(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B42B 5/00 20060101AFI20220614BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20220614BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B42B5/00
B65H37/04 Z
G03G15/00 432
(21)【出願番号】P 2018054349
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 匡史
(72)【発明者】
【氏名】粟野 宏明
(72)【発明者】
【氏名】野辺 裕
(72)【発明者】
【氏名】牧田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 尚人
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144607(JP,A)
【文献】特開2014-240126(JP,A)
【文献】特開2014-091249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42B 5/00
B65H 37/04
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟んで凹凸痕としての綴じ部を形成する針無し綴じ器と、
用紙束に対して綴じ部を形成する場合において、通常モード及び紙粉低減モードを含む動作モード群の中から選択された動作モードに従って前記針無し綴じ器の動作を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記紙粉低減モードが選択された場合には、前記通常モードが選択された場合に適用される綴じ
荷重よりも紙粉が生じにくい
小さい綴じ
荷重を適用
し、
前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重が定められており、
前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重に基づく調整可能範囲内において綴じ荷重をマニュアルで調整するための調整部が設けられ、
前記制御部は、前記紙粉低減モードにおいて前記調整後の綴じ荷重に従って前記針無し綴じ器の動作を制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重を変化させる手段を含む、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記制御部は、少なくとも環境センサの出力に基づいて動作モードを選択する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置において、
前記環境センサは少なくとも湿度を検出するセンサであり、
前記制御部は、前記湿度が
満たすべき高湿条件
を含む紙粉低減モード選択条件が充足される場合に前記紙粉低減モードを選択する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記紙粉低減モード選択条件には、更に前記用紙束が
満たすべき調湿条
件が含まれ、
前記制御部は、前記高湿条件の充足及び前記調湿条件の充足に基づいて、前記紙粉低減モードを選択する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟んで凹凸痕としての綴じ部を形成する針無し綴じ器と、
通常モード及び紙粉低減モードを含む動作モード群の中から選択された動作モードに従って前記針無し綴じ器の動作を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記紙粉低減モードが選択された場合には、前記通常モードが選択された場合に適用される綴じ動作条件よりも紙粉が生じにくい綴じ動作条件を適用し、
前記制御部は、検出された湿度が満たすべき高湿条件且つ用紙束が満たすべき調湿条件を含む紙粉低減モード選択条件が充足される場合に前記紙粉低減モードを選択し、
前記制御部は、用紙装填後の経過時間に基づいて前記用紙束が
前記調湿条件を満たすか否かを判断する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記紙粉低減モード選択条件には、更に前記用紙束を構成する各用紙が
満たすべき用紙条
件が含まれ、
前記制御部は、前記高湿条件の充足及び前記用紙条件の充足に基づいて、前記紙粉低減モードを選択する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項
1記載の画像形成装置において、
前記通常モード用の標準綴じ荷重が定められており、
前記通常モード用の標準綴じ荷重に基づく調整可能範囲内において綴じ荷重がマニュアルで調整され、
前記制御部は、前記通常モードにおいて前記調整後の綴じ荷重に従って前記針無し綴じ器の動作を制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項
1記載の画像形成装置において、
前記
紙粉低減モード用の標準綴じ荷重は
前記調整可
能範囲中の上限値であり、
前記調整部により前
記綴じ荷重が
前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重より引き下げられる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項
1記載の画像形成装置において、
前記
紙粉低減モード用の標準綴じ荷重は
前記調整可
能範囲中の基準値であり、
前記調整部により前
記綴じ荷重
が前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重を基準として上下に調整
される、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記制御部は、紙粉低減モード自動選択機能をオフにするユーザー入力があった場合に前記紙粉低減モードを選択しないようにする、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記制御部は、用紙状況が前記紙粉低減モードに適しないものである場合に前記紙粉低減モードを選択しないようにする、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟んで凹凸痕としての綴じ部を形成する針無し綴じ器と、
前記針無し綴じ器の動作を制御する制御部であって、
用紙束に対して綴じ部を形成する場合において、高湿条件を満たす第1状態においては低湿条件を満たす第2状態
の綴じ荷重に比べて紙粉詰まりが生じにくい
小さい綴じ荷重を適用する制御部と、
を含
み、
前記第1状態用の標準綴じ荷重が定められており、
前記第1状態用の標準綴じ荷重に基づく調整可能範囲内において綴じ荷重をマニュアルで調整するための調整部が設けられ、
前記制御部は、前記第1状態において前記調整後の荷重に従って前記針無し綴じ器の動作を制御する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項13記載の画像形成装置において、
前記針無し綴じ器は、前記一対の歯列に対して歯間清掃を行う歯間清掃手段を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項14記載の画像形成装置において、
環境センサと、
前記環境センサの出力に基づいて前記歯間清掃手段の清掃力を調整する手段と、
