IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7087500静電潜像現像用トナー及び静電潜像現像用二成分現像剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】静電潜像現像用トナー及び静電潜像現像用二成分現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20220614BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20220614BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G03G9/097 375
G03G9/087 331
G03G9/113 351
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018050366
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019164177
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 政治
(72)【発明者】
【氏名】須釜 宏二
(72)【発明者】
【氏名】大浦 麗仁
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 育子
【審査官】立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-003367(JP,A)
【文献】特開2017-068006(JP,A)
【文献】特開2017-194606(JP,A)
【文献】特開2017-167173(JP,A)
【文献】特開2017-032598(JP,A)
【文献】特開2016-183994(JP,A)
【文献】特開2016-133618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子の体積基準におけるメジアン径が、3.0~5.0μmの範囲内であり、
前記外添剤として、少なくとも第1の球形シリカ粒子と、第2の球形シリカ粒子と、二酸化チタン粒子を含有し、
前記第1の球形シリカ粒子の個数基準における平均一次粒子径が、20~55nmの範囲内であり、
前記第2の球形シリカ粒子の個数基準における平均一次粒子径が、70~160nmの範囲内であり、
前記第1の球形シリカ粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.3~2.5質量%の範囲内であり、
前記第2の球形シリカ粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.3~0.7質量%の範囲内であり、
前記二酸化チタン粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.01~0.50質量%の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【請求項2】
前記二酸化チタン粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.10~0.40質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項3】
前記トナー母体粒子の結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項4】
前記トナー母体粒子の結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナーと、キャリア粒子とを含有する静電潜像現像用二成分現像剤。
【請求項6】
前記キャリア粒子が表面に樹脂被覆層を有しており、
前記樹脂被覆層が、脂環式(メタ)アクリレートモノマーを用いて形成された共重合体を含有することを特徴とする請求項に記載の静電潜像現像用二成分現像剤。
【請求項7】
前記共重合体を構成する脂環式(メタ)アクリレートモノマーの共重合比率(質量比)が、50%以上であることを特徴とする請求項に記載の静電潜像現像用二成分現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用トナー及び静電潜像現像用二成分現像剤に関する。より詳細には、本発明は、低温低湿環境下であっても帯電立ち上がり性と帯電性能の安定性に優れ、低温低湿環境下で連続印字した際にも高画質な画像を形成することができる、静電潜像現像用トナー及び静電潜像現像用二成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速化及び省エネルギー化の観点から、以前よりも少ないエネルギーでトナー画像を定着するため、低温定着性に優れる静電潜像現像用トナー(以下、単にトナーともいう。)が求められている。トナーの定着温度を低くするためには、トナーを構成する結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を低くすることが必要である。このようなトナーの低温定着化を図るために、ポリエステル樹脂を結着樹脂の主成分として含むトナーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。ポリエステル樹脂は、軟化点が比較的低いという特性を有することから、トナーの低温定着性を確保する点で有利である。また、トナー粒子を小粒径化することで、少ないトナー量で紙を隠ぺいすることが可能となり、画像濃度を低下させず定着に必要なエネルギーを低減することが可能である。
【0003】
ところで、近年、グラフィックなどの出力需要が高まり、高画像濃度印字の出力が増えてきている。上述したような小径化したトナー粒子を含有するトナーは、微細な潜像の再現性が良好であり、省エネルギー化と同時に高画質化の両立が可能となるため、高画像濃度印字に好適に用いられる。
しかしながら、小粒径化されたトナー粒子は、流動性が悪化する問題がある。特に低温低湿環境においては、現像剤の流動性の低下が顕著となる。その結果として、トナーの帯電立ち上がり性が低く、トナー飛散を起こしたり、連続印字すると画質が低下するという問題があった。
【0004】
また、帯電立ち上がり性の向上のために、トナー粒子の外添剤として二酸化チタン粒子を添加することが知られている。しかしながら、二酸化チタン粒子の比重が大きいため、トナー粒子表面から二酸化チタン粒子が脱離しやすく、脱離した二酸化チタン粒子がキャリア粒子表面に付着することで、キャリア粒子の帯電性能が低下するという問題がある。また、このトナーを長時間の連続印字をする際に使用すると、脱離した二酸化チタン粒子によってトナーの帯電性能が不安定化し、高画質な画像を形成できなくなるといった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-57475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温低湿環境下であっても帯電立ち上がり性と帯電性能の安定性に優れ、低温低湿環境下で連続印字した際にも高画質な画像を形成することができる、静電潜像現像用トナー及び静電潜像現像用二成分現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、トナー粒子の外添剤として、小径の球形シリカ粒子と極少量の二酸化チタン粒子とを用いることによって、低温低湿環境下であっても帯電立ち上がり性と帯電性能の安定性に優れ、低温低湿環境下で連続印字した際にも高画質な画像を形成することができる、静電潜像現像用トナーを提供することを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子の体積基準におけるメジアン径が、3.0~5.0μmの範囲内であり、
前記外添剤として、少なくとも第1の球形シリカ粒子と、第2の球形シリカ粒子と、二酸化チタン粒子を含有し、
前記第1の球形シリカ粒子の個数基準における平均一次粒子径が、20~55nmの範囲内であり、
前記第2の球形シリカ粒子の個数基準における平均一次粒子径が、70~160nmの範囲内であり、
前記第1の球形シリカ粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.3~2.5質量%の範囲内であり、
前記第2の球形シリカ粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.3~0.7質量%の範囲内であり、
前記二酸化チタン粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.01~0.50質量%の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【0009】
2.前記二酸化チタン粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.10~0.40質量%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の静電潜像現像用トナー。
【0012】
.前記トナー母体粒子の結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電潜像現像用トナー。
4.前記トナー母体粒子の結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
【0013】
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナーと、キャリア粒子とを含有する静電潜像現像用二成分現像剤。
【0014】
.前記キャリア粒子が表面に樹脂被覆層を有しており、
前記樹脂被覆層が、脂環式(メタ)アクリレートモノマーを用いて形成された共重合体を含有することを特徴とする第項に記載の静電潜像現像用二成分現像剤。
【0015】
