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  • 特許-画像形成方法および画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】画像形成方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20220614BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20220614BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B41M5/00 100
C09D11/30
B41J2/01 101
B41J2/01 123
B41M5/00 132
B41M5/00 120
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018013554
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019130714
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】下村 翠
(72)【発明者】
【氏名】西坂 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宗仲 太弥
(72)【発明者】
【氏名】東 幸正
(72)【発明者】
【氏名】松浦 晋也
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-268802(JP,A)
【文献】特開2009-066768(JP,A)
【文献】特開2009-040892(JP,A)
【文献】特開2009-013394(JP,A)
【文献】特開2009-126931(JP,A)
【文献】特開2009-178687(JP,A)
【文献】特開2010-260237(JP,A)
【文献】特開2013-184453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体の表面にプレコート剤を付与してプレコート層を形成する工程と、
前記形成されたプレコート層の表面に、インクジェット法により活性光線硬化型インクを付与して、インク層を形成する工程と、
前記形成されたプレコート層およびインク層を記録媒体に転写する工程と、
を有し、
前記中間転写体の前記表面への前記プレコート剤の接触角は、前記中間転写体の前記表面への前記活性光線硬化型インクの接触角より小さく、
前記プレコート剤の粘度は、前記活性光線硬化型インクの粘度より低い、
画像形成方法。
【請求項2】
前記中間転写体の前記表面への前記プレコート剤の接触角と、前記中間転写体の前記表面への前記活性光線硬化型インクの接触角と、の差は、20°未満である、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
中間転写体と、
前記中間転写体の表面にプレコート剤を付与してプレコート層を形成するプレコート層形成部と、
前記形成されたプレコート層の表面に、インクジェット法により活性光線硬化型インクを付与して、インク層を形成するインク層形成部と、
前記形成されたプレコート層およびインク層を記録媒体に転写する転写部と、
を有し、
前記中間転写体の前記表面への前記プレコート剤の接触角は、前記中間転写体の前記表面への前記活性光線硬化型インクの接触角より小さく、
前記プレコート剤の粘度は、前記活性光線硬化型インクの粘度より低い、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法は、簡便かつ安価に画像を作製できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷を含む様々な印刷分野に応用されている。特に、インクジェット法は、版を用いずデジタル印刷が可能であるため、多様な画像を少量ずつ形成するような用途に特に好適である。
【0003】
インクジェット法では、インクが着弾する記録媒体の表面粗さやインク吸収性などにより、着弾したインクのドット径が変位することがある。これに対し、中間転写方式の画像形成方法では、着弾したインクのドット径を制御しやすい中間転写体にインクを付与して中間画像を形成し、中間転写体から記録媒体に中間画像を転写するため、上記ドット径の変位を抑制して、より高精細な画像が形成しやすくなると期待される。
【0004】
中間転写方式の画像形成方法には、中間転写体から記録媒体へのインクの転写率をより高めることへの要求が存在する。上記転写率を高める観点から、プレコート剤を中間転写体に予め付与してプレコート層を形成し、当該プレコート層を離型層としてインクとともに転写させる方法が開発されている。
【0005】
上記プレコート剤に関して、特許文献1には、水に対する接触角が50度以上120度以下である中間転写体に、特定のシロキサン化合物を含むプレコート剤を付与することで、中間転写体に対するプレコート剤の濡れ性および離型性を調整できると記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを含むプレコート剤に、適切な界面活性剤を使用することで、中間転写体に対するプレコート剤の濡れ性および離型性を調整できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-199114号公報
【文献】特開2016-074206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および特許文献2に記載されているようなプレコート剤を用いる画像形成方法によれば、中間転写体にプレコート剤を十分に濡れ広がらせ、かつインクの転写性も高まると期待される。特に、これらの文献に記載されたプレコート剤は、インクの着弾面への接着力がより小さいプレコート層を形成し、中間転写体に着弾したインクが凝集して剥離される前に上記プレコート層を剥離することで、転写性を高めようとしている。
【0009】
