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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】カッター
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/26 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
B23C5/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017169778
(22)【出願日】2017-09-04
(65)【公開番号】P2019042882
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】萩原 隆行
(72)【発明者】
【氏名】石森 茂
(72)【発明者】
【氏名】長屋 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】保木 宙志
【審査官】永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-50010(JP,U)
【文献】実開昭64-50011(JP,U)
【文献】特開2010-253656(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015005776(DE,A1)
【文献】特開2001-162430(JP,A)
【文献】特開平6-190621(JP,A)
【文献】特開平10-202414(JP,A)
【文献】特開2015-217511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0201629(US,A1)
【文献】実開昭56-38743(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0129475(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107457440(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00-9/00,
B23B 27/00-27/24,31/00-31/42,
B23Q 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転されるカッター本体の先端部外周に切刃が配設されるとともに、上記カッター本体の中央部には、上記軸線に沿って該カッター本体を貫通する取付孔が形成されており、
この取付孔は、上記カッター本体の先端に開口する開口部と、この開口部の後端側に形成されて頭部付きボルトの頭部を収容可能な収容部と、内周部にネジが切られた雌ネジ部とを備え、
前記頭部の先端面には作業用工具が係合する係合凹部が形成され、
前記開口部の内径は、前記収容部の内径および前記頭部の外径よりも小さく、前記係合凹部の外接円の直径よりも大きく、
前記雌ネジ部には、該雌ネジ部にねじ込み可能な雄ネジ部を外周部に有する取付部材が取り付けられていて、
この取付部材には、上記収容部に上記頭部を収容した状態において上記頭部付きボルトのネジ部が挿通可能で上記頭部よりは小さな内径の貫通孔が形成されていることを特徴とするカッター。
【請求項2】
上記取付部材には、上記軸線に平行な平面部が形成されるとともに、
上記カッター本体には、上記平面部に当接可能な回り止めネジがねじ込まれていることを特徴とする請求項1に記載のカッター。
【請求項3】
上記取付部材は、全体が上記取付孔内に収容されていて、
この取付部材よりも後端側の上記取付孔は、アーバーの先端部に設けられた先端凸部が挿入される挿入部とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカッター。
【請求項4】
上記取付孔の雌ネジ部と上記取付部材の雄ネジ部が、上記頭部付きボルトのネジ部のネジピッチよりも小さなネジピッチとされるか、または上記頭部付きボルトのネジ部とは逆方向に捩れていることを特徴とする請求項3に記載のカッター。
【請求項5】
上記取付部材の後端外周部は、上記カッター本体の後端面に張り出すフランジ状に形成されるとともに、
