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特許7087369微細配線層付きキャリア基板および微細配線層付き半導体パッケージ基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】微細配線層付きキャリア基板および微細配線層付き半導体パッケージ基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/32 20060101AFI20220614BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H01L23/32 D
H01L21/60 311Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017238773
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2019106475
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】石井 智之
【審査官】平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-198114(JP,A)
【文献】特開2004-079658(JP,A)
【文献】特開2017-130521(JP,A)
【文献】特開2012-049481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0145636(US,A1)
【文献】特開2003-249601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-21/449
H01L 21/60-21/607
H01L 23/32
H01L 25/00-25/07
H01L 25/10-25/11
H01L 25/16-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア基材と、
前記キャリア基材上に形成された剥離層と、
前記剥離層上に形成された応力緩衝層と、
前記応力緩衝層上に前記応力緩衝層に接触して形成された密着層と、
前記密着層上に形成された銅箔層と、
前記銅箔層上に形成されたパターン配線および絶縁樹脂を積層した微細配線層と
を有し、
前記応力緩衝層は、弾性率が前記キャリア基材および前記絶縁樹脂の弾性率より小さい値であること
を特徴とする微細配線層付きキャリア基板。
【請求項2】
前記応力緩衝層は、10μmから100μmの範囲の厚さを有し、1.0GPaから10.0GPaの範囲の弾性率を有すること
を特徴とする請求項1に記載の微細配線層付きキャリア基板。
【請求項3】
前記応力緩衝層の材質は樹脂であること
を特徴とする請求項1または2に記載の微細配線層付きキャリア基板。
【請求項4】
前記キャリア基材の材質はガラスであること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微細配線層付きキャリア基板。
【請求項5】
半導体パッケージ基板の電極パッドと請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微細配線層付きキャリア基板の電極パッドの突起電極とを介して、前記半導体パッケージ基板と前記微細配線層付きキャリア基板とを接合する工程と、
前記工程の後に前記微細配線層と前記半導体パッケージ基板の間にアンダーフィルを形成する工程と
を備え、
前記半導体パッケージ基板と前記微細配線層付きキャリア基板とを接合する工程において、前記突起電極の形成直後に前記キャリア基材を前記剥離層の位置で前記微細配線層から剥離させる工程を備えること
を特徴とする微細配線層付き半導体パッケージ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細配線層付きキャリア基板おび微細配線層付き半導体パッケージ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップとマザーボード間の電気的接続のために半導体パッケージ基板が使用されている。また、半導体パッケージ基板には、半導体チップと半導体パッケージが実装されるプリント配線板との熱膨張係数の相違の橋渡しを行い、システムの実装の接合信頼性を高める役割もある。このような役割から半導体パッケージ基板は、インターポーザ基板などと呼ばれる。
【0003】
また、半導体パッケージ基板は、基板内の配線幅および配線ピッチを各層で変化させることで、半導体チップとマザーボード相互の配線幅および配線ピッチに変換し電気的接続を得ている。
【0004】
一方、半導体パッケージ基板と半導体チップの接続・実装方式は使用する状況により様々あるが、半導体チップと半導体パッケージ基板をはんだや金等の金属接合で接続するフリップチップ接続・実装が多用されている。フリップチップ接続は、半導体チップの端子面を基板側の端子面に配置することにより多くの端子を半導体パッケージ基板と接続できるため、高性能の半導体パッケージに多く用いられている。
