(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】車体下面構造
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20220614BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B62D37/02 Z
B62D25/20 N
(21)【出願番号】P 2018056453
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】西田 周平
(72)【発明者】
【氏名】久我 秀功
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 浩之
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039354(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049215(WO,A1)
【文献】特開2008-265677(JP,A)
【文献】特開2011-162093(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02510580(GB,A)
【文献】特開2006-232180(JP,A)
【文献】特許第5235220(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のトレーリングアームと、これらを連結するトーションビームとから成るトーションビーム式リヤサスペンションを備え、
当該リヤサスペンションの前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバーが取付けられた車体下面構造であって、
上記トレーリングアームの下部に車体下面視でこれを覆う板状の整流用のアームカバーが取付けられ、
上記アームカバーは車体下面視でその車幅方向外縁が後輪のリム内に入り込む延長部を備え
、
車体下面視で上記フロアアンダカバーの後端辺と、上記アームカバーの前端辺とが対向して近接配置されると共に、
上記フロアアンダカバーの後端部車外側外縁と、上記アームカバーの前端部車外側外縁とが、後輪の前部内側面を迂回して車両前後方向に連続することを特徴とする
車体下面構造。
【請求項2】
左右一対のトレーリングアームと、これらを連結するトーションビームとから成るトーションビーム式リヤサスペンションを備え、
当該リヤサスペンションの前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバーが取付けられた車体下面構造であって、
上記トレーリングアームの下部に車体下面視でこれを覆う板状の整流用のアームカバーが取付けられ、
上記アームカバーは車体下面視でその車幅方向外縁が後輪のリム内に入り込む延長部を備え、
上記延長部が上記トレーリングアームの車外側端部よりも後輪のリム側に張り出した片持ち形状に構成されると共に、
上記アームカバーの少なくとも上記延長部の車幅方向外縁には上方に延びる縦壁部が設けられたことを特徴とする
車体下面構造。
【請求項3】
左右一対のトレーリングアームと、これらを連結するトーションビームとから成るトーションビーム式リヤサスペンションを備え、
当該リヤサスペンションの前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバーが取付けられた車体下面構造であって、
上記トレーリングアームの下部に車体下面視でこれを覆う板状の整流用のアームカバーが取付けられ、
上記アームカバーは車体下面視でその車幅方向外縁が後輪のリム内に入り込む延長部を備え、
上記アームカバーの下面は、車両後方に向かって下方に傾斜していることを特徴とする
車体下面構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体下面構造に関し、詳しくは、左右一対のトレーリングアームと、これらを連結するトーションビームとから成るトーションビーム式リヤサスペンションを備え、当該リヤサスペンションの前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバーが取付けられた車体下面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、左右一対の後輪を懸架する構造として、トーションビーム式リヤサスペンションが知られている。このトーションビーム式リヤサスペンションは、車両前後方向に延びる左右一対のトレーリングアームと、これらを車幅方向に延びて連結するトーションビームとを備えている。
【0003】
