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特許7087488非水電解質二次電池及びそれを用いた組電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及びそれを用いた組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20220614BHJP
   H01M 50/103 20210101ALN20220614BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M50/103
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018046190
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019160587
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164035
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 正人
(72)【発明者】
【氏名】大門 徹也
(72)【発明者】
【氏名】村岡 将史
(72)【発明者】
【氏名】新井 友春
(72)【発明者】
【氏名】南 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊樹
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/176272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極芯体上に正極活物質合材層を有する正極板と、負極芯体上に負極活物質合材層を有する負極板と、セパレータを含む電極体と、
前記電極体を収容する電池ケースを備え、
前記電池ケースは、開口、底部、一対の第1側壁、及び一対の第2側壁を有する角形外装体と、前記開口を封口する封口板により構成され、
前記第1側壁の面積は前記第2側壁の面積よりも大きく、
前記電極体は、前記正極活物質合材層と前記負極活物質合材層が前記セパレータを介して積層された発電部を有し、
前記発電部は、平坦な外面を有する平坦部を有し、
前記第1側壁に対して垂直な方向から見たとき、前記電池ケースの内部の空間において、前記平坦部と重なる空間を平坦部収容空間とし、
前記平坦部収容空間の体積をV1(cm)とし、
前記平坦部収容空間における空隙の総体積をV2(cm)としたとき、
V2(cm)/V1(cm)が0.40~0.42である非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記電極体は、帯状の前記正極板と帯状の前記負極板を、帯状の前記セパレータを介して巻回した偏平状の巻回電極体であり、
前記巻回電極体は、前記一対の第2側壁の一方側に配置される巻回された正極芯体露出部と、前記一対の第2側壁の他方側に配置される巻回された負極芯体露出部とを有し、
前記正極芯体露出部に正極集電体が接続され、
前記負極芯体露出部に負極集電体が接続され、
前記発電部は、湾曲した外面を有し前記平坦部よりも前記封口板側に位置する第1湾曲部と、湾曲した外面を有し前記平坦部よりも前記底部側に位置する第2湾曲部を有する請求項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記非水電解質二次電池を、前記非水電解質二次電池の厚みで拘束して反力を測定した場合、非水電解質二次電池の充電深度100%での反力(N)と非水電解質二次電池の充電深度0%での反力(N)との差が、800N~1200Nである請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の非水電解質二次電池を複数個含む組電池であって、一対のエンドプレートの間に、複数の前記非水電解質二次電池を積層した組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池及びそれを用いた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)等の駆動用電源として、複数の非水電解質二次電池が直列ないし並列に接続された組電池が使用される。
【0003】
このような組電池においては、隣接する非水電解質二次電池の幅広の側面同士が絶縁性のスペーサ等を介して対向するようにして、複数の非水電解質二次電池が配列される。例えば、一対のエンドプレートの間に、複数の非水電解質二次電池が配列され、一対のエンドプレート同士をバインドバーにより接続し、一つの組電池とされる(下記特許文献1)。
【0004】
非水電解質二次電池においては、充放電等により電極体が膨張・収縮する。電極体が膨張する場合、電極体が電池ケースを外方に押圧する。これにより、非水電解質二次電池が膨張し、他を押圧する力(反力)が過度に大きくなると、組電池を構成する部材、例えばバインドバーやエンドプレート等が損傷・破損する虞がある。組電池を構成する部材の損傷・破損を防止するために組電池を頑丈な構造とすることが考えられるが、組電池のサイズないし重量が増加するという課題がある。
