(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】現像装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20220614BHJP
G03G 15/09 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G03G15/08 226
G03G15/08 227
G03G15/08 235
G03G15/09 A
(21)【出願番号】P 2018072147
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣井 俊顕
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-235172(JP,A)
【文献】特開2014-119692(JP,A)
【文献】特開2016-170197(JP,A)
【文献】米国特許第09280094(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/08
13/095
15/08
15/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に現像剤を担持して前記現像剤を搬送する円筒状の現像剤担持体と、
回転により前記現像剤担持体に前記現像剤を供給する供給スクリューとを備える、現像装置であって、
前記現像剤担持体の軸心よりも上方に配置され、前記現像剤担持体の前記外周面上における前記現像剤の層厚を規制する、磁性を有する円柱状の規制部材と、
前記規制部材に対し前記現像剤の搬送方向の上流側に配置され、前記規制部材に供給される前記現像剤の量を規制する上流規制部とを備え、
前記現像剤担持体の前記軸心と前記供給スクリューの回転中心とは平行に延び、
前記上流規制部は、互いに非平行であり前記現像剤担持体に向かって収束する、第一面と第二面とを有し、
前記軸心および前記回転中心の延びる方向に前記現像装置を見て、前記軸心と前記回転中心とを結ぶ直線が前記現像剤担持体の前記外周面と交差する交点から前記搬送方向の上流側に90°の範囲内に、前記規制部材および前記上流規制部
の前記第一面および前記第二面が配置されている、現像装置。
【請求項2】
前記
第一面と前記現像剤担持体との間隔が、前記搬送方向の上流から下流に向かうに従って減少する、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記上流規制部と前記規制部材とは、前記
第二面と前記規制部材との間隔が前記現像剤担持体から離れるに従って減少する部分を有している、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記上流規制部は、非磁性体で構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記上流規制部は、磁性体で構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤担持体は、前記規制部材に対向配置された規制極と、前記供給スクリューに対向配置されたキャッチ極と、前記搬送方向における前記キャッチ極の下流かつ前記規制極の上流に配置され、前記キャッチ極から前記規制極へ前記現像剤を搬送する搬送極とを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記現像剤担持体を収容するハウジングをさらに備え、
前記搬送極から前記ハウジングの内壁面までの距離は、前記キャッチ極から前記内壁面までの距離以上である、請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
感光体と、
請求項1~7のいずれか1項に記載の現像装置とを備える、画像形成装置。
【請求項9】
前記現像剤担持体の前記外周面と、前記感光体とは、同方向に回転可能である、請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の現像装置に関し、特開2013-254147号公報(特許文献1)には、現像剤を保持して搬送する現像ロールと、現像剤を撹拌しつつ現像ロールに供給するよう搬送する撹拌搬送部材と、現像ロールが保持する現像剤の層厚を規制する磁性を有する円柱状の規制部材と、撹拌搬送部材から規制位置に向けて現像ロールの表面との間の空間を狭くする形状を有する壁面部材とを備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の現像装置では、撹拌搬送部材と規制部材とが近い位置に配置されているため、現像剤がキャリアとトナーとを含む場合、また装置が大きく傾斜したような場合に、撹拌搬送部材から規制部材に供給される現像剤の量が大きく変動し、その結果現像される画像に濃度むらが発生する可能性がある。
