IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベルコ建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-排ガス異常検出装置 図1
  • 特許-排ガス異常検出装置 図2
  • 特許-排ガス異常検出装置 図3
  • 特許-排ガス異常検出装置 図4
  • 特許-排ガス異常検出装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】排ガス異常検出装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20220614BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20220614BHJP
   E02F 9/00 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
F01N3/023 K ZAB
F01N3/00 F
E02F9/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018056791
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019167896
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 允紀
(72)【発明者】
【氏名】鹿児島 昌之
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0101409(US,A1)
【文献】特開2013-024097(JP,A)
【文献】特開昭62-291414(JP,A)
【文献】特開2010-223158(JP,A)
【文献】特開2017-096215(JP,A)
【文献】特開2013-234642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00~ 3/38
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の動力源であるエンジンと、
前記エンジンの排ガスが通る排気管と、
前記排気管に設けられ、前記排ガスからススを捕集する排ガス後処理装置と、
前記排気管に設けられ、前記エンジンと前記排ガス後処理装置との間に設けられ、前記排ガスのスス量を検出する排ガスセンサと、
前記排ガスセンサの検出値が入力されるコントローラと、
前記エンジンに駆動されるポンプと、
前記ポンプから油が供給されることで作動するアクチュエータと、
前記ポンプに負荷を掛ける負荷掛け部と、
を備え、
前記コントローラには、
前記排ガスのスス量が異常状態であるか否かの判定である異常判定を行うための閾値であるスス量閾値と、
前記エンジンに掛かる負荷が安定する条件であるエンジン負荷安定条件と、
が設定され、
前記コントローラは、前記ポンプへの負荷を前記負荷掛け部に掛けさせる負荷掛け制御を行う場合があり、
前記エンジン負荷安定条件は、前記エンジンに負荷が掛かり前記排ガスのスス量が確保される状態として定められた状態であって前記負荷掛け制御が行われていることを含む特定状態が所定時間継続することを含み、
前記エンジン負荷安定条件は、前記特定状態が前記所定時間継続しない場合は満たされず、
前記エンジン負荷安定条件が満たされる場合、前記コントローラは、前記異常判定を行う場合があり、
前記コントローラが前記異常判定を行う場合、前記コントローラは、前記排ガスセンサの検出値が前記スス量閾値よりも大きい場合に、前記排ガスのスス量が異常状態であると判定し、
前記エンジン負荷安定条件が満たされない場合、前記コントローラは、前記異常判定を行わない、
排ガス異常検出装置。
【請求項2】
作業機械の動力源であるエンジンと、
前記エンジンの排ガスが通る排気管と、
前記排気管に設けられ、前記排ガスからススを捕集する排ガス後処理装置と、
前記排気管に設けられ、前記エンジンと前記排ガス後処理装置との間に設けられ、前記排ガスのスス量を検出する排ガスセンサと、
前記排ガスセンサの検出値が入力されるコントローラと、
前記エンジンに駆動されるポンプと、
前記ポンプから油が供給されることで作動するアクチュエータと、
前記ポンプに負荷を掛ける負荷掛け部と、
前記アクチュエータを操作するために操作者に操作される操作部と、
を備え、
前記コントローラには、
前記排ガスのスス量が異常状態であるか否かの判定である異常判定を行うための閾値であるスス量閾値と、
前記エンジンに掛かる負荷が安定する条件であるエンジン負荷安定条件と、
が設定され、
前記コントローラは、前記ポンプへの負荷を前記負荷掛け部に掛けさせる負荷掛け制御を行う場合があり、
前記エンジン負荷安定条件は、前記操作部が前記アクチュエータを作動させない状態であり、かつ、前記負荷掛け制御が行われていることを含み、
前記エンジン負荷安定条件が満たされる場合、前記コントローラは、前記異常判定を行う場合があり、
前記コントローラが前記異常判定を行う場合、前記コントローラは、前記排ガスセンサの検出値が前記スス量閾値よりも大きい場合に、前記排ガスのスス量が異常状態であると判定し、
前記エンジン負荷安定条件が満たされない場合、前記コントローラは、前記異常判定を行わない、
排ガス異常検出装置。
【請求項3】
請求項に記載の排ガス異常検出装置であって、
前記コントローラは、前記負荷掛け制御および前記異常判定を行っているときに、前記操作部が前記アクチュエータを作動させる状態になった場合、前記負荷掛け制御および前記異常判定を中止し、前記操作部の操作に応じて前記アクチュエータを作動させる、
排ガス異常検出装置。
【請求項4】
作業機械の動力源であるエンジンと、
前記エンジンの排ガスが通る排気管と、
前記排気管に設けられ、前記排ガスからススを捕集する排ガス後処理装置と、
前記排気管に設けられ、前記エンジンと前記排ガス後処理装置との間に設けられ、前記排ガスのスス量を検出する排ガスセンサと、
前記排ガスセンサの検出値が入力されるコントローラと、
前記エンジンに駆動されるポンプと、
前記作業機械の走行を操作するために操作者に操作される走行操作部と、
を備え、
前記コントローラには、
前記排ガスのスス量が異常状態であるか否かの判定である異常判定を行うための閾値であるスス量閾値と、
前記走行操作部の操作量の閾値である走行操作量閾値と、
前記ポンプの吐出圧の範囲であるポンプ圧範囲と、
前記エンジンに掛かる負荷が安定する条件であるエンジン負荷安定条件と、
が設定され、
前記エンジン負荷安定条件は、前記走行操作部の操作量が前記走行操作量閾値よりも大きく、かつ、前記ポンプの吐出圧が前記ポンプ圧範囲内であることを含み、
前記エンジン負荷安定条件が満たされる場合、前記コントローラは、前記異常判定を行う場合があり、
前記コントローラが前記異常判定を行う場合、前記コントローラは、前記排ガスセンサの検出値が前記スス量閾値よりも大きい場合に、前記排ガスのスス量が異常状態であると判定し、
前記エンジン負荷安定条件が満たされない場合、前記コントローラは、前記異常判定を行わない、
排ガス異常検出装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の排ガス異常検出装置であって、
前記コントローラは、前記エンジンの回転数に応じて、前記スス量閾値を変える、
排ガス異常検出装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の排ガス異常検出装置であって、
