補充液ライン38の下流側が、静脈側ライン22における静脈側チャンバ222に接続される場合は、後希釈方式の血液濾過透析となる。
【0031】
クランプユニット60について説明する。
クランプユニット60は、
図1に示すように、ユニット化されて構成されており、コンソール100に取り付けられる。クランプユニット60は、動脈側ライン21を構成するチューブ、及び静脈側ライン22を構成するチューブをクランプして保持する。クランプユニット60には、幅方向Hの一方側において、動脈側ライン21を構成するチューブが上下方向に亘って配置され、幅方向Hの他方側において、静脈側ライン22を構成するチューブが上下方向に亘って配置される。
【0032】
クランプユニット60は、
図2~
図4に示すように、ユニット本体61と、ユニット本体61を開閉する蓋部62と、ヒンジ部63と、開閉レバー641と、開閉係合部642と、を備える。クランプユニット60は、ユニット本体61の内面に動脈側ライン21を構成するチューブ及び静脈側ライン22を構成するチューブを配置した状態で、ユニット本体61の内面側に蓋部62の内面を押し付けることで、動脈側ライン21を構成するチューブ及び静脈側ライン22を構成するチューブを固定する。
【0033】
蓋部62の内面は、動脈側ライン21を構成するチューブ及び静脈側ライン22を構成するチューブを一定の力で固定するチューブ固定部を構成する。蓋部62の内面を構成する部材において、少なくともチューブを押圧する部分の材料としては、例えば、樹脂材料が用いられ、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、ASA樹脂(ABS樹脂のブタジエンに代替し、アクリルゴムを重合させたもの)、ポリプロピレン等の合成樹脂などが用いられる。これにより、蓋部62の内面は、動脈側ライン21を構成するチューブ及び静脈側ライン22を構成するチューブを、十分に保持すると共につぶし過ぎないような適切な保持力で固定できる。
【0034】
ヒンジ部63は、
図2に示すように、蓋部62の閉鎖時に、クランプユニット60の幅方向Hの他方側の端部に配置され、蓋部62をユニット本体61に対して回動可能に接続する。
【0035】
開閉レバー641は、蓋部62の閉鎖時に、蓋部62の幅方向Hの一方側の端部に設けられる。開閉係合部642は、
図3に示すように、蓋部62の閉鎖時に、開閉レバー641に係合可能に、ユニット本体61の内面の幅方向Hの一方側の端部に設けられる。開閉レバー641を操作することで、ユニット本体61と蓋部62との開閉が行われる。
【0036】
ユニット本体61の内面には、
図3に示すように、本体側動脈側チューブ配置部611(チューブ配置部)と、本体側静脈側チューブ配置部612(チューブ配置部)と、が形成されている。本体側動脈側チューブ配置部611及び本体側静脈側チューブ配置部612は、ユニット本体61の内面において、ユニット本体61の幅方向Hに離間して配置され、直線状に延びる。本体側静脈側チューブ配置部612は、本体側動脈側チューブ配置部611よりも幅方向Hにおけるヒンジ部63側に配置される。
【0037】
また、蓋部62の内面には、
図3に示すように、蓋部62の閉鎖時に、本体側動脈側チューブ配置部611に対向して配置される蓋部側動脈側チューブ配置部621と、本体側静脈側チューブ配置部612に対向して配置される蓋部側静脈側チューブ配置部622と、が形成されている。蓋部側動脈側チューブ配置部621及び蓋部側静脈側チューブ配置部622は、蓋部62の内面において、蓋部62の幅方向Hに離間して配置され、直線状に延びる。蓋部側静脈側チューブ配置部622は、蓋部側動脈側チューブ配置部621よりも幅方向Hのヒンジ部63側に配置される。
【0038】
蓋部62の閉鎖時において、本体側動脈側チューブ配置部611と蓋部側動脈側チューブ配置部621との間には、動脈側ライン21を構成するチューブが配置され、本体側静脈側チューブ配置部612と蓋部側静脈側チューブ配置部622との間には、静脈側ライン22を構成するチューブが配置される。
【0039】
ここで、まず、本体側動脈側チューブ配置部611及び蓋部側動脈側チューブ配置部621に設けられる構成について説明する。
図3及び
図5に示すように、蓋部62の閉鎖時において、本体側動脈側チューブ配置部611及び蓋部側動脈側チューブ配置部621に沿って、動脈側上流チューブ押さえ部601、動脈側クランプ部65、荷重検出部66、動脈側気泡センサ67及び動脈側下流チューブ押さえ部602が配置される。本実施形態においては、動脈側上流チューブ押さえ部601、動脈側クランプ部65、荷重検出部66、動脈側気泡センサ67及び動脈側下流チューブ押さえ部602は、クランプユニット60において、上流側から下流側(
図1及び
図3における下方側から上方側)に向かって、この順に並んで配置されている。
【0040】
本体側動脈側チューブ配置部611は、
図3に示すように、ユニット本体61の内面に配置される。本体側動脈側チューブ配置部611には、動脈側ライン21を構成するチューブを流通する液体の上流側から下流側(
図3の下方側から上方側)に向かって順に、動脈側上流チューブ押さえ部601の収容凹部601a、動脈側クランプ部65の動脈側可動クランプ部651、荷重検出部66のフォースセンサへ荷重を与える軸661(フォースセンサ自体は不図示、以降はフォースセンサ661と記載)に荷重を伝達する荷重受け部662、動脈側気泡センサ67の超音波発振部671が内部に収容された動脈側気泡センサ受け部材672、動脈側下流チューブ押さえ部602の収容凹部602aが並んで配置される。