【0005】
本開示では、現像剤の搬送量を安定させることができる、現像装置および画像形成装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、現像剤担持体と、供給スクリューと、規制部材と、上流規制部とを備える現像装置が提供される。現像剤担持体は、円筒状であり、外周面に現像剤を担持して現像剤を搬送する。供給スクリューは、回転により現像剤担持体に現像剤を供給する。規制部材は、現像剤担持体の外周面上における現像剤の層厚を規制する。規制部材は、磁性を有しており、円柱状である。規制部材は、現像剤担持体の軸心よりも上方に配置されている。上流規制部は、規制部材に対し現像剤の搬送方向の上流側に配置されており、規制部材に供給される現像剤の量を規制する。現像剤担持体の軸心と供給スクリューの回転中心とは平行に延びている。軸心および回転中心の延びる方向に現像装置を見て、軸心と回転中心とを結ぶ直線が現像剤担持体の外周面と交差する交点から現像剤の搬送方向の上流側に90°の範囲内に、規制部材および上流規制部が配置されている。
【0007】
上記の現像装置において、上流規制部と現像剤担持体との間隔が、現像剤の搬送方向の上流から下流に向かうに従って減少してもよい。
【0008】
上記の現像装置において、上流規制部と規制部材とは、上流規制部と規制部材との間隔が現像剤担持体から離れるに従って減少する部分を有していてもよい。
【0009】
上記の現像装置において、上流規制部は、非磁性体で構成されていてもよい。または上流規制部は、磁性体で構成されていてもよい。
【0010】
上記の現像装置において、現像剤担持体は、規制部材に対向配置された規制極と、供給スクリューに対向配置されたキャッチ極と、搬送方向におけるキャッチ極の下流かつ規制極の上流に配置され、キャッチ極から規制極へ現像剤を搬送する搬送極とを有していてもよい。
【0011】
上記の現像装置は、現像剤担持体を収容するハウジングをさらに備えており、搬送極からハウジングの内壁面までの距離は、キャッチ極から内壁面までの距離以上であってもよい。
【0012】
本開示に従うと、感光体と、上記のいずれかの現像装置とを備える、画像形成装置が提供される。
【0013】
上記の画像形成装置において、現像剤担持体の外周面と、感光体とは、同方向に回転可能であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る現像装置および画像形成装置によれば、現像剤の搬送量を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係る画像形成装置を示す概略図である。
【
図2】実施の形態1に係る現像装置の構成を示す部分断面図である。
【
図3】規制部材および上流規制部周辺の拡大図である。
【
図4】現像ローラーに対する規制部材および上流規制部の配置を示す図である。
【
図5】ハウジングに対する現像ローラーの配置を示す図である。
【
図6】本発明適用前の規制部材へ搬送される現像剤の状態を模式的に表した図である。
【
図7】実施の形態1の規制部材へ搬送される現像剤の状態を模式的に表した図である。
【
図8】上流規制部と現像ローラーとの間のギャップ長に対する現像剤搬送量の変化を示すグラフである。
【
図9】上流規制部と規制部材との間のギャップ長に対する現像剤搬送量の変化を示すグラフである。
【
図10】現像ローラーの回転数に対する現像剤搬送量の変化を示すグラフである。
【
図11】実施の形態2に係る現像装置の構成を示す部分断面図である。
【
図12】実施の形態2の、現像ローラーの回転数に対する現像剤搬送量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0017】
[実施の形態1]
(画像形成装置100)
図1は、実施の形態に係る画像形成装置100を示す概略図である。
図1には、カラープリンタとしての画像形成装置100が示されている。以下では、カラープリンタについて説明するが、画像形成装置100は、カラープリンタに限定されない。たとえば、画像形成装置100は、モノクロプリンタであってもよいし、ファックスであってもよいし、モノクロプリンタ、カラープリンタおよびファックスの複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)であってもよい。
【0018】
画像形成装置100は、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30と、一次転写ローラー31と、二次転写ローラー33と、カセット37と、従動ローラー38と、駆動ローラー39と、タイミングローラー40と、定着装置50と、筐体80とを主に備えている。
【0019】