上記取付部材の後端内周部は、上記貫通孔に連通してアーバーの先端凸部が挿入される挿入部とされており、
上記雄ネジ部は、この挿入部の外周側に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカッター。
【請求項6】
上記取付孔の雌ネジ部と上記取付部材の雄ネジ部が、上記軸線方向の後端側に向かうに従い、切削時の上記カッター本体の回転方向と同じ方向に捩れていることを特徴とする請求項5に記載のカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線回りに回転されるカッター本体の先端部外周に切刃が配設されたカッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、このようなカッターをアーバーに取り付けるには、カッター本体の軸線に沿って形成された貫通孔に頭部付きボルト(セットボルト)を挿通してアーバーの先端部に形成されたネジ孔にねじ込んで取り付けることが一般的であるが、この場合にはカッター本体の先端部に頭部付きボルトの頭部を収容する座繰りを形成しなければならず、特に刃先交換式カッターの場合などには、この座繰りがインサート取付座と干渉するため、カッターの小径化に対応することが困難であった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、工具取付軸(アーバー)の先端部に軸心を合わせて嵌合されるカッタ本体と、このカッタ本体を工具取付軸に直接固定するねじ棒とを備えてなり、このねじ棒は、長手方向の中央部に環状の逃げ溝が形成され、その一端側には工具取付軸の先端面に設けられたねじ穴に螺合する第一雄ねじが形成され、逃げ溝の他端側には第一雄ねじとほぼ同一径で逆ねじの第二雄ねじが形成されており、カッタ本体にはねじ棒の第二雄ねじに螺合するねじ穴が形成されたカッターが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、軸心線回りに回転される工具本体の軸方向先端側の外周部に切削インサートが着脱自在に取り付けられるとともに、この工具本体の軸方向後端側が取付ボルトによってアーバーに取り付けられる刃先交換式切削工具において、ボルト頭部に締付け穴部が設けられた取付ボルトを用い、工具本体の軸方向後端側の中央部に、取付ボルトのボルト頭部を工具本体の軸方向後端側から案内して収容させる案内収容穴部を設けるとともに、この案内収容穴部内に収容された取付ボルトを回転可能な状態で案内収容穴部内に保持させる保持手段を設け、取付ボルトのボルト頭部よりも小径の締付け用穴を、工具本体の軸方向先端側から上記の案内収容穴部に貫通するように設けるとともに、上記の取付ボルトを保持手段によって案内収容穴部内に保持させるにあたり、案内収容穴部内に収容された取付ボルトのボルト頭部の上に載置させる平面が非円形のクランプ部材の中央部に挿通穴を設け、この挿通穴に取付ボルトのボルト軸を挿通させて、この非円形のクランプ部材を案内収容穴部内に収容させるとともに、このクランプ部材を回転させて、案内収容穴部内に設けられた係止部にこのクランプ部材を係止させ、さらに係止部に係止されたクランプ部材の回転を抑止する回転抑止部材を案内収容穴部内に収容させるとともに、この回転抑止部材をネジ部材により案内収容穴部内に固定させたカッターが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2503842号公報
【文献】特許第5307619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたカッターにおいては、ねじ棒に頭部を要することがなく、従ってこの頭部を収容する座繰りをカッター本体の先端に形成する必要もなくなって、小径の刃先交換式カッターでもインサート取付座との干渉を生じることがない。しかしながら、この特許文献1に記載されたカッターでは、カッター本体をアーバーに押圧して締結するねじ棒の第二雄ねじおよびカッター本体のねじ穴が、第一雄ねじおよびアーバーのねじ穴とほぼ同一径であって、カッター本体の軸線に近い位置にあるため大きな押圧力を確保することが難しく、緩みを生じ易いという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載されたカッターでは、カッター本体をアーバーに取り付けるのに、取付ボルト、保持手段としてのクランプ部材、回転抑止部材、ネジ部材の4種の部品が必要となり、部品管理が煩雑となるとともに部品の紛失も生じ易い。