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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】インジェクタの配置構造
(51)【国際特許分類】
   B62M 7/02 20060101AFI20220614BHJP
   B62J 40/00 20200101ALI20220614BHJP
   B62K 11/04 20060101ALI20220614BHJP
   F02M 69/00 20060101ALI20220614BHJP
   F02M 69/04 20060101ALI20220614BHJP
   F02M 51/02 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B62M7/02 F
B62J40/00
B62K11/04 B
F02M69/00 310Q
F02M69/00 350P
F02M69/04 P
F02M51/02 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018077443
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019182291
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
(72)【発明者】
【氏名】高岡 敦志
(72)【発明者】
【氏名】山口 純平
(72)【発明者】
【氏名】木▲崎▼原 直剛
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071346(JP,A)
【文献】特開2014-214675(JP,A)
【文献】特開2013-241894(JP,A)
【文献】特開2011-137428(JP,A)
【文献】特開2008-207790(JP,A)
【文献】国際公開第2018/060874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 7/02
B62J 40/00
B62J 11/00
B62K 11/04
B62J 45/40
F02M 69/00
F02M 69/04
F02M 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のエンジンの後方に配置されるエアクリーナと、
前記エンジンの後方で上下に延びるリヤサスペンションと、
前記エアクリーナに取り付けられる第1インジェクタと、を備え、
前記エアクリーナは、クリーンサイドを構成するアウトレットチューブを有し、
前記リヤサスペンションと前記アウトレットチューブとは、側面視で重なっており、
前記アウトレットチューブの内部には、吸気通路を上下に分割する隔壁が設けられ、
前記第1インジェクタは、前記隔壁に向かって燃料を噴射するように前記アウトレットチューブの下方から取り付けられ
前記アウトレットチューブは、
ダーティサイドに接続されるチャンバ部と、
前記チャンバ部の下流側に連なり、前記エンジンの吸気ポート側に接続される筒状の接続部と、を有し、
前記チャンバ部は、前記接続部に比べて拡径した形状を有し、
前記隔壁及び前記第1インジェクタは、前記チャンバ部に設けられることを特徴とするインジェクタの配置構造。
【請求項2】
前記チャンバ部内には、別体のファンネルが配置されており、
前記隔壁は、前記ファンネルに設けられることを特徴とする請求項に記載のインジェクタの配置構造。
【請求項3】
前記ファンネルは、軸方向からみて上下方向に長い長円形状で、上流から下流に向かうに従って径が小さくなるように形成され、下流端が前記接続部の上流端に接続されることを特徴とする請求項に記載のインジェクタの配置構造。
【請求項4】
前記隔壁の下流端は、前記ファンネルの下流端よりも前記接続部側に突出していることを特徴とする請求項又は請求項に記載のインジェクタの配置構造。
【請求項5】
前記隔壁は、前記ファンネルの軸方向からみて中央部分が前記第1インジェクタに対して反対側に湾曲した形状を有することを特徴とする請求項から請求項のいずれかに記載のインジェクタの配置構造。
【請求項6】
前記ファンネルと前記第1インジェクタとは、前記アウトレットチューブに共締めにより固定されることを特徴とする請求項から請求項のいずれかに記載のインジェクタの配置構造。
【請求項7】
前記ファンネルの上流側で吸気圧を検出する吸気圧センサを更に備え、
前記吸気圧センサは、前記隔壁を挟んで前記第1インジェクタの反対側の前記チャンバ部に取り付けられることを特徴とする請求項から請求項のいずれかに記載のインジェクタの配置構造。