リヤホイールハウス内への床下走行風の流入を抑制することを目的として、上記トーションビーム式リヤサスペンションのトレーリングアーム下部に車体下面視でこれを覆う板状の整流用アンダカバーを取付ける構造が考えられる。
【0004】
上述のアンダカバーを設けると、床下走行風がホイールハウス内へ入り込むことを抑制することができる反面で、アンダカバーに沿って流れる走行風が、流速の速い車体側面流により吸い出されることに起因し、アンダカバーの車幅方向外縁からホイール(後輪)内に上昇して入り込む流れが発生することが判明した。
【0005】
この流れ成分は、流速が速い車体側面流により吸い出されて、後輪のスポーク面から車体側面に流れ出し、車体後流を乱す要因となっていた。
【0006】
ところで、特許文献1には、トーションビーム式リヤサスペンションを備えた車両において、トレーリングアーム下部に車体下面視でこれを覆う整流用のアンダカバーを取付けた構造が開示されている。
また、特許文献2には、トーションビーム式リヤサスペンションと、後部車体下面に設けられた整流用のリヤアンダカバーと、を備えた構造が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記何れの特許文献1,2においても、トレーリングアーム下部を覆うアンダカバーの車幅方向外縁からホイール(後輪)内に上昇して入り込む流れに着目する点については、開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5235220号公報
【文献】特開2017-39354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、床下走行風(いわゆるフロア下流れ)がリヤホイールハウス内に上昇して入り込むのを遮断すると共に、アームカバーの車幅方向外縁から後輪内に上昇して入り込む流れを抑制し、以て、車体後流の乱れを抑制することができる車体下面構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による車体下面構造は、左右一対のトレーリングアームと、これらを連結するトーションビームとから成るトーションビーム式リヤサスペンションを備え、当該リヤサスペンションの前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバーが取付けられた車体下面構造であって、上記トレーリングアームの下部に車体下面視でこれを覆う板状の整流用のアームカバーが取付けられ、上記アームカバーは車体下面視でその車幅方向外縁が後輪のリム内に入り込む延長部を備え、車体下面視で上記フロアアンダカバーの後端辺と、上記アームカバーの前端辺とが対向して近接配置されると共に、上記フロアアンダカバーの後端部車外側外縁と、上記アームカバーの前端部車外側外縁とが、後輪の前部内側面を迂回して車両前後方向に連続するものである。
【0011】
上記構成によれば、床下走行風(いわゆるフロア下流れ)がリヤホイールハウス内に上昇して入り込むのを、上記アームカバーにて遮断すると共に、アームカバーに沿って後方へ移動し、当該アームカバーの車幅方向外縁から後輪内に上昇して入り込む流れを、上記延長部にて抑制し、以て、車体後流の乱れを抑制することができる。
【0012】
しかも、車体下面視で上記フロアアンダカバーの後端辺と、上記アームカバーの前端辺とが対向して近接配置されると共に、上記フロアアンダカバーの後端部車外側外縁と、上記アームカバーの前端部車外側外縁とが、後輪の前部内側面を迂回して車両前後方向に連続するものである。
【0013】
これにより、フロアアンダカバー下面に沿って通過する風が、当該フロアアンダカバーが終わった後で、ホイールハウス内に上がって流れることを、アームカバーと協働して防止することができる。
【0014】
この発明による車体下面構造は、また、左右一対のトレーリングアームと、これらを連結するトーションビームとから成るトーションビーム式リヤサスペンションを備え、当該リヤサスペンションの前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバーが取付けられた車体下面構造であって、上記トレーリングアームの下部に車体下面視でこれを覆う板状の整流用のアームカバーが取付けられ、上記アームカバーは車体下面視でその車幅方向外縁が後輪のリム内に入り込む延長部を備え、上記延長部が上記トレーリングアームの車外側端部よりも後輪のリム側に張り出した片持ち形状に構成されると共に、上記アームカバーの少なくとも上記延長部の車幅方向外縁には上方に延びる縦壁部が設けられたものである。
【0015】
