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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20220614BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C02F1/32
B63B13/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018061670
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019171279
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】丹下 智陽
(72)【発明者】
【氏名】炭蔵 久和
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020671(JP,A)
【文献】特開2011-224476(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037645(WO,A1)
【文献】特開2013-023187(JP,A)
【文献】特開2017-225907(JP,A)
【文献】特開2017-094946(JP,A)
【文献】特開2000-185280(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031900(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0000146(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-1/78
B01D 37/04
B63B 13/00
G05D 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を浄化処理する水処理装置であって、
水を浄化する浄化手段と、浄化ラインと、バイパスラインと、浄化弁と、バイパス弁と、調整弁と、制御手段とを備えており、
前記浄化ラインは、前記浄化手段を通るラインであり、
前記バイパスラインは、前記浄化手段をバイパスするラインであり、
前記浄化弁は、前記浄化ラインへの水の流通を切り替える弁であり、
前記バイパス弁は、前記バイパスラインへの水の流通を切り替える弁であり、
前記調整弁は、開度調整が可能とされ且つ前記浄化ラインと前記バイパスラインの分岐位置よりも上流側に配置される弁であり、
前記制御手段は、水処理の開始後、前記浄化弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開く制御と、前記調整弁の開度を小さくする制御と、前記浄化弁を開く制御と、前記バイパス弁を閉じる制御と、前記調整弁の開度を段階的に上げる制御とを順次行い、前記浄化弁を開いてから前記バイパス弁を閉じるまでの間、前記浄化ラインと前記バイパスラインに分岐して水を流通させる、水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記制御手段による前記調整弁の開度を小さくする制御は、前記調整弁を最小開度とする制御である、水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水処理装置であって、
前記調整弁は、前記水処理装置に水を流通させるポンプよりも下流側に設けられる、水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を浄化処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカー等の船舶は、積み荷の原油等を降ろした後、再度目的地に向けて航行する際、航行中の船舶のバランスを取るため、通常、バラスト水と呼ばれる水をバラストタンク内に貯留する。このような船舶には、バラスト水の注排水による生態系の破壊を防ぐため、バラスト水を浄化処理する水処理装置(バラスト水処理装置)が設けられている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、流量調整が可能な弁(流量調整弁)を備えたバラスト水処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-227063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような構成の場合、バラスト水処理装置の起動直後、浄化手段に処理対象のバラスト水が急激に流入し、流入衝撃によって浄化手段に悪影響が生じるおそれがあった。