筐体80は、画像形成装置100の外殻を規定している。筐体80は、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30と、一次転写ローラー31と、二次転写ローラー33と、カセット37と、従動ローラー38と、駆動ローラー39と、タイミングローラー40と、定着装置50とを、内部に収容している。
【0020】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30と、一次転写ローラー31と、二次転写ローラー33と、カセット37と、従動ローラー38と、駆動ローラー39と、タイミングローラー40とは、画像形成部を構成している。この画像形成部は、後述する搬送経路41に沿って搬送される記録媒体としての用紙S上に、トナー画像を形成する。
【0021】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト30に沿って順に並べられている。画像形成ユニット1Yは、トナーボトル15Yからトナーの供給を受けてイエロー(Y)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Mは、トナーボトル15Mからトナーの供給を受けてマゼンタ(M)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Cは、トナーボトル15Cからトナーの供給を受けてシアン(C)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Kは、トナーボトル15Kからトナーの供給を受けてブラック(BK)のトナー像を形成する。
【0022】
各色のトナーボトル15には、トナー補給口16が形成されている。トナー補給口16は、トナーボトル15の下面に形成されている。トナーボトル15内に収容されたトナーは、トナー補給口16を経由してトナーボトル15外へ排出され、図示しないトナー補給路を経由して、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kへ供給される。
【0023】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、中間転写ベルト30に沿って中間転写ベルト30の回転方向の順に配置されている。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、感光体10と、帯電装置11と、露光装置12と、現像装置13と、クリーニング装置17とを備えている。
【0024】
帯電装置11は、感光体10の表面を一様に帯電する。露光装置12は、感光体10にレーザー光を照射し、入力された画像パターンに従って感光体10の表面を露光する。これにより、入力画像に応じた静電潜像が感光体10上に形成される。
【0025】
現像装置13は、現像ローラー14を回転させながら、現像ローラー14に現像バイアスを印加し、現像ローラー14の表面にトナーを付着させる。これにより、トナーが現像ローラー14から感光体10に転写され、静電潜像に応じたトナー像が感光体10の表面に現像される。感光体10は、その表面にトナー像を担持する像担持体としての機能を有している。
【0026】
感光体10と中間転写ベルト30とは、一次転写ローラー31を設けている部分で互いに接触している。一次転写ローラー31は、ローラー形状を有し、回転可能に構成される。トナー像と反対極性の転写電圧が一次転写ローラー31に印加されることによって、トナー像が感光体10から中間転写ベルト30に転写される。イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像、およびブラック(BK)のトナー像が順に重ねられて感光体10から中間転写ベルト30に転写される。これにより、カラーのトナー像が中間転写ベルト30上に形成される。
【0027】
中間転写ベルト30は、従動ローラー38および駆動ローラー39に張架されている。駆動ローラー39は、たとえばモーター(図示しない)によって回転駆動される。中間転写ベルト30および従動ローラー38は、駆動ローラー39に連動して回転する。これにより、中間転写ベルト30上のトナー像が二次転写ローラー33に搬送される。
【0028】
クリーニング装置17は、感光体10に圧接されている。クリーニング装置17は、トナー像の転写後に感光体10の表面に残留するトナーを回収する。
【0029】
カセット37には、用紙Sがセットされる。用紙Sは、ピックアップローラー42によってカセット37から1枚ずつ繰り出され、タイミングローラー40によって搬送経路41に沿って二次転写ローラー33に送られる。
【0030】