上記構成によれば、床下走行風(いわゆるフロア下流れ)がリヤホイールハウス内に上昇して入り込むのを、上記アームカバーにて遮断すると共に、アームカバーに沿って後方へ移動し、当該アームカバーの車幅方向外縁から後輪内に上昇して入り込む流れを、上記延長部にて抑制し、以て、車体後流の乱れを抑制することができる。
【0016】
しかも、上記アームカバーの延長部が片持ち構造であっても、上記縦壁部にてアームカバーの強度確保を図ることができる。
【0017】
この発明による車体下面構造は、さらに、左右一対のトレーリングアームと、これらを連結するトーションビームとから成るトーションビーム式リヤサスペンションを備え、当該リヤサスペンションの前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバーが取付けられた車体下面構造であって、上記トレーリングアームの下部に車体下面視でこれを覆う板状の整流用のアームカバーが取付けられ、上記アームカバーは車体下面視でその車幅方向外縁が後輪のリム内に入り込む延長部を備え、上記アームカバーの下面は、車両後方に向かって下方に傾斜していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、床下走行風(いわゆるフロア下流れ)がリヤホイールハウス内に上昇して入り込むのを遮断すると共に、アームカバーの車幅方向外縁から後輪内に上昇して入り込む流れを抑制し、以て、車体後流の乱れを抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】フロアアンダカバーとアームカバーとの関連構造を示す側面図
【
図6】本実施例の床下走行風の流れを示す要部拡大底面図
【
図7】(a)は本実施例の床下走行風の流れを示す底面斜視図、(b)は比較例の床下走行風の流れを示す底面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
床下走行風(いわゆるフロア下流れ)がリヤホイールハウス内に上昇して入り込むのを遮断すると共に、アームカバーの車幅方向外縁から後輪内に上昇して入り込む流れを抑制し、以て、車体後流の乱れを抑制するという目的を、左右一対のトレーリングアームと、これらを連結するトーションビームとから成るトーションビーム式リヤサスペンションを備え、当該リヤサスペンションの前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバーが取付けられた車体下面構造であって、上記トレーリングアームの下部に車体下面視でこれを覆う板状の整流用のアームカバーが取付けられ、上記アームカバーは車体下面視でその車幅方向外縁が後輪のリム内に入り込む延長部を備え、車体下面視で上記フロアアンダカバーの後端辺と、上記アームカバーの前端辺とが対向して近接配置されると共に、上記フロアアンダカバーの後端部車外側外縁と、上記アームカバーの前端部車外側外縁とが、後輪の前部内側面を迂回して車両前後方向に連続するという構成にて実現した。
【実施例】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車体下面構造を示し、
図1は当該車体下面構造を備えた車両の側面図、
図2は
図1の要部の底面図、
図3は
図2の車両左側の拡大図、
図4はフロアアンダカバーとアームカバーとの関連構造を示す側面図、
図5は
図3のA-A線に沿う矢視断面図、
図6は本実施例の床下走行風の流れを示す要部拡大底面図、
図7の(a)は本実施例の床下走行風の流れを示す底面斜視図、
図7の(b)は比較例の床下走行風の流れを示す底面斜視図である。
【0022】
図1に示すように、車体側部において、車両前部のフロントドア開口1を開閉可能に閉塞するサイドドアとしてのフロントドア2と、車両後部のリヤドア開口3を開閉可能に閉塞するサイドドアとしてのリヤドア4とを設けている。
上述のフロントドア2はドアアウタハンドル5を備えており、同様に、上述のリヤドア4もドアアウタハンドル6を備えている。
【0023】
図1に示すように、上述のフロントドア2の前部には、エンジンルームの側方を覆うフロントフェンダパネル7が設けられており、前輪8の位置と対応してフロントフェンダパネル7の下部には前輪ホイールハウス9が一体的に設けられている。
【0024】
図1に示すように、上述のリヤドア4の後部には、荷室側方を覆うリヤフェンダパネル10が設けられており、後輪11の位置と対応してリヤフェンダパネル10の下部には後輪ホイールハウス12が一体的に設けられている。
なお、
図1において、13はドアミラー、14は車両後部から左右の車両側部に回り込むように形成されたリヤバンパフェースである。
【0025】
図2に示すように、前輪ホイールハウス9の後縁下端部と後輪ホイールハウス12の前縁下端部との間において、車室下部を車両前後方向に延びるサイドシル15が設けられている。
