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特許7087315高分子電解質組成物ならびにそれを用いた高分子電解質膜、触媒層付き電解質膜、膜電極複合体、固体高分子形燃料電池、電気化学式水素ポンプおよび水電解式水素発生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】高分子電解質組成物ならびにそれを用いた高分子電解質膜、触媒層付き電解質膜、膜電極複合体、固体高分子形燃料電池、電気化学式水素ポンプおよび水電解式水素発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20220614BHJP
   C08L 71/08 20060101ALI20220614BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20220614BHJP
   C08G 65/34 20060101ALI20220614BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20220614BHJP
   H01M 8/1034 20160101ALI20220614BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220614BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20220614BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20220614BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H01B1/06 A
C08L71/08
C08K3/08
C08G65/34
C08G65/40
H01M8/1034
H01M8/10 101
H01B1/12 Z
C25B13/08 301
C08L101/02
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017185733
(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公開番号】P2018060789
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2016193148
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白井 秀典
(72)【発明者】
【氏名】出原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】國田 友之
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/094538(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/156228(WO,A1)
【文献】特開2004-269599(JP,A)
【文献】特開2004-347371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
C08L 71/08
C08K 3/08
C08G 65/34
C08G 65/40
H01M 8/1034
H01M 8/10
H01B 1/12
C25B 13/08
C25B 1/04
C08L 101/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性基含有ポリマー(A)と、下記一般式(C1)、(C2)および(C3)からなる群より選択される構造を含むリン含有ポリマー(B)とを含む高分子電解質組成物。
【化1】
(式中、Rは任意の2価の有機基を表し、Rは任意の1価の有機基を表す。R~Rは、任意に結合して環構造を形成していても良い。ポリマー鎖中の複数のR、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記リン含有ポリマー(B)が、主鎖に炭素-リン-炭素結合を有するポリマーである、請求項1に記載の高分子電解質組成物。
【請求項3】
前記リン含有ポリマー(B)中の有機基RまたはRがイオン性基を含まない、請求項1または2に記載の高分子電解質組成物。
【請求項4】
前記リン含有ポリマー(B)中の有機基Rが芳香族炭化水素基である、請求項1~3のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項5】
前記リン含有ポリマー(B)中の有機基Rが芳香族炭化水素基である、請求項1~4のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項6】
前記リン含有ポリマー(B)の数平均分子量が2000以上、100万以下である、請求項1~5のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項7】
前記リン含有ポリマー(B)に含まれる全元素に対するリンの重量割合が0.01%以上、30%以下である、請求項1~6のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項8】
前記リン含有ポリマー(B)の含有量が、イオン性基含有ポリマー(A)に対して0.02重量%以上、10重量%以下である、請求項1~7のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項9】
Ce、Mn、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Auから選ばれる少なくとも1種の遷移金属をさらに含有する、請求項1~8のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項10】
前記イオン性基含有ポリマー(A)が、イオン性基を含有するセグメント(A1)とイオン性基を含有しないセグメント(A2)を有するブロックコポリマーである、請求項1~9のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項11】
前記イオン性基を含有するセグメント(A1)、および前記イオン性基を含有しないセグメント(A2)が、それぞれ下記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位を含有することを特徴とする請求項10に記載の高分子電解質組成物。
【化2】
(一般式(S1)中、Ar~Arは任意の2価のアリーレン基を表し、Arおよび/またはArはイオン性基を含有し、ArおよびArはイオン性基を含有しても含有しなくても良い。Ar~Arは任意に置換されていても良く、互いに独立して2種類以上のアリーレン基が用いられても良い。*は一般式(S1)または他の構成単位との結合部位を表す。)
【化3】
(一般式(S2)中、Ar~Arは任意の2価のアリーレン基を表し、任意に置換されていても良いが、イオン性基を含有しない。Ar~Arは互いに独立して2種類以上のアリーレン基が用いられていても良い。*は一般式(S2)または他の構成単位との結合部位を表す。)
【請求項12】
前記イオン性基含有ポリマー(A)が、主鎖に芳香環を有する炭化水素系ポリマーである、請求項1~11のいずれかに記載の高分子電解質組成物。
【請求項13】
膜状に成形された請求項1~12のいずれかに記載の高分子電解質組成物からなる高分子電解質膜。
【請求項14】
請求項13に記載の高分子電解質膜の両面に触媒層を積層してなる触媒層付き電解質膜。
【請求項15】
請求項13に記載の高分子電解質膜を固体高分子形含む膜電極接合体。
【請求項16】
請求項13に記載の高分子電解質膜を用いて構成された固体高分子形燃料電池。
【請求項17】
請求項13に記載の高分子電解質膜を用いて構成された電気化学式水素ポンプ。
【請求項18】
請求項13に記載の高分子電解質膜を用いて構成された水電解式水素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質組成物ならびにそれを用いた高分子電解質膜、固体高分子形燃料電池、電気化学式水素ポンプおよび水電解式水素発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも固体高分子形燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
【0003】
燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(Membrane Electrode Assembly;以降、MEAと略称することがある。)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。高分子電解質膜の主成分は、イオン性基含有ポリマー(高分子電解質材料)であるが、耐久性を高めるために添加剤等を配合することもできる。
【0004】
高分子電解質膜の要求特性としては、第一に高いプロトン伝導性が挙げられ、特に高温低加湿条件でも高いプロトン伝導性を有する必要がある。また、高分子電解質膜は、燃料と酸素の直接反応を防止するバリアとしての機能を担うため、燃料の低透過性が要求される。その他にも燃料電池運転中の強い酸化雰囲気に耐えるための化学的安定性、薄膜化や膨潤乾燥の繰り返しに耐えうる機械強度および物理的耐久性などが挙げられる。
【0005】
これまで高分子電解質膜には、パーフルオロスルホン酸系ポリマーであるナフィオン(登録商標)(デュポン社製)が広く用いられてきた。ナフィオン(登録商標)は多段階合成を経て製造されるため非常に高価であり、また燃料クロスオーバー(燃料の透過量)が大きいという課題があった。また、膨潤乾燥によって膜の機械強度や物理的耐久性が失われるという問題、軟化点が低く高温で使用できないという問題、さらに、使用後の廃棄処理の問題や材料のリサイクルが困難といった課題が指摘されてきた。一方、ナフィオン(登録商標)に替わり得る安価で膜特性に優れた高分子電解質膜として、炭化水素系電解質膜の開発も近年活発化してきている。