しかし、本発明者らの検討によれば、これらのプレコート剤を用いた画像形成方法でも、インクの転写性は十分には高まっていなかった。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、インクジェットインクを用いた中間転写方式の画像形成方法において、インクの転写性をより高めることができる画像形成方法、および当該画像形成方法を実施できる画像形成装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、中間転写体の表面にプレコート剤を付与してプレコート層を形成する工程と、上記形成されたプレコート層の表面に、インクジェット法によりインクを付与して、インク層を形成する工程と、上記形成されたプレコート層およびインク層を記録媒体に転写する工程と、を有する画像形成方法によって解決される。上記画像形成方法において、上記中間転写体の上記表面への上記プレコート剤の接触角は、上記中間転写体の上記表面への上記インクの接触角より小さく、上記プレコート剤の粘度は、上記インクの粘度より低い。
【0012】
また、上記課題は、中間転写体と、上記中間転写体の表面にプレコート剤を付与してプレコート層を形成するプレコート層形成部と、上記形成されたプレコート層の表面に、インクジェット法によりインクを付与して、インク層を形成するインク層形成部と、上記形成されたプレコート層およびインク層を記録媒体に転写する転写部と、を有する画像形成装置によって解決される。上記画像形成装置において、上記中間転写体の上記表面への上記プレコート剤の接触角は、上記中間転写体の上記表面への上記インクの接触角より小さく、上記プレコート剤の粘度は、上記インクの粘度より低い。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、インクジェットインクを用いた中間転写方式の画像形成方法において、インクの転写性をより高めることができる画像形成方法、および当該画像形成方法を実施できる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に関する、インクジェットインクを用いた中間転写方式の画像形成方法の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明の一実施形態に関する画像形成方法を実施するための画像形成装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは上記課題について鋭意検討し、中間転写体のインクが着弾する表面(以下、単に「インクの着弾面」ともいう。)に対するプレコート剤およびインクの接触角、ならびにプレコート剤およびインクの粘度を適切に調整することで、インクの転写性を高め得ることに想到し、さらに検討を重ねて、本発明を完成させた。
【0016】
つまり、中間転写体のインクの着弾面にプレコート剤を予め付与してプレコート層を形成しても、後から付与されたインクがプレコート層の内部に侵入してしまうことがある。このとき、特に中間転写体のインクの着弾面へのインクの親和性が、上記インクの着弾面へのプレコート剤の親和性よりも高いときなどは、プレコート層の内部に侵入したインクが、インクの着弾面の表面に強い接着力で薄く広がって付着してしまい、インクが十分に転写されないことがある。
【0017】
また、インクの凝集力が小さいような場合には、中間転写体にインクが着弾して形成されたインク層の内部でインクが分離して転写してしまうため、単にプレコート層の離型性を高めても、インクの転写性が高まりにくいことがある。
【0018】
これに対し、中間転写体のインクの着弾面に対するプレコート剤の接触角を、中間転写体のインクの着弾面に対するインクの接触角よりも小さくし、中間転写体のインクの着弾面に対するプレコート剤の濡れ性を、中間転写体のインクの着弾面に対するインクの濡れ性よりも高めることで、中間転写体のインクの着弾面にはインクよりもプレコート剤のほうが留まりやすくなり、上記プレコート層の内部にインクが侵入することによる転写性の低下が抑制されると考えられる。
【0019】
さらに、プレコート剤の粘度をインクの粘度よりも小さくすることで、インク層の内部での剥離が生じるよりも先にプレコート層の層内で剥離を生じやすくさせて、転写時にプレコート層をインク層よりも先に離型しやすくし、プレコートによるインクの転写性の高まりも十分に確保することができると考えられる。
【0020】
以下、本発明の例示的な実施形態を説明する。
【0021】
[画像形成方法]
図1は、本実施形態に関する、インクジェットインクを用いた中間転写方式の画像形成方法の一例を示すフローチャートである。
【0022】
本実施形態では、まず、中間転写体の表面のうち、インクの着弾面に、プレコート剤を付与する(工程S110)。
【0023】
プレコート剤は、インクの着弾面のうち、少なくともインクが着弾する領域に付与されればよい。プレコート剤の付与方法は特に限定されず、ロールコーターおよびバーコーターなどを用いる方法、ならびにインクジェット法などを用いることができる。
【0024】
上記プレコート剤は、インクの着弾面に付与され、必要に応じてスクレーパーなどで平滑化されて、インクの着弾面に接してプレコート層を形成する。プレコート層の厚みは、後の工程で着弾したインクがプレコート層に沈み込む(侵入する)ことによる転写性の低下を抑制する観点から、形成される画像におけるインクの厚みよりも小さいことが好ましく、たとえば、0.5μm以上1.0μm以下とすることができる。
【0025】
次に、形成されたプレコート層の表面に、インクジェット法によりインクを付与する(工程S120)。
【0026】
上記インクは、インクジェットヘッドから吐出され、形成されたプレコート層の表面に着弾するか、または既に着弾されたインクの表面に着弾する。このとき、形成すべき画像に応じた色のインクが吐出されて形成すべき画像に応じた位置に着弾することで、プレコート層の表面にインク層が形成されて、中間転写体のインクの着弾面には中間画像が形成される。
【0027】
このとき、中間転写体のインクの着弾面に対するプレコート剤の接触角が、中間転写体のインクの着弾面に対するインクの接触角よりも小さいため、プレコート剤は、中間転写体の表面にインクよりも接近しやすく、中間転写体の表面にインクよりも留まりやすい。これにより、プレコート剤は、中間転写体とインクとの間により均一かつより安定して濡れ広がった状態を保ちやすい。そのため、インクが沈み込んでプレコート層の一部が分離することによる、転写性の低下が抑制されると考えられる。