【0005】
一方、非水電解質二次電池の反力が過度に小さい場合、振動や衝撃等により、組電池内で非水電解質二次電池が動いたり、あるいは電池ケース内で電極体が動いたりする虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-210971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、充電状態の変化による反力の変化が小さく、体積出力密度の高い非水電解質二次電池及びそれを用いた組電池を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態の非水電解質二次電池は、
正極芯体上に正極活物質合材層を有する正極板と、負極芯体上に負極活物質合材層を有する負極板と、セパレータを含む電極体と、
前記電極体を収容する電池ケースを備え、
前記電池ケースは、開口、底部、一対の第1側壁、及び一対の第2側壁を有する角形外装体と、前記開口を封口する封口板により構成され、
前記第1側壁の面積は前記第2側壁の面積よりも大きく、
前記電極体は、前記正極活物質合材層と前記負極活物質合材層が前記セパレータを介して積層された発電部を有し、
前記発電部は、平坦な外面を有する平坦部を有し、
前記第1側壁に対して垂直な方向から見たとき、前記電池ケースの内部の空間において、前記平坦部と重なる空間を平坦部収容空間とし、
前記平坦部収容空間の体積をV1(cm)とし、
前記平坦部収容空間における空隙の総体積をV2(cm)としたとき、
V2(cm)/V1(cm)が0.40~0.42である。
【0009】
本発明の一様態の非水電解質二次電池の構成であると、充電状態の変化による反力の変化が小さく、体積出力密度の高い非水電解質二次電池となる。なお、充電状態の変化による反力の変化が小さい非水電解質二次電池とすることにより、組電池のサイズないし重量が増加することを抑制しながら、組電池を構成する部材の損傷・破損を防止できる。また、組電池内で非水電解質二次電池が動いたり、電池ケース内で電極体が動いたりすることを効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、充電状態の変化による反力の変化が小さく、体積出力密度の高い非水電解質二次電池及びそれを用いた組電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る非水電解質二次電池の斜視図である。
図2図2A図1におけるIIA-IIA断面の断面図であり、図2B図1におけるIIB-IIB断面の断面図である。
図3】実施形態に係る組電池の斜視図である。
図4】実施形態に係る正極板の平面図である。
図5】実施形態に係る負極板の平面図である。
図6】実施形態に係る巻回電極体の平面図である。
図7】(a)は非水電解質二次電池の発電部を含む部分の封口板の短手方向に沿った断面図である。(b)は(a)における角形外装体のみを示す図である。(c)は(a)における電極体のみを示す図である。(d)は(a)における樹脂シートのみを示す図である。
図8】反力測定用のサンプルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、実施形態に係る非水電解質二次電池20について説明を行う。実施形態に係る非水電解質二次電池20は角形二次電池である。なお、本発明は、以下の形態に限定されない。図1は非水電解質二次電池20の斜視図である。図2A図1におけるIIA-IIA断面の断面図である。図2B図1におけるIIB-IIB断面の断面図である。非水電解質二次電池20は、開口を有する有底角形筒状の角形外装体1と角形外装体1の開口を封口する封口板2からなる電池ケース80を有する。角形外装体1は、底部1a、一対の第1側壁1b、一対の第2側壁1cを有する。一対の第1側壁1bはそれぞれ対向するように配置されている。一対の第2側壁1cはそれぞれ対向するように配置されている。第1側壁1bの面積は、第2側壁1cの面積よりも大きい。角形外装体1及び封口板2は金属製であることが好ましく、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であることがより好ましい。
【0013】
電池ケース80内には、帯状の正極板40と帯状の負極板50を帯状のセパレータを介して巻回した偏平状の巻回電極体3が配置されている。巻回電極体3は、その巻回軸が角形外装体1の底部1aと平行になる向きで電池ケース80内に配置されている。巻回電極体3において、巻回軸が延びる方向の一方の端部には巻回された正極芯体露出部4が設けられ、他方の端部には巻回された負極芯体露出部5が設けられている。巻回電極体3は、一対の平坦な外面と、一対の平坦な外面を繋ぐ一対の湾曲した外面を有する。一対の平坦な外面は、それぞれ第1側壁1bと対向するように配置されている。また、巻回された正極芯体露出部4及び巻回された負極芯体露出部5は、それぞれ第2側壁1cと対向するように配置されている。なお、角形外装体1と巻回電極体3の間には電気絶縁性の樹脂シー