.前記共重合体を構成する脂環式(メタ)アクリレートモノマーの共重合比率(質量比)が、50%以上であることを特徴とする第項に記載の静電潜像現像用二成分現像剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記手段により、本発明は、低温低湿環境下であっても帯電立ち上がり性と帯電性能の安定性に優れ、低温低湿環境下で連続印字した際にも高画質な画像を形成することができる、静電潜像現像用トナー及び静電潜像現像用二成分現像剤を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0017】
本発明に係るトナー粒子は、外添剤として、二酸化チタン粒子と、小径の球形シリカ粒子を含有することで、トナー表面に付着した球形シリカ粒子数が増えることにより、キャリア粒子との接触点が増え、粒子帯電が素早く進んで帯電立ち上がり性が向上すると推察される。
また、本発明に係るトナー粒子は二酸化チタン粒子の含有量が非常に少ないため、キャリア粒子表面に付着する二酸化チタン粒子も少ないため、本発明のトナーは、安定した帯電性を維持することができると推察される。
よって、本発明のトナーは、低温低湿環境下で連続印字した際にも高画質な画像を形成することができると推察される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の静電潜像現像用トナーは、トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子の体積基準におけるメジアン径が、3.0~5.0μmの範囲内であり、前記外添剤として、少なくとも第1の球形シリカ粒子と、第2の球形シリカ粒子と、二酸化チタン粒子を含有し、前記第1の球形シリカ粒子の個数基準における平均一次粒子径が、20~55nmの範囲内であり、前記第2の球形シリカ粒子の個数基準における平均一次粒子径が、70~160nmの範囲内であり、前記第1の球形シリカ粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.3~2.5質量%の範囲内であり、前記第2の球形シリカ粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.3~0.7質量%の範囲内であり、前記二酸化チタン粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.01~0.50質量%の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0019】
本発明の実施態様としては、本発明の効果をより有効に得る観点から、前記二酸化チタン粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.10~0.40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0022】
本発明の実施態様としては、トナーの低温定着性を向上させる観点から、前記トナー母体粒子の結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
【0023】
本発明の静電潜像現像用二成分現像剤は、本発明の静電潜像現像用トナーと、キャリア粒子とを含有することを特徴とする。
【0024】
本発明の静電潜像現像用二成分現像剤の実施態様としては、前記キャリア粒子が表面に樹脂被覆層を有しており、前記樹脂被覆層が、脂環式(メタ)アクリレートモノマーを用いて形成された共重合体を含有することが好ましい。脂環式(メタ)アクリレートモノマーは吸湿性が低いため、環境差による帯電量変動を抑制できる。また、当該帯電量変動を抑制するという効果を有効に得る観点から、前記共重合体を構成する脂環式(メタ)アクリレートモノマーの共重合比率(質量比)が、50%以上であることが好ましい。
【0025】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0026】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の静電潜像現像用トナーは、トナー母体粒子表面に外添剤を有するトナー粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、前記外添剤として、少なくとも第1の球形シリカ粒子と二酸化チタン粒子を含有し、前記第1の球形シリカ粒子の個数基準における平均一次粒子径が、20~55nmの範囲内であり、前記二酸化チタン粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.01~0.50質量%の範囲内であることを特徴とする。
本発明のトナーは、低温低湿環境下であっても帯電立ち上がり性と帯電性能の安定性に優れ、低温低湿環境下で連続印字した際にも高画質な画像を形成することができる。
本発明に係るトナー粒子は、外添剤として、二酸化チタン粒子と、小径の球形シリカ粒子を含有することで、トナー粒子の流動性が向上したため、キャリア粒子との接触点が増え、粒子帯電が素早く進んで帯電立ち上がり性が向上すると推察される。
また、本発明に係るトナー粒子は二酸化チタン粒子の含有量が非常に少ないため、キャリア粒子表面に付着する二酸化チタン粒子も少ないため、本発明のトナーは、安定した帯電性を維持することができると推察される。
よって、本発明のトナーは、低温低湿環境下で連続印字した際にも高画質な画像を形成することができると推察される。
【0027】
<トナー母体粒子>
本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂を含有することが好ましい。
また、本発明に係るトナー母体粒子は、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)、着色剤及び荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
【0028】
なお、本発明において、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子といい、トナー粒子の集合体をトナーという。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。
【0029】
<トナー母体粒子の体積基準のメジアン径>
本発明に係るトナー母体粒子の体積基準のメジアン径は3.0~5.0μmの範囲内であることが好ましく、3.5~4.5μmの範囲内であることがより好ましい。
従来のトナーにおいて、省エネルギー化及び高画質化の観点から、トナー粒子を小径化することが知られている。しかし、トナー粒子を小径化すると流動性が低下するため、キャリア粒子とトナー粒子の接触確率が低下し、結果として、トナー粒子が帯電しにくくなり、帯電立ち上がり性が低下する。本発明のトナーは、トナー粒子とキャリアの接触点を増加させることで、トナー粒子を上述した所定の範囲内となるように小径化した場合でも、帯電立ち上がり性に優れている。したがって、本発明のトナーは、トナー粒子を上述した所定の範囲内となるように小径化することで、省エネルギー化及び高画質化という効果を得つつ、低温低湿環境下で連続印字した際にも高画質な画像を形成することができるという効果も得ることができる。
【0030】
トナー母体粒子の体積基準のメジアン径は、後述のトナー母体粒子の作製時の凝集・融着工程における非晶性ポリエステル樹脂を投入するタイミングやその添加量、凝集剤の濃度や溶剤の添加量、又は融着時間、さらには樹脂成分の組成等によって制御することができる。
【0031】
(体積基準のメジアン径の測定方法)
本発明に係るトナー母体粒子の体積基準のメジアン径は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出される。
具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー母体粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波で1分間分散させ、トナー母体粒子の分散液を調製し、このトナー母体粒子の分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5~10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmにし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径を体積基準のメジアン径とする。
【0032】
<結着樹脂>
本発明に係るトナー粒子には、結着樹脂として、トナーの低温定着性を向上させる観点から、非晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。また、トナー粒子には、結着樹脂として、さらに、非晶性ビニル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
【0033】
(非晶性ポリエステル樹脂)
本発明に係る非晶性ポリエステル樹脂は、優れた定着性を得る観点から、結着樹脂中に、非晶性ポリエステル樹脂を50~96質量%の範囲内であることが好ましく、60~90質量%の範囲内で含有することがより好ましい。なお、ここでいう結着樹脂はトナー樹脂全量である。
本発明に係る非晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂であって、示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。また、非晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体は、結晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体とは異なるため、例えば、NMR等の分析によって結晶性ポリエステル樹脂と区別することができる。
【0034】
なお、上記非晶性ポリエステル樹脂のTgは、35~80℃の範囲内であることが好ましく、特に45~65℃の範囲内であることが好ましい。
【0035】
ガラス転移温度は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418-82に規定された方法(DSC法)にしたがって測定することができる。測定には、DSC-7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラ(パーキンエルマー社製)などを用いることができる。