【0006】
しかしながら、これらの高分子電解質膜はいずれも、固体高分子形燃料電池に用いる場合、化学的安定性が不足するという問題があった。化学劣化に関するメカニズムについては、未だ十分に解明されたものでないが、発電時に生成する酸化力の強い過酸化水素や、系中に存在し得る鉄などの微量の金属と過酸化水素が反応して生成するヒドロキシラジカルなどにより、ポリマー主鎖や側鎖が切断された結果、高分子電解質膜の膜痩せ、脆弱化が進行、燃料透過の増大により、さらに過酸化水素、ヒドロキシラジカルなどが生成し、膜劣化が加速度的に進行すると考えられている。加えて、湿度変化に合わせて膨潤・収縮を繰り返すうちに、脆弱になった高分子電解質膜が破損し、発電できなくなるという問題があった。
【0007】
こうした状況において、パーフルオロ系電解質膜や炭化水素系電解質膜に酸化防止剤を配合した高分子電解質膜により、化学安定性を向上し、耐久性を改善する検討が行われている。
【0008】
例えば、特許文献1~2には、リン系酸化防止剤を添加した高分子電解質膜が提案されている。具体的には、亜リン酸エステル(ホスファイト)系酸化防止剤を、スルホン酸基含有ポリエーテルスルホン系重合体に配合した高分子電解質膜や、ポリビニルホスホン酸などのホスホン酸基含有ポリマーをスルホン酸基含有ポリエーテルスルホン系重合体やスルホン酸基含有ポリエーテルケトン系重合体に配合した高分子電解質膜である。
【0009】
特許文献3~5には、リン系酸化防止剤に加え、硫黄系、アミン系、フェノール系酸化防止剤などを添加した電解質膜が提案されている。具体的には、亜リン酸エステル(ホスファイト)、チオエーテル、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノールなどの酸化防止剤を、スルホン酸基含有ポリエーテルスルホン系重合体やスルホン酸基含有ポリアリーレン系重合体に配合した高分子電解質膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-151346号公報
【文献】特開2000-11756号公報
【文献】特開2003-201403公報
【文献】特開2007-66882号公報
【文献】特開2005-213325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1~5に記載された高分子電解質膜においては、長時間に渡る燃料電池の運転中に酸化防止剤が溶出し、効果が持続しにくいという課題があった。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、長時間に渡る燃料電池の運転中においても酸化防止剤の溶出が少なく、化学的安定性の高い高分子電解質組成物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが前記課題を克服すべく鋭意検討を重ねた結果、イオン性基含有ポリマー(A)に、特定のリン含有ポリマー(B)を添加剤として配合することにより、特に燃料電池用、電気化学式水素ポンプ用、水電解式水素発生装置用の高分子電解質膜に成形して使用した場合に優れた化学的耐久性性能を発現できることを究明するとともに、さらに種々の検討を加え、本発明を完成した。
【0014】
本発明は、イオン性基含有ポリマー(A)と、下記一般式(C1)、(C2)および(C3)からなる群より選択される構造を含むリン含有ポリマー(B)とを含む高分子電解質組成物である。
【0015】
【化1】
【0016】
(各式中、Rは任意の2価の有機基を表し、Rは任意の1価の有機基を表す。R~Rは、任意に結合して環構造を形成していても良い。ポリマー鎖中の複数のR、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
なお、本明細書において「組成物」とは、イオン性基含有ポリマー(A)と特定のリン含有ポリマー(B)を含む成形体および液状組成物(溶液、分散液)の総称である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、強い酸化雰囲気に耐えうる優れた化学的安定性有する高分子電解質膜、膜電極複合体、固体高分子形燃料電池、電気化学式水素ポンプおよび水電解式水素発生装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔リン含有ポリマー(B)〕
リン含有ポリマー(B)として用いられる化合物は、下記一般式(C1)、(C2)または(C3)で表される構造を含む、主鎖にリン原子を有するポリマーである。
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、Rは任意の2価の有機基を表し、Rは任意の1価の有機基を表す。R~Rは、任意に結合して環構造を形成していても良い。ポリマー鎖中の複数のR、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
主鎖にリン原子を有するポリマーを用いることにより、優れた耐熱・耐候性、耐酸化性・耐ラジカル性を付与することができる。また、極性を有するリン原子の存在により、多くの一般的溶媒への溶解性が向上し、製造や成形加工が容易なものとなる。
【0021】
本発明において、耐加水分解性、耐溶出性の点から、前記リン含有ポリマー(B)が、主鎖に炭素-リン-炭素結合を有することが好ましい。
また、前記一般式(C1)、(C2)または(C3)により示される構造中の有機基R、Rは、耐溶出性の点からイオン性基を含まない事が好ましい。
【0022】
さらに、耐水性、化学的安定性や製造プロセスの点で、2価の有機基Rが芳香族炭化水素基であることがより好ましい。リン含有ポリマー(B)が芳香族炭化水素基を有することで、芳香族炭化水素基のπ電子とリン原子との電子的な相互作用により、リン含有ポリマー(B)を安定化することができ、より安定な高分子電解質組成物の製造プロセスを構築できる。有機基Rの好ましい例は、フェニレン、ナフチレン、アントラシレンである。
【0023】
1価の有機基Rは、リン含有ポリマー(B)の耐水性の点から、疎水基であることが好ましい。Rの好ましい具体例は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または芳香族炭化水素基であり、アルキル基または芳香族炭化水素基が特に好ましい。
【0024】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基が好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基が好ましい。アルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロエトキシ基、フェノキシ基が好ましい。アミノ基としてはジフェニルアミノ基が好ましい。Rがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基またはアミノ基の場合、Rの炭化水素部分は置換基を有していても良い。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アリール基またはヘテロアリール基を挙げることができる。
【0025】
また、Rが芳香族炭化水素基の場合、アリール基であってもヘテロアリール基であってもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基が好ましい。ヘテロアリール基としては、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ホスホリル基、チエニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基が好ましい。Rが芳香族炭化水素基の場合、Rは置換基を有していても良い。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基またはヘテロアリール基を挙げることができる。
【0026】
有機溶媒への可溶性と高重合度ポリマー合成の容易さの点からは、Rはフェニル基またはメチル基が好ましく、中でも耐水性の点からフェニル基が特に好ましい。
【0027】
一般式(C1)または(C2)で表される構造の中でも、一般的溶媒への溶解度、機械強度および原料の入手の容易さ等の観点から、下記(a1)~(a17)で表される構造がより好ましく、さらに高重合度ポリマーの合成と原料の入手の容易さの点から、(a1)、(a10)で表される構造が特に好ましい。また、一般式(C3)で表される構造の例としては、下記(a18)~(a21)で表される構造が挙げられるが、機械強度および原料の入手の容易さ等の観点から、(a17)で表される構造が特に好ましい。
【0028】
【化3】
【0029】
リン含有ポリマー(B)は、GPC法による数平均分子量が2000以上、100万以下であることが好ましく、より好ましくは1万~10万である。数平均分子量が2000以上の高分子量体であることで、燃料電池運転中に膜外に溶出することなく効果を維持でき、優れた化学的安定性や耐久性を得ることができる。また、数平均分子量が100万を超えると、イオン性基含有ポリマー(A)と分離し混合できなくなる場合がある。
【0030】
リン含有ポリマー(B)に含まれる全元素に対するリンの重量割合は0.01%以上、30%以下が好ましく、より好ましくは1%以上、10%以下である。リンの重量割合が0.01%未満であっても、逆に30%を超えても、化学的耐久性の向上効果が十分に得られにくくなる傾向がある。
【0031】
