(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】放射線画像撮影装置及び放射線画像撮影システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
A61B6/00 300S
(21)【出願番号】P 2018026727
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川名 祐貴
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-036776(JP,A)
【文献】特開2012-070886(JP,A)
【文献】特開2014-194408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0303853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および前記複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、を備える検出部と、
前記放射線検出素子ごとに配置され、接続された前記走査線にオフ電圧が印加されるとオフ状態となるとともに、接続された前記走査線にオン電圧が印加されるとオン状態となり、前記オフ状態では前記放射線検出素子内で発生した電荷を前記放射線検出素子内に蓄積させ、前記オン状態では前記放射線検出素子から前記信号線に前記電荷を放出させるスイッチ手段と、
前記走査線に印加する電圧を前記オン電圧と前記オフ電圧との間で切り替える走査駆動手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換することによって、前記放射線検出素子から前記画像データを読み出す画像データ読み出し処理を行う読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段及び前記読み出し回路を制御して放射線画像撮影処理と暗画像取得処理を行う制御手段と、を備える放射線撮影装置であって、
前記制御手段は、
前記放射線画像撮影処理時には、
前記走査駆動手段から
オン電圧を印加する走査線を順次切り替えながら前記複数の走査線に順次オン電圧を印加することによって前記放射線検出素子から前記電荷を放出させて前記放射線検出素子をリセットするリセット処理を放射線照射が開始されるまで繰り返し行い、前記リセット処理が終了してから次の前記リセット処理を開始するまでの間に
全ての前記スイッチ手段をオフ状態にして待機させる待機時間を設
け、放射線照射の開始に応じて、前記走査駆動手段から全ての前記走査線に前記オフ電圧を印加することによって前記放射線検出素子内に前記電荷を蓄積させる電荷蓄積モードに遷移し、所定の蓄積時間が経過すると、前記走査駆動手段から前記走査線に前記オン電圧を印加することによって前記放射線検出素子から前記電荷を放出させ、前記読み出し回路に当該放出された前記電荷を前記画像データに変換させることによって前記画像データ読み出し処理を行わせる読み出しモードに遷移するように構成され、
前記暗画像取得処理時には、
前記リセット処理を行った後、前記電荷蓄積モードに遷移して放射線が照射されない状態で待機し、所定時間が経過すると、前記読み出しモードに遷移するように構成された放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記リセット処理中に放射線照射が開始された場合、実行中の前記リセット処理における最終の前記走査線へのオン電圧の印加によるリセットが完了した後、前記電荷蓄積モードに遷移させ、前記待機時間中に放射線照射が開始された場合、前記待機を強制中止して前記リセット処理を行った後、前記電荷蓄積モードに移行させる請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記放射線画像撮影装置は、当該放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置における曝射スイッチの第1ボタンが押下されたことを示す信号が入力されると、前記放射線画像撮影処理におけるリセット処理を開始し、放射線照射開始を指示する前記曝射スイッチの第2ボタンが押下されたことを示す信号が入力されると、前記電荷蓄積モードに移行する請求項1又は2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置と、当該放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置と、を備える放射線画像撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置及び放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射された放射線の線量に応じて放射線検出素子で電荷を発生させ、発生した電荷を画像データとして読み出す放射線検出器(FPD:(Flat Panel Detector))を備えた放射線画像撮影装置が種々開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような放射線画像撮影装置においては、放射線が照射されない状態でも、放射線検出素子の熱による熱励起等により各放射線検出素子内で暗電荷が発生し、放射線検出素子内に蓄積される電荷すなわち画像データにこの暗電荷によるオフセット分(オフセット信号値)が含まれる。そのため、高画質の放射線画像を取得するために、通常、放射線を照射せずに暗電荷によるオフセット分のデータ(以下「暗画像データ」という。)を各放射線検出素子から読み出す暗画像取得処理が、放射線の照射により発生した電荷を各放射線検出素子に蓄積して読み出すことにより放射線画像の画像データを取得する放射線画像撮影処理の前又は後に行われる。そして、放射線画像撮影処理により取得した放射線画像の画像データから暗画像データを引くことで、放射線画像から暗電荷によるオフセット分を除去するオフセット補正が行われる。
【0004】
また、このような放射線画像撮影装置においては、高画質の放射線画像を取得するために、放射線画像の撮影前、すなわち各放射線検出素子内に放射線の照射により発生した電荷を蓄積させる前に、各放射線検出素子内に蓄積されている暗電荷等の余分な電荷を放出させて各放射線検出素子をリセットするリセット処理が行われる。
【0005】
具体的には、リセット処理では、例えば後述する