【請求項8】
車両用のエンジンの後方に配置されるエアクリーナと、
前記エンジンの後方で上下に延びるリヤサスペンションと、
前記エアクリーナに取り付けられる第1インジェクタと、
前記エアクリーナのクリーンサイドを構成するアウトレットチューブと、
前記エンジンの吸気ポートと前記アウトレットチューブとの間に接続されるスロットルボディと、
前記スロットルボディに取り付けられる第2インジェクタと、を備え、
前記リヤサスペンションと前記アウトレットチューブとは、側面視で重なっており、
前記アウトレットチューブの内部には、吸気通路を上下に分割する隔壁が設けられ、
前記第1インジェクタは、前記隔壁に向かって燃料を噴射するように前記アウトレットチューブの下方から取り付けられ、
前記第2インジェクタは、前記スロットルボディに下方から取り付けられ、
前記第1インジェクタに対する燃料配管と前記第2インジェクタに対する燃料配管とが前記スロットルボディの上方で合流することを特徴とするインジェクタの配置構造。
【請求項9】
前記エンジンが搭載される車体フレームを更に備え、
前記車体フレームは、ヘッドパイプから後下方に延びる一対のメインフレームを有し、
前記第1インジェクタは、前記一対のメインフレームの間で側面視において前記リヤサスペンションに重なる位置に設けられることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のインジェクタの配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジェクタの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オフロードタイプの自動二輪車においては、出力向上を目的として、複数の燃料噴射弁(インジェクタ)が設けられることがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、吸気通路の途中に2つの燃料噴射弁が設けられており、1つはエアクリーナに取り付けられ、他の1つはスロットルボディに取り付けられる。
【0003】
特に、エアクリーナに燃料噴射弁を取り付ける場合、その配置には制約が伴う。例えば、特許文献1では、エアクリーナを構成するケース(支持ケース)の一部に凹部が形成されており、燃料噴射弁は、当該凹部に収容されるように取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6120315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、エアクリーナの一部を凹ませたことでエアクリーナの容量が減ってしまい、エンジン性能に影響を与えるおそれがある。また、容量を確保するためにはエアクリーナ自体を大型化せざるを得なくなる。
【0006】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、エアクリーナの容量を減らすことなく適切に燃料を噴射することができるインジェクタの配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明インジェクタの配置構造は、車両用のエンジンの後方に配置されるエアクリーナと、前記エンジンの後方で上下に延びるリヤサスペンションと、前記エアクリーナに取り付けられる第1インジェクタと、を備え、前記エアクリーナは、クリーンサイドを構成するアウトレットチューブを有し、前記リヤサスペンションと前記アウトレットチューブとは、側面視で重なっており、前記アウトレットチューブの内部には、吸気通路を上下に分割する隔壁が設けられ、前記第1インジェクタは、前記隔壁に向かって燃料を噴射するように前記アウトレットチューブの下方から取り付けられる。本発明の一態様では、前記アウトレットチューブは、ダーティサイドに接続されるチャンバ部と、前記チャンバ部の下流側に連なり、前記エンジンの吸気ポート側に接続される筒状の接続部と、を有し、前記チャンバ部は、前記接続部に比べて拡径した形状を有し、前記隔壁及び前記第1インジェクタは、前記チャンバ部に設けられる。本発明の別の態様では、前記エンジンの吸気ポートと前記アウトレットチューブとの間に接続されるスロットルボディと、前記スロットルボディに下方から取り付けられる第2インジェクタと、を更に備え、前記第1インジェクタに対する燃料配管と前記第2インジェクタに対する燃料配管とが前記スロットルボディの上方で合流する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エアクリーナの容量を減らすことなく適切に燃料を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】自動二輪車の概略構成を示す左側面図である。
