(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】包装用シーラントフィルム、包装材及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 25/20 20060101AFI20220614BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B32B25/20
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2017130615
(22)【出願日】2017-07-03
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】神戸 晴夏
(72)【発明者】
【氏名】木村 和輝
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-320786(JP,A)
【文献】特開平10-000749(JP,A)
【文献】特開平10-278196(JP,A)
【文献】特開2014-133410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 25/20
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層以上から成る包装用シーラントフィルムにおいて、
一方の面である表面を有する層を表面層、前記表面とは反対面である裏面を有する層を裏面層としたとき、
前記表面層には、前記表面層を構成する樹脂に対して、シリコーンガムが0.25重量%以上3重量%以下の割合で添加されており、
前記裏面層には、前記シリコーンガムは添加されておらず、
前記シリコーンガムの一部は、前記表面層の表面に露出して
おり、
静摩擦係数が0.2以上1.0以下の範囲内であり、
前記表面層には、平均粒径が7μm以上15μm以下の範囲内の、前記シリコーンガムとは異なる微粒子が6000ppm以上50000ppm以下の範囲内で添加されており、
前記裏面層には、平均粒径が2μm以上8μm以下の範囲内の微粒子が1000ppm以上10000ppm以下の範囲内で添加されており、
前記樹脂として、重量割合で70%以上がポリエチレンまたはその誘導体で構成されるものを用い、
前記表面層及び前記裏面層の各平均密度は、
表面層≦裏面層
の関係式を満たしており、かつ、
前記表面層の平均密度は、0.905g/cm
3
以上0.925g/cm
3
以下の範囲内であり、
前記裏面層の平均密度は、0.905g/cm
3
以上0.940g/cm
3
以下の範囲内であり、
前記シリコーンガムの凝集サイズが5μm以下であり、
前記表面には、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.6μm以上2.3μm以下の範囲内の凹凸が形成されており、
前記裏面には、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.2μm以上1.2μmの範囲内の凹凸が形成されていることを特徴とする包装用シーラントフィルム。
【請求項2】
前記表面層に添加された前記微粒子の一部は、前記表面層が有する前記表面に露出しており、
前記裏面層に添加された前記微粒子の一部は、前記裏面層が有する前記裏面に露出していることを特徴とする請求項
1に記載の包装用シーラントフィルム。
【請求項3】
前記表面層に添加された前記微粒子の平均粒径は、前記裏面層に添加された前記微粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする請求項
1又は
2に記載の包装用シーラントフィルム。
【請求項4】
前記表面層と前記裏面層との間に配置された中間層をさらに備え、
前記表面層、前記裏面層及び前記中間層のそれぞれは、主成分としてポリエチレン又はその誘導体を含み、
前記表面層、前記中間層及び前記裏面層の各平均密度は、
表面層≦中間層、表面層≦裏面層
の関係式を満たしており、かつ、
前記表面層の平均密度は、0.905g/cm
3以上0.925g/cm
3以下の範囲内であり、
前記中間層の平均密度は、0.920g/cm
3以上0.940g/cm
3以下の範囲内であり、
前記裏面層の平均密度は、0.905g/cm
3以上0.940g/cm
3以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の包装用シーラントフィルム。
【請求項5】
一方の面である表面層の表面に、シリコーンガムが熱可塑性樹脂に対し0.4%以上4%以下の割合で含有されており、
前記表面層とは反対面である裏面層の裏面には、シリコーンガムが含まれておらず、
前記シリコーンガムの一部は、前記表面層の表面に露出して
おり、
静摩擦係数が0.2以上1.0以下の範囲内であり、
前記表面層には、平均粒径が7μm以上15μm以下の範囲内の、前記シリコーンガムとは異なる微粒子が6000ppm以上50000ppm以下の範囲内で添加されており、
前記裏面層には、平均粒径が2μm以上8μm以下の範囲内の微粒子が1000ppm以上10000ppm以下の範囲内で添加されており、
前記熱可塑性樹脂として、重量割合で70%以上がポリエチレンまたはその誘導体で構成されるものを用い、
前記表面層及び前記裏面層の各平均密度は、
表面層≦裏面層
の関係式を満たしており、かつ、
前記表面層の平均密度は、0.905g/cm
3
以上0.925g/cm
3
以下の範囲内であり、
前記裏面層の平均密度は、0.905g/cm
3
以上0.940g/cm
3
以下の範囲内であり、
前記シリコーンガムの凝集サイズが5μm以下であり、
前記表面には、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.6μm以上2.3μm以下の範囲内の凹凸が形成されており、
前記裏面には、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.2μm以上1.2μmの範囲内の凹凸が形成されていることを特徴とする包装用シーラントフィルム。
【請求項6】
前記包装用シーラントフィルムは、少なくとも3層以上から成り、
前記表面を有する層を表面層、前記裏面を有する層を裏面層、前記表面層と前記裏面層との間に位置する層を中間層としたとき、
前記表面層、前記裏面層及び前記中間層のそれぞれは、主成分としてポリエチレン又はその誘導体を含み、
前記表面層、前記中間層及び前記裏面層の各平均密度は、
表面層≦中間層、表面層≦裏面層
の関係式を満たしており、かつ、
前記表面層の平均密度は、0.905g/cm
3以上0.925g/cm
3以下の範囲内であり、
前記中間層の平均密度は、0.920g/cm
3以上0.940g/cm
3以下の範囲内であり、
前記裏面層の平均密度は、0.905g/cm
3以上0.940g/cm
3以下の範囲内であることを特徴とする請求項
5に記載の包装用シーラントフィルム。
【請求項7】
前記表面層は、前記裏面層側に位置する表面下層と、前記表面下層上に位置する表面上層とを備え、
前記表面上層のみに、前記シリコーンガムが添加されていることを特徴とする請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の包装用シーラントフィルム。
【請求項8】
前記シリコーンガムの添加量は、前記表面層が有する前記表面側から前記裏面層が有する前記裏面側に向かって減少していることを特徴とする請求項
5又は6に記載の包装用シーラントフィルム。
【請求項9】
前記シリコーンガムの数平均分子量は、10万以上であることを特徴とする請求項1から請求項
8の何れか1項に記載の包装用シーラントフィルム。
【請求項10】
請求項1から請求項
9の何れか1項に記載の包装用シーラントフィルムの前記裏面に、少なくとも基材が積層されていることを特徴とする包装材。
【請求項11】
請求項1
0に記載の包装材を備えたことを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用シーラントフィルム、包装材及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材は、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装袋に使用されており、包装袋の内容物は、液状、粉末状、ペースト状、固形状等、様々な状態を有している。この包装袋の属する技術分野においては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル等のフィルムを利用したプラスチックフィルム製包装体がよく利用されている。
【0003】
こうした包装袋には、例えば、内容物充填時の充填適性や、外力が加わった際の破袋性(すなわち、袋の破損が無いこと)、気密性、包装袋を開封する際の開封性などの特性が求められる。こうした包装袋を得るために、包装材には、良好な耐衝撃性、ヒートシール性、引裂き性、剛性、バリア性などのほか、例えば、加工工程での良好な滑り性、さらには、基材としっかり接着できるかを示すラミネート適性などの特性も同時に求められている。
【0004】
例えば、包装袋の材料、即ち包装材に低密度ポリエチレンなどを用いることで、良好な耐衝撃性や低温ヒートシール性を有することができるが、加工工程での滑り性が悪いためブロッキングしやすいといった問題が生じ得る。また、滑り性が悪いことでシワが発生したり、フィルムの巻取性が悪くなったりすることがある。また、ブロッキングによるブロッキング跡の顕在化や、印刷やラミネート工程におけるフィルム破断、テンション変動により収率低下が起こり得る。
【0005】
これら滑り性の問題を解決するため、低密度ポリエチレンなどに滑剤やアンチブロッキング剤を混合させる対応がとられている。例えば特許文献1では、各2種類の滑剤とアンチブロッキング剤を規定することで、この問題解決を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の手法では、低分子量の滑剤の添加量が多いため、滑り性の経時変化を起こしてしまうことがある。さらに、その滑剤を含んだフィルムと、基材とを貼り合せて包装材としたときには、多量の低分子量の滑剤が原因となり、フィルムと基材との接着強度が低下することがある。そして、その接着強度の低下に起因して、外力が加わった際の破袋性も悪化してしまう可能性がある。