【0028】
最後に、上記インクの付与により形成されたプレコート層およびインク層を記録媒体に転写する(工程S130)。
【0029】
上記プレコート層およびインク層は、表面にプレコート層およびインク層が形成された中間転写体を、搬送されてきた記録媒体に向けて加圧することで、記録媒体に転写される。
【0030】
このとき、プレコート剤の粘度がインクの粘度よりも小さいため、プレコート剤は、インクよりも先に中間転写体から離型しやすい。これにより、中間転写体とインクとの間により均一かつより安定して濡れ広がったプレコート層がインク層とともに離型しやすくなるため、インクの転写性も高まると考えられる。
【0031】
転写性を高める観点から、転写時に、加圧ローラーや加圧ローラーと対向して配置された搬送部などを加温して、プレコート層およびインク層の温度を調整してもよい。温度調整は、たとえば、加温されたプレコート層およびインク層が20℃以上45℃以下となるように行うことができる。
【0032】
インクが活性光線硬化型のインクであるとき、本実施形態に関する画像形成方法は、転写後に、インクを硬化させる工程を有してもよい。インクの硬化は、たとえば、転写されたインクに活性光線を照射して、行うことができる。なお、インクのドット径をより安定化させるため、インクが完全には硬化しない程度の光量の活性光線を転写前のインクに照射してインクを仮硬化させ、転写後のインクに活性光線を再照射してインクを完全硬化させてもよい。
【0033】
[プレコート剤]
上記プレコート剤は特に限定されず、インクジェットインクを用いた中間転写方式の画像形成方法に用いられる通常のプレコート剤から適宜選択することができる。
【0034】
ここで、上記プレコート剤は、上記中間転写体のインクの着弾面への接触角が、上記中間転写体のインクの着弾面への上記インクの接触角より小さくなり、かつ、粘度が、上記インクの粘度より低くなるように選択される。
【0035】
上記接触角は、常温常湿(たとえば、20℃、50%RH)で、接触角計測定装置(協和界面科学株式会社製、接触角計DM-301など)を用いて液滴法により測定して得られた値とすることができる。
【0036】
上記粘度は、レオメータにより、プレコート剤またはインクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。上記プレコート剤または上記インクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ(AntonPaar社製、Physica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°))によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃まで冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。このようにして得られた粘度の温度変化曲線から、各温度における上記プレコート剤または上記インクの温度を求めることができる。
【0037】
本実施形態では、少なくともプレコート剤およびインクを記録媒体に転写するときに、プレコート剤の粘度がインクの粘度より低ければよい。そのため、転写時の温度である20℃以上45℃以下の範囲内で、インクより粘度が低くなるような、プレコート剤を選択すればよい。
【0038】
また、複数種のインクを用いて画像を形成するときは、先に吐出されて着弾されたインクの表面に、後に吐出されたインクが着弾することがある。このとき、プレコート層の表面に着弾したインクと、先に着弾されたインクの表面に後から着弾したインクと、の間の濡れ広がり性の差を小さくして、それぞれのインクのインク径の差を小さくし、より高精細な画像を形成しやすくする観点からは、上記中間転写体のインクの着弾面への、プレコートの接触角とインクの接触角との差は小さいことが望ましく、20°未満であることが好ましい。なお、上記接触角の差の最小値は特に限定されないものの、5°以上であることが好ましく、10°以上であることがより好ましい。
【0039】
プレコート剤は、水および水溶性有機溶剤などの液体成分と、接触角および粘度を調整するための界面活性剤と、を含む液体とすることができる。あるいは、プレコート剤は、シリコーンオイルなどの表面張力が小さい液体を用いてもよい。特に、中間転写体のインクの着弾面がシリコーン樹脂であるとき、低粘度のシリコーンオイルは、中間転写体のインクの着弾面への接触角が小さいため好適である。
【0040】
なお、プレコート剤が多価金属イオンおよび多価有機酸などの、インクが含有する色材を析出または凝集させる成分を含んでいると、プレコート剤およびインクを記録媒体に転写するときのインクの粘度を高くして、プレコート剤の粘度をインクの粘度より低くすることは容易である。しかし、本実施形態では、プレコート剤中のこれらの成分の量が少なくても、上記接触角および粘度の調整によって、インクの転写性を高めることが容易である。そのため、本実施形態においては、プレコート剤は、多価金属イオンおよび多価有機酸を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、プレコート剤の全質量に対する多価金属イオンおよび多価有機酸の合計の含有量が、0.1質量%未満であることを意味する。
【0041】
[インク]
上記インクは特に限定されず、インクジェット法による画像形成に用いられる通常のインクであればよい。
【0042】
(インクの材料)
たとえば、上記インクは、水系インクであるときは、水および任意に水溶性有機溶剤を含有することができる。また、上記インクは、溶剤系インクであるときは、有機溶剤を含有することができる。また、上記インクは、活性光線硬化型インクであるときは、活性光線の照射によって重合および架橋する光重合性化合物および任意に光重合開始剤を含有することができる。
【0043】
上記インクは、さらに、必要に応じて、染料および顔料などの色材、顔料を分散させるための分散剤、顔料を基材に定着させるための定着樹脂、界面活性剤、重合禁止剤、pH調整剤、保湿剤、紫外線吸収剤、ならびにインクを温度変化によりゾルゲル相転移させるゲル化剤などを含有してもよい。上記その他の成分は、上記インク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