図7に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ライン(ゲート線)L1~Lxに対してオン電圧をそれぞれ印加し、走査線5の各ラインL1~Lxにゲート電極8g(図中ではGと表記されている。)が接続されたスイッチ手段である各薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下「TFT」という。)8をオン状態にすることで、各放射線検出素子7から余分な電荷が各TFT8を介して各信号線6に放出される。このリセット処理は、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1~Lxにオン電圧を順次印加して、オン状態とするTFT8を順次切り替えながら行われる。
【0006】
リセット処理の後、放射線画像撮影処理の場合は、電荷蓄積モードに遷移して放射線画像の撮影が行われ、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷すなわち画像データが各放射線検出素子7内で蓄積される。そして、その後の読み出し処理で、各放射線検出素子7から、この真の画像データとともに上記のように放射線検出素子7内に残存していた余分な電荷も読み出される。
また、リセット処理の後、暗画像取得処理の場合は、電荷蓄積モードに遷移して、放射線が照射されない状態において各放射線検出素子7内で発生した電荷すなわち暗画像データが各放射線検出素子7内で蓄積される。そして、その後の読み出し処理で、各放射線検出素子7から、この暗画像データが読み出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、
図13(B)に示すように、近年の放射線画像撮影装置では、放射線画像の高精細化に伴い、
図13(A)に示す従来機よりも走査線のライン数が増加する傾向にある。リセット処理は、例えば、ユーザーによる曝射スイッチの第1ボタンの押下等の撮影開始のための所定のトリガによって開始され、放射線照射を指示する第2ボタンの押下等が行われるまでリセット処理が繰り返される。第2ボタンが押下されると、実行中のリセット処理が最後の走査線まで完了したところで電荷蓄積モードに移行し、インターロックが解除されて放射線の照射(曝射)が行われる。すなわち、第2ボタンの押下から曝射が開始されるまでに遅延が生じるが、高精細化により走査線のライン数が増加すると、
図13(B)に示すように、リセット時間(ラインL1のリセット開始から最終のラインLxまでのリセットが完了するまでの時間)の増加により最大曝射遅延時間が増加する。しかし、ユーザーが第2ボタンを押下して曝射を指示してから実際に曝射が開始されるまでの時間はユーザビリティーを考えると可能な限り短い方が好ましい。そのため、高精細化した放射線画像撮影装置ではリセット時間を短縮化することが行われている。リセット時間の短縮化に伴い、リセット周期(同一ゲートラインのリセットとリセットの時間間隔)も短縮化されている。
【0009】
しかしながら、リセット時間を短縮すると、第1ボタンの押下から第2ボタン押下までの時間が長くなるほど放射線曝射前に連続して行われるリセット処理の回数(連続リセット回数と呼ぶ)は増加する。そうすると、放射線画像の画像データに含まれるオフセット信号値と暗画像データが示すオフセット信号値にずれが生じる。
【0010】
オフセット信号値は、2種類の変動因子から影響を受けることが知られている。一つは、放射線検出素子に蓄積された電荷を放出することによる減少である。もう一つは、TFTをオンすると急激に増加し、オフにすると徐々に低下していき、やがて一定になることが知られている。
図14(A)は、リセット周期の長い放射線画像撮影装置におけるTFTのオン/オフの切り替えに伴うオフセット信号値の時間変化を示すグラフである。
図14(B)は、リセット周期が短い放射線画像撮影装置のTFTのオン/オフの切り替えに伴うオフセット信号値の時間変化を示すグラフである。
図14(A)、(B)においては、一例として1ライン目の走査線の放射線検出素子についてのオフセット信号値を示している。
図14(A)に示すように、リセット周期の長い放射線画像撮影装置では、放射線画像撮影処理において、TFTのオンによって一旦増加したオフセット信号値が十分に下がってから次のリセット処理に入ることができるため、放射線画像に含まれるオフセット信号値と暗画像データのオフセット信号値の差はほとんどない。しかし、
図14(B)に示すように、リセット周期が短い場合、放射線画像撮影処理において、リセット処理によるTFTのオンによって一旦増加したオフセット信号値が十分に下がり切る前に、次のリセット処理によるTFTのオンによってオフセット信号値が増加する。リセット時間が短くなるほど、また第1ボタンの押下から第2ボタンの押下までの時間が長くなるほど連続リセット回数が増加して放射線検出素子におけるオフセット信号値の累積的な増加が繰り返される。一方、暗画像取得処理時は、所定回数(例えば、1回)のリセット処理のみが行われる。そのため、放射線画像の画像データに含まれるオフセット信号値と暗画像データのオフセット信号値にずれが生じ、精度良くオフセット補正を行うことができない。
連続リセット回数は、例えば、放射線発生装置の曝射スイッチの第1ボタンの押下と第2ボタンの押下の間の時間によって決まるが、これはユーザーの使用方法によって異なる(ユーザーがいつ第2ボタンを押下するかはわからない)ため、例えば、暗画像のデータに一定の補正を加える等では対処することができない。
【0011】
本発明の課題は、放射線画像の画像データに含まれるオフセット信号値と暗画像データのオフセット信号値のずれを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および前記複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子と、を備える検出部と、
前記放射線検出素子ごとに配置され、接続された前記走査線にオフ電圧が印加されるとオフ状態となるとともに、接続された前記走査線にオン電圧が印加されるとオン状態となり、前記オフ状態では前記放射線検出素子内で発生した電荷を前記放射線検出素子内に蓄積させ、前記オン状態では前記放射線検出素子から前記信号線に前記電荷を放出させるスイッチ手段と、
前記走査線に印加する電圧を前記オン電圧と前記オフ電圧との間で切り替える走査駆動手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換することによって、前記放射線検出素子から前記画像データを読み出す画像データ読み出し処理を行う読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段及び前記読み出し回路を制御して放射線画像撮影処理と暗画像取得処理を行う制御手段と、を備える放射線撮影装置であって、
前記制御手段は、
前記放射線画像撮影処理時には、