を含むことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、例えば、画像形成ユニット及び後処理ユニットにより構成される。画像形成ユニット内に後処理ユニットが組み込まれることもある。画像形成ユニットは、記録材としての用紙上に画像を形成する装置である。後処理ユニットはフィニッシャーとも呼ばれ、画像形成後の用紙又は用紙束に対して、後処理を適用するものである。後処理として、針無し綴じが知られている。針無し綴じには幾つかの方式があり、それらの中で代表的なものは圧着方式である。圧着方式は、上歯列と下歯列とで用紙束を挟むことにより、凹凸痕としての綴じ部を形成する方式である。綴じ部内において、用紙間で繊維の絡み合いが生じ、それが用紙相互を結着させる。
【0003】
特許文献1には、圧着方式の針無し綴じにおいて、歯の間に詰まった紙粉を空打ちにより除去することが記載されている。なお、特許文献2には、圧着方式の針無し綴じにおいて、用紙の水分量に応じて押圧力を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014- 91249号公報
【文献】特開2014-240126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一対の歯列で用紙束を挟むことにより凹凸痕としての綴じ部を形成する場合において、状況によっては1又は複数の歯間(つまり谷)に紙粉が残留し、しかも残留した紙粉が徐々に成長して巨大化することがある。いずれかの歯間において無視し得ないような紙粉詰まりが生じると、適正な綴じ処理を行えず、その結果、綴じ部の保持力(用紙間の結着力)が低下してしまう。あるいは、そのような紙粉詰まりが綴じ部を形成する機構に過大な負荷を与えるおそれがある。よって、そのような紙粉詰まりが生じ難い動作条件を適用することが望まれるが、そのような動作条件を一律に適用すると、状況次第では、過剰な対策となり、別の問題(例えば綴じ部品質の低下)が生じてしまう。
【0006】
本発明の目的は、一対の歯列で用紙束を挟むことにより凹凸痕としての綴じ部を形成する針無し綴じ装置において、状況に応じて紙粉詰まりが生じ難い綴じ動作を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る画像形成装置は、一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟んで凹凸痕としての綴じ部を形成する針無し綴じ器と、用紙束に対して綴じ部を形成する場合において、通常モード及び紙粉低減モードを含む動作モード群の中から選択された動作モードに従って前記針無し綴じ器の動作を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記紙粉低減モードが選択された場合には、前記通常モードが選択された場合に適用される綴じ荷重よりも紙粉が生じにくい小さい綴じ荷重を適用し、前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重が定められており、前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重に基づく調整可能範囲内において綴じ荷重をマニュアルで調整するための調整部が設けられ、前記制御部は、前記紙粉低減モードにおいて前記調整後の綴じ荷重に従って前記針無し綴じ器の動作を制御する、ことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る画像形成装置は、前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重を変化させる手段を含む、ことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る画像形成装置は、前記制御部が、少なくとも環境センサの出力に基づいて動作モードを選択する、ことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4記載の画像形成装置は、前記環境センサが少なくとも湿度を検出するセンサであり、前記制御部が、前記湿度が満たすべき高湿条件を含む紙粉低減モード選択条件が充足される場合に前記紙粉低減モードを選択する、ことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5記載の画像形成装置は、前記紙粉低減モード選択条件には、更に前記用紙束が満たすべき調湿条件が含まれ、前記制御部が、前記高湿条件の充足及び前記調湿条件の充足に基づいて、前記紙粉低減モードを選択する、ことを特徴とするものである。
【0012】
請求項6記載の画像形成装置は、一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟んで凹凸痕としての綴じ部を形成する針無し綴じ器と、通常モード及び紙粉低減モードを含む動作モード群の中から選択された動作モードに従って前記針無し綴じ器の動作を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記紙粉低減モードが選択された場合には、前記通常モードが選択された場合に適用される綴じ動作条件よりも紙粉が生じにくい綴じ動作条件を適用し、前記制御部は、検出された湿度が満たすべき高湿条件且つ用紙束が満たすべき調湿条件を含む紙粉低減モード選択条件が充足される場合に前記紙粉低減モードを選択し、前記制御部は、用紙装填後の経過時間に基づいて前記用紙束が前記調湿条件を満たすか否かを判断する、ことを特徴とするものである。
【0013】
請求項7記載の画像形成装置は、前記紙粉低減モード選択条件には、更に前記用紙束を構成する各用紙が満たすべき用紙条件が含まれ、前記制御部が、前記高湿条件の充足及び前記用紙条件の充足に基づいて、前記紙粉低減モードを選択する、ことを特徴とするものである。
【0014】
請求項8記載の画像形成装置は、前記通常モード用の標準綴じ荷重が定められており、前記通常モード用の標準綴じ荷重に基づく調整可能範囲内において綴じ荷重がマニュアルで調整され、前記制御部は、前記通常モードにおいて前記調整後の綴じ荷重に従って前記針無し綴じ器の動作を制御する、ことを特徴とするものである。
【0015】
請求項9記載の画像形成装置は、前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重は前記調整可能範囲中の上限値であり、前記調整部により前記綴じ荷重が前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重より引き下げられる、ことを特徴とするものである。
【0016】
請求項10記載の画像形成装置は、前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重は前記調整可能範囲中の基準値であり、前記調整部により前記綴じ荷重が前記紙粉低減モード用の標準綴じ荷重を基準として上下に調整される、ことを特徴とするものある。
【0017】
請求項11記載の画像形成装置は、前記制御部が、紙粉低減モード自動選択機能をオフにするユーザー入力があった場合に前記紙粉低減モードが選択されないようにする、ことを特徴とするものである。
【0018】
請求項12記載の画像形成装置は、前記制御部が、用紙状況が前記紙粉低減モードに適しないものである場合に前記通常モードを選択する、ことを特徴とするものである。
【0019】
請求項13記載の画像形成装置は、一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟んで凹凸痕としての綴じ部を形成する針無し綴じ器と、前記針無し綴じ器の動作を制御する制御部であって、用紙束に対して綴じ部を形成する場合において、高湿条件を満たす第1状態においては低湿条件を満たす第2状態の綴じ荷重に比べて紙粉詰まりが生じにくい小さい綴じ荷重を適用する制御部と、を含み、前記第1状態用の標準綴じ荷重が定められており、前記第1状態用の標準綴じ荷重に基づく調整可能範囲内において綴じ荷重をマニュアルで調整するための調整部が設けられ、前記制御部は、前記第1状態モードにおいて前記調整後の綴じ荷重に従って前記針無し綴じ器の動作を制御する、ことを特徴とするものである。
【0020】