ト14が配置されている。
【0014】
巻回された正極芯体露出部4の外面には正極集電体6が接続されている。封口板2には金属製の正極端子7が取り付けられている。正極集電体6は正極端子7に電気的に接続されている。正極端子7と封口板2の間には樹脂製の外部側絶縁部材10が配置されている。正極集電体6と封口板2の間には樹脂製の内部側絶縁部材11が配置されている。
【0015】
巻回された負極芯体露出部5の外面には負極集電体8が接続されている。封口板2には金属製の負極端子9が取り付けられている。負極集電体8は負極端子9に電気的に接続されている。負極端子9と封口板2の間には樹脂製の外部側絶縁部材12が配置されている。負極集電体8と封口板2の間には樹脂製の内部側絶縁部材13が配置されている。
【0016】
正極集電体6は、正極芯体露出部4に接続される接続部6aと、封口板2と巻回電極体3の間に配置されるベース部6cと、ベース部6cから巻回電極体3に向かって延びベース部6cと接続部6aを繋ぐリード部6bを有する。正極集電体6は金属製であり、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であることが好ましい。
【0017】
負極集電体8は、負極芯体露出部5に接続される接続部8aと、封口板2と巻回電極体3の間に配置されるベース部8cと、ベース部8cから巻回電極体3に向かって延びベース部8cと接続部8aを繋ぐリード部8bを有する。負極集電体8は金属製であり、銅製又は銅合金製であることが好ましい。
【0018】
封口板2には、電池ケース80内の圧力が所定値以上となった際に破断し、電池ケース80内のガスを電池ケース80外に排出するガス排出弁15が設けられている。また、封口板2には電解液注液孔(図示省略)が設けられている。電解液注液孔は封止栓16により封止されている。
【0019】
次に複数の非水電解質二次電池20を含む組電池100について説明する。
【0020】
図3は、組電池100の斜視図である。一対の金属製のエンドプレート101の間に、10個の非水電解質二次電池20が配置されている。一対のエンドプレート101は、金属製のバインドバー102により接続されている。なお、バインドバー102はボルト103によりエンドプレート101に固定されている。組電池100においては、一方の側面に2つのバインドバー102が配置され、他方の側面に2つのバインドバー102が配置されている。
【0021】
隣接する非水電解質二次電池20同士の間には樹脂製のスペーサ60が配置されている。非水電解質二次電池20同士は、スペーサ60を介して第1側壁1b同士が対向する向きで配置されている。非水電解質二次電池20の正極端子7は、隣接する非水電解質二次電池20の負極端子9と金属製のバスバー104により電気的に接続されている。組電池100においては、各スペーサ60が、対向する各非水電解質二次電池20の角形外装体1の第1側壁1bを押圧する構造となっている。
【0022】
次に非水電解質二次電池20の製造方法について説明する。
【0023】
[正極板の作製]
正極活物質としてのLiNi0.35Co0.35Mn0.30、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)、導電材としてのカーボンブラック、及び分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を正極活物質:結着材:導電材の質量比が90.9:7:2.1となるように混練し、正極活物質合材スラリーを作製する。
【0024】
正極芯体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、正極活物質合材スラリーを塗布する。その後、正極活物質合材スラリーを乾燥させ、正極活物質合材スラリー中のNMPを除去する。これにより正極活物質合材層が形成される。その後、正極活物質合材層を圧縮ローラにより所定の充填密度となるように圧縮処理する。そして、所定の形状に切断し正極板40とする。
【0025】
ここで、正極板40の長さは440cmとし、正極板40の幅を12.8cmとする。また、正極板40において、正極活物質合材層40bの幅を11.0cmとする。
【0026】
図4は、正極板40の平面図である。正極板40は、帯状の正極芯体40aと、正極芯体40aの両面に形成された正極活物質合材層40bを含む。正極芯体40aには、幅方向の端部に、長手方向に沿って両面に正極活物質合材層40bが形成されていない正極芯体露出部4が設けられている。
【0027】
[負極板の作製]
負極活物質としての黒鉛、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘材としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び水を、負極活物質:結着材:増粘材の質量比が98:1:1となるように混練し、負極活物質合材スラリーを作製する。