【0036】
非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。具体的な非晶性ポリエステル樹脂については特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性ポリエステル樹脂が用いられ得る。
【0037】
非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法は、特に限られるものではなく、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
製造の際に使用可能な触媒、重縮合(エステル化)の温度、重縮合(エステル化)の時間は特に限定されるものではなく、上記結晶性ポリエステル樹脂と同様である。
【0038】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、5000~100000の範囲内であることが好ましく、5000~50000の範囲内であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5000以上であると、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100000以下であると、低温定着性をより向上させることができる。上記重量平均分子量(Mw)は、上記した方法により測定することができる。
【0039】
非晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの例としては、特に制限されないが、以下が挙げられる。
【0040】
《多価カルボン酸》
テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いることができる。これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、またより良好な定着性を確保するために架橋構造又は分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
【0041】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
《多価アルコール》
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。またより良好な定着性を確保するため、架橋構造又は分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0043】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシ基、及び/又はカルボキシ基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整しても良い。
モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等を挙げることができ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどを挙げることができる。
【0044】
(非晶性ビニル樹脂)
本発明に係るトナー粒子の結着樹脂には、非晶性ビニル樹脂を0.1~20質量%の範囲内で含有することが好ましく、0.2~10質量%の範囲内で含有することがより好ましく、0.3~5質量%の範囲内で含有することが特に好ましい。
非晶性ビニル樹脂を0.1~20質量%の範囲内で含有すると、トナー母体粒子の表面が適度な硬さとなるため、後述する第1の球形シリカ粒子のトナー母体粒子への埋没が生じにくく、連続印字時において帯電立ち上がり性が向上し、形成される画質が高いものとなる。また、非晶性ビニル樹脂が20質量%以下であると、良好な低温定着性が得られる。
なお、非晶性ビニル樹脂は、非晶性ビニル樹脂そのものが結着樹脂に含まれていてもよく、また、非晶性ビニル樹脂成分がハイブリッド化した複合樹脂として含まれていても良い。
【0045】
本発明に係るビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂の中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂としてのスチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂(以下、「スチレン・(メタ)アクリル樹脂」とも称する)について説明する。
【0046】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。
また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステルを含むものである。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」とを総称したものである。
【0047】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の一例を以下に示す。
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0048】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0049】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、40~90質量%の範囲内であることが好ましい。また、当該樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、10~60質量%の範囲内であることが好ましい。さらに、スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に加え、以下の単量体化合物を含んでいてもよい。
【0050】
このような単量体化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。これら単量体化合物は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0051】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂中の上記単量体化合物に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~100000の範囲内であることが好ましい。
【0052】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。また、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばn-オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0053】
(結晶性ポリエステル樹脂)
本発明に係る結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含有していることが、トナー母体粒子の柔軟性が向上し、シリカ粒子を好適に固着しやすくなるため好ましく、また、低温定着性の観点からも好ましい。
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0054】
結晶性樹脂の融点Tmcは、十分な高温保存性を得る観点から60℃以上であることが好ましく、十分な低温定着性を得る観点から85℃以下であることが好ましい。
【0055】
結晶性樹脂の融点Tmcは、DSCにより測定することができる。具体的には、結晶性樹脂の試料0.5mgをアルミニウム製パン「KITNO.B0143013」に封入し、熱分析装置「Diamond DSC」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却及び加熱の順に温度を変動させる。1回目と2回目の加熱時には、10℃/分の昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/分の降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を結晶性樹脂の融点(Tmc)として測定する。
【0056】
結着樹脂中の結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、十分な低温定着性を得る観点から、5~20質量%の範囲内であることが好ましく、7~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
当該含有量が5質量%以上である場合、十分な可塑効果を得られ、低温定着性に優れる。当該含有量が20質量%以下である場合では、トナーとしての熱的安定性や物理的なストレスに対する安定性が十分となる。
【0057】
また、結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000~10000の範囲内であることが好ましく、3000~7000の範囲内であることがより好ましい。これらの範囲内とすることで、定着画像の強度が不足することがなく、現像液撹拌中に結晶性樹脂が粉砕されたり、過度な可塑効果によりトナーのガラス転移温度Tgが低下して、トナーの熱的安定性が低下することもない。また、シャープメルト性が発現し、低温定着が可能となる。
上記Mnは、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によって測定した分子量分布から求めることができる。
【0058】