二次転写ローラー33は、ローラー形状を有しており、回転可能に構成されている。二次転写ローラー33は、トナー像と反対極性の転写電圧を搬送中の用紙Sに印加する。これにより、トナー像は、中間転写ベルト30から二次転写ローラー33に引き付けられ、中間転写ベルト30上のトナー像が転写される。二次転写ローラー33への用紙Sの搬送タイミングは、中間転写ベルト30上のトナー像の位置に合わせてタイミングローラー40によって調整される。タイミングローラー40により、中間転写ベルト30上のトナー像は、用紙Sの適切な位置に転写される。
【0031】
定着装置50は、自身を通過する用紙Sを加圧および加熱する。これにより、トナー像は用紙Sに定着する。定着装置50は、搬送経路41に沿って搬送される用紙S上のトナー画像を定着させる。トナー像が定着された用紙Sは、トレイ48に排紙される。
【0032】
上記の説明では、印刷方式としてタンデム方式を採用している画像形成装置100について説明したが、画像形成装置100の印刷方式は、タンデム方式に限定されない。画像形成装置100内における各構成の配置は、採用される印刷方式に従って適宜変更され得る。画像形成装置100の印刷方式として、ロータリー方式や直接転写方式が採用されてもよい。ロータリー方式の場合、画像形成装置100は、1つの感光体10と、同軸上で回転可能に構成される複数の現像装置13で構成される。画像形成装置100は、印刷時には、各現像装置13を感光体10に順に導き、各色のトナー像を現像する。直接転写方式の場合、画像形成装置100は、感光体10上に形成されたトナー像が用紙Sに直接転写される。
【0033】
(現像装置13)
図2は、実施の形態1に係る現像装置13の構成を示す部分断面図である。
図2を参照して、
図1に示す画像形成装置100に設けられる現像装置13の構成の一例について説明する。
【0034】
現像装置13は、感光体10上の静電潜像を現像する2成分現像装置である。現像装置13に用いられる現像剤は、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤である。トナーとしては、トナー母体粒子に外添剤を付着させて得られたものが用いられる。トナーは非磁性体により、キャリアは磁性体により、それぞれ形成されている。現像装置13は、負に帯電したトナー粒子で反転現像により静電潜像を可視トナー像とするものである。
【0035】
現像装置13は、現像剤を収容するハウジング60を有している。ハウジング60の内部の所定位置には、現像ローラー14、供給スクリュー61、および撹拌スクリュー62が収容されている。現像ローラー14は、円筒状の形状を有している。現像ローラー14は、その外周面14Aに現像剤を担持して現像剤を感光体10に搬送する現像剤担持体としての機能を有している。
【0036】
現像ローラー14の、少なくとも外周面14Aを含む一部分は、円筒状の現像ローラー14の軸心を中心として、ハウジング60に対して回動可能である。供給スクリュー61および撹拌スクリュー62は、ハウジング60に対して回転軸を中心として回動可能に形成されている。現像ローラー14の軸心と、供給スクリュー61および撹拌スクリュー62のそれぞれの回転中心とは、互いに平行に延びている。現像ローラー14、供給スクリュー61および撹拌スクリュー62は、それぞれの回転軸の延びる方向(
図2中の紙面垂直方向)に沿って、平行に配置されている。
【0037】
撹拌スクリュー62は、ハウジング60内で回転して、現像剤を撹拌するとともに、現像剤を供給スクリュー61へ搬送する。供給スクリュー61は、撹拌スクリュー62から搬送される現像剤を受け取る。供給スクリュー61は、回転により現像剤を現像ローラー14に向けて供給する。
【0038】
現像ローラー14の外周面14Aの所定の部位に対向する位置には、規制部材63が配置されている。規制部材63は、保持部64を介して、ハウジング60に保持されている。規制部材63は、磁性材料を用いて形成されている。規制部材63は、円柱状であり、その外周面の一部が現像ローラー14の外周面14Aに対向するように配置されている。規制部材63は、現像ローラー14の軸心よりも上方に配置されている。規制部材63は、現像ローラー14の外周面14Aから離れて配置されている。規制部材63と現像ローラー14との間には、隙間が形成されている。
【0039】
現像ローラー14は、複数の磁極を有している。複数の磁極は、現像ローラー14に内包されている。複数の磁極は、現像ローラー14の外周面14Aに沿って配置されている。複数の磁極は、現像ローラー14の周方向に、並んで配置されている。本実施の形態では、キャッチ極71、搬送極72、規制極73、現像極74、および剥離極75の5極が設けられている。キャッチ極71、規制極73および剥離極75はS極であり、搬送極72および現像極74はN極である。現像ローラー14の外周面14Aには、S極の磁性とN極の磁性とが交互に配置されている。
【0040】