前記コントローラは、前記ポンプの吐出圧に応じて、前記スス量閾値を変える、
排ガス異常検出装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の排ガス異常検出装置であって、
前記コントローラには、前記排ガスのスス量の増減に影響を及ぼす作動として予め定められた前記エンジンの作動に関する検出値であるエンジンセンサ値が入力され、
前記コントローラには、前記エンジンセンサ値の範囲であるエンジンセンサ範囲が設定され、
前記コントローラは、前記エンジンセンサ値が、前記エンジンセンサ範囲外である場合、前記異常判定を行わない、
排ガス異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のエンジンの排ガスの異常を検出する、排ガス異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、エンジンの排気管に設けられた排ガス後処理装置が記載されている(図6などを参照)。この排ガス後処理装置は、エンジンの排ガスからススを捕集する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-234642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンが故障すると、エンジンの排ガス中のスス量が異常状態(所定量よりも多い状態)になる場合がある。ここで、排ガス後処理装置が設けられなければ、ススが、黒煙や白煙として大気に排出される。そのため、スス量が異常状態であることが、目視により発見され得る。一方、排ガス後処理装置が設けられる場合、ススは、排ガス後処理装置により捕集される。そのため、スス量が異常状態であることが発見されにくい。その結果、エンジンの故障が発見されにくい。
【0005】
なお、特許文献1に記載の技術では、スス量を検出するセンサ(排ガスセンサ)が故障しているか否かを判定するために、排ガス後処理装置よりも上流側の排気管に排ガスセンサが設けられる場合がある(同文献の図6および段落0025を参照)。しかし、同文献には、排ガス後処理装置よりも上流側のスス量の異常を発見することについては記載されていない。
【0006】
そこで、本発明は、排ガス後処理装置よりも上流側の排気管内のスス量が異常状態であることを検出できる排ガス異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排ガス異常検出装置は、エンジンと、排気管と、排ガス後処理装置と、排ガスセンサと、コントローラと、を備える。前記エンジンは、作業機械の動力源である。前記排気管は、前記エンジンの排ガスが通るものである。前記排ガス後処理装置は、前記排気管に設けられ、前記排ガスからススを捕集する。前記排ガスセンサは、前記排気管に設けられ、前記エンジンと前記排ガス後処理装置との間に設けられ、前記排ガスのスス量を検出する。前記コントローラには、前記排ガスセンサの検出値が入力される。前記コントローラは、前記排ガスのスス量が異常状態であるか否かの判定である異常判定を行う場合がある。前記コントローラには、前記異常判定を行うための閾値であるスス量閾値が設定される。前記コントローラは、前記排ガスセンサの検出値が前記スス量閾値よりも大きい場合、前記排ガスのスス量が異常状態であると判定する。
【発明の効果】
【0008】
上記構成により、排ガス後処理装置よりも上流側の排気管内の排ガスのスス量が異常状態であることを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】排ガス異常検出装置を示すブロック図である。
図2図1に示す排ガス異常検出装置1の作動を示すフローチャートである。
図3図1に示す排ガス異常検出装置1の作動を示すタイミングチャートである。
図4図2に示すステップS51のスス量閾値A2を示すグラフである。
図5図1に示す排ガス異常検出装置1の作動を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図5を参照して、図1に示す排ガス異常検出装置1について説明する。
【0011】
排ガス異常検出装置1は、作業機械Mに設けられる。作業機械Mは、作業を行う機械であり、例えば建設作業を行う建設機械であり、例えばショベルなどである。排ガス異常検出装置1は、エンジン11と、排気管12と、排ガス後処理装置13と、排ガスセンサ14と、エンジンコントローラ15と、油圧装置20と、異常判定信号出力部41と、操作部43と、コントローラ50と、を備える。
【0012】
エンジン11は、作業機械Mの動力源であり、例えばディーゼルエンジンである。排気管12は、エンジン11が排出した排ガス11gが流れる管である。排ガス後処理装置13は、エンジン11の排ガス11gからススを捕集する装置であり、DPF(Diesel particulate filter)装置である。排ガス後処理装置13は、排気管12に設けられる。
【0013】
排ガスセンサ14は、排ガス11gに含まれるススの量(排ガス11gのスス量)(単に「スス量」ともいう)を検出するセンサ(ススセンサ)であり、PM(Particulate matter)センサである。排ガスセンサ14は、排気管12に設けられる。排ガスセンサ14は、エンジン11と排ガス後処理装置13との間(排気管12の流路における間)に設けられる。なお、エンジン11の出口および排ガス後処理装置13の入口は、「エンジン11と排ガス後処理装置13との間」に含まれるとする。
【0014】
エンジンコントローラ15は、エンジン11を制御する装置であり、例えばECU(Engine control unit)である。エンジンコントローラ15は、信号(情報)の入出力などを行う。エンジンコントローラ15は、エンジン11に関する検出値(エンジンセンサ値15s)を出力する。
【0015】
油圧装置20は、エンジン11を動力源として、作業機械Mを作動させる。油圧装置20は、ポンプ21と、ポンプ圧センサ22と、アクチュエータ23と、コントロールバルブ25と、負荷掛け部30と、を備える。
【0016】
ポンプ21は、エンジン11に駆動され、油(作動油、圧油)を吐出する。ポンプ21の容量は、可変である。ポンプ圧センサ22は、ポンプ21の吐出圧(ポンプ圧)を検出する。ポンプ圧センサ22は、ポンプ21にかかる負荷を検出するために設けられる。
【0017】
アクチュエータ23は、作業機械Mを作動させる。アクチュエータ23は、ポンプ21から油が供給されることで駆動する。アクチュエータ23には、例えば油圧モータおよび油圧シリンダがある。例えば、アクチュエータ23には、アタッチメント(図示しないブーム、アーム、およびバケットなど)を作動させる油圧シリンダがある。アクチュエータ23には、下部走行体(図示なし)に対して上部旋回体(図示なし)を旋回させる油圧モータ(図示なし)がある。アクチュエータ23には、作業機械Mを走行させる油圧モータである走行モータ23aがある。
【0018】
コントロールバルブ25は、アクチュエータ23の作動を制御するバルブである。コントロールバルブ25は、ポンプ21とアクチュエータ23との間の油路に設けられる。コントロールバルブ25は、ポンプ21からアクチュエータ23に供給される油の方向および流量を制御する。
【0019】
負荷掛け部30は、ポンプ21に負荷を掛けることで、エンジン11に負荷を掛ける。負荷掛け部30は、アイドリング状態(後述)のときのポンプ21の負荷よりも高い負荷を、ポンプ21に掛ける。負荷掛け部30は、アクチュエータ23を作動させずにポンプ21に負荷を掛ける。例えば、負荷掛け部30は、アンロード回路31と、ポンプ容量変更部35と、を備える。