【0041】
蓋部側動脈側チューブ配置部621は、蓋部62の内面に配置され、蓋部62の閉鎖時に本体側動脈側チューブ配置部611に対向して配置される。蓋部側動脈側チューブ配置部621には、動脈側ライン21を構成するチューブを流通する液体の上流側から下流側(
図3の下方側から上方側)に向かって順に、動脈側上流チューブ押さえ部601の押さえ凸部601b、動脈側クランプ部65の動脈側クランプ受け部652、荷重検出部66の荷重押さえ部663、動脈側気泡センサ67の超音波受信部673が内部に収容された動脈側気泡センサ押さえ部材674、動脈側下流チューブ押さえ部602の押さえ凸部602bが並んで配置されている。
【0042】
動脈側上流チューブ押さえ部601の押さえ凸部601bは、蓋部62の閉鎖時に、ユニット本体61に配置される収容凹部601aに対向して配置され、クランプユニット60における動脈側ライン21を流通する液体の上流側(
図3における下方側)において、動脈側ライン21を構成するチューブを押さえる。
【0043】
動脈側クランプ受け部652は、蓋部62の閉鎖時において、ユニット本体61に配置される動脈側可動クランプ部651に対向して配置される。動脈側クランプ受け部652及び動脈側可動クランプ部651は、動脈側クランプ部65を構成し、動脈側ライン21を構成するチューブを挟んで保持する。
【0044】
動脈側クランプ部65は、
図3及び
図5に示すように、ユニット本体61に配置される動脈側可動クランプ部651と、ユニット本体61に配置され動脈側可動クランプ部651を駆動するソレノイド653と、蓋部62に配置される動脈側クランプ受け部652と、を有する。動脈側クランプ受け部652は、蓋部62の内面から突出して形成され、幅方向Hに延びる。
【0045】
動脈側可動クランプ部651は、
図5に示すように、先端が幅方向Hに延びる平面状に形成されると共にチューブ配置部が延びる方向に切断した断面において先端側の幅が狭い台形状に形成される。動脈側可動クランプ部651の後端には、ソレノイド653の出力軸653aが、進退可能に接続されている。動脈側可動クランプ部651は、ソレノイド653の出力軸653aの進退により、動脈側ライン21を構成するチューブを、動脈側可動クランプ部651の先端及び動脈側クランプ受け部652の先端で挟み込んでクランプし、又は、動脈側ライン21を開閉する。
【0046】
以上のように構成される動脈側クランプ部65は、血液透析装置1の通常動作時に、動脈側可動クランプ部651及び動脈側クランプ受け部652により、ユニット本体61と蓋部62との間に配置される動脈側ライン21を構成するチューブをクランプする。
また、動脈側クランプ部65は、生理食塩水を用いたプライミング及び返血工程で開閉される。動脈側クランプ部65は、動脈側可動クランプ部651を進退させて、動脈側ライン21を構成するチューブを押し潰したり開放し、動脈側ライン21の流路を開閉することで、動脈側気泡センサ67よりも上流側において、チューブの内部を流通する液体の送液を流通/停止させる。
【0047】
荷重押さえ部663は、
図3、
図5及び
図6に示すように、蓋部62の閉鎖時に、ユニット本体61に配置される荷重受け部662に対向して配置され、動脈側ライン21を構成するチューブを押さえる。ユニット本体61に配置される荷重受け部662の内部には、荷重検出部66が配置される。なお、荷重押さえ部663は、チューブの径を変更した場合に、荷重検出部66から出力される電圧値が同程度の電圧値を得られるように、高さ調整を可能な構成としてもよいし、高さが異なる荷重押さえ部に交換可能な構成としてもよい。
【0048】
荷重検出部66は、動脈側ライン21を構成するチューブからの圧力による荷重を検出し、電圧値として出力可能である。荷重検出部66は、荷重受け部662と、フォースセンサ661と、を有する。
【0049】
荷重受け部662は、蓋部62の閉鎖時に、荷重押さえ部663に押さえられた動脈側ライン21を構成するチューブからの圧力を受ける。
フォースセンサ661は、ユニット本体61において、荷重受け部662の内部側に配置される。フォースセンサ661は、荷重受け部662に作用するチューブからの圧力によりチューブの径方向に荷重受け部662が移動することで、荷重受け部662を介して、チューブからの圧力による荷重を検出する。これにより、フォースセンサ661は、動脈側ライン21を構成するチューブの圧力による荷重を電圧として出力する。
【0050】
以上のように構成される荷重検出部66は、蓋部62の閉鎖時に、蓋部62が動脈側ライン21を構成するチューブをフォースセンサ661側に押さえ付けることで、フォースセンサ661がチューブからの圧力による荷重を検出して、荷重を電圧値として出力する。荷重検出部66により検出された検出値は、後述する制御装置50の閉塞判定部511に送信されて、閉塞判定部511により、チューブが閉塞しているか否かが判定される。チューブが閉塞する場合としては、例えば、血液回路の接続後において鉗子を外し忘れた場合や、治療中の返血時の血栓による針先の詰まりや、脱血/透析時の針先の血管壁への張り付きや、脱血/透析/返血時の血管状態による血流量不足などを挙げることができる。
【0051】