また、案内収容穴部内に係止部を設けるにはフライス加工などを施さなければならず、カッター本体の製造工程が複雑化して非効率的かつ非経済的となる。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたもので、カッター本体をアーバーに取り付けるのに必要な部品数が増えたり、カッター本体の製造工程が複雑化したりすることなく、小径の刃先交換式カッターであっても確実にカッター本体をアーバーに取り付けることが可能なカッターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転されるカッター本体の先端部外周に切刃が配設されるとともに、上記カッター本体の中央部には、上記軸線に沿って該カッター本体を貫通する取付孔が形成されており、この取付孔は、上記カッター本体の先端に開口する開口部と、この開口部の後端側に形成されて頭部付きボルトの頭部を収容可能な収容部と、内周部にネジが切られた雌ネジ部とを備え、前記頭部の先端面には作業用工具が係合する係合凹部が形成され、前記開口部の内径は、前記収容部の内径および前記頭部の外径よりも小さく、前記係合凹部の外接円の直径よりも大きく、前記雌ネジ部には、該雌ネジ部にねじ込み可能な雄ネジ部を外周部に有する取付部材が取り付けられていて、この取付部材には、上記収容部に上記頭部を収容した状態において上記頭部付きボルトのネジ部が挿通可能で上記頭部よりは小さな内径の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成のカッターでは、上記頭部付きボルト(セットボルト)の頭部に軸状の六角レンチ等の作業用工具が係合する係合凹部を形成することにより、取付孔の開口部からの操作で頭部付きボルトを回転させることができ、こうして回転された頭部付きボルトは、そのネジ部がアーバーの先端部に形成されたネジ孔にねじ込まれるとともに、頭部が取付部材を介してカッター本体をアーバーの先端部に押圧して固定する。
【0011】
従って、カッター本体の先端には、頭部付きボルトの頭部を収容する収容部よりは小径の開口部を形成するだけでよく、小径の刃先交換式カッターでもインサート取付座と取付孔とが干渉するのを避けることができる。また、カッター本体をアーバーに取り付けるのに必要な最小限の部品数も、頭部付きボルトと取付部材の2つだけで済むので、部品管理が煩雑となるのを避けることができるとともに、カッター本体に取付部材を取り付けるのも、雌ネジ部を形成するだけでよいのでカッター本体の製造工程が複雑化するようなこともない。
【0012】
そして、上記構成のカッターでは、頭部付きボルトのネジ部よりも大径な頭部が、上述のように取付部材を介してカッター本体をアーバーの先端部に押圧する。すなわち、ネジ部や、このネジ部がねじ込まれるアーバーのネジ孔よりも大径な頭部がカッター本体の軸線から離れた位置で取付部材を介してカッター本体を押圧するので、大きな押圧力を確保して頭部付きボルトの緩みを防ぐことができ、カッター本体を確実にアーバーに固定して取り付けることが可能となる。
【0013】
ここで、このように頭部付きボルトの緩みを防ぐことができたとしても、この頭部付きボルトによってカッター本体を押圧する取付部材の雄ネジ部と取付孔の雌ネジ部とに緩みが生じると、結果的にカッター本体を確実にアーバーに取り付けることはできない。そこで、このような取付部材の緩みを防ぐには、上記取付部材に、上記軸線に平行な平面部を形成するとともに、上記カッター本体には、上記平面部に当接可能な回り止めネジをねじ込むことにより、取付部材の回転を拘束するのが望ましい。
【0014】
また、上記取付部材を、全体が上記取付孔内に収容するようにして、この取付部材よりも後端側の上記取付孔を、アーバーの先端部に設けられた先端凸部が挿入される挿入部とすれば、軸線方向のカッター本体の全長を短くすることができ、特に小径のカッターの場合に高い剛性を確保することが可能となるとともに、アーバーとの取付強度も向上させることができ、高い加工精度を得ることができる。
【0015】