図2】本実施の形態に係る自動二輪車のエンジン周辺の部分拡大図である。
図3図2の上面図である。
図4】本実施の形態に係る吸気系部品(アウトレットチューブ)の正面図及び下面図である。
図5図4に示すアウトレットチューブの断面図である。
図6】本実施の形態に係るファンネルの背面図及び下面図である。
図7図6に示すファンネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明をオフロードタイプの自動二輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明を、他のタイプの車両に適用してもよい。また、方向について、車両前方を矢印FR、車両後方を矢印RE、車両上方を矢印UP、車両下方を矢印LO、車両左方を矢印L、車両右方を矢印Rでそれぞれ示す。また、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略している。
【0011】
図1から図3を参照して、本実施の形態に係る自動二輪車の概略構成について説明する。図1は、自動二輪車の概略構成を示す左側面図である。図2は、本実施の形態に係る自動二輪車のエンジン周辺の部分拡大図である。図3は、図2の上面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態に係る自動二輪車1は、オフロードタイプの自動二輪車である。自動二輪車1は、鋼製又はアルミ合金製の車体フレーム2にエンジン3を搭載して構成される。車体フレーム2は、ヘッドパイプ20から後下方に延びるメインフレーム21及びダウンフレーム22と、メインフレーム21の途中から後上方に延びるそれぞれ左右一対のシートフレーム23及びリヤフレーム24と、を含んで構成される。
【0013】
メインフレーム21は、ヘッドパイプ20から後方に向けて左右に分岐し、車体後方に向かって斜め下方に傾斜して延在している。更にメインフレーム21は、エンジンの後方において、鉛直方向下方に向かって屈曲し、エンジン3の下方に延びている。一対のメインフレーム21の間には、燃料タンク10が配置される。
【0014】
ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ20から下方に向かって延びた後、車体下部において水平方向に屈曲して後方に延びている。ダウンフレーム22の後端は、メインフレーム21の下端に接続される。メインフレーム21とダウンフレーム22によって囲まれる空間内にエンジン3が配置される。
【0015】
シートフレーム23は、メインフレーム21の屈曲部分より前方上方から後上方に向かって延びている。リヤフレーム24は、下方に延びるメインフレーム21の途中部分(屈曲部分)から後上方に延びており、その後端がシートフレーム23の後端に接続される。燃料タンク10の後方において、シート11がシートフレーム23に沿って設けられている。シートフレーム23とメインフレーム21との連結部分近傍には、一対のメインフレーム21同士を繋ぐフレームブリッジ25が設けられている。
【0016】
エンジン3は、クランクケース30と、クランクケース30の上部に下から順に取り付けられるシリンダブロック31、シリンダヘッド32及びシリンダヘッドカバー33によって構成される。クランクケース30は、左右割のケースで構成され、車幅方向(左右方向)に中心軸を有するクランクシャフト(不図示)が内部に収容されている。また、クランクケース30の左右両側は開口されており、それぞれの開口を塞ぐようにカバーが取り付けられる。具体的にクランクケース30の左側には、マグネトカバー34が取り付けられ、クランクケース30の右側には、クラッチカバー35が取り付けられる。
【0017】
ヘッドパイプ20には、ステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク12が回転可能に支持されている。ステアリングシャフトの上端にはハンドルバー13が設けられている。フロントフォーク12の下部には、前輪14が回転可能に支持されている。前輪14には、制動装置を構成するブレーキディスク15が設けられている。
【0018】