前記走査駆動手段からオン電圧を印加する走査線を順次切り替えながら前記複数の走査線に順次オン電圧を印加することによって前記放射線検出素子から前記電荷を放出させて前記放射線検出素子をリセットするリセット処理を放射線照射が開始されるまで繰り返し行い、前記リセット処理が終了してから次の前記リセット処理を開始するまでの間に全ての前記スイッチ手段をオフ状態にして待機させる待機時間を設け、放射線照射の開始に応じて、前記走査駆動手段から全ての前記走査線に前記オフ電圧を印加することによって前記放射線検出素子内に前記電荷を蓄積させる電荷蓄積モードに遷移し、所定の蓄積時間が経過すると、前記走査駆動手段から前記走査線に前記オン電圧を印加することによって前記放射線検出素子から前記電荷を放出させ、前記読み出し回路に当該放出された前記電荷を前記画像データに変換させることによって前記画像データ読み出し処理を行わせる読み出しモードに遷移するように構成され、
前記暗画像取得処理時には、
前記リセット処理を行った後、前記電荷蓄積モードに遷移して放射線が照射されない状態で待機し、所定時間が経過すると、前記読み出しモードに遷移するように構成されている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記制御手段は、前記リセット処理中に放射線照射が開始された場合、実行中の前記リセット処理における最終の前記走査線へのオン電圧の印加によるリセットが完了した後、前記電荷蓄積モードに遷移させ、前記待機時間中に放射線照射が開始された場合、前記待機を強制中止して前記リセット処理を行った後、前記電荷蓄積モードに移行させる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記放射線画像撮影装置は、当該放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置における曝射スイッチの第1ボタンが押下されたことを示す信号が入力されると、前記放射線画像撮影処理におけるリセット処理を開始し、放射線照射開始を指示する前記曝射スイッチの第2ボタンが押下されたことを示す信号が入力されると、前記電荷蓄積モードに移行する。
【0015】
請求項4に記載の発明の放射線画像撮影システムは、
請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置と、当該放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放射線画像の画像データに含まれるオフセット信号値と暗画像データのオフセット信号値のずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態にかかる放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【
図2】(A)は操作スイッチの構成を示す図であり、(B)はボタン部が半押しされた状態、(C)はボタン部が全押しされた状態を説明する図である。
【
図3】本実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す斜視図である。
【
図5】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【
図6】
図5の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【
図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【
図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【
図9】本実施形態における放射線検出素子の動作及びTFTのオン/オフの切り替えに伴うオフセット信号値の時間変化を示すグラフである。
【
図10】(A)は待機時間が短い場合の放射線画像と暗画像のオフセット信号値の関係を示す図、(B)は待機時間が長い場合の放射線画像と暗画像のオフセット信号値の関係を示す図、(C)は最適な待機時間の場合の放射線画像と暗画像のオフセット信号値の関係を示す図である。
【
図11】
図7の制御手段により実行される放射線画像撮影処理~暗画像取得処理の流れを示す図である。
【
図12】本実施形態におけるリセット時間、待機時間、リセット周期を説明するための図である。
【
図13】従来技術の問題点を説明するための図である。
【
図14】リセット周期を短縮した場合の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0020】
[放射線画像撮影システム]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の全体構成を示す図である。
放射線画像撮影システム50は、例えば、
図1に示すように、放射線を照射して図示しない患者の身体の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、当該撮影室R1に隣接し、放射線技師等の操作者(ユーザー)が被写体への放射線の照射開始の制御等の種々の操作を行う前室R2と、それらの外部とに配置される。
【0021】
具体的には、放射線画像撮影システム50は、
図1に示すように、放射線画像撮影処理を行う放射線画像撮影装置1や、放射線画像撮影装置1により撮影された放射線画像の画像データに対して所定の画像処理を行うコンソール58、放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する放射線発生装置55等を備えて構成される。
【0022】
撮影室R1には、例えば、放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51と、被写体に照射する放射線を発生させるX線管球(図示省略)を備えた放射線源52やそれをコントロールする放射線発生装置55と、無線アンテナ53を備え、放射線画像撮影装置1とコンソール58や放射線発生装置55等の他の装置との間の通信を中継する中継器54とが設けられている。
【0023】
なお、
図1では、可搬型の放射線画像撮影装置1を、ブッキー装置51のカセッテ保持部51aに装填して用いる場合と、ブッキー装置51に装填されない単独の状態で用いる場合、具体的には臥位撮影用のブッキー装置51Bの上面側に配置してその放射線入射面R(
図3参照)上に被写体である患者の手等を載置して用いる場合等とが示されているが、放射線画像撮影装置1はブッキー装置51や支持台等と一体的に形成されたものであってもよい。
ここで、可搬型の放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填されない単独の状態で用いる場合、臥位撮影用のブッキー装置51Bの上面側に配置してその放射線入射面R(