【0005】
また、近年では高性能なシステムを短期間で開発するために従来のSoC(System on a Chip)だけでなく、1つのパッケージ上で大規模なシステムを構築するSiP(System in Package)が用いられている。例えば、CPU・GPUと大容量メモリ等の複数の半導体チップを1つのパッケージ基板上に隣同士に配置する場合やチップ同士をスタックし、3次元に配置する形態もある。
【0006】
また、2次元および3次元の少なくとも一方に複数の半導体チップを配置する形態においては、半導体パッケージ基板には数μm幅の微細配線や数十μmピッチのマイクロバンプの形成が求められている。これらの狭いバンプピッチの実装を実現するために、コア部に寸法安定性が高い材料を用いたインターポーザも提案されている。例えば、基板のコア部が半導体チップと材料が同じであるシリコンインターポーザや高い絶縁性を有し、半導体チップと線膨張係数が近いガラスインターポーザなどが提案されている(特許文献1)。
【0007】
しかしながら、シリコンインターポーザにおいては半導体前工程用の設備を使用して製作するため、1枚のウエハから作製できるインターポーザに制限があることや製造設備も高価であるため、インターポーザのコストも高価となる。一方、ガラスインターポーザにおいても、コア部の貫通ビアの形成に専用の製造設備を要するため、同様に製造コストが高価となる。また、伝送特性においてもコア部の貫通ビア近辺での信号の劣化が問題となっている。これらの課題の解決策として、キャリア基材上に微細配線層を形成し、FCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)用配線基板などと電極パッドを介して接合した後に、キャリア基材を除去し、半導体パッケージ基板上に微細配線層が形成される方式が考えられる。この方式では、コア部を有しないため、コア部での伝送特性の劣化を抑制することができる。また、剛直なキャリア基材上に微細配線層を形成するため、高精度で微細配線の形成、積層が可能となる。
【0008】
しかし、半導体パッケージ基板に微細配線層付きキャリア基板をフリップチップ実装する際に、はんだ接合するためにリフロー炉にて加熱する。この時に微細配線層付きキャリア基板に反りが発生し、半導体パッケージ基板間の隣接するはんだ同士が離れ、接続のオープン不良が生じたり、逆にはんだが一体化することにより接続がショートの状態となる等の不具合が発生し、適切にはんだ接合ができない問題が生じるおそれがある。さらに、はんだ接合後の冷却時に微細配線層付きキャリア基板と半導体パッケージ基板の線膨張係数(CTE)の差の影響で半導体パッケージ基板全体が反り、はんだバンプに応力が発生し、はんだバンプに亀裂が生じるおそれもある。これらの影響により、製造の歩留まりやはんだ接合部の信頼性を十分に確保できないことが懸念される。
【0009】
また、微細配線層付きキャリア基板は、キャリア基材除去後には微細配線層上の半導体チップ搭載面に複数の半導体チップを搭載するため、微細配線層付きキャリア基板の面積は半導体チップよりも広くなる。そのため、従来の半導体チップを実装する場合よりも、キャリア基板端部の反りおよびはんだバンプに発生する応力が増大するため、上記のはんだ接合のオープン不良や、隣接するはんだの一体化による接続のショート状態、およびはんだバンプの亀裂が生じやすくなる。よって、半導体パッケージの接続信頼性の低下を及ぼすおそれがある。これらの背景から、はんだバンプの亀裂や電極パッドの剥離を防止し、配線の接続信頼性を確保することが必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-280490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上の事情の下になされ、微細配線層と半導体パッケージ基板との間のはんだバンプの亀裂や電極パッドおよび絶縁層の剥離の発生を抑制することができる微細配線層付きキャリア基板おび微細配線層付き半導体パッケージ基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様による微細配線層付きキャリア基板は、キャリア基材と、前記キャリア基材上に形成された剥離層と、前記剥離層上に形成された応力緩衝層と、前記応力緩衝層上に前記応力緩衝層に接触して形成された密着層と、前記密着層上に形成された銅箔層と、前記銅箔層上に形成されたパターン配線および絶縁樹脂を積層した微細配線層とを有し、前記応力緩衝層は、弾性率が前記キャリア基材および前記絶縁樹脂の弾性率より小さい値であることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の一態様による微細配線層付き半導体パッケージ基板の製造方法は、半導体パッケージ基板の電極パッドと上記本発明の一態様による微細配線層付きキャリア基板の電極パッドの突起電極とを介して、前記半導体パッケージ基板と前記微細配線層付きキャリア基板とを接合する工程と、前記工程の後に前記微細配線層と前記半導体パッケージ基板の間にアンダーフィルを形成する工程とを備え、前記半導体パッケージ基板と前記微細配線層付きキャリア基板とを接合する工程において、前記突起電極の形成直後に前記キャリア基材を前記剥離層の位置で前記微細配線層から剥離させる工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によると、微細配線層と半導体パッケージ基板との間のはんだバンプの亀裂や電極パッドおよび絶縁層の剥離の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの構造を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る微細配線層付きキャリア基板の構造を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る微細配線層付き半導体パッケージ基板の構造を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その1)である。
図6】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その2)である。
図7】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その3)である。
図8】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その4)である。
図9】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その5)である。
図10】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その6)である。
図11】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その7)である。
図12】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その8)である。
図13】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その9)である。
図14】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その10)である。
図15】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その11)である。
図16】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その12)である。
図17】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの製造工程を示す断面図(その13)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明による微細配線層付きキャリア基板、微細配線層付き半導体パッケージ基板、半導体パッケージおよび半導体装置並びに微細配線層付き半導体パッケージの製造方法を、その実施の形態に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。
さらに、本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、構造、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
図1は本発明の一実施形態による半導体パッケージの構造を示す断面図である。なお、図1および後述する図2から図17では、理解を容易にするため、ランド、配線パターン、ビア、電極パッド接続パッドなどのハッチングの図示が省略されている。
【0021】
図1に示すように、半導体パッケージ51は、本発明の一実施形態による微細配線層付き半導体パッケージ基板100(詳細は後述)と、微細配線層付き半導体パッケージ基板100の電極パッドを介して、微細配線層付き半導体パッケージ基板100と接続されている半導体チップ21と、微細配線層付き半導体パッケージ基板100と半導体チップ21との間に挿入されたアンダーフィル12bとを有している。
【0022】
微細配線層付き半導体パッケージ基板100に設けられた半導体パッケージ基板101は、コア基材1と、コア基材1の両面に形成されたランド5と、ランド5に接続されたビア6、ビア6に接続されてコア基材1の両面に形成された配線パターン2とを有している。なお、コア基材1は、各配線パターン2を接続するために厚み方向にスルーホール電極4を有している。コア基材1を形成するための形成材料には、例えばガラスエポキシ樹脂を用いることができる。また、配線パターン2上には、絶縁樹脂3を積層したビルドアップ層30が設けられている。
【0023】