【0008】
熱可塑性樹脂は、その種類、接着剤の有無やその種類、また温度条件などによって特性が変化することがある。一般に、熱可塑性樹脂に多量の低分子量の滑剤を添加すると、その滑剤は、フィルム成形後や温度変更後の経時変化によってフィルム表面へ移行する、いわゆるブリードアウトが発生することがある。そのため、保管条件や製品加工条件により滑り性に変化が生じることがある。さらに、それだけでなく、低分子量の滑剤がブリードアウトしたフィルム表面に接触した裏面や別のフィルムにも滑剤が転移し、その転移した面の滑り性も変化させてしまうことがある。
【0009】
さらに、熱可塑性樹脂にバリア層や基材層をラミネートして包装体としたとき、接着剤の種類や温度条件などによって変化するが、低分子量の滑剤は、特に高温になった時に、接着剤や接着剤と熱可塑性樹脂との層境界近傍に吸収される。このとき、層間の接着強度(ラミネート強度)が低下してしまい、破袋性も悪化してしまうことがある。
そこで、本発明は、ヒートシール性を維持しつつ、加工工程での良好な滑り性及び基材接着性を有する包装材用フィルム(包装用シーラントフィルム)、その包装材用フィルムを用いた破袋性が良好な包装材及びその包装材を用いた包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、少なくとも2層以上から成る包装用シーラントフィルムにおいて、一方の面である表面を有する層を表面層、前記表面とは反対面である裏面を有する層を裏面層としたとき、前記表面層には、前記表面層を構成する樹脂に対して、シリコーンガムが0.25重量%以上3重量%以下の割合で添加されており、前記裏面層には、前記シリコーンガムは添加されていないことを特徴とする包装用シーラントフィルムである。
【0011】
また、本発明の別の態様は、上記包装用シーラントフィルムの前記裏面に、少なくとも基材が積層させていることを特徴とする包装材である。
また、本発明の別の態様は、上記包装材を用いたことを特徴とする包装体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様であれば、包装用シーラントフィルムの一方の面である表面にシリコーンガムが熱可塑性樹脂に対し0.25重量%以上3重量%以下の割合で含まれているため、ヒートシール性を維持しつつ、加工工程での良好な滑り性を得ることができる。
さらに、裏面にはシリコーンガムが含まれていないため、基材を積層させた包装材の接着強度を保つことができ、包装材を用いた包装体としても良好な破袋性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る包装用シーラントフィルムの構成の一例を示した断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る包装用シーラントフィルムを備えた包装材の構成の一例を示した断面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る包装用シーラントフィルムの構成の一例を示した断面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る包装用シーラントフィルムの構成の一例を示した断面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る包装用シーラントフィルムの構成の一例を示した断面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る包装用シーラントフィルムを備えた包装材の構成の一例を示した断面図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る包装材を備えた包装体の構成の一例を示した断面図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る包装用シーラントフィルムの構成の一例を示した断面図である。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る包装用シーラントフィルムを備えた包装材の構成の一例を示した断面図である。
【
図10】本発明の第二実施形態に係る包装用シーラントフィルムの構成の一例を示した断面図である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係る包装用シーラントフィルムの構成の一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る包装用シーラントフィルムの各実施形態について説明する。なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。また、以下に示す各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る包装用シーラントフィルム(以下、単に「シーラントフィルム」とも称する。)は、
図1に示すように、少なくとも2層以上から成る包装用シーラントフィルム1であって、一方の面である表面4を有する層を表面層6、表面4とは反対面である裏面5を有する層を裏面層8としたとき、表面層6には、熱可塑性樹脂2に対してシリコーンガム3が0.25重量%以上3重量%以下の割合で添加されている。また、裏面層8には、シリコーンガム3は添加されていない。
【0016】
熱可塑性樹脂2は、良好な耐衝撃性や低温ヒートシール性を備える材料であって、且つ滑りにくい材料である。一方、表面層6に含まれるシリコーンガム3は、表面自由エネルギーが小さく熱可塑性樹脂2に比べて滑りやすい材料である。そこで、表面層6にシリコーンガム3を熱可塑性樹脂2に対し0.25重量%以上3重量%以下の範囲内で添加することで、ヒートシール性を維持しつつ、良好な滑り性を得ることができる。
【0017】
シリコーンガム3の添加量が0.25%未満の場合には、表面4における摩擦係数が大きくなり、滑りにくくなってしまう。これは、シリコーンガム3が露出していない部分でのシーラントフィルム1同士の接触が多くなってしまうことが原因である。その結果、例えば、シーラントフィルム1の搬送中やシーラントフィルム1が重なったときに、シーラントフィルム1にシワが入ったり、引取テンション増大によるシーラントフィルム1の伸びを引き起こしたりすることがある。また、耐ブロッキング性も低下してしまい、巻取り後のシーラントフィルム1同士が密着し外観ムラやテンション変動またはシーラントフィルム1の破断などが生じることがある。
【0018】
一方、シリコーンガム3の添加量が3%を超える場合には、表面層6を構成する熱可塑性樹脂2の割合が少なくなり、加熱圧着する際、その圧着をシリコーンガム3が阻害してしまうことでヒートシール性が低下してしまうことがある。
ここで、シリコーンとは、ケイ素原子が酸素原子を介して他のケイ素原子と結合した構造に有機基が付加している高分子物質であるポリオルガノシロキサンのことである。また、上記有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等を適宜使用することが可能である。
【0019】
さらに、シリコーンガム3とは、上述のシリコーンの中でも、数平均分子量が数十万以上のものを示すものとする。より好ましくは、数平均分子量が40万以上のものである。
シリコーンは分子量により性状が大きく変わり、一般に分子量が10万以上の高分子量のシリコーンはガム状になり、10万未満の低分子量のシリコーンはオイル状になる。分子量が10万未満の場合、その性状がオイル状となるため、熱可塑性樹脂2内をシリコーン成分が移動することがある。その場合、温度や経時により、シリコーン成分がブリードアウトすることで表面4の滑り性に変化が生じてしまうことがある。さらに、表面4におけるシリコーン量が多くなることで、ヒートシール性の低下を引き起こすことがある。また、裏面5におけるシリコーン量が多くなることで、後述する包装材として使用する際に必要である他基材との接着時に接着不良等の不具合が生じることがある。
【0020】
数平均分子量が数十万以上のシリコーンガム3は高分子量体であるため、低分子量のシリコーンオイルや従来の低分子量の滑剤のように、シーラントフィルム1内での移動やそれに伴うブリードアウトを起こす頻度は低減される。そのため、表面4に安定的な滑り性を付与することができる。また、上記のようなヒートシール阻害や接着不良などを引き起こす頻度も低減される。例えば、エージング等により室温よりも高温でシーラントフィルム1の保管をすることも多いが、そのような温度変化によっても、シリコーンガム3はシーラントフィルム1内を移動することは少ないため、ヒートシール性や滑り性は安定している。
【0021】
また、シリコーンガム3の分子量分布は狭い方が良好であり、特に、上記理由から、低分子量成分は少ないことが望まれる。シリコーンガム3の重合方法としては、例えば、シラノールからの重合、ポリシロキサン末端を適宜触媒で付加重合、脱水縮合する方法等が挙げられ、特に制限されることはない。
さらに、シーラントフィルム1の裏面層8には、シリコーンガム3は含まれていない。上述のように、熱可塑性樹脂2は滑りにくいため、裏面5同士の滑り性は良好とはいえないが、シーラントフィルム1の巻取時や、他基材と接着させ包装材へ使用するとき、さらには、後述する包装体へと使用するときに、裏面5同士がすり合わさることはない。つまり、裏面5は、シーラントフィルム1の巻取時に表面4とすり合わされる。また、後述のように、シーラントフィルム1を包装材に使用したときには、裏面5は、基材または接着剤9と接着することとなる。そのため、裏面5にシリコーンガム3は含まれていなくとも、加工する上で適正な滑り性を得ることができる。
【0022】
図2に、シーラントフィルム1の裏面5に基材11を接着して形成した包装材10の構成を示す。このとき、シーラントフィルム1の裏面層8にシリコーンガム3が含まれていると、表面自由エネルギーが低いがゆえに、裏面5と基材11との接着性が悪くなり、十分な接着強度を得ることができない。そのため、本実施形態に係るシーラントフィルム1の裏面層8にはシリコーンガム3は含まれていない。