【0006】
なお、このような流入衝撃によって生じる問題は、海水を処理するバラスト水処理装置に限らず、河川、湖沼、池、工業水等の水を処理する水処理装置全般に生じるものである。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、起動直後の流量及び圧力の急激な変動を抑制し、浄化手段が損傷することを防止することの可能な水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、水を浄化処理する水処理装置であって、水を浄化する浄化手段と、浄化ラインと、バイパスラインと、浄化弁と、バイパス弁と、調整弁と、制御手段とを備えており、前記浄化ラインは、前記浄化手段を通るラインであり、前記バイパスラインは、前記浄化手段をバイパスするラインであり、
前記浄化弁は、前記浄化ラインへの水の流通を切り替える弁であり、前記バイパス弁は、前記バイパスラインへの水の流通を切り替える弁であり、前記調整弁は、開度調整が可能とされ且つ前記浄化ラインと前記バイパスラインの分岐位置よりも上流側に配置される弁であり、前記制御手段は、水処理の開始後、前記浄化弁を閉じた状態で前記バイパス弁を開く制御と、前記調整弁の開度を小さくする制御と、前記浄化弁を開く制御と、前記バイパス弁を閉じる制御と、前記調整弁の開度を段階的に上げる制御とを順次行う、水処理装置が提供される。
【0009】
このような構成によれば、制御手段が、流量調整弁を最小開度とし、浄化弁を開くとともにバイパス弁を閉じてから、流量調整弁の開度を段階的に上げる制御を行うため、浄化ラインに水が急激に流入して、浄化手段に悪影響が生じることを防止することができる。
【0010】
好ましくは、前記制御手段による前記調整弁の開度を小さくする制御は、前記調整弁を最小開度とする制御である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置10を船舶のバラスト装置に導入した様子を示す概略図である。
図2図1の水処理装置10において、濾過装置11及び紫外線リアクタ12をバイパスさせた際の流路を示す図である。
図3図1の水処理装置10において、濾過装置11及び紫外線リアクタ12を流通させてバラスト水を浄化処理する際の流路を示す図である。
図4図1の水処理装置10を起動させる起動モードM1を説明するフローチャートである。
図5図1の水処理装置10において、濾過装置11のみをバイパスさせた際の流路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0013】
1.バラスト装置の構成
図1は、本発明の実施形態に係る水処理装置(バラスト水処理装置)10を船舶のバラスト装置に導入した様子を示す概略図である。バラスト装置は、海水等の船外の水をシーチェストSC1から船内に取り込んでバラストタンク2に注水を行うバラスト動作と、バラストタンク2に貯留されたバラスト水を船外排出口SC2から排水するデバラスト動作とを行うものである。図1に示すように、本実施形態のバラスト装置は主に、船内を流通するバラスト水を圧送するポンプ1(バラストポンプ)と、水処理装置10と、バラストタンク2とを備える。以下、水処理装置10の構成を中心に説明する。
【0014】
なお、本明細書における「バラスト水」について、バラストタンク2に導入(流入)される前又はバラストタンク2から排出(流出)された後に拘わらず、船内に取り込まれた水を全て「バラスト水」と表現する。また、船内に取り込むバラスト水には、海水、淡水、汽水等が含まれるものとする。
【0015】
2.水処理装置10の構成
水処理装置10は、船内に取り込むバラスト水及び船内から排出するバラスト水を処理してバラスト水中に含まれる微生物・異物の含有量を低減するために導入されるものである。水処理装置10は、図1に示すように、ポンプ1とバラストタンク2(あるいは船外排出口SC2)との間に設けられる。ここで、水処理装置10において、ポンプ1側の接続部を上流側接続部P1、バラストタンク2側の接続部を下流側接続部P2とする。