動脈側気泡センサ押さえ部材674は、蓋部62の閉鎖時において、ユニット本体61に配置される動脈側気泡センサ受け部材672に対向して配置され、動脈側ライン21を構成するチューブを押さえる。動脈側気泡センサ押さえ部材674の内部には、超音波受信部673が配置される。動脈側気泡センサ受け部材672の内部には、超音波発振部671が配置される。超音波受信部673及び超音波発振部671は、動脈側気泡センサ67を構成する。動脈側気泡センサ67は、動脈側ライン21の内部を流通する液体中に含まれる気泡の有無を検知するセンサである。なお、超音波受信部673を動脈側気泡センサ受け部材672の内部に配置すると共に、超音波発振部671を動脈側気泡センサ押さえ部材674の内部に配置するように構成してもよい。
【0052】
図4に示すように、蓋部62の閉鎖時に、動脈側気泡センサ押さえ部材674(
図3参照)は、動脈側ライン21を構成するチューブを動脈側気泡センサ受け部材672側に押し当てる。超音波発振部671は、超音波受信部673から発生される超音波が動脈側ライン21を構成するチューブ内に流れる液体に照射されることで、液体と気泡の透過率の差を検出して気泡の有無を検知する。
【0053】
動脈側下流チューブ押さえ部602の押さえ凸部602bは、蓋部62の閉鎖時において、ユニット本体61に配置される収容凹部602aに対向して配置され、クランプユニット60における動脈側ライン21を流通する液体の下流側(
図3における上方側)において、動脈側ライン21を構成するチューブを押さえる。
【0054】
次に、蓋部62の閉鎖時に、本体側静脈側チューブ配置部612及び蓋部側静脈側チューブ配置部622に設けられる構成について説明する。
図3に示すように、蓋部62の閉鎖時において、本体側静脈側チューブ配置部612及び蓋部側静脈側チューブ配置部622に沿って、静脈側上流チューブ押さえ部603、静脈側気泡センサ68、静脈側クランプ部69及び静脈側下流チューブ押さえ部604が配置される。本実施形態においては、静脈側上流チューブ押さえ部603、静脈側気泡センサ68、静脈側クランプ部69及び静脈側下流チューブ押さえ部604は、クランプユニット60において、上流側から下流側(
図1及び
図3における上方側から下方側)に向かって、この順に並んで配置されている。
【0055】
本体側静脈側チューブ配置部612は、
図3に示すように、ユニット本体61の内面に配置される。本体側静脈側チューブ配置部612には、静脈側ライン22を構成するチューブを流通する液体の上流側から下流側(
図3の上方側から下方側)に向かって順に、静脈側上流チューブ押さえ部603の収容凹部603a、静脈側気泡センサ68の超音波発振部681が内部に収容された静脈側気泡センサ受け部材682、静脈側クランプ部69の静脈側可動クランプ部691、静脈側下流チューブ押さえ部604の収容凹部604aが並んで配置される。
【0056】
蓋部側静脈側チューブ配置部622は、蓋部62の内面に配置され、蓋部62の閉鎖時に本体側静脈側チューブ配置部612に対向して配置される。蓋部側静脈側チューブ配置部622には、静脈側ライン22を構成するチューブを流通する液体の上流側から下流側(
図3の上方側から下方側)に向かって順に、静脈側上流チューブ押さえ部603の押さえ凸部603b、静脈側気泡センサ68の超音波受信部683が内部に収容された静脈側気泡センサ押さえ部材684、静脈側クランプ部69の静脈側クランプ受け部692、静脈側下流チューブ押さえ部604の押さえ凸部604bが並んで配置されている。
【0057】
静脈側上流チューブ押さえ部603の押さえ凸部603bは、蓋部62の閉鎖時に、ユニット本体61に配置される収容凹部603aに対向して配置され、クランプユニット60における静脈側ライン22を流通する液体の上流側(
図3における上方側)において、静脈側ライン22を構成するチューブを押さえる。
【0058】
静脈側気泡センサ押さえ部材684は、蓋部62の閉鎖時において、ユニット本体61に配置される静脈側気泡センサ受け部材682に対向して配置され、静脈側ライン22を構成するチューブを押さえる。静脈側気泡センサ押さえ部材684の内部には、超音波受信部683が配置される。静脈側気泡センサ受け部材682の内部には、超音波発振部681が配置される。超音波受信部683及び超音波発振部681は、静脈側気泡センサ68を構成する。静脈側気泡センサ68は、静脈側ライン22の内部を流通する液体中に含まれる気泡の有無を検知するセンサである。なお、超音波受信部683を静脈側気泡センサ受け部材682の内部に配置すると共に、超音波発振部681を静脈側気泡センサ受け部材684の内部に配置するように構成してもよい。
【0059】
図4に示すように、蓋部62の閉鎖時に、静脈側気泡センサ押さえ部材684(
図3参照)は、静脈側ライン22を構成するチューブを静脈側気泡センサ受け部材682側に押し当てる。超音波発振部681は、超音波受信部683から発生される超音波が静脈側ライン22を構成するチューブ内に流れる液体に照射されることで、液体と気泡の透過率の差を検出して気泡の有無を検知する。
【0060】
静脈側クランプ受け部692は、蓋部62の閉鎖時において、ユニット本体61に配置される静脈側可動クランプ部691に対向して配置される。静脈側クランプ受け部692及び静脈側可動クランプ部691は、静脈側クランプ部69を構成し、静脈側ライン22を構成するチューブを挟んで保持する。
【0061】
静脈側クランプ部69は、
図3及び