【0023】
つまり、本実施形態のように2層構成のシーラントフィルム1の場合、表面層6にシリコーンガム3を適量添加し、裏面層8にシリコーンガム3を添加しないことで、シーラントフィルム1は、経時や温度変化によらず安定的な滑り性、つまりは、シーラントフィルム1同士やシーラントフィルム1と搬送ロールとの摩擦係数を適度な値にすることができる。さらに、ヒートシール性の低下も防ぎ、且つ包装材10とするときの基材11との接着強度も十分得ることができる。
【0024】
以下では、本実施形態における各構成の詳細を説明する。
本実施形態に係るシーラントフィルム1は、
図1に示すように表面層6と裏面層8の2層構成でもよいが、
図3に示すように表面層6と裏面層8の間に中間層7を設け、3層以上の積層構成としてもよい。このとき、中間層7のシリコーンガム3の含有量は問わない。
また、シリコーンガム3は熱可塑性樹脂2に分散されており、シリコーンガム3の凝集サイズは大きくとも5μm以下であるとよい。凝集サイズが5μmを超えると、適正な滑り性が得られなかったり、ヒートシール性の悪化を生じてしまったりする。また、メヤニ(押出口部の縁にたまる押出材料の凝集物)発生の原因にもなるため、好ましくない。
【0025】
(熱可塑性樹脂2)
熱可塑性樹脂2の材料は、適度な柔軟性を有するとともに、例えば押出機による加工適性を有する等、良好な加工性を備えることが好ましい。こうした材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーを持つポリプロピレン、上記オレフィンと酢酸ビニルを共重合して得られるエチレン酢酸ビニルコポリマーやオレフィンの側鎖を変性して得られるエチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)、あるいはエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等が挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよいし、これらのうちの複数の材料が組み合わされて用いられてもよい。
【0026】
また、剛性、耐衝撃性、ヒートシール性、引裂き性を考慮した場合、熱可塑性樹脂2は、主にポリエチレンまたはその誘導体で構成されているのが好ましい。
また、
図3に示すように、シーラントフィルム1が3層構成の場合には、表面層6、中間層7及び裏面層8の各平均密度は、表面層6≦中間層7、表面層6≦裏面層8が成り立つとよい。さらに、表面層6、中間層7及び裏面層8の平均密度は、それぞれ、0.905g/cm
3以上0.925g/cm
3以下、0.920g/cm
3以上0.940g/cm
3以下、0.905g/cm
3以上0.940g/cm
3以下の範囲内であるとよい。なお、ここで「主に」とは、包装用シーラントフィルム1を構成する樹脂のうち、重量割合で70%以上であることを意味する。また、平均密度は、JISK7112:1999に準拠した測定方法またはこれと比較できる測定方法により測定する。
【0027】
一般に、熱可塑性樹脂2に低密度樹脂を用いることで耐衝撃性及びヒートシール性は良好になるが、剛性や引裂き性、加工時の滑り性、耐ブロッキング性は悪化してしまう傾向がある。しかし、シーラントフィルム1を3層構成とし、例えば、表面層6を低密度樹脂、中間層7を中~高密度樹脂、裏面層8を低~高密度樹脂とすることで、耐衝撃性及びヒートシール性を良好にしたまま、曲げ剛性や引裂き性を良好にすることができる。さらに、本実施形態のように、表面層6にはシリコーンガム3を0.25重量%以上3重量%以下の範囲内で添加し、中間層7及び裏面層8にはシリコーンガム3を添加しないことで、ヒートシール性の低下を防ぎつつ、滑り性及び基材11との接着性を良好にすることができる。
【0028】
このとき、表面層6の厚みは3μm~30μm程度であるとよい。さらに、例えば、
図4に示すように、表面層6を表面上層6a及び表面下層6bのように2層に分離してもよい。このとき、シリコーンガム3は表面上層6aのみに添加すればよく、これにより、使用量削減によるコストダウンを図ることが可能である。
中間層7または表面層6には、フィルム製膜時に製品幅よりも外側になる、いわゆる端部分をリサイクルして加えてもよい。これにより、材料削減によるコストダウンを図ることが可能である。ただし、裏面層8にシリコーンガム3が含まれると基材11との接着不良が生じてしまうため、端部分のリサイクル樹脂を加えることは好ましくない。なお、中間層7と裏面層8とを同じ樹脂で形成して成る2層構成でも、上述の物性効果は同等に得ることができるが、端部分のリサイクルができない点には注意が必要である。
【0029】
熱可塑性樹脂2には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)を混合していてもよい。LLDPEにLDPEを混合させることで、上記各種物性とネックイン(Tダイから押し出されたフィルムまたはシートの幅が、ダイから出たところでダイの有効幅よりせまくなる現象)やフィッシュアイ(周囲の材料に完全に混和しないためにできた小さな球状の塊)などの加工性を両立させることができる。
【0030】
(表面・裏面)
図5に示すように、微粒子13をシーラントフィルム1に配合すると、表面4または裏面5に微粒子13の一部が突出する。このように微粒子13の突出部によりシーラントフィルム1の表面4または裏面5に凹凸を付与することで、接触面積を低減させて良好な滑り性を得ることができる。また、こうすることで、シーラントフィルム1の表面4の接触面積の増大を防ぐことができ、耐ブロッキング性も良好になる。表面層6には、平均粒径が7μm以上15μm以下の範囲内の微粒子13が重量比で6000ppm以上50000ppm以下の範囲内で添加されているとよい。また、裏面層8には、平均粒径が2μm以上8μm以下の範囲内の微粒子13が重量比で1000ppm以上30000ppm以下の範囲内で添加されているとよい。さらに好ましくは、裏面層8における微粒子13の添加量は1000ppm以上10000ppm以下の範囲内である。表面層6及び裏面層8に添加する微粒子13の平均粒径が設計値よりも小さすぎたり、その添加量が少なすぎたりすると、シーラントフィルム1の巻取時に重要となる表面4と裏面5とを合わせたときの滑り性が悪化することがある。また、包装材10に関しては、包装材10の巻取時に重要となる表面4と基材11とを合わせたときの滑り性が悪化することがある。また、表面層6に添加する微粒子13の平均粒径が大きすぎたり、その添加量が多すぎたりすると、シーラントフィルム1同士を重ねて熱溶着させる際に空隙が多く形成されることによるヒートシール性の低下が懸念される。また、裏面層8に添加する微粒子13の平均粒径が大きすぎたり、その添加量が多すぎたりすると、包装材10における基材11との接着性が低下することがある。
【0031】
微粒子13は、熱可塑性樹脂2よりも硬い有機系または無機系微粒子で形成されているとよい。硬い有機系または無機系微粒子を添加して表面4または裏面5から突出する凸形状14を形成することで、摩擦力等の外力がかかった際に凸形状14の変形を抑えることができる。それにより、適度な摩擦力を維持することができる。
【0032】
図5に示すように、微粒子13が直接凸形状14を形成していてもよいし、微粒子13の周囲(表面)を熱可塑性樹脂2が覆うことで凸形状14を形成していてもよい。もちろん、微粒子13が熱可塑性樹脂2にほぼ埋もれており、一部分のみが突出しているものでもよい。また、微粒子13は球形であるとよい。表面4または裏面5から突出する凸形状14が曲面を備える形状でない場合、シーラントフィルム1の表面4と裏面5が密着すると嵌合してしまうため、曲面を備える形状にすることで、効果的に滑り性を良好にすることができる。さらに、凸形状14が曲面を備える形状であれば、密着したシーラントフィルム1の表面4または裏面5を傷つけることがない。また、圧力がかかった際に凸形状14が曲面を備える形状であると圧力が均等に分散し凹みにくくなるため、耐ブロッキング性にも効果が期待できる。
【0033】
有機系または無機系微粒子としては、例えば、アクリル系粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子およびその架橋体、ポリウレタン系粒子、ポリエステル系粒子、シリコーン系粒子、フッ素系粒子、これらの共重合体、ゼオライト、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、緑泥岩、カオリン鉱物、セピオライトなどの粘土化合物粒子、珪藻土、シリカ、酸化チタン、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ガラス粒子等が挙げられる。
【0034】
有機系微粒子を用いた場合は、適切な粒径の選択が容易になるが、熱分解には注意が必要である。本実施形態で用いる有機系微粒子は、300℃の温度における重量変化が10%以下であるとよい。加熱成形するため、重量変化が大きい場合には、分解による臭気発生やヤケ(変色)発生の原因、装置劣化の促進などの問題を生じてしまうためである。
【0035】
(静摩擦係数)
具体的な最適な静摩擦係数の範囲は、表面4と裏面5とを合わせたときの静摩擦係数が0.2以上1.0以下の範囲内であれば好適に使用可能である。より好ましくは、0.3以上0.7以下の範囲内である。静摩擦係数が0.2より小さい場合には、シーラントフィルム1が滑りすぎてしまうことによるシーラントフィルム1の蛇行や、巻きズレなどの巻取不良、ピッチ制御が必要なもの場合はピッチ不良などが発生することがある。一方、静摩擦係数が1.0より大きい場合には、滑りが悪く、ブロッキングやシワが生じるなどの巻取不良、テンション変動、酷い場合にはシーラントフィルム1の破断などが発生することがある。
【0036】
また、シーラントフィルム1の保管環境が異なっていたり、熱をかけたエージング工程から取り出した後の経過時間が異なっていたりすると、上記静摩擦係数は変化してしまう。そのため、静摩擦係数は、20℃~50℃の保管環境の範囲において、0.2以上1.0以下の範囲内であるとよい。さらに、このときの温度差による静摩擦係数の変化は0.5以下であるとよい。より好ましくは、0.2以下である。温度差による静摩擦係数変化が0.5よりも大きい場合には、保管環境や工程により滑り性が変化し、生産設備を運転しながら毎回調整する必要があるため、現実的ではない。