試料を濃度0.1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、40℃まで加温して溶解させた後、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して、試料液を調製する。GPC装置HLC-8220GPC(東ソー社製)及びカラム「TSKgel SuperHZ3000」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてTHFを流速0.6mL/分で流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液100μLをGPC装置内に注入し、示差屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出する。そして、単分散のポリスチレン標準粒子の10点を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。このとき、データ解析において、上記フィルター起因のピークが確認された場合には、当該ピーク前の領域をベースラインとして設定する。
【0059】
本発明に係る結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。結晶性ポリエステル樹脂については本技術分野における従来公知の結晶性ポリエステル樹脂が用いられうる。結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの例としては、以下が挙げられる。
【0060】
《多価カルボン酸》
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸、などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるがこの限りではない。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
結晶性ポリエステル樹脂における上記ジカルボン酸由来の構成単位に対する脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の含有量は、結晶性ポリエステルの結晶性を十分に確保する観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0062】
《多価アルコール》
結晶性ポリエステルの合成に好適に用いられる脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
結晶性ポリエステル樹脂におけるジオール由来の構成単位に対する脂肪族ジオール由来の構成単位の含有量は、トナーの低温定着性及び最終的に形成される画像の光沢性を高める観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0064】
結晶性ポリエステル樹脂のモノマーにおける上記ジオールと上記ジカルボン酸との割合は、ジオールのヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]で2.0/1.0~1.0/2.0の範囲内であることが好ましく、1.5/1.0~1.0/1.5の範囲内であることがより好ましく、1.3/1.0~1.0/1.3の範囲内であることが特に好ましい。
【0065】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーは、直鎖脂肪族モノマーを50質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。芳香族モノマーを用いた場合には、結晶性ポリエステル樹脂の融点が高くなる傾向が高く、分岐型の脂肪族モノマーを用いた場合には、結晶性が低くなる傾向が高い。したがって、上記モノマーに直鎖脂肪族モノマーを用いることが好ましい。
トナー中において結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を維持する観点から、直鎖脂肪族モノマーを50質量%以上使用することが好ましく、80質量%以上使用することがより好ましい。
【0066】
結晶性ポリエステル樹脂は、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより合成することができる。
【0067】
結晶性ポリエステル樹脂の合成に使用可能な触媒は、1種でもそれ以上でもよく、その例には、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及び、アミン化合物;が含まれる。
【0068】
具体的には、スズ化合物の例には、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、及びこれらの塩が含まれる。チタン化合物の例には、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;及び、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートが含まれる。ゲルマニウム化合物の例には、二酸化ゲルマニウムが含まれ、アルミニウム化合物の例には、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、及び、トリブチルアルミネート、が含まれる。
【0069】
結晶性ポリエステル樹脂の重合温度は、150~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0070】
<離型剤>
本発明に係るトナー粒子には、離型剤として、公知の種々のワックスを含有することができる。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。また、これらの離型剤は、1種単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1~30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2~20質量部の範囲内である。
【0071】
<着色剤>
本発明に係るトナー粒子には、着色剤として、公知の着色剤を含有することができる。
具体的には、イエロートナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などが挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
マゼンタトナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などが挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シアントナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー15:3などが挙げられる。
ブラックトナーに含有される着色剤としては、例えばカーボンブラック、磁性体、チタンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。
磁性体としては、例えば鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これら強磁性金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金などが挙げられる。熱処理することにより強磁性を示す合金としては、例えばマンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-スズなどのホイスラー合金、二酸化クロムなどが挙げられる。
【0072】
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1~10質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2~9質量部の範囲内である。
【0073】
<荷電制御剤>
本発明に係るトナー粒子には、公知の荷電制御剤を含有することができる。
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤及び負帯電制御剤を用いることができる。その例には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、及び、サリチル酸金属塩、が含まれる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.01~30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1~10質量部の範囲内である。
【0074】
<外添剤>
本発明に係るトナー粒子は、外添剤として、少なくとも第1の球形シリカ粒子と二酸化チタン粒子を含有し、前記第1の球形シリカ粒子の個数基準における平均一次粒子径が、20~55nmの範囲内であり、前記二酸化チタン粒子の前記トナー母体粒子全量に対する含有量が、0.01~0.50質量%の範囲内であることを特徴とする。
【0075】
また、本発明に係るトナー粒子は、外添剤として、さらに、第2の球形シリカ粒子を含有することが好ましい。前記第2の球形シリカ粒子の個数基準における平均一次粒子径は、70~160nmの範囲内である。当該第2のシリカ粒子がスペーサー効果を有することによって、現像器内でのストレスを受けても第1の球形シリカのトナー粒子内へ埋没しにくくなり、より流動性を向上させることで、より帯電立ち上がり性を向上させ、長期にわたり高画質な画像を出力することができると推察される。
【0076】
(球形シリカ粒子)
本発明に係る第1の球形シリカ粒子及び第2の球形シリカ粒子の「球形」とは、球形化度が0.6以上であることをいう。より好ましくは球形化度が0.8以上である。
本発明において、球形化度とは、Wadellの真の球形化度である。すなわち、球形化度は、下記式(A)で表されるものである。
式(A)球形化度=(実際の粒子と同じ体積を有する球の表面積)/(実際の粒子の表面積)
ここで、「実際の粒子と同じ体積を有する球の表面積」は、下記方法から求めた個数平均粒径から算術計算により求めることができる。また、「実際の粒子の表面積」は、「粉体比表面積測定装置SS-100」(島津製作所製)を用いて求めたBET比表面積で代用することができる。
【0077】
(シリカ粒子の個数平均粒径)
走査型電子顕微鏡(SEM)「JSM-7401F」(日本電子社製)を用いて、3万倍に拡大したトナーのSEM写真を撮影し、当該SEM写真を観察してシリカ粒子の一次粒子の粒径(フェレー径)を測定し、その合計値を個数で割って平均粒径を求める。粒径の測定は、SEM画像において粒子の総数が100~200個程度となるような領域を選択して行う。