【0020】
アンロード回路31は、アクチュエータ23が作動していないときに、ポンプ21が吐出した油をタンクTに戻すための油圧回路である。アンロード回路31は、アンロード油路31aと、アンロード弁31bと、アンロード弁用電磁比例弁31cと、を備える。例えば、アンロード油路31aは、ポンプ21とコントロールバルブ25との間の油路と、タンクTと、につながれる油路である。アンロード弁31bは、アンロード油路31aに設けられる。アンロード弁31bは、アンロード弁31bに入力されるパイロット圧に応じて、開度を変える。アンロード弁用電磁比例弁31cは、アンロード弁31bの開度を変える。さらに詳しくは、アンロード弁用電磁比例弁31cは、アンロード弁用電磁比例弁31cに入力される電気信号に応じて、アンロード弁31bに入力されるパイロット圧を変える。
【0021】
ポンプ容量変更部35は、ポンプ21の容量を変える。ポンプ容量変更部35は、ポンプ21の傾転角を変えることで、ポンプ21の容量を変える。ポンプ容量変更部35は、シリンダ35aと、シリンダ用電磁比例弁35cと、を備える。シリンダ35aは、ポンプ21に接続され、例えば油圧シリンダである。シリンダ用電磁比例弁35cは、シリンダ35aを作動させる。さらに詳しくは、シリンダ用電磁比例弁35cは、シリンダ用電磁比例弁35cに入力される電気信号に応じて、シリンダ35aに油を供給する。
【0022】
異常判定信号出力部41は、異常判定を行うことを示す異常判定信号41sを出力可能である。例えば、異常判定信号出力部41は、作業機械Mの操作者(以下、単に「操作者」という)などに操作されるものでもよく、例えばボタンやスイッチなどでもよい。異常判定信号出力部41は、操作者に操作されなくてもよく、例えば、何らかの条件が満たされたときに異常判定信号41sを出力してもよい。
【0023】
操作部43は、アクチュエータ23を操作するために操作者に操作される。操作部43は、例えばレバー(操作レバー)である。例えば、操作部43は、作業機械Mの運転室(図示なし)の内部に配置されてもよく、作業機械Mが遠隔操縦される場合などには作業機械Mの外部に配置されてもよい(異常判定信号出力部41も同様)。操作部43は、操作量に応じた信号(操作信号)を出力する。操作部43には、アタッチメント(図示なし)を操作するためのアタッチメント操作部(図示なし)と、下部走行体(図示なし)に対する上部旋回体(図示なし)の旋回を操作するための旋回操作部(図示なし)と、がある。また、操作部43には、作業機械Mの走行を操作するために操作者に操作される走行操作部43aがある。走行操作部43aは、操作量(走行操作量)に応じた信号(走行操作信号)を出力する。
【0024】
コントローラ50は、信号(情報)の入出力、演算(判定など)、および制御などを行う。コントローラ50は、作業機械Mの作動を制御し、例えばショベルコントローラである。コントローラ50には、各種検出値が入力される。コントローラ50には、排ガスセンサ14の検出値(排ガスセンサ値)が入力される。コントローラ50には、操作部43の操作量(操作信号)が入力され、走行操作部43aの操作量(走行操作信号)が入力される。コントローラ50には、エンジン11の回転数(エンジン11回転数)が入力される。コントローラ50には、エンジンコントローラ15から、エンジンセンサ値15sが入力される。コントローラ50は、排ガスセンサ14の検出値を記録する。コントローラ50は、以下で説明する各判定および各制御を行う。
【0025】
(作動)
主に図2を参照して、排ガス異常検出装置1の作動を説明する。なお、上記の排ガス異常検出装置1および排ガス異常検出装置1の構成要素(例えばエンジン11、コントローラ50など)については図1を参照し、各ステップ(S11~S63)については図2を参照して説明する。排ガス異常検出装置1の作動の概要は次の通りである。コントローラ50は、異常判定(図2のS21、S61)を行う場合がある。異常判定(S21、S61)は、排ガス11gのスス量が異常状態であるか否かの判定である。さらに詳しくは、異常判定(S21、S61)は、排ガスセンサ14で検出されたスス量が異常状態であるか否かの判定である。異常判定(S21、S61)が行われることで、エンジン11が故障状態か否かの診断(故障診断)が行われる。また、コントローラ50は、異常判定(S21、S61)を行わない場合もある。
【0026】
エンジン11に掛かる負荷が変動すると、スス量が変動し、コントローラ50が異常判定(S21、S61)を適切に行えない場合がある。そこで、コントローラ50には、エンジン負荷安定条件が設定される。エンジン負荷安定条件は、エンジン11に掛かる負荷が安定する条件であり、その結果、スス量が安定する条件であり、その結果、異常判定(S21、S61)を適切に行いやすい条件である(具体例は後述)。そして、コントローラ50は、エンジン負荷安定条件が満たされる場合、異常判定(S21、S61)を行う場合がある。コントローラ50は、エンジン負荷安定条件が満たされない場合、異常判定(S21、S61)を行わない。「異常判定(S21、S61)を行わない」には、異常判定(S21、S61)の処理自体が行われない場合と、異常判定(S21、S61)の処理は行われるが異常状態と判定され得ない場合と(詳細は後述)、が含まれる。エンジン負荷安定条件には、例えば、第1のエンジン負荷安定条件と、第2のエンジン負荷安定条件と、がある。
【0027】
(第1のエンジン負荷安定条件)
第1のエンジン負荷安定条件には、操作部43がアクチュエータ23を作動させない状態であり(S13でYES)、負荷掛け制御(S15)が行われていることが含まれる。第1のエンジン負荷安定条件には、異常判定信号41sがコントローラ50に入力されていること(S11でYES)が含まれてもよい。以下、第1のエンジン負荷安定条件を満たすか否かに応じて異常判定(S21)を行うか否かを切り換える制御の具体例(ステップS11~S23)を説明する。
【0028】
ステップS11では、コントローラ50は、異常判定信号41sがコントローラ50に入力されているか否かを判定する。例えば、コントローラ50は、異常判定を行うことが異常判定信号出力部41で選択されているか(例えば操作者に選択されているか)否かを判定する。異常判定信号41sがコントローラ50に入力されている場合(YESの場合)は、ステップS13に進む。異常判定信号41sがコントローラ50に入力されていない場合(NOの場合)は、第2のエンジン負荷安定条件を満たすか否かの判定(S31~S63)に進む。
【0029】
ステップS13では、コントローラ50は、操作部43がアクチュエータ23を作動させる状態か否かを判定する。コントローラ50は、操作部43の操作量と、操作部43の操作量に関する閾値と、を比較する。具体的には例えば、コントローラ50は、操作部43からコントローラ50に入力される操作信号と、操作信号に関する閾値と、を比較する。操作部43の操作量に関する閾値(例えば操作信号に関する閾値)は、コントローラ50に設定される(以下の各種の閾値および範囲も同様)。閾値は、コントローラ50に予め設定されてもよく、状況に応じてコントローラ50が算出してもよい(以下の各種の閾値および範囲も同様)。操作部43がアクチュエータ23を作動させない状態である場合(YESの場合)、ステップS15に進む。操作部43がアクチュエータ23を作動させない状態は、例えば、アタッチメント(図示なし)の操作、下部走行体(図示なし)に対する上部旋回体(図示なし)の旋回の操作、および作業機械Mの走行の操作の、いずれの操作も行われていない状態である。操作部43がアクチュエータ23を作動させる状態である場合(NOの場合)、ステップS11に戻る(この処理を行う理由は後述する)。