図6に示すように、ユニット本体61に配置される静脈側可動クランプ部691と、ユニット本体61に配置され静脈側可動クランプ部691を駆動するソレノイド693と、蓋部62に配置される静脈側クランプ受け部692と、を有する。静脈側クランプ受け部692は、蓋部62の内面から突出して形成され、幅方向Hに延びる。
【0062】
静脈側可動クランプ部691は、先端が幅方向Hに延びる平面状に形成されると共にチューブ配置部が延びる方向に切断した断面において先端側の幅が狭い台形状に形成される。静脈側可動クランプ部691の後端には、ソレノイド693の出力軸693aが、進退可能に接続されている。静脈側可動クランプ部691は、ソレノイド693の出力軸693aの進退により、静脈側ライン22を構成するチューブを、静脈側可動クランプ部691の先端及び静脈側クランプ受け部692の先端で挟み込んでクランプし、又は、静脈側ライン22を開閉する。
【0063】
以上のように構成される静脈側クランプ部69は、血液透析装置1の通常動作時に、静脈側可動クランプ部691及び静脈側クランプ受け部692により、ユニット本体61と蓋部62との間に配置される静脈側ライン22を構成するチューブをクランプする。
また、静脈側クランプ部69は、静脈側気泡センサ68または動脈側気泡センサ67による気泡の検出結果に応じて制御される。静脈側クランプ部69は、静脈側気泡センサ68または動脈側気泡センサ67により気泡が所定量よりも多く検出された場合に、静脈側可動クランプ部691を進出させて、静脈側ライン22を構成するチューブを押し潰して、静脈側ライン22の流路を閉鎖することで、静脈側気泡センサ68よりも上流側において、チューブの内部を流通する液体の送液を停止させる。
【0064】
静脈側下流チューブ押さえ部604の押さえ凸部604bは、蓋部62の閉鎖時において、ユニット本体61に配置される収容凹部604aに対向して配置され、クランプユニット60における静脈側ライン22を流通する液体の下流側(
図3における下方側)において、静脈側ライン22を構成するチューブを押さえる。
【0065】
以上のように構成されるクランプユニット60は、動脈側ライン21を構成するチューブ及び静脈側ライン22を構成するチューブをユニット本体61に配置した状態で、蓋部62を閉鎖するだけで、クランプユニット60においてチューブを確実にクランプすることができる。
【0066】
制御装置50は、情報処理装置(コンピュータ)により構成されており、制御プログラムを実行することにより、透析装置1の動作を制御する。制御装置50は、以下に説明する各工程の制御プログラムを実行することにより、血液透析装置1の動作を制御して運転する。具体的には、制御装置50は、血液回路20及び透析液回路30に配置された各種のポンプやクランプ、並びにヒータ40等の動作を制御して、血液透析装置1により行われる各種工程(プライミング工程、脱血工程、透析工程、補液工程、返血工程等)を実行する。本実施形態の血液透析装置1の各種工程において、例えば、プライミング工程、脱血工程、透析工程、返血工程は、この順に実行され、これらの全工程の実行時間は、4から5時間程度要する。
【0067】
プライミング工程は、血液回路20やダイアライザ10を洗浄し清浄化する準備工程である。
脱血工程は、穿刺後に患者の血液を血液回路20に充填させて体外循環させる工程である。
透析工程は、脱血工程に続いて行われ、血液を透析して浄化する工程である。
補液工程は、透析治療中において血圧低下時等に行う急速補液を行う工程である。
返血工程は、血液回路20内の血液を患者の体内に戻す工程である。
【0068】
ここで、本実施形態においては、制御装置50は、チューブの閉塞を判定する操作と、チューブの使用の経過時間に応じて基準電圧(基準値)を補正する操作と、チューブの硬度がクランプユニット60に使用されるチューブの硬度に適合しない場合に警報を報知する操作と、を実現している。
以上の機能を実現するために、制御装置50は、
図7に示すように、制御部51と、記憶部52と、を備える。制御部51は、閉塞判定部511と、補正制御部512と、報知制御部513と、を備える。
【0069】
記憶部52は、チューブを液体が流通する経過時間に応じたチューブの閉塞を判定するための基準となる基準電圧(基準値)を予め記憶する。基準電圧は、チューブの閉塞を判定するための基準となるものであり、チューブ内に圧力を掛けていない状態(血液ポンプ212を停止している状態)における荷重検出部66の出力電圧であって、チューブが閉塞していない状態での出力電圧である。基準電圧を基準に、例えば一定電圧減じた値を、チューブが陰圧となった場合の荷重検出部66の出力電圧の閾値に設定し、一定電圧加えた値を、チューブが陽圧となった場合の荷重検出部66の出力電圧の閾値に設定できる。または、陰圧や陽圧も考慮して、一定電圧の絶対値を加減した範囲での値を各種工程での閾値としてもよい。これにより、チューブが経過時間とともに液体や温度変化によりなじんできた場合であっても、後述する補正制御部512により、記憶部52に記憶された基準電圧に更新できる。記憶部52に記憶される基準電圧は、後述するように、予め実験結果などにより求められる。
なお、記憶部52は、チューブの外形サイズの違いや温度変化などに応じたチューブの閉塞を判定するための基準となる基準電圧(基準値)を予め記憶していてもよい。
【0070】
閉塞判定部511は、荷重検出部66により検出された検出値とチューブの閉塞を判定するための基準となる基準電圧に基づいて設定された閉塞閾値とを比較することで、チューブの閉塞を判定する。
【0071】