キャッチ極71は、供給スクリュー61に対向配置されている。キャッチ極71は、供給スクリュー61から供給された現像剤を磁力によって引き付け、現像ローラー14の外周面14Aに現像剤を保持させる。現像剤は、外周面14A上に担持されながら、搬送極72に搬送される。現像剤は、搬送極72により、現像ローラー14の外周面14Aに付着した状態を維持する。搬送極72は、現像剤の搬送方向におけるキャッチ極71の下流かつ規制極73の上流に配置されており、キャッチ極71から規制極73へ現像剤を搬送する。
【0041】
規制極73は、規制部材63に対向配置されている。規制極73は、現像ローラー14の外周面14Aが規制部材63に向き合う位置に配置されている。規制極73から磁力を受けた現像剤は、現像ローラー14と規制部材63との間の隙間を通過するときに、規制部材63によって、外周面14A上における層厚が規制される。現像剤が規制部材63によって擦りきられることで、現像剤の搬送量の均一性が向上している。
【0042】
現像剤は、規制極73を通過後、現像極74に搬送される。現像極74は、感光体10(
図1)に向き合う位置に配置されている。現像極74は、規制極73よりも磁束密度が大きいように構成されている。現像剤が現像極74の位置を通過するときに、現像剤に含まれるトナーとキャリアとのうち、トナーのみが感光体10に付着する。これにより、感光体10に形成されている静電潜像は、トナー像として現像される。
【0043】
その後、現像ローラー14の外周面14A上に残存する現像剤は、剥離極75に搬送される。剥離極75は、現像ローラー14から現像剤を剥離するための磁極である。剥離極75はS極でありキャッチ極71もS極であり、剥離極75とキャッチ極71との間には反発力が働くため、剥離極75に到達した現像剤は、キャッチ極71へ移動することができない。その結果、現像剤は現像ローラー14から剥離し、下方へ落下する。
【0044】
上述した通り、現像ローラー14まわりの現像剤の搬送方向は、
図2においては時計回り方向である。規制部材63に対し現像剤の搬送方向の上流側に、上流規制部65が配置されている。実施の形態1の上流規制部65は、ハウジング60の一部として、ハウジング60と一体で構成されている。したがって実施の形態1の上流規制部65は、非磁性体で構成されている。典型的には、上流規制部65は樹脂材料により形成されている。
【0045】
(規制部材63および上流規制部65の配置)
図3は、規制部材63および上流規制部65周辺の拡大図である。
図3に示すように、上流規制部65は、第一面66と第二面67とを有している。第一面66と第二面67とは、各々平面形状を有している。
【0046】
上流規制部65の第一面66は、現像ローラー14と対向している。第一面66は、現像ローラー14の外周面14Aから離れて配置されている。第一面66と現像ローラー14との間には、隙間が形成されている。上流規制部65の第一面66と現像ローラー14との間隔は、現像剤の搬送方向の上流から下流に向かうに従って減少している。第一面66は、規制部材63に近づくに従って現像ローラー14との間隔が小さくなる形状とされている。
図3に示すギャップ長G1は、上流規制部65と現像ローラー14との間隔の最小値を示している。
【0047】
平面状の第一面66に対し垂直に延び第一面66と現像ローラー14の外周面14Aとを結ぶ線分を考えた場合に、当該線分の長さは、現像剤の搬送方向の下流に向かうに従って、すなわち規制部材63に近づくに従って、単調減少する。現像ローラー14の軸心を通り現像ローラー14の径方向に延びる直線が現像ローラー14の外周面14Aに交差する第一の交点と第一面66に交差する第二の交点との距離は、現像剤の搬送方向の下流に向かうに従って、すなわち規制部材63に近づくに従って、単調減少する。
【0048】
上流規制部65の第二面67は、規制部材63と対向している。第二面67は、規制部材63の外周面から離れて配置されている。第二面67と規制部材63との間には、隙間が形成されている。上流規制部65と規制部材63とは、上流規制部65と規制部材63との間隔が現像ローラー14から離れるに従って減少する部分を有している。
【0049】
具体的には、現像ローラー14の外周面14Aと、上流規制部65と規制部材63とが最も近く配置される最近接部との間の範囲においては、上流規制部65と規制部材63との間隔が、現像ローラー14から離れるに従って減少する。換言すると、上流規制部65と規制部材63との間隔が現像ローラー14から離れるに従って減少する範囲とは、規制部材63の軸心を通り規制部材63の径方向に延びる直線のうち規制部材63の軸心と第二面67との距離を最小とする直線、すなわち、平面状の第二面67に対する垂線のうち円柱状の規制部材63の軸線と交わる交線と、現像ローラー14の外周面14Aとの間の範囲である。当該範囲における上流規制部65と規制部材63との間隔の最大値が、
図3に示すギャップ長G2である。
【0050】