【0078】
第1の球形シリカ粒子及び第2の球形シリカ粒子は、ゾル・ゲル法によって製造された球形シリカ粒子であることが好ましい。ゾル・ゲル法で製造された球形シリカ粒子は、一般的な製造方法であるヒュームドシリカに比べて、粒度が揃う(粒度分布が狭い、すなわち単分散である)ため好ましい。
第1の球形シリカ粒子及び第2の球形シリカ粒子は、粒度分布が揃っているのが好ましい。粒度分布が揃っているとトナー母体粒子表面に均一に付着するため、トナー流動性や帯電立ち上がり性が安定する。
【0079】
(球形シリカ粒子の個数平均粒径の標準偏差>
球形シリカ粒子の粒度分布における分散度は、凝集体を含めた個数平均粒径に対する標準偏差で議論できる。ここで、第1の球形シリカ粒子の個数平均粒径の標準偏差が「個数平均粒径×0.22以下」であるものが好ましく、「個数平均粒径×0.15以下」であるものがさらに好ましい。同様に、第2の球形シリカ粒子の個数平均粒径の標準偏差が「個数平均粒径×0.22以下」であるものが好ましく、「個数平均粒径×0.15以下」であるものがさらに好ましい。
【0080】
前記第1の球形シリカ粒子の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して、0.3~2.5質量部の範囲内であることが好ましく、0.5~2.3質量部の範囲内がより好ましい。添加量が0.3質量部以上であれば、トナー粒子とボトル部材との付着性が低下しボトル排出性が向上する。添加量が2.5質量部以下であれば、トナー粒子から球形シリカ粒子が脱離することを抑制でき、高画像濃度での連続印字においても帯電量が安定し、高画質な画像を形成することができる。
また、前記第2の球形シリカ粒子の添加量はトナー母体粒子100質量部に対して、0.3~0.7質量部の範囲内であることが好ましく、0.4~0.5質量部の範囲内がより好ましい。
【0081】
(二酸化チタン粒子)
本発明に係るトナー粒子は、外添剤として、二酸化チタン粒子を含有する。当該二酸化チタン粒子のトナー母体粒子全量に対する含有量は、0.01~0.50質量%の範囲内であり、より好ましくは0.10~0.40質量%の範囲内である。二酸化チタン粒子の含有量が、トナー母体粒子全量に対して0.01~0.50質量%の範囲内であることで、連続印刷時の帯電の安定性と帯電立ち上がりの両立が可能となる。0.01質量%以上とすることで、帯電の立ち上がり性の向上という効果を有効に得られる。また、0.50質量%以下という少量の二酸化チタン粒子しか含有しないので、キャリア粒子へ二酸化チタン粒子が付着することによって起きるキャリア粒子の帯電性能の低下を抑制することができ、結果として、連続印刷する際でも、帯電性能を安定化することができる。
【0082】
(その他の外添剤)
本発明に係る外添剤は、上記第1の球形シリカ粒子、第2の球形シリカ粒子及び二酸化チタン粒子の他に、流動性や帯電性を制御する目的で、従来公知の金属酸化物粒子を使用することができる。例えば、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、及び酸化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独でも又は2種以上を併用してもよい。
【0083】
また、スチレン、メタクリル酸メチルなどの単独重合体やこれらの共重合体等の有機粒子を外添剤として使用してもよい。
【0084】
これらその他の外添剤の添加量は、本発明に係る第1の球形シリカ粒子及び第2の球形シリカ粒子よりも少なくする必要があり、トナー母体粒子全量に対して0.1~2.0質量%の範囲内が好ましく、0.1~1.6質量%の範囲内がより好ましい。
【0085】
(疎水化処理)
本発明に係る外添剤として用いられる金属酸化物粒子は、カップリング剤等の公知の表面処理剤により表面の疎水化処理が施されているものが好ましい。
上記表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0086】
また、表面処理剤として、シリコーンオイルを用いることもできる。シリコーンオイルの具体例としては、例えば、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状化合物や、直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。また、側鎖、片末端、両末端、側鎖片末端、側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルを用いてもよい。該変性基の例としては、アルコキシ基、カルボキシ基、カルビノール基、高級脂肪酸変性、フェノール基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基などが挙げられるが、特に制限されるものではない。また、例えば、アミノ/アルコキシ変性など数種の変性基を有するシリコーンオイルであっても良い。
【0087】
また、ジメチルシリコーンオイルと上記の変性シリコーンオイル、さらには他の表面処理剤とを用いて混合処理又は併用処理してもかまわない。併用する処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物、ロジン酸等を例示することができる。
【0088】
クリーニング性や転写性をさらに向上させるために外添剤として滑剤を使用することも可能である。例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0089】
<トナー母体粒子の形態>
トナー母体粒子は、いわゆる単層構造を有するものであってもよいし、コア・シェル構造(コア粒子の表面にシェル層を形成する樹脂を凝集、融着させた形態)を有するものであってもよく、低温定着性がより良好となる点で、コア・シェル構造を有するものであることが好ましい。
なお、コア・シェル構造は、シェル層がコア粒子を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、例えば、シェル層がコア粒子を完全に被覆せず、所々コア粒子が露出しているものも含む。
また、高温高湿環境下における帯電性を向上させるという観点から、本発明のトナーは、結晶性ポリエステル樹脂がトナー母体粒子表面に露出せず、トナー母体粒子の内部に含有されるとともに、非晶性樹脂がトナー母体粒子表面に露出した形態であると好ましい。このようなトナーのトナー母体粒子の形態は、結晶性ポリエステル樹脂を形成する多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の炭素数によって制御することができる。また、後述するように、乳化凝集法によりトナー母体粒子を製造する際、各樹脂の添加のタイミング等によってもまたトナー母体粒子の形態を制御することができる。
【0090】
上述のトナー母体粒子の形態(コア・シェル構造の断面構造や結晶性ポリエステル樹脂の存在位置)は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することが可能である。
【0091】
<トナー母体粒子の平均円形度>
トナー母体粒子の平均円形度は、0.935~0.995の範囲内であることが好ましく、0.945~0.990の範囲内であることがより好ましく、0.955~0.980の範囲内であることがさらに好ましい。このような範囲の平均円形度であれば、個々のトナー母体粒子が破砕しにくく帯電量が安定し画質が高いものとなる。
なお、平均円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
【0092】
[トナーの製造方法]
本発明に係るトナーの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、乳化重合凝集法や乳化凝集法を好適に採用できる。
本発明に係るトナーの製造方法に好ましく用いられる乳化重合凝集法は、乳化重合法によって製造された結着樹脂の粒子(以下、「結着樹脂粒子」ともいう。)の分散液を、着色剤の粒子(以下、「着色剤粒子」ともいう。)分散液及びワックスなどの離型剤の分散液と混合し、トナー母体粒子が所望の粒径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー母体粒子を製造する方法である。
【0093】
また、本発明に係るトナーの製造方法として好ましく用いられる乳化凝集法は、溶媒に溶解した結着樹脂溶液を貧溶媒に滴下して樹脂粒子分散液とし、この樹脂粒子分散液と着色剤分散液及びワックスなどの離型剤分散液とを混合し、所望のトナー母体粒子の径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー母体粒子を製造する方法である。
【0094】
また、乳化重合凝集法によってはコア・シェル構造を有するトナー母体粒子を得ることもでき、具体的にコア・シェル構造を有するトナー母体粒子は、まず、コア粒子用の結着樹脂粒子と着色剤の粒子を凝集、会合、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0095】
<外添剤の添加方法>
トナー母体粒子に外添剤を添加する方法としては特に限定されないが、乾燥済みのトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加して混合する乾式法などが挙げられる。
外添剤の混合装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用することができる。例えば、ヘンシェルミキサーを用いる場合は、撹拌羽根の先端の周速を好ましくは30~80m/sの範囲内とし、20~50℃で10~30分程度撹拌混合する。
【0096】
[静電潜像現像用二成分現像剤]
本発明の静電潜像現像用二成分現像剤(以下、単に二成分現像剤又は現像剤ともいう。)は、本発明の静電潜像現像用トナーと、キャリア粒子とを含有する。
なお、二成分現像剤について述べたが、本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤としても使用することもできる。
【0097】
(芯材粒子)