【0030】
ステップS15では、コントローラ50は、負荷掛け制御を行う。負荷掛け制御は、ポンプ21への負荷を負荷掛け部30に掛けさせる制御である。負荷掛け制御では、負荷掛け部30は、アイドリング状態のときのポンプ21の負荷よりも高い負荷を、ポンプ21に掛ける。アイドリング状態は、エンジン11が駆動し、アクチュエータ23が作動しておらず、ポンプ21に負荷がほぼ掛かっていない状態(圧力損失や機械的損失などの損失による負荷のみ掛かっている状態)であり、負荷掛け制御が行われていない状態である。負荷掛け制御では、コントローラ50は、エンジン11の回転数を、アイドリング状態のときのエンジン11の回転数よりも上昇させてもよい。コントローラ50は、異常判定信号41sがコントローラ50に入力され(S11でYES)、かつ、操作部43がアクチュエータ23を作動させない状態である場合(S13でYESの場合)、負荷掛け制御を行う。ステップS11でNOまたはステップS13でNOの場合は、コントローラ50は、負荷掛け制御を行わない。なお、負荷掛け制御が行われる条件には、異常判定信号41sがコントローラ50に入力されること(S11でYES)が含まれなくてもよい。
【0031】
この負荷掛け制御が行われる理由は次の通りである。アイドリング状態では、例えばアクチュエータ23が作動している状態などに比べ、ポンプ21に掛かる負荷が小さく、エンジン11に掛かる負荷が小さく、スス量が少ない。そのため、異常判定(S21)を適切に行うのに必要なスス量を確保するのが難しい。そのため、異常判定(S21)をコントローラ50が適切に行うことが難しい。そこで、負荷掛け部30が、ポンプ21に負荷をかけ、エンジン11に負荷をかけることで、スス量を確保する。負荷掛け部30がポンプ21に掛ける負荷は、異常判定(S21)を適切に行うのに必要なスス量を確保できるような大きさに設定される。さらに、エンジン11の回転数を上げることで、スス量を確保してもよい。この場合のエンジン11の回転数は、異常判定(S21)を適切に行うのに必要なスス量を確保できるような回転数に設定される。
【0032】
負荷掛け制御でのポンプ21への負荷掛けの具体例は次の通りである。負荷掛け部30によるポンプ21の負荷掛けには、アンロード回路31での負荷掛けと、ポンプ容量変更部35での負荷掛けと、がある。アンロード回路31での負荷掛けは、次のように行われる。アンロード弁用電磁比例弁31cが、コントローラ50から入力された電気信号に応じて、アンロード弁31bに出力するパイロット圧を制御する。そして、アンロード弁31bが、アンロード弁用電磁比例弁31cから入力されたパイロット圧に応じて、アンロード油路31aを絞る(アイドリング状態のときよりも絞る)。すると、ポンプ21の吐出圧が高くなり、ポンプ21の負荷が高くなる。その結果、エンジン11の負荷が高くなる。ポンプ容量変更部35での負荷掛けは、次のように行われる。シリンダ用電磁比例弁35cが、コントローラ50から入力された電気信号に応じて、シリンダ35aに作動油を供給する。そして、ポンプ容量変更部35がポンプ21の容量を増やす(アイドリング状態のときの容量よりも増やす)ことで、ポンプ21の出力トルクが増え、ポンプ21の負荷が高くなる。その結果、エンジン11の負荷が高くなる。なお、アンロード回路31での負荷掛けと、ポンプ容量変更部35での負荷掛けと、の一方のみが行われてもよく、両方が行われてもよい。また、これら以外の手段により、ポンプ21に負荷が掛けられてもよい。次に、ステップS17に進む。
【0033】
ステップS17では、コントローラ50は、図3に示すように、負荷掛け制御を開始した時(t11)から現在までの時間(負荷掛け時間)が、所定時間A1より長いか(所定時間A1を経過したか)否かを判定する。なお、負荷掛け制御(S15)が中止された場合は、負荷掛け時間はリセットされる(0に戻される)。この判定が行われる理由は次の通りである。負荷掛け制御(S15)の開始直後は、ポンプ21の負荷およびエンジン11の負荷が安定せず、スス量が安定せず、異常判定(S21)を適切に行えない場合がある。そこで、コントローラ50は、負荷掛け制御を開始した時(t11)から、所定時間A1が経過した時(t21)に、異常判定(S21)を開始させる。これにより、ポンプ21の負荷(図3ではポンプ圧)が安定し、スス量が安定した状態で、コントローラ50は異常判定(S21)を行える。所定時間A1は、スス量が安定するような時間の長さに設定される。なお、所定時間A1の計測開始のタイミングは、負荷掛け制御の開始時(t11)でなくてもよく、例えばポンプ圧センサ22で検出したポンプ21の吐出圧が所定圧力まで上昇した時など(例えば時刻t12など)でもよい。上記「所定圧力」は、例えば、コントローラ50に設定される。次に、図2に示すステップS21に進む。
【0034】
ステップS21では、コントローラ50は、異常判定を行う。異常判定は、排ガス11gのスス量が異常状態であるか否かの判定である(後述するステップS61での異常判定も同様)。このステップS21での異常判定は、負荷掛け制御が行われている場合に行われ、負荷掛け制御が行われていない場合には行われない。異常判定(S21)は、排ガスセンサ14で計測されたスス量(スス量計測値)に基づいて行われる。判定に用いられるスス量計測値は、ある瞬間に排ガスセンサ14で計測されたスス量でもよく、所定時間内に排ガスセンサ14で計測されたスス量の合計値または平均値などでもよい。コントローラ50には、スス量の閾値(異常判定を行うための閾値)であるスス量閾値A2(図3参照)が設定される。コントローラ50は、スス量計測値と、スス量閾値A2と、を比較する。スス量計測値がスス量閾値A2よりも大きい場合(YESの場合)、コントローラ50は、スス量が(排ガス11gが)異常状態であると判定し、ステップS23に進む。この場合、エンジン11が故障していると想定される。排ガスセンサ14の検出値がスス量閾値A2以下の場合(NOの場合)、コントローラ50は、スス量が異常状態ではない(例えば正常状態である)と判定し、例えばステップS11に戻る。
【0035】
ステップS23では、コントローラ50は、スス量が異常状態であることを示す信号(エラー信号)を出力する。エラー信号は、様々に利用され得る。例えば、エラー信号は、スス量が異常状態であることを操作者に通知(発報)するために用いられてもよい。また、エラー信号は、例えば、作業機械Mの作動を制限するために用いられてもよく、例えば、エンジン11およびアクチュエータ23の少なくともいずれかの作動を制限するために用いられてもよい。
【0036】
図3に、第1のエンジン負荷安定条件に関する排ガス異常検出装置1の作動のタイミングチャートを示す。時刻t11には、操作部43がアクチュエータ23を作動させない状態(S13でYES)で、異常判定信号41sがオンになり(コントローラ50に入力され)(S11でYES)、負荷掛け制御(S15)が開始される。時刻t11から時刻t12の間には、負荷掛け制御により、ポンプ21の吐出圧が上昇し、スス量が増加する。時刻t12に、ポンプ21の吐出圧が所定圧力に達する。時刻t12から時刻t21の間に、ポンプ21の吐出圧およびスス量が安定する。時刻t21に、時刻t11から所定時間A1が経過し、異常判定(S21)が開始される。時刻t22に、異常判定信号41sがオフになる(コントローラ50への入力がなくなる)(S11でNO)。すると、異常判定(S21)が中止され、負荷掛け制御(S15)が中止され、ポンプ21の吐出圧が低下し、スス量が減少する。