請求項14記載の画像形成装置は、前記針無し綴じ器が、前記一対の歯列に対して歯間清掃を行う歯間清掃手段を有する、ことを特徴とする。
【0021】
請求項15記載の画像形成装置は、環境センサと、前記環境センサの出力に基づいて前記歯間清掃手段の清掃力を調整する手段と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る画像形成装置によれば、紙粉低減モードの選択により紙粉詰まりが生じにくくなる。また、紙粉低減モードにおいて標準綴じ荷重に基づいて実際の綴じ荷重を調整することが可能となる。
【0024】
請求項3に係る画像形成装置によれば、環境に適する動作モードが選択される。
【0025】
請求項4に係る画像形成装置によれば、高湿環境において紙粉低減モードが選択される。
【0026】
請求項5に係る画像形成装置によれば、高湿環境下で用紙束が調湿状態にある場合に紙粉低減モードが選択される。
【0027】
請求項6に係る画像形成装置によれば、用紙装填時を基準として用紙束が調湿条件を満たすか否かが判断される。
【0028】
請求項7に係る画像形成装置によれば、高湿環境下で特定の用紙が用いられる場合に紙粉低減モードが選択される。
【0030】
請求項9に係る画像形成装置によれば、標準綴じ荷重を上限として綴じ荷重を下方へ調整することが可能となる。
【0031】
請求項10に係る画像形成装置によれば、標準綴じ荷重を基準として上下に綴じ荷重を調整することが可能となる。
【0032】
請求項11に係る画像形成装置によれば、紙粉低減モード自動選択機能を必要に応じてオフにして綴じ品質を優先させることが可能となる。
【0033】
請求項12に係る画像形成装置によれば、用紙状況に応じて通常モードが選択される。
【0034】
請求項13に係る画像形成装置によれば、高湿環境において紙粉詰まりが生じにくくなる。また、高湿環境において標準綴じ荷重に基づいて実際の綴じ荷重を調整することが可能となる。
【0035】
請求項14に係る画像形成装置によれば、紙粉が取り除かれて残留しにくくなる。
【0036】
請求項15に係る画像形成装置によれば、歯間清掃手段の清掃力を環境に適合させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。
【
図4】圧着方式による綴じ部形成を説明するための図である。
【
図5】針無し綴じ器が有するモータの制御を説明するための図である。
【
図6】針無し綴じ器による綴じ部形成を説明するための図である。
【
図10】綴じ動作制御を説明するための流れ図である。
【
図11】適用外判定条件を説明するための図である。
【
図13】動作モード選択方法の第1例を示す図である。
【
図14】標準綴じ荷重及びその調整を説明するための図である。
【
図15】動作モード選択方法の第2例を示す図である。
【
図16】調湿状態か否かの判定方法を説明するための図である。
【
図17】動作モード選択方法の第3例を示す図である。
【
図18】標準綴じ荷重の段階的切り替えを示す図である。
【
図19】標準綴じ荷重がマニュアルで指定される変形例を示す図である。
【
図20】綴じ動作前の表示制御の第1例を示す図である。
【
図23】綴じ動作前の表示制御の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0039】
(1)画像形成装置
図1には、実施形態に係る画像形成装置の概略的な構成が示されている。X方向は第1水平方向であり、Z方向は垂直方向(鉛直方向)である。X方向及びZ方向に直交する方向が第2水平方向としてのY方向である。
【0040】
図示された画像形成装置10は、コピー機、プリンタ、スキャナ等として機能する多機能装置であり、それは複合機とも呼ばれる。画像形成装置10は、X方向に連結された画像形成ユニット12及び後処理ユニット14により構成される。画像形成ユニット12は、記録材である用紙上に画像を形成するものである。後処理ユニット14は、画像形成後の用紙に対して後処理を施すものである。図示の構成例では、後処理ユニット14は、針無し綴じを行う機能を備えている。後処理としては、針無し綴じ以外に、針有り綴じ(ステープル)、穴空け(パンチ)、中折り等が知られている。後処理ユニット14において、針無し綴じ以外の1又は複数の後処理が実行されてもよい。画像形成ユニット12において針無し綴じやそれを含む複数の後処理が実行されてもよい。その場合、画像形成ユニット12単体が画像形成装置を構成する。
【0041】
画像形成ユニット12は、図示の例において、本体部16と上部18とからなるものである。上部18は本体部16に対して開閉可能に設けられ、その中には自動原稿送り装置(ADF)が組み込まれている。本体部16は筐体を有し、その内部には以下に説明する構成が収容されている。
【0042】
給紙カセット(給紙トレイ)19,20には、それぞれ、積層された複数の用紙が収容される。各給紙カセット19,20は引き出し可能に設けられている。いずれかの給紙カセット19,20から順次取り出される用紙が用紙搬送路22に沿って搬送される。用紙搬送路22上には必要に応じて用紙反転器が設けられる。なお、用紙の流れを基準として用紙搬送路22において上流側及び下流側が相対的に定義される。
【0043】
給紙カセット19に設けられたセンサ部S3は、用紙切れを検出するセンサ、及び、給紙カセットのセット状態を検知するセンサにより構成される。それらのセンサからの出力信号が制御部38に送られている。同様に、給紙カセット19に設けられたセンサ部S3は、用紙切れを検出するセンサ、及び、給紙カセットのセット状態を検知するセンサにより構成される。それらのセンサからの出力信号が制御部38に送られている。
【0044】
図1に示された画像形成ユニット12は中間転写部24を備えている。中間転写部24は、回転運動する中間転写ベルト26を有する。中間転写ベルト26上には、画像形成部により、複数色に対応した複数のトナー像が転写(一次転写)される。画像形成部は、複数色に対応した複数の感光体ドラム等を有する。中間転写ベルト26上の複数のトナー像が用紙上に転写(二次転写)される。二次転写後の用紙が定着部28に送られ、そこで定着処理が施される。画像形成後の用紙が用紙搬送路22の下流側へ送られる。例えば、その途中の部分22aに後処理部を設けるようにしてもよい。後処理部を筐体の外側に組み付けてもよい。画像形成ユニット12から後処理ユニット14へ画像形成後の用紙が渡される。上記で挙げた画像形成方式以外の画像形成方式が採用されてもよい。
【0045】
本体部16内には制御部38が設けられている。制御部38はプログラムに従って動作するプロセッサ等を含むものであり、それは制御手段として機能する。制御部38は、画像形成装置10に含まれる各構成要素の動作を制御するものである。制御部38にはユーザーインターフェイス(UI)40が接続されている。UI40は例えばパッチパネル付き液晶表示器により構成される。その画面上には必要な操作ボタン(仮想ボタン)が表示され、またメッセージ等が表示される。UI40を利用してユーザーにより画像処理条件及び後処理条件が指定される。画像形成装置10に対してネットワークを介してパーソナルコンピュータ(PC)が接続されている場合、そのPC上において画像処理条件及び後処理条件が指定されてもよい。
【0046】
制御部38はタイマー38aを有している。必要に応じて、タイマー38aにより、給紙カセット19,20ごとにセット後の経過時間が計測される。具体的には、用紙切れ検知後、給紙カセット19,20が引き出されて用紙積層体がそれに収容され、その後、給紙カセット19,20がセットされた時点で、タイマー38aによる計時が開始される。その後においてタイマー38aが示す各時間は用紙積層体が装填されてからの経過時間となる。後述するように、経過時間を閾値と比較することにより、用紙が未調湿状態にあるか調湿状態にあるかが判断される。包装された用紙積層体においては用紙の含水率がある程度の範囲に維持されているが、包装紙を取り外して用紙積層体を剥き出しにした場合、環境に応じて用紙の含水率が徐々に変化する。例えば、セット後24時間が経過した時点で、環境湿度に対して馴染んだ調湿状態であると判定される。これについては後に詳述する。