このサイドシル15は、サイドシルアウタとサイドシルインナ15Aとを接合固定して、車両前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体強度部材である。
【0026】
図2に示すように、左右一対のサイドシル15,15には、当該サイドシル15を前後のホイールハウス9,12間にわたって覆うように設けられた樹脂製のガーニッシュ16,16が取付けられている。
【0027】
後輪ホイールハウス12内の後輪11前部と対向するように、上述のガーニッシュ16の後端部には、タイヤデフレクタ17を設け、車体側部を流れる側面流が後輪ホイールハウス12内に入り込まないよう、当該側面流を一旦、車外側に指向させた後に、タイヤホイール外面に再付着するように偏向すべく構成している。
【0028】
ここで、
図5に示すように、上述の後輪ホイールハウス12は、ホイールハウスアウタ12Aと、ホイールハウスインナ12Bとを接合固定して形成したもので、当該後輪ホイールハウス12の後輪11と対向する側の面には、ホイールハウスマッドガード12Cを配置している。
【0029】
図5に示すように、車室および荷室の底面を形成するフロアパネル18は、フロントフロアパネルと、リヤシートパンと、荷室凹部を含むリヤフロアパネルとを、車両前後方向に連続形成したものである。
【0030】
図2に示すように、上述のフロントフロアパネルからリヤシートパンの前後方向中間部まで車両前後方向に延びる上述のサイドシル15がフロアパネル18の車幅方向サイド部に接合固定されている。
【0031】
図2、
図5に示すように、上述のリヤシートパンの前後方向中間部からリヤフロアパネル後端まで車両前後方向に延びるリヤサイドフレーム19を設けている。
図5に示すように、このリヤサイドフレーム19は、リヤサイドフレームアッパ20と、リヤサイドフレームロア21とを備えており、これらリヤサイドフレームアッパ20と、リヤサイドフレームロア21との間には、車両前後方向に延びるリヤサイドフレーム閉断面S1が形成されている。
【0032】
図2に示すように、後輪11,11の中心部よりも後方対応位置において、左右一対のリヤサイドフレーム19,19間には、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ22を横架し、このリヤクロスメンバ22で左右一対のリヤサイドフレームロア21,21間を車幅方向に連結している。
【0033】
一方、
図2に示すように、フロア下部のトンネル部には、エンジンの排気ポートおよび排気マニホルドから排出された排気ガスを車両後方に導く排気管30(いわゆるエキゾーストパイプ)を設けている。この排気管30には触媒コンバータ31を介設すると共に、リヤクロスメンバ22後部位置まで延びる排気管30の後端部には、消音器としてのサイレンサ32を連通連結しており、このサイレンサ32の左右両側には、一旦、車幅方向外側に延びた後に、車両後方に延びる底面視L字形状のテールパイプ33,33を取付けている。
そして、上述のサイレンサ32の前部車幅方向外側と、テールパイプ33のコーナ部との間を、整流用のカバー34で、その下方から覆っている。
【0034】
図2に示すように、トンネル部を除いて車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバー35,36を設けている。これら左右一対の各フロアアンダカバー35,36はその底面に平坦な整流面を備えている。
また、これらのフロアアンダカバー35,36は、前側のフロアアンダカバー35と後側のフロアアンダカバー36とを車両前後方向に連続するように形成したものである。
【0035】
図2に示すように、左右一対の後輪11,11を懸架するトーションビーム式リヤサスペンション40を設けている。
このリヤサスペンション40は、車両前後方向に延びる左右一対のトレーリングアーム41,41と、これらの各トレーリングアーム41,41を車幅方向に延びて連結するトーションビーム42(ねじり棒ばね)と、を備えている。
【0036】
図5に示すように、上述のトーションビーム42は、内部中空の閉断面構造に形成されている。
また、上述のトレーリングアーム41は、同図に示すように、トレーリングアームアウタ43と、トレーリングアームインナ44とを接合固定して、閉断面構造に形成したものである。
【0037】
上述のトレーリングアーム41の車幅方向内側とトーションビーム42の後面部との両者に接合固定された下部バネ座(図示せず)と、リヤサイドフレーム19におけるリヤサイドフレームロア21の下面に取付け固定した上部バネ座45と、の間には、サスペンションスプリングとしてのコイルスプリング46を張架している。
【0038】
さらに、
図4、