なお、この場合には、上記取付孔の雌ネジ部と上記取付部材の雄ネジ部を、上記頭部付きボルトのネジ部のネジピッチよりも小さなネジピッチとするか、または上記頭部付きボルトのネジ部とは逆方向に捩れるようにすることにより、カッター本体のアーバーへの取付時における頭部付きボルトの回転によって取付部材が緩むのをさらに確実に防ぐことができる。
【0016】
一方、上記取付部材の後端外周部は、上記カッター本体の後端面に張り出すフランジ状に形成されていて、この後端面とアーバーの先端面との間から外部に露出するようにされていてもよい。この場合に、上記取付部材の後端内周部を、上記貫通孔に連通してアーバーの先端凸部が挿入される挿入部として、上記雄ネジ部を、この挿入部の外周側に形成すれば、この雄ネジ部と、該雄ネジ部がねじ込まれる取付孔の雌ネジ部とを大径とすることができ、一層安定して取付部材を取り付けることが可能となる。
【0017】
また、この場合には、上記取付孔の雌ネジ部と上記取付部材の雄ネジ部を、上記軸線方向の後端側に向かうに従い、切削時の上記カッター本体の回転方向と同じ方向に捩れるようにすることにより、カッター本体の後端面とアーバーの先端面との間にフランジ状の後端外周部が挟み込まれた取付部材に切削時にカッター本体の回転方向とは反対向きに切削負荷が作用しても、取付部材に緩みが生じるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、カッター本体を取り付けるのに要する部品数が増加したり、カッター本体の製造工程を複雑化させたりすることなく、たとえ小径の刃先交換式カッターであっても、確実にカッター本体をアーバーに取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】アーバーの先端部に取り付けられた本発明の第1の実施形態の斜視図である。
図2図1に示す実施形態の側面図である(ただし、切削インサートは図示が略されている。)。
図3図2におけるZZ断面図である(ただし、切削インサートは図示が略されている。)。
図4図3におけるZZ断面図である(ただし、切削インサートは図示が略されている。)。
図5図1に示す実施形態のカッター本体の斜視図である。
図6図5に示すカッター本体の後端面の平面図である。
図7図6における矢線X方向視の側面図である。
図8図6におけるYY断面図である。
図9図6におけるZZ断面図である。
図10図1に示す実施形態の取付部材の(a)平面図、(b)図(a)における矢線X方向視の側面図、(c)図(a)における矢線Y方向視の側面図である。
図11】アーバーの先端部に取り付けられた本発明の第2の実施形態の斜視図である。
図12図11に示す実施形態の側断面図である。
図13図12におけるZZ断面図である。
図14図11に示す実施形態のカッター本体の斜視図である。
図15図14に示すカッター本体の先端面の底面図である。
図16図14に示すカッター本体の後端面の平面図である。
図17図16における矢線Y方向視の側面図である。
図18図16におけるZZ断面図である。
図19図11に示す実施形態の取付部材の(a)斜視図、(b)平面図、(c)底面図、(d)図(b)における矢線X方向視の側面図、(e)図(b)における矢線Y方向視の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1ないし図10は、本発明の第1の実施形態を示すものである。本実施形態におけるカッター本体1は、鋼材等の金属材料によって軸線Oを中心として軸線O方向中央部がくびれた略円柱状に形成されており、このカッター本体1の先端部(図1ないし図4において下側部分)は切刃部2とされるとともに、後端部はアーバー11に取り付けられる取付部3とされる。このようなカッターは、取付部3に取り付けられたアーバー11が工作機械の主軸に把持されることにより、軸線O回りにカッター回転方向Tに回転されつつ該軸線Oに交差する方向に送り出され、切刃部2に配設される切刃によって被削材を切削加工する。
【0021】
アーバー11は、その先端部が円柱状に形成され、ただし先端面の中央部にはアーバー11がなす円柱と同軸で小径の同じく円柱状の先端凸部11aが形成されるとともに、この先端凸部11aには、カッター本体1をアーバー11に取り付けるための頭部付きボルト12がねじ込まれるネジ孔11bが形成されて先端凸部11aの先端面中央に開口している。また、アーバー11の先端面には、先端凸部11aの外周から僅かな間隔をあけて直径方向外周側に延びる一対のキー11cが形成されている。