クランクケース30の後部及びメインフレーム21の下端側は、ピボット部26が設けられており、当該ピボット部26には、スイングアーム27が上下方向に揺動可能に連結されている。ピボット部26の上方には、車体フレーム2とスイングアーム27とを連結するリヤサスペンション16が設けられている。リヤサスペンション16は、エンジン3の後方で上下に延びている。リヤサスペンション16は、後述するエアクリーナ5のダーティサイド部6の前方において、車幅方向やや右側に偏った位置に配置されている。スイングアーム27の後部には、後輪17が回転可能に支持されている。後輪17の左側には、ドリブンスプロケット18が設けられており、チェーン19によってエンジンの動力が後輪17に伝達されるよう構成されている。
【0019】
エンジン3の後方には、吸気系部品として、スロットルボディ4及びエアクリーナ5が配置されている。吸気系部品の具体的な構成は後述するが、エンジン3の背面側に位置する吸気ポートに、スロットルボディ4及びエアクリーナ5がこの順に取り付けられる。すなわち、スロットルボディ4が吸気ポートとエアクリーナ5(後述するアウトレットチューブ7)との間に接続されている。
【0020】
エアクリーナ5は、ダーティサイドを構成する側面視三角形状のダーティサイド部6と、クリーンサイドを構成するアウトレットチューブ7と、を含んで構成される。ダーティサイド部6は、シート11の下方において、一対のシートフレーム23及びリヤフレーム24によって囲まれる空間と相補形状を有し、前方、側方及び下方を覆う隔壁60によって箱型の空間を形成する。ダーティサイド部6内には、エアフィルタ61が収容されている。アウトレットチューブ7は、上流端がダーティサイド部6の前面に接続されており、下流端がスロットルボディ4に接続されている。詳細は後述するが、アウトレットチューブ7には、燃料噴射装置として第1インジェクタ70が取り付けられている。
【0021】
スロットルボディ4は、内部に弁体(不図示)が設けられており、弁体の開度に応じて吸入空気の流量を調整する。スロットルボディ4は、側面に弁体の開度を検出するスロットルセンサ40を備えている。スロットルボディ4には、他の燃料噴射装置として第2インジェクタ41が取り付けられている。具体的に第2インジェクタ41は、スロットルボディ4に下方から取り付けられ、軸方向が鉛直方向に向けられている。
【0022】
また、シリンダヘッドカバー33の上方において、一対のメインフレーム21の間には、燃料ポンプ8が配置される。燃料ポンプ8は、燃料タンク10からの燃料を各インジェクタ(第1インジェクタ70及び第2インジェクタ41)に供給する。図2に示すように、燃料ポンプ8には、燃料配管80の一端側が接続されており、当該燃料配管80の他端側は、途中で2つに分岐して各インジェクタに接続される。
【0023】
具体的に燃料配管80は、燃料ポンプ8の下端から後方に延びる第1燃料配管81と、第1燃料配管81の下流端に取り付けられる三方継手82(T字継手と呼ばれてもよい)と、当該三方継手82に上流端が接続される第2燃料配管83及び第3燃料配管84と、によって構成される。第2燃料配管83の下流端は第1インジェクタ70に接続され、第3燃料配管84の下流端は第2インジェクタ41に接続される。三方継手82は、スロットルボディ4の真上に位置している。すなわち、第1インジェクタ70に対する第2燃料配管83と第2インジェクタ41に対する第3燃料配管84とがスロットルボディ4の上方で合流している。
【0024】
エンジン3には、エアクリーナ5及びスロットルボディ4を通じて空気が取り込まれる。エンジン3内では、空気と燃料とが混合された混合気が燃焼室に供給される。燃焼室で混合気が燃焼された後の燃焼ガスは、エキゾーストパイプ(不図示)を経てマフラから排出される。
【0025】
ところで、オフロードタイプの自動二輪車においては、出力向上を目的として、インジェクタが複数設けられることがある。例えば、上記したように吸気通路の途中に2つのインジェクタが設けられており、1つはエアクリーナに取り付けられ、他の1つはスロットルボディに取り付けられる。
【0026】
特に、エアクリーナにインジェクタを取り付ける場合、その配置には制約が伴う。例えば、インジェクタを取り付けるための座を確保すべくエアクリーナの一部に凹部を設けることが考えられる。しかしながら、エアクリーナの一部を凹ませたことでエアクリーナの容量が減ってしまい、エンジン性能に影響を与えるおそれがある。また、容量を確保するためにはエアクリーナ自体を大型化せざるを得なくなる。また、上記の自動二輪車1の場合、アウトレットチューブ7の上方にフレームブリッジ25が存在することで、インジェクタをアウトレットチューブ7の上方から取り付けることが困難である。
【0027】