【0037】
(負荷掛け制御および異常判定中に操作部43が操作された場合)
操作部43が操作者に操作され、アクチュエータ23が作動するときに、負荷掛け制御(S15)が行われたままであると、アクチュエータ23の作動が、操作者の意図に反した作動になる場合がある。そこで、操作部43がアクチュエータ23を作動させる状態である場合(S13でNO)、コントローラ50は、負荷掛け制御(S15)を行わない。負荷掛け制御(S15)が既に行われている場合に、操作部43がアクチュエータ23を作動させる状態になった場合(S13でNOの場合)、コントローラ50は、負荷掛け制御(S15)を中止する。そして、コントローラ50は、操作部43の操作に応じてアクチュエータ23を作動させる。これにより、アクチュエータ23の作動が、操作者の意図に反したアクチュエータ23の作動になる事を抑制できる。
【0038】
例えば、アタッチメントが作動しているとき(アタッチメント作動状態)、および下部走行体(図示なし)に対して上部旋回体(図示なし)が旋回しているとき(旋回状態)など、アクチュエータ23が作動しているときには、ポンプ21の負荷が変動しやすい。そのため、エンジン11の負荷が変動し、スス量が変動しやすく、異常判定(S21)を適切に行うことが難しい場合がある。そこで、異常判定(S21)が行われているときに、操作部43がアクチュエータ23を作動させる状態になった場合(S13でNOの場合)、異常判定(S21)を中止する。よって、異常判定(S21)を適切に行える。
【0039】
(第2のエンジン負荷安定条件)
第2のエンジン負荷安定条件には、走行操作部43aの操作量が閾値B1(走行操作量閾値)よりも大きく(S31でYES)、かつ、ポンプ21の吐出圧が範囲B3(ポンプ圧範囲)内であること(S35でYES)が含まれる。このように第2のエンジン負荷安定条件が定められる理由は次の通りである。
【0040】
上記の第1のエンジン負荷安定条件には、異常判定信号出力部41からコントローラ50に異常判定信号41sが入力されていることが含まれる場合があり、また、異常判定信号出力部41は、操作者に操作されるものである場合がある。この場合、操作者が異常判定信号出力部41を操作しなければ、異常判定(S21)が行われず、スス量の異常状態を発見できない場合がある。そこで、コントローラ50は、自動的に、ポンプ21の負荷が安定しているときに(その結果、エンジン11の負荷が安定しているときに)、異常判定を行うことが好ましい。
【0041】
作業機械Mが走行している状態(走行状態)のときには、アタッチメント作動状態や旋回状態のときに比べ、ポンプ21の負荷が安定しやすい。また、作業機械Mが走行状態のときには、アイドリング状態に比べ、ポンプ21の負荷が高く、エンジン11の負荷が高く、スス量を確保しやすい。そこで、作業機械Mが走行状態のときに、コントローラ50は、異常判定(S61)を自動的に行う場合がある。
【0042】
一方、作業機械Mが走行する地面の状態によっては、ポンプ21およびエンジン11の負荷が安定しない場合がある。例えば、作業機械Mが平地を連続走行している状態に比べ、坂道を走行している状態や、悪路(沼地など)を走行している状態では、ポンプ21およびエンジン11の負荷が安定しにくい。そこで、コントローラ50は、ポンプ21の吐出圧に応じて、異常判定(S61)をするか否かを切り換える。以下、第2のエンジン負荷安定条件を満たすか否かに応じて異常判定を行うか否かを切り換える制御の具体例(ステップS31~S63)を説明する。
【0043】
ステップS31では、コントローラ50は、走行操作部43aが作業機械Mを走行させる状態か否かを判定する。コントローラ50は、走行操作部43aの操作量(走行操作量)と、走行操作部43aの操作量に関する閾値B1(走行操作量閾値)と、を比較する。具体的には例えば、コントローラ50は、走行操作部43aからコントローラ50に入力される走行操作信号と、走行操作信号に関する閾値B1と、を比較する。走行操作部43aが作業機械Mを走行させる状態である場合(YESの場合)、ステップS33に進む。走行操作部43aが作業機械Mを走行させない状態である場合(NOの場合)、走行時間カウントをリセットし(後述するステップS45)、例えばステップS11に戻る。
【0044】
ステップS33では、コントローラ50は、エンジン11の回転数(図2ではエンジン回転数)を判定する。コントローラ50は、エンジン11の回転数と、エンジン11の回転数に関する閾値B2(エンジン回転数閾値)と、を比較する。エンジン11の回転数の情報は、例えば、エンジンコントローラ15からコントローラ50に入力されてもよく、エンジンコントローラ15とは別に設けられた回転数センサ(図示なし)からコントローラ50に入力されてもよい。エンジン11の回転数が閾値B2よりも大きい場合(YESの場合)、ステップS35に進む。エンジン11の回転数が閾値B2以下の場合(NOの場合)、走行時間カウントをリセットし(後述するステップS45)、例えばステップS11に戻る。
【0045】
ステップS35では、コントローラ50は、ポンプ21の負荷が所定の範囲内か否かを判定する。具体的には、コントローラ50は、ポンプ21の吐出圧が、所定の範囲B3(ポンプ圧範囲)(図5参照)内か否かを判定する。ポンプ21の吐出圧は、ポンプ圧センサ22で検出され、コントローラ50に入力される。図5に示す範囲B3は、ポンプ21の吐出圧に関する範囲であり、下限B3bから上限B3aの範囲である。作業機械Mが平地を走行している状態のときのポンプ21の吐出圧は、範囲B3の範囲内となるように設定される。例えば、作業機械Mが坂道や悪路を走行しているときに検出され得るポンプ21の吐出圧であって、作業機械Mが平地を走行しているときには検出されないほど大きいまたは小さいポンプ21の吐出圧は、範囲B3の範囲外となるように設定される。ポンプ21の吐出圧が、範囲B3の範囲外の場合(NOの場合)、さらに詳しくは下限B3b未満または上限B3aよりも大きい場合、走行時間カウントをリセットし(後述するステップS45)、例えばステップS11に戻る。ポンプ21の吐出圧が、範囲B3の範囲内である場合(YESの場合)、さらに詳しくは下限B3b以上、上限B3a以下の場合、図2に示すステップS41に進む。
【0046】
ここで、走行操作部43aの走行操作量が閾値B1よりも大きく(S31でYES)、かつ、ポンプ21の吐出圧が範囲B3(図5参照)の範囲内(S35でYES)である状態を、「所定走行状態α」とする。なお、S31でYES、かつ、S35でYES、かつ、エンジン11の回転数が閾値B2よりも大きい状態(S33でYES)を、所定走行状態αとしてもよい。所定走行状態αが継続すれば、ポンプ21の負荷が安定し、スス量が安定する。一方、所定走行状態αである時間が短時間であれば、ポンプ21の負荷が安定しておらず、スス量が安定しておらず、コントローラ50が適切に異常判定(S61)を行えない場合がある。そこで、コントローラ50は、作業機械Mが所定走行状態αで連続して走行している時間(以下、「所定走行状態αでの走行時間」ともいう)が、所定時間C1を経過した時(所定時間C1よりも長くなった時)に、異常判定(S61)を開始する(図5参照)。これにより、ポンプ21の負荷が安定し、スス量が安定した状態で、コントローラ50は異常判定(S61)を行える。所定時間C1は、ポンプ21の負荷が安定し、スス量が安定するような時間の長さに設定される。所定走行状態αでの走行時間の計測の具体例は次の通りである。
【0047】