図5に示すように、上述のトレーリングアーム41の後端側上部と、車体側(後輪ホイールハウス12におけるホイールアーチ上部のダンパ取付け部)との間には、ダンパ47を張架している。
【0039】
そして、
図2、
図3に示すように、トレーリングアーム41の下部には、車体下面視で当該トレーリングアーム41を下方から覆う板状の整流用のアームカバー50が取付けられている。
ここで、上述のフロアアンダカバー35,36は、リヤサスペンション40の前方において車体下面を下方から覆う整流用のカバーである。
【0040】
図5、
図6、
図7の(a)に示すように、上述のアームカバー50は、ボルト51,52,53等の取付け部材とブラケットとを用いて、トレーリングアーム41の下面または下部バネ座の下面に取付けられており、該アームカバー50がトレーリングアーム41と共に変位するよう構成している。
【0041】
上述のボルト51はアームカバー50の前部車幅方向外側に位置し、ボルト52はアームカバー50の前後方向中間部かつ車幅方向内側に位置し、ボルト53はアームカバー50の後部車幅方向外側に位置する。
【0042】
図6、
図7の(a)に示すように、取付け部材として上述のボルト51,52,53を用いた場合、これらの各ボルト51,52,53の頭部がアームカバー50の下面、つまり整流面よりも下方へ突出しないように、ボルト51,52,53配設部は、上方に窪む凹部54,55,56に形成されている。
一方、上述の後輪11は、
図5に示すように、リム11Rとタイヤ11Tとを備えている。
【0043】
図3、
図6、
図7の(a)に示すように、上述のアームカバー50は車体下面視でその車幅方向外縁が後輪11のリム11R内に入り込む延長部50Aを備えている。
【0044】
図6に示すように、この実施例では、上述の延長部50Aはリム幅の約18~20%となる位置までリム11R内に入り込んでいるが、この入り込み量は上記数値に限定されるものではない。
【0045】
これにより、
図7の(a)に示すように、床下走行風(同図の太線矢印参照)がリヤホイールハウス12内に上昇して入り込むのを、上述のアームカバー50にて遮断すると共に、アームカバー50に再付着した後に当該アームカバー50に沿って後方へ移動し、かつ、当該アームカバー50の車幅方向外縁から後輪11(特に、そのリム11R)内に上昇して入り込もうとする流れを、上述の延長部50Aにて抑制し、この後輪11内への入り込み流れを抑制することで、車体後流の乱れを抑制すべく構成したものである。
【0046】
図7の(b)は比較例の床下走行風の流れを示す底面斜視図であって、説明の便宜上、
図7の(a)で示した実施例の符号と同一符号を付している。また、
図7の(a)において仮想線β1,β2は比較例(
図7の(b)参照)の形状を示し、
図7の(b)において仮想線α1,α2は実施例(
図7の(a)参照)の形状を示している。
【0047】
図7の(a)で示した実施例の構成に対して、
図7の(b)に比較例で示すように、アームカバー50に延長部50Aが存在しない場合には、同図に太線矢印で示すように、
アームカバー50に沿って流れる床下走行風が、流速の速い車体側面流により吸い出されることに起因して、
アームカバー50の車幅方向外縁から後輪11のリム11R内に上昇して入り込む流れが発生するものである。これに対して、
図7の(a)に示す実施例では、アームカバー50の車幅方向外縁から後輪11内に上昇して入り込む流れを、上述の延長部50Aにより抑制することができるものである。
【0048】
図5に示すように、上述のアームカバー50の延長部50Aは,車体下面視でトレーリングアーム41のトレーリングアームアウタ43よりも車幅方向外向きに張り出している。
【0049】
図6に示すように、上述のアームカバー50の延長部50Aの前縁50aに、前方に位置するフロアアンダカバー36の後端部36aが車両前後方向の略一致する位置で対向して近接するよう上記フロアアンダカバー36にはフロアアンダカバー延長部36Aが形成されている。
【0050】
上述のアームカバー50の延長部50Aと,フロアアンダカバー延長部36Aとの両延長部により、フロア下と後輪ホイールハウス12とを連通する隙(すなわち、後輪11のタイヤ11T内縁と、フロアアンダカバー36の後端部36aと、アームカバー50の前端部51aとの間の空隙)を減少させて、床下走行風の後輪ホイールハウス12内への入り込みを抑制し、これにより、車体後流の乱れを抑制すべく構成したものである。
【0051】
さらに、
図6に底面図で示すように、車体下面視で、上述のフロアアンダカバー36の後端辺36bと、上述のアームカバー50の前端辺50bとは対向し、かつ平行となるように近接配置されており、フロアアンダカバー36の延長部36Aにおける後端部車外側外縁36cと、アームカバー50の延長部50Aの前端部車外側外縁50cとが、後輪11のタイヤ11Tにエンベロープ(envelope、タイヤ稼働範囲)を隔てて、当該後輪11のタイヤ11Tの前部内側面を迂回して車両前後方向に連続するように形成している。