そこで、本件発明者等は、エアクリーナ5の周辺構成との兼ね合いやエアクリーナ5(アウトレットチューブ7)の内部構造に着目し、エアクリーナの容量を減らすことなく適切に燃料を噴射することができるインジェクタの配置構造に想到した。
【0028】
具体的に本実施の形態では、アウトレットチューブ7とリヤサスペンション16とを側面視で重なるように配置し、リヤサスペンション16の側方において、第1インジェクタ70をアウトレットチューブ7の下方から取り付ける構成とした。また、詳細は後述するが、アウトレットチューブ7の内部(チャンバ部71)に吸気通路を上下に分割する隔壁91(図5参照)を設け、第1インジェクタ70は、当該隔壁91に向かって燃料を噴射するように先端を隔壁91に向けて配置されている。
【0029】
エアクリーナ5(アウトレットチューブ7)の上方には、フレームブリッジ25やシート11、リヤサスペンション16の上端側の支持部等の構成が集中しており、エアクリーナ5の上方からインジェクタを取り付けるとなれば、エアクリーナ5の容量を削る必要がある。本実施の形態によれば、アウトレットチューブ7の下方にスペースが確保されているため、エアクリーナ5の容量を犠牲にすることなく第1インジェクタ70をアウトレットチューブ7に取り付けることが可能である。また、第1インジェクタ70の先端がアウトレットチューブ7内の隔壁91に向けられているため、燃料を隔壁91に狙って噴射することが可能である。燃料が隔壁に当たると、燃料の霧化が促進されるため、吸気通路内で空気と燃料が混ざり易くなり、混合気を適切にエンジン3内に送り込むことが可能となる。
【0030】
次に、図2から図7を参照して、本実施の形態に係るインジェクタの配置構造、及びアウトレットチューブの内部構造について説明する。図4は、本実施の形態に係る吸気系部品(アウトレットチューブ)の正面図(図4A)及び下面図(図4B)である。図5は、図4に示すアウトレットチューブの断面図である。具体的に図5は、図4AのA-A線に沿う断面図である。図6は、本実施の形態に係るファンネルの背面図(図6A)及び下面図(図6B)である。図7は、図6に示すファンネルの断面図である。具体的に図7A図6AのB-B線に沿う断面図であり、図7B図6BのC-C線に沿う断面図である。
【0031】
図2及び図3に示すように、スロットルボディ4及びアウトレットチューブ7は、一対のメインフレーム21の間に挟まれるように配置されている。すなわち、吸気ポートに接続される吸気系部品は、一対のメインフレーム21の左右幅内に収められている。アウトレットチューブ7は、上記したようにエアクリーナ5のクリーンサイドを構成し、上流から下流に向かうに従って、すなわち、後方から前方に向かうに従って吸気通路の径が小さくなるように形成される。
【0032】
具体的にアウトレットチューブ7は、図3から図5に示すように、ダーティサイド部6の前面に接続されるチャンバ部71と、チャンバ部71の下流側に連なって形成され、吸気ポート側であるスロットルボディ4に接続される筒状の接続部72と、を有する。
【0033】
チャンバ部71は、正面視において、ダーティサイド部6の左右幅とほぼ同じ径の円形状を有している。チャンバ部71は、ダーティサイド部6の前面から筒状に突出し、徐々に縮径しながら右前方のリヤサスペンションを避けるように車幅方向左側に湾曲して延びている。チャンバ部71の下流端である先端には、筒状の接続部72が連なっている。このように、チャンバ部71は、接続部72に比べて拡径した形状を有する。
【0034】
チャンバ部71内には、吸入空気の流れをガイドするファンネル9が設けられている。ファンネル9は、アウトレットチューブ7とは別体に形成される。具体的にファンネル9は、図5から図7に示すように、前後方向に中心軸を有する筒状部90と、筒状部90の中央で吸気通路を上下に分割する隔壁91と、を有する。筒状部90は、上流から下流に向かうに従って径が小さくなるように形成される。すなわち、筒状部90は、上流端側が拡径したベルマウス形状を有する。筒状部90の下流端は、接続部72の上流端に接続される。また、筒状部90は、軸方向からみて上下方向に長い長円形状を有する(図6参照)。
【0035】
隔壁91は、筒状部90内の空間を上下に仕切るように左右に延びる板状体で構成される。隔壁91は、先端である下流端が筒状部90の先端(下流端)よりも接続部72側に突出しており、接続部72内の空間に入り込んでいる。一方、隔壁91の後端である上流端は、筒状部90の後端(上流端)とほぼ同じ位置、又はそれより僅かに内側に位置している(図5及び図7A参照)。また、隔壁91は、右端側に対して左端側が上側に位置するように、水平方向に対して僅かに傾斜している(図6A及び図7B参照)。更に隔壁91は、中央部分が上側(第1インジェクタ70に対して反対側)に僅かに膨らむようにして湾曲した形状を有している。