高分子電解質組成物中において、リン含有ポリマー(B)の含有量は、イオン性基含有ポリマー(A)に対して0.02重量%以上、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%以上、5重量%以下である。0.02重量%未満であると、耐久性が不足する場合がある。また、10重量%を超えると、イオン性基含有ポリマー(A)と分離し混合できなくなる場合がある。
【0032】
イオン性基含有ポリマー(A)にリン含有ポリマー(B)を配合する方法は特に限定されないが、イオン性基含有ポリマー(A)の溶液または分散液に、リン含有ポリマー(B)を溶解または分散させて混合液を作製する方法が好ましく、成形体を作製する場合には当該混合液を用いて成形する方法によることが好ましい。成形体を作製する場合には、リン含有ポリマー(B)を溶解させた液を、イオン性基含有ポリマー(A)からなる高分子電解質膜に塗布する方法や、リン含有ポリマー(B)を溶解させた液に、イオン性基含有ポリマー(A)からなる高分子電解質膜を浸漬する方法も考え得るが、効率よく十分な量のリン含有ポリマー(B)を配合するためには、予め混合液を作製する方法が好ましい。
【0033】
〔遷移金属〕
本発明の高分子電解質組成物は、Ce、Mn、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Auから選ばれた少なくとも1種の遷移金属をさらに含有することも好ましい。これら遷移金属としては、かかる遷移金属の単体、かかる遷移金属のイオン、かかる遷移金属イオンを含む塩、かかる遷移金属の酸化物から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0034】
なかでも、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤としての機能が高いことから、Ce、Mn、V、Mo、W、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Auを用いることが好ましく、より好ましくは、Ce、Mn、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Au、さらに好ましくは、Ce、Mn、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Auである。
【0035】
本発明で使用する遷移金属の含有量は、発電特性と耐久性のバランスを考慮して適宜選択することができ、限定されるものではないが、イオン性基含有ポリマー(A)に対して0.01重量%以上、15重量%以下であることがより好ましい。さらに好ましくは、0.05重量%以上、3重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以上、2重量%以下である。0.01重量%未満であると、耐久性が不足する場合がある。また、15重量%を超えると、プロトン伝導性が不足する場合がある。
【0036】
ここで、遷移金属を含む塩や酸化物を添加する場合、遷移金属の含有量は、化合物中の遷移金属当量(遷移金属部分のみ)で定義される。
【0037】
また、本発明で使用するリン含有ポリマー(B)と遷移金属の含有比率も、発電特性と耐久性のバランスを考慮して適宜選択することができ、限定されるものではないが、リン/遷移金属のモル比率が、0.1以上、100以下であることがより好ましい。さらに好ましくは、1以上、20以下、最も好ましくは5以上、10以下である。リン/遷移金属のモル比率が0.1未満である場合は、プロトン伝導性や耐水性が不足する場合がある。また、100を越える場合は、耐久性向上効果が小さくなる場合がある。
【0038】
遷移金属イオンを含む塩としては、例えば+3価のセリウムイオンを含む塩、+4価のセリウムイオンを含む塩、+2価のマンガンイオンを含む塩、+3価のマンガンイオンを含む塩、+2価のコバルトイオンを含む塩等が挙げられる。+3価のセリウムイオンを含む塩としては、酢酸セリウム、塩化セリウム、硝酸セリウム、炭酸セリウム、硫酸セリウム等が挙げられる。+4価のセリウムイオンを含む塩としては、硫酸セリウム、硫酸四アンモニウムセリウム等が挙げられる。+2価のマンガンイオンを含む塩としては、酢酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン等が挙げられる。+3価のマンガンイオンを含む塩としては、酢酸マンガン等が挙げられる。+2価のコバルトイオンを含む塩としては、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、硫酸コバルト等が挙げられる。なかでも、酸化劣化を抑制する効果が高いことから、硝酸セリウム、硝酸マンガンを用いることが好ましい。
【0039】
遷移金属イオンは、単独で存在しても良いし、有機化合物と配位した錯体として存在しても良い。なかでも、本発明のリン含有ポリマー(B)との錯体であると、燃料電池運転中における添加剤の溶出や高分子電解質組成物のイオン架橋およびゲル化が抑えられる(耐ゲル性に優れる)という観点で好ましい。
【0040】
また、遷移金属の酸化物としては、酸化セリウム、酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化クロム、酸化イリジウム、酸化鉛が挙げられる。なかでも、酸化劣化を抑制する効果が高いことから、酸化セリウム、酸化マンガンを用いることが好ましい。
【0041】
〔イオン性基含有ポリマー(A)〕
イオン性基含有ポリマー(A)は、イオン性基含有パーフルオロ系ポリマーとイオン性基含有炭化水素系ポリマーのいずれでも良い。本発明において、イオン性基含有炭化水素系ポリマーとは、炭化水素骨格にイオン性基が導入された構造を有するポリマーの総称である。
【0042】
ここで、パーフルオロ系ポリマーとは、ポリマー中のアルキル基および/またはアルキレン基の水素の大部分または全部(典型的には90%以上)がフッ素原子に置換されたものを意味する。イオン性基を有するパーフルオロ系ポリマーの代表例としては、Nafion(登録商標)(デュポン社製)、フレミオン(登録商標)(旭硝子社製)およびアシプレックス(登録商標)(旭化成社製)などの市販品を挙げることができる。
【0043】
パーフルオロ系ポリマーは、非常に高価であるとともに、ガスクロスオーバーが大きいという課題がある。また、機械強度、物理的耐久性、化学的安定性などの点からも、イオン性基含有ポリマー(A)としては、炭化水素系ポリマーであることが好ましく、主鎖に芳香環を有する炭化水素系ポリマーであることがより好ましい。ここで、芳香環は、炭化水素系芳香環だけでなく、ヘテロ環などを含んでいても良い。また、芳香環ユニットと共に一部脂肪族系ユニットがポリマーを構成していてもかまわない。
【0044】
主鎖に芳香環を有する炭化水素系ポリマーの具体例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドスルホン等のポリマーが挙げられる。
【0045】
なかでも、機械強度や物理的耐久性と、製造コストの観点を総合すると、芳香族ポリエーテル系ポリマーが好ましい。ここで、芳香族ポリエーテル系ポリマーとは、主鎖に少なくとも芳香環およびエーテル結合を有しているポリマーの総称である。さらに、主鎖骨格構造のパッキングの良さおよび極めて強い分子間凝集力から結晶性を示し、一般的な溶剤に全く溶解しない性質を有するとともに、引張強伸度、引裂強度および耐疲労性に優れる点から、芳香族ポリエーテルケトン系ポリマーが特に好ましい。ここで、芳香族ポリエーテルケトン系ポリマーとは、主鎖に少なくとも芳香環、エーテル結合およびケトン結合を有しているポリマーの総称であり、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルケトンケトン、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリエーテルエーテルケトンケトン、芳香族ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、芳香族ポリエーテルケトンスルホン、芳香族ポリエーテルケトンホスフィンオキシド、芳香族ポリエーテルケトンニトリルなどを含む。
【0046】
イオン性基含有ポリマー(A)のイオン性基は、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基または硫酸基を有することがより好ましく、原料コストの点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。イオン性基は、塩を形成していてもよい。イオン性基と塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR (Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属カチオンの具体例としては、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等のカチオンが挙げられる。中でも、安価でかつ容易にプロトン置換可能なNa、K、Liのカチオンが好ましく使用される。
【0047】
イオン性基含有ポリマー(A)の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、0.1万~500万であることが好ましく、1万~50万であることがより好ましい。0.1万未満では、成型した膜にクラックが発生するなど機械強度、物理的耐久性、耐溶剤性のいずれかが不十分な場合がある。一方、500万を超えると、溶解性が不十分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になる場合がある。
【0048】
