(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】衛生洗浄装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
E03D9/08 B
(21)【出願番号】P 2017181813
(22)【出願日】2017-09-21
【審査請求日】2020-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢岡 寿成
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186174(JP,A)
【文献】特開2014-025442(JP,A)
【文献】特開2007-245097(JP,A)
【文献】特開2014-233646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
E03C 1/00-1/10
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルの吐水口から人体局部へ向けて洗浄水を吐水する衛生洗浄装置であって、
給水源から供給された洗浄水を前記ノズルに導く導水部と、
前記導水部を流れる洗浄水に紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記導水部に設けられ、前記紫外線照射部から照射された紫外線を受ける除菌エリアと、
前記紫外線照射部からの紫外線の照射量及び前記除菌エリアを通過する洗浄水の流量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、人体局部へ向けての洗浄水の吐水の開始から所定時間が経過する間、前記除菌エリアを通過する洗浄水の単位時間当たりの流量が多い場合より前記除菌エリアを通過する洗浄水の単位時間当たりの流量が少ない場合のほうが、前記除菌エリアに対する積算照射照度が高くなるように制御することを特徴とする衛生洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置に関し、特に、紫外線照射部を備えた衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生洗浄装置の洗浄水として使用される水道水では、病気や腐敗を起こす可能性のある菌(微生物)を塩素によって死滅又は不活性化させることにより、菌を減らすことが行われている。しかしながら、塩素の混入のみで水道水中に含まれる菌を完全に取り除けるわけではない。
このため、衛生洗浄装置では、洗浄水に紫外線を照射する紫外線照射部を設置し、該設置位置を流路切替部よりも上流側に紫外線照射部を設けることで、洗浄水に含まれる菌をより低減させることが提案されている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な衛生洗浄装置において、吐水開始初期の洗浄水は、衛生洗浄装置内部の配管内に長時間保持された洗浄水であるため、吐水開始後所定時間経過した洗浄水と比較して洗浄水が長時間滞留することで菌が多く溶存している虞があった。このような長時間滞留した洗浄水が排出され、新たに給水源から供給される洗浄水と置換されるまでに要する時間は短時間であるため、紫外線の照射照度は吐水開始後所定時間経過した置換された洗浄水に合せて設定されていた。
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、衛生洗浄装置内部を通過する洗浄水の流量を小さくすると、吐水開始初期に衛生洗浄装置内部に滞留した洗浄水が排出されるまでに時間を要し、吐水初期の菌が多く溶存している虞がある洗浄水にて長い時間人体洗浄が行われる問題があった。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、衛生洗浄装置内部を通過する洗浄水の流量を小さくした場合においても、清潔な洗浄水で人体を洗浄することができる衛生洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために請求項1記載の衛生洗浄装置においては、ノズルの吐水口から人体局部へ向けて洗浄水を吐水する衛生洗浄装置であって、給水源から供給された洗浄水をノズルに導く導水部と、導水部を流れる洗浄水に紫外線を照射する紫外線照射部と、導水部に設けられ、紫外線照射部から照射された紫外線を受ける除菌エリアと、紫外線照射部からの紫外線の照射量及び除菌エリアを通過する洗浄水の流量を制御する制御部と、を備え、制御部は、人体局部へ向けての洗浄水の吐水の開始から所定時間が経過する間、除菌エリアを通過する洗浄水の単位時間当たりの流量が多い場合より除菌エリアを通過する洗浄水の単位時間当たりの流量が少ない場合のほうが、除菌エリアに対する積算照射照度が高くなるように制御することを特徴とする。
このように、除菌エリアを通過する単位時間当たりの洗浄水の流量が多い場合より除菌エリアを通過する単位時間当たりの洗浄水の流量が少ない場合のほうが、紫外線照射部から照射される紫外線の積算照射照度が高くなるように制御しているため、除菌エリアを通過する単位時間当たりの流量が少ないため流速が低下することで、吐水初期に導水部内に滞留していた洗浄水を新たに給水源から供給された洗浄水と置換するまでの時間が長くかかる場合であっても、長時間滞留する虞のある洗浄水をしっかりと除菌することができる。