【0016】
本実施形態の水処理装置10は、フィルタによりバラスト水を濾過処理する濾過装置11と、バラスト水に紫外線を照射して微生物を殺菌処理する紫外線照射手段としての紫外線リアクタ12と、バラスト水の流量を計測する流量計13と、バラスト水の水圧を計測する圧力計14と、水処理装置10内を流通するバラスト水の流通を制御する制御手段15とを備える。本実施形態の濾過装置11は、濾過処理中のフィルタの洗浄(逆洗浄)のため、フィルタの一次側に設けられ且つフィルタに向かって開口し、洗浄汚水を吸引して船外へ排出する排出管16を備えている。排出管16には、逆洗弁17が設けられている。なお、濾過装置11と紫外線リアクタ12とをそれぞれ浄化手段とも称する。本実施形態において、濾過装置11と紫外線リアクタ12には既知の構成が用いられる。またこの水処理装置10は、ポンプ1とバラストタンク2(あるいは船外排出口SC2)との間に設けられる。
【0017】
また、水処理装置10は、各構成要素を接続してバラスト水を流通させる複数のラインである第1ラインL1~第5ラインL5を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、水処理装置10は、開閉弁V1~開閉弁V4及び、開度調整の可能な第1調整弁FCV1(特許請求の範囲における調整弁)、第2調整弁FCV2も備えている。なお、水処理装置10の第1ラインL1について、一部の管路として船舶に既存のラインを用いてもよい。したがって、水処理装置10において第1ラインL1は必須の構成ではない。また、第2ラインL2~第5ラインL5について部分的に船舶に既存のラインを用いることも可能である。加えて、開閉弁V1~開閉弁V4、第1調整弁FCV1及び第2調整弁FCV2の少なくとも1つとして、船舶に既存のラインに設けられた弁を用いることも可能である。
【0018】
具体的には、図1に示すように、第1ラインL1は浄化手段(濾過装置11及び紫外線リアクタ12)をバイパスして上流側接続部P1と下流側接続部P2を接続するライン(バイパスライン)であり、バイパス弁としての開閉弁V1を有する。第2ラインL2は第1ラインL1と濾過装置11とを接続するラインであり、開閉弁V2を有する。第3ラインL3は、濾過装置11と紫外線リアクタ12とを接続するラインであり、開閉弁V3を有する。ここで、開閉弁V2と開閉弁V3とを合わせて浄化弁とも呼ぶ。また、第4ラインL4は、一端が第1ラインL1の第2ラインL2との接続位置よりも下流側の位置であって開閉弁V1よりは上流側の位置に接続され、他端が第3ラインL3の開閉弁V3よりも下流側の位置に接続される。第4ラインL4は開閉弁V4を有する。第5ラインL5は、一端が紫外線リアクタ12に接続され、他端が第1ラインL1の開閉弁V1よりも下流側の位置に接続される。なお、本実施形態において、流量計13は第5ラインL5に設置され、圧力計14は第1ラインL1の第4ラインL4との接続位置よりも上流側の位置に設置される。また、図3に示す、第1調整弁FCV1、濾過装置11、紫外線リアクタ12及び第2調整弁FCV2を流通するライン、すなわち第1ラインL1の一部及び第2ラインL2、第3ラインL3、第5ラインL5を「浄化ライン」とも呼ぶ。本実施形態の構成では、浄化弁の開閉により浄化ラインへの水の流通が切り替えられるようになっている。
【0019】
加えて、本実施形態の水処理装置10は、第1ラインL1の第2ラインL2との接続位置、すなわち浄化ライン(第2ラインL2~第5ラインL5)とバイパスライン(第1ラインL1)の分岐位置よりも上流側の位置に開度調整可能な第1調整弁FCV1が設けられ、第5ラインL5の流量計13よりも下流側の位置に開度調整可能な第2調整弁FCV2が設けられている。なお、本明細書において、「調整弁」と呼ぶ場合は、開状態と閉状態の2つの状態しか取ることのできない開閉弁は除かれるものとする。
【0020】
制御手段15は、上述した開閉弁V1~開閉弁V4の開閉を制御することにより、水処理装置10内を流通するバラスト水の流通を制御する。また、制御手段15は、浄化手段(濾過装置11及び紫外線リアクタ12)を流れるバラスト水の流量を調整するため第1調整弁FCV1及び第2調整弁FCV2の開度を調整する制御も行う。