ビルドアップ層30は、ビルドアップ工法により形成され、絶縁樹脂3と配線パターン2とを有する。絶縁樹脂3の形成材料には、例えばエポキシ系、ポリイミド系樹脂が用いられ、樹脂にフィラーを添加した材料も用いることができる。また、配線パターン2の形成材料には、例えば銅を用いることができる。なお、ビルドアップ層30の各層の配線パターン2はビア6により相互に電気的に接続されている。
【0024】
最上層の配線パターン2には電気信号を外部との間で入出力するための電極パッド7が接続され、最下層の配線パターン2には電気信号を外部との間で入出力するための電極パッド10が接続されている。電極パッド7,10は、最上層および最下層の配線パターン2を形成した後に形成する。また、ビルドアップ層30の最表面には、ソルダーレジスト8が形成されている。ソルダーレジスト8は、電極パッド7上を開口するように形成する。なお、ソルダーレジスト8の形成材料は例えば、感光性エポキシ樹脂や樹脂にフィラーを添加した材料を用いることができる。
【0025】
電極パッド7上には、はんだバンプ9が形成されている。はんだバンプ9は、ソルダーレジスト8を形成した後に、電極パッド7上に印刷法やはんだボール振込み法などを用いて形成される。
【0026】
半導体パッケージ基板101の半導体チップ搭載面側にビルドアップ層のみで形成された微細配線層200がはんだバンプ9などで金属接合されている。また、半導体パッケージ基板101と微細配線層200との隙間はアンダーフィル12aで埋め固められている。
【0027】
また、微細配線層200の半導体チップ搭載面には、半導体チップ(半導体素子の一例)21がはんだバンプ13で接合されている。半導体チップ21と微細配線層200との隙間はアンダーフィル12bで埋め固められている。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態による微細配線層付きキャリア基板の構造を示す断面図である。
図2に示すように、微細配線層付きキャリア基板102は、キャリア基材14と、キャリア基材14上に形成された剥離層15と、剥離層15上に形成された応力緩衝層16と、応力緩衝層16上に形成された密着層17と、密着層17上に形成された銅箔層18と、銅箔層18上に形成されたパターン配線および絶縁樹脂25を積層した微細配線層200とを有している。応力緩衝層16は、弾性率がキャリア基材14および絶縁樹脂25の弾性率より小さい値である。
【0029】
微細配線層200と半導体パッケージ基板101との接合を、平坦性を確保した上で行うために、キャリア基材14上に微細配線層200が形成されている。微細配線層付きキャリア基板102を半導体パッケージ基板101(図1参照)に実装した後に、微細配線層付きキャリア基板102を微細配線層200とキャリア基材14に分離するための剥離層15がキャリア基材14上に形成されている。
【0030】
また、剥離層15上には応力緩衝層16が形成されている。応力緩衝層16の弾性率は、キャリア基材14や微細配線層200のビルドアップ層部を構成する絶縁樹脂の形成材料の弾性率より小さい値である。こうすることにより、微細配線層付きキャリア基板102と半導体パッケージ基板101とを接続する時に、はんだバンプ9および電極パッド7(図1参照)に発生する応力が応力緩衝層16の変形により緩和される。具体的には、応力緩衝層16の弾性率は、1.0GPaから10.0GPaであることが好ましい。当該弾性率が1.0GPaより小さい場合には、応力は緩和されるが配線形成時に配線形成面の平坦性の確保が困難となる。一方、当該弾性率が10.0GPaより大きい場合には、十分に応力が緩和されず、はんだバンプ9の亀裂や電極パッド7の剥離の抑制効果が低下する。これらの理由より、応力緩衝層16の弾性率は、上述の範囲であることが好ましい。
【0031】
応力緩衝層16の形成材料としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン樹脂等が好ましいが、これらの材料に限られない。応力緩衝層16の形成材料は、剥離層15および密着層17と密着し、微細配線層付きキャリア基板102を半導体パッケージ基板101に実装する際に加熱する温度まで耐熱性を有し、かつ弾性率が上述の範囲内にある材料であれば良い。
【0032】
応力緩衝層16の厚さは、はんだ接合工程の加熱および冷却時において、はんだバンプ9および電極パッド7に発生する応力を緩和できる厚さ以上にする。応力緩衝層16の厚さは、応力緩衝層16や半導体パッケージ基板101の弾性率や線膨張係数にもよるが、10μmから100μmであることが好ましい。また、応力緩衝層16は、微細配線層付きキャリア基板102の製造時にキャリア基材14と微細配線層200との間に発生する応力を抑制するため、微細配線層付きキャリア基板102の反りを低減する作用もある。
【0033】
また、応力緩衝層16の線膨張係数は、キャリア基材14よりも大きく、微細配線層200と同等かそれ以下であることが好ましい。こうすることにより、キャリア基材14と微細配線層200との間に発生する応力を低減することができ、微細配線層付きキャリア基板102の反りを抑制することができる。
【0034】
図3は、本発明の一実施による、微細配線層付きキャリア基板が実装された微細配線層付き半導体パッケージ基板の構造を示す断面図である。