イオン性基含有ポリマー(A)としては、低加湿条件でのプロトン伝導性や発電特性の点から、イオン性基を含有するセグメント(A1)とイオン性基を含有しないセグメント(A2)を有するブロックコポリマーであることがより好ましい。なお、本明細書においては便宜上「イオン性基を含有しないセグメント(A2)」と記載するが、当該セグメント(A2)は電解質膜としての性能に決定的な悪影響を及ぼさない範囲でイオン性基が少量含まれていることを排除するものではない。また、さらにセグメント間を連結するリンカー部位を有するブロックコポリマーはさらに好適である。リンカーの存在により、副反応を効果的に抑制しながら異なるセグメントを連結することができる。
【0049】
イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)の数平均分子量は、イオン性基含有ポリマー(A)成形時の相分離構造のドメインサイズに関係する。低加湿でのプロトン伝導性と物理的耐久性のバランスから、それぞれ0.5万以上がより好ましく、さらに好ましくは1万以上、最も好ましくは1.5万以上である。また、5万以下がより好ましく、さらに好ましくは、4万以下、最も好ましくは3万以下である。
【0050】
このようなイオン性基含有ポリマー(A)としては、イオン性基を含有するセグメント(A1)が下記一般式(S1)で、イオン性基を含有しないセグメント(A2)が下記一般式(S2)で表される構成単位を含有するものがさらに好ましい。
【0051】
【化4】
【0052】
(一般式(S1)中、Ar~Arは任意の2価のアリーレン基を表し、ArおよびArの少なくとも1つは置換基としてイオン性基を有している。ArおよびArは置換基としてイオン性基を有しても有しなくても良い。Ar~Arはイオン性基以外の基で任意に置換されていても良い。Ar~Arは構成単位ごとに同じでも異なっていてもよい。Rは、ケトン基または、ケトン基に誘導され得る保護基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良い。*は一般式(S1)または他の構成単位との結合部位を表す。)
【0053】
【化5】
【0054】
(一般式(S2)中、Ar~Arは任意の2価のアリーレン基を表し、任意に置換されていても良いが、イオン性基を有しない。Ar~Arは構成単位ごとに同じでも異なっていてもよい。Rは、ケトン基または、ケトン基に誘導され得る保護基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良い。*は一般式(S2)または他の構成単位との結合部位を表す。)
ケトン基に誘導されうる保護基の具体例としては、有機合成で一般的に用いられる保護基があげられ、後の段階で除去することを前提に、一時的に導入される置換基を表し、脱保護により元のケトン基に戻すことのできるものである。
【0055】
このような保護基としては、例えば、セオドア・ダブリュー・グリーン(Theodora W. Greene)、「プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス」(Protective Groups in Organic Synthesis)、米国、ジョン ウイリー アンド サンズ(John Wiley & Sons, Inc)、1981、に詳しく記載されており、これらが好ましく使用できる。
【0056】
上記一般式
で表される構成単位を含有するブロックコポリマーは、電子求引性のケトン基で全てのアリーレン基が化学的に安定化されており、なおかつ、結晶性付与による強靱化、ガラス転移温度低下による柔軟化によって物理的耐久性が高くなる。
【0057】
上記一般式(S1)および(S2)において、Ar~Arとしては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレンジイル基などの炭化水素系アリーレン基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどのヘテロアリーレン基が挙げられ、好ましくはフェニレン基であり、最も好ましくはp-フェニレン基である。
【0058】
イオン性基を含有するセグメント(A1)としては、化学的に安定で、電子求引効果により酸性度が高められ、イオン性基が高密度に導入された構成単位がより好ましい。また、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としては、化学的に安定な上、強い分子間凝集力から結晶性を示す構成単位がより好ましい。
【0059】
イオン性基を含有するセグメント(A1)中に含まれる一般式(S1)で表される構成単位の含有量は、20モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
【0060】
イオン性基を含有しないセグメント(A2)中に含まれる一般式(S2)で表される構成単位の含有量は、20モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。イオン性基を含有しないセグメント(A2)中に含まれる一般式(S2)の含有量が20モル%未満である場合には、結晶性による機械強度、寸法安定性、物理的耐久性が低下する傾向がある。
【0061】
一般式(S1)で表される構成単位のより好ましい具体例としては、原料入手性の点で、下記一般式(P2)で表される構成単位が挙げられる。中でも、原料入手性と重合性の点から、下記式(P3)で表される構成単位がさらに好ましく、下記式(P4)で表される構成単位が最も好ましい。
【0062】
【化6】
【0063】
(式(P2)、(P3)、(P4)中、M~Mは、水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンNR (Rは任意の有機基)を表し、M~Mは2種類以上の基を表しても良い。また、r1~r4は、それぞれ独立に0~2の整数、r1+r2は1~8の整数を表し、r1~r4は構成単位ごとに異なっていても良い。Rは、ケトン基または、ケトン基に誘導され得る保護基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良い。*は式(P2)、(P3)、(P4)または他の構成単位との結合部位を表す。)
イオン性基を含有するセグメント(A1)と、イオン性基を含有しないセグメント(A2)のモル組成比(A1/A2)は、0.2以上であることがより好ましく、0.33以上がさらに好ましく、0.5以上が最も好ましい。また、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下が最も好ましい。当該モル組成比A1/A2が、0.2未満あるいは5を越える場合には、低加湿条件下でのプロトン伝導性が不足したり、耐熱水性や物理的耐久性が不足したりする傾向がある。
【0064】
イオン性基を含有するセグメント(A1)のイオン交換容量は、低加湿条件下でのプロトン伝導性の点から、好ましくは2.5meq/g以上、より好ましくは、3meq/g以上、さらに好ましくは3.5meq/g以上である。また、耐熱水性や物理的耐久性の点から、6.5meq/g以下が好ましく、5meq/g以下がより好ましく、4.5meq/g以下がさらに好ましい。
【0065】
イオン性基を含有しないセグメント(A2)のイオン交換容量は、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の点から、低いことが好ましく、好ましくは1meq/g以下、より好ましくは0.5meq/g以下、さらに好ましくは0.1meq/g以下である。
【0066】
イオン性基がスルホン酸基の場合、そのイオン交換容量は、プロトン伝導性と耐水性のバランスの点から、0.1~5meq/gが好ましく、より好ましくは1.5meq/g以上、さらに好ましくは2meq/g以上である。また、3.5meq/g以下がより好ましく、さらに好ましくは3meq/g以下である。イオン交換容量が0.1meq/gより小さい場合には、プロトン伝導性が不足する場合があり、5meq/gより大きい場合には、耐熱水性が不足する場合がある。
【0067】
イオン性基含有ポリマー(A)として用いるブロックコポリマーとしては、成形体を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を5万倍で行った場合に相分離構造が観察され、画像処理により計測した平均層間距離または平均粒子間距離が5nm以上、500nm以下であるものが好ましい。中でも、平均層間距離または平均粒子間距離が10nm以上、50nm以下であるものがより好ましく、15nm以上、30nm以下であるものがさらに好ましい。透過型電子顕微鏡によって相分離構造が観察されない、または、平均層間距離または平均粒子間距離が5nm未満である場合には、イオンチャンネルの連続性が不足し、伝導度が不足する場合がある。また、層間距離が500nmを越える場合には、機械強度や寸法安定性が不良となる場合がある。
【0068】
イオン性基含有ポリマー(A)として用いるブロックコポリマーは結晶性を有することが好ましい。すなわち、示差走査熱量分析法(DSC)あるいは広角X線回折によって結晶性が認められることが好ましく、具体的には示差走査熱量分析法によって測定される結晶化熱量が0.1J/g以上、または、広角X線回折によって測定される結晶化度が0.5%以上であることが好ましい。なお、「結晶性を有する」とはポリマーが昇温すると結晶化されうる、結晶化可能な性質を有する、あるいは既に結晶化していることを意味する。また、非晶性ポリマーとは、結晶性ポリマーではない、実質的に結晶化が進行しないポリマーを意味する。従って、結晶性ポリマーであっても、結晶化が十分に進行していない場合には、ポリマーの状態としては非晶状態である場合がある。
【0069】
〔高分子電解質組成物〕
本発明の高分子電解質組成物は、特に、高分子電解質成型体として好適に用いられる。高分子電解質成型体は、膜状の他、板状、繊維状、中空糸状、粒子状、塊状、微多孔状、発泡体状など、使用用途によって様々な形態で有り得る。また、特に、膜状の高分子電解質成形体(高分子電解質膜)とした上で、触媒層付き電解質膜、膜電極複合体、固体高分子形燃料電池、電気化学式水素ポンプおよび水電解式水素発生装置の部材として用いるために最適である。
【0070】
高分子電解質膜に成型する方法に特に制限はないが、溶液状態の高分子電解質組成物を製膜する方法、あるいは溶融状態の高分子電解質組成物を製膜する方法等が可能である。前者では、たとえば、イオン性基含有ポリマー(A)とリン含有ポリマー(B)とをN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒に溶解し、その溶液をガラス板等の上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する方法が例示できる。
【0071】
製膜に用いる溶媒としては、イオン性基含有ポリマー(A)とリン含有ポリマー(B)を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ-ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられるが、非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。また、イオン性基を含有するセグメント(A1)の溶解性を高めるために、18-クラウンー6などのクラウンエーテルを添加することも好適である。
【0072】
必要な固形分濃度に調製した溶液の高分子電解質組成物を常圧の濾過もしくは加圧濾過などに供して異物を除去することは、強靱な膜を得るために好ましい方法である。ここで用いる濾材は特に限定されるものではないが、ガラスフィルターや金属性フィルターが好適である。
【0073】
高分子電解質膜の膜厚は、1~2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の機械強度、物理的耐久性を得るには1μmより厚い方がより好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。かかる膜厚のさらに好ましい範囲は3~50μm、特に好ましい範囲は10~30μmである。かかる膜厚は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができる。
【0074】
また、高分子電解質組成物には、通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内でさらに添加することができる。
【0075】
さらに、機械的強度、熱安定性、加工性などの向上を目的に、高分子電解質組成物は、イオン性基含有ポリマー(A)およびリン含有ポリマー(B)以外のポリマー、エラストマー、フィラー、微粒子、各種添加剤などを含有させてもよい。また、微多孔膜、不織布、メッシュ等で補強しても良い。
【0076】
本発明の高分子電解質組成物は、種々の用途に適用可能である。例えば、体外循環カラム、人工皮膚などの医療用途、ろ過用用途、耐塩素性逆浸透膜などのイオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途、加湿膜、防曇膜、帯電防止膜、太陽電池用膜、ガスバリアー材料に適用可能である。また、人工筋肉、アクチュエーター材料としても好適である。本発明の高分子電解質成型体は、中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、固体高分子形燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置、電気化学式水素ポンプ、水電解式水素発生装置が挙げられるが、中でも固体高分子形燃料電池、電気化学式水素ポンプ、水電解式水素発生装置に特に好ましく利用できる。
【0077】
本発明の高分子電解質組成物を固体高分子形燃料電池用として使用する際には、高分子電解質膜、電極触媒層のバインダーが好適であり、中でも高分子電解質膜に特に好適に用いられる。
【0078】
固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜の両面に触媒層、電極基材及びセパレータが順次積層された構造となっている。このうち、高分子電解質膜の両面に触媒層を積層させたもの(即ち、触媒層/電解質膜/触媒層の層構成のもの)は触媒層付き電解質膜(CCM)と称され、電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散基材を順次積層させたもの(即ち、ガス拡散基材/触媒層/電解質膜/触媒層/ガス拡散基材の層構成のもの)は、電極-電解質膜接合体または膜電極複合体(MEA)と称されている。
【0079】
CCMの製造方法としては、電解質膜表面に、触媒層を形成するための触媒層ペースト組成物を塗布及び乾燥させるという塗布方式が一般的に行われる。
【0080】
プレスにより、膜電極複合体(MEA)を作製する場合は、公知の方法(例えば、電気化学,1985, 53, p.269.記載の化学メッキ法、電気化学協会編(J. Electrochem. Soc.)、エレクトロケミカル サイエンス アンド テクノロジー (Electrochemical Science and Technology),1988, 135, 9, p.2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。プレス時の温度や圧力は、電解質膜の厚さ、水分率、触媒層や電極基材により適宜選択すればよい。また、本発明では電解質膜が乾燥した状態または吸水した状態でもプレスによる複合化が可能である。具体的なプレス方法としては圧力やクリアランスを規定したロールプレスやダブルベルトプレス、圧力を規定した平板プレスなどが挙げられ、工業的生産性やイオン性基を有する高分子材料の熱分解抑制などの観点から0℃~250℃の範囲で行うことが好ましい。加圧は電解質膜や電極保護の観点からできる限り弱い方が好ましく、平板プレスの場合、10MPa以下の圧力が好ましく、プレス工程による複合化を実施せずに電極と電解質膜を重ね合わせ燃料電池セル化することもアノード、カソード電極の短絡防止の観点から好ましい選択肢の一つである。この方法の場合、燃料電池として発電を繰り返した場合、短絡箇所が原因と推測される電解質膜の劣化が抑制される傾向があり、燃料電池として耐久性が良好となる。
【実施例
【0081】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
【0082】
(1)イオン交換容量(IEC)
以下の(i)~(iv)に記載の中和滴定法により測定した。測定は3回行って、その平均値を取った。
(i)プロトン置換し、純水で十分に洗浄した電解質膜の膜表面の水分を拭き取った後、100℃にて12時間以上真空乾燥し、乾燥重量を求めた。
(ii)電解質に5重量%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12時間静置してイオン交換した。
(iii)0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定した。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v%を加え、薄い赤紫色になった点を終点とした。
(iv)イオン交換容量は下記の式により求めた。
イオン交換容量(meq/g)=
〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/mL)×滴下量(mL)〕/試料の乾燥重量(g)〕
(2)プロトン伝導度(H伝導度)
膜状の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、80℃、相対湿度25~95%の恒温恒湿槽中にそれぞれのステップで30分保持し、定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。測定装置としては、Solartron製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用し、2端子法で定電位インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度を求めた。交流振幅は、50mVとした。サンプルは幅10mm、長さ50mmの膜を用いた。測定治具はフェノール樹脂で作製し、測定部分は開放させた。電極として、白金板(厚さ100μm、2枚)を使用した。電極は電極間距離10mm、サンプル膜の表側と裏側に、互いに平行にかつサンプル膜の長手方向に対して直交するように配置した。
【0083】
(3)数平均分子量、重量平均分子量
ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー社製HLC-8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー社製TSK gel SuperHM-H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N-メチル-2-ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN-メチル-2-ピロリドン溶媒)にて、サンプル濃度0.1重量%、流量0.2mL/min、温度40℃で測定し、標準ポリスチレン換算により数平均分子量、重量平均分子量を求めた。
【0084】
(4)膜厚
ミツトヨ社製グラナイトコンパレータスタンドBSG-20にセットしたミツトヨ社製ID-C112型を用いて測定した。
【0085】
(5)純度の測定方法
下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)により定量分析した。
カラム:DB-5(J&W社製) L=30m Φ=0.53mm D=1.50μm
キャリヤー:ヘリウム(線速度=35.0cm/sec)
分析条件
Inj.temp.; 300℃