補正制御部512は、記憶部52に記憶されたチューブの閉塞を判定するための基準となる基準電圧に基づいて、経過時間に応じて基準電圧を更新して補正する。補正制御部512による補正のタイミングは、例えば、リアルタイムのタイミングや、所定時間間隔毎のタイミングや、透析治療の所定のタイミングなどに行われる。
【0072】
報知制御部513は、閉塞判定部511により、チューブが閉塞していると判定された場合に、例えば表示画面や表示灯やスピーカなどの報知部において、警報を報知する。
【0073】
また、報知制御部513は、蓋部62の閉鎖時に荷重検出部66により検出された検出値が予め設定された範囲を外れると判定された場合に、例えば表示画面や表示灯やスピーカなどの報知部において、警報を報知する。これにより、チューブの硬度や径、肉厚が適切でない場合やチューブが変形している場合に、警報が報知されるため、適切な状態のチューブを使用でき、荷重検出部66により検出される検出値を精度よく得ることができる。
【0074】
ここで、上記本実施形態の動脈側の血液回路において、荷重検出部66(フォースセンサ661)を用いてチューブからの荷重を検出する構成と、荷重検出部66により検出された検出値に基づいて閉塞判定部511によりチューブの閉塞を判定する制御と、を導入した理由について説明する。
【0075】
血液透析装置1においては、プライミング/脱血/透析/返血などの各工程が実行される。各工程で使用するチューブの閉塞は、例えば、血液回路の接続後の鉗子外し忘れや、治療中の返血時の血栓による針先の詰まりや、脱血/治療時の針先の血管壁へ張り付きや、脱血/治療/返血時の血管状態による血流量不足などにより発生する。チューブの閉塞は、脱血不良による透析効率低下や、返血時の液漏れの発生などのリスクの要因となる。
【0076】
従来より、例えば、チューブの閉塞の確認する方法として、動脈側の血液回路にチャンバを配置し、チャンバ内の圧力を圧力センサで測定することで、チューブの閉塞を確認している。また、例えば、動脈側の血液回路にピローを配置して、ピローの形状変化(へこみ、膨ら)を医療従事者が目視することにより、チューブの閉塞を確認している。透析治療では人体から血液をチューブ内へ引き込むため、チューブ内は陰圧となるが、例えば針先が血管壁に張り付くと、チューブ内は急激に陰圧になる。また、返血時はチューブ内の血液を人体に押し出すため、例えば針先に血栓が詰まると、チューブ内は急激に陽圧になる。
【0077】
ここで、チャンバやピローは長時間の透析により血栓ができる要因となるため、例えば全自動の血液透析装置において、返血時にチャンバ内の血栓が流れて針先に詰まることで、チューブの閉塞につながる可能性があった。また、ピローでの閉塞の確認は、医療従事者の目視による閉塞の判断が必要となる。また、動脈側の血液回路の閉塞を検出するために、静脈側の血液回路により動脈側の血液回路の閉塞を間接的に検出することも行われている。しかし、動脈側の血液回路の閉塞を精度よく長時間に渡って検出するためには、動脈側の血液回路の閉塞を直接検出することが好ましい。
従って、本発明では、動脈側の血液回路の閉塞を検出する構成として、動脈側の血液回路にチャンバやピローなどを備えずに、荷重検出部66(フォースセンサ661)を用いて閉塞を検出する構成を導入した。
【0078】
また、本発明において、記憶部52に、「チューブを液体が流通する経過時間に応じたチューブの閉塞を判定するための基準となる基準電圧(基準値)」を予め記憶させておき、補正制御部512により経過時間に応じて基準電圧を更新する補正を行う理由について説明する。
【0079】
従来より、血液透析装置に用いるチューブの材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)が用いられる。ポリ塩化ビニル(PVC)に混ぜる可塑剤の量などをコントロールすることで、チューブの柔らかさを変えることが可能である。しかし、血液透析装置においてはチューブの取り回しが複雑であり、チューブが柔らかいとチューブが潰れたり折れ曲がるリスクが高くなる。
【0080】
血液透析装置に利用されるチューブのJIS硬度は、一般的に、75以上(100以下)のものを用いるものが主流となっており、硬いチューブの場合は、荷重検出部66の出力電圧の変化が緩やかで、出力電圧が安定するまでに時間を要する。また、血液透析装置による透析治療には4から5時間程度の時間を要する。
【0081】
そのため、従来、荷重検出部66により検出される出力電圧に基づいてチューブの閉塞を判定する場合に、血液透析装置1にチューブを長時間使用すると、チューブが液体や温度変化によりなじんでいく。そのため、チューブからの圧力による荷重が変化することで、荷重検出部66により検出される出力電圧が変化して、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができない場合があった。
【0082】
ここで、チューブの硬度の違い及び時間経過によって、荷重検出部66により検出される出力電圧が変化することについて説明する。チューブの硬度の違いによる荷重検出部66により検出される出力電圧の時間変位を検証するために、硬度の異なるチューブについて、チューブを荷重検出部66により検出される出力電圧の時間経過による変位を測定した。径のサイズと肉厚のサイズが同様のチューブを使用して、チューブの硬度は、チューブTu1、Tu2、Tu3の順に高い(Tu1>Tu2>Tu3)ものを使用した。
【0083】
この場合に、