従って、常に清潔な洗浄水で人体を洗浄することができ衛生上好ましい。
【0008】
また、請求項2記載の衛生洗浄装置においては、制御部は、除菌エリアを通過する洗浄水の流量が減少するに伴い紫外線照射部への通電量を低くするように制御しており、その低くするように制御された通電量は、前記除菌エリアを通過する洗浄水の単位時間当たりの流量が減少するに伴い、前記除菌エリアを通過する洗浄水の流量によらず積算照射照度が一定の場合の通電量よりも、紫外線照射部への通電量が高くなるように制御することを特徴とする。
このように、除菌エリアを通過する洗浄水の流量によらず積算照射照度が一定の場合と比較して、除菌エリアを通過する洗浄水の流量が減少するに伴い、紫外線照射部への通電量が高くなるように制御しているため、吐水初期の長時間滞留する虞のある洗浄水に対して、より確実に除菌することができ、常に清潔な洗浄水で人体を洗浄することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、除菌エリアを通過する単位時間当たりの洗浄水の流量が多い場合より除菌エリアを通過する単位時間当たりの洗浄水の流量が少ない場合のほうが、紫外線照射部から照射される紫外線の積算照射照度が高くなるように制御しているため、除菌エリアを通過する単位時間当たりの流量が少ないため流速が低下することで、吐水初期に導水部内に滞留していた洗浄水を新たに給水源から供給された洗浄水と置換するまでの時間が長くかかる場合であっても、長時間滞留する虞のある洗浄水をしっかりと除菌することができる。
従って、常に清潔な洗浄水で人体を洗浄することができ衛生上好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態における衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【
図2】本発明の実施形態における衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態における除菌エリアを通過する水が受ける紫外線の積算照射照度と除菌率の関係である。
【
図4】本発明の実施形態における除菌エリアを通過する水が受ける紫外線の積算照射照度と除菌エリアを通過する単位時間当たりの流量との関係である。
【
図5】本発明の実施形態における紫外線照射部への投入電力と除菌エリアを通過する単位時間当たりの流量との関係である。
【
図6】本発明の実施形態における制御部による紫外線照射部への制御動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図6に示す紫外線照射動作に係るサブルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態における衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
図1に表したように、トイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0012】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの操作部500を操作すると、洗浄ノズル(以下説明の便宜上、単に「ノズル」と称する)473を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、
図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル473がボウル801内に進出した状態を表している。
【0013】
ノズル473は、人体局部に向けて水を吐出し、人体局部の洗浄を行う。ノズル473の先端部には、ビデ洗浄吐水口474a及びおしり洗浄吐水口474bが設けられている。ノズル473は、その先端に設けられたビデ洗浄吐水口474aから水を噴射して、便座200に座った女性の女性局部を洗浄することができる。あるいは、ノズル473は、その先端に設けられたおしり洗浄吐水口474bから水(洗浄水)を噴射して、便座200に座った使用者の「おしり」を洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0014】
「おしり」を洗浄するモードのなかには、例えば、「おしり洗浄」と、「おしり洗浄」よりもソフトな水流で優しく洗浄する「やわらか洗浄」と、が含まれる。ノズル473は、例えば、「ビデ洗浄」と、「おしり洗浄」と、「やわらか洗浄」と、を実行することができる。
【0015】
なお、
図1に表したノズル473では、ビデ洗浄吐水口474aがおしり洗浄吐水口474bよりもノズル473の先端側に設けられているが、ビデ洗浄吐水口474aおよびおしり洗浄吐水口474bの設置位置は、これだけに限定されるわけではない。ビデ洗浄吐水口474aは、おしり洗浄吐水口474bよりもノズル473の後端側に設けられていてもよい。
【0016】
図2は、本発明の実施形態における衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