Detct.temp.; 320℃
Oven; 50℃×1min
Rate; 10℃/min
Final; 300℃×15min
SP ratio; 50:1
(6)添加剤の添加量測定
電解質膜の添加剤添加量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により評価した。5cm×5cmの大きさで電解質膜を切り出し、110℃、減圧下で2時間乾燥した後、質量を精秤し、550℃で2日間静置して、残った灰分を0.1規定硝酸水溶液に溶解させ、添加剤を完全に抽出した液を得た。この液をICP発光分析にて測定し、リン及び各種金属元素量を測定することで、添加剤の定量を行った。
【0086】
(7)添加剤の耐熱水性
添加剤の耐熱水性は、95℃の熱水浸漬後の残存率を測定することにより評価した。電解質膜を長さ約5cm、幅約10cmの短冊2枚に切り取り、95℃の熱水中に8時間浸漬させることで添加剤を溶出させた。熱水浸漬前後の電解質膜を、5cm×5cmの大きさで切り出し、上記ICP発光分析を行うことで添加剤含量を測定し、添加剤残存率として耐熱水性を評価した。
【0087】
(8)核磁気共鳴スペクトル(NMR)
下記の測定条件で、H-NMRの測定を行い、構造確認、およびイオン性基を含有するセグメント(A1)とイオン性基を含有しないセグメント(A2)のモル組成比の定量を行った。該モル組成比は、8.2ppm(ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン由来)と6.5~8.0ppm(ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを除く全芳香族プロトン由来)に認められるピークの積分値から算出した。
【0088】
装置 :日本電子社製EX-270
共鳴周波数 :270MHz(H-NMR)
測定温度 :室温
溶解溶媒 :DMSO-d6
内部基準物質:TMS(0ppm)
積算回数 :16回
(9)化学的安定性
(A)分子量保持率
N-メチルピロリドン(NMP)に可溶な電解質膜については、以下の方法にて電解質膜を劣化させ、劣化試験前後の分子量を比較することで化学安定性を評価した。
【0089】
市販の電極、BASF社製燃料電池用ガス拡散電極“ELAT(登録商標)LT120ENSI”5g/mPtを5cm角にカットしたものを1対準備し、燃料極、酸化極として電解質膜を挟むように対向して重ね合わせ、150℃、5MPaで3分間加熱プレスを行い、評価用膜電極接合体を得た。
【0090】
この膜電極接合体を英和(株)製 JARI標準セル“Ex-1”(電極面積25cm)にセットし、80℃に保ちながら、低加湿状態の水素(70mL/分、背圧0.1MPaG)と空気(174mL/分、背圧0.05MPaG)をセルに導入し、開回路での劣化加速試験を行った。この条件で燃料電池セルを200時間作動させた後、膜-電極接合体を取り出してエタノール/水の混合溶液に投入し、さらに超音波処理することで触媒層を取り除いた。そして、残った高分子電解質膜の分子量を測定し、分子量保持率として評価した。
【0091】
(B)開回路保持時間
NMPに溶解不可能な電解質膜については、以下の方法にて電解質膜を劣化させ、開回路電圧の保持時間を比較することで化学安定性を評価した。
【0092】
上記と同様の方法にて膜電極接合体を作製し、評価用セルにセットした。続いて、上記と同様の条件にて、開回路での劣化加速試験を行った。開回路電圧が0.7V以下まで低下するまでの時間を開回路保持時間として評価した。
【0093】
(C)電圧保持率
上記(B)の開回路保持時間評価を行っても3000時間以上、0.7V以上を維持できる場合には、そこで評価を打ち切り初期電圧と3000時間後の電圧を比較し電圧保持率として化学耐久性を評価した。
【0094】
[合成例1]ブロックコポリマーb1の合成
(下記一般式(G1)で表される2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン(K-DHBP)の合成)
【0095】
【化7】
【0096】
攪拌器、温度計及び留出管を備えた500mLフラスコに、4,4′-ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp-トルエンスルホン酸一水和物0.50gを仕込み溶解する。その後78~82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mLで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mLを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン52.0gを得た。この結晶をGC分析したところ99.8%の2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソランと0.2%の4,4′-ジヒドロキシベンゾフェノンであった。
【0097】
(下記一般式(G2)で表されるジソジウム 3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの合成)
【0098】
【化8】
【0099】
4,4’-ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO3)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10時間反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記一般式(G2)で示されるジソジウム 3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを得た。純度は99.3%であった。構造はH-NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
【0100】
(下記一般式(G3)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーの合成)
【0101】
【化9】
【0102】
(式(G3)中、mは正の整数を表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、K-DHBP 25.8g(100mmol)および4,4’-ジフルオロベンゾフェノン20.3g(アルドリッチ試薬、93mmol)を入れ、窒素置換後、N-メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中にて160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールで再沈殿することで精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマー(末端OM基、なおOM基のMはNaまたはKを表し、これ以降の表記もこれに倣う。)を得た。数平均分子量は10000であった。
【0103】
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、当該オリゴマー(末端OM基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N-メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、前記式(G3)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は11000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値10400と求められた。
【0104】
(下記一般式(G4)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーの合成)
【0105】
【化10】
【0106】
(式(G4)において、Mは、NaまたはKを表す。)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム27.6g(アルドリッチ試薬、200mmol)、前記K-DHBP 12.9g(50mmol)および4,4’-ビフェノール9.3g(アルドリッチ試薬、50mmol)、ジソジウム 3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン40.6g(96mmol)、および18-クラウン-6エーテル17.9g(和光純薬、82mmol)を入れ、窒素置換後、N-メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中にて170℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、前記式(G4)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa2’(末端OM基)を得た。数平均分子量は29000であった。
【0107】
(イオン性基を含有するセグメント(A1)として一般式(G4)で表されるオリゴマー、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として一般式(G3)で表されるオリゴマーを用いたポリケタールケトン(PKK)系ブロックコポリマーb1の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa2’(末端OM基)を29g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N-メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中にて100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)11g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロックコポリマーb1を得た。重量平均分子量は40万であった。