【0028】
負極芯体としての厚さ8μmの銅箔の両面に、負極活物質合材スラリーを塗布する。その後、負極活物質合材スラリーを乾燥させ、負極活物質合材スラリー中の水を除去する。これにより負極活物質合材層が形成される。その後、負極活物質合材層を圧縮ローラにより所定の充填密度となるように圧縮処理する。そして、所定の形状に切断し、負極板50とする。
【0029】
ここで、負極板50の長さは450cmとし、負極板50の幅を13.0cmとする。また、負極板50において、負極活物質合材層50bの幅を11.5cmとする。
【0030】
図5は、負極板50の平面図である。負極板50は、帯状の負極芯体50aと、負極芯体50aの両面に形成された負極活物質合材層50bを含む。負極芯体50aには、幅方向の両端部に、それぞれ、長手方向に沿って両面に負極活物質合材層50bが形成されていない負極芯体露出部5が設けられている。一方の負極芯体露出部5の幅は、他方の負極芯体露出部5の幅よりも大きい。なお、幅が大きい方の負極芯体露出部5に負極集電体8が接続される。
【0031】
[巻回電極体の作製]
上述の方法で作製した帯状の正極板40と帯状の負極板50を、帯状の厚さ20μmのポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層セパレータを介して巻回し、偏平状にプレス成形する。得られた偏平状の巻回電極体3は、巻回軸が延びる方向における一方に巻回された正極芯体露出部4を有し、他方の端部に巻回された負極芯体露出部5を有する。
【0032】
[非水電解液の調整]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比(25℃、1気圧)で30:30:40となるように混合した混合溶媒を作製する。この混合溶媒に、LiPFを1mol/Lとなるように添加した。さらに非水電解液の総質量に対してその添加量が0.3質量%となるようにビニレンカーボネート(VC)を添加し、非水電解液の総質量に対してその添加量が1質量%となるようにリチウムビスオキサラトボレートを添加する。
【0033】
[封口板への部品取り付け]
封口板2に設けられた正極端子取り付け孔(図示省略)の周囲の電池外面側に外部側絶縁部材10を配置する。封口板2に設けられた正極端子取り付け孔(図示省略)の周囲の電池内面側に内部側絶縁部材11及び正極集電体6のベース部6cを配置する。そして、電池外部側から正極端子7を、外部側絶縁部材10の貫通孔、正極端子取り付け孔、内部側絶縁部材11の貫通孔及び正極集電体6のベース部6cの貫通孔に挿入し、正極端子7の先端部を正極集電体6のベース部6c上にかしめる。これにより、正極端子7及び正極集電体6が封口板2に固定される。なお、更に、正極端子7とベース部6cを溶接することが好ましい。なお、負極側についても同様の方法で、負極端子9、外部側絶縁部材12、封口板2、内部側絶縁部材13、及び負極集電体8を固定できる。
【0034】
[偏平状の巻回電極体への集電体の取り付け]
巻回された正極芯体露出部4に正極集電体6の接続部6aを溶接する。巻回された負極芯体露出部5に負極集電体8の接続部8aを溶接する。
【0035】
[非水電解質二次電池の組立て]
箱状に折り曲げ成型された樹脂シート14内に配置した偏平状の巻回電極体3を角形外装体1に挿入する。そして、封口板2と角形外装体1を溶接し、角形外装体1の開口を封口板2により封口する。その後、封口板2に設けられた電解液注液孔から電池ケース80内に非水電解液を注液し、電解液注液孔を封止栓16により封止する。これにより、非水電解質二次電池20となる。非水電解質二次電池20の電池容量は8.4Ahである。
【0036】
[偏平状の巻回電極体における各領域]
図6に示すように、偏平状の巻回電極体3は、巻回軸が延びる方向の中央部に正極活物質合材層40bと負極活物質合材層50bがセパレータを介して積層された発電部3aを有する。発電部3aは、平坦な外面を有する平坦部3bと、封口板2側に位置する湾曲した外面を有する第1湾曲部3cと、角形外装体1の底部1a側に位置する湾曲した外面を有する第2湾曲部3dを有する。第1湾曲部3cと平坦部3bの境界を第1境界部25とする。第1境界部25は、巻回軸が延びる方向に延びる。第2湾曲部3dと平坦部3bの境界を第2境界部26とする。第2境界部26は、巻回軸が延びる方向に延びる。平坦部3bの高さ(角形外装体1の底部1aに対して垂直な方向の長さ)をH1(cm)とする。平坦部3bの幅(角形外装体1の第2側壁1cに対して垂直な方向の長さ)をW1(cm)とする。
【0037】
[平坦部収納空間の体積]
図7(a)及び図7(b)に示すように、電池ケース80の内部に形成される空間において、第1側壁1bに対して垂直な方向から見たとき、巻回電極体3の平坦部3bと重なる空間を平坦部収納空間S1とする。そして、平坦部収納空間S1の体積をV1(cm)とする。
第1側壁1bに対して垂直な方向において、一方の第1側壁1bと他方の第1側壁1bの間の距離をT1(cm)とする。