図2では、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
図2に表したように、衛生洗浄装置100は、水道や貯水タンクなどの給水源10からノズル473に至る導水部20を有する。つまり、導水部20は、給水源10から供給された水Wをノズル473に導く。導水部20は、例えば、以下に説明する電磁弁431、熱交換器440、流路切替部472などの各部と、これらの各部を接続する複数の配管である給水路20aによって形成される。
【0017】
導水部20の上流側には、電磁弁431が設けられている。電磁弁431は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御部405からの指令に基づいて水Wの供給を制御する。電磁弁431を開状態にすることにより、給水源10から供給された水Wが、電磁弁431より下流側の導水部20に流れる。
【0018】
電磁弁431の下流には、熱交換器440が設けられている。熱交換器440は、給水源10から供給された水Wを加熱して例えば規定の温度まで昇温する。すなわち、熱交換器440は、温水を生成する。
【0019】
熱交換器440は、制御部405と接続されている。制御部405は、例えば、使用者による操作部500の操作に応じて熱交換器440を制御することにより、操作部500で設定された温度に水Wを昇温する。
【0020】
熱交換器440の下流には、流量センサ442が設けられている。流量センサ442は、熱交換器440から吐出された水Wの流量を検知する。すなわち、流量センサ442は、導水部20内を流れる水の流量を検知する。流量センサ442は、制御部405に接続されている。流量センサ442は、流量の検知結果を制御部405に入力する。
【0021】
流量センサ442の下流には、流量調整部450が設けられている。流量調整部450は、水勢(流量)の調整を行う。水勢(流量)の調整は、例えば、使用者の操作部500への水勢変更操作により制御部405にて制御される。水勢の調整は、単位時間当たりの流量が最小であるモード1から最大であるモード5まで5段階設定されている。
【0022】
流量調整部450の下流には、紫外線照射部460が設けられている。この紫外線照射部460は、紫外線照射部460の下流側に位置する給水路20aの一部である除菌エリア462に紫外線Sを照射する。
【0023】
紫外線照射部460は、発光素子により、除菌エリア462を通過する水Wに紫外線Sを照射する。発光素子の照射する紫外線Sの波長は、例えば、200nm以上400nm以下である。好ましくは、250nmである。これにより、ノズル473から吐水された水に含まれる菌を適切に減らすことができる。発光素子は、LED(Light Emitting Diode)である。発光素子は、LEDに限ることなく、例えば、LD(Laser Diode)やOLED(Organic Light Emitting Diode)などでもよい。
【0024】
除菌エリア462に照射された紫外線Sにより、除菌エリア462を通過する水Wに含まれる菌の少なくとも一部を死滅又は不活性化させる。これにより、紫外線照射部460は、除菌エリア462を通過する水Wに含まれる生きた菌を減らす。つまり、紫外線照射部460は、紫外線Sの照射により、水Wを除菌する。紫外線照射部460は、不図示の配線により制御部405に接続されている。紫外線照射部460は、制御部405による制御に基づいて、紫外線Sの照射を行う。
【0025】
除菌エリア462の下流には、流路切替部472が設けられている。流路切替部472は、ノズル473やノズル洗浄室478への給水の開閉や切替を行う。流量調整部450及び流路切替部472は、1つのユニットとして設けてもよい。流量調整部450及び流路切替部472は、制御部405に接続されている。流量調整部450及び流路切替部472の動作は、制御部405によって制御される。
【0026】
流路切替部472の下流には、ノズルユニット480が設けられている。ノズルユニット480は、ノズル473と、ノズル洗浄室478と、ノズルモータ476と、を有している。
【0027】
ノズル473は、ノズルモータ(ノズル駆動部)476からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり後退したりする。つまり、ノズルモータ476は、制御部405からの指令に基づいてノズル473を進退させる。
【0028】
ノズル洗浄室478は、その内部に設けられた吐水部から水Wを噴射することにより、ノズル473の外周表面(胴体)を洗浄する。
【0029】
導水部20は、流路として、給水路20aと、おしり洗浄流路21と、やわらか洗浄流路22と、ビデ洗浄流路23と、表面洗浄流路24と、を有しており、流路切替部472より上流側には給水路20aが、流路切替部472より下流側にはおしり洗浄流路21と、やわらか洗浄流路22と、ビデ洗浄流路23と、表面洗浄流路24と、が設けられている。
【0030】
おしり洗浄流路21と、やわらか洗浄流路22と、ビデ洗浄流路23と、は給水路20aを介して給水源10から供給された水Wをそれぞれノズル473に設けられたビデ洗浄吐水口474a、おしり洗浄吐水口474bへ導く。