【0044】
上記インクが水系インクであるときの上記水溶性有機溶剤の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノールおよびt-ブタノールを含むアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、およびペンタンジオールを含むグリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールおよび1,2-ヘプタンジオールを含む多価アルコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミンおよびテトラメチルプロピレンジアミンを含むアミン、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドを含むアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドンおよび1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを含む複素環化合物、ジメチルスルホキシドを含むスルホキシド、ならびにエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを含むグリコールエーテルが含まれる。
【0045】
上記インクが水系インクであるときの上記水溶性有機溶剤の含有量は、たとえば、上記インクの全質量に対して5.0質量%以上30質量%以下とすることができる。
【0046】
上記インクが溶剤系インクであるときの上記有機溶剤の例には、上記水系インクに用いられ得る水溶性有機溶剤および非水溶性有機溶剤が含まれる。
【0047】
上記非水溶性有機溶剤の例には、ペンタン、ヘキサン、i-ヘキサン、ヘプタン、i-ヘプタン、オクタン、i-オクタン、およびデカンを含む炭素数が5以上15以下の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、およびシクロオクタンを含む炭素数が5以上15以下の脂環族炭化水素、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7-シクロオクタテトラエン、シクロドデセンを含む炭素数が5以上15以下の環状不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン、o-キシレン、m-キシレンおよびp-キシレンを含む炭素数が6以上12以下の芳香族炭化水素、ヘプタノール、ヘキサノール、メチルヘキサノール、エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ウンデシルアルコール、およびラウリルアルコールを含む炭素数が5以上15以下の1価のアルコール、メチル-i-ブチルケトン、ジ-i-ブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、およびシクロオクタノンを含む炭素数が5以上15以下の脂環族ケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-i-プロピル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酢酸アミル、酢酸-i-アミル、酢酸2-エチルヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸アミル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、デカン酸エチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シクロオクチル、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、およびフタル酸ジブチルを含むエステル化合物、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロペンタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロトルエン、およびニトロキシレンを含むニトロ化合物、アセトニトリル、ベンゾニトリルを含むニトリル類、ならびにγ-ブチロラクトン、およびε-カプロラクトンを含むラクトン類が含まれる。
【0048】
上記インクが溶剤系インクであるときの上記非水溶性有機溶剤の含有量は、たとえば、上記インクの全質量に対して1.0質量%以上98質量%以下とすることができ、20質量%以上95質量%以下とすることがより好ましく、40質量%以上90質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0049】
上記インクが活性光線硬化型インクであるときの上記光重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物が含まれる。光重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマーあるいはこれらの混合物のいずれであってもよい。
【0050】
活性光線の例には、紫外線、電子線、α線、γ線およびエックス線が含まれる。安全性の観点およびより低いエネルギー量でも上記重合および架橋を発生させることができるという観点から、活性光線は、紫外線または電子線であることが好ましい。
【0051】
ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタクリロイルを意味する。
【0052】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0053】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレートが含まれる。
【0054】