平坦部収納空間S1の体積V1(cm)は、H1(cm)×W1(cm)×T1(cm)により算出される。
【0038】
[平坦部収納空間における空隙の総体積]
平坦部収納空間S1における空隙の総体積をV2(cm)とする。平坦部収納空間S1における空隙の総体積V2(cm)は、平坦部3bの内部の空隙、平坦部収納空間S1における角形外装体1の第1側壁1bと樹脂シート14の間の隙間、及び平坦部収納空間S1における樹脂シート14と平坦部3bの間の隙間の合計である。なお、樹脂シート
14は必須の構成ではなく、樹脂シート14を用いなくてもよい。また、多孔質の樹脂シート14を用いる場合等、樹脂シート14内に空隙が存在する場合は、樹脂シート14内の空隙も、平坦部収納空間S1における空隙の総体積をV2(cm)に加える。
平坦部収納空間S1における空隙は、非水電解液が占める部分の体積、ガスが占める部分の体積、及び真空部分の体積を足し合わせた体積である。
【0039】
平坦部収納空間S1における空隙の総体積V2(cm)は、次のように決定できる。
まず、偏平状の巻回電極体3を構成する正極板40、負極板50、セパレータのそれぞれについて、各部材の密度、体積、質量から、偏平状の巻回電極体3の平坦部3b内部の空隙の総体積V2x(cm)を算出する。なお、偏平状の巻回電極体3が巻き留めテープ等の部材を含む場合は、それらも考慮する。
次に、平坦部収納空間S1の体積V1(cm)から、平坦部3bの体積(内部の空隙を考慮しない見かけの体積)及び、平坦部収納空間S1内に配置された樹脂シート14の体積を引くことにより、平坦部収納空間S1における角形外装体1と樹脂シート14の間の隙間と、平坦部収納空間S1における樹脂シート14と平坦部3bの間の隙間の合計の総体積V2y(cm)を算出する。
そして、V2x(cm)とV2y(cm)を足し合わせて、平坦部収納空間S1における空隙の総体積V2(cm)とする。なお、樹脂シート14が多孔質の場合は、樹脂シート14内の空隙の総体積V2zも平坦部収納空間S1における空隙の総体積V2(cm)に含める。
【0040】
[非水電解質二次電池A]
上述の非水電解質二次電池20の構成を有する非水電解質二次電池であって、以下の構成を有する非水電解質二次電池を非水電解質二次電池Aとした。
平坦部収納空間S1は、T1(cm)=1.7cm、H1(cm)=4cm、W1(cm)=11cmであり、V1(cm)=74.8cmとした。
巻回電極体3の平坦部3bの厚みは、1.5cmとした。
樹脂シート14の厚みは、0.15mmとした。また、樹脂シート14は細孔を有していないものとした。
また、平坦部収納空間S1における空隙の総体積V2(cm)は、31.0cmとした。
したがって、V2(cm)/V1(cm)=0.41である。
【0041】
[非水電解質二次電池B]
上述の非水電解質二次電池20の構成を有する非水電解質二次電池であって、以下の構成を有する非水電解質二次電池を非水電解質二次電池Bとした。
平坦部収納空間S1は、T1(cm)=1.7cm、H1(cm)=3.7cm、W1(cm)=10.9cmであり、V1(cm)=68.6cmとした。
巻回電極体3の平坦部3bの厚みは、1.5cmとした。
樹脂シート14の厚みは、0.15mmとした。また、樹脂シート14は細孔を有していないものとした。
また、平坦部収納空間S1における空隙の総体積V2(cm)は、26.2cmとした。
したがって、V2(cm)/V1(cm)=0.38である。
【0042】
非水電解質二次電池A及び非水電解質二次電池Bを用いて反力測定用のサンプル1~6を作製し、以下の試験を行った。なお、非水電解質二次電池A及び非水電解質二次電池Bのサイズは、幅(第2側壁1cに対して垂直な方向の長さ)14.8cm、高さ(底部1aに対して垂直な方向の長さ)6.5cm、厚さ(第1側壁1bに対して垂直な方向の長さ)1.7cmとした。
【0043】
まず、図8を用いて、サンプル1~6の共通の構成を説明する。図8は、サンプル1~6を側面側から見た図である。
第1押圧治具160は、厚さ1.3cmのステンレス板からなる。第2押圧治具161は、厚さ1.3cmのステンレス板からなる。非水電解質二次電池20の一方の第1側壁1bと、第1押圧治具160が接するように、第1押圧治具160を配置する。非水電解質二次電池20の他方の第1側壁1bと、第2押圧治具161が接するように、第2押圧治具161を配置する。そして、第2押圧治具161において非水電解質二次電池20が配置された面とは反対の面側に、厚さ1.5cmのステンレス製の中間プレート171及びロードセル172(ミネベア株式会社製 型式CMP1-2T)を介して、厚さ1.9cmのステンレス製のベースプレート170を配置する。そして、第1押圧治具160、第2押圧治具161及びベースプレート170のそれぞれの4隅に設けられた貫通孔にボルト173を挿入し、ナット174により各部材を一纏まりに固定する。
【0044】
以下のようにサンプル1~6を作製した。
[サンプル1]