ステップS41では、コントローラ50は、所定走行状態αでの走行時間の変数である「走行時間カウント」を増やす。
【0048】
ステップS43では、コントローラ50は、所定走行状態αでの走行時間と、所定走行状態αでの走行時間に関する閾値である所定時間C1と、を比較する。具体的には例えば、コントローラ50は、走行時間カウントと、所定時間C1と、を比較する。所定走行状態αでの走行時間が(例えば走行時間カウントが)、所定時間C1よりも長い場合(YESの場合)、ステップS51に進む。所定走行状態αでの走行時間が(例えば走行時間カウントが)、所定時間C1以下の場合(NOの場合)、例えばステップS31に戻り、例えばステップS11に戻ってもよい。
【0049】
ステップS45では、コントローラ50は、作業機械Mの状態が所定走行状態αでなくなった場合に、走行時間カウントをリセットする(例えば0(初期値)に戻す)。さらに詳しくは、ステップS31でNO、ステップS33でNO、または、ステップS35でNOの場合、走行時間カウントが初期値に戻される。そして、例えばステップS11に戻る。
【0050】
ステップS51では、コントローラ50は、スス量閾値A2を算出する。コントローラ50が、スス量閾値A2を算出する理由は次の通りである。エンジン11の状況(負荷など)によって、スス量が変わる。そのため、エンジン11の状況に応じてスス量閾値A2を変えることで、スス量の異常判定(S61)を適切に行える。
【0051】
スス量閾値A2(図4参照)は、例えば、次のように設定される。コントローラ50は、エンジン11の回転数に応じて、スス量閾値A2を変える。コントローラ50は、エンジン11の回転数がある回転数(例えば図4に示す低回転数Rl)のときのスス量閾値A2に比べ、この回転数よりも高い回転数(例えば図4に示す高回転数Rh)のときのスス量閾値A2を高くする。また、コントローラ50は、ポンプ21の吐出圧に応じて、スス量閾値A2を変える。コントローラ50は、ポンプ21の吐出圧がある吐出圧(例えば図4に示すP1)のときのスス量閾値A2に比べ、この吐出圧よりも高い吐出圧(例えば図4に示すP2)のときのスス量閾値A2を高くする。例えば、コントローラ50は、エンジン11の回転数およびポンプ21の吐出圧に応じてスス量閾値A2を変えてもよい。例えば、コントローラ50は、エンジン11の回転数のみに応じてスス量閾値A2を変えてもよい。例えば、コントローラ50は、ポンプ21の吐出圧が所定の範囲内(例えば図5に示す範囲B3内)の場合に、エンジン11の回転数のみに応じてスス量閾値A2を変えてもよい。例えば、コントローラ50は、ポンプ21の吐出圧のみに応じてスス量閾値A2を変えてもよい。
【0052】
図4に、2段階のエンジン11の回転数のそれぞれについて、ポンプ21の吐出圧と、スス量閾値A2と、の関係の具体例を示す。エンジン11の回転数の設定として、高回転数Rhと、高回転数Rhよりも低い回転数である低回転数Rlと、がある。図4に示す例では、スス量閾値A2は、次のように設定される。ポンプ21の吐出圧がP1未満の範囲では、エンジン11の回転数にかかわらず、スス量閾値A2は一定である。ポンプ21の吐出圧がP1以上、P3以下の範囲では、低回転数Rlのスス量閾値A2よりも、高回転数Rhのスス量閾値A2方が大きく設定される。ポンプ21の吐出圧がP1以上、P3以下の範囲では、ポンプ21の吐出圧が大きくなるほどスス量閾値A2が大きく設定される。例えば、ポンプ21の吐出圧がP1以上、P2以下の範囲では、スス量閾値A2がポンプ21の吐出圧に比例する(比例でなくてもよい)。例えば、ポンプ21の吐出圧がP2以上、P3以下の範囲では、スス量閾値A2がポンプ21の吐出圧に比例し(比例でなくてもよい)、さらに、P1以上、P2以下の範囲に比べ、ポンプ21の吐出圧に対するスス量閾値A2の変化量(グラフの傾き)が大きい。ポンプ21の吐出圧がP3よりも大きい範囲では、エンジン11の回転数にかかわらず、スス量閾値A2は一定である。なお、ポンプ21の吐出圧がP3よりも大きい範囲では、スス量が異常状態であるとコントローラ50が判定し得ない程度に、スス量閾値A2が大きく設定される。これにより、ポンプ21の吐出圧がP3よりも大きい範囲では、コントローラ50は、実質的に異常判定(S61)を行わない。なお、P3は、図5に示す範囲B3の上限B3aと等しくてもよく、上限B3aと異なる値でもよい。
【0053】
図4に示す例では、エンジン11の回転数は、2段階(高回転数Rhおよび低回転数Rl)であるが、3段階以上に設定されてもよい。複数段階のエンジン11の回転数のそれぞれについて、スス量閾値A2が設定されてもよい。また、複数段階のエンジン11の回転数のうち、一部の段階のスス量閾値A2は、他の段階のスス量閾値A2から補完(例えば線形補完)されてもよい。また、第1のエンジン負荷安定条件を満たした場合の異常判定(S21)で用いられるスス量閾値A2も、エンジン11の回転数およびポンプ21の吐出圧の少なくともいずれかに応じて変えられてもよい。なお、スス量閾値A2は、一定値でもよい。
【0054】
ステップS61では、図2に示すステップS21と同様に、コントローラ50は、異常判定を行う。排ガスセンサ14の検出値(スス量計測値)がスス量閾値A2よりも大きい場合(YESの場合)、コントローラ50は、スス量が(排ガス11gが)異常状態であると判定し、ステップS63に進む。スス量計測値がスス量閾値A2未満の場合(NOの場合)、コントローラ50は、スス量が異常状態ではない(例えば正常状態である)と判定し、例えばステップS11に戻る。
【0055】
ステップS63では、ステップS23と同様に、コントローラ50は、異常であることを示す信号(エラー信号)を出力する。
【0056】
図5に、第2のエンジン負荷安定条件に関する排ガス異常検出装置1の作動のタイミングチャートを示す。時刻t31には、走行操作部43aの操作が開始される(走行操作量の増加が開始される)。時刻t31から時刻t32の間には、走行モータ23aが駆動し、ポンプ21の吐出圧が上昇し、スス量が増加する。時刻t32には、ポンプ21の吐出圧が範囲B3の範囲内になり(S35でYES)、作業機械Mが所定走行状態αになる。そして時刻t32から時刻t33までの間に、走行時間カウントが増やされる(S41)。しかし、時刻t33から時刻t34までの間に、ポンプ21の吐出圧が、上限B3aを超え、範囲B3の範囲外になる(S35でNO)。そのため、走行時間カウントがリセットされる(S45)。時刻t34には、ポンプ21の吐出圧が、上限B3a以下になり、範囲B3の範囲内になり(S35でYES)、作業機械Mが所定走行状態αになり、走行時間カウントが増やされる(S41)。時刻t41に、所定走行状態αでの走行時間が、所定時間C1になる。時刻t41に、異常判定(S61)が開始される。その後、走行操作部43aの操作量が0になり(中立状態になり)、ポンプ21の吐出圧が低下し、スス量が減少する。そして、時刻t42に、ポンプ21の吐出圧が、下限B3bよりも小さくなり、範囲B3の範囲外になる(S35でNO)。すると、異常判定(S61)が中止される。
【0057】
(エンジンセンサ値15s)
エンジン11の状態によっては、異常判定(S21、S61)を適切に行うことが難しい場合がある。そこで、コントローラ50は、エンジン11の状態が異常検出を適切に行える状態であるか否かに応じて、異常判定(S21、S61)をするか否かを切り換える。具体的には、コントローラ50は、コントローラ50に入力されるエンジンセンサ値15sに応じて、異常判定(S21、S61)をするか否かを切り換える。エンジンセンサ値15sは、スス量の増減に影響を及ぼす作動として予め定められたエンジン11の作動に関する検出値である。エンジンセンサ値15sは、例えばCAN(Controller Area Network)通信などにより、エンジンコントローラ15からコントローラ50に入力される。