図3に示すように、微細配線層付き半導体パッケージ基板100は、本発明の一実施形態による微細配線層付きキャリア基板102(図2参照)に設けられた微細配線層200と、微細配線層200の電極パッドを介して微細配線層200と接続している半導体パッケージ基板101と、微細配線層200と半導体パッケージ基板101との間に挿入されたアンダーフィル12aとを有している。微細配線層付き半導体パッケージ基板100に備えられた微細配線層200は、銅箔層上に形成されたパターン配線および絶縁樹脂が積層された構成を有している。
【0035】
微細配線層付きキャリア基板102の搭載領域上にフラックスを塗布した後、微細配線層付きキャリア基板102を半導体パッケージ基板101上に実装する。その際、実装工程にてはんだバンプ9が半導体パッケージ基板101に接合された直後に、キャリア基材14を微細配線層付きキャリア基板102から取り除き、微細配線層200上に形成された半導体チップ21との接続用の端子を露出させる。具体的には、リフロー炉内ではんだが液体から固体に変化し、はんだバンプ9が形成された直後にキャリア基材14を取り除く。その後、微細配線層200と半導体パッケージ基板101との隙間にアンダーフィル12aを挿入する。これによって、本実施形態による微細配線層付き半導体パッケージ基板100が形成される。
【0036】
ここで、微細配線層付きキャリア基板102を半導体パッケージ基板101に実装した後にキャリア基材14を微細配線層付きキャリア基板102から取り除いた場合、はんだ接合温度から常温に冷却される過程において、微細配線層付きキャリア基板102と半導体パッケージ基板101との線膨張係数(CTE)の差により、半導体パッケージ基板101と微細配線層付きキャリア基板102との間に応力が発生する。それにともない、半導体パッケージ基板101の反りおよびはんだバンプ9への応力が増加し、はんだバンプ9の亀裂や電極パッド7および微細配線層200の絶縁樹脂の剥離が発生するおそれがある。
【0037】
一方、はんだ接合直後にキャリア基材14を微細配線層付きキャリア基板102から取り除いた場合、冷却時の微細配線層付きキャリア基板102と半導体パッケージ基板101との線膨張係数(CTE)の差による半導体パッケージ51の反りおよびはんだバンプ9への応力が抑制され、はんだバンプ9の亀裂や電極パッド7および微細配線層200の絶縁樹脂の剥離の発生を確実に抑制できる。
【0038】
次に、半導体パッケージ基板101にスティフナ19を貼り合わせる。なお、スティフナ19の厚さは特に限定されず、高い剛性が確保できる厚さでよい。スティフナ19の形成材料には、半導体パッケージ51の線膨張係数および剛性の関係より選択し、例えば、鉄、銅、銅合金、ステンレス鋼などが用いられる。
【0039】
スティフナ19と半導体パッケージ基板101とを密着させるために例えば、スティフナ19に接着層20を塗布し、半導体パッケージ基板101と密着させ、接着する。なお、接着層20の形成材料としては、エポキシ系およびアクリル系接着剤などがある。なお、スティフナ19を形成する工程は、微細配線層付きキャリア基板102を実装する前、半導体チップ21を実装する前およびプリント配線板52(図4参照)に実装前のどの工程の間でも構わない。
【0040】
その後、半導体パッケージ基板101の半導体チップ21の搭載面に、はんだボール搭載法などではんだボールを搭載し、リフロー炉にて加熱することにより、微細配線層200にはんだバンプ13(図1参照)を形成する。その後、半導体チップ21を微細配線層付き半導体パッケージ基板100に実装し、半導体チップ21と微細配線層200との隙間にアンダーフィル12bを挿入する。その後、半導体パッケージ基板101のプリント配線板搭載面に、はんだボール搭載法などではんだボールを搭載し、リフロー炉にて加熱することにより、はんだバンプ11(図1参照)を形成する。このようにして、図1に示す半導体パッケージ51を作製する。
【0041】
その後、半導体パッケージ51をプリント配線板52に実装し、図4に示すように、半導体パッケージ51と、半導体パッケージ51の電極パッド10を介して、半導体パッケージ51と接続されているプリント配線板52とを有する半導体装置50を作製する。
【実施例1】
【0042】
以下に本発明の一実施形態の実施例による微細配線層付きキャリア基板の製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0043】
コア基材1にガラスエポキシ樹脂を用いた基材上にビルドアップ層30の絶縁樹脂3としてフィラーを添加したエポキシ系樹脂を用い、配線層として銅を用いたビルドアップ層30を3層形成した。その後、最表面には電極パッド7、10上を開口するようにソルダーレジスト8を形成した。また、はんだボール搭載法により、半導体チップ接合部にはんだバンプ11を形成した。このようにして半導体パッケージ基板101を作製した。
【0044】
また、コア基材1にガラスエポキシ基板を用い、配線層として銅を用いたプリント配線板52を作製した。
【0045】