図3参照)上に被写体である患者の手等を載置して用いる他に、例えば撮影室R1内に設けられたベッド等の上面側に配置してその放射線入射面R(
図3参照)上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足等とベッドとの間に差し込んだりして用いることも可能である。
【0024】
中継器54は、コンソール58や放射線発生装置55とLAN(Local Area Network)ケーブル等で有線接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等の間で情報を送信する際のLAN通信用の信号等を、放射線発生装置55との間で情報を送信する際の信号に変換し、その逆の変換も行う変換器(図示省略)が内蔵されている。
【0025】
また、中継器54は、ブッキー装置51と有線接続されており、当該ブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1とコンソール58や放射線発生装置55等の他の装置との間の通信を、中継器54を介して有線方式で行うことができるように構成されている。
【0026】
また、
図1では、放射線画像撮影装置1、具体的にはブッキー装置51に装填されていない放射線画像撮影装置1と、中継器54とを無線接続し、放射線画像撮影装置1とコンソール58や放射線発生装置55等の他の装置との間の通信を、中継器54を介して無線方式で行うことができるように構成した場合が示されているが、放射線画像撮影装置1と中継器54とを有線接続し、放射線画像撮影装置1と他の装置との間の通信を、中継器54を介して有線方式で行うことができるように構成してもよい。
なお、放射線画像撮影装置1は、ブッキー装置51に装填された状態でも、中継器54と無線接続することが可能となるように構成することも可能である。
【0027】
また、
図1では、撮影室R1内に、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bとが1個ずつ設けられている場合が示されているが、撮影室R1内に設けられるブッキー装置51の個数や種類は特に限定されない。
また、
図1では、撮影室R1内に、放射線源52として、ブッキー装置51に対応付けられた放射線源52Aと、ポータブルの放射線源52Bとが1個ずつ設けられている場合が示されているが、撮影室R1内に設けられる放射線源52の個数や種類は特に限定されない。
【0028】
[放射線発生装置]
撮影室R1には、放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する放射線発生装置55が設けられている。
そして、本実施形態では、撮影室R1に隣接する前室R2に、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等のユーザーが放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示する際に操作するための曝射スイッチ56が設けられている。
【0029】
曝射スイッチ56は、例えば
図2(A)に示すように、所定長のストロークを有する棒状のボタン部56aと、ボタン部56aを図中矢印Sで示されるストローク方向に移動可能に支持する筐体部56bとで構成されている。そして、曝射スイッチ56のボタン部56aは、例えば、筐体部56bから上方に突出した第2ボタン56a2と、その内部からさらに上方に突出した第1ボタン56a1とを備えて構成されている。第1ボタン56a1は、ユーザーが放射線画像撮影システム50に対して撮影開始のためのスタンバイを指示するためのボタンである。第2ボタン56a2は、ユーザーが放射線画像撮影システム50に対して放射線の照射(曝射)開始を指示するためのボタンである。
【0030】
図2(B)に示すように、第1ボタン56a1が第2ボタン56a2の上端部分までそのストローク方向Sに押し込まれると(すなわち、いわゆる半押し操作が行われると)、曝射スイッチ56は、操作卓57を介して放射線発生装置55に起動信号を送信するように構成されている。
そして、放射線発生装置55は、この起動信号を受信すると、放射線源52のX線管球の陽極の回転を開始させる等して、放射線源52をスタンバイ状態とさせるように構成されている。また、中継器54を介して放射線画像撮影装置1に第1ボタン56a1の押下通知信号を送信するように構成されている。
【0031】
さらに、
図2(C)に示すように、曝射スイッチ56の第1ボタン56a1と第2ボタン56a2とがともに筐体部56bの上端部分まで押し込まれると(すなわち、いわゆる全押し操作が行われると)、曝射スイッチ56は、操作卓57を介して放射線発生装置55に放射線照射開始信号を送信するように構成されている。
【0032】
放射線発生装置55は、曝射スイッチ56からこの放射線照射開始信号を受信すると、中継器54を介して放射線画像撮影装置1に第2ボタン56a2の押下通知信号を送信するように構成されている。放射線画像撮影装置1は、第2ボタン56a2の押下通知信号が受信され、リセットが完了する等の準備が整うと、中継器54を介して放射線発生装置55にインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、放射線画像撮影装置1から中継器54を介して送信されてきたインターロック解除信号を受信すると、放射線源52のX線管球から放射線を照射させるように構成されている。
【0033】
また、放射線発生装置55は、例えばユーザーが操作卓57を操作して、放射線画像撮影装置1に対して放射線が適切に照射されるように放射線源52の位置や放射線照射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように放射線源52の絞りを調整したり、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整したりする等の種々の制御を放射線源52に対して行うことができるように構成されている。なお、これらの処理をユーザーが手動で行うように構成してもよい。
【0034】
また、放射線発生装置55は、放射線源52からの放射線の照射開始から所定の時間が経過した時点、或いは、放射線画像撮影装置1から放射線の照射終了信号が送信されてきた時点で、放射線源52のX線管球を停止させる等して、放射線源52からの放射線の照射を停止させるように構成されている。
ここで、所定の時間は、例えば、ユーザーによって放射線画像撮影の前に予め決定された放射線の照射時間や、ユーザーによって放射線画像撮影の前に予め決定された撮影対象部位や撮影方向等の撮影条件メニューに対応する放射線の照射時間などである。
【0035】
[コンソール]
コンソール58は、例えば、
図1に示すように、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等からなる表示部58aと、HDD(Hard Disk Drive)等