図8に示すように、チューブの硬度が高い(Tu1>Tu2>Tu3)ほど、荷重検出部66により検出される出力電圧が高く、チューブの硬度が高い(Tu1>Tu2>Tu3)ほど、荷重検出部66により検出される出力電圧が安定するまでに時間を要する。つまり、チューブが柔らかいほど、荷重検出部66により検出される出力電圧は、安定するまでの時間が短い。また、チューブの硬度の違いがあっても、いずれの硬度の場合においても、荷重検出部66により検出される出力電圧は、初期のみ、出力電圧の上昇及び下降の変動が大きく、経過時間とともに、出力電圧の変動が小さくなり安定に近づく。つまり、時間経過とともにチューブが液体や温度変化によりなじんで、荷重検出部66により検出される出力電圧も経過時間とともに安定していく。
【0084】
そのため、チューブにおける荷重検出部66により検出される出力電圧が変化することから、チューブの閉塞の判定を行う場合に、チューブが閉塞していないにもかかわらず、チューブが閉塞されていると誤判定されることがある。これを解決するために、本発明においては、記憶部52に、「チューブを液体が流通する経過時間に応じたチューブの閉塞を判定するための基準となる基準電圧(基準値)」を予め記憶させておき、補正制御部512により経過時間に応じて基準電圧を更新する補正を行うように構成した。
【0085】
次に、
図9及び
図10により、時間経過とともに液体にチューブがなじむことにより、チューブの閉塞を判定する閾値を変更しない場合には、チューブの閉塞の誤判定が生じ、時間経過に応じて基準電圧を更新することで、チューブの閉塞の判定を精度よく行えることについて説明する。
【0086】
図9及び
図10において、横軸を血液ポンプ212により印加した圧力とし、縦軸を荷重検出部66による出力電圧とする。そして、
図9及び
図10において、各時間経過(透析開始時、1時間経過後、2時間経過後、3時間経過後)について、チューブの圧力と出力電圧との関係を示している。ここで、時間の経過に伴って、チューブが液体や温度変化によりなじむことで、荷重検出部66による出力電圧は、低下している(透析開始時>1時間経過後>2時間経過後>3時間経過後)。また、圧力が0mmHgの場合は、血液ポンプ212を停止している状態である。
【0087】
チューブの閉塞を判定する場合に、例えば、
図9に示すように、透析開始前に基準電圧Vkaを確定し、透析開始時において、圧力が例えば「-400mmHg」を下回った場合に閉塞と判定するように基準電圧Vkaから一定電圧Vcを減算した値を閾値Vsaとする。この場合に、基準電圧Vkaを変更せずに、時間が経過すると、
図9に示すように、1時間経過後には、チューブの圧力が、例えば「-200mmHg」を下回った場合に閾値Vsa以下となり(丸破線NG1)、2時間経過後には、例えば「-100mmHg」を下回った場合に閾値Vsa以下となる(NG2)。そのため、基準電圧を変更しない場合には、チューブの閉塞状態が変化していなくても、1時間経過後及び2時間経過後において、チューブが閉塞であると誤判定する。
【0088】
これに対して、例えば、透析開始前の基準電圧Vkaを、2時間経過後において、
図10に示すように、Vhだけ下げた基準電圧Vkbに更新する。そして、圧力が例えば「-400mmHg」を下回った場合に閉塞と判定するように、基準電圧Vkbから一定電圧Vcを減算した値を閾値Vsbとする。これにより、2時間経過後には、チューブの圧力が、例えば「-200mmHg」を下回った場合や「-300mmHg」を下回った場合であっても閾値Vsb以下とはならず、-400mmHgで閾値Vsbを下回る。そのため、基準電圧を変更することで、所望のチューブの圧力でチューブの閉塞を判定することができる。よって、経過時間に応じて、基準電圧を更新することで、長時間にわたって誤検出のないように、チューブの閉塞を判定することができる。
【0089】
そのため、本発明においては、記憶部52には、予め実験等により求めた経過時間に対する基準電圧を記憶させておく。具体的には、予め実験等により、血液ポンプを停止した状態で、荷重検出部66により検出される出力電圧の基準電圧を、経過時間に応じて計測し、記憶部52に、基準電圧として記憶させる。例えば、
図11に示すように、基準電圧について、経過時間が短いときには低下率を大きく、経過時間が長くなると変化率が緩やかに小さくなるようにして、例えば、4時間以降は、ほぼ安定するように設定する。これにより、チューブが液体や温度変化によりなじむことを考慮した基準電圧を設定できることを、実験により確認できた。本発明では、実験等により求められた経過時間に応じたチューブの基準電圧を記憶部52に記憶させる。
【0090】
そして、記憶部52に記憶された基準電圧に基づいて、経過時間に応じて更新して補正することで、閉塞判定部511は、経過時間に応じて補正された基準電圧に基づいて、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができる。これにより、経過時間とともにチューブが液体や温度変化によりなじんでくることで、荷重検出部66に検出された出力電圧が変化しても、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができる。
【0091】
例えば、
図12(a)~(c)に示すように、基準電圧を更新する補正を行うことで、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができる。