【0058】
エンジンセンサ値15sの具体例は次の通りである。エンジンセンサ値15sは、EGR(Exhaust Gas Recirculation、排気再循環)バルブの開度でもよい。EGRバルブの開度が大きくなるほど、排ガス11gが濃くなり、スス量が多くなる。エンジンセンサ値15sは、エンジン11に吸入される空気の流量でもよく、例えば、過給器(例えば容量可変型の過給器)からエンジン11の本体部に吸入される空気の流量でもよく、例えば、過給器の過給圧でもよい。エンジン11の本体部に吸入される空気の流量が少ないほど、エンジン11の燃焼室での燃料が濃くなり、スス量が多くなる。エンジンセンサ値15sは、エンジン11の燃焼室への燃料噴射量でもよい。燃料噴射量が多いほど、燃焼室での燃料が濃くなり、スス量が多くなる。
【0059】
コントローラ50は、エンジンセンサ値15sが、エンジンセンサ値15sの範囲であるエンジンセンサ範囲の範囲内であるかを判定する。エンジンセンサ範囲は、コントローラ50が異常判定(S21、S61)を適切に行えるようなエンジンセンサ値15sの範囲に設定される。エンジンセンサ値15sが、エンジンセンサ範囲に対して、スス量が多くなる側の値である場合、実際にはスス量は異常でないにもかかわらず、スス量がスス量閾値A2(図3参照)を超え、コントローラ50が「異常状態」と判定(誤判定)する場合がある。また、エンジンセンサ値15sが、エンジンセンサ範囲に対して、スス量が少なくなる側の値である場合、異常判定(S21、S61)を行うのに必要なスス量が確保されない場合がある。この場合、実際にはエンジン11が故障していても、スス量がスス量閾値A2を超えず、「異常状態」と判定されない。そこで、エンジンセンサ値15sが、エンジンセンサ範囲外である場合、コントローラ50は、異常判定(S21、S61)を行わない。また、コントローラ50は、既に異常判定(S21、S61)を行っている場合は、異常判定(S21、S61)を中止する。エンジンセンサ値15sが、エンジンセンサ範囲内である場合、コントローラ50は、異常判定(S21、S61)を行う場合がある。エンジンセンサ範囲は、スス量閾値A2(図4参照)と同様に、エンジン11の状況に応じてコントローラ50が変えてもよく、一定値でもよい。なお、エンジンセンサ範囲は、上限のみ設定されてもよく、下限のみ設定されてもよい。
【0060】
(スス量が異常状態となる原因)
エンジン11が故障すると、エンジン11が故障していない場合に比べ、ススが大量に発生し、スス量が異常状態となる。スス量が異常状態となる原因の具体例には、次の[例1]から[例5]などがある。[例1]エンジン11の本体部の内部(燃焼室など)の損傷により、スス量が増える場合がある。例えば、ピストンの損傷などにより、スス量が増える場合がある。[例2]例えばインジェクターの摩耗やエンジンコントローラ15の故障などにより、燃焼室での燃料が濃くなると、スス量が増える場合がある。[例3]エンジン11の過給器の故障(過給圧の異常など)により、燃焼室での燃料が濃くなり、スス量が増える場合がある。例えば、過給器のセンサの故障などにより、過給圧の異常が生じ得る。[例4]エンジン11に吸入される空気が通るエアクリーナの目詰まりにより、燃焼室での燃料が濃くなり、スス量が増える場合がある。[例5]エンジン11に吸入される空気が通るインタークーラが設けられる場合がある。この場合、インタークーラに冷却液を供給するホースが、インタークーラから外れることで、燃焼室での燃料が濃くなり、スス量が増える場合がある。
【0061】
排ガスセンサ14などが設けられなければ、次の問題が生じる場合がある。エンジン11が故障し、スス量が増えても、排ガス後処理装置13がススを捕集するので、ススは、ほとんど大気へ排出されない。そのため、作業機械Mから排出されるガスを人が目視しても、スス量が異常状態であることを発見できない。また、通常、排ガス後処理装置13の故障を検出するために、排ガス後処理装置13よりも下流側に、スス量を検出するセンサ(「下流側センサ」とする)が設けられる。しかし、下流側センサでは、排ガス後処理装置13でススを適切に捕集できている間は、スス量が異常状態であることを発見できない。エンジン11が故障した状態で作動し続けると、エンジン11の故障が進行し、スス量が増大し、下流側センサでスス量の異常状態を発見できる場合はある。しかし、スス量が異常状態であることが下流側センサで発見された時点では、エンジン11の故障が進行した状態である、また、この時点では、排ガス後処理装置13も故障しているおそれがある。そのため、エンジン11および排ガス後処理装置13の修理や交換の費用が増大するおそれがある。一方、本実施形態の排ガス異常検出装置1では、上記の各問題を抑制できる。なお、排ガス異常検出装置1では、上記の各問題の一部のみを抑制できてもよい。
【0062】
(効果)
図1に示す排ガス異常検出装置1による効果は、次の通りである。なお、図2に示す各ステップ(S11~S63)については、図2を参照して説明する。
【0063】
(第1の発明の効果)
図1に示すように、排ガス異常検出装置1は、エンジン11と、排気管12と、排ガス後処理装置13と、排ガスセンサ14と、コントローラ50と、を備える。エンジン11は、作業機械Mの動力源である。排気管12は、エンジン11の排ガス11gが通るものである。排ガス後処理装置13は、排気管12に設けられ、排ガス11gからススを捕集する。
【0064】
[構成1]排ガスセンサ14は、排気管12に設けられ、エンジン11と排ガス後処理装置13との間に設けられ、排ガス11gのスス量を検出する。コントローラ50には、排ガスセンサ14の検出値が入力される。コントローラ50には、排ガス11gのスス量が異常状態であるか否かの判定である異常判定(S21、S61)を行う場合がある。コントローラ50には、異常判定(S21、S61)を行うための閾値であるスス量閾値A2(図3図5参照)が設定される。コントローラ50は、排ガスセンサ14の検出値がスス量閾値A2よりも大きい場合、排ガス11gのスス量が異常状態であると判定する。
【0065】
上記[構成1]により、排ガス後処理装置13よりも上流側の排気管12内のスス量が、異常状態であるか否かが判定される。よって、排ガス後処理装置13よりも上流側の排気管12内のスス量が、異常状態であることを検出できる。さらに詳しくは、排ガス後処理装置13よりも上流側の排気管12内のスス量が、排ガス後処理装置13で適切に捕集可能なスス量であっても、スス量が異常状態であることを検出できる。よって、エンジン11の故障を早期に発見しやすく、エンジン11の故障の進行(被害拡大)を抑制できる。
【0066】
(第2の発明の効果)
[構成2]コントローラ50には、エンジン11にかかる負荷が安定する条件であるエンジン負荷安定条件が設定される。エンジン負荷安定条件が満たされる場合、コントローラ50は、異常判定(S21、S61)を行う場合がある。エンジン負荷安定条件が満たされない場合、コントローラ50は、異常判定(S21、S61)を行わない。
【0067】
上記[構成2]により、エンジン負荷安定条件が満たされない場合には、異常判定(S21、S61)は行われない。よって、異常判定(S21、S61)が行われる場合には、エンジン負荷安定条件が満たされている。ここで、エンジン11の負荷が安定しない場合、スス量が安定せず、異常判定(S21、S61)を適切に行うことが難しい場合がある。一方、上記[構成2]では、異常判定(S21、S61)が行われる場合には、エンジン11にかかる負荷が安定する条件であるエンジン負荷安定条件が満たされているので、異常判定(S21、S61)を適切に行える。