【0022】
カッター本体1の先端部外周には、切刃部2の先端から後端側に向けて延びるチップポケット4が周方向に間隔をあけて複数条(本実施形態では4条)形成されており、これらのチップポケット4のカッター回転方向Tを向く壁面の先端外周部にインサート取付座5がそれぞれ形成されて、これらのインサート取付座5に切刃6aを有する切削インサート6がクランプネジ6bによって着脱可能に取り付けられる。すなわち、本実施形態のカッターは、カッター本体1の先端部外周に配設される切刃6aが切削インサート6に形成された刃先交換式のカッターである。
【0023】
一方、カッター本体1の内部には、このカッター本体1の中央部に、軸線Oに沿って該カッター本体1を貫通する取付孔7が形成されている。この取付孔7は、カッター本体1の先端に開口する開口部7aと、この開口部7aの後端側に形成されて上記頭部付きボルト12の頭部12aを収容可能な収容部7bと、内周部にネジが切られた雌ネジ部7cとを備えている。なお、この頭部付きボルト12の頭部12aは円板状とされ、その先端面には軸状の六角レンチ等の作業用工具が係合する断面正六角形等の係合凹部12bが形成されている。
【0024】
本実施形態では、開口部7aと収容部7bは断面円形とされていて、その内径(直径)は開口部7aが収容部7bよりも小さく、この開口部7aの直径は軸状の上記作業用工具が挿通可能な大きさとされ、すなわち頭部付きボルト12の上記係合凹部12bの外接円の直径よりも僅かに大きく、頭部12aの外径よりは小さくされている。また、収容部7bの内径は、開口部7a側の先端部が頭部12aを緩く嵌め入れ可能な大きさとされるとともに、この先端部から後端側に向けて一段拡径してから一定内径で延び、次いで漸次縮径して雌ネジ部7cに至る。
【0025】
さらに、雌ネジ部7cの内径は、頭部付きボルト12の頭部12aが通過可能な大きさとされ、すなわち収容部7bの先端部の内径よりも僅かに大きい。また、この雌ネジ部7cよりも後端側において、取付孔7は、収容部7bと同様に一段拡径した後に一定内径で後端側に延び、次いで漸次縮径してから再び一定内径となってカッター本体1の後端面に開口する。この後端面に開口する取付孔7の一定内径の部分は、アーバー11の上記先端凸部11aが嵌め入れられて挿入可能な大きさとされた挿入部7dとされている。
【0026】
そして、上記雌ネジ部7cには、頭部付きボルト12の頭部12aを収容部7bに収容した状態で、図10に示すような取付部材8がねじ込まれて取り付けられる。この取付部材8は、カッター本体1と同じく鋼材等の金属材料により円環状に形成され、その先端部(図10(b)、(c)において下側部分)は後端部(図10(b)、(c)において上側部分)よりも外径が僅かに一段大径とされ、この先端部の外周部に、上記雌ネジ部7cにねじ込まれる雄ネジ部8aが形成されている。
【0027】
また、円環状の取付部材8の内周部は、上述のように収容部7bに頭部12aを収容した状態において頭部付きボルト12のネジ部12cが挿通可能で頭部12aよりは小さな内径の貫通孔8bとされている。なお、取付孔7の雌ネジ部7cと取付部材8の雄ネジ部8aは、この頭部付きボルト12のネジ部12cのネジピッチよりも小さなネジピッチとされるか、または捩れの向きが頭部付きボルト12のネジ部12cとは逆方向とされている。
【0028】
さらに、この取付部材8の僅かに小径となる後端部の外周には、互いに平行かつ取付部材8をカッター本体1に取り付けた状態で軸線Oとも平行となるように、一対の平面部8cが形成されている。さらにまた、取付部材8の後端部には、上記雄ネジ部8aを雌ネジ部7cにねじ込んで取付部材8をカッター本体1に取り付ける際に取付部材8を回転させる図示されない取付治具のU字軸状の先端部が挿入される一対の孔部8dが、後端側から見て貫通孔8bを間にして平面部8cに平行に軸線Oを通る直径方向に位置するように形成されて、取付部材8の後端面に開口している。
【0029】