【0108】
ブロックコポリマーb1のイオン性基を含有するセグメント(A1)は、前記一般式(S1)で表される構成単位を50モル%、イオン性基を含有しないセグメント(A2)は、前記一般式(S2)で表される構成単位を100モル%含有していた。
【0109】
ブロックコポリマーb1のみを高分子電解質膜に成形したときの、中和滴定から求めたイオン交換容量は2.3meq/g、H-NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、58モル/42モル=1.38であった。
【0110】
[合成例2]ブロックコポリマーb2の合成
(下記式(G6)で表されるセグメントと下記式(G7)で表されるセグメントからなるポリエーテルスルホン(PES)系ブロックコポリマー前駆体b2’の合成)
無水塩化ニッケル1.78gとジメチルスルホキシド15mLとを混合し、70℃に調整した。これに、2,2’-ビピリジル2.37gを加え、同温度で10分撹拌し、ニッケル含有溶液を調製した。
【0111】
ここに、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2-ジメチルプロピル)1.64gと下記式(G5)で示される、ポリエーテルスルホン(住友化学社製スミカエクセルPES5200P、Mn=40,000、Mw=94,000)0.55gとを、ジメチルスルホキシド5mLに溶解させて得られた溶液に、亜鉛粉末1.35gを加え、70℃に調整した。これに前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、70℃で4時間重合反応を行った。反応混合物をメタノール60mL中に加え、次いで、6mol/L塩酸60mLを加え1時間攪拌した。析出した固体を濾過により分離し、乾燥し、灰白色の下記式(G6)と下記式(G7)で表されるセグメントを含むブロックコポリマー前駆体b2’(ポリアリーレン前駆体)1.75gを収率97%で得た。重量平均分子量は21万であった。
【0112】
【化11】
【0113】
(前記式(G7)で表されるセグメントと下記式(G8)で表されるセグメントからなるポリエーテルスルホン(PES)系ブロックコポリマーb2の合成)
ブロックコポリマー前駆体b2’0.25gを、臭化リチウム1水和物0.18gとN-メチル-2-ピロリドン8mLとの混合溶液に加え、120℃で24時間反応させた。反応混合物を、6mol/L塩酸80mL中に注ぎ込み、1時間撹拌した。析出した固体を濾過により分離した。分離した固体を乾燥し、灰白色の式(G7)で示されるセグメントと下記式(G8)で表されるセグメントからなるブロックコポリマーb2を得た。
【0114】
【化12】
【0115】
得られたブロックコポリマーb2の重量平均分子量は19万であった。ブロックコポリマーb2のみを高分子電解質膜に成形としたときの、中和滴定から求めたイオン交換容量は2.02meq/gであった。
【0116】
[合成例3]ブロックコポリマーb3の合成
(下記式(G9)で表される疎水性オリゴマーの合成)
【0117】
【化13】
【0118】
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三口フラスコに、2,6-ジクロロベンゾニトリル51.9g(0.30mol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン92.8g(0.27mol)、炭酸カリウム49.7g(0.36mol)を秤量した。
【0119】
窒素置換後、スルホラン363mL、トルエン181mLを加えて攪拌した。フラスコをオイルバスにつけ、150℃に加熱還流させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean-Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を徐々に上げながら大部分のトルエンを除去した後、200℃で3時間反応を続けた。次に、2,6-ジクロロベンゾニトリル12.9g(0.076mol)を加え、さらに5時間反応した。
【0120】
得られた反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を2Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン250mLに溶解した。これをメタノール2Lに再沈殿し、目的のオリゴマー109gを得た。当該オリゴマーの数平均分子量は8,000であった。
【0121】
(下記式(G10)で表される親水性モノマーの合成)
【0122】
【化14】
【0123】
攪拌機、冷却管を備えた3Lの三口フラスコに、クロロスルホン酸245g(2.1mol)を加え、続いて2,5-ジクロロベンゾフェノン105g(420mmol)を加え、100℃のオイルバスで8時間反応させた。所定時間後、反応液を砕氷1000gにゆっくりと注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、淡黄色の粗結晶3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸クロリドを得た。粗結晶は精製せず、そのまま次工程に用いた。
【0124】
2,2-ジメチル-1-プロパノール(ネオペンチルアルコール)41.1g(462mmol)をピリジン300mLに加え、約10℃に冷却した。ここに上記で得られた粗結晶を約30分かけて徐々に加えた。全量添加後、さらに30分撹拌し反応させた。反応後、反応液を塩酸水1000mL中に注ぎ、析出した固体を回収した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを留去し、粗結晶を得た。これをメタノールで再結晶し、前記構造式で表される3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチルの白色結晶を得た。
【0125】
(下記式(G11)で表されるポリアリーレン系ブロックコポリマーb3の合成)
【0126】
【化15】
【0127】
撹拌機、温度計、窒素導入管を接続した1Lの3口フラスコに、乾燥したN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)166mLを、前述の疎水性オリゴマー15.1g(1.89mmol)、3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル39.5g(98.4mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.75g(4.2mmol)、トリフェニルホスフィン11.0g(42.1mmol)、ヨウ化ナトリウム0.47g(3.15mmol)、亜鉛16.5g(253mmol)の混合物中に窒素下で加えた。
【0128】
反応系を撹拌下に加熱し(最終的には82℃まで加温)、3時間反応させた。反応途中で系中の粘度上昇が観察された。重合反応溶液をDMAc180mLで希釈し、30分撹拌し、セライトを濾過助剤に用い濾過した。撹拌機を取り付けた1Lの3つ口で、この濾液に臭化リチウム25.6g(295ミリモル)を1/3ずつ3回に分け1時間間隔で加え、120℃で5時間、窒素雰囲気下で反応させた。反応後、室温まで冷却し、アセトン4Lに注ぎ、凝固した。凝固物を濾集、風乾後、ミキサーで粉砕し、1N硫酸1500mLで攪拌しながら洗浄を行った。濾過後、生成物は洗浄液のpHが5以上となるまで、イオン交換水で洗浄後、80℃で一晩乾燥し、目的のブロックコポリマーb3 39.1gを得た。このブロックコポリマーの重量平均分子量は20万であった。
【0129】
ブロックコポリマーb3そのものを高分子電解質膜としたときの、中和滴定から求めたイオン交換容量は2.3meq/gであった。
【0130】
[合成例4]リン含有ポリマーHQPEPの合成
(下記式(G12)で表されるリン含有ポリマーの合成)
【0131】
【化16】
【0132】
炭酸カリウム17g(0.12mol)、ヒドロキノン11g(0.10mol)、およびビス(4-フルオロフェニル)フェニルホスフィン30g(0.10mol)を用いて、N-メチルピロリドン(NMP)620mL中、160℃で2時間重合反応を行った。多量の水及びメタノールで順次再沈殿することで精製を行い、リン含有ポリマー(HQPEP)を得た。得られたHQPEPの数平均分子量は8万であった。
【0133】
[合成例5]リン含有ポリマーHQPESPの合成
(下記式(G13)で表されるリン含有ポリマーの合成)
【0134】
【化17】
【0135】
ビス(4-フルオロフェニル)フェニルホスフィン30gをポタシウム 4-(ビス(4-フルオロフェニル)ホスファニル)ベンゼンスルホン酸42g(0.10mol)に変えたこと以外は、合成例4に記載の方法で重合を行い、リン含有ポリマー(HQPESP)を得た。得られたHQPESPの数平均分子量は9万であった。
【0136】
[合成例6]リン含有ポリマーHQPEMPの合成
(下記式(G14)で表されるリン含有ポリマーの合成)
【0137】
【化18】
【0138】
ビス(4-フルオロフェニル)フェニルホスフィン30gをビス(4-フルオロフェニル)メチルホスフィン24g(0.10mol)に変えたこと以外は、合成例4に記載の方法で重合を行い、リン含有ポリマー(HQPEMP)を得た。得られたHQPEMPの数平均分子量は6.5万であった。
【0139】
[合成例7]リン含有ポリマーHQPEPOの合成
(下記式(G15)で表されるリン含有ポリマーの合成)
【0140】
【化19】
【0141】