非水電解質二次電池20として非水電解質二次電池Aを用いた。また、第1押圧治具160と第2押圧治具161の間隔(拘束厚み)を17.7cmに固定した。
[サンプル2]
非水電解質二次電池20として非水電解質二次電池Aを用いた。また、第1押圧治具160と第2押圧治具161の間隔(拘束厚み)を17.5cmに固定した。
[サンプル3]
非水電解質二次電池20として非水電解質二次電池Aを用いた。また、第1押圧治具160と第2押圧治具161の間隔(拘束厚み)を17.3cmに固定した。
[サンプル4]
非水電解質二次電池20として非水電解質二次電池Bを用いた。また、第1押圧治具160と第2押圧治具161の間隔(拘束厚み)を17.7cmに固定した。
[サンプル5]
非水電解質二次電池20として非水電解質二次電池Bを用いた。また、第1押圧治具160と第2押圧治具161の間隔(拘束厚み)を17.5cmに固定した。
[サンプル6]
非水電解質二次電池20として非水電解質二次電池Bを用いた。また、第1押圧治具160と第2押圧治具161の間隔(拘束厚み)を17.3cmに固定した。
【0045】
サンプル1~6について、非水電解質二次電池の充電深度(SOC)が0%の場合、及び非水電解質二次電池の充電深度(SOC)が100%の場合について、ロードセル172に加わる荷重を測定し、各サンプルの反力とした。各サンプルの反力を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、同じ拘束厚みのサンプルを比較した場合、V2/V1が0.41である非水電解質二次電池Aを用いたサンプル1~3は、V2/V1が0.38である非水電解質二次電池Bを用いたサンプル4~6よりも、SOCが100%での反力とSOCが0%での反力の差が小さくなっている。
【0048】
このように、V2/V1を0.40~0.42とすることにより、充電状態の変化による反力の変化を小さく抑えることができる。なお、V2/V1を0.42以下とすることにより、体積出力密度の高い非水電解質二次電池となる。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、非水電解質二次電池Aを用いたサンプルにおける最大の反力と最小の反力の差は2368Nであり、非水電解質二次電池Bを用いたサンプルにおける最大の反力と最小の反力の差である3045Nよりも小さくなっている。このように、V2/V1が0.40~0.42である場合、非水電解質二次電池の拘束状態及び充電状態の変化による反力の変化をより小さくすることができる。
【0051】
なお、非水電解質二次電池を、非水電解質二次電池の厚みで拘束した状態において、SOCが100%での反力(N)とSOCが0%での反力(N)との差が、1200N以下であることが好ましく、800N~1200Nであることが好ましい。
【0052】
なお、偏平状の巻回電極体3の平坦部3bの内部の空隙の総体積は、正極活物質合材層内の空隙量、負極活物質合材層内の空隙量、セパレータ内の空隙量等を変化させることにより制御できる。
【0053】
正極活物質合材層の空隙率は35%~39%であることが好ましい。正極活物質がリチウム遷移金属複合酸化物である場合、正極芯体の一方の面に形成される正極活物質合材層
の形成量は、120g/m~180g/mであることが好ましい。また、正極活物質合材層の充填密度は2.5g/cm~2.7g/cmであることが好ましい。正極芯体の両面に形成された正極活物質合材層の合計の厚みの正極板の厚みに対する割合は、75%~85%であることが好ましい。正極板の厚みは、66μm~76μmであることが好ましく、68μm~74μmであることがより好ましく、70μm~72μmであることがさらに好ましい。偏平状の巻回電極体3における正極板の積層数は、72層~90層であることが好ましく、74層~88層であることがより好ましく、76層~86層であることがさらに好ましい。
【0054】
負極活物質合材層の空隙率は50%~54%であることが好ましい。負極活物質が炭素材料である場合、負極芯体の一方の面に形成される負極活物質合材層の形成量は、60g/m~100g/mであることが好ましい。また、負極活物質合材層の充填密度は1.0g/cm~1.2g/cmであることが好ましい。負極芯体の両面に形成された負極活物質合材層の合計の厚みの負極板の厚みに対する割合は、85%~95%であることが好ましい。負極板の厚みは、71μm~81μmであることが好ましく、73μm~79μmであることがより好ましく、75μm~77μmであることがさらに好ましい。
【0055】
セパレータの厚みは14μm~26μmであることが好ましく、15μm~25μmであることがより好ましく、16μm~24μmであることがさらに好ましい。
【0056】
角形外装体1の一対の第1側壁1b同士の間の距離に対する、平坦部3bの厚みの割合は、92%~96%であることが好ましい。
【0057】
[その他]
正極板、負極板、非水電解質、セパレータ等の各材料は、リチウムイオン二次電池に使用される公知のものを使用することができる。
【0058】