からなる記憶手段59と、コンソール58の各部の動作等を制御する制御部58bと、LANケーブル等によって中継器54と接続され、放射線画像撮影装置1等の他の装置との間で通信を行うための通信部58cと、キーボードやマウス等からなる入力部60とを備えて構成されるコンピュータである。
【0036】
なお、
図1では、コンソール58が撮影室R1や前室R2の外側に設けられている場合が示されているが、コンソール58は、例えば前室R2に設けられていてもよい。
また、
図1では、コンソール58に記憶手段59が接続されている場合が示されているが、記憶手段59はコンソール58に内蔵されていてもよい。
【0037】
コンソール58の制御部58bは、通信部58cが中継器54を介して、放射線画像撮影装置1により撮影された放射線画像の画像データを当該放射線画像撮影装置1から受信すると、当該画像データに伸長処理や、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、自動階調処理等の所定の画像処理を施して、診断用の画像データを作成する。
そして、コンソール58の制御部58bは、ユーザーにより操作された入力部60等からの指示に従って、当該診断用の画像データに基づく放射線画像を表示部58aに表示したり、当該診断用の画像データを通信部58c等から出力してイメージャやデータ管理サーバ等の他の装置(図示省略)に送信したりする。
【0038】
なお、本実施形態では、オフセット補正処理や、ゲイン補正処理、自動階調処理等を、コンソール58が行うこととして説明するが、オフセット補正処理や、ゲイン補正処理、自動階調処理等は、放射線画像撮影装置1が行ってもよい。
【0039】
また、コンソール58に、例えば、放射線画像撮影で取得された画像データに基づくプレビュー画像を表示させたり、放射線画像撮影装置1の駆動モードをウェイクモードとスリープモードとの間で遷移させる機能を持たせたり、或いは、撮影室R1で行う放射線画像撮影の内容を表す撮影オーダ情報をユーザーが作成したり選択したりすることを可能とする機能を持たせたりするように構成することも可能であり、適宜に構成される。
【0040】
[放射線画像撮影装置]
図3は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、
図4は、
図3のX-X線に沿う断面図である。
本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、
図3や
図4に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4等が収納された可搬型(カセッテ型)の装置として構成されている。
【0041】
筐体2は、少なくとも放射線の照射を受ける側の面R(以下「放射線入射面R」という。)が放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。
なお、
図3や
図4では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
【0042】
また、
図3に示すように、本実施形態では、筐体2の側面部分に、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37、バッテリー41(後述する
図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38等が配置されている。また、本実施形態では、蓋部材38の側面部に、アンテナ装置39が埋め込まれている。
【0043】
ここで、アンテナ装置39は、中継器54を介してコンソール58や放射線発生装置55等の他の装置との間でデータや信号等の情報の送受信を無線方式で行うための通信手段として機能する。
なお、放射線画像撮影装置1と他の装置との間の通信を、前述したような有線方式で行う場合、放射線画像撮影装置1には、LANケーブル等を接続するためのコネクタ等が通信手段として設けられる。
【0044】
筐体2の内部には、
図4に示すように、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。なお、本実施形態では、基板4やシンチレータ3の放射線入射面R側には、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
【0045】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに対向する状態で配置されている。シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300~800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0046】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、
図5に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5および複数の信号線6により区画された各領域rには、それぞれ放射線検出素子7が設けられている。
【0047】
このように、走査線5と信号線6とで区画された各領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち
図5に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされる。
【0048】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。
各放射線検出素子7は、
図5や
図5の拡大図である
図6に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0049】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15により、接続された走査線5にオン電圧が印加され、走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を当該放射線検出素子7から信号線6に放出させるようになっている。
また、TFT8は、接続された走査線5にオフ電圧が印加され、走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内で発生した電荷を当該放射線検出素子7内に保持して蓄積させるようになっている。
【0050】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。