【0021】
3.水処理装置10の動作
次に、以上のように構成された水処理装置10の動作について説明する。なお、以下の動作は制御手段15の制御により行われる。
【0022】
3.1 バイパス動作
ポンプ1の駆動直後やバラスト水の浄化処理が必要ない場合は、制御手段15は開閉弁V1及び第1調整弁FCV1を開きその他の開閉弁を閉じることでバラスト水が第1ラインL1(バイパスライン)を流通するようにし、濾過装置11及び紫外線リアクタ12をバイパスさせる(図2参照)。
【0023】
3.2 浄化動作
水処理装置10によりバラスト水を浄化する場合は、制御手段15は開閉弁V1,V4を閉じ、開閉弁V2,V3を開くとともに、第1調整弁FCV1及び第2調整弁FCV2を所定の開度にしてバラスト水が濾過装置11及び紫外線リアクタ12(浄化手段)を流通するようにする(図3参照)。この際、制御手段15は、これら濾過装置11及び紫外線リアクタ12の起動命令も出力する。バラスト水は、濾過装置11及び紫外線リアクタ12を流通することで浄化される。なお、バラスト装置の開閉弁V5を閉じて開閉弁V6を開いた場合、浄化されたバラスト水はバラストタンク2に貯水され、開閉弁V5を開いて開閉弁V6を閉じた場合、浄化されたバラスト水は船外へ排出される。
【0024】
ここで、制御手段15は、第1調整弁FCV1と第2調整弁FCV2の開度をそれぞれ制御することにより、浄化処理を行うバラスト水の流量、すなわち浄化手段を流通するバラスト水の流量の制御と、浄化手段(特に濾過装置11)における圧力の制御も行う。流通するバラスト水の流量は流量計13により計測され、圧力は圧力計14により計測される。本実施形態において、制御手段15による第1調整弁FCV1と第2調整弁FCV2の制御には、起動モードM1、及び通常モードM2の2つのモードがある。以下に、バラスト水の流量制御及び圧力制御のこれら2つのモードについて具体的に説明する。
【0025】
<起動モードM1>
起動モードM1は、水処理装置10が停止し、バラスト水が流通していない状態から、水処理装置10を起動させ、水処理を開始する際のモードである。以下、図4のフローチャートを用いて、起動モードM1の動作を説明する。
【0026】
まず、水処理装置10が起動し、起動モードM1が開始されると、制御手段15は、ステップS1において開閉弁V1を開く。この際、開閉弁V2,V3,V4及び第2調整弁FCV2は閉じられている。次に、ポンプ1が起動された後、ステップS2において、第1調整弁FCV1を最小開度で開く。このとき、バラスト水は第1ラインL1を流通する。水処理装置10を流通したバラスト水は、開閉弁V5を開き、開閉弁V6を閉じておくことで、船外へ排出される。
【0027】
次に、ステップS3において、制御手段15は開閉弁V2,V3(バラスト弁)を開く。これにより、バラスト水は第1ラインL1と、第2ラインL2,第3ラインL3,第5ラインL5に分岐して流通することになる。ここで、第2調整弁FCV2の開度は任意であるが、濾過装置11及び紫外線リアクタ12に定格流量以上のバラスト水が流れないよう調整される。なお、ステップS3においては、濾過装置11の排出管16に設けられた逆洗弁17も開く。そのため、第2ラインL2を流通したバラスト水の一部は排出管16を通って船外に排出される。
【0028】
次に、ステップS4において、制御手段15は開閉弁V1を閉じる。これにより、バラスト水は全て濾過装置11及び紫外線リアクタ12を流通するようになる。そして最後に、ステップS5において、制御手段15は最小開度であった第1調整弁FCV1の開度を段階的に上げてゆく。そして、ある程度第1調整弁FCV1の開度が上がったところで、起動モードM1を終了し、通常モードM2に移行する。
【0029】
本実施形態の水処理装置10は、制御手段15が以上のような起動モードM1を有しており、ステップS5において第1調整弁FCV1を段階的に開く制御を行うよう構成されている。そのため、水処理装置10の起動時のバラスト水流量及び圧力の急激な変動が抑制される。したがって、浄化手段(濾過装置11及び紫外線リアクタ12)にバラスト水を流通させる際に、浄化手段に処理対象のバラスト水が急激に流入し、流入衝撃によって浄化手段、特に濾過装置11のフィルタ等が損傷してしまうことを防止することが可能となっている。