【0047】
制御部38は、後述するように、後処理ユニット14内の制御基板56を介して、針無し綴じ機構44の動作を制御する。針無し綴じ機構44を制御する手段が後処理ユニット14内に設けられてもよく、あるいは、かかる手段が画像形成ユニット12と後処理ユニット14とに跨がって設けられてもよい。
【0048】
制御部38には、環境センサ部を構成する温度センサ34及び湿度センサ36の各検出値が入力されている。図示された構成例では、温度センサ34及び湿度センサ36が定着部28付近に設けられているが、それらが筐体内の他の位置又は筐体外に設けられてもよい。あるいは、外部から環境検出値が入力されてもよい(符号42を参照)。用紙の紙質を測定するセンサ、用紙の含水率を測定するセンサ等を設けて、それらのセンサからの出力信号が制御部38での制御で利用されてもよい。
【0049】
後処理ユニット14について説明する。後処理ユニット14は筐体43を有し、その内部には針無し綴じ機構44が設けられている。画像形成ユニット12から渡された用紙が用紙搬送路32に沿って搬送される。後処理として針無し綴じが指定されている場合、受け入れた用紙が針無し綴じ機構44へ送られる。
【0050】
針無し綴じ機構44は、用紙束に対して、圧着方式により、凹凸痕としての綴じ部を形成する機構である。実施形態においては、針無し綴じ機構44は、例えば10枚あるいは10数枚の用紙からなる用紙束に対して綴じ部を形成する高い綴じ能力を有する。用紙を揃えるために、針無し綴じ機構44は傾斜した状態で設けられている。針無し綴じ機構44は、傾斜姿勢を有する積載板46、及び、その下端部側に設けられた針無し綴じ器50、を有する。積載板46上に用紙束48が載せられ、その用紙束48の端部に対して針無し綴じ器50が針無し綴じ処理を実施する。これにより、凹凸痕としての綴じ部が形成され、綴じ部の結着作用によって用紙相互が結合する。結着作用は、用紙相互間における用紙繊維の絡み合いにより生じるものである。用紙束の端部以外の部位に綴じ部が形成されてもよい。
【0051】
後処理ユニット14は、制御基板56を有している。後述するように、制御基板56は、針無し綴じ器50が有するモータに対して駆動信号を供給するPWM(Pulse Width Modulation)コントローラ等を備えている。画像形成ユニット12内の制御部38は、制御基板56を介して、モータの動作を制御している。また、制御部38は、針無し綴じ機構44が有する各種の可動部の動作を制御している。後処理後の用紙束は排出トレイ54上に排出される。
【0052】
(2)針無し綴じ機構の構成及び動作
図2には、針無し綴じ機構44の具体的な構成が示されている。図示された構成は例示であり、針無し綴じ機構44として多様な機構を採用し得る。
図2において、x方向はトレイとして機能する積載板46上において用紙が進退運動する方向であり、z方向はx方向に垂直な方向であり、それは積載板46に直交する方向である。x方向及びz方向は、
図1に示したX方向及びZ方向に対して、反時計回り方向に一定角度回転している。x方向とz方向に直交する方向がy方向であり、それは上記Y方向に一致する。
【0053】
用紙搬送路32の下流端付近にはローラ対57が設けられ、ローラ対57から順次繰り出された用紙が積載板46上に積み上げられる。それらの用紙により用紙束48が構成される。用紙束48を構成する用紙枚数は例えば2~10の範囲内であり、用紙枚数は事前に指定される。それ以上の枚数で用紙束48が構成されてもよい。用紙束48を揃える際、パドル58がR1方向に回転し、この回転により個々の用紙に-x方向つまりS1方向への力が及ぶ。積載板46における-x方向の端部近傍にはエンドガイド62が設けられており、エンドガイド62への各用紙の衝突により、各用紙のx方向の位置が揃えられる。タンパ部64は、用紙束48におけるy方向の両端を押さえる一対のタンパ部材を有し、一対のタンパ部材の近接運動により各用紙のy方向の位置が揃えられる。用紙束48を整列させる方式としては上記で説明した方式以外の方式を採用し得る。
【0054】
図2において、針無し綴じ器50はやや誇張して模式的に表現されている。針無し綴じ器50は、用紙束48の整列状態が形成された後、用紙束48において選択された箇所に対して、針無し綴じ処理を実施するものである。針無し綴じ器50は、一対の歯列、具体的には、上歯列66及び下歯列68を有し、それらによって一定荷重をもって用紙束48の端部が挟まれる。その際、上歯列66と下歯列68の噛み合い状態が形成される。これにより、凹凸痕としての綴じ部(針無し綴じ部)が形成される。針無し綴じ処理の実行後、用紙束48は+x方向つまりS2方向へ搬送される。その際には、用紙束48を挟むローラ対60が回転運動する。
【0055】
図3には、針無し綴じ器の要部が模式的に例示されている。
図3は綴じ動作前の待機状態を示すものである。針無し綴じ器は、上側可動ベース70、下側可動ベース72、上歯列66及び下歯列68を有する。上歯列66は上側可動ベース70の下面に下向きで配置されており、下歯列68は下側可動ベース72の上面に上向きで配置されている。待機状態において、上側可動ベース70と下側可動ベース72は互いに離れた位置にある。
【0056】
上歯列66と下歯列68の間に用紙束の端部が差し込まれた状態において、上側可動ベース70と下側可動ベース72が互いに近接する方向へ運動する(綴じ動作)。これにより、上歯列66と下歯列68の噛み合い状態つまり一種の衝突状態が生じ、その結果として、用紙束に綴じ部が形成される。その後、上側可動ベース70と下側可動ベース72が互いに離間する方向へ運動し(戻り動作)、待機状態に戻る。この動作が綴じ部形成単位で繰り返される。
【0057】
なお、上歯列66及び下歯列68は例えば10数個の歯(凸部)を有する。実施形態においては、製造コストの低減のため及び上下の歯並びを整合させるため、上歯列66及び下歯列68として同一のものが利用されている。
図3に示した一対の歯列は例示に過ぎず、一対の歯列として多様なものを用いることが可能である。上歯列66及び下歯列68の内の一方だけを運動させてもよい。
【0058】
図4には、噛み合い状態が示されている。紙面上、横方向がw方向であり、縦方向がz方向である。実施形態に係る針無し綴じ器は、後述するように、用紙束の縁に沿ってその周囲を運動する機能を備えており、針無し綴じ器の向きによっては、w方向がy方向に一致する。
【0059】
上歯列66は、w方向に一定間隔で並んだ複数の凸部(下向き山部)76を有する。隣接する凸部76間には凹部(下向き谷部)77が存在している。すなわち、w方向に一定間隔をもって複数の凹部77が並んでいる。より詳しくは凸部76と凹部77が交互に並んでいる。これと同様に、下歯列68は、w方向に一定間隔で並んだ複数の凸部(上向き山部)78を有する。隣接する凸部78間には凹部(谷部)79が存在している。すなわち、w方向に一定間隔をもって複数の凹部79が並んでいる。
【0060】
図示されるように、噛み合い状態において、上歯列66における各凸部76が下歯列68における各凹部79内に入り込み、同時に、下歯列68における各凸部78が上歯列66における各凹部77内に入り込む。これにより、用紙束の一部が凹凸形又は波形に塑性変形し、用紙間において繊維に絡み合いが生じる。特に伸ばされた部分において絡み合いが生じ易い。このような圧着処理の結果、自己結着性をもった綴じ部74が形成される。
【0061】
図5には、針無し綴じ器50の電気的構成が概略的に示されている。針無し綴じ器50は、駆動源としてのモータ84を有している。また、荷重センサ86及びエンコーダ88を有している。荷重センサ86は、綴じ部形成過程において荷重をモニタリングするためのものであり、それは必要に応じて設けられる。エンコーダ88は、モータの回転数をモニタリングするためのものである。荷重センサ86の検出信号及びエンコーダ88の検出信号が制御基板56に送られている。制御基板56はローカルコントローラとして機能するものであり、制御基板56は、図示の構成例において、PWMコントローラ82を搭載している。PWMコントローラ82からモータ84へ駆動信号が供給されている。なお、