ラジカル重合性化合物は、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性された(メタ)アクリレート(以下、単に「変性(メタ)アクリレート」ともいう。)を含むことが好ましい。変性(メタ)アクリレートは、感光性がより高い。また、変性(メタ)アクリレートは、高温下でも他のインク成分とより相溶しやすい。さらには、変性(メタ)アクリレートは、硬化収縮が少ないため画像形成時の印刷物のカールがより生じにくい。
【0055】
カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物が含まれる。
【0056】
上記インクが活性光線硬化型インクであるときの上記光重合性化合物の含有量は、たとえば、上記インクの全質量に対して1.0質量%以上97質量%以下とすることができ、30質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。
【0057】
上記インクが活性光線硬化型インクであるときの上記光重合開始剤は、上記光重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。たとえば上記インクがラジカル重合性化合物を有するときは、光重合開始剤は光ラジカル開始剤とすることができ、上記インクがカチオン重合性化合物を有するときは、光重合開始剤は光カチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。
【0058】
上記光重合開始剤の含有量は、活性光線の照射によってインクが十分に硬化し、かつインクの吐出性を低下させない範囲において、任意に設定することができる。たとえば、インクの全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1.0質量%以上12質量%以下とすることができる。なお、電子線の照射によりインクを硬化させるときなど、光重合開始剤がなくてもインクが十分に硬化できるときは、光重合開始剤は不要である。
【0059】
上記色材の例には、染料および顔料が含まれる。耐候性の良好な画像を形成する観点からは、色材は顔料であることが好ましい。顔料は、形成すべき画像の色などに応じて、たとえば、黄顔料、赤またはマゼンタ顔料、青またはシアン顔料および黒顔料から選択することができる。
【0060】
上記分散剤は、上記顔料を十分に分散させることができればよい。分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテートが含まれる。
【0061】
上記分散剤の含有量は、たとえば、上記顔料の全質量に対して20質量%以上70質量%以下とすることができる。
【0062】
上記定着樹脂の例には、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびアルキド樹脂が含まれる。
【0063】
上記定着樹脂の含有量は、たとえば、上記インクの全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下とすることができる。なお、上記粒子はアモルファス化して自己成膜することができるため、上記インクは定着樹脂を実質的に含有しなくてもよい。
【0064】
上記界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類を含むアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類を含むノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類および第四級アンモニウム塩類を含むカチオン性界面活性剤、シリコーン系の界面活性剤、ならびにフッ素系の界面活性剤が含まれる。
【0065】
界面活性剤の含有量は、上記インクの全質量に対して、0.001質量%以上5.0質量%未満であることが好ましい。
【0066】
上記ゲル化剤の例には、ケトンワックス、エステルワックス、石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油、変性ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、ヒドロキシステアリン酸、N-置換脂肪酸アミドおよび特殊脂肪酸アミドを含む脂肪酸アミド、高級アミン、ショ糖脂肪酸のエステル、合成ワックス、ジベンジリデンソルビトール、ダイマー酸ならびにダイマージオールなどが含まれる。これらのうち、インクのピニング性をより高める観点からは、ケトンワックス、エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコールおよび脂肪酸アミドが好ましく、ケト基またはエステル基を挟んで両側に配置された炭素鎖の炭素数がいずれも9以上25以下であるケトンワックスまたはエステルワックスがより好ましい。
【0067】
ゲル化剤の含有量は、インクの全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0068】
(インクの物性)
インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、上記インクがゲル化剤を含まないインクであるとき、上記インクの40℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。また、上記インクがゲル化剤を含むインクであるとき、上記インクの80℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。
【0069】
上記インクは、ゲル化剤を含むとき、40℃以上70℃以下にゾルゲル相転移する相転移温度を有することが好ましい。インクの相転移温度が40℃以上であると、基材に着弾後、インクが速やかに増粘するため、濡れ広がりの程度をより調整しやすくなる。インクの相転移温度が70℃以下であると、インク温度が通常80℃程度である吐出ヘッドからのインクの射出時にインクがゲル化しにくいため、より安定してインクを射出することができる。
【0070】