【0031】
表面洗浄流路24は、給水路20aを介して給水源10から供給された水をノズル洗浄室478の吐水部へ導く。
【0032】
制御部405は、流路切替部472を制御することにより、おしり洗浄流路21、やわらか洗浄流路22、ビデ洗浄流路23、表面洗浄流路24と、の各流路の開閉を切り替える。このように、流路切替部472は、おしり洗浄吐水口474b、ビデ洗浄吐水口474a、及び、ノズル洗浄室478などの複数の吐水口のそれぞれについて、給水路20aに連通させた状態と、給水路20aに連通させない状態と、を切り替える。
【0033】
制御部405は、電源回路401から電力を供給され、流量センサ442や、操作部500などからの信号に基づいて、電磁弁431や、熱交換器440や、流量調整部450や、紫外線照射部460や、流路切替部472や、ノズルモータ476などの動作を制御する。
【0034】
さらに、制御部405は、人体洗浄時に吐水が開始された時点からの時間を計時するタイマー及び流量調整部450の水勢の設定状況を記憶するメモリ(不図示)を有する。メモリは、例えばCPUに接続されるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0035】
次に、
図3乃至
図7にて除菌エリア462を通過する水Wに対する紫外線照射部460から照射される紫外線Sの制御について説明する。
図3は、本発明の実施形態における除菌エリアを通過する水が受ける紫外線の積算照射照度と除菌率の関係である。
図4は、本発明の実施形態における除菌エリアを通過する水が受ける紫外線の積算照射照度と除菌エリアを通過する単位時間当たりの流量との関係である。
図5は、本発明の実施形態における紫外線照射部への投入電力と除菌エリアを通過する単位時間当たりの流量との関係である。
図6は、本発明の実施形態における制御部による紫外線照射部への制御動作を示すフローチャートである。
図7は、
図6に示す紫外線照射動作に係るサブルーチンのフローチャートである。
【0036】
はじめに、人体洗浄に用いられる水Wを除菌するための基本的な考え方について
図3を参照しながら説明する。
除菌エリア462を通過する水Wが受ける紫外線Sの積算照射照度Iの増加に伴い、除菌エリア462を通過する水Wの除菌率は増加する。
ここで、積算照射照度Iは、水Wが除菌エリア462を通過するまでに要する時間と紫外線照射部460への投入電力P(紫外線の照射量)により算出される。
【0037】
除菌エリア462の断面積は、一定であるため、除菌エリア462を通過する単位時間当たりの流量が減少することに伴い、流速が遅くなる。そのため、除菌エリア462を通過する単位時間当たりの水Wの流量が減少することに伴い、除菌エリア462を通過する水Wは紫外線Sの照射を受ける時間が増加する。
【0038】
図4には、水勢変更に伴い変更可能な単位時間当たりの流量が異なる5段階のモードと紫外線の照射により水Wが受ける積算照射照度の関係において、人体洗浄開始から人体洗浄終了時まで間に除菌エリア462を通過する水Wが受ける紫外線Sの積算照射照度Iの基準値と補正値を示している。
【0039】
図4に示すように、基準値は、除菌エリア462を通過する単位時間当たりの流量が変動したとしても、除菌エリア462を通過する水Wが受ける紫外線Sの積算照射照度Iが一定値となるように制御している。具体的には、単位時間当たりの流量が減少するほど、紫外線照射部460への投入電力Pを下げている(
図5参照)。
【0040】
補正値は、基準値と比較して、除菌エリア462を通過する単位時間当たりの流量が減少するほど、除菌エリア462を通過する水Wが受ける紫外線Sの積算照射照度Iが高くなるように制御している。具体的には、単位時間当たりの流量が少なくなるほど、紫外線照射部460への投入電力Pを下げる際の下げ幅を小さく制御している(
図5参照)。
【0041】
次に、制御部405による人体洗浄開始から人体洗浄終了までの紫外線照射部460に対する制御動作について
図6及び
図7を用いて説明する。
図6に示すように、紫外線照射部460に対する制御動作は全体としてステップS101~S106からなる処理である。
【0042】
まず、制御部405へ人体洗浄開始の指示があると、ステップS101の処理が行われる。
ステップS101において、制御部405は、制御部405に内蔵されたタイマーをスタートさせ吐水開始から経過した時間を計測する。
【0043】
ステップS102において、制御部405は、制御部405に内蔵されたメモリから流量調整部450の流量設定状態(現時点の流量モード)を読み込む。
【0044】
ステップS103において、制御部405は、読み込んだ流量設定状態から各流量モード毎に設定された紫外線照射部460への投入電力P(通電量)である基準値を設定する。
【0045】
ステップS104において、制御部405は、紫外線照射部460へ通電指示をし、紫外線照射部460から除菌エリア462に対しての紫外線Sの照射を開始する。
【0046】
ステップS105において、制御部405は、人体洗浄終了の指示があるか否かを判定する。人体洗浄終了の指示がある場合(S105:Yes)は、ステップS106へ進み、人体洗浄終了の指示がない場合(S105:No)は、ステップS104を繰り返し行う。