また、シーラントフィルム1には、その他の各種の添加剤が含まれていてもよい。例えば、加工安定性を付与するための酸化防止剤などを適宜添加することが可能である。
【0037】
(製造方法)
本実施形態のシーラントフィルム1を作製する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することが可能である。また、表面層6は、熱可塑性樹脂2にシリコーンガム3を分散させてフィルム化した後に冷却して形成すればよい。
【0038】
シリコーンガム3の分散方法としては、例えば、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解または分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等を用いることができる。作業性を考慮した場合、例えば、単軸スクリュー押出機または2軸スクリュー押出機を使用することが好ましい。単軸押出機を用いる場合には、例えば、フルフライトスクリュー、ミキシングエレメントを持つスクリュー、バリアフライトスクリュー、フルーテッドスクリュー等特に制限されることなく、使用することが可能である。また、2軸混練装置については、例えば、同方向回転2軸スクリュー押出機、異方向回転2軸スクリュー押出機、またスクリュー形状もフルフライトスクリュー、ニーディングディスクタイプと特に限定されるものではない。
【0039】
フィルム化の方法としては、例えば、押出成形機、ならびにフィードブロックまたはマルチマニホールドを介しTダイで製膜する方法や、インフレーション法を用いた製膜方法を用いることが可能である。このとき、例えば、複数の押出成形機を使用し、シリコーンガム3を分散させた表面層6とシリコーンガム3を含んでいない裏面層8とを少なくとも共押出することで、2層以上の層構成のシーラントフィルム1を得ることができる。
【0040】
冷却方法としては、上述の成形機に準じて使用することが可能であり、例えばTダイ法では、エアーチャンバー、バキュームチャンバー、エアナイフ等の空冷方式、冷水パンへ冷却ロールをディッピングする等の水冷方式等特に制限されることはない。
また、裏面5には必要に応じ表面改質処理を実施することも可能である。例えば、印刷適性向上、積層使用時のラミネート適性向上のために、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることにより官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスによる改質を好適に用いることが可能である。
【0041】
(包装材10)
図2に示すように、シーラントフィルム1の裏面5に基材11を接着させることで本発明の効果を備えた包装材10を得ることができる。このとき、上述したように、シリコーンガム3は裏面5に露出していないため、裏面5と基材11との接着強度を十分得ることができる。つまり、本実施形態に係るシーラントフィルム1を使用することで、包装材10としても、ヒートシール性及び滑り性が良好であり、且つシーラントフィルム1と基材11との接着強度が高い包装材10を得ることができる。また、裏面5と基材11とを直接接着していてもよいが、
図6に示すように、接着剤9を介して裏面5と基材11とを接着していてもよい。この場合であっても、上記同様に、十分な接着強度を得ることができる。
【0042】
基材11としては、シーラントフィルム1を支持する支持層や、印刷層やバリア層といった機能をもった機能層などを備えた材料が挙げられる。基材11としては、例えば、プラスチックを主とするフィルムが用いられ、内容物の種類や充填後の加熱処理の有無など使用条件によって適宜選択される。支持層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが使用されるが、特に限定されない。さらに、上記材料のうちの1つの材料からなる単層であってもよいし、こうした単層の積層によって上記材料のうちの複数の材料が組み合わされた層であってもよい。バリア層は、空気中に含まれる酸素等の気体や水蒸気、封入した内容物等から包装材を保護するためのバリア性を高める機能を有する層であり、材料としては、例えば、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)やアルミニウム等の金属などが挙げられ、適宜使用することができる。なお、
図2ではシーラントフィルム1、基材11の2層構成からなる包装材10が示されているが、これに限らず、基材11として、複数の層を重ねた多層構成であってもよい。
【0043】
包装材10の具体的な最適な静摩擦係数の範囲も、シーラントフィルム1の場合と同様に、表面4と基材11とを合わせたときの静摩擦係数が0.2以上1.0以下の範囲内であれば好適に使用可能である。より好ましくは、0.3以上0.7以下の範囲内である。静摩擦係数が0.2より小さい場合には包装材10が滑りすぎてしまうことによる包装材10の蛇行や、巻きズレなどの巻取不良、ピッチ制御が必要なもの場合はピッチ不良、などが発生してしまう。一方、静摩擦係数が1.0より大きい場合には、包装材10の滑りが悪く、ブロッキングやシワが生じるなどの巻取不良、テンション変動、酷い場合には包装材10の破断などが発生してしまう。
【0044】
包装材10の保管環境が異なっていたり、熱をかけたエージング工程から取り出した後の経過時間が異なっていたりすると、上記静摩擦係数は変化してしまう。そのため、静摩擦係数は、20℃~50℃の保管環境の範囲において、0.2以上1.0以下の範囲内であるとよい。さらに、このときの温度差による静摩擦係数の変化は0.5以下であるとよい。より好ましくは、0.2以下である。温度差による静摩擦係数変化が0.5よりも大きい場合、保管環境や工程により滑り性が変化し、生産設備を運転しながら毎回調整する必要があるため、現実的ではない。
【0045】
(包装体12)
本実施形態に係る包装材10を用いて、互いに向かい合うシーラントフィルム1同士の周縁をヒートシール等により溶着することで、上述した本発明の効果を備えた包装体12を得られる。なお、
図7は、本実施形態に係る包装材10を用いて、互いに向かい合うシーラントフィルム1同士の周縁をヒートシール等により溶着して形成した包装体12の構成を模式的に示したものである。
【0046】
本実施形態に係る包装体12としては、例えば、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ、口栓付きパウチ、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチ、ラミチューブ、バックインボックス等が挙げられるが、この他に様々な用途に使用できる。
以上、本発明の第一実施形態及びその変形例を示したが、本発明は本実施形態等に限定されるものではない。本実施形態の技術的思想を逸脱しない限り、包材としての用途を考慮し、要求されるその他の物性である剛性、強度、衝撃性等を向上する目的で、他の層や構造を任意に形成できることはいうまでもない。
【0047】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態に係るシーラントフィルム1は、少なくとも2層以上から成り、一方の面である表面4を有する層を表面層6、表面4とは反対面である裏面5を有する層を裏面層8としたとき、表面層6には、表面層6を構成する樹脂に対して、シリコーンガム3が0.25重量%以上3重量%以下の割合で添加されている。また、裏面層8には、シリコーンガム3は添加されていない。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1にヒートシール性及び加工工程における良好な滑り性を付与することができる。
【0048】
(2)また、本実施形態に係るシーラントフィルム1は、表面層6に平均粒径が7μm以上15μm以下の範囲内の微粒子13を6000ppm以上50000ppm以下の範囲内で添加してもよい。また、裏面層8に平均粒径が2μm以上8μm以下の範囲内の微粒子13を1000ppm以上10000ppm以下の範囲内で添加してもよい。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1の、表面4と裏面5とを合わせたときの滑り性を良好にすることができる。
【0049】
(3)また、本実施形態に係るシーラントフィルム1は、表面層6と裏面層8との間に中間層7をさらに設け、表面層6、裏面層8及び中間層7の主成分をポリエチレン又はその誘導体とし、表面層6、中間層7及び裏面層8の各平均密度を、表面層6≦中間層7、表面層6≦裏面層8の関係式を満たすものとしてもよい。さらに、表面層6の平均密度を0.905g/cm3以上0.925g/cm3以下の範囲内とし、中間層7の平均密度を0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内とし、裏面層8の平均密度を0.905g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内としてもよい。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1の耐衝撃性及びヒートシール性を良好にしたまま、曲げ剛性や引裂き性を良好にすることができる。
【0050】
(4)また、本実施形態に係る包装材10は、上述のシーラントフィルム1の裏面5に、少なくとも基材11が積層されている。
このような構成であれば、裏面層8にシリコーンガム3が添加されている場合と比較して、基材11を積層させた包装材10の接着強度を高めることができる。
(5)また、本実施形態に係る包装体12は、上記の包装材10を備えている。
このような構成であれば、シーラントフィルム1と基材11との接着強度を高めた包装材10を用いているため、包装体12に良好な破袋性、気密性、包装袋を開封する際の開封性などの特性を付与することができる。