上記インクの40℃における粘度、80℃における粘度および相転移温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。本明細書においては、これらの粘度および相転移温度は、以下の方法によって得られた値である。上記インクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ(AntonPaar社製、Physica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°))によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。80℃における粘度および25℃における粘度は、粘度の温度変化曲線において40℃および80℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求める。相転移温度は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度として求める。
【0071】
[画像形成装置]
図2は、上記画像形成方法を実施するための画像形成装置の構成を示す模式図である。図2に示すように、画像形成装置1は、インクジェット方式を利用した中間転写型の画像形成装置である。画像形成装置1は、インク層形成部10と、中間転写部20と、搬送部30と、光照射部40と、クリーニング部50と、プレコート層形成部60とを有する。
【0072】
図2に示すように、インク層形成部10は、インクジェットヘッド11Y,11C,11M,11Kを備え、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の塗布物の一例としてのインクを、中間転写部20に吐出する。なお、インクジェットヘッド11Y,11C,11M,11Kは、同様の構成を有するため、以下の説明では、便宜上、Y、M、C、Kを省略して示すこととする。
【0073】
それぞれのインクジェットヘッドから吐出されるインクは、水および任意に少量の有機溶剤を液体成分として含有する水型インクであってもよいし、有機溶剤を液体成分として含有するが実質的に水を含有しない溶剤系インクであってもよいし、紫外線および電子線などの活性光線を照射されることにより重合および架橋して硬化する光重合性化合物を液体成分として含有する活性光線硬化型インクであってもよい。本実施形態において、上記吐出されるインクは、活性光線硬化型インクである。
【0074】
中間転写部20は、中間転写体21と、3つの支持ローラー22,23、24とを有する。中間転写体21は無端状ベルトで構成され、3つの支持ローラー22,23,24に逆三角形状に張架される。
【0075】
3つの支持ローラー22,23、24のうち、少なくとも1つのローラーは、駆動ローラーであり、中間転写体21をA方向(図2における時計回り方向)に回転させる。
【0076】
中間転写体21は、芳香族ポリイミド(PI)、芳香族ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、芳香族ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、芳香族ポリカーボネート、および芳香族ポリエーテルケトンなどのベンゼン環を含む構造単位を有する樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ならびにこれらの混合物または共重合物などを含む基材層を有する。中間転写体21は、基材層に加えて、インクの着弾面側に、シリコーンゴム(SR)、クロロプンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)およびエピクロルヒドリンゴム(ECO)などのゴム、エラストマーおよび弾性樹脂など含む弾性層、ならびに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂ならびにアクリル樹脂などを含む表面層、の双方またはいずれかを有してもよい。
【0077】
あるいは、中間転写体21は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレン(PS)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、およびアイオノマーフィルムなどの樹脂フィルムから形成されていてもよい。
【0078】
中間転写体21における、逆三角形状の左右の頂点部分に位置する支持ローラー22,24に張架された部分は、それぞれのインクジェットヘッドから吐出されたインクの着弾面となっている。中間転写体21における、逆三角形状の下側の頂点部分に位置する支持ローラー23は、中間転写体21を搬送部30に向けて所定のニップ圧により加圧する加圧ローラーであり、それぞれのインクジェットヘッドから吐出されたインクが着弾して形成された中間画像を記録媒体Sに転写する転写部として機能する。
【0079】
搬送部30は、金属ドラムで構成され、支持ローラー23に加圧されることで、転写ニップを形成する。搬送部30は、記録媒体Sの先端を固定する爪(不図示)を有している。搬送部30は、当該爪に記録媒体Sの先端を固定し、図2における反時計回り方向に回転することで、記録媒体の一例としての記録媒体Sを転写ニップに搬送する。
【0080】
それぞれのインクジェットヘッドから吐出されて中間転写体21の表面に着弾されたインクは、中間転写体21が回転することにより、支持ローラー23と搬送部30との転写ニップに搬送される。そして、転写ニップに搬送されたインクは、搬送部30により搬送される記録媒体Sに転写される。
【0081】
光照射部40は、搬送部30における転写ニップの下流側の部分に対向しており、記録媒体S上のインクに活性光線を照射して、当該インクを硬化させる。なお、それぞれのインクジェットヘッドから吐出されるインクが水型インクまたは溶剤系インクであるときは、光照射部40は不要である。
【0082】
クリーニング部50は、ウェブローラーやスポンジローラー等のクリーニングローラーであり、中間転写体21における転写ニップの下流側の部分に接触する。クリーニング部50は、制御部の制御の下、駆動回転することで、転写ニップにおいて用紙Sに転写されずに中間転写体21上に残った残インク(残塗布物)を除去する。
【0083】