【0030】
<通常モードM2>
通常モードM2は、浄化手段(濾過装置11及び紫外線リアクタ12)に定格流量、すなわち浄化処理可能で且つ効率的な流量を流通させてバラスト水を浄化処理させるモードである。具体的には、流通するバラスト水の水質が良い場合等、濾過装置11及び紫外線リアクタ12による浄化処理可能量が多い場合はバラスト水の流量を増加させる。また、濾過装置の処理能力よりも紫外線リアクタ12の処理能力が多い場合は、紫外線リアクタ12の出力を落とす。一方バラスト水の水質が悪い場合等、濾過装置11及び紫外線リアクタ12による浄化処理可能量が少ない場合は流量を低減する。なお、流通させるバラスト水の流量は、濾過装置11が濾過処理可能な定格流量と、紫外線リアクタ12が微生物を殺滅処理できる定格流量のうち、小さいほうの定格流量に設定することが好ましい。これにより、濾過装置11及び紫外線リアクタ12により適切に処理されたバラスト水を最短時間で貯留または排出することができる。
【0031】
また、通常モードM2において、制御手段15は、流量をほぼ一定に保ちつつ、圧力の変動も一定の範囲内に抑えるよう制御する。つまり、流量を下限値Qminと上限値Qmaxの間で維持しつつ、圧力も下限値Pminと上限値Pmaxの間で維持する。具体的には、制御手段15は、第2調整弁FCV2の開閉によりバラスト水の流量を制御し、第1調整弁FCV1の開閉により圧力を制御する。
【0032】
より具体的には、制御手段15は、流量計13により計測されるバラスト水の流量が下限値を下回っている場合は、第2調整弁FCV2の開度を上げ、バラスト水の流量が上限値を超えている場合は、第2調整弁FCV2の開度を下げる。ここで、水処理装置10を流通するバラスト水は、第2調整弁FCV2の開度を上げると増加し、第2調整弁FCV2の開度を下げると減少する。また、制御手段15は、圧力計により計測される圧力が下限値を下回っている場合は、第1調整弁FCV1の開度を上げ、圧力が上限値を上回っている場合は、第1調整弁FCV1の開度を下げる。
【0033】
なお、制御手段15は、第1調整弁FCV1と第2調整弁FCV2を同時には動作させないようにしている。これは、調整弁の開閉動作直後は圧力及び流量がしばらく変動するので、その変動値をもとに他方の調整弁を動作させてしまうと制御が困難になってしまうからである。
【0034】
通常モードM2では、制御手段15が上記のような制御を行うことで、浄化手段に所望の流量のバラスト水を処理させつつ、圧力の変動幅も小さくなるようになっている。したがって、急激な圧力変動(特に高圧になること)が抑制され、各浄化手段、特に濾過装置11のフィルタ等に悪影響が生じることが防止されている。また、通常モードM2において、濾過装置11はフィルタの洗浄(逆洗浄)動作も行っているが、逆洗浄のための洗浄水には流通するバラスト水を用いている。そのため、流通するバラスト水の圧力が低下しすぎると、洗浄水の水圧も不足して洗浄が不十分になるおそれがあった。しかしながら、本実施形態の水処理装置は、圧力の変動幅を抑え、バラスト水の圧力が低下することも抑制されているため、濾過装置11の逆洗浄が不十分に成ることも防止されている。
【0035】
なお、通常モードM2において制御手段15は、第2調整弁FCV2の1回の最大動作量(例えば、3秒毎に調整される)を、開度が小さいほど少なく、開度が大きいほど多くなるよう制御している。具体的には例えば、開度がX1以下のときは、最大動作量をY1とし、開度がX2(>X1)~X3(>X2)のときは、最大動作量をY2(>Y1)とし、開度がX3以上のときは、最大動作量をY3(>Y2)とするというように設定する。これは、開度が小さい場合、開度が大きい場合よりも開度変化に応じた流量及び圧力の変動が大きくなるからである。このような制御により、開度が大きい場合には、最大動作量を多くして素早い圧力の調整を可能とし、開度が小さい場合には、最大動作量を小さくして急激な圧力変動を抑制している。
【0036】