キャリア粒子は、芯材粒子表面に樹脂被覆層が形成されたものであることが好ましい。
芯材粒子としては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
また、キャリア粒子は、磁性粒子などの芯材粒子表面に樹脂被覆層が形成されたコートキャリア粒子の他、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリア粒子などを用いてもよい。
【0098】
芯材粒子の体積基準のメジアン径(D50)としては、一般的には10~500μmの範囲内であり、好ましくは30~100μmの範囲内である。
芯材粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置「HEROS KA」(株式会社日本レーザー製)を用いて、湿式法にて測定した。具体的には、まず、焦点位置200mmの光学系を選択し、測定時間を5秒に設定する。そして、測定用の磁性体粒子を0.2質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に加え、超音波洗浄機「US-1」(株式会社アズワン製)を用いて3分間分散させて測定用試料分散液を作製し、これを「HEROS KA」に数滴供給し、試料濃度ゲージが測定可能領域に達した時点で測定を開始する。得られた粒度分布を粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から累積分布を作成し、累積50%となる粒径を体積基準のメジアン径(D50)とした。
【0099】
(樹脂被覆層)
本発明に係る樹脂被覆層は、脂環式(メタ)アクリレートモノマーを用いて形成された共重合体を含有することが好ましい。
また、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。
脂環式(メタ)アクリレートモノマーを用いることで、吸湿性が低減し、高温高湿での帯電量の低下を抑制することができる。また、適度な機械的強度を有し、被覆材として膜摩耗されることでキャリア粒子表面がリフレッシュされる。
また、共重合体を構成する脂環式(メタ)アクリレートモノマーの共重合比率(質量比)が、50%以上であることが好ましい。
【0100】
脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、機械的強度、帯電量の環境安定性(帯電量の環境差が小さい)、重合容易性及び入手容易性の観点から、炭素数5~8のシクロアルキル基を有することが好ましい。脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル及び(メタ)アクリル酸シクロオクチルからなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。中でも、機械的強度及び帯電量の環境安定性の観点から、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを含むことが好ましい。
【0101】
前記キャリア粒子表面における前記芯材粒子の露出面積比率は、10.0~18.0%の範囲内であることが好ましい。露出面積比率が10.0%以上であると、キャリア粒子の抵抗値が高くなりすぎず、初期及び連続印字後で高画質な画像を出力することができる。露出面積比率が18.0%以下であると、キャリア粒子の静電潜像担持体(電子写真感光体)への付着を抑制でき、連続印字における画質が劣化しない。
キャリア粒子表面における芯材粒子の露出部の測定は、XPS測定(X線光電子分光測定)により芯材粒子に対する被覆用樹脂の被覆率を下記の方法で測定し求められる。
XPS測定装置としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック製、K-Alphaを使用し、測定は、X線源としてAlモノクロマチックX線を用い、加速電圧を7kV、エミッション電流を6mVに設定して実施し、被覆用樹脂を構成する主たる元素(通常は炭素)と、芯材粒子を構成する主たる元素(通常は鉄)とについて測定する。
【0102】
キャリア粒子及びトナー粒子の合計に対するトナー粒子の比率(トナー濃度)は、4.0~8.0質量%の範囲内であることが好ましい。トナー粒子の比率が4.0~8.0質量%の範囲内にあることで、トナー粒子の帯電量が適切となり、初期及び連続印字後の画質がより良好となる。
【0103】
本発明に係る二成分現像剤は、キャリア粒子とトナー粒子とを、混合装置を用いて混合することで製造することができる。混合装置としては、例えばヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機を挙げることができる。
【実施例
【0104】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
<非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製>
≪非晶性ポリエステル樹脂(A1)の作製≫
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物 40モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.2モル付加物 60モル部
・テレフタル酸ジメチル 60モル部
・フマル酸ジメチル 15モル部
・ドデセニルコハク酸無水物 20モル部
・トリメリット酸無水物 5モル部
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、上記モノマーのうちフマル酸ジメチル及びトリメリット酸無水物以外の単量体と、ジオクチル酸スズを上記モノマーの合計100質量部に対して0.25質量部投入した。次いで、窒素ガス気流下、235℃で6時間反応させた後、200℃に降温して、フマル酸ジメチル及びトリメリット酸無水物を加え、1時間反応させた。温度を220℃まで5時間かけて昇温し、10kPaの圧力下で所望の分子量になるまで重合させ、淡黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂(A1)を得た。
非晶性ポリエステル樹脂(A1)は、重量平均分子量が35000、数平均分子量が8000、ガラス転移温度(Tg)が56℃であった。
【0106】
≪非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)の調製≫
次いで、非晶性ポリエステル樹脂200質量部と、メチルエチルケトン100質量部と、イソプロピルアルコール35質量部と、10質量%アンモニア水溶液7.0質量部とをセパラブルフラスコに入れ、十分に混合、溶解した後、40℃で加熱撹拌しながら、イオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度8g/分で滴下し、送液量が580質量部になったところで滴下を止めた。その後減圧下で溶剤除去を行い、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を得た。上記分散液にイオン交換水を加えて固形分量が25質量%となるように調整し、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)を調製した。この分散液中の非晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50)を、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)にて測定したところ、156nmであった。
【0107】
<非晶性ビニル樹脂粒子分散液(b1)の調製>
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)5.0質量部と、イオン交換水2500質量部とを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を75℃に昇温させた。
次いで、過硫酸カリウム(KPS)18.0質量部をイオン交換水342質量部に溶解させた溶液を添加し、液温を75℃とした。さらに、スチレン(St)903.0質量部、n-ブチルアクリレート(BA)282.0質量部及びアクリル酸(AA)12.0質量部、1,10-デカンジオールジアクリレート3.0質量部及びドデカンチオール8.1質量部からなる単量体混合液を2時間かけて滴下した。
【0108】
上記滴下終了後、75℃において2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合させ、非晶性ビニル樹脂分散液を得た。上記分散液にイオン交換水を加えて固形分量が25質量%となるように調整し、非晶性ビニル樹脂(B1)粒子の分散液(b1)を調製した。この分散液中の非晶性ビニル樹脂(B1)粒子の体積基準のメジアン径(D50)をマイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)にて測定したところ、160nmであった。
非晶性ビニル樹脂(B1)は、ガラス転移温度(Tg)が52℃、重量平均分子量(Mw)が38000、数平均分子量(Mn)が15000であった。
【0109】
<結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製>
≪結晶性ポリエステル樹脂(C1)の作製≫
・ドデカン二酸 50モル部
・1,6-ヘキサンジオール 50モル部
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記モノマーを入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した。次いで、チタンテトラブトキサイド(Ti(O-n-Bu))を上記モノマーの合計100質量部に対して0.25質量部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間撹拌し反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間撹拌し反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(C1)を得た。