プレコート層形成部60は、表面をスポンジで被覆されたロールコーター61、およびスクレーパー62を有する。ロールコーター61は、中間転写体21のインクの着弾面側にプレコート剤を付与する。スクレーパー62は、過剰量のプレコート剤を除去して付与されたプレコート剤の表面を平滑化し、中間転写体21のインクの着弾面側にプレコート剤が所定の厚みで広がってなるプレコート層を形成する。なお、プレコート層形成部60は、バーコーターを用いる方法やインクジェット法などでプレコート剤を付与してもよい。
【実施例
【0084】
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
1.プレコート剤およびインク
1-1.プレコート剤
100質量部の純水に対して、0.01質量部の界面活性剤(花王株式会社製、エマールAD-25R(「エマール」は同社の登録商標))を添加して、プレコート剤1とした。
【0086】
高粘度シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF-96H-1万cs)を用意して、プレコート剤2とした。
【0087】
低粘度シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF-96H-500cs)を用意して、プレコート剤3とした。
【0088】
100質量部の純水に対して、1.0質量部の界面活性剤(花王株式会社製、エマールAD-25R)を添加して、プレコート剤4とした。
【0089】
後述する中間転写体の弾性層として用いたシリコーンゴムへのプレコート剤1~プレコート剤4の接触角を、接触角計測定装置(協和界面科学株式会社製、接触角計DM-301)を用いて液滴法により測定した。
【0090】
プレコート剤1~プレコート剤4を100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ(AntonPaar社製、Physica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°))によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃まで冷却して、粘度の温度変化曲線を得た。このようにして得られた粘度の温度変化曲線から、40℃におけるプレコート剤1~プレコート剤4の粘度を求めた。
【0091】
1-2.インク
以下に示す顔料分散剤、光重合性化合物、および重合禁止剤をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレートで加熱しながら、1時間加熱攪拌した。
顔料分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製) 9 質量部
光重合性化合物:トリプロピレングリコールジアクリレート 70 質量部
重合禁止剤:Irgastab UV10(チバ・ジャパン社製) 0.02 質量部
【0092】
上記混合液を室温まで冷却した後、これにPigment Red 122(大日精化製、クロモファインレッド6112JC)を21質量部加えた。混合液を、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。その後、ジルコニアビーズを除去して顔料分散液1を作製した。
【0093】
以下に示す光重合性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、ゲル化剤、および上記顔料分散剤1を混合し、100℃に加熱して攪拌した。その後、得られた液体を、加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後に冷却して、インク1を調製した。
光重合性化合物:ポリエチレングリコール#400ジアクリレート 29.9 質量部
光重合性化合物:4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート 15.0 質量部
光重合性化合物:6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 23.0 質量部
光重合開始剤:DAROCUR TPO(BASF社製) 6.0 質量部
光重合開始剤:ITX(DKSHジャパン社製) 1.0 質量部
光重合開始剤:DAROCUR EDB(BASF社製) 1.0 質量部
界面活性剤:KF-352(信越化学社製) 0.1 質量部
ゲル化剤:ベヘニン酸(花王株式会社製、ルナックBA) 5.0 質量部
顔料分散液1: 19.0 質量部
【0094】
以下に示す光重合性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、および上記顔料分散剤1を混合し、100℃に加熱して攪拌した。その後、得られた液体を、加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後に冷却して、インク2を調製した。
光重合性化合物:ポリエチレングリコール#400ジアクリレート 34.9 質量部
光重合性化合物:4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート 15.0 質量部
光重合性化合物:6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 23.0 質量部
光重合開始剤:DAROCUR TPO(BASF社製) 6.0 質量部
光重合開始剤:ITX(DKSHジャパン社製) 1.0 質量部
光重合開始剤:DAROCUR EDB(BASF社製) 1.0 質量部
界面活性剤:KF-352(信越化学社製) 0.1 質量部
顔料分散液1: 19.0 質量部
【0095】
水溶性有機溶剤:エチレングリコール 15.0 質量部
水溶性有機溶剤:プロピレングリコール 10.0 質量部
水溶性有機溶剤:グリセリン 4.5 質量部
有機酸緩衝液:クエン酸 0.05 質量部
有機酸緩衝液:クエン酸3Na2水和物 0.5 質量部
保湿剤:エチレン尿素 1.5 質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製) 0.05 質量部
色材:C.I.リアクティブブルー72 15.0 質量部
イオン交換水: 残部(全量が100質量部となるよう調整)
【0096】
後述する中間転写体の弾性層として用いたシリコーンゴムへのインク1~インク3の接触角、およびインク1の40℃における粘度を、上記プレコート剤と同様に測定した。