このような取付部材8は、頭部付きボルト12の頭部12aが取付孔7の収容部7bに収容された状態で、この頭部付きボルト12のネジ部12cを貫通孔8bに挿入しつつ雌ネジ部7cの直上に配設される。さらに、上述のように取付治具のU字軸状をなす先端部が孔部8dにそれぞれ挿入されて軸線O回りに回転されることにより、雄ネジ部8aが雌ネジ部7cにねじ込まれて取り付けられる。従って、本実施形態における取付部材8は、その全体が取付孔7内に収容されることになる。
【0030】
なお、カッター本体1には、こうして取付部材8が雌ネジ部7cに取り付けられた状態で、取付部材8後端部の上記一対の平面部8cに直交する方向に延びる二対のネジ孔1aが、軸線Oを間にして該軸線Oと等間隔に離れて形成されており、これらのネジ孔1aには上記平面部8cに当接可能なイモネジ状の回り止めネジ9が外周側からねじ込まれている。また、カッター本体1の取付部3の後端面には、先端凸部11aを取付孔7の挿入部7dに嵌め入れて挿入した状態でアーバー11の先端面の上記キー11cが嵌め入れ可能な一対のキー溝1bが形成されている。
【0031】
さらに、頭部付きボルト12のネジ部12cの後端からは軸線Oに沿って図示されない孔部が形成され、この孔部は途中で分岐して、取付孔7内においてアーバー11の先端凸部11aとの先端面と取付部材8の後端面との間に形成される空間Cに開口している。一方、カッター本体1には、この空間Cからカッター本体1の先端外周側に延びて上記チップポケット4にそれぞれ開口するクーラント孔1cが形成されており、アーバー11から頭部付きボルト12の上記孔部を介して上記空間Cに供給されるクーラントが切削インサート6に吹きかけられるようにされている。
【0032】
このように構成されたカッターでは、上述のように頭部付きボルト12の頭部12aを取付孔7の収容部7bに収容して取付部材8を雌ネジ部7cにねじ込んで取り付け、頭部付きボルト12のネジ部12cを取付部材8の後端面から取付孔7の挿入部7d内に突出させた上で、回り止めネジ9によって取付部材8の回転を拘束した状態で、アーバー11の先端部に配設される。
【0033】
そして、取付孔7先端の開口部7aから作業用工具を挿入して頭部付きボルト12の係合凹部12bに係合させ、頭部付きボルト12を回転させてネジ部12cを先端凸部11aのネジ孔11bにねじ込むことにより、カッター本体1は取付部材8を介して軸線O方向後端側に引き込まれ、先端凸部11aが取付孔7の挿入部7dに挿入されるとともにキー11cがキー溝1bに嵌め入れられて、カッター本体1はその後端面がアーバー11の先端面に押圧されて取り付けられる。
【0034】
なお、この頭部付きボルト12のネジ部12cのねじ込みの際、取付部材8は平面部8cに当接した回り止めネジ9によって回転が拘束されるとともに、取付孔7の雌ネジ部7cと取付部材8の雄ネジ部8aが、頭部付きボルト12のネジ部12cのネジピッチよりも小さなネジピッチとされるか、またはネジ部12cとは逆方向に捩れているので、頭部付きボルト12の回転によって取付部材8が共回りすることはない。
【0035】
こうしてアーバー11の先端に取り付けられる上記構成のカッターにおいて、カッター本体1の先端に開口するのは、頭部付きボルト12の頭部12aを収容する取付孔7の収容部7bよりは小径で、係合凹部12bに係合する作業用工具が挿入可能な大きさの開口部7aでよい。このため、本実施形態のような刃先交換式カッターで切削インサート6の切刃6aの軸線Oからの外径が小径のものであっても、取付孔7とインサート取付座5との干渉を防ぐことができる。
【0036】
また、カッター本体1をアーバー11に取り付けるのに必要な最小限の部品数も、回り止めネジ9を除けば頭部付きボルト12と取付部材8の2つだけで済むので、部品管理が煩雑となるのを避けることができる。しかも、カッター本体1の取付孔7に取付部材8を取り付けるのも、カッター本体1に雌ネジ部7cを形成して取付部材8の雄ネジ部8aをねじ込むだけでよく、従ってカッター本体1に取付孔7を形成するのも中繰りバイトとネジ切りバイトによる旋削加工だけでよいので、カッター本体1を製造することが複雑となることもない。
【0037】
そして、さらに上記構成のカッターでは、頭部付きボルト12のネジ部12cよりも大径となる頭部12aが、上述のように取付部材8を介してカッター本体1をアーバー11の先端部に押圧してカッター本体1がアーバー11に取り付けられる。このため、ネジ部12cよりも軸線Oから離れた位置で頭部付きボルト12の頭部12aが取付部材8を介してカッター本体1を押圧するので、大きな押圧力を確保するとともに頭部付きボルト12の緩みを防ぐことができ、カッター本体1を確実にアーバー11に固定して取り付けることが可能となる。