【0051】
[第一実施例]
以下、本発明の第一実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
包装用シーラントフィルム1は、表面層6、中間層7、裏面層8の積層した3層構成のフィルムとした。熱可塑性樹脂2として、表面層6では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.913g/cm3、MFR3.8)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。また、中間層7及び裏面層8では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.931g/cm3、MFR3.2)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。さらに、表1、2に示すように、表面層6、中間層7及び裏面層8に、シリコーンガム3及び微粒子13を添加した。微粒子13には、アクリル架橋体微粒子を使用した。なお、比較例1-1、1-2はシリコーンガム3ではなく、滑剤として一般的なエルカ酸アミドを添加した。各層のシリコーンガム3の添加量及びエルカ酸アミドの添加量や、微粒子13の平均粒径及び添加量を様々変更し、各種実施例、比較例とした。詳細情報は表1、2にまとめている。
【0052】
上述の表面層6、中間層7及び裏面層8の各材料を単軸共押出機でそれぞれ260℃に加熱溶融し、Tダイキャスト法にて、表面層6の厚みを15μm、中間層7の厚みを42.5μm、裏面層8の厚みを42.5μmとし、トータル100μm厚みのシーラントフィルム1を製膜した。なお、冷却にはエアーチャンバー方式を採用した。
【0053】
上記各実施例及び各比較例で得られたシーラントフィルム1を、厚み12μmの二軸延伸ナイロンフィルムと厚み15μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとをドライラミネートにより貼り合せた基材11と、ドライラミネートにより貼り合わせて包装材10を得た。積層順は、ナイロンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1の順とした。接着剤には、主剤と硬化剤との2液混合型のポリウレタン系接着剤を使用し、ドライラミネート後50℃にて2日間エージング保管した。
【0054】
(性能評価)
上記各実施例及び各比較例によって得られたシーラントフィルム1及び包装材10の性能を評価するため、シーラントフィルム1に関して、滑り性評価及びヒートシール性評価を実施し、包装材10に関して、滑り性評価及び基材接着性評価を実施した。各評価結果を表1、2に示す。
【0055】
(滑り性評価)
滑り性評価は、株式会社東洋精機製作所製の滑り傾斜角測定装置を用いて、傾斜角度を徐々に上げていった際の錘の滑り始める角度から静摩擦係数を算出する傾斜法により、静摩擦係数を評価した。錘は30mm幅×40mm長さ×30mm高さで重量197gの金属性ブロックを使用した。
【0056】
シーラントフィルム1に関しては、シーラントフィルム1の巻取時に重要となる表面4と裏面5を合わせたときの静摩擦係数、包装材10に関しては、包装材10の巻取時に重要となる表面4と基材11を合わせたときの静摩擦係数を測定した。
シーラントフィルム1の保管環境が異なっていると静摩擦係数は変化してしまうため、保管環境が20℃のときの静摩擦係数及び50℃のときの静摩擦係数を測定し、さらに、両測定結果の差分を算出した。
【0057】
評価結果は、適正な滑り性である静摩擦係数が0.3~0.7の範囲内に入っているものを「〇」、「〇」にはならないが0.2~1.0の範囲内に入っているものを「△」、それ以外のものを「×」とした。また、環境によらず滑り性は変化しないことが望ましいため、20℃及び50℃の静摩擦係数の差分が、0.2以下のものを「〇」、「〇」にはならなかったが実用上問題のない0.5以下のものを「△」、それ以上のものを「×」とした。なお、静摩擦係数が1.2を超えるものは測定できていないため、「>1.2」と表記している。
【0058】
(ヒートシール性評価)
ヒートシール性評価は、テスター産業株式会社製のヒートシーラー(型番TP-701-B)を用いてシール圧力0.2MPa、シール時間を1秒、シール幅を10mmとし、シール温度を140℃、シーラントフィルム1の表面4側の面同士を重ねてシールした。シールしたシーラントフィルム1を15mm幅×100mmに切出し、チャック間距離を50mm、引張り速度を300mm/minとして島津製作所株式会社製引張試験機(型番AGS-500NX)を用いてT字剥離強度を測定し、シール強度とした。シール強度が17[N/15mm]以上のものを「〇」、15[N/15mm]~17[N/15mm]のものを「△」、15[N/15mm]以下のものを「×」とした。
【0059】
(基材接着性評価)
基材接着性評価は、ナイロンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1の順に積層した包装材10に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間の接着性を評価した。まず、溶剤をつけたカッター刃で、両フィルム間の剥離を実施した。剥離ができたものに関しては、それをきっかけとし、島津製作所株式会社製引張試験機(型番AGS-500NX)を用いて、T字剥離を実施した。サンプルサイズは15mm幅×100mmとし、チャック間距離は10mm、引張り速度は300mm/minの条件とした。
【0060】
評価結果は、カッター刃で剥離ができなかったものを「〇」とした。剥離ができ、きっかけは作れたがT字剥離時にポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間では剥離せず、すぐにポリエチレンテレフタレートフィルムが破断し、ナイロンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルムで剥離したものを「△」とした。きっかけが作れ、T字剥離時にポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間が少しでも剥離したものは「×」とした。
【0061】
(総合評価)
総合判定として、上記のシーラントフィルム1に関する滑り性評価及びヒートシール性評価、並びに包装材10に関する滑り性評価及び基材接着性評価の全評価が「〇」評価であるものを「〇」とし、一つでも「△」評価があったものを「△」、一つでも「×」評価があったものを「×」と表記した。
【0062】
(評価結果)
上記各実施例及び各比較例のシーラントフィルム1及び包装材10の評価結果を表1、2に記載する。
【表1】
【0063】
【0064】
表1より、総合判定で「△」以上になるのは、表面層6のシリコーンガム3の添加量が0.25%~3.00%、且つ裏面層8のシリコーンガム3の添加量が0.00%の場合であった。なお、表面層6のシリコーンガム3の添加量の増加に伴いヒートシール性が低下し、その添加量の減少に伴い滑り性が低下する。このため、さらに好ましく総合判定で「○」になるのは、表面層6のシリコーンガム3の添加量が0.50%~2.00%の場合であった。このときの包装用シーラントフィルム1及び包装材10の静摩擦係数は、凡そ0.30~0.90であり、保管温度による静摩擦係数の差は、凡そ0.01~0.25であり、ヒートシール強度は凡そ16.5N/15mm~20.0N/15mmであった。
【0065】
しかし、表面層6のシリコーンガム3の添加量が4%以上の場合、ヒートシール強度の低下によりヒートシール性が悪化し、裏面層8のシリコーンガム3の添加量が0.25%以上の場合、基材11との接着性が悪化する。また、表面層6及び裏面層8のシリコーンガム3の添加量がそれぞれ0%であると、フィルム表面が滑らず、滑り性が悪化する。なお、中間層7のシリコーンガム3の添加量は、滑り性やヒートシール性、基材接着性等のフィルム性能に影響しないことがわかる。また、滑剤としてエルカ酸アミドを使用した場合には、総合判定が「×」であった。これは、シーラントフィルム1及びそれを用いた包装材10において、保管温度による静摩擦係数に0.5以上の差が見られたためである。
【0066】
表2より、総合判定で「△」以上になるのは、表面層6に添加する微粒子13の添加量が3000ppm~70000ppm、粒径が3μm~20μmの場合であり、裏面層8に添加する微粒子13の添加量が0ppm~30000ppm、粒径が1μm~8μmの場合であった。なお、微粒子13の添加量の増加、粒径の増加に伴い、表面層6ではヒートシール性が低下し、裏面層8では基材11との接着性の低下が懸念される。
【0067】
また、微粒子13の添加量の減少、粒径の減少に伴い、表面層6及び裏面層8において滑り性が低下する。このため、さらに好ましく総合判定で「○」になるのは、表面層6に添加する微粒子13の添加量が6000ppm~50000ppm、粒径が7μm~15μmの場合であり、裏面層8に添加する微粒子13の添加量が1000ppm~30000ppm、粒径が2μm~8μmの場合であった。
【0068】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る包装用シーラントフィルム(以下、単に「シーラントフィルム」とも称する。)は、
図8に示すように、包装用シーラントフィルム1の一方の面である表面4に、シリコーンガム3が熱可塑性樹脂2に対し0.4%以上4%以下の割合(表面存在量)で含有されており、表面4とは反対面である裏面5には、シリコーンガム3が含まれていない。
【0069】
熱可塑性樹脂2は、第一実施形態で説明したように、良好な耐衝撃性や低温ヒートシール性を備える材料であって、且つ滑りにくい材料である。一方、表面4に含まれるシリコーンガム3は、表面自由エネルギーが小さく熱可塑性樹脂2に比べて滑りやすい材料である。そこで、シリコーンガム3の表面存在量を熱可塑性樹脂2に対し0.4%以上4%以下の範囲内とすることで、ヒートシール性を維持しつつ、良好な滑り性を得ることができる。より好ましくは、シリコーンガム3の表面存在量は、熱可塑性樹脂2に対して1.0%以上3.0%以下の範囲内である。