結晶性ポリエステル樹脂(C1)は、重量平均分子量が25000、数平均分子量が8500、融点が71.8℃であった。
【0110】
≪結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)の調製≫
次に、上記結晶性ポリエステル樹脂(C1)200質量部と、メチルエチルケトン120質量部、イソプロピルアルコール30質量部をセパラブルフラスコに入れ、これを60℃で混合、溶解した後、10質量%アンモニア水溶液を8質量部滴下した。加熱温度を67℃に下げ、撹拌しながらイオン交換水送液ポンプを用いて送液速度8g/分で滴下し、送液量が580質量部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。その後、減圧下で溶媒除去を行い、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を得た。上記分散液にイオン交換水を加えて固形分量が25質量%となるように調整し、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)を調製した。この分散液中の結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50)を、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)にて測定したところ、198nmであった。
【0111】
<離型剤粒子分散液(W1)の調製>
・パラフィン系ワックス(日本精蝋製HNP0190、融解温度85℃)
270質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製ネオゲンRK) 13.5質量部(有効成分60%、離型剤に対して3%)
・イオン交換水 21.6質量部
上記の材料を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製ゴーリンホモジナイザー)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、分散液を得た。当該分散液に、イオン交換水を加えて固形分量が20%になるように調整し、これを離型剤粒子分散液(W1)とした。当該離型剤粒子分散液(W1)中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径(D50)は215nmであった。
【0112】
<着色剤粒子分散液(1)の調製>
・カーボンブラック
(キャボット社製、リーガル(登録商標)330) 100質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製ネオゲンSC) 15質量部
・イオン交換水 400質量部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(ウルトラタラックス、IKA社製)により10分間予備分散した後、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製)を用い、圧力245MPaで30分間分散処理を行いブラック着色剤粒子の水系分散液を得た。得られた分散液にさらに、イオン交換水を添加して、固形分が15質量%となるように調整することによりブラックの着色剤粒子分散液(1)を調製した。この分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径(D50)を、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、110nmであった。
【0113】
<トナー母体粒子(1)の作製>
≪凝集・融着工程及び熟成工程≫
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1) 1008質量部
・非晶性ビニル樹脂粒子分散液(b1) 32質量部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1) 160質量部
・離型剤粒子分散液(W1) 8質量部
・着色剤粒子分散液(1) 187質量部
・アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1 20%水溶液)40質量部
・イオン交換水 1500質量部
【0114】
温度計、pH計及び撹拌器を備えた4リットルの反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0%硝酸を添加してpHを3.0に調整した。その後、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)にて3000rpmで分散しながら、濃度2%の硫酸アルミニウム(凝集剤)水溶液100質量部を30分かけて添加した。滴下終了後、10分間撹拌し、原料と凝集剤を十分に混合した。
【0115】
その後、反応容器に撹拌器及びマントルヒーターを設置し、スラリーが十分に撹拌されるように撹拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにコールターマルチサイザー3(アパーチャー径100μm、ベックマン・コールター社製)にて粒径を測定した。体積基準のメジアン径が3.9μmになったところで温度を保持し、あらかじめ混合しておいた下記材料の混合液を20分間かけて投入した。
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1) 400質量部
・アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1 20%水溶液)15質量部
【0116】
次いで、50℃で30分間保持した後、反応容器に、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)20%液を8質量部添加した後、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料分散液のpHを9.0に調整した。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で85℃まで昇温し、85℃で保持した。
【0117】
≪冷却工程≫
その後、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて形状係数が0.970になった時点で降温速度10℃/分で冷却し、トナー母体粒子分散液(1)を得た。
【0118】
≪濾過・洗浄工程及び乾燥工程≫
その後、濾過し、イオン交換水で洗浄した。次いで、40℃にて乾燥して、トナー母体粒子(1)を得た。得られたトナー母体粒子(1)の体積基準のメジアン径は4.0μm、平均円形度は0.971であった。
【0119】
<トナー母体粒子(2)の作製>
トナー母体粒子(1)の作製の「凝集・融着工程及び熟成工程」において、体積基準のメジアン径が4.9μmになったところで温度を保持し、あらかじめ混合しておいた下記材料を添加した。
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1) 400質量部
・アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1 20%水溶液)15質量部
上記以外の作製方法は、トナー母体粒子(1)の作製方法と同様にして、トナー母体粒子(2)を作製した。得られたトナー母体粒子(2)の体積基準のメジアン径は5.0μmであり、平均円形度は0.969であった。
【0120】
<トナー母体粒子(3)の作製>
トナー母体粒子(1)の作製の「凝集・融着工程及び熟成工程」において、体積基準のメジアン径が2.9μmになったところで温度を保持し、あらかじめ混合しておいた下記材料を添加した。
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1) 400質量部
・アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1 20%水溶液)15質量部
上記以外の作製方法は、トナー母体粒子(1)の作製方法と同様にして、トナー母体粒子(3)を作製した。得られたトナー母体粒子(3)の体積基準のメジアン径は3.0μm、平均円形度は0.972であった。
【0121】
<トナー母体粒子(4)の作製>
トナー母体粒子(1)の作製の「凝集・融着工程及び熟成工程」において、体積基準のメジアン径が2.7μmになったところで温度を保持し、あらかじめ混合しておいた下記材料を添加した。
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1) 400質量部
・アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1 20%水溶液)15質量部
上記以外の作製方法は、トナー母体粒子(1)の作製方法と同様にして、トナー母体粒子(4)を作製した。得られたトナー母体粒子(4)の体積基準のメジアン径は2.8μm、平均円形度は0.971であった。
【0122】
<トナー母体粒子(5)の作製>
トナー母体粒子(1)の作製の「凝集・融着工程及び熟成工程」において、体積基準のメジアン径が5.1μmになったところで温度を保持し、あらかじめ混合しておいた下記材料を添加した。
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1) 400質量部
・アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1 20%水溶液)15質量部
上記以外の作製方法は、トナー母体粒子(1)の作製方法と同様にして、トナー母体粒子(5)を作製した。得られたトナー母体粒子(5)の体積基準のメジアン径は5.2μm、平均円形度は0.972であった。
【0123】
<トナー母体粒子(6)の作製>
トナー母体粒子(1)の「凝集・融着工程及び熟成工程」において、4リットルの反応容器に入れた材料を以下のように変更した。
・非晶性ビニル樹脂粒子分散液(b1) 1040質量部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1) 160質量部