次に、微細配線層付きキャリア基板102の作製について図5から図11を用いて説明する。キャリア基材14として、例えばガラス基板を用いる。ガラス基板は平坦性に優れており、微細配線層200の形成に適している。また、ガラス基板は低線膨張係数であるため、パターンの配置精度に優れており、半導体パッケージ基板101への実装の際に、微細配線層付きキャリア基板102を半導体パッケージ基板101に精度良く接合することができる。ガラス基板の厚さは作製時のガラス基板の反り発生を抑制する観点から厚いほうが好ましく、例えば0.7mm以上が好ましい。なお、キャリア基材14の材料は、ガラス基板に限定されず、表面が平滑であり、高弾性率で低線膨張係数である材料であれば良く、シリコン基板、メタル基板またはセラミックス基板でも良い。
【0046】
次に、キャリア基材14上に微細配線層200を形成する。図5(a)に示すように、キャリア基材14の一方の面に、実装工程にてキャリア基材14を剥離するための剥離層15を形成する。剥離層15は紫外線を透過する厚さに調整しておく。
【0047】
次に、図5(a)に示すように、剥離層15上に応力緩衝層16を形成する。弾性率が4.0GPa、厚さ20μmであるエポキシ樹脂を形成材料としてプレス法を用いて応力緩衝層16を形成した。
【0048】
その後、図5(a)に示すように、応力緩衝層16上に紫外線で硬化する接着剤を塗布して密着層17を形成する。
【0049】
次に、図5(b)に示すように、平坦な定盤22上に薄い銅箔層18を敷き、図6(a)に示すように、真空中で密着層17と銅箔層18とが接するように配置し、この状態で密着層17に紫外線を照射し、図6(b)に示すように、密着層17を硬化させ、定盤22を取り除く。銅箔層18は、定盤22の平坦性を保持した状態で硬化されるため、銅箔層18上に微細なパターンを形成することができる。
【0050】
次に、図7(a)に示すように、銅箔層18上にレジストパターン23をフォトリソグラフィ法などを用いて形成し、銅箔層18をシード層としてレジストパターン23に形成された複数の開口部に電解めっきにより半導体チップ21(図7では不図示)との接続パッド(パターン配線の一例)24を形成する。キャリア基材14を剥離し、接続パッド24を露出したときに、接続パッド24の表面がAuとなるように銅箔層18側からAu/Ni/Cuの順にめっきを形成する。これにより、接続パッド24は、Au/Ni/Cuの積層構造を有する。このとき、AuへのCu拡散を防止するため、銅箔層18とAuの間に薄いNiを形成してからAu/Ni/Cuのめっきを行う。その後、図7(b)に示すように、レジストパターン23を除去する。
【0051】
次に、図8(a)に示すように、接続パッド24上にスピンコート法を用いて絶縁樹脂25を形成する。絶縁樹脂25の形成材料には、感光性エポキシ系樹脂が用いられる。絶縁樹脂25はスピンコート法ではなく、絶縁樹脂フィルムを真空ラミネーターで圧縮加熱により形成してもよい。
【0052】
次に、図8(b)に示すように、接続パッド24に複数の貫通ビア26を形成する。本実施例では、絶縁樹脂25に感光性エポキシ系樹脂が用いられており、絶縁樹脂25に対して紫外線(UV)露光及び現像を実施することにより、貫通ビア26を形成する。絶縁樹脂25に非感光性の樹脂が用いられている場合には、レーザー光照射により絶縁樹脂25に貫通ビア26を形成しても良い。次に、アッシングなどで接続パッド上の残渣などを除去し、無電解めっき法およびスパッタリング法などを用いて電解めっきのシード層(不図示)を形成する。このシード層の形成材料は、無電解めっき法ではCuが適しており、スパッタリング法ではTi/CuおよびCr/Cuなどが適している。このシード層は、電解めっき後のシード層エッチング工程で配線細りを抑制できるように、厚さが300nm以下程度となるように薄く形成されることが望ましい。
【0053】
次に、図9(a)に示すように、シード層上にレジストパターン23を形成し、レジストパターン23に形成された開口部に電解銅めっきで微細配線27を形成する。次に、図9(b)に示すように、レジストパターン23を除去し、微細配線27をマスクとして、シード層をエッチングする。図10(a)に示すように、以上の微細配線形成工程を積み重ねる配線層数に合わせて工程を繰り返し、微細配線層200を形成する。
【0054】
その後、図10(b)に示すように、半導体パッケージ基板101(図10(b)では不図示)の実装面側の微細配線層200の最表面に絶縁樹脂層28を形成する。絶縁樹脂層28は、感光性エポキシ系樹脂を用いて形成される。次に、図11(a)に示すように、UV露光および現像を実施し、微細配線層200のパターン配線が露出される開口部29を絶縁樹脂層28に形成し、ベークにより絶縁樹脂層28を硬化する。
【0055】
露出したパターン配線のCuの酸化防止とはんだバンプの濡れ性を良くするため、パターン配線に表面処理を行う。パターン配線の表面にNi/Pd/Auからなるパッド表面処理層を形成する。なお、パターン配線の表面に、水溶性プレフラックス(Organic Sold erability Preservative:OSP)による表面処理によって有機被膜を形成しても良い。