正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。また、上記のリチウム遷移金属複合酸化物にAl、Ti、Zr、W、Nb、B、Mg又はMo等を添加したものも使用し得る。
【0059】
負極活物質としてはリチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素材料を用いることが好ましい。リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素材料としては、黒鉛、難黒鉛性炭素、易黒鉛性炭素、繊維状炭素、コークス及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの内、特に黒鉛が好ましい。さらに、非炭素系材料としては、シリコン、スズ、及びそれらを主とする合金や酸化物などが挙げられる。
【0060】
非水電解質の非水溶媒(有機溶媒)としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を使用することができ、これらの溶媒の2種類以上を混合して用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを用いることができる。特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を用いることが好ましい。また、ビニレンカーボネート(VC)などの不飽和環状炭酸エステルを非水電解質に添加することもできる。
【0061】
非水電解質の電解質塩としては、従来のリチウムイオン二次電池において電解質塩とし
て一般に使用されているものを用いることができる。例えば、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiAsF、LiClO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiB(C、LiB(C)F、LiP(C、LiP(C、LiP(C)F等及びそれらの混合物が用いられる。これらの中でも、LiPFが特に好ましい。また、前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.5~2.0mol/Lとするのが好ましい。
【0062】
セパレータとしては、樹脂製の多孔膜を用いることが好ましい。例えば、ポリオレフィン製の多孔膜を用いることが好ましい。ポリオレフィンとしては特に、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などが好ましい。また、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の3層構造(PP/PE/PP、あるいはPE/PP/PE)を有するセパレータを用いることもできる。
【0063】
正極活物質合材層の充填密度は、1.5g/cm~4.0g/cmであることが好ましく、2.0g/cm~3.0g/cmであることがより好ましい。負極活物質合材層の充填密度は、0.5g/cm~2.5g/cmであることが好ましく、0.8g/cm~1.8g/cmであることがより好ましい。
【0064】
正極活物質合材層表面、負極活物質合材層表面、及びセパレータの表面の少なくとも一つに、セラミック粒子とバインダーからなる多孔質の保護層を設けてもよい。
【0065】
電極体は巻回電極体に限定されない。複数の正極板と複数の負極板を含む積層型電極体であってもよい。但し、巻回された正極芯体露出部と、巻回された負極芯体露出部を有する巻回電極体であると、より出力特性に優れた非水電解質二次電池となる。
【符号の説明】
【0066】
20・・・非水電解質二次電池
80・・・電池ケース
1・・・角形外装体
1a・・・底部
1b・・・第1側壁
1c・・・第2側壁
2・・・封口板
3・・・巻回電極体
3a・・・発電部
3b・・・平坦部
3c・・・第1湾曲部
3d・・・第2湾曲部
25・・・第1境界部
26・・・第2境界部
40・・・正極板
40a・・・正極芯体
40b・・・正極活物質合材層
4・・・正極芯体露出部
50・・・負極板
50a・・・負極芯体
50b・・・負極活物質合材層
5・・・負極芯体露出部
6・・・正極集電体
6a・・・接続部
6b・・・リード部
6c・・・ベース部
7・・・正極端子
8・・・負極集電体
8a・・・接続部
8b・・・リード部
8c・・・ベース部
9・・・負極端子
10・・・外部側絶縁部材
11・・・内部側絶縁部材
12・・・外部側絶縁部材
13・・・内部側絶縁部材
14・・・樹脂シート
15・・・ガス排出弁
16・・・封止栓
100・・・組電池
101・・・エンドプレート
102・・・バインドバー
103・・・ボルト
104・・・バスバー
60・・・スペーサ

160・・・第1押圧治具
161・・・第2押圧治具
170・・・ベースプレート
171・・・中間プレート
172・・・ロードセル
173・・・ボルト
174・・・ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8