図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、
図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0051】
基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。
また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0052】
本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわち、いわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0053】
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(
図7、
図8中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(
図7、
図8中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1~Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(
図7、
図8中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0054】
走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバ15bにオン電圧およびオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1~Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
【0055】
図7や
図8に示したように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、読み出しIC16に、1本の信号線6につき1個ずつ読み出し回路17が設けられている。
【0056】
読み出し回路17は、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、
図7や
図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、
図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0057】
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列に接続されたコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cとを備えて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。
【0058】
増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0059】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。
電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で、TFT8がオン状態とされると(すなわち、TFT8のゲート電極8gに走査線5を介してオン電圧が印加されると)、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から蓄積されていた電荷が信号線6に放出され、当該電荷が信号線6を流れて、増幅回路18のコンデンサ18bに流入して蓄積される。
【0060】
そして、増幅回路18では、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換するようになっている。
【0061】
また、増幅回路18をリセットする際には、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態となると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電される。そして、放電された電荷がオペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出たりすることで、増幅回路18がリセットされるようになっている。
なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
【0062】
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
【0063】
そして、制御手段22は、放射線画像撮影後の各放射線検出素子7からの画像データの読み出し処理においては、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19を制御して、各放射線検出素子7から放出された電荷を増幅回路18で電荷電圧変換させ、電荷電圧変換された電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングさせて画像データとして下流側に出力させるようになっている。
【0064】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データは、アナログマルチプレクサ21に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データに変換されて記憶手段40に出力されて順次保存されるようになっている。
【0065】
また、制御手段22は、後述するように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bからオン電圧が印加される走査線5の各ラインL1~Lxを順次切り替え、その切り替えごとに、上記のような各放射線検出素子7から画像データを読み出す画像データ読み出し処理を行うようになっている。
【0066】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。
また、
図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段40が接続されている。
【0067】
また、本実施形態では、制御手段22には、アンテナ装置39が接続されている。
さらに、本実施形態では、制御手段22には、検出部Pや、走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段40、バイアス電源14等の各機能部に電力を供給するためのバッテリー41が接続されている。また、バッテリー41には、図示しない充電装置からバッテリー41に電力を供給してバッテリー41を充電する際に、当該充電装置とバッテリー41とを接続する接続端子42が取り付けられている。