【0036】
筒状部90の下端部分には、筒状部90をチャンバ部71に固定するための取付部92が形成されている。取付部92は、筒状部90の外面から下方に突出しており、隔壁91の表面と略平行な取付座面93を有する。取付部92には、下面(座面)側から隔壁91の中心に向かって貫通する貫通穴94が形成されている。詳細は後述するが、貫通穴94には、第1インジェクタ70の先端が挿通される。また、貫通穴94の周囲には、固定用のネジ(不図示)を取り付けるためのネジ穴95が3つ形成されている。
【0037】
縮径したチャンバ部71の先端(下流端)側における下面には、取付部92に対応した平坦部73が形成されている。平坦部73には、貫通穴94及びネジ穴95に対応した穴(不図示)が形成されている。また、平坦部73の下面には、板状のフランジ部74が設けられる。フランジ部74には、平坦部73の穴に対応してネジ又は第1インジェクタ70を挿通するための穴(不図示)が形成されている。
【0038】
ファンネル9は、取付部92と平坦部73とを位置合わせし、平坦部73を取付部92及びフランジ部74で挟持した状態でフランジ部74の下方からネジ止めすることによりアウトレットチューブ7に固定される。また、第1インジェクタ70は、フランジ部74の下方からチャンバ部71及びフランジ部74にねじ込むことでアウトレットチューブ7に固定される。第1インジェクタ70の軸方向は鉛直方向に向けられている。このとき、第1インジェクタ70の先端が貫通穴94に挿通された状態であり、当該第1インジェクタ70の先端は、隔壁91の中央の湾曲部分に向けられる。このように、ファンネル9と第1インジェクタ70とは、アウトレットチューブ7に共締めにより固定される。
【0039】
また、チャンバ部71の上端には、吸入空気の吸気圧を検出する吸気圧センサ75が取り付けられる。具体的に吸気圧センサ75は、チャンバ部71の上方から取り付けられ、軸方向が鉛直方向に向けられている。また、吸気圧センサ75の先端である検出部76がチャンバ部71内に入り込んでいる。図5に示すように、検出部76の先端は、筒状部90の下流端より後方において、拡径した筒状部90の外縁より径方向内側に位置している。これにより、ファンネル9の上流側(後方)で、ファンネル9に向かって流れる吸入空気の吸気圧を検出することが可能となる。また、検出部76の先端は、隔壁91を挟んで第1インジェクタ70の反対側に位置している。
【0040】
このように構成されるエアクリーナ5において、第1インジェクタ70から燃料が噴射されると、図5及び図7Bに示すように、燃料は隔壁91に衝突する。特に図7Bに示すように、隔壁91の中央部分が上側に所定の曲率半径で膨らむように湾曲した形状を有することで、隔壁91の表面に当たった燃料が湾曲した隔壁91に保持(滞留)され易くなる。吸気通路の中央は吸気の流れが速いため、吸気通路の中央で拡散した燃料の霧化が促進される。この結果、吸気と燃料とが混ざり易くなっている。
【0041】
また、図5に示すように、隔壁91が筒状部90に対して軸方向に長く延びているため、隔壁91に燃料を当てるような第1インジェクタ70の軸方向の取付位置に自由度を向上することが可能である。
【0042】
また、接続部72よりも拡径したチャンバ部71に隔壁91及び第1インジェクタ70を設けている。比較的径の大きいチャンバ部71の方が、第1インジェクタ70の取付位置に自由度が得られ、エアクリーナ5の容積を確保し易い。また、吸気ポートよりも上流側(後方)に第1インジェクタ70を配置することができ、吸気ポートまでの距離を確保することが可能である。これにより、隔壁91に噴射された燃料の霧化に要する時間を十分に確保することが可能である。
【0043】
また、アウトレットチューブ7とは別体のファンネル9をチャンバ部71内に配置し、隔壁91をファンネル9に設けたことで、チャンバ部71内におけるファンネル9の取付位置(隔壁91の位置)に自由度を確保することが可能である。また、ファンネル9に隔壁91を形成することで、隔壁91自体の強度(剛性)を高めることも可能である。
【0044】
また、ファンネル9(筒状部90)が縦長の長円形状を有し、吸気上流から下流に向かうに従って径が小さくなるため、リヤサスペンション16に干渉することなく、リヤサスペンション16を避けることが可能である。このため、吸気通路を前後に直線的に延ばすことができ、吸気抵抗を減らすことが可能である。
【0045】