ビス(4-フルオロフェニル)フェニルホスフィン30gをビス(4-フルオロフェニル)フェニルホスフィンオキシド31g(0.10mol)に変えたこと以外は、合成例4に記載の方法で重合を行い、リン含有ポリマー(HQPEPO)を得た。得られたHQPEPOの数平均分子量は10万であった。
【0142】
[合成例8]リン含有ポリマーHQPEMPOの合成
(下記式(G16)で表されるリン含有ポリマーの合成)
【0143】
【化20】
【0144】
ビス(4-フルオロフェニル)フェニルホスフィン30gをビス(4-フルオロフェニル)メチルホスフィンオキシド25g(0.10mol)に変えたこと以外は、合成例4に記載の方法で重合を行い、リン含有ポリマー(HQPEMPO)を得た。得られたHQPEMPOの数平均分子量は8.5万であった。
【0145】
[合成例9]リン含有ポリマーHQPEPPの合成
(下記式(G17)で表されるリン含有ポリマーの合成)
【0146】
【化21】
【0147】
炭酸カリウム17g(0.12mol)、ヒドロキノン11g(0.10mol)、およびビス(4-フルオロフェニル)フェニルホスフェート36g(0.10mol)を用いて、N-メチルピロリドン(NMP)620mL中、100℃で6時間重合反応を行った。多量の水及びメタノールで順次再沈殿することで精製を行い、リン含有ポリマー(HQPEPP)を得た。得られたHQPEPPの数平均分子量は5万であった。
【0148】
[実施例1]
合成例1にて得た20gのブロックコポリマーb1を80gのNMPに溶解した。この溶液に、合成例4にて得た200mgのHQPEPを添加し、撹拌機で20,000rpm、3分間撹拌しポリマー濃度20質量%の透明な溶液を得た。ポリマーの溶解性は極めて良好であった。得られた溶液を、ガラス繊維フィルターを用いて加圧ろ過後、ガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥後、窒素下150℃で10分間熱処理し、ポリケタールケトン膜(膜厚15μm)を得た。95℃、10重量%硫酸水溶液に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄した。
【0149】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定したが、3000時間以内に評価が終了しなかったので、電圧保持率として電解質膜の化学耐久性を評価した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0150】
[実施例2]
HQPEPを1gに変えた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0151】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定したが、3000時間以内に評価が終了しなかったので、電圧保持率として電解質膜の化学耐久性を評価した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0152】
[実施例3]
HQPEPを20mgに変えた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0153】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0154】
[実施例4]
ブロックコポリマーb1の代わりにPES系ブロックコポリマーb2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0155】
得られた膜は、NMPに可溶であったため、耐久性試験として分子量保持率を測定した。別途イオン交換容量と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0156】
[実施例5]
ブロックコポリマーb1の代わりにブロックコポリマーb3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0157】
得られた膜は、NMPに可溶であったため、耐久性試験として分子量保持率を測定した。別途イオン交換容量と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0158】
[実施例6]
ブロックコポリマーb1の代わりにフッ素系電解質であるナフィオン(登録商標)NRE211CSを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0159】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0160】
[実施例7]
HQPEPの代わりに合成例5にて得た200mgのHQPESPを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0161】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定したが、3000時間以内に評価が終了しなかったので、電圧保持率として電解質膜の化学耐久性を評価した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0162】
[実施例8]
HQPEPの代わりに合成例6にて得た200mgのHQPEMPを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0163】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定したが、3000時間以内に評価が終了しなかったので、電圧保持率として電解質膜の化学耐久性を評価した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0164】
[実施例9]
HQPEPの代わりに合成例7にて得た200mgのHQPEPOを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0165】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定したが、3000時間以内に評価が終了しなかったので、電圧保持率として電解質膜の化学耐久性を評価した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0166】
[実施例10]
HQPEPの代わりに合成例8にて得た200mgのHQPEMPOを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0167】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定したが、3000時間以内に評価が終了しなかったので、電圧保持率として電解質膜の化学耐久性を評価した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0168】
[実施例11]
HQPEPの代わりに200mgのポリ(ビス(フェノキシ)ホスファゼン)(シグマアルドリッチ試薬)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0169】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0170】
[実施例12]
HQPEPの代わりに合成例9にて得た200mgのHQPEPPを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0171】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0172】
[実施例13]
実施例1で得た電解質膜20gをさらに、硝酸セリウム六水和物54mg(0.125mmol)を純水に溶解させた30Lの水溶液に72時間浸漬し、硝酸セリウムを取り込ませた高分子電解質膜を得た。
【0173】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定したが、3000時間以内に評価が終了しなかったので、電圧保持率として電解質膜の化学耐久性を評価した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0174】
[比較例1]
HQPEPを添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で電解質膜を得た。
【0175】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量と80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0176】
[比較例2]
HQPEPを添加しなかった以外は、実施例4と同様の方法で電解質膜を得た。
【0177】
得られた膜は、NMPに可溶であったため、耐久性試験として分子量保持率を測定した。別途イオン交換容量と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0178】
[比較例3]
HQPEPを添加しなかった以外は、実施例5と同様の方法で電解質膜を得た。
【0179】
得られた膜は、NMPに可溶であったため、耐久性試験として分子量保持率を測定した。別途イオン交換容量と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0180】
[比較例4]
HQPEPを添加しなかった以外は、実施例6と同様の方法で電解質膜を得た。
【0181】
得られた膜は、NMPに不溶であり分子量保持率が測定不能であったため、耐久性試験として開回路保持時間を測定した。加えて、得られた電解質膜のイオン交換容量、耐熱水性と、80℃、相対湿度25%におけるプロトン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0182】
【表1】