【0038】
しかも、本実施形態では、取付部材8に軸線Oに平行な平面部8cが形成されるとともに、カッター本体1には、この平面部8cに当接可能な回り止めネジ9がねじ込まれており、これによって取付部材8の回転を拘束して緩み止めすることができる。また、本実施形態では、取付孔7の雌ネジ部7cと取付部材8の雄ネジ部8aは、頭部付きボルト12のネジ部12cのネジピッチ以下のネジピッチとされ、または頭部付きボルト12のネジ部12cとは逆方向に捩れており、これによってもカッター本体1をアーバー11に取り付ける際の頭部付きボルト12の回転によって取付部材8が緩むのを防ぐことができる。
【0039】
また、本実施形態では、こうしてカッター本体1をアーバー11に押圧して固定する取付部材8の全体が、取付孔7内に収容されて、この取付部材8よりも後端側の取付孔7内は、アーバー11の先端凸部11aが挿入される挿入部7dとされている。このため、カッター本体1の軸線O方向の全長を短くすることができて、特に小径のカッターの場合に高い剛性を確保することが可能となるとともに、アーバー11の先端凸部11aと、本実施形態ではキー11cとを直接カッター本体1に嵌め合わせることができて、取付強度も向上させることができるので、高い加工精度を得ることができる。
【0040】
ただし、第1の実施形態では、このように取付部材8の全体が取付孔7内に収容されているが、図11ないし図19に示す本発明の第2の実施形態のように、取付部材18の後端外周部が、カッター本体1の後端面に張り出すフランジ状に形成されて、取付部材18がカッター本体1の後端面とアーバー11の先端面との間から外部に露出するようにされていてもよい。なお、図11ないし図19において、図1ないし図10に示した第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。
【0041】
この第2の実施形態におけるカッター本体1は、その取付孔7が、収容部7bの後端側において外周側に一段拡径して短い長さで一定内径で延びた後、後端側に向かうに従い漸次拡径するテーパー部7eとされ、さらにこのテーパー部7eの後端側に雌ネジ部7cが形成されている。また、本実施形態では、カッター本体1にキー溝1bは形成されておらず、カッター本体1の後端面は軸線Oに垂直な円環状面とされている。
【0042】
このようなカッター本体1の取付孔7に取り付けられる取付部材18は、鋼材等の金属材料により図19に示すように多段円筒状に一体形成され、その先端部(図19(d)、(e)における下側部分)18aは、取付孔7の収容部7b後端側で一段拡径した部分に嵌め入れ可能な円板状とされるとともに、この先端部18aの後端側は取付孔7の上記テーパー部7eと等しいテーパー角で後端側に向かうに従い漸次拡径するテーパー部18bとされ、このテーパー部18bの後端側に、上記雌ネジ部7cにねじ込み可能な雄ネジ部18cが形成されている。
【0043】
また、この雄ネジ部18cの後端側は、僅かにくびれた後に外周側に張り出す円板状のフランジ部18dとされており、このフランジ部18dの外径は、カッター本体1の後端部の外径と略等しい。さらに、本実施形態においては、このフランジ部18dにアーバー11先端面のキー11cが嵌め入れ可能な一対のキー溝18eが形成されている。なお、本実施形態では、取付孔7の雌ネジ部7cと取付部材18の雄ネジ部18cは、軸線O方向の後端側に向かうに従い、切削時のカッター回転方向Tと同じ方向に捩れている。
【0044】
一方、この取付部材18の内周部は、その後端部が図12および図13に示すようにアーバー11の先端凸部11aが嵌め入れられて挿入される挿入部18fとされ、取付部材18の雄ネジ部18cは、この挿入部18fの外周側に形成されている。また、この挿入部18fから取付部材18の先端面にかけては、挿入部18fおよび頭部付きボルト12の頭部12aよりも小径でネジ部12cが挿通可能な貫通孔18gとされて挿入部18fと連通している。
【0045】