図5においてはドライバ等のデバイスが図示省略されている。制御基板56が画像形成ユニット内に設けられてもよい。
【0062】
PWMコントローラ82は、パルス幅の可変により、すなわちデューティの可変により、モータ84の回転速度を制御するものである。また、パルス数の可変により、綴じ荷重を制御するものである。モータ84の回転数はエンコーダ88によって検出されており、PWMコントローラ82は、指定された回転速度になるように、モータ84の回転速度をフィードバック制御する。その際の回転速度は画像形成ユニット内の制御部により指定される。もちろん、回転速度が後処理ユニット内で自律的に決定されてもよい。なお、PWM制御は例示であり、モータ84のタイプに適合した制御方式を採用し得る。例えば、電圧、電流、周波数その他によって綴じ荷重や綴じ速度が制御されてもよい。
【0063】
図6には、積載板46の上面が例示されている。積載板46上には整列後の用紙束48が載せられている。用紙束48におけるy方向の両端が一対のタンパ部材64a,64bによって押さえられている。用紙束48における-x方向の端部がエンドガイド62に突き当てられている。図示された構成例では、針無し綴じ器50は、レール90に沿って運動可能であり、指定された場所において、針無し綴じ動作を行う。
図6においてレール90は概念的に示されている。例えば、用紙束48のコーナー部分(左上隅部分)に対して綴じ部74を形成する場合、図示の位置に針無し綴じ器50がセットされ、その位置で針無し綴じが実行される。符号74A,74Bで例示されるように、他の位置において針無し綴じを実行することも可能である。なお、針無し綴じ器50と針有り綴じ器(図示せず)の両方を設ける場合、それらの物理的な干渉を避けるための仕組み(例えば退避機構)が設けられる。
【0064】
次に、
図7乃至
図9を用いて、針無し綴じ器についての具体的な構成例及び動作例を説明する。図示された針無し綴じ器100は、
図1乃至
図6に示した針無し綴じ器50と基本的に同じ構成を有するものである。
図7には待機状態が示され、
図8には近接状態が示され、
図9には噛み合い状態が示されている。噛み合い状態の後、近接状態及び待機状態が順次生じる。なお、
図7乃至
図9においては、基本事項の明確化のため、針無し綴じ器100の内の一部分が示されており、他の部分については図示省略されている。
【0065】
図7において、モータ120は駆動源であり、その動作は上記のようにPWM制御方式により制御される。モータ120は回転軸122を有し、その回転運動がギア部124に伝達される。ギア部124は複数の歯車126,128からなるものである。
図7においては、ギア部124が簡略的に示されている。図示の構成例では、ギア部124の内の歯車128に対してカム軸130が固定的に連結されている。カム軸130にはカム板132が固定的に連結されている。モータ120で生じた回転運動力により、カム板132が回転運動する。カム板132は複数の当たり面134,136a,136bを有する。
【0066】
針無し綴じ器100は、リンク機構101を有する。リンク機構101は、カム板132の回転運動を上歯列102及び下歯列104の開閉運動(近接離間運動)に転換し、同時に、カム板132の回転運動を一対の押さえ片110,112の開閉運動(近接離間運動)に転換するものである。
図7においては、リンク機構101に含まれる一部の部材が示されている。具体的には、リンク部材140、リンク部材142、アーム部材106、アーム部材108、アーム部材114及びアーム部材116が示されている。リンク部材140にはローラ138が回転自在に設けられており、そのローラ138がカム板132の当たり面136aに当たっている。リンク機構101の働きについては
図7乃至
図9を参照しながら順を追って説明する。
【0067】
図7に示す待機状態においては、2つのアーム部材106,108は開いた状態にあり、同じく、2つのアーム部材114,116も開いた状態にある。2つのアーム部材106,108は
図3に示した可動ベース70,72に相当するものである。
図7において、アーム部材106の下面には上歯列102が下向きで固定されており、アーム部材108の上面には下歯列104が上向きで固定されている。アーム部材114の先端には押さえ片110が設けられており、アーム部材116の先端には押さえ片112が設けられている。それらの押さえ片110,112は押さえ部材を構成するものである。必要な押さえ機能が発揮される限りにおいて、押さえ片110,112の内の一方のみを設けるようにしてもよい。
【0068】
図7に示す待機状態において、上歯列102と下歯列104の間には用紙束受け入れ空間が生じ、そこに用紙束118の端部が差し込まれる。
図7において用紙束118は模式的に表現されており、実際には、用紙束118はそれを構成する用紙の枚数に応じた厚みを有している。
【0069】
図7においては、上歯列102及び下歯列104の運動が破線で示されており、同様に、押さえ片110,112の運動が破線で示されている。+x方向を前方とし、-x方向を後方とした場合、綴じ運動過程において、上歯列102は前方斜め下方へ運動し、下歯列104は前方斜め上方へ運動する。押さえ片110は、下方へ倒れ込み運動し、押さえ片112は上方へ浮上運動する。この過程において、上歯列102は押さえ片110に対して水平方向にスライド運動 し、下歯列104は押さえ片112に対して水平方向にスライド運動する。
【0070】
以上のように、カム板132が反時計回り方向に回転することにより、上記リンク機構101の作用により、上歯列102、下歯列104、押さえ片110,112が運動する。なお、それらの運動は例示であり、針無し綴じ処理を適切に実行できる限りにおいて、各部材が上記以外の運動を行うようにしてもよい。
【0071】
図8には、近接状態が示されている。なお、
図7に示した構成要素と同一の構成要素には同一符号を付してある。このことは次に示す
図9においても同様である。
【0072】
カム板132の回転により、ローラ138が当たり面136bまで転がっており、これに伴ってリンク部材140の姿勢及び位置に変化が生じている。カム板132にはリンク機構101を構成する他の部材も当たっている。このようなカム板132の回転運動に伴う複数のリンク部材の位置及び姿勢の変化により、つまりリンク機構101の働きにより、上歯列102及び下歯列104が互いに近付けられる。それに先行して、押さえ片110,112が用紙束118にその上下から接しており、つまり用紙束118が挟まれる。なお、この近接状態は、綴じ動作過程後の戻り動作過程においても生じ、当該状態において、押さえ片110,112の作用によって、上歯列102及び下歯列104から用紙束が確実に引き離される。
【0073】
図9には、噛み合い状態が示されている。カム板132が更に回転しており、ローラ138が当たり面136bの奥側まで到達している。リンク部材142の先端が当たり面134に当接し、その先端が跳ね上げられている。それらのリンク部材の位置及び姿勢の変化により、つまりリンク機構101の働きにより、上歯列102と下歯列104が用紙束118を間において噛み合っている。その際、押さえ片110、112は、上歯列102と下歯列104の噛み合いに影響を与えないように、それぞれ用紙束118から若干退避した位置にある。但し、適正荷重をもって噛み合いを形成できる限りにおいて、噛み合い状態において、押さえ片110、112が用紙束118に接触していてもよい。噛み合い状態が形成された後、戻り動作が実行される。その過程で
図8に示した近接状態が生じ、最終的に
図7に示した待機状態に戻る。
【0074】
図7乃至
図9に示した構成は例示に過ぎず、針無し綴じ器100を構成する機構として多様なものを採用し得る。なお、
図7及び
図9に示した構成では、単一の駆動源によるカム軸の回転運動だけで上述した複数のアーム部材の運動が実現されており、電気的な構成に着目した場合に低コストで当該構成が実現されている。