【0070】
シリコーンガム3の表面存在量が0.4%未満の場合には、表面4における摩擦係数が大きくなり、滑りにくくなってしまう。これは、シリコーンガム3が露出していない部分でのシーラントフィルム1同士の接触が多くなってしまうことが原因である。その結果、例えば、シーラントフィルム1の搬送中やシーラントフィルム1が重なったときに、シーラントフィルム1にシワが入ったり、引取テンション増大によるシーラントフィルム1の伸びを引き起こしたりすることがある。また、耐ブロッキング性も低下してしまい、巻取り後のシーラントフィルム1同士が密着し外観ムラやテンション変動またはシーラントフィルム1の破断などが生じることがある。
【0071】
一方、シリコーンガム3の表面存在量が4%を超える場合には、シーラントフィルム1を構成する熱可塑性樹脂2の割合が少なくなり、加熱圧着する際、その圧着をシリコーンガム3が阻害してしまうことでヒートシール性が低下してしまうことがある。
本実施形態に係るシリコーンとは、上述の第一実施形態で説明したシリコーンと同じものである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
【0072】
また、本実施形態に係るシリコーンガム3とは、上述の第一実施形態で説明したシリコーンガム3と同じものである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
なお、本実施形態では、シーラントフィルム1の裏面5にはシリコーンガム3は含まれていない。これは、第一実施形態で説明したように、熱可塑性樹脂2は滑りにくいため、裏面5同士の滑り性は良好とはいえないが、シーラントフィルム1の巻取時や、基材11と接着させ包装材10へ使用するとき、さらには、包装体12へと使用するときに、裏面5同士がすり合わさることはない。つまり、裏面5は、シーラントフィルム1の巻取時には表面4とすり合わされる。また、シーラントフィルム1を包装材10に使用したときには、裏面5は、基材11または接着剤9と接着することとなる。そのため、裏面5にシリコーンガム3は含まれていなくとも、加工する上で適正な滑り性を得ることができる。
【0073】
図9に、シーラントフィルム1の裏面5に基材11を接着して形成した包装材10の構成を示す。このとき、シーラントフィルム1の裏面5にシリコーンガム3が含まれていると、表面自由エネルギーが低いがゆえに、裏面5と基材11との接着性が悪くなり、十分な接着強度を得ることができない。そのため、本実施形態に係るシーラントフィルム1の裏面5にはシリコーンガム3は含まれていない。
【0074】
つまり、本実施形態のように適切なシリコーンガム3の濃度分布を作ることで、シーラントフィルム1は、経時や温度変化によらず安定的な滑り性、つまりは、シーラントフィルム1同士やシーラントフィルム1と搬送ロールとの摩擦係数を適度な値にすることができる。さらに、ヒートシール性の低下も防ぎ、且つ包装材10とするときの基材11との接着強度も十分得ることができる。
以下では、本実施形態における各構成の詳細を説明する。
【0075】
(シリコーンガム3の分布)
本実施形態に係るシーラントフィルム1は、表面4及び裏面5のシリコーンガム3の存在量が適切であれば、効果を発揮できる。このため、例えば、
図10に示すように、表面4の近傍のみにシリコーンガム3が含まれていてもよいし、
図11に示すように、フィルムの中ほどまでシリコーンガム3が含まれていてもよい。もちろん、第一実施形態と同様、
図1に示すように2層構成とし、表面4を有する表面層6にシリコーンガム3が含まれており、裏面5を有する裏面層8にはシリコーンガム3が含まれていない構成でもよい。さらに、第一実施形態と同様、
図3に示すように表面層6と裏面層8の間に中間層7を設け、3層以上の積層構成としてもよい。このとき、中間層7のシリコーンガム3の含有量は問わない。
【0076】
シリコーンガム3と熱可塑性樹脂2との相溶性は基本的に悪い。そのため、シリコーンガム3を分散させた溶融フィルムを、流動状態を維持した温度で時間をかけると、徐々にシリコーンガム3と熱可塑性樹脂2が分離し、内部に分散されたシリコーンガム3も表面4または裏面5に露出してくる。つまり、冷却スピードを制御することで、シリコーンガム3の表面4における存在量を制御することができる。このとき、裏面5には別材料を密着させることで、界面がなくなり、シリコーンガム3が裏面5に露出するのを抑えることが可能である。
【0077】
ここで、シリコーンガム3の表面存在量とは、表面4から数ナノメートル~数ミクロンの深さに存在するシリコーンガム3の量のことを示すものとする。
シリコーンガム3の表面存在量の評価方法は、特に限定されるものではないが、例えば、赤外分光法やラマン分光法などの振動分光法、オージェ電子分光法やエネルギー分散型X線分光法などの電子顕微鏡観察・分析法、X線光電子分光法などの光電子分光法などを利用することができる。
【0078】
また、シリコーンガム3は熱可塑性樹脂2に分散されており、シリコーンガム3の凝集サイズは大きくとも5μm以下であるとよい。凝集サイズが5μmを超えると、適正な滑り性が得られなかったり、ヒートシール性の悪化を生じてしまったりする。また、メヤニ(押出口部の縁にたまる押出材料の凝集物)発生の原因にもなるため、好ましくない。
【0079】
(熱可塑性樹脂2)
本実施形態に係る熱可塑性樹脂2は、上述の第一実施形態で説明した熱可塑性樹脂2と同じものである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
なお、第一実施形態と同様、剛性、耐衝撃性、ヒートシール性、引裂き性を考慮した場合、熱可塑性樹脂2は、主にポリエチレンまたはその誘導体で構成されているのが好ましい。また、第一実施形態と同様、シーラントフィルム1を、
図3に示すように、3層構成とし、表面層6、中間層7、裏面層8の各平均密度は、表面層6≦中間層7、表面層6≦裏面層8が成り立つとよい。さらに、表面層6、中間層7及び裏面層8の平均密度は、それぞれ、0.905g/cm
3以上0.925g/cm
3以下、0.920g/cm
3以上0.940g/cm
3以下、0.905g/cm
3以上0.940g/cm
3以下の範囲内であるとよい。なお、ここで「主に」とは、シーラントフィルム1を構成する樹脂のうち、重量割合で70%以上であることを意味する。また、平均密度は、JISK7112:1999に準拠した測定方法またはこれと比較できる測定方法により測定する。
【0080】
(表面・裏面)
表面4は、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.6μm以上2.3μm以下の範囲内の凹凸が形成されているとよい。また、裏面5は、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.2μm以上1.2μm以下の範囲内の凹凸が形成されているとよい。
【0081】
表面4の算術平均粗さRaが0.6μm未満または裏面5の算術平均粗さRaが0.2μm未満の場合、シーラントフィルム1の巻取時に重要な表面4と裏面5を合わせたときの静摩擦係数が高くなり滑り性が悪くなってしまうことや、保管温度を変化させたときの滑り性が変化してしまうことがある。一方、表面4の算術平均粗さRaが2.3μmを超える場合は、シーラントフィルム1同士を重ねて熱溶着させる際に空隙を多く作ってしまうことで、ヒートシール性が低下してしまうことがある。また、裏面5の算術平均粗さRaが1.2μmを超える場合には、シーラントフィルム1と基材11を接着し包装材10を得る際に空隙を多く作ってしまうことで、接着強度が低下してしまうことがある。
【0082】
なお、表面4及び裏面5の凹凸は、熱可塑性樹脂2によりそれぞれ形成されていてもよいし、熱可塑性樹脂2とは異なる有機系または無機系微粒子により形成されていてもよい。
なお、本実施形態で使用可能な上記有機系または無機系微粒子は、上述の第一実施形態で説明した有機系または無機系微粒子と同じものである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
【0083】
なお、熱可塑性樹脂2により凹凸が形成されている場合は、有機系または無機系微粒子を別途用意する必要がないため、材料面、管理面において、コストを下げることが可能である。また、微粒子13を添加した場合、狙った高さやサイズの形状を付加することは難しいが、熱可塑性樹脂2により凹凸を形成する場合は、所望の金型を作製することで、狙った高さやサイズの形状を付加することが可能である。これにより、透明性、滑り性、耐ブロッキング性など必要に応じた形状を付加することができる。もっとも、わざわざ狙った金型を作製しなくとも、例えば、ゴムロールのマット目でも十分凹凸形状を得ることは可能である。
【0084】
(静摩擦係数)
本実施形態における具体的な最適な静摩擦係数の範囲は、上述の第一実施形態で説明した最適な静摩擦係数の範囲と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
また、本実施形態に係るシーラントフィルム1には、第一実施形態と同様、その他の各種の添加剤が含まれていてもよい。例えば、加工安定性を付与するための酸化防止剤などを適宜添加することが可能である。
【0085】
(製造方法)
本実施形態のシーラントフィルム1を作製する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することが可能である。また、シーラントフィルム1は、熱可塑性樹脂2にシリコーンガム3を分散させてフィルム化した後に冷却して形成すればよい。つまり、本実施形態に係るシーラントフィルム1の製造方法は、上述の第一実施形態で説明したシーラントフィルム1の製造方法とほぼ同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明とは異なる部分について説明し、その他については説明を省略する。
【0086】
本実施形態に係るシリコーンガム3の分散方法は、上述の第一実施形態で説明したシリコーンガム3の分散方法と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