【0068】
(第3の発明の効果)
排ガス異常検出装置1は、ポンプ21と、アクチュエータ23と、負荷掛け部30と、操作部43と、を備える。ポンプ21は、エンジン11に駆動される。アクチュエータ23は、ポンプ21から油が供給されることで作動する。負荷掛け部30は、ポンプ21に負荷を掛ける。操作部43は、アクチュエータ23を操作するために操作者に操作されるものである。
【0069】
[構成3]コントローラ50は、ポンプ21への負荷を負荷掛け部30に掛けさせる負荷掛け制御(S15)を行う場合がある。上記のエンジン負荷安定条件は、操作部43がアクチュエータ23を作動させない状態であり(S13でYES)、かつ、負荷掛け制御(S15)が行われていることを含む。
【0070】
アクチュエータ23が作動している状態では、エンジン11の負荷が安定しにくく、スス量が安定しない場合がある。そのため、実際にはスス量が異常ではないにもかかわらず、スス量がスス量閾値A2(図3図5参照)を超え、異常状態であると判定(誤判定)される問題が生じ得る。そこで、上記[構成3]では、操作部43がアクチュエータ23を作動させない状態(S13でYES)で異常判定(S21)が行われる場合がある。この場合、エンジン11の負荷が安定しやすく、スス量が安定しやすい状態で、異常判定(S21)を行える。よって、上記の誤判定を抑制できる。ここで、操作部43がアクチュエータ23を作動させない状態である場合に、負荷掛け制御(S15)が行われなければ、エンジン11に掛かる負荷が小さく、異常判定(S21)を適切に行うのに必要なスス量を確保できない場合がある。すると、エンジン11が故障していたとしても、スス量がスス量閾値A2(図3参照)を超えず、異常状態であると判定されない場合がある。そこで、上記[構成3]では、負荷掛け制御(S15)が行われている状態で、異常判定(S21)が行われる場合がある。この場合、負荷掛け制御(S15)により、異常判定(S21)に必要なスス量を確保した状態で、異常判定(S21)を行える。
【0071】
(第4の発明の効果)
[構成4]コントローラ50は、負荷掛け制御(S15)および異常判定(S21)を行っているときに、操作部43がアクチュエータ23を作動させる状態になった場合(S13でNOの場合)、次の処理を行う。この場合、コントローラ50は、負荷掛け制御(S15)および異常判定(S21)を中止し、操作部43の操作に応じてアクチュエータ23を作動させる。
【0072】
上記[構成4]では、負荷掛け制御(S15)および異常判定(S21)が行われているときに、操作部43がアクチュエータ23を作動させる状態になった場合(S13でNOの場合)、異常判定(S21)が中止される。よって、操作部43がアクチュエータ23を作動させる状態で異常判定(S21)が行われることによる、上記の誤判定を抑制できる。また、上記[構成4]では、負荷掛け制御(S15)および異常判定(S21)が行われているときに、操作部43がアクチュエータ23を作動させる状態になった場合(S13でNOの場合)、負荷掛け制御(S15)が中止される。よって、アクチュエータ23の作動が、操作者の意図に反する作動になることを抑制できる。
【0073】
(第5の発明の効果)
排ガス異常検出装置1は、ポンプ21と、走行操作部43aと、を備える。ポンプ21は、エンジン11に駆動される。走行操作部43aは、作業機械Mの走行を操作するために操作者に操作される。
【0074】
[構成5]コントローラ50には、走行操作部43aの操作量の閾値B1(走行操作量閾値)(図5参照)と、ポンプ21の吐出圧の範囲B3(ポンプ圧範囲)(図5参照)と、が設定される。エンジン負荷安定条件は、走行操作部43aの操作量が閾値B1よりも大きく(S31でYES)、かつ、ポンプ21の吐出圧が範囲B3内であること(S35でYES)を含む。
【0075】
上記[構成5]では、走行操作部43aの操作量が閾値B1(図5参照)よりも大きい場合(S31でYESの場合)に、異常判定(S61)が行われる場合がある。この場合、作業機械Mを停止させなくても、作業機械Mを走行させながら、異常判定(S61)を行える。一方、作業機械Mが走行する地面の状態によっては、エンジン11の負荷が安定しない場合がある。そこで、上記[構成5]では、ポンプ21の吐出圧が範囲B3(図5参照)内である場合に(S35でYESの場合に)、異常判定(S61)が行われる場合がある。この場合、ポンプ21の負荷が安定しやすく、エンジン11の負荷が安定しやすく、スス量が安定しやすい状態で、異常判定(S61)を行える。
【0076】
(第6の発明の効果)
[構成6]コントローラ50は、エンジン11の回転数に応じて、スス量閾値A2(図3~5参照)を変える。
【0077】
上記[構成6]により、エンジン11の回転数が変わり、スス量が変わった場合でも、適切に異常判定(S21、S61)を行える。さらに詳しくは、スス量閾値A2(図3~5参照)が低く設定されすぎることにより、実際にはスス量に異常がなくても、スス量が異常状態であると判定されること(誤判定)を抑制できる。また、スス量閾値A2が高く設定されすぎることにより、実際にはエンジン11に異常があっても、スス量が異常状態であると判定されなくなることを抑制できる。
【0078】
(第7の発明の効果)
[構成7]コントローラ50は、エンジン11に駆動されるポンプ21の吐出圧に応じて、スス量閾値A2(図3~5参照)を変える。
【0079】
上記[構成7]により、ポンプ21の吐出圧が変わり、スス量が変わった場合でも、適切に異常判定(S21、S61)を行える(詳細は第6の発明の効果と同様)。
【0080】
(第8の発明の効果)
[構成8]コントローラ50には、排ガス11gのスス量の増減に影響を及ぼす作動として予め定められたエンジン11の作動に関する検出値であるエンジンセンサ値15sが入力される。コントローラ50には、エンジンセンサ値15sの範囲であるエンジンセンサ範囲が設定される。コントローラ50は、エンジンセンサ値15sが、エンジンセンサ範囲外である場合、異常判定(S21、S61)を行わない。
【0081】
上記[構成8]により、エンジンセンサ値15sが、エンジンセンサ範囲外である場合は、異常判定(S21、S61)が行われない。よって、異常判定(S21、S61)が行われる場合には、エンジンセンサ値15sは、エンジンセンサ範囲内である。よって、上記の誤判定の問題、および、異常判定(S21、S61)に必要なスス量を確保できない問題、の少なくともいずれかの問題を抑制できる。
【0082】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、図1に示す各構成要素の接続は変更されてもよい。例えば、図2に示すフローチャートのステップの順序は変更されてもよい。例えば、排ガス異常検出装置1の構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、図1に示すコントローラ50での処理の一部(例えば図2に示すステップの一部)が行われなくてもよい。
【符号の説明】
【0083】
11 エンジン
11g 排ガス
12 排気管
13 排ガス後処理装置
14 排ガスセンサ
21 ポンプ
23 アクチュエータ
30 負荷掛け部
43 操作部
43a 走行操作部
50 コントローラ
A2 スス量閾値
B1 閾値(走行操作量閾値)
B3 範囲(ポンプ圧範囲)
M 作業機械
図1
図2
図3
図4
図5