【0047】
ステップS106において、制御部405は、紫外線照射部460への通電を停止し、紫外線照射部460から除菌エリア462に対しての紫外線Sの照射を終了する。
【0048】
次に、制御部405による紫外線照射部460に対する制御動作について
図7を用いて説明する。
図7に示すように、紫外線照射部460に対する制御動作は全体としてステップS201~S206からなる処理である。
【0049】
ステップS201において、制御部405は、タイマーの経過時間が所定時間経過したか否かを判定する。
タイマーの経過時間が所定時間経過した場合(S201:Yes)は、ステップS202へ進み、タイマーの経過時間が所定時間経過していない場合(S201:No)は、ステップS203へ進む。
この所定時間は、単位時間当たりの流量が最小であるモード1において電磁弁431から流路切替部472までの間に滞留した水が新たに給水源10から供給された水Wに置換されるまでに要する程度である。
【0050】
ステップS202において、制御部405は、積算照射照度Iが一定(
図6参照)となるように紫外線照射部460への投入電力P(通電量)を低下させる。
具体的には、制御部405は、紫外線照射部460への投入電力Pを単位時間当たりの流量が同条件での補正値を基準値に変更する。
【0051】
ステップS203において、制御部405は、流量変更指示があったか否かを判定する。
流量変更指示がある場合(S203:Yes)は、ステップS204へ進み、流量変更指示がない場合(S203:No)は、
図6に示すメインのフローへ戻る。
【0052】
このようにすることで、吐水中に流量を変更した際においても、除菌率を維持することができる。
【0053】
ステップS204において、制御部405は、タイマーの経過時間が所定時間経過したか否かを再度判定する。
タイマーの経過時間が所定時間経過した場合(S204:Yes)は、ステップS205へ進み、タイマーの経過時間が所定時間経過していない場合(S204:No)は、ステップS206へ進む。
【0054】
ステップS205において、制御部405は、紫外線照射部460への投入電力Pを変更された流量モードにおける基準値へ切り替える。つまり、現在の流量モードに合せた基準値から選択した流量モードに合せた基準値へ切り替える。
【0055】
ステップS206において、制御部405は、紫外線照射部460への投入電力Pを変更された流量モードにおける補正値へ切り替える。つまり、現在の流量モードに合せた補正値から選択した流量モードに合せた補正値へ切り替える。
このようにすることで、特に、単位時間当たりの流量を小さいモードへ変更した場合、滞留した状態が維持されていた虞のある水Wのエネルギー損失が小さくなることで、一時的に滞留水が増加し除菌率が大きく低下したとしても、紫外線照射部460への投入電力Pを基準値よりも高めているため除菌率を高めることができる。
【0056】
本発明の実施形態の衛生洗浄装置によれば、制御部405は、除菌エリア462を通過する単位時間当たりの水Wの流量が多い場合より除菌エリア462を通過する単位時間当たりの水Wの流量が少ない場合のほうが、紫外線照射部460から照射される紫外線Sの積算照射照度Iが高くなるように制御しているため、除菌エリア462を通過する単位時間当たりの流量が少なく、流速が低下することで、吐水初期に導水部20内に滞留していた水Wを新たに給水源から供給された水Wと置換するまでの時間が長くかかる場合であっても、長時間滞留する虞のある水Wをしっかりと除菌することができる。
【0057】
また、本発明の実施形態の衛生洗浄装置によれば、制御部405は、除菌エリア462を通過する水Wの流量によらず積算照射照度Iが一定の場合と比較して、除菌エリア462を通過する水Wの流量が減少するに伴い、紫外線照射部460への通電量が高くなるように制御しているため、吐水初期の長時間滞留する虞のある水Wに対して、より確実に除菌することができ、常に清潔な洗浄水で人体を洗浄することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。例えば、単位時間当たりの流量が減少するほど水Wに対しての積算照射照度Iが増加すればよく、紫外線照射部460への投入電力Pを流量によらず一定に制御するものであっても良い。また、傾向として、単位時間当たりの流量が減少するほど水Wに対しての積算照射照度Iが増加すればよく、微小に増減するような信号のゆらぎも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10 給水源
20 導水部
20a 給水路
21 おしり洗浄流路
22 やわらか洗浄流路
23 ビデ洗浄流路
24 表面洗浄流路
100 衛生洗浄装置
200 便座
300 便蓋
400 ケーシング
401 電源回路
404 着座検知センサ
405 制御部
431 電磁弁
440 熱交換器
442 流量センサ
450 流量調整部
460 紫外線照射部
462 除菌エリア
472 流路切替部
473 ノズル
476 ノズルモータ
478 ノズル洗浄室
480 ノズルユニット
800 便器
801 ボウル
I 積算照射照度
S 紫外線
W 水
P 投入電力