本実施形態に係るフィルム化の方法は、上述の第一実施形態で説明したフィルム化の方法と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
【0087】
なお、本実施形態のように、単層のシーラントフィルム1を形成する場合、上述したように、シリコーンガム3と熱可塑性樹脂2との相溶性は悪いため、シリコーンガム3を分散させた溶融フィルムをゆっくり冷却させることで、シリコーンガム3を表面4にブリードさせることが可能である。このとき、裏面5には別材料を密着させることで、界面がなくなり、裏面5へのブリードを抑えることが可能である。また、シリコーンガム3を添加していないシーラントフィルムを得た後に、その表面をシリコーンガム3を含んだ塗液でコーティングすることでシリコーンガム3を表面4に付与する方法でも問題ない。
【0088】
本実施形態に係る冷却方法は、上述の第一実施形態で説明した冷却方法と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
なお、表面4及び裏面5の凹凸として微粒子13を添加する場合には、微粒子13を表面4または裏面5に存在させる必要があるため、溶融フィルムの冷却方法として、金属ロール同士、金属-ゴムロールで圧着する方法は好ましくない。これに対し、熱可塑性樹脂2により上記凹凸を付加する場合は、金属ロール同士、金属-ゴムロールで圧着する方法が好ましい。また、熱可塑性樹脂2により凹凸を付加する場合は、熱プレスなどによって形状を付加してももちろん問題ない。
【0089】
本実施形態においても、第一実施形態と同様、裏面5には必要に応じ表面改質処理を実施することも可能である。例えば、印刷適性向上、積層使用時のラミネート適性向上のために、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることにより官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスによる改質を好適に用いることが可能である。
【0090】
(包装材10)
図9に示すように、シーラントフィルム1の裏面5に基材11を接着させることで本発明の効果を備えた包装材10を得ることができる。このとき、上述したように、シリコーンガム3は裏面5に露出していないため、裏面5と基材11との接着強度を十分得ることができる。つまり、本実施形態に係るシーラントフィルム1を使用することで、包装材10としても、ヒートシール性及び滑り性が良好であり、且つシーラントフィルム1と基材11との接着強度が高い包装材10を得ることができる。また、裏面5と基材11とを直接接着していてもよいが、
図6に示すように、接着剤9を介して裏面5と基材11とを接着していてもよい。この場合であっても、上記同様に、十分な接着強度を得ることができる。
【0091】
本実施形態に係る基材11は、上述の第一実施形態で説明した基材11と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
また、本実施形態に係る包装材10の具体的な最適な静摩擦係数の範囲も、上述の第一実施形態で説明した包装材10の最適な静摩擦係数の範囲と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
【0092】
(包装体12)
本実施形態では、上述の第一実施形態と同様、本実施形態に係る包装材10を用いて、互いに向かい合うシーラントフィルム1同士の周縁をヒートシール等により溶着することで、上述した本発明の効果を備えた包装体12を得られる。
本実施形態に係る包装体12は、上述の第一実施形態で説明した包装体12と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
以上、本発明の第二実施形態及びその変形例を示したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の技術的思想を逸脱しない限り、包材としての用途を考慮し、要求されるその他の物性である剛性、強度、衝撃性等を向上する目的で、他の層や構造を任意に形成できることはいうまでもない。
【0093】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態に係るシーラントフィルム1は、一方の面である表面4には、シリコーンガム3が熱可塑性樹脂2に対し0.4%以上4%以下の割合で含有されており、表面4とは反対面である裏面5には、シリコーンガム3が含まれていない。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1にヒートシール性及び加工工程における良好な滑り性を付与することができる。
【0094】
(2)また、本実施形態に係るシーラントフィルム1は、表面4に算術平均粗さRaが0.6μm以上2.3μm以下の範囲内の凹凸を形成し、裏面5に算術平均粗さRaが0.2μm以上1.2μmの範囲内の凹凸を形成してもよい。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1の、表面4と裏面5を合わせたときの静摩擦係数を低減することができる。そのため、シーラントフィルム1に良好な滑り性を付与することができる。
また、このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1同士を熱溶着させる際に発生する空隙の量を低減することができる。そのため、シーラントフィルム1に良好なヒートシール性を付与することができる。
【0095】
(3)また、本実施形態に係るシーラントフィルム1は、少なくとも3層以上から成り、表面4を有する層を表面層6、裏面5を有する層を裏面層8、表面層6と裏面層8との間に位置する層を中間層7としたとき、表面層6、裏面層8及び中間層7の主成分をポリエチレン又はその誘導体とし、表面層6、中間層7及び裏面層8の各平均密度を、表面層6≦中間層7、表面層6≦裏面層8の関係式を満たすものとしてもよい。さらに、表面層6の平均密度を0.905g/cm3以上0.925g/cm3以下の範囲内とし、中間層7の平均密度を0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内とし、裏面層8の平均密度を0.905g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内としてもよい。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1の耐衝撃性及びヒートシール性を良好にしたまま、曲げ剛性や引裂き性を良好にすることができる。
【0096】
(4)また、本実施形態に係る包装材10は、上述のシーラントフィルム1の裏面5に、少なくとも基材11が積層させている。
このような構成であれば、裏面5にシリコーンガム3が含まれている場合と比較して、基材11を積層させた包装材10の接着強度を高めることができる。
(5)また、本実施形態に係る包装体12は、上記の包装材10を備えている。
このような構成であれば、シーラントフィルム1と基材11との接着強度を高めた包装材10を用いているため、包装体12に良好な破袋性を付与することができる。
【0097】
[第二実施例]
以下、本発明の第二実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
包装用シーラントフィルム1は、表面層6、中間層7、裏面層8の積層した3層構成のフィルムとした。熱可塑性樹脂2として、表面層6では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.913g/cm3、MFR3.8)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。また、中間層7及び裏面層8では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.931g/cm3、MFR3.2)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。さらに、表3、4に示すように、表面層6、中間層7及び裏面層8に、シリコーンガム3及び微粒子13を添加した。微粒子13には、アクリル架橋体微粒子を使用した。なお、比較例2-1、2-2はシリコーンガム3ではなく、滑剤として一般的なエルカ酸アミドを添加した。各層のシリコーンガム3の添加量及びエルカ酸アミドの添加量や、微粒子13の平均粒径及び添加量を様々変更し、各種実施例、比較例とした。詳細情報は表3、4にまとめている。
【0098】
上述の表面層6、中間層7及び裏面層8の各材料を単軸共押出機でそれぞれ260℃に加熱溶融し、Tダイキャスト法にて、表面層6の厚みを15μm、中間層7の厚みを42.5μm、裏面層8の厚みを42.5μmとし、トータル100μm厚みのシーラントフィルム1を製膜した。なお、冷却にはエアーチャンバー方式を採用した。
【0099】
別の実施例として、表面4及び裏面5に熱可塑性樹脂2により凹凸を形成した実施例を表5に示す。シーラントフィルム1の作成方法は、微粒子13を添加しなかったこと、冷却方式を変更したこと以外は上記各実施例と同様にした。冷却方式としては、表面4にマット加工した冷却ロールを用い、Tダイから吐出した溶融樹脂をニップロールにより冷却ロールに十分密着するよう圧力を付加し直接賦形しながら冷却する方式とした。マット加工した冷却ロール側を表面4とし、ニップロール側を裏面5とした。なお、ニップロールにはテフロン(登録商標)ロールを用いた。
【0100】
上記各実施例及び各比較例で得られたシーラントフィルム1を、厚み12μmの二軸延伸ナイロンフィルムと厚み15μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとをドライラミネートにより貼り合せた基材11と、ドライラミネートにより貼り合わせて包装材10を得た。積層順は、ナイロンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1の順とした。接着剤には、主剤と硬化剤との2液混合型のポリウレタン系接着剤を使用し、ドライラミネート後50℃にて2日間エージング保管した。
【0101】
(作製フィルム形態測定)