図3に示すように、第一面66と第二面67との交わる線と現像ローラー14の外周面14Aとの距離がギャップ長G1であり、第一面66と第二面67との交わる線と規制部材63の外周面との距離がギャップ長G2である。ギャップ長G1とは、第一面66のうち規制部材63に最も近い位置と現像ローラー14の外周面14Aとの距離であり、ギャップ長G2とは、第二面67のうち現像ローラー14に最も近い位置と規制部材63の外周面との距離である。
【0051】
実施の形態の上流規制部65は、ギャップ長G1がギャップ長G2よりも小さいように配置されている。実施の形態の上流規制部65は、規制部材63と現像ローラー14の外周面14Aとの間隔よりもギャップ長G1が大きいように、配置されている。ギャップ長G2をギャップ長G1の1.7倍としてもよい。ギャップ長G2を規制部材63と現像ローラー14の外周面14Aとの間隔の2.5倍としてもよい。
【0052】
図4は、現像ローラー14に対する規制部材63および上流規制部65の配置を示す図である。
図4には、
図2と同様に、現像ローラー14の軸心および供給スクリュー61の回転中心の延びる方向から見た現像装置13が図示されている。現像ローラー14の軸心および供給スクリュー61の回転中心は、
図4においては紙面垂直方向に延びている。
図4に示す直線L1は、現像ローラー14の軸心と供給スクリュー61の回転中心とを結ぶ直線である。直線L2は、現像ローラー14の軸心を通り直線L1に直交する直線である。
【0053】
交点P1は、直線L1が現像ローラー14の外周面14Aと交差する2つの交点のうち、供給スクリュー61から離れる側の交点である。直線L1と外周面14Aとの交点のうち、規制部材63により近い、または規制極73により近い交点が、交点P1である。交点P2は、直線L2が現像ローラー14の外周面14Aと交差する2つの交点のうち、交点P1に対して現像剤の搬送方向の上流側にある交点である。直線L2と外周面14Aとの交点のうち、搬送極72により近い、または搬送方向においてキャッチ極71と規制極73との間にある交点が、交点P2である。
【0054】
現像ローラー14の周方向における交点P1と交点P2との間の範囲が、
図4中の両矢印で示されている。現像ローラー14の周方向において、規制部材63と上流規制部65とは、
図4中の両矢印で示される範囲内に配置されている。現像ローラー14の周方向において、規制部材63と上流規制部65とは、交点P1から現像剤の搬送方向の上流側に90°の範囲内に配置されている。
図4においては、交点P1を起点として現像ローラー14の軸心周りに反時計回り方向90°の範囲内に、規制部材63および上流規制部65が配置されている。
【0055】
(現像ローラー14の配置)
図5は、ハウジング60に対する現像ローラー14の配置を示す図である。
図5に示す距離D1は、キャッチ極71に対向するハウジング60の内壁面とキャッチ極71との最短距離を示し、距離D2は、搬送極72に対向するハウジング60の内壁面と搬送極72との最短距離を示す。距離D2が距離D1よりも大きいように、ハウジング60内に現像ローラー14が配置されている。距離D2を距離D1の1.5倍としてもよい。
【0056】
(上流規制部65の作用効果)
以上の構成を備えている実施の形態1の現像装置13における、上流規制部65の作用効果について、以下に説明する。
図6は、本発明適用前の規制部材63へ搬送される現像剤の状態を模式的に表した図である。
【0057】
図6に示すように、規制部材63の上流に、現像剤が滞留して現像剤が停止している停止層が形成される。
図6中の破線は、停止層の境界を示す。現像ローラー14の外周面14Aと停止層との間にある現像剤が、規制部材63へ搬送される。
図6中の白抜き矢印は、現像剤の搬送方向を示す。
【0058】
規制部材63の上流に上流規制部がない場合、停止層の境界は、現像ローラー14の外周面14Aから比較的離れた位置に形成される。現像ローラー14の外周面14Aと停止層との間隔は、外周面14Aと規制部材63との間隔よりも大きくなる。停止層の境界が上方に位置しているため、比較的多くの量の現像剤が、現像ローラー14と停止層との間に存在する。外周面14Aと規制部材63との隙間に多量の現像剤が突入することで、突入する現像剤の速度が大きくなる。現像剤の搬送速度、すなわち現像ローラー14の外周面14Aの回転速度に対応して、規制部材63に突入する現像剤の量が変動し、現像剤の搬送量が安定しない。
【0059】
また、規制部材63の上流に上流規制部がない場合、規制部材63の軸方向において停止層が不均一に形成されるため、規制部材63に突入する現像剤の量も軸方向において不均一になる。
【0060】
図7は、実施の形態1の規制部材63へ搬送される現像剤の状態を模式的に表した図である。