図12(a)~(c)において、Vkを基準電圧とし、Vaを基準電圧Vkから所定電圧を減じた脱血時・透析時の閾値とし、Vbを基準電圧Vkに所定電圧を加えた返血時の閾値とした。また、Vsが荷重検出部66により検出される出力電圧を示す。なお、
図12において、基準電圧Vkと出力電圧Vsとは、チューブが閉塞していない場合には一致するように動作させるが、グラフの見易さの観点から、出力電圧Vsを少しずらして記載する。
【0092】
例えば、
図12(a)に示すように、チューブが閉塞していない場合には、経過時間に応じて基準電圧Vkを更新する補正を行うことで、荷重検出部66により検出される出力電圧Vsは、基準電圧Vkに追従して変化する。
また、
図12(b)に示すように、脱血中又は透析中にチューブが閉塞した場合には、荷重検出部66により検出される出力電圧Vsは、時間Taを過ぎたときに、閾値Vaを下回るため、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができる。
また、
図12(c)に示すように、返血中にチューブが閉塞した場合には、荷重検出部66により検出される出力電圧Vsは、時間Tbを過ぎたときに、閾値Vbを上回るため、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができる。
【0093】
また、例えば、
図13(a)~(c)に示すように、基準電圧を更新する補正を行わない場合には、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができない。
例えば、
図13(a)に示すように、基準電圧を更新する補正を行わないで時間が経過した場合に、時間Tcを過ぎたときに、荷重検出部66により検出される出力電圧Vsは、返血時の閾値Vaを下回っている。そのため、チューブが閉塞しなくても、チューブの閉塞を検出してしまい、誤検出となる。
また、
図13(b)及び
図13(c)に示すように、基準電圧を更新する補正を行わないで時間が経過した場合に、時間Tcを過ぎたときに、閾値Vaを下回るため、チューブが閉塞したタイミングとは異なるタイミングでチューブの閉塞を検出してしまう。そのため、その後に、脱血中又は透析中にチューブが閉塞しても、チューブが実際に閉塞したタイミングではチューブの閉塞を検出できない。
【0094】
このように、本発明においては、補正制御部512は、記憶部52に記憶されたチューブの閉塞を判定するための基準となる基準電圧に基づいて、経過時間に応じて基準電圧を更新して補正する制御を行うように構成した。これにより、動脈側の血液回路において、チャンバやピローなどを使用せずに、経過時間とともにチューブが液体や温度変化によりなじんでくることで、荷重検出部66に検出された出力電圧が変化しても、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができる。また、記憶部52がチューブの閉塞を判定するための基準となる基準電圧を記憶し、記憶部52に記憶された基準電圧に基づいて、補正制御部512により経過時間に応じて基準電圧を更新して補正しているため、動脈側において、血液ポンプを停止させずに、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができる。血液ポンプを停止させないため、透析に要する時間を延ばすことがない。また、血液ポンプ212の停止による血液凝固のリスクを回避できるため、チューブの閉塞の判定を精度よく行うことができる。
【0095】
次に、クランプユニット60により、動脈側ライン21を構成するチューブをクランプして、荷重検出部66による検出を行うこと及び動脈側気泡センサ67による検知を行うことの利点について説明する。
【0096】
本実施形態においては、クランプユニット60における本体側動脈側チューブ配置部611と蓋部側動脈側チューブ配置部621とに挟まれる部分において、動脈側ライン21が通る部分には、動脈側クランプ部65、荷重検出部66及び動脈側気泡センサ67が並んで配置されている。医療従事者がクランプユニット60にチューブをクランプさせる場合に、蓋部62を閉鎖するだけで、動脈側クランプ部65においてチューブを固定することができる。よって、医療従事者は、動脈側気泡センサ67による気泡の有無を検知や、荷重検出部66によるチューブの荷重の検出を行うためのセッティングを簡単に行うことができる。また、動脈側クランプ部65、荷重検出部66及び動脈側気泡センサ67が並んで配置されているため、荷重検出部66によるチューブの荷重の検出や、動脈側気泡センサ67による気泡の有無の検知を、動脈側クランプ部65においてチューブを固定した近くで、精度よく行うことができる。
【0097】
ここで、前述のようにチューブが柔らかいほど、荷重検出部66により検出される出力電圧は、安定するまでの時間が短い。そのため、荷重検出部66によるチューブの荷重の検出に使用されるチューブは、出力電圧の安定までの時間を速くするために、柔らかいものが好ましい。
【0098】