・着色剤粒子分散液(1) 187質量部
・アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1 20%水溶液)40質量部
・イオン交換水 1500質量部
上記以外の作製方法は、トナー母体粒子(1)の作製方法と同様にして、トナー母体粒子(6)を得た。得られたトナー母体粒子(6)の体積基準のメジアン径は4.0μm、平均円形度は0.971であった。
【0124】
<第1の球形シリカ粒子(1-1)の作製>
(1)撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた3リットルの反応器に、メタノール945質量部、28%アンモニア水45質量部及び水135質量部を添加して混合した。この溶液の温度を35℃に調整して撹拌しながらテトラメトキシシラン405質量部を6時間かけて滴下し、さらに滴下後1時間撹拌を継続し加水分解を行いシリカ粒子の懸濁液を得た。
(2)この水性懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン4.8質量部を滴下して、シリカ粒子表面を疎水化処理した。
(3)こうして得られた分散液を、80℃に加熱しメタノール水を留去した。得られた分散液に室温でヘキサメチルジシラザン130質量部を添加し60℃に加熱し9時間反応させ、シリカ粒子をトリメチルシリル化した。その後溶媒を減圧下で留去してシリカ粒子(1-1)を作製した。
上記の方法により得られた第1の球形シリカ粒子(1-1)について、個数平均一次粒径及び標準偏差を測定したところ、個数平均一次粒径(D50)が40nm、標準偏差が5nmであった。
【0125】
<第1の球形シリカ粒子(1-2)~(1-5)の作製>
上記第1の球形シリカ粒子(1-1)の作製において、加水分解、重縮合工程のアルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水の質量比、反応温度、撹拌速度、供給速度を制御することにより個数平均粒径を調整して、下記表Iに記載の第1の球形シリカ粒子(1-2)~(1-5)を調製した。
【0126】
<第2の球形シリカ粒子(2-1)~(2-5)の作製>
上記第1の球形シリカ粒子(1-1)の作製において、加水分解、重縮合工程のアルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水の質量比、反応温度、撹拌速度、供給速度を制御することにより個数平均粒径を調整して、下記表Iに記載の第2の球形シリカ粒子(2-1)~(2-5)を調製した。
【0127】
【表1】
【0128】
≪トナー粒子1の作製≫
(外添剤添加工程)
トナー母体粒子(1)100質量部に対して、第1の球形シリカ粒子(1-1)1.0質量部及び第2の球形シリカ粒子(2-1)0.50質量部を添加した。更に、疎水性の二酸化チタン粒子(HMDS処理済、疎水化度55%、個数基準における平均一次粒子径=20nm)をトナー母体粒子(1)100質量部に対して0.3質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて20分混合することにより、トナー粒子1を作製した。
【0129】
≪トナー粒子2~8及び21~23の作製≫
トナー粒子1の作製において、表IIに記載のように二酸化チタン粒子の添加量を変更し、トナー粒子2~8及び21~23を作製した。
【0130】
≪トナー粒子9、10、24及び25の作製≫
トナー粒子1の作製において、表IIに記載した第1の球形シリカ粒子の種類にそれぞれ変更することにより、トナー粒子9、10、24及び25を作製した。
【0131】
≪トナー粒子11~14の作製≫
トナー粒子1の作製において、表IIに記載した第2の球形シリカ粒子の種類にそれぞれ変更することにより、トナー粒子11~14を作製した。
【0132】
≪トナー粒子15~19の作製≫
トナー粒子1の作製において、トナー母体粒子1を、表IIに記載のトナー母体粒子の種類に変更した以外は同様にして、トナー粒子15~19を作製した。
【0133】
≪トナー粒子20の作製≫
トナー粒子1の作製において、表IIに示したように第2の球形シリカ粒子を添加せず、トナー粒子20を作製した。
【0134】
≪トナー粒子26の作製≫
トナー母体粒子1に対する外添剤添加工程におけるシリカ粒子の添加で、非球形シリカ粒子(個数平均粒径40nm、球形化度0.5、1.10質量部及び第2の球形シリカ粒子(2-1)1.50質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて20分混合することにより、トナー粒子26を作製した。
【0135】
【表2】
【0136】
<キャリア粒子の作製>
(芯材粒子1の作製)
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、水と混合した後、湿式メディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。
【0137】
得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。この粒子を粒度調整した後、950℃で2時間加熱し、ロータリーキルンで仮焼成を行った。直径0.3cmのステンレスビーズを用いて乾式ボールミルで1時間粉砕したのち、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を固形分に対して0.8質量%添加し、更に水、分散剤を添加し、直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて25時間粉砕した。次いで、スプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1050℃、20時間保持し、本焼成を行った。
その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、芯材粒子1を得た。芯材粒子1の体積基準のメジアン径(D50)は28.0μmであった。
【0138】
(被覆用樹脂1の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸メチルを「共重合比率(質量比)=50:50」で添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、被覆用樹脂1を作製した。得られた被覆用樹脂1における重量平均分子量は50万であった。
【0139】
(被覆用樹脂2の作製)
被覆用樹脂1の作製において、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸メチルを「共重合比率(質量比)=80:20」に変更する以外は同様にして、被覆用樹脂2を作製した。
【0140】
(キャリア粒子1の作製)
水平撹拌羽根付き高速撹拌混合機に、芯材粒子として上記で準備した芯材粒子1を100質量部、及び被覆用樹脂1を4.5質量部を投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した後、120℃で50分混合して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に被覆材を被覆させた後、室温まで冷却して、「キャリア粒子1」を作製した。
【0141】
(キャリア粒子2の作製)
キャリア粒子1の作製において、被覆用樹脂1を被覆用樹脂2に変更した以外は同様にして、キャリア粒子2を作製した。
【0142】
【表1】
【0143】
<現像剤の作製>
<現像剤1の作製>
上記のようにして作製したトナー粒子1及びキャリア粒子1を、トナー濃度が9質量%となるようにして混合し、現像剤1を作製した。混合機はV型混合機(株式会社徳寿工作所製)を用い、25℃で30分間混合した。
【0144】
<現像剤2~26の作製>
トナー粒子とキャリア粒子との組み合わせを下記表IVに示すようにしたこと以外は、上記現像剤1の作製と同様にして、現像剤2~26を作製した。
【0145】
<評価方法>
評価装置として、市販のデジタルフルカラー複合機「bizhub PRO(登録商標)C6500」(コニカミノルタ株式会社製)を用い、上記で作製した各現像剤をそれぞれ順次装填し、低温低湿環境下(温度10℃、湿度20%)で、A4版の上質紙(65g/m)上にテスト画像として印字率5%の帯状ベタ画像を形成する印刷を10万枚行った。そして、下記の評価を行った。それぞれの評価結果は、下記表IVに示す。
【0146】
(帯電立ち上がり性の評価)
帯電立ち上がり性は、ベタ画像濃度の変化(濃度追随性)で評価した。
ベタ画像濃度の変化は、上記印刷時の1枚、100枚、500枚、2000枚時におけるベタ画像の濃度を測定し、その濃度変化を測定した。
なお、ベタ画像濃度の変化は、100枚目と2000枚目のベタ画像部の画像濃度(絶対濃度)を測定し、その2枚の濃度差が0.1以下を合格と判断した。
また、画像濃度は、マクベス社製反射濃度計RD-918にて測定した。画像濃度は絶対濃度である。
【0147】
(帯電性能の安定性の評価)
帯電性能の安定性は、トナー飛散量で評価した。
画像形成装置内のトナーの飛散量を下記のとおり測定した。まず、上記の評価装置での10万枚印刷終了後、一旦機内を清掃した。その後、印字率が5%の文字画像をA4判の上質紙に1万枚プリントし、加えて、10%の文字画像で1万枚、さらにその後、20%の文字画像で1万枚、計3万枚プリントを実施した。トナー飛散量は、そこでの画像形成装置本体、カートリッジ及びトナーフィルターに飛散したトナーの総量とした。
3万枚印字後、カートリッジの上蓋など現像部位周辺に飛散したトナーを吸引してその質量を測定し、トナーフィルターに付着したトナーの質量を測定し、これらの和をトナー飛散量(g)とした。トナー飛散量1g以下を合格とした。
【0148】
【表2】
【0149】
上記表IVの結果のとおり、本発明のトナーを用いた二成分現像剤での画像形成においては、低温低湿環境下であっても帯電立ち上がり性と帯電性能の安定性に優れ、低温低湿環境下で連続印字した際にも高画質な画像を形成することができることが分かった。
一方で、比較例のトナーを用いた二成分現像剤での画像形成においては、いずれかの項目について劣るものであった。