【0052】
これにより、フロアアンダカバー36の下面に沿って通過する床下走行風が、当該フロアアンダカバー36が終わった後で、ホイールハウス12内に上がって流れることを、フロアアンダカバー36とアームカバー50との協働により防止すべく構成したものである。
【0053】
図5、
図6に示すように、上述のアームカバー50の延長部50Aは、トレーリングアーム41のトレーリングアームアウタ43の車外側端部よりも後輪11のリム11R側に張り出した片持ち形状に構成されると共に、当該アームカバー50の少なくとも上記延長部50Aの車幅方向外縁には、上方に延びる縦壁部50dが設けられている。
【0054】
この実施例では、
図5に示すように、上述のアームカバー50の車幅方向内縁にも、上方に延びる縦壁部50eが設けられている。ここで、上述のアームカバー50は、ポリプロピレン等の合成樹脂により形成されるもので、上述の各縦壁部50d,50eはアームカバー本体と一体形成されるものである。
これにより、上述のアームカバー50の延長部50Aが片持ち構造であっても、上記縦壁部50dにてアームカバー50の強度確保を図るよう構成したものである。
【0055】
なお、図中、60はサイレンサ32の底面とリヤバンパフェース14の底面との間の整流を図るリヤアンダカバーであり、61は燃料タンク、62はサイレンサ32とフロアパネル18側との間に介設された熱害防止用のインシュレータである。
【0056】
また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
さらに、上記実施例においては、車体下面構造として、車両左側の構造を例示したが、車両右側の構造は、車両左側のそれと同様に形成されている。
【0057】
このように、上記実施例の車体下面構造は、左右一対のトレーリングアーム41と、これらを連結するトーションビーム42とから成るトーションビーム式リヤサスペンション40を備え、当該リヤサスペンション40の前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバー36が取付けられた車体下面構造であって、上記トレーリングアーム41の下部に車体下面視でこれを覆う板状の整流用のアームカバー50が取付けられ、上記アームカバー50は車体下面視でその車幅方向外縁が後輪11のリム11R内に入り込む延長部50Aを備えたものである(
図3、
図6、
図7の(a)参照)。
【0058】
この構成によれば、床下走行風(いわゆるフロア下流れ)がリヤホイールハウス12内に上昇して入り込むのを、上記アームカバー50にて遮断すると共に、アームカバー50に沿って後方へ移動し、当該アームカバー50の車幅方向外縁から後輪11内に上昇して入り込む流れを、上記延長部50Aにて抑制し、以て、車体後流の乱れを抑制することができる。
【0059】
この発明の一実施形態においては、車体下面視で上記フロアアンダカバー36の後端辺36bと、上記アームカバー50の前端辺50bとが対向して近接配置されると共に、上記フロアアンダカバー36の後端部車外側外縁36cと、上記アームカバー50の前端部車外側外縁50cとが、後輪11の前部内側面を迂回して車両前後方向に連続するものである(
図3、
図6参照)。
【0060】
この構成によれば、フロアアンダカバー36下面に沿って通過する風が、当該フロアアンダカバー36が終わった後で、ホイールハウス12内に上がって流れることを、アームカバー50と協働して防止することができる。
【0061】
この発明の一実施形態においては、上記延長部50Aが上記トレーリングアーム41の車外側端部よりも後輪11のリム11R側に張り出した片持ち形状に構成されると共に、上記アームカバー50の少なくとも上記延長部50Aの車幅方向外縁には上方に延びる縦壁部50dが設けられたものである(
図5参照)。
【0062】
この構成によれば、上記アームカバー50の延長部50Aが片持ち構造であっても、上記縦壁部50dにてアームカバー50の強度確保を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、左右一対のトレーリングアームと、これらを連結するトーションビームとから成るトーションビーム式リヤサスペンションを備え、当該リヤサスペンションの前方に車体下面を覆う整流用のフロアアンダカバーが取付けられた車体下面構造について有用である。
【符号の説明】
【0064】
11…後輪
11R…リム
36…フロアアンダカバー
40…リヤサスペンション
41…トレーリングアーム
42…トーションビーム
50…アームカバー
50A…延長部
50d…縦壁部