【0056】
次に、図11(b)に示すように、はんだバンプ(突起電極の一例)9をパッド表面処理層上に搭載し、リフローした後、キャリア基材14を個片化することで微細配線層付きキャリア基板102が完成する。
【0057】
次に、微細配線層付きキャリア基板102を半導体パッケージ基板101に実装する実装工程および微細配線層付き半導体パッケージ基板100の製造工程について図3および図12から図15を用いて説明する。ディスペンサなどを用いて接着剤をスティフナ19に塗布し、半導体パッケージ基板101の微細配線層付きキャリア基板102の搭載面側に接着剤を当該搭載面に対向させてスティフナ19を配置する。その後。半導体パッケージ基板101を加熱し、スティフナ19に塗布された接着剤を硬化させる。
【0058】
次に、スティフナ19が貼り付けられた半導体パッケージ基板101にディスペンサなどを用いてフラックスを微細配線層付きキャリア基板102の接続範囲に塗布する。その後、マウンターなどを用いて微細配線層付きキャリア基板102の接続端子を半導体パッケージ基板101の実装領域に配置する。
【0059】
その後、図12に示すように、リフロー炉を用いて、半導体パッケージ基板101と微細配線層付きキャリア基板102をはんだ接合する。この際、鉛フリーはんだの場合、はんだの凝固温度である220℃付近で、微細配線層200が形成されているキャリア基材14の面の反対の面(すなわち、微細配線層200が形成されていない側のキャリア基材14の面)からレーザー光を剥離層15に照射し、図13に示すように、剥離層15とキャリア基材14を分離させる。このように、本実施形態では、半導体パッケージ基板101と微細配線層付きキャリア基板102とを接合する工程において、バンプ9の形成直後にキャリア基材14を剥離層15の位置で微細配線層200から剥離させる。
【0060】
その後、フラックス洗浄機を用いて、半導体パッケージ基板101に塗布したフラックスを洗浄する。なお、フラックス洗浄液は例えばアルカリ系溶剤が用いられる。
【0061】
次に、プレベーキングを行った後、プラズマ発生装置を用いてはんだ接合部付近の表面の改質を行う。その後、図14に示すように、ディスペンサを用いて、接合された微細配線層200と半導体パッケージ基板101との間にエポキシ樹脂にフィラーを添加したアンダーフィル12aを挿入し、加熱して硬化する。
【0062】
次に、図15に示すように、粘着テープなどの粘着性を有する部材により、剥離層15、応力緩衝層16および密着層17を剥離する。具体的には、粘着テープをキャリア基材14が接着されていた部分に貼り付け、粘着テープを剥がすことにより、剥離層15、応力緩衝層16および密着層17を微細配線層200から除去する。
【0063】
次に、図3に示すように、銅箔層18と薄いNiをエッチングし、半導体チップ21と接続する接続パッドを露出させる。これにより、微細配線層200が実装された微細配線層付き半導体パッケージ基板100が完成する。
【0064】
次に、半導体パッケージ51の製造工程および半導体装置50の製造工程について図1図16および図17並びに図4を用いて説明する。
微細配線層付き半導体パッケージ基板100が完成した後、図16に示すように、半導体パッケージ基板101の半導体チップ搭載面に、はんだボール搭載法により、はんだボールを搭載し、リフロー炉にて加熱することにより、はんだバンプ13を形成する。その後、半導体チップ21を半導体パッケージ基板101に実装し、半導体チップ21と半導体パッケージ基板101とを電気的に接続する。次に、プレベーキングを行った後、プラズマ発生装置を用いて、はんだ接合部付近の表面の改質を行う。その後、図17に示すように、ディスペンサを用いて、接合された半導体チップ21と半導体パッケージ基板101との間にエポキシ樹脂にフィラーを添加したアンダーフィル12bを挿入し、加熱して硬化する。
【0065】
その後、図1に示すように、半導体パッケージ基板101のプリント配線板搭載面に、はんだボール搭載法により、はんだボールを搭載し、リフロー炉にて加熱することにより、はんだバンプ11を形成する。このようにして、半導体パッケージ51を作製することができる。その後、半導体パッケージ51をプリント配線板52に実装し、半導体パッケージ51の半導体パッケージ基板101とプリント配線板52とを電気的に接続し、半導体装置50を作製する(図4参照)。
【0066】
微細配線層付きキャリア基板102を半導体パッケージ基板101に実装し、キャリア基材14を剥離し、アンダーフィル12aを挿入後、半導体パッケージ基板101と微細配線層200と間のはんだバンプ部の断面を観察し、バンプ亀裂および電極パッド剥離の有無の確認を行った。観察の結果、はんだバンプに亀裂および電極パッドの剥離は見られず、微細配線層200と半導体パッケージ基板101との配線の接続信頼性が確保されていることを確認した。
【実施例2】
【0067】