【0068】
制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信してそのサンプルホールド機能のオン/オフを制御したりする等、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0069】
また、制御手段22は、放射線発生装置55からの第1ボタン56a1の押下通知信号が受信されると、各部を制御して放射線画像撮影処理を行い、被写体の放射線画像の画像データを取得した後、引き続いて暗画像取得処理を行って暗画像データを取得する。
【0070】
<放射線画像撮影処理および暗画像取得処理>
放射線画像撮影処理では、制御手段22は、放射線発生装置55からの第2ボタン56a2の押下通知信号が受信されるまでの間、リセット処理を繰り返し実行する。リセット処理は、走査駆動手段15のゲートドライバ15bにより走査線5のラインL1~Lxに順次オン電圧を印加することによって放射線検出素子7から電荷を放出させて放射線検出素子7をリセットする処理である。第2ボタン56a2の押下通知信号が受信されると、制御手段22は、実行中のリセット処理をラインLxまで完了させた後、インターロック解除信号を放射線発生装置55に送信して放射線照射を許可し、走査駆動手段15により全ての走査線5にオフ電圧を印加することによって放射線検出素子7内に電荷を蓄積させる電荷蓄積モードに遷移する。所定の蓄積時間が経過すると、制御手段22は、走査駆動手段15から走査線5の各ラインにオン電圧を印加することによって放射線検出素子7から電荷を放出させ、読み出し回路17に放出された電荷を画像データに変換させることによって画像データ読み出し処理を行わせる読み出しモードに遷移する。
【0071】
暗画像取得処理では、所定回数(ここでは、1回)のリセット処理を行った後、電荷蓄積モードに遷移して放射線が照射されない状態で待機し、所定時間が経過すると、読み出しモードに遷移して暗画像データを取得する。
なお、リセット処理を行う際、各放射線検出素子7から画像データを読み出す画像データ読み出し処理の場合と同じタイミングで走査線5の各ラインL1~Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えることとする。
【0072】
ここで、本実施形態の放射線画像撮影装置1は、高精細な放射線画像を取得するためのものであり、一般的な放射線画像撮影装置に比べて走査線5のライン数が多く設けられているが、ユーザーが第2ボタン56a2を押下してから実際に放射線が照射されるまでの遅延時間が長くなるのを抑制するために、リセット処理に要するリセット時間は一般的な放射線画像撮影装置に比べて短く設定されている。しかし、リセット時間が短くなると、上述したように、第1ボタン56a1の押下から第2ボタン56a2の押下までの時間が長くなるほど連続リセット回数は増加するので、従来のようにリセット時間とリセット周期が一致ししている場合、放射線画像の画像データのオフセット分の信号値と暗画像データとのずれが大きくなる(
図14(B)参照)。
そこで、制御手段22は、
図9に示すように、走査駆動手段15を制御して、放射線画像撮影処理においてリセット処理が終了してから次のリセット処理が開始されるまでの間に、全てのTFT8をオフ状態にして待機させる待機時間(待機モード)を設けてリセット時間よりもリセット周期を延長する。ここで、
図10(A)に示すように、待機時間が短すぎると放射線画像の画像データに含まれるオフセット信号値が暗画像データのオフセット信号値よりも大きいままで、オフセット補正後の画像にオフセット補正ずれが生じてしまう。
図10(B)に示すように、待機時間が長すぎると放射線画像の画像データに含まれるオフセット信号値が暗画像データのオフセット信号値よりも小さくなってしまい、オフセット補正後の画像にオフセット補正ずれが生じてしまう。そこで、
図10(C)に示すように、実験によりオフセット補正後の画像が診断画像において許容できるレベルの画像となる待機時間を求め、求めた待機時間が予め設定されている。なお、待機時間中は、全てのTFT8がオフ状態で待機していればよく、TFT8以外の各部で他の動作が行われていてもよい。
【0073】
図11は、制御手段22により実行される放射線画像撮影処理~暗画像取得処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図11を参照して、放射線画像撮影処理~暗画像取得処理の流れについて説明する。
【0074】
まず、制御手段22は、放射線発生装置55からの第1ボタン56a1の押下通知信号の受信を待機する(ステップS1)。アンテナ装置39を介して第1ボタン56a1の押下通知信号が受信されると(ステップS1;YES)、制御手段22は、リセット処理を開始する(ステップS2)。すなわち、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1~Lxにオン電圧を印加するタイミングをラインL1からラインLxまで順次切り替えながら、各放射線検出素子7をリセットする。
【0075】
次いで、制御手段22は、放射線発生装置55からの第2ボタン56a2の押下通知信号が受信されたか否かを判断する(ステップS3)。第2ボタン56a2の押下通知信号が受信されていないと判断した場合(ステップS3;NO)、制御手段22は、リセット処理が完了したか否かを判断する(ステップS4)。リセット処理が完了していないと判断した場合(ステップS4;NO)、制御手段22は、ステップS3に戻る。
【0076】
一方、ステップS4において、リセット処理が完了したと判断した場合(ステップS4;YES)、制御手段22は、走査駆動手段15のゲートドライバ15bを制御して全てのラインL1~LxのTFT8をオフ状態で待機させる待機モードに遷移する(ステップS5)。
【0077】
待機モードにおいて、制御手段22は、第2ボタン56a2の押下通知信号が受信されたか否かを判断する(ステップS6)。
第2ボタン56a2の押下通知信号が受信されていないと判断した場合(ステップS6;NO)、制御手段22は、所定の待機時間が経過したか否かを判断する(ステップS7)。
待機時間が終了していないと判断した場合(ステップS7;NO)、制御手段22は、ステップS6に戻る。
【0078】
待機モードにおいて、第2ボタン56a2の押下通知信号が受信されたと判断した場合(ステップS6;YES)、制御手段22は、待機モードを強制中止し(ステップS8)、所定回数(ここでは1回)のリセット処理を行い(ステップS9)、ステップS11に移行する。