【0075】
なお、回転数を検出するエンコーダはモータ軸又は他の回転軸に設けられる。荷重センサは、例えば、上歯列102と下歯列104の近傍であって綴じ荷重を受ける位置に設けられる。その他、必要に応じて、原点センサ、リミットスイッチ等が設けられる。
【0076】
(3)綴じ動作制御
次に、針無し綴じ器の制御について詳述する。既に説明したように、画像形成ユニット内の制御部により、針無し綴じ器の綴じ動作が制御される。本実施形態において、針無し綴じ器の動作モードには、通常モード及び紙粉低減(紙粉詰まり低減)モードがある。
【0077】
図10に示す制御は、針無し綴じが指定された場合に実行されるものである。S10において、動作モードのマニュアル選択が求められているか否かが判断される。ユーザーが動作モードのマニュアル選択を希望する場合、S12において、ユーザーが選択した動作モードが受け付けられる。
【0078】
動作モードのマニュアル選択が求められていない場合、S14において、制御部により、動作モード自動選択機能を適用外とするか否かが判断される。例えば、
図11に示されるように、ユーザーが動作モード自動選択機能をオフにした場合、針無し綴じ対象が特定種類の用紙である場合(例えば灰分を多く含有する用紙である場合)、綴じ対象部分に画像が存在している場合等、所定の適用外判定条件に該当する場合、動作モード自動選択機能が適用外とされる。
【0079】
例えば、
図12に示すように、用紙束を構成する各用紙において、綴じ対象部分168,170が特定され、すべての綴じ対象部分168,170の中に1つでも画像を含むものがあれば、動作モード自動選択機能が適用外とされてもよい。綴じ対象部分に画像が含まれていると、結着力が弱くなる傾向が認められるため、紙粉残留よりも綴じ部品質を優先させるものである。なお、
図12に示したように両面印刷が行われる場合、表面と裏面のそれぞれについて綴じ対象部分168,170に画像があるか否かが調査される。
【0080】
一方、
図10に示すS14において、適用外判定条件に該当しないと判断された場合、S16において、制御部により、動作モードが自動的に選択される。
図13には動作モード選択方法の第1例が示されている。図示されるように、例えば、環境150が低湿度の場合、動作モード152として通常モードが選択される。通常モードでの標準綴じ荷重154は例えば5000Nである。環境150が高湿度の場合、動作モード152として紙粉低減モードが選択される。紙粉低減モードでの標準綴じ荷重154は例えば4500Nである。すなわち、高湿環境では紙粉が残留し易く紙粉詰まりが生じ易いので、綴じ荷重を下げることにより(例えば綴じ荷重を10%下げることにより)、紙粉ができるだけ残留しないようにして、紙粉詰まりが生じる可能性を低くするものである。高湿環境では綴じ荷重を上げなくても一定の綴じ部品質が得られるので、紙粉低減モードにおいて綴じ荷重を一定程度引き下げても通常、大きな問題は生じない。綴じ荷重の引き下げにより綴じ部品質が問題となる場合には、通常モードをマニュアル選択するか(上記S12を参照)、動作モード自動選択機能をオフにすればよい。そのオフにより
図10において処理がS14からS22へ移行する。つまり、結果として紙粉低減モードが選択されなくなる。また、以下に説明するマニュアル調整機能を利用して実際の綴じ荷重を標準綴じ荷重から変更してもよい。
【0081】
実施形態においては、制御部が、湿度センサの検出値に基づいて低湿状態か高湿状態を判断している。例えば検出された湿度を閾値と比較することによりその判断を行っている。ここで、低湿状態と高湿状態は相対的な概念であり、任意に定め得る。温度と湿度に相関が認められる場合、温度センサの検出値に基づいて低湿状態か高湿状態かを判断してもよい。湿度及び温度の組み合わせから、低温低湿状態及び高温高湿状態を判定し、それぞれの状態に適する綴じ動作条件を適用するようにしてもよい。
【0082】
S18では、制御部により、マニュアルでの綴じ荷重の調整が必要か否かが判断される。調整値は事前に指定しておくことが可能である。あるいは、S18においてユーザーへ調整要否の問い合わせを行ってもよい。調整値が指定されている場合、S20において、標準綴じ荷重が調整値により調整され、これにより実際の綴じ荷重が設定される。
【0083】
ここで、綴じ荷重のマニュアル調整について
図14を用いて説明する。Fmaxは綴じ荷重最大値であり、Fminは綴じ荷重最小値である。通常モードでの標準綴じ荷重がF1で示され、紙粉低減モードでの標準綴じ荷重がF2で示されている。例えば、各標準綴じ荷重が調整可能範囲の上限値として定められている場合、通常モードにおいては、標準綴じ荷重F1からそれよりも低い綴じ荷重F3までの範囲内において調整後の綴じ荷重F1’を指定し得る。調整値ΔFが事前に指定されている場合、綴じ荷重F1から調整値ΔFを引いて、調整後の綴じ荷重F1’が決定される。紙粉低減モードが選択されている場合、標準綴じ荷重F2からそれよりも低い綴じ荷重F4までの範囲内において調整後の綴じ荷重F2’を指定し得る。この場合においても調整値ΔFが事前に指定されていれば、動作モードが判定された時点で、標準綴じ荷重F2から調整値ΔFを引いて、調整後の綴じ荷重F1’が決定される。
【0084】
各標準綴じ荷重が調整可能範囲の中間値として定められてもよい。その場合、
図14に示すように、通常モードにおいては、標準綴じ荷重F1を基準として綴じ荷重F5から綴じ荷重F6までの範囲内で上下方向に綴じ荷重を調整し得る。その場合においては+ΔF又は-ΔFの形式で調整値を事前に指定しておけばよい。同様に、紙粉低減モードにおいては、標準綴じ荷重F2を中心として綴じ荷重F7から綴じ荷重F8までの範囲内で上下方向に綴じ荷重を調整し得る。
【0085】
図10において、選択された動作モードが通常モードであれば、処理がS22からS24へ移行し、綴じ荷重F1又は調整後の綴じ荷重F1’が生じるように綴じ動作が実行される。選択された動作モードが紙粉低減モードであれば、処理がS22からS26へ移行し、綴じ荷重F2又は調整後の綴じ荷重F2’が生じるように綴じ動作が実行される。
【0086】
以上のように、実施形態によれば、高湿環境では綴じ荷重が低減されるので、紙粉詰まりが生じる可能性を低くすることが可能である。これにより、紙粉詰まりを原因として綴じ部品質が低下してしまうことを防止又は軽減でき、同時に、針無し綴じ器の保護を図れる。一方、低湿環境では十分な綴じ荷重で綴じ動作が実行されるので綴じ部品質を維持又は向上できる。
【0087】
図15には、動作モード選択方法の第2例が示されている。この第2例では、状況156として、湿度状態(環境状態)と用紙状態とが判断されている。すなわち、高湿状態か低湿状態かが判断され、また未調湿状態か調湿状態かが判断されている。判断された2種類の状態の組み合わせから、動作モード158が自動的に選択される。
【0088】
例えば、
図16に示されるように、用紙装填後の経過時間に基づいて、未調湿状態か調湿状態かが判断されてもよい。既に説明したように、用紙集積体装填後の給紙カセットのセット時点からの経過時間をタイマーで計測し、その経過時間が閾値未満か(符号162を参照)か閾値以上か(符号163を参照)により、未調湿状態か調湿状態かを判断するようにしてもよい。状況に応じて閾値を任意に定め得る。他の方法により未調湿状態か調湿状態かが判断されてもよい。
【0089】
図15において、高湿状態かつ調湿状態の場合、動作モード158として紙粉低減モードが選択される。紙粉低減モードでの綴じ動作条件としての綴じ荷重は例えば4500Nである。それ以外の組み合わせの場合、動作モード158として通常モードが選択される。通常モードでの綴じ動作条件としての綴じ荷重は例えば5000Nである。
【0090】
図17には、動作モード選択方法の第3例が示されている。状況164として、湿度状態(低湿状態/高湿状態)及び用紙状態(未調湿状態/調湿状態)に加えて、用紙種別(普通紙/再生紙)が考慮されている。図示されるように、それらの組み合わせに応じて動作モード165が選択される。図示の例では、低湿状態では、用紙状態及び用紙種別に応じて、通常モード1~4が選択され、高湿状態では、用紙状態及び用紙種別に応じて、紙粉低減モード1~4が選択される。個々の動作モードごとに標準綴じ荷重166が個別的に定められている。
【0091】
紙粉低減モード1~4に対して定められている標準綴じ荷重は、全体的に見て、通常モード1~4について定められている標準綴じ荷重よりも低くされている。再生紙については紙粉が出やすい傾向が認められるので、普通紙を用いる場合よりも綴じ荷重が低くされている。高湿状態且つ調湿状態で再生紙が用いられる場合には標準綴じ荷重が最も低くされている。なお、本願明細書に記載された各標準綴じ荷重はいずれも例示であり、個々の動作モードごとに任意に標準綴じ荷重を定め得る。
【0092】
図18に示されるように、湿度の大きさに応じて標準綴じ荷重を3段階以上変化させてもよい。図示の例では、湿度が範囲D1内にある場合、標準綴じ荷重として綴じ荷重F10が設定されている。湿度が範囲D2内にある場合、標準綴じ荷重として綴じ荷重F11が設定されている。湿度が範囲D3にある場合、標準綴じ荷重として綴じ荷重F12が設定されている。それぞれの範囲D1,D2,D3においてマニュアル調整可能な綴じ荷重範囲がFF3,FF4,FF5で示されている。図示の例では、調整可能な範囲が湿度範囲D1,D2,D3ごとに異なっている。
【0093】
また
図19に示されるように、通常モードでの綴じ荷重F20をユーザーに指定させ、そこから一定の荷重ΔFbを引くことにより、紙粉低減モードでの綴じ荷重F21が決定されてもよい。複数のモードが存在している場合、このように一律に一定の綴じ荷重を減算して、複数の紙粉低減モードでの複数の綴じ荷重が決定されてもよい。
【0094】
図20乃至22を用いて用紙リスト表示制御について説明する。これは針無し綴じの実行前に、ユーザーに対して、環境に適した用紙(用紙タイプ)の使用を促すものである。
図20に示される動作は、例えば、針無し綴じがユーザーにより指定された時点で実行される。
【0095】
S30では現在の環境が判断される。具体的には、検出された湿度に基づいて通常環境か高湿環境が判断される。通常環境であれば、S32においてその環境に適合した用紙リストがUI上に表示される。高湿環境であれば、S34においてその環境に適合した用紙リストがUI上に表示される。用紙リストの表示制御のために、
図21に示すようなテーブルを管理してもよい。そのテーブルは通常環境に適する用紙のリスト172と高湿環境に適する用紙のリスト174を含むものである。上記S32,34においては例えば
図22に示されるようなメッセージ176がUIに表示される。それには推奨される用紙のリスト178が含まれる。メッセージ176の内容及び用紙のリスト178の内容が環境に応じて変化する。なお、紙粉軽減モードを有しない画像形成装置において本表示制御を適用してもよい。
【0096】
図23乃至
図25を用いて画像消し処理を推奨する表示の制御について説明する。その制御は、針無し綴じの実行前に、環境に応じて画像消し処理をユーザーに対して推奨するものである。
図23において、S40では、現在の環境が通常環境か高湿環境かが判断される。高湿環境である場合、S42において、ユーザーに対して画像消し処理を推奨するメッセージが表示される。例えば、
図24にその表示例が示されている。画像消し処理を選択した場合、例えば、
図25に示すような画像消し処理が実行される。図示の例では、用紙180の全体の中で、画像が存在するのは画像領域182である。画像領域182中の上部領域184内に綴じ対象部分181a,181bが含まれている。図示の例では、上部領域184を除く領域186が、実際に画像形成が行われる領域である。上部領域184については画像形成対象外の領域とされる。すなわち、画像の一部を印刷対象外とすることにより、綴じ対象部分に画像が存在しないようにするものである。この機能は枠消し処理とも呼ばれている。消される部分が綴じ対象部分に限定されてもよい。綴じ対象部分の位置及び個数は画像形成装置において既知であるので、綴じ対象部分の位置及び個数に応じて枠消し処理条件が自動的に決定されてもよい。また、画像の縮小印刷又は印刷位置の変更により、綴じ対象部分が画像に重ならないようにしてもよい。なお、紙粉軽減モードを有しない画像形成装置において本表示制御を適用してもよい。
【0097】
図26には、歯間清掃手段を構成する一対のブラシ部材200,202のxz面が示されている。ブラシ部材200は、押さえ片110の上面側に上向きで設けられている。ブラシ部材202は、押さえ部材の下面側に下向きで設けられている。
【0098】
既に説明したように、綴じ運動過程において、上歯列102は押さえ片110に対して相対的なスライド運動を行う。その際においてブラシ部材200が上歯列102に当たり、歯間に存在する紙粉が擦り取られる。戻り動作過程においても逆向きのスライド運動が生じ、上歯列102に対して紙粉清掃が実行される。一方、下歯列104は、綴じ運動過程において、押さえ片112に対して相対的なスライド運動を行う。その際においてブラシ部材202が下歯列に当たり、歯間に存在する紙粉が擦り取られる。戻り動作過程においても同様である。一対のブラシ部材200,202で一対の歯列102,104を清掃する場所は、
図26に示すように、一対の歯列102,104で用紙束を綴じる場所とは異なっており、一対のブラシ部材200,202でかき出した紙粉が綴じ力に影響を与えないようになっている。
【0099】
図27は、一対のブラシ部材200,202のyz面が拡大図として示されている。ここでは、上歯列102及び下歯列104において複数の凹部内に紙粉が残留している。各ブラシ部材200,202は、ベース204,208と、植毛群206,210とにより構成される。押さえ片110,112に対して歯列102,104が相対的に運動する過程において、植毛群206,210を構成する複数の線状体が各凹部内に入り込み、各凹部内から紙粉を追い出す。そのような歯間清掃が1回の綴じ処理当たり2回実行される。
【0100】
以上のように、一対の押さえ片110,112に対する一対の歯列102,104の相対運動を利用して、一対の歯列102,104のブラッシングを行えるので、簡易な構成で紙粉残留を防止又は軽減できる。綴じ処理単位での2回の歯間清掃(こまめな歯間清掃)を前提とした場合、紙粉残留や紙粉堆積物成長の可能性を低くできるので、紙粉軽減モードでの綴じ荷重をあまり低くしないでもよくなる。つまり、紙粉詰まり防止と綴じ部品質の維持とを両立させることが可能である。各ブラシ部材200,202を交換可能に配置してもよい。
【0101】
綴じ処理動作とは別に歯間清掃動作が実行されてもよい。例えば、清掃の必要が検知されたタイミング、ユーザーからの清掃指示が入力されたタイミング、プリセットされた時間的条件が満たされたタイミング等において、歯間清掃が実行されてもよい。綴じ処理動作を伴わない歯間清掃時においては、綴じ運動過程において一対の歯列に対して一対のブラシが通り過ぎた時点で一対のブラシ部材の運動を停止させ、その後、それらを戻り運動させればよい。一対の歯列に対して一対のブラシ部材が当たっている状態で一対のブラシ部位を繰り返し往復運動させてもよい。また、環境センサの出力に基づいて一対のブラシ部材の清掃力が調整されてもよい。清掃力の調整は、一般に、各ブラシ部材を各歯列に対して押し当てる力を調整することにより行える。各歯列に対する各ブラシ部材の相対的な速度の可変等によって清掃力が調整されてもよい。環境センサの出力に基づいて歯間清掃の頻度等が調整されてもよい。上記の制御部は、歯間清掃動作の制御及び歯間清掃条件を調整する手段として機能する。他の部分がその機能を担うようにしてもよい。
【0102】
(4)開示事項の整理
実施形態に係る画像形成装置は針無し綴じ器と制御部とを含む。針無し綴じ器は、一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟んで凹凸痕としての綴じ部を形成する。制御部は、通常モード及び紙粉低減モードを含む動作モード群の中から選択された動作モードに従って針無し綴じ器の動作を制御するものであり、前記紙粉低減モードが選択された場合には、前記通常モードが選択された場合に適用される綴じ動作条件よりも紙粉が生じ難い綴じ動作条件を適用する。