その一方で、本実施形態では、クランプユニット60において荷重検出部66及び動脈側気泡センサ67が並んで配置されており、荷重検出部66と動脈側気泡センサ67との間の距離が短くなりがちである。ここで、荷重検出部66及び動脈側気泡センサ67が並んで配置されているため、チューブが柔らか過ぎる場合に、チューブが閉塞した際にチューブが潰れて、荷重検出部66によりチューブの荷重を検出してチューブの閉塞が判定される前に、動脈側気泡センサ67において、チューブに気泡が存在しないにもかかわらず気泡が存在するという誤検知がなされる場合があることが確認された。より具体的には、チューブの硬度が低い場合に、透析治療で36℃の血液等が流れると、チューブに流れる血液等の温度が高いため、チューブが更に柔らかくなってしまう。その時にチューブの閉塞が発生した場合、チューブ内が陰圧となると、チューブが潰れてしまう状況が確認された。ここで、超音波方式の気泡センサは、チューブにセンサ信号を伝達する部分を密着させてチューブを介して超音波を送受信しているため、チューブが潰れてしまうと、気泡センサとチューブとの間に隙間が発生して超音波を受信できなくなる。この状態は、気泡が入った場合に受信電圧が得られない状態と同じ状態であるため、動脈側気泡センサ67において、誤検知となる。そのため、動脈側気泡センサ67による気泡の有無の検知に使用されるチューブは、長時間の透析治療においても誤検知がないように、ある程度、潰れにくい硬いものが好ましい。
【0099】
そこで、本実施形態においては、クランプユニット60を構成して、荷重検出部66及び動脈側気泡センサ67を並んで配置した場合には、荷重検出部66による検出及び動脈側気泡センサ67による検知を精度よく安定して行えるように、チューブの硬度を選定する必要がある。ここで、動脈側気泡センサ67による気泡の有無の検知を行う部分と、荷重検出部66によるチューブの荷重の検出を行う部分とにおいて、異なる材質のチューブを使用することも可能ではあるが、異なる材質のチューブを使用するとコストが上昇することになり、実用的ではない。
【0100】
そのため、本実施形態においては、動脈側気泡センサ67と荷重検出部66とが並んで配置されるクランプユニット60を使用する場合には、荷重検出部66によるチューブの荷重の検出と動脈側気泡センサ67による気泡の検知を精度よく行うために、荷重検出部66による荷重の検出にはチューブの硬度が小さいことが好ましい点と、チューブの硬度が小さすぎると、動脈側気泡センサ67による気泡の検出に誤検出の可能性がある点とを考慮して、チューブの硬度をある程度高くする。これにより、動脈側気泡センサ67と荷重検出部66とが並んで近くに配置されていても、荷重検出部66による荷重の検出を精度よく行えると共に、動脈側気泡センサ67において気泡の検出を精度よく行える。
【0101】
例えば、このような観点からチューブの硬度を選定する場合に、チューブの材質にポリ塩化ビニル(PVC)を使用した場合に、実験により、例えば、チューブの径の内径が、3.3~4.7mm、肉厚が、0.9~1.3mm、JIS硬度が、67~73が好ましいことを得た。本実施形態においては、チューブとして、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)で形成され、内径が、3.3mm、JIS硬度が、70程度、肉厚が、1.1mmのものを使用した。
【0102】
以上説明した本実施形態のクランプユニット60及び血液透析装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0103】
(1)クランプユニット60は、ユニット本体61と、ユニット本体61を開閉する蓋部62と、を備え、蓋部62の閉鎖時に、ユニット本体61と蓋部62との間に配置される液体が流通するチューブをクランプする動脈側クランプ部65と、チューブが配置される本体側動脈側チューブ配置部611及び蓋部側動脈側チューブ配置部621において動脈側クランプ部65に並んで配置され、チューブからの圧力による荷重を検出する荷重検出部66と、を備える。これにより、医療従事者がチューブをクランプユニット60にセッティングする際に、蓋部62を閉鎖するだけで、動脈側クランプ部65においてチューブを固定することができる。よって、医療従事者は、荷重検出部66によるチューブの荷重の検出を行うためのセッティングを簡単に行うことができる。そして、チューブの閉塞を判定するために、チューブを安定して保持できる。また、動脈側クランプ部65及び荷重検出部66が並んで配置されているため、荷重検出部66によるチューブの荷重の検出を、動脈側クランプ部65の近くで、精度よく行うことができる。
【0104】
(2)チューブの内部を流通する液体中に含まれる気泡を検知する動脈側気泡センサ67を、本体側動脈側チューブ配置部611及び蓋部側動脈側チューブ配置部621において荷重検出部66に並んで配置されるように構成した。これにより、蓋部62を閉鎖するだけで、医療従事者は、動脈側気泡センサ67による気泡の有無の検知を行うためのセッティングを簡単に行うことができる。また、動脈側クランプ部65、荷重検出部66及び動脈側気泡センサ67が並んで配置されているため、荷重検出部66によるチューブの荷重の検出や、動脈側気泡センサ67による気泡の有無の検知を、動脈側クランプ部65の近くで、精度よく行うことができる。
【0105】
以上、本発明のクランプユニット及び血液透析装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 血液透析装置(透析装置)
61 ユニット本体
62 蓋部
65 動脈側クランプ部(クランプ部)
66 荷重検出部
67 動脈側気泡センサ(気泡検知部)
100 コンソール(装置本体)
511 閉塞判定部
611 本体側動脈側チューブ配置部(チューブ配置部)
621 蓋部側動脈側チューブ配置部(チューブ配置部)
661 フォースセンサ