ステップS9においてリセット処理を実行するのは、待機モードと電荷蓄積モードが連続するとオフセット信号値の低下が大きく、暗画像データとのバランスがとれなくなるからである。
【0079】
第2ボタン56a2が押下されずに待機時間が経過したと判断すると(ステップS7;NO)、制御手段22は、ステップS2に戻り、再度リセット処理を行う。
【0080】
リセット処理中に第2ボタン56a2の押下通知信号が受信されたと判断した場合(ステップS3;YES)、制御手段22は、実行中のリセット処理が完了する(すなわち、実行中のリセット処理における最終の走査線へのオン電圧の印加によるリセットが完了する)のを待機し、実行中のリセット処理が完了すると(ステップS10;YES)、ステップS11に移行する。
【0081】
ステップS11において、制御手段22は、アンテナ装置39を介して放射線発生装置55にインターロック解除信号を送信し(ステップS11)、電荷蓄積モードに遷移して放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる(本蓄積)(ステップS12)。
所定の蓄積時間が経過すると、制御手段22は、読み出しモードに遷移し、各放射線検出素子7から画像データを読み出す(本読出)(ステップS13)。具体的には、走査駆動手段15から走査線5にオン電圧を印加することによって放射線検出素子7から信号線6に当該放射線検出素子7に蓄積された電荷を放出させ、読み出し回路17に当該放出された電荷を画像データに変換させることによって、各放射線検出素子7から画像データを読み出す画像データ読み出し処理を行わせる。
ステップS1~ステップS13までの処理は、放射線画像撮影処理であり、被写体の放射線画像の画像データが取得される。
【0082】
画像データ読み出し処理が終了すると、制御手段22は、所定回数(ここでは、1回)のリセット処理を行う(ステップS14)。所定回数のリセット処理が終了すると、制御手段22は、電荷蓄積モードに遷移して、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しない状態で所定時間待機して暗蓄積を行った後(ステップS15)、読出しモードに移行し、各放射線検出素子7から暗電荷によるオフセット信号値のデータ(暗画像データ)を読み出す(暗読出)(ステップS16)。
ステップS14~ステップS16までの処理は、暗画像取得処理であり、暗画像データが取得される。
【0083】
上記処理により取得された放射線画像の画像データ及び暗画像データは、コンソール58に送信され、暗画像データを用いた放射線画像のオフセット補正等の画像処理が行われる。
【0084】
このように、放射線画像撮影装置1においては、
図12に示すように、放射線画像撮影処理における(本撮影前の)リセット処理とリセット処理の間(最終のラインLxのリセットが完了してから次に先頭のラインL1のリセットが開始されるまでの間)に、全てのラインL1~LxのTFT8をオフ状態で待機させる待機時間を設けてリセット時間よりもリセット周期を延長するので、
図9のTFT8のオン/オフの切り替えに伴うオフセット信号値の時間変化のグラフに示すように、TFT8のオンによって一旦増加したオフセット信号値が十分に下がるまでの時間を確保することができ、オフセット信号値の累積的な増加を抑制することができる。その結果、短いリセット時間であっても、放射線画像の画像データに含まれるオフセット信号値と暗画像データのオフセット信号値のずれを抑制することができ、精度良くオフセット補正を行うことが可能となる。
また、待機時間中に第2ボタン56a2が押下された場合には、待機モードを強制的に中止し、所定回数のリセット処理を行った後、電荷蓄積モードに移行するので、待機時間を設けることによる最大曝射遅延時間の増加を抑制することができる。
なお、待機を中止した場合、待機時間だけ待機した場合に比べてオフセット信号値の減少は少ないが、連続リセットによるオフセット信号値の累積的な増加に比べて本蓄積開始時に各放射線検出素子7に存在するオフセット信号値はわずかである。そして、この待機を中止したことにより残存しているオフセット信号値は、診断に影響がない程度であることは実験により確認されている。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態における記述内容は本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、本発明を放射線発生装置と連携してリセットモードから電荷蓄積モードへ切り替える放射線画像撮影装置を例にとり説明したが、本発明は、放射線照射開始を検出する機能を備えた自己検知型の放射線画像撮影装置に適用してもよい。自己検知型の放射線画像撮影装置の場合は、放射線照射開始が検出されると、実行中のリセット処理や待機を中止して直ちに電荷蓄積モードに移行するが、上述のように、本発明を適用すれば、連続リセット処理によるオフセット信号値の累積的な増加に比べて本蓄積開始時に各放射線検出素子7に存在するオフセット信号値を抑えることができ、放射線画像の画像データに含まれるオフセット信号値と暗画像データのオフセット信号値のずれを抑制することができる。
【0086】
また、上記実施形態においては、放射線画像撮影処理の後に、続けて暗画像取得処理を行う放射線画像撮影装置を例にとり説明したが、暗画像取得処理を放射線画像撮影処理よりも前に行う放射線画像撮影装置(自己検知型も含む)に本発明を適用してもよい。この場合においても、同様に、連続してリセット処理を行うことによるオフセット信号値の累積的な増加に比べて本蓄積開始時に各放射線検出素子7に存在するオフセット信号値を抑えることができ、本撮影により取得された画像データに含まれるオフセット信号値と暗画像データのオフセット信号値のずれを抑制することができる。
【0087】
また、本発明は、走査線の隣り合う複数のラインの放射線検出素子の信号を同じタイミングで読み出して平均化又は加算するビニング処理を行う放射線画像撮影装置に適用することとしてもよい。ビニング処理を行う場合、複数ライン分をまとめて読み出すため、1ラインずつ読み出す場合と比べて必要な待機時間が変化する。そのため、ビニング数の増加に伴い、オフセット信号値のずれが増大することになる。まとめて読み出すライン数に応じた待機時間を設けることで、本撮影により取得された画像データに含まれるオフセット信号値と暗画像データのオフセット信号値のずれを抑制することが可能となる。
【0088】
その他、放射線画像撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
15a 電源回路
15b ゲートドライバ
17 読み出し回路
22 制御手段
50 放射線画像撮影システム
55 放射線発生装置
55a 通信部
57 操作卓
58 コンソール
58b 制御部
58c 通信部
60 入力部
r 領域P 検出部