なお、上記の説明では、バラスト水を濾過装置11及び紫外線リアクタ12の両方に流通させて浄化する場合の例を説明した。しかしながら、例えばデバラスト動作時には、開閉弁V2,V3を閉じて開閉弁V4を開くことで濾過装置11をバイパスし、紫外線リアクタ12の処理のみを行うことも可能である(図5参照)。この際も、制御手段15により第1調整弁FCV1及び第2調整弁FCV2の制御を行うことが好ましい。デバラスト動作時には、図5に示す、第1調整弁FCV1、紫外線リアクタ12及び第2調整弁FCV2を流通するライン、すなわち第1ラインL1の一部、第4ラインL4、第3ラインL3の一部及び第5ラインL5が「浄化ライン」となる。また、第4ラインL4に設けられた開閉弁V4が浄化弁とされる。なお、バラスト装置において、デバラスト動作時には、バラストタンク2に貯留されていたバラスト水は、開閉弁V7が開かれることにより第6ラインL6(デバラストライン)及びポンプ1を経由して水処理装置10へ流入する。この際も、バラスト水が流通していない状態から水処理装置10を起動させ、水処理を開始する際には、起動モードM1を動作させることで、浄化手段(この場合は紫外線リアクタ12)に処理対象のバラスト水が急激に流入し、流入衝撃によって浄化手段が損傷してしまうことを防止することが可能となっている。
【0037】
4.変形例
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0038】
・上記実施形態では、起動モードM1において、開閉弁V1を開いた後のステップS2において、制御手段15は第1調整弁FCV1を最小開度で開くよう制御していたが、第1調整弁FCV1の開度は必ずしも最小開度とする必要はない。第1調整弁FCV1の開度をある程度小さくする(例えば、20%以下とする)だけでも、バラスト水が浄化ラインに急激に流入することが抑制され、流入衝撃によって浄化手段が損傷してしまうことを防止することが可能である。なお、ある程度小さくする開度としては、例えば30%以下とする
・上記実施形態では、制御手段15が第1調整弁FCV1及び第2調整弁FCV2をともに制御していたが、第2調整弁FCV2を制御手段15によっては制御しない構成、例えば手動で動作させる構成とすることも可能である。この場合、制御手段15は第2調整弁FCV2の開度を取得して第1調整弁FCV1の開度の制御を行うことになる。
・上記実施形態では、水処理装置10は浄化手段として濾過装置11及び紫外線リアクタ12を備えていたが、濾過装置11と紫外線リアクタ12の一方のみを備えた構成や、他の浄化手段を用いた構成とすることも可能である。この場合であっても、上記起動モードM1を有していることで、浄化手段にバラスト水が急激に流入し、流入衝撃によって浄化手段が損傷してしまうことを防止することが可能となっている。
・上記実施形態では、紫外線リアクタ12の下流側の第5ラインL5に、流量調整のための第2調整弁FCV2を設けていたが、流量調整のための調整弁は、浄化手段を流通するバラスト水の流路上(すなわち、浄化ライン上)であれば、任意の場所に設けることができる。なお、この第2調整弁FCV2を設けることのできる場所には、第1ラインL1の開閉弁V1よりも下流側の位置であって、第5ラインL5との合流位置よりも下流側の位置も含まれる。
・上記実施形態では、水処理装置10をバラスト装置に適用した例を示したが、本発明の水処理装置10は、バラスト装置以外にも、河川、湖沼、池、工業水等の様々な水を処理する水処理装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 :ポンプ
2 :バラストタンク
10 :水処理装置
11 :濾過装置
12 :紫外線リアクタ
13 :流量計
14 :圧力計
15 :制御手段
16 :排出管
17 :逆洗弁
FCV1 :第1調整弁(調整弁)
FCV2 :第2調整弁
L1 :第1ライン(バイパスライン)
L2 :第2ライン(浄化ライン)
L3 :第3ライン(浄化ライン)
L4 :第4ライン(浄化ライン)
L5 :第5ライン(浄化ライン)
L6 :第6ライン
M1 :起動モード
M2 :通常モード
P1 :上流側接続部
P2 :下流側接続部
S1~S5 :ステップ
SC1 :シーチェスト
SC2 :船外排出口
V1 :開閉弁(バイパス弁)
V2,V3:開閉弁(浄化弁)
V4:開閉弁(浄化弁)
V1,V5~V7:開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5