【0097】
2.画像形成
図2に示す構成を有する画像形成装置を用いて、以下の条件で画像を形成した。
【0098】
プレコート層形成部は、表面をスポンジで被覆されたロールコーターと、スクレーパーと、を有し、上記プレコート剤1~プレコート剤4のいずれかを付与して、プレコート層を形成した。
【0099】
インク層形成部は、ピエゾ型のインクジェットヘッドと、インクタンク、供給パイプ、記録ヘッド直前の前室インクタンク、およびフィルター付き配管を有するものを使用した。インクジェットヘッドは、ノズル径24μm、解像度512dpiのピエゾヘッドを千鳥に配置して、1200dpi×1200dpiの記録解像度としたラインヘッド式のインクジェットヘッドを、搬送方向前後に2つ設置した。それぞれのインクジェットヘッドに連通するインクタンクにインク1~インク3のいずれかを装填して、80℃に加温された1滴当たり3.5plのインクを、液滴の吐出速度を6m/secとして吐出し、プレコート層の表面に着弾させた。
【0100】
中間転写体は、ポリイミド(PI)から形成された基材層と、基材層のインクの着弾面側に形成されたシリコーンゴムから形成された弾性層と、を有する、軸方向長さが800mmの無端状ベルトを用い、3つの支持ローラー(うち1つは加圧ローラー)に逆三角形状に張架した。加圧ローラーは、φ100、ゴム圧10mmのローラーを用いた。加圧ローラーによる転写部の荷重は、80Nとした。
【0101】
搬送部は、印刷機用3倍胴の金属ドラムであり、エア吸引チャックにより記録媒体を吸引して保持し、搬送するドラムを用いた。
【0102】
光照射部は、波長395nmのUV-LED光源を用い、照射強度は5mW/cmとした。
【0103】
記録媒体は、印刷用コート紙A(OKトップコート 米坪量84.9g/m、王子製紙社製)、印刷用コート紙B(ニューエイジ 米坪量104.7g/m、王子製紙社製)、アート紙(SA金藤 米坪量104.7g/m、王子製紙社製)とした。
【0104】
この画像形成装置に、各記録媒体を600mm/sで搬送し、10枚のA4サイズ(210mm×300mm)のベタ画像を形成した。
【0105】
2-1.試験1
上記プレコート層形成部からプレコート剤を付与せず、上記それぞれのインクジェットヘッドに連通するインクタンクにインク1を装填して、上記画像を形成した。
【0106】
2-2.試験2
上記プレコート層形成部からプレコート剤1を付与して表1に示す膜厚のプレコート層を形成し、上記それぞれのインクジェットヘッドに連通するインクタンクにインク1を装填して、上記画像を形成した。
【0107】
2-3.試験3
上記プレコート層形成部からプレコート剤2を付与して表1に示す膜厚のプレコート層を形成し、上記それぞれのインクジェットヘッドに連通するインクタンクにインク1を装填して、上記画像を形成した。
【0108】
2-4.試験4
上記プレコート層形成部からプレコート剤3を付与して表1に示す膜厚のプレコート層を形成し、上記それぞれのインクジェットヘッドに連通するインクタンクにインク1を装填して、上記画像を形成した。
【0109】
2-5.試験5
上記プレコート層形成部からプレコート剤4を付与して表1に示す膜厚のプレコート層を形成し、上記それぞれのインクジェットヘッドに連通するインクタンクにインク1を装填して、上記画像を形成した。
【0110】
3.評価
上記3種類の記録媒体に形成した画像を、以下の基準で評価した。各試験において、いずれの記録媒体に形成した画像も、同一の評価が得られた。
【0111】
画像形成後の中間転写体のインクの着弾面を目視観察または拡大観察して、記録媒体に転写されずに中間転写体に残ったインクの割合をを調べ、以下の基準で評価した。
○ 目視観察および拡大観察のいずれでも中間転写体の表面にインクは確認されなかった
△ 目視観察では中間転写体の表面にインクは確認されなかったが、拡大観察では中間転写体の表面に残ったインクが確認された
× 目視観察でも中間転写体の表面に残ったインクが確認された
【0112】
また、試験4で形成された画像および試験5で形成された画像のうち、インクによるドットが積層された部分を拡大観察して、プレコート層に接して形成されたドットのドット径の平均値と、前に付与されたインクに接して形成されたドットのドット径の平均値と、の差を調べた。
【0113】
試験1~試験5について、プレコート剤の種類、接触角、40℃における粘度およびプレコート層の膜厚、インクの種類、接触角および40℃における粘度、ならびに評価結果を、表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
中間転写体のインクの着弾面へのプレコート剤の接触角が、中間転写体のインクの着弾面へのインクの接触角より小さく、プレコート剤の粘度が、インクの粘度より低い、試験No.4、5、9、10、13は、インクの転写性が高かった。
【0116】
また、プレコートの接触角とインクの接触角との差が20°以上である試験4で形成された画像は、プレコート層に接して形成されたドットのドット径の平均値と、前に付与されたインクに接して形成されたドットのドット径の平均値と、の差が30%程度だったが、プレコートの接触角とインクの接触角との差が20°未満である試験4で形成された画像は、プレコート層に接して形成されたドットのドット径の平均値と、前に付与されたインクに接して形成されたドットのドット径の平均値と、の差が10%程度とより小さくなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の画像形成方法および画像形成装置を用いると、インクジェットインクを用いた中間転写方式の画像形成方法におけるインクの転写性を高めることができる。そのため、本発明は、インクジェットインクを用いた中間転写方式の画像形成方法の適用の幅を広げ、同分野の技術の進展および普及に貢献することが期待される。
【符号の説明】
【0118】
1 画像形成装置
10 インク層形成部
11 インクジェットヘッド
20 中間転写部
21 中間転写体
22 支持ローラー
23 支持ローラー
24 支持ローラー
30 搬送部
40 光照射部
50 クリーニング部
60 プレコート層形成部
61 ロールコーター
62 スクレーパー
図1
図2