また、隔壁91の先端(下流端)が筒状部90の先端(下流端)よりも前方に延びているため、隔壁91に付着した燃料を比較的長い間、吸気通路の中央に留めておくことが可能である。この結果、燃料と空気とを混ざり易くすることができる。また、エンジン3からの吹き返しがチャンバ部71内で拡がるのを隔壁91で抑制することが可能である。
【0046】
また、ファンネル9が第1インジェクタ70と共締めされてアウトレットチューブに固定されることで、ファンネル9及び第1インジェクタ70の位置ずれを抑制することが可能である。この結果、より正確に燃料を隔壁に向かって噴射することが可能である。
【0047】
また、吸気圧センサ75の先端(検出部76)が隔壁91を挟んで第1インジェクタ70の反対側に位置することで、第1インジェクタ70から噴射された燃料が直に吸気圧センサ75に当たることを防止することが可能である。この結果、吸気圧センサ75の検出精度に影響を与えることなく、適切に吸気圧を検出することが可能である。
【0048】
また、第1インジェクタ70が一対のメインフレーム21の内側で側面視においてリヤサスペンション16と重なる位置に設けられることで、第1インジェクタ70を外的要因から保護することが可能である。また、リヤサスペンション16の側方は比較的スペースがあるため、メンテナンス性も確保することが可能である。
【0049】
また、本実施の形態では、2つのインジェクタ(第1インジェクタ70及び第2インジェクタ41)を採用したことにより、燃料噴射量をより細かく制御することが可能である。また、燃料配管80の一部構成する三方継手82をスロットルボディ4の上方に配置し、第2燃料配管83と第3燃料配管84をスロットルセンサ40の後方に取り回したことで、燃料配管80が他部品と干渉することを防止し、燃料配管80自体を単純化することが可能である。また、第2燃料配管83及び第3燃料配管84の長さを揃えることができ、各インジェクタの燃圧も揃えることが可能である。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態では、アウトレットチューブ7とリヤサスペンション16とを側面視で重なるように配置し、リヤサスペンション16の側方において、第1インジェクタ70をアウトレットチューブ7の下方から取り付ける構成としたことで、エアクリーナ5の容量を犠牲にすることなく、第1インジェクタ70を配置することが可能である。また、アウトレットチューブ7内に隔壁91を設け、隔壁91に向かって燃料を噴射するように第1インジェクタ70を配置したことで、適切に燃料を噴射することが可能である。
【0051】
なお、上記の実施形態では、オフロードタイプの自動二輪車1を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。本実施の形態に係るインジェクタの配置構造は、他のタイプの自動二輪車にも適用可能である。
【0052】
また、上記の実施形態では、2つのインジェクタを設ける構成としたが、この構成に限定されない。例えば、第2インジェクタ41は、必ずしも設けられなくてよい。なお、上記したインジェクタにおいて、第1、第2と番号を付しているが、この番号は説明の便宜上付したものであり、その優先度や順番を表すものではない。
【0053】
また、複数の実施形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0054】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明は、エアクリーナの容量を減らすことなく適切に燃料を噴射することができるという効果を有し、特に、オフロードタイプの自動二輪車に適用可能なインジェクタの配置構造に有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 :自動二輪車
2 :車体フレーム
3 :エンジン
4 :スロットルボディ
5 :エアクリーナ
6 :ダーティサイド部(ダーティサイド)
7 :アウトレットチューブ
8 :燃料ポンプ
9 :ファンネル
10 :燃料タンク
16 :リヤサスペンション
17 :後輪
20 :ヘッドパイプ
21 :メインフレーム
40 :スロットルセンサ
41 :第2インジェクタ
70 :第1インジェクタ
71 :チャンバ部
72 :接続部
73 :平坦部
74 :フランジ部
75 :吸気圧センサ
76 :検出部
80 :燃料配管
81 :第1燃料配管
82 :三方継手
83 :第2燃料配管
84 :第3燃料配管
90 :筒状部
91 :隔壁
92 :取付部
93 :取付座面
94 :貫通穴
95 :ネジ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7