図7に示すように、上流規制部65を規制部材63の上流に配置することで、外周面14Aと停止層の境界との間隔と、外周面14Aと規制部材63との間隔との差が小さくなる。上流規制部65によって規制部材63に供給される現像剤の量が規制されるため、規制部材63に突入する現像剤の速度が安定し、現像剤の搬送量を安定させることができる。
【0061】
上流規制部65を、現像ローラー14の軸心の延びる方向(すなわち規制部材63の軸方向であって、
図7においては紙面垂直方向)において現像ローラー14の外周面14Aに対して等間隔に配置することで、規制部材63の軸方向に形成される停止層の均一性も向上できるので、規制部材63に突入する現像剤の量も軸方向で安定させることができる。
【0062】
現像剤の搬送量を安定させることで、濃度むら、穂詰り、キャリア付着などの、現像剤の搬送量が変動することによる不具合を防止することができる。
【0063】
図4に示すように、規制部材63および上流規制部65を、交点P1から現像剤の搬送方向上流側の90°の範囲内に配置することで、キャッチ極71から規制部材63および上流規制部65までの距離を長くできる。供給スクリュー61から現像ローラー14に供給される現像剤の量が変動した場合にも、上流規制部65に現像剤が搬送されるまでに現像剤の量の差を低減できる。現像ローラー14の軸方向におけるむらも、上流規制部65に現像剤が搬送されるまでに低減できる。したがって、上流規制部65の効果を十分発揮することができる。
【0064】
図3に示すように、上流規制部65と現像ローラー14との間隔が現像剤の搬送方向の上流から下流に向かうに従って減少することにより、
図7に示す規制部材63に突入する側の現像剤の停止層が形成され易くなる。
【0065】
また、上流規制部65と規制部材63との間隔が現像ローラー14から離れるに従って減少することで、上流規制部65と規制部材63との間に現像剤が入りにくくなるので、規制部材63に突入する現像剤の搬送量をより安定に保つことができる。
【0066】
図2を参照して説明した通り、上流規制部65を非磁性体で構成することにより、上流規制部65を容易に作製することができる。上流規制部65は、ハウジング60と一体でなく別体の部品として構成してもよいが、上流規制部65をハウジング60と一体で構成することにより、現像装置13の部品点数を削減することができる。
【0067】
図8は、上流規制部65と現像ローラー14との間のギャップ長G1に対する現像剤搬送量の変化を示すグラフである。
図8の横軸には上流規制部65と現像ローラー14とのギャップ長G1を示し、縦軸には現像剤の搬送量を示す。
図9は、上流規制部65と規制部材63との間のギャップ長G2に対する現像剤搬送量の変化を示すグラフである。
図9の横軸には上流規制部65と規制部材63とのギャップ長G2を示し、縦軸には現像剤の搬送量を示す。
【0068】
図8,9に示すように、ギャップ長G1,G2が大きくなるほど現像剤の搬送量が多くなるが、一定の範囲ではギャップ長G1,G2の変化に対する現像剤搬送量の増加が小さく、現像剤の搬送量が安定している傾向が見られる。ギャップ長G1を
図8に示す下限値LL1と上限値UL1との間の範囲内の値に設定し、ギャップ長G2を
図9に示す下限値LL2と上限値UL2との間の範囲内の値に設定することで、現像剤の搬送量を安定させることができる。ギャップ長G1を、下限値LL1と上限値UL1との算術平均に設定してもよい。ギャップ長G2を、下限値LL2と上限値UL2との算術平均に設定してもよい。
【0069】
図10は、現像ローラー14の回転数に対する現像剤搬送量の変化を示すグラフである。
図10の横軸には現像ローラー14の回転数を示し、縦軸には規制部材63による規制後の現像剤の搬送量を示す。
図10には、上流規制部65を備える実施の形態1のグラフを丸印のプロットおよび実線で示し、上流規制部65を備えない本発明適用前(比較例)のグラフを三角印のプロットおよび破線で示す。
【0070】
比較例では、現像ローラー14の回転数が増加すると、現像剤の搬送量も増加している。これに対し、実施の形態1では、現像ローラー14の回転数、すなわち現像剤の搬送速度に依らず、ほぼ一定の現像剤搬送量となる。したがって、実施の形態1では、上流規制部65の作用によって現像剤の搬送量を安定させることができることがわかる。
【0071】
(その他の作用効果)
図2に示すように、規制極73は、規制部材63に対向して配置されている。実施の形態1では、
図4に示すように規制部材63の配置が特定されていることにより、キャッチ極71から規制極73までの距離が大きくなっており、キャッチ極71から規制極73へ搬送される現像剤の搬送経路が長くなっている。そのため現像ローラー14は、規制極73とキャッチ極71との間に搬送極72を有する構成とされている。
【0072】