上記各実施例及び各比較例によって得られたシーラントフィルム1、包装材10の形態を評価するため、シーラントフィルム1の表面4及び裏面5におけるシリコーンガム3の存在量測定及び凹凸観察測定を行った。測定結果を表3~5に示す。
【0102】
(シリコーンガム3の存在量測定)
測定装置として、日本分光株式会社製のフーリエ変換赤外分光光度計(型番FT/IR-6000)を用いた。測定には、Geプリズム、1回反射型ATR法を採用した。以下にシリコーンガム3の存在量の測定手法について説明する。
【0103】
まず、シリコーンガム3そのものの赤外吸収スペクトル及び熱可塑性樹脂2であるポリエチレンそのものの赤外吸収スペクトルをそれぞれ測定し、それぞれの構造由来のピーク強度(Is、Ip)を算出した。今回の場合、1090cm-1付近のSi-O伸縮振動のピーク強度をIs、2850cm-1付近のCH2伸縮振動のピーク強度をIpとした。次に、各実施例及び各比較例のシーラントフィルム1の赤外吸収スペクトルを測定し、ポリエチレン由来のピーク強度に対するシリコーンガム3由来のピーク強度の比xを測定した。これらの結果から、以下の式1で表されるαを算出した。
α={(Ip/Is)×x}/{1+(Ip/Is)×x} ・・・式1
このαが、シリコーンガム3の存在割合(表面存在量)となる。
【0104】
(凹凸観察測定)
測定装置として、株式会社キーエンス製のレーザーマイクロスコープ(型番VK-X200)を用いた。対物レンズの倍率を10倍にし、表面4及び裏面5の測定を行い、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)の測定を行った。測定範囲は1mm2の範囲とした。
【0105】
(性能評価)
上記各実施例及び各比較例によって得られたシーラントフィルム1及び包装材10の性能を評価するため、シーラントフィルム1に関して、滑り性評価及びヒートシール性評価を実施し、包装材10に関して、滑り性評価及び基材接着性評価を実施した。各評価結果を表3~5に示す。
【0106】
(滑り性評価)
滑り性評価は、株式会社東洋精機製作所製の滑り傾斜角測定装置を用いて、傾斜角度を徐々に上げていった際の錘の滑り始める角度から静摩擦係数を算出する傾斜法により、静摩擦係数を評価した。錘は30mm幅×40mm長さ×30mm高さで重量197gの金属性ブロックを使用した。
【0107】
シーラントフィルム1に関しては、シーラントフィルム1の巻取時に重要となる表面4と裏面5を合わせたときの静摩擦係数、包装材10に関しては、包装材10の巻取時に重要となる表面4と基材11を合わせたときの静摩擦係数を測定した。
シーラントフィルム1の保管環境が異なっていると静摩擦係数は変化してしまうため、保管環境が20℃のときの静摩擦係数及び50℃のときの静摩擦係数を測定し、さらに、両測定結果の差分を算出した。
【0108】
評価結果は、適正な滑り性である静摩擦係数が0.3~0.7の範囲内に入っているものを「〇」、「〇」にはならないが0.2~1.0の範囲内に入っているものを「△」、それ以外のものを「×」とした。また、環境によらず滑り性は変化しないことが望ましいため、20℃及び50℃の静摩擦係数の差分が、0.2以下のものを「〇」、「〇」にはならなかったが実用上問題のない0.5以下のものを「△」、それ以上のものを×とした。なお、静摩擦係数が1.2を超えるものは測定できていないため、「>1.2」と表記している。
【0109】
(ヒートシール性評価)
ヒートシール性評価は、テスター産業製のヒートシーラー(型番TP-701-B)を用いてシール圧力0.2MPa、シール時間を1秒、シール幅を10mmとし、シール温度を140℃、シーラントフィルム1の表面4側の面同士を重ねてシールした。シールしたシーラントフィルム1を15mm幅×100mmに切出し、チャック間距離を50mm、引張り速度を300mm/minとして島津製作所株式会社製引張試験機(型番AGS-500NX)を用いてT字剥離強度を測定し、シール強度とした。シール強度が17[N/15mm]以上のものを「〇」、15[N/15mm]~17[N/15mm]のものを「△」、15[N/15mm]以下のものを「×」とした。
【0110】
(基材接着性評価)
基材接着性評価は、ナイロンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1の順に積層した包装材10に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間の接着性を評価した。まず、溶剤をつけたカッター刃で、両フィルム間の剥離を実施した。剥離ができたものに関しては、それをきっかけとし、島津製作所株式会社製引張試験機(型番AGS-500NX)を用いて、T字剥離を実施した。サンプルサイズは15mm幅×100mmとし、チャック間距離は10mm、引張り速度は300mm/minの条件とした。
【0111】
評価結果は、カッター刃で剥離ができなかったものを「〇」とした。剥離ができ、きっかけは作れたがT字剥離時にポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間では剥離せず、すぐにポリエチレンテレフタレートフィルムが破断し、ナイロンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルムで剥離したものを「△」とした。きっかけが作れ、T字剥離時にポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間が少しでも剥離したものは「×」とした。
【0112】
(総合評価)
総合判定として、上記のシーラントフィルム1に関する滑り性評価及びヒートシール性評価、並びに包装材10に関する滑り性評価及び基材接着性評価の全評価が「〇」評価であるものを「〇」とし、一つでも「△」評価があったものを「△」、一つでも「×」評価があったものを「×」と表記した。
【0113】
(評価結果)
上各実施例及び各比較例のシーラントフィルム1及び包装材10の評価結果を表3~5に記載する。
【表3】
【0114】
【0115】
【0116】
表3の比較例2-1、2-2の結果、一般的な滑剤であるエルカ酸アミドを添加すると、添加量に関わらず、温度による滑り性変化が大きくなってしまっていることがわかる。対して、実施例2-1、2-2は、その滑り性評価の結果を含め、ヒートシール性及び基材接着性評価ともに良好であり、総合評価で「〇」であった。なお、実施例2-1、2-2は、表面層6にシリコーンガム3を1%添加した結果、表面4にシリコーンガム3が1.6%存在しており、裏面層8にシリコーンガム3を添加しなかった結果、裏面5にもシリコーンガムは存在しない。実施例2-2の中間層7にはシリコーンガム3を1%添加したが、シリコーンガム3の表面存在量は表面4、裏面5共に変化は無く、また、性能にも差はないことが確認できた。
【0117】
実施例2-1、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7及び比較例2-3、2-4は、表面層6に添加するシリコーンガム3の量を変更しているが、それに応じて表面4に存在するシリコーンガム3の存在量も線形的に変化していることが分かる。このとき、シリコーンガム3の表面存在量が4%を超えた比較例2-3はヒートシール性が、0.4%未満である比較例2-4は滑り性が、それぞれNGになり、総合評価として「×」になっていることがわかる。
【0118】
実施例2-1及び比較例2-5、2-6、2-7は、裏面層8に添加するシリコーンガム3の添加量を変更しているが、それに応じて、裏面5に存在するシリコーンガム3の存在量も線形的に変化している。その結果、シリコーンガム3が裏面5に存在していると、基材接着性がNGになった。特に比較例2-5は、基材接着性が弱く、ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間で剥離が進んだが、比較例2-7は僅かにポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間で剥離し、すぐにポリエチレンテレフタレートフィルムが破断してしまった結果である。このため、シリコーンガム3の裏面5の存在量は少ないほど良好であることが判明した。
【0119】
表5は、表面4、裏面5の凹凸を熱可塑性樹脂2にて作製し、シリコーンガム3の処方は表3と同様にした例であるが、その評価結果は、ほぼ、表3と同じであることがわかる。つまり、上記凹凸の作製方法によらず、シリコーンガム3の表面4、裏面5の存在量を適切にすることで、滑り性、ヒートシール性及び基材接着性をそれぞれ良好にすることが可能である。
【0120】
表4は、表面4、裏面5の凹凸を微粒子13により作成した例である。微粒子13の粒径及び添加量を変更することで、様々な凹凸具合、つまり、算術平均粗さRaを変更している。シリコーンガム3の添加量は変更しておらず、測定誤差により0.1のずれはあるが、シリコーンガム3の表面存在量は変化が無いことがわかる。
【0121】
実施例2-1、2-8、2-9、2-10、2-11、2-12、2-13、2-14、2-15、2-16、2-17の結果から、表面4の算術平均粗さRa値が2.3μmを超えると、ヒートシール性が悪化し「△」となってしまうことがわかる。また、Ra値が0.6μm未満になると、滑り性が悪化し「△」となってしまうことがわかる。そのため、表面4の凹凸の度合いは、算術平均粗さが0.6μm~2.3μmであるとよい。また、実施例2-1、2-18、2-19、2-20、2-21、2-22、2-23、2-24の結果から、裏面5のRa値は、0.2未満になると、滑り性が悪化し「△」となってしまう。また、Ra値が大きすぎNGとなる範囲までは実施していないが、少なくとも今回確認した1.2μmまでは問題ないことが確認できた。これ以上凹凸が付いた場合には、基材接着性が低下することが懸念されるし、また、微粒子13を多量に添加しなければならないため、コストアップに繋がり、メリットがない。
【符号の説明】
【0122】
1 包装用シーラントフィルム(シーラントフィルム)
2 熱可塑性樹脂
3 シリコーンガム
4 表面
5 裏面
6 表面層
7 中間層
8 裏面層
9 接着剤
10 包装材
11 基材
12 包装体
13 微粒子