【0103】
この構成によれば、針無し綴じ器の動作モードとして、通常モードの他、紙粉低減モード(紙粉詰まり低減モードとも言い得る)が用意されているので、紙粉(特に紙粉残留)が生じ易い状況において、あるいは、深刻な紙粉詰まりが生じる可能性を低減したい状況において、自動的に又はマニュアル選択により紙粉低減モードを実行させることができる。これにより、紙粉残留量を低減でき、あるいは、紙粉詰まりが生じる可能性を低くできる。
【0104】
本発明者らの実験によれば、高湿(特に高温高湿)環境においては低湿(特に低温低湿)環境に比べて紙粉詰まりが生じ易いことが判明している。一般に、高湿環境においては綴じ荷重を下げても一定品質の綴じ部を形成できる。そこで、実施形態においては、高湿条件を含む紙粉低減モード選択条件が満たされる場合に紙粉低減モードが選択され、低減された綴じ荷重で針無し綴じが実行される。
【0105】
実施形態において、通常モードと紙粉低減モードは綴じ荷重の観点から見て相対的な関係にある。実施形態において、通常モードでの綴じ荷重は紙粉低減モードでの綴じ荷重よりも大きく、換言すれば、紙粉低減モードでの綴じ荷重は通常モードでの綴じ荷重よりも小さい。紙粉低減モードの実行時において、更に他の条件に従って綴じ荷重が段階的に又は連続的に切り替えられてもよい。例えば、綴じる枚数に応じて綴じ荷重が変更されてもよい。また、上記2つの動作モード以外の他の動作モードが用意されてもよい。綴じ動作条件としては、綴じ荷重以外に、例えば、綴じ動作速度があげられる。状況次第では、綴じ動作速度の低減により、紙粉詰まりが防止又は軽減されてもよい。紙粉低減モードにおいて、綴じ荷重及び綴じ動作速度の両者が引き下げられてもよい。
【0106】
実施形態において、制御部は、少なくとも環境センサの出力に基づいて動作モードを選択する。紙粉又は紙粉詰まりが生じ易い状況か否かを環境センサの検出値に基づいて判断するものである。実施形態において、環境センサは少なくとも湿度を検出するセンサである。制御部は、検出された湿度が高湿条件を満たすことを含む紙粉低減モード選択条件が充足される場合に紙粉低減モードを選択する。このように環境に応じて自動的に紙粉低減モードが選択される。これによりユーザーの負担が軽減される。環境センサとして温度センサが設けられてもよく、あるいは、環境センサとして湿度センサ及び温度センサが設けられてもよい。
【0107】
実施形態において、紙粉低減モード選択条件には、更に用紙束が調湿条件を満たすことが含まれ、制御部は、高湿条件の充足及び調湿条件の充足に基づいて紙粉低減モードを選択する。用紙装填時には、通常、用紙積層体を包んでいる包装紙が取り外されて、それにより剥き出しとなった用紙積層体が給紙カセットの中に収容される。その時点から各用紙に対して環境の影響が及び始める。一般に、高湿環境下では用紙の含水率が上がり、低湿環境下では用紙の含水率が下がる。そこで、実施形態では、動作モードの選択に際して、針無し綴じの対象となった用紙束が調湿条件を満たすか否かが考慮される。例えば、高湿環境下において用紙束が調湿状態にあれば紙粉低減モードが選択される。調湿状態は用紙の含水率が環境湿度に応じてある程度平衡状態になった状態である。
【0108】
実施形態においては、制御部により、用紙装填後の経過時間に基づいて用紙束が調湿条件を満たすか否かが判断される。これによれば、時間的基準に基づいて調湿状態か否かを判断できる。経過時間の始期は、例えば、用紙切れ検出時、又は、用紙切れ検出後且つ用紙装填後の給紙カセットのセット時(給紙準備完了時)等として定められる。実施形態においては、複数の給紙カセットが存在しており、個々の給紙カセットごとに経過時間が管理される。その上で、針無し綴じ対象となっている用紙束に対応する経過時間に基づいて当該用紙束が調湿状態にあるか否かが判断される。開封時期を厳密に特定できないとしても、一定の蓋然性をもって調湿状態か否かが判断されれば、用紙状態を何ら考慮しない場合に比べて、利便性を向上できあるいは針無し綴じ動作の信頼性を高められる。
【0109】
実施形態において、紙粉低減モード選択条件には、更に用紙束を構成する各用紙が用紙条件を満たすことが含まれ、制御部は、高湿条件の充足及び用紙条件の充足に基づいて、紙粉低減モードを選択する。用紙種類によって紙粉の出る量や綴じ部の保持力は相違する。そこで、動作モードの選択に際して、用紙条件を充足するか否かが考慮される。用紙条件は例えば普通紙、再生紙といった用紙種別である。
【0110】
実施形態において、紙粉低減モードにおける綴じ荷重は標準綴じ荷重であり、標準綴じ荷重をマニュアルで調整するための調整部を含み、制御部は、調整後の綴じ荷重に従って針無し綴じ機構の動作を制御する。この構成によれば、紙粉低減モードが選択された場合であっても、調整後の綴じ荷重で綴じ動作を行わせることができる。これにより綴じ動作条件を具体的な状況やニーズに合わせることが可能となる。実施形態において、標準綴じ荷重は調整可能な範囲中の上限値であり、調整部により標準綴じ荷重が引き下げられる。あるいは、標準綴じ荷重は調整可能な範囲中の中間値であり、調整部により標準綴じ荷重を上下に調整し得る。中間値は基準値であり、その中間値として中央値以外の値を採用し得る。
【0111】
実施形態において、制御部は、紙粉低減モード自動選択機能をオフにするユーザー入力があった場合に紙粉低減モードを選択しないようにする。紙粉詰まりの可能性低減よりも綴じ部品質を優先させたいような場合に紙粉低減モード自動選択機能がオフにされる。実施形態において、制御部は、用紙状況が紙粉低減モードに適しないものである場合に紙粉低減モード自動選択機能を選択しないようにする。例えば、綴じ部の保持力が低くなりがちな用紙である場合、綴じ部に画像が含まれる場合等において通常モードが選択される。
【0112】
別の見方をすると、実施形態に係る画像形成装置は、一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟んで凹凸痕としての綴じ部を形成する針無し綴じ器と、前記針無し綴じ器の動作を制御する制御部であって、高湿条件を満たす第1状態においては低湿条件を満たす第2状態に比べて紙粉詰まりが生じにくい綴じ荷重を適用する制御部と、を含む。第1状態においては綴じ部形成に際して紙粉詰まりが生じにくい綴じ荷重が適用される。
【0113】
実施形態において、針無し綴じ器は、一対の歯列に対して歯間清掃を行う歯間清掃手段を有する。この構成によれば、歯間清掃と紙粉低減モードの両者相まって、紙粉詰まりが生じる可能性を低くできる。歯間清掃は綴じ処理の都度又は必要なタイミングで実施される。実施形態において、歯間清掃手段は、一対の歯列の運動時に前記歯間清掃を行う一対のブラシ部材により構成される。綴じ動作及び戻り動作の一方又は両方を利用してブラッシングが行われるようにすれば、部品点数を削減できる。ブラッシング以外の方法で歯間から紙粉が取り除かれてもよい。例えば、ジェットエアの吹き付け、その他の方法が考えられる。なお、紙粉低減モードを有しない針無し綴じ器に対して歯間清掃手段が設けられてもよい。
【0114】
そのような観点から捉え直すと、実施形態に係る画像形成装置は、一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟んで凹凸痕としての綴じ部を形成する針無し綴じ器と、一対の歯列に対して紙粉の取り除きを行う歯間清掃手段と、を有することを特徴とするものである。
【符号の説明】
【0115】
10 画像形成装置、12 画像形成ユニット、14 後処理ユニット、34 温度センサ、36 湿度センサ、38 制御部、44 針無し綴じ機構、50 針無し綴じ器、66 上歯列、68 下歯列、82 PWMコントローラ、84 モータ、100 針無し綴じ器、101 リンク機構、132 カム板、102 上歯列、104 下歯列、110,112 押さえ片、200,202 ブラシ部材。