搬送極72を設けることにより、キャッチ極71から規制極73へ現像剤を安定して搬送することができる。キャッチ極71に供給された現像剤を、搬送極72で一旦貯留することができ、現像ローラー14の軸方向における現像剤の量のむらを低減できるので、上流規制部65および規制部材63の効果を十分に発揮することが可能になる。
【0073】
図5に示すように、搬送極72からハウジング60の内壁面までの距離D2は、キャッチ極71からハウジング60の内壁面までの距離D1以上である。距離D1を比較的小さく設定することで、供給スクリュー61から現像ローラー14に供給される現像剤の供給量を安定させることができ、多量の現像剤が現像ローラー14に過剰供給されることを抑制できる。搬送極72とハウジング60との距離D2を比較的大きく設定することで、現像剤の搬送方向において上流規制部65よりも上流側に、現像剤を一時的に溜めるための空間が形成される。供給スクリュー61から現像ローラー14に多量の現像剤が供給された場合においても、上流規制部65よりも上流に現像剤を溜めることができるので、上流規制部65および規制部材63に搬送される現像剤の量の均一性をより向上させることができる。
【0074】
図1に示すように、感光体10は、図中の時計回り方向に回転可能である。
図2を参照して説明した通り、現像ローラー14まわりの現像剤の搬送方向は図中の時計回り方向であり、この現像剤の搬送は現像ローラー14の外周面14Aを図中の時計回り方向に回転させることで実現される。現像ローラー14の外周面14Aと感光体10とは同方向に回転可能であり、これにより感光体10の外周面と現像ローラー14の外周面14Aとの互いに対向する部分は互いに異なる方向に移動することになる。
図2を参照して、現像ローラー14の外周面14Aのうち感光体10に対向する部分(すなわち、現像極74に相当する部分)は図中の下向きに移動し、感光体10の外周面のうち現像ローラー14に対向する部分は図中の上向きに移動する。
【0075】
このように感光体10および現像ローラー14が構成されている場合に、現像極74に対応する位置に過剰な量の現像剤が供給されると、感光体10と現像ローラー14との間に現像剤の詰まりが発生する可能性がある。実施の形態1で説明した通り、上流規制部65および規制部材63による規制後の現像剤の搬送量を安定させることで、現像剤の詰まりの発生を抑制できる。したがって、上流規制部65を備える実施の形態の現像装置13は、現像ローラー14の外周面14Aと感光体10とが同方向に回転する画像形成装置に、好適に適用され得る。
【0076】
[実施の形態2]
図11は、実施の形態2に係る現像装置13の構成を示す部分断面図である。
図11に示す実施の形態2の現像装置13は、実施の形態1とほぼ同一の構成を備えており、上流規制部65の構成において異なっている。具体的には、実施の形態2の上流規制部65は、ハウジング60とは別部材として構成されている。上流規制部65は、ハウジング60の内壁面に取り付けられており、ハウジング60の内壁面に対して突出している。これにより、上流規制部65に対して搬送方向の上流側の、搬送極72とハウジング60の内壁面との間の空間に現像剤をより溜めやすい構成とされている。
【0077】
実施の形態2の上流規制部65は、磁性体で構成されている。上流規制部65に磁性体を用いることにより、上流規制部65と現像ローラー14との間に磁力線が生じることになる。上流規制部65に搬送される現像剤、特に磁性体であるキャリアは、磁力線に沿って保持される。上流規制部65と現像ローラー14との間に一定の磁力線が形成されることにより、上流規制部65に搬送される現像剤の搬送量の均一性をより向上できる。したがって、上流規制部65および規制部材63による規制後の現像剤の搬送量を、より安定させることができる。
【0078】
図12は、実施の形態2の、現像ローラー14の回転数に対する現像剤搬送量の変化を示すグラフである。
図12の横軸には現像ローラー14の回転数を示し、縦軸には規制部材63による規制後の現像剤の搬送量を示す。
【0079】
図12に示すように、現像ローラー14の回転数、すなわち現像剤の搬送速度に依らず、ほぼ一定の現像剤搬送量となる。したがって、上流規制部65に磁性体を用いた実施の形態2においても、上流規制部65の作用によって現像剤の搬送量を安定させることができることがわかる。
【0080】
以上のように実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
10 感光体、13 現像装置、14 現像ローラー、14A 外周面、60 ハウジング、61 供給スクリュー、62 撹拌スクリュー、63 規制部材、64 保持部、65 上流規制部、66 第一面、67 第二面、71 キャッチ極、72 搬送極、73 規制極、74 現像極、75 剥離極、80 筐体、100 画像形成装置、D1,D2 距離、G1,G2 ギャップ長、L1,L2 直線、LL1,LL2 下限値、P1,P2 交点、S 用紙、UL1,UL2 上限値。