また、応力緩衝層16を形成した微細配線付きキャリア基板を作製し、半導体パッケージ基板と微細配線層付きキャリア基板とを接合する工程において、バンプ9の形成直後にキャリア基材14を分離せずに、バンプ形成後の常温下でキャリア基材14を剥離層15の位置で微細配線層200から剥離した。その後、アンダーフィル挿入後、半導体パッケージ基板と微細配線層間のはんだバンプ部の断面を観察し、バンプ亀裂および電極パッド剥離の有無の確認を行った。観察の結果、はんだバンプに亀裂および電極パッドの剥離は見られず、微細配線層200と半導体パッケージ基板101との配線の接続信頼性が確保されていることを確認した。しかしながら、実施例1と比較すると、半導体チップ搭載面の微細配線層の反りが大きくなった。
【実施例3】
【0068】
また、応力緩衝層16を形成しない微細配線付きキャリア基板を作製し、半導体パッケージ基板と微細配線層付きキャリア基板とを接合する工程において、バンプ9の形成直後にキャリア基材14を剥離層15の位置で微細配線層200から剥離した。その後、アンダーフィル挿入後、半導体パッケージ基板と微細配線層間のはんだバンプ部の断面を観察し、バンプ亀裂および電極パッド剥離の有無の確認を行った。観察の結果、はんだバンプに亀裂および電極パッドの剥離は見られず、微細配線層200と半導体パッケージ基板101との配線の接続信頼性が確保されていることを確認した。しかしながら、実施例1と比較すると、半導体チップ搭載面の微細配線層の反りが大きくなった。
【0069】
実施例1~3において、すべての水準で微細配線層200と半導体パッケージ基板101との配線の接続信頼性が確保されていることを確認した。また、微細配線層付き半導体パッケージ基板の半導体チップ搭載面の微細配線層の反り低減の観点から、実施例1のように、応力緩衝層16を形成した微細配線付きキャリア基板を作製し、半導体パッケージ基板と微細配線層付きキャリア基板とを接合する工程において、バンプ9の形成直後にキャリア基材14を剥離層15の位置で微細配線層200から剥離して、微細配線層付き半導体パッケージ基板を作製するほうがより好ましい。
【0070】
<比較例>
比較例による微細配線層付きキャリア基板の説明において、図2に示す微細配線層付きキャリア基板102の構成要素と同様の作用・機能を奏する構成要素については、説明の便宜上、同一の符号を用いることとする。本比較例では、応力緩衝層16を形成しない水準の微細配線層付きキャリア基板を作製し、半導体パッケージ基板と微細配線層付きキャリア基板とを接合する工程において、バンプ9の形成直後にキャリア基材14を分離せずに、バンプ形成後の常温下でキャリア基材14を剥離層15の位置で微細配線層200から剥離した。その後、アンダーフィル挿入後、半導体パッケージ基板と微細配線層間のはんだバンプ部の断面を観察し、バンプ亀裂および電極パッド剥離の有無の確認を行った。観察の結果、外周部のはんだバンプに亀裂が発生し、電極パッドに剥離が発生していることを確認した。また、一部のはんだバンプには、実装時の微細配線層付きキャリア基板の反りが原因と考えられるはんだ接合のオープン不良やショート不良も発生していた。
【0071】
比較例に対して実施例では、本発明の構造を用いることで、はんだバンプ部や電極パッドと絶縁樹脂界面に発生する応力を低減させることでバンプの亀裂やパッドの剥離の発生を抑制できることを確認した。さらに、実装工程での微細配線層付きキャリア基板の反りを抑制することで、良好なはんだ接合ができることを確認した。
【0072】
以上説明したように、本実施形態による微細配線層付きキャリア基板、微細配線層付き半導体パッケージ基板、半導体パッケージおよび半導体装置によれば、微細配線層とキャリア基材の間に応力緩衝層を形成することにより、加熱時のキャリア基材と微細配線層界面に発生する応力を低減させることで半導体パッケージの反りの抑制することができる。さらに冷却時のはんだバンプ部や電極パッドと絶縁樹脂界面に発生する応力が低減され、はんだバンプの亀裂や電極パッドおよび絶縁層の剥離の発生を抑制できる。また、実装工程において、はんだ接合直後にキャリア基材を除去することで、冷却時の微細配線層付きキャリア基板と半導体パッケージ基板の線膨張係数(CTE)の差による半導体パッケージの反りおよびはんだバンプへの応力発生を抑制でき、はんだバンプの亀裂や電極パッドおよび絶縁層の剥離の発生を確実に抑制できる。
【符号の説明】
【0073】
1 コア基材
2 配線パターン
3 絶縁樹脂
4 スルーホール電極
5 ランド
6 ビア
7 電極パッド
8 ソルダーレジスト
9 バンプ
10 電極パッド
11 はんだバンプ
12a,12b アンダーフィル
13 はんだバンプ
14 キャリア基材
15 剥離層
16 応力緩衝層
17 密着層
18 銅箔層
19 スティフナ
20 接着層
21 半導体チップ
22 定盤
23 レジストパターン
24 接続パッド
25 絶縁樹脂
26 貫通ビア
27 微細配線
28 絶縁樹脂層
29 開口部
30 ビルドアップ層
51 半導体パッケージ
52 プリント配線板
50 半導体装置
100 微細配線層付き半導体パッケージ基板
101 半導体パッケージ基板
102 微細配線層付きキャリア基板
200 微細配線層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17