このような取付部材18は、取付孔7の収容部7bに頭部付きボルト12の頭部12aを収容した状態で、頭部付きボルト12のネジ部12cを貫通孔18gから挿入部18fに突出させつつ、雄ネジ部18cが取付孔7の雌ネジ部7cにねじ込まれることにより、カッター本体1に取り付けられる。
【0046】
そして、この状態でカッター本体1はアーバー11の先端部に配設され、第1の実施形態と同様に取付孔7先端の開口部7aから挿入した作業用工具によって頭部付きボルト12のネジ部12cをアーバー11のネジ孔11bにねじ込むことにより、カッター本体1は取付部材18を介してアーバー11の先端面に押圧されて取り付けられる。このとき、本実施形態では、取付部材18のキー溝18eにはアーバー11のキー11cが嵌め入れられ、フランジ部18dはカッター本体1の後端面とアーバー11の先端面との間に挟み込まれる。
【0047】
このような構成の第2の実施形態のカッターにおいても、カッター本体1の先端に開口するのは、取付孔7の収容部7bよりは小径で作業用工具が挿入可能な大きさの開口部7aでよく、小径の刃先交換式カッターであっても、取付孔7とインサート取付座5との干渉を防ぐことができる。また、カッター本体1をアーバー11に取り付けるにも、頭部付きボルト12と取付部材18の2つの最小部品数で済むので、部品管理を簡略化できるとともに、カッター本体1に取付孔7を形成するのも旋削加工だけでよいので、カッター本体1の製造が複雑となることもない。
【0048】
そして、本実施形態においても、頭部付きボルト12のネジ部12cよりも大径な頭部12aがネジ部12cよりも軸線Oから離れた位置で取付部材8を介してカッター本体1をアーバー11の先端部に押圧して取り付けられる。このため、大きな押圧力を確保することができるとともに、頭部付きボルト12の緩みを防ぐことができ、カッター本体1を確実にアーバー11に固定して取り付けることが可能となる。
【0049】
しかも、本実施形態では、アーバー11の先端凸部11aが挿入される挿入部18fが取付部材18に形成されているとともに、カッター本体1の取付孔7の雌ネジ部7cにねじ込まれる雄ネジ部18cは、この挿入部18fの外周側に形成されている。このため、これら雄ネジ部18cと雌ネジ部7cとを第1の実施形態と比べて大径とすることができるので、取付部材18を一層安定してカッター本体1に取り付けることが可能となり、加工精度も安定させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、これら取付孔7の雌ネジ部7cと取付部材18の雄ネジ部18cとが、軸線O方向の後端側に向かうに従い、切削時のカッター回転方向Tと同じ方向に捩れるように形成されている。従って、カッター本体1の後端面とアーバー11の先端面との間にフランジ部18dが挟み込まれた取付部材18に切削時にカッター回転方向Tとは反対向きに切削負荷が作用しても、雄ネジ部18cが雌ネジ部7cにねじ込まれる方向に作用するため、取付部材18に緩みが生じるのを防ぐことができる。なお、この第2の実施形態においても、取付部材18に平面部を形成して回り止めネジを当接させることにより回り止めしてもよい。
【0051】
また、これら第1、第2の実施形態では、本発明を刃先交換式のカッターに適用した場合について説明したが、カッター本体1の先端部外周に切刃6aが形成された切刃チップがロウ付けによって接合されたロウ付け式のカッターや、カッター本体1の先端部外周に切刃6aが直接形成されたソリッド式のカッターに本発明を適用することも、勿論可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 カッター本体
1b、18e キー溝
2 切刃部
3 取付部
5 インサート取付座
6 切削インサート
6a 切刃
7 取付孔
7a 開口部
7b 収容部
7c 雌ネジ部
7d、18f 挿入部
8、18 取付部材
8a、18c 雄ネジ部
8b、18g 貫通孔
8c 平面部
9 回り止めネジ
11 アーバー
11a 先端凸部
11b ネジ孔
11c キー
12 頭部付きボルト
12a 頭部
12b 係合凹部
12c ネジ部
O カッター本体1の軸線
T カッター回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
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