IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自動変速機 図1
  • 特許-自動変速機 図2
  • 特許-自動変速機 図3
  • 特許-自動変速機 図4
  • 特許-自動変速機 図5
  • 特許-自動変速機 図6
  • 特許-自動変速機 図7
  • 特許-自動変速機 図8
  • 特許-自動変速機 図9
  • 特許-自動変速機 図10
  • 特許-自動変速機 図11
  • 特許-自動変速機 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/028 20120101AFI20220614BHJP
   F16H 57/03 20120101ALI20220614BHJP
   F16H 57/021 20120101ALI20220614BHJP
   F16H 61/28 20060101ALI20220614BHJP
   F16H 63/20 20060101ALI20220614BHJP
   B60K 23/02 20060101ALI20220614BHJP
   B60K 17/02 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
F16H57/028
F16H57/03
F16H57/021
F16H61/28
F16H63/20
B60K23/02 P
B60K23/02 Z
B60K17/02 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018079791
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019190477
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】更科 俊平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岩井 夏樹
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-37257(JP,A)
【文献】特開昭47-40719(JP,A)
【文献】実開平2-4050(JP,U)
【文献】登録実用新案第3158452(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0017311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/028
F16H 57/03
F16H 57/021
F16H 61/28
F16H 63/20
B60K 23/02
B60K 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦クラッチと、
前記摩擦クラッチから動力が伝達される入力軸と、変速用のシフトアンドセレクト軸とを有する変速機と、
前記摩擦クラッチおよび前記変速機を外周側から囲む周壁と、該周壁の内部を前記摩擦クラッチが収納されるクラッチ室と前記変速機が収納される変速機室とに区画する隔壁と、を有する変速機ケースと、
前記周壁の外面に固定されるベースプレートを有し、前記摩擦クラッチを操作するクラッチアクチュエータと、前記シフトアンドセレクト軸を操作するシフトアクチュエータとが、前記ベースプレートに取り付けられたシフトユニットと、を有する自動変速機であって、
前記シフトアンドセレクト軸及び前記ベースプレートは、前記入力軸に沿う方向で前記隔壁と隣接する位置に配置され、
前記ベースプレートは、前記入力軸に沿う方向で前記隔壁を跨ぐように配置され、かつ、前記周壁における前記クラッチ室の外面と前記変速機室の外面とに複数の固定部において締結により固定され
複数の前記固定部は、前記入力軸に沿う方向で前記隔壁の両側に配置され、
前記隔壁および前記シフトアンドセレクト軸は、前記入力軸に沿う方向で前記ベースプレートの複数の前記固定部の間に配置されていることを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
前記隔壁には、前記入力軸が通過する筒状部が前記クラッチ室側に突出して形成されており、
前記入力軸に沿う方向で前記ベースプレートが配置される領域において、前記周壁の内面と前記隔壁と前記筒状部とがリブによって連結されていることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項3】
前記入力軸の軸線上にトルクコンバータが配置され、
前記トルクコンバータの出力側に前記摩擦クラッチが連結され、
前記変速機ケースは、前記トルクコンバータに供給するオイルを貯留するオイル貯留室を有し、
前記オイル貯留室は、前記周壁のうち前記クラッチ室を形成しかつ前記ベースプレートが固定される領域の下方に配置されるオイルパンと、前記周壁の下面から前記オイルパンの周縁部に向かって下方に延びる縦壁部と、前記縦壁部の下端に形成され前記オイルパンに接合されるフランジ部と、から構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動変速機。
【請求項4】
前記変速機ケースを下方から見て、前記縦壁部が環状または矩形に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載される自動変速機にあっては、入力軸等を回転自在に支持する変速機ケースと、変速機ケース内に設けられたクラッチ、クラッチレバーおよびシフトアンドセレクト軸と、クラッチレバーおよびシフトアンドセレクト軸を操作するシフトユニットと、を備えた自動変速機が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の自動変速機において、シフトユニットは、変速アクチュエータおよびクラッチアクチュエータを有する筐体等が取り付けられるベースプレートを有し、ベースプレートが変速機ケースの外壁に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-37257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、変速機ケースの外壁には、シフトユニットのベースプレートを固定するための強度が要求される。また、変速機ケースにおけるベースプレートが固定される固定部位の内部が広い空洞であった場合、ベースプレートから固定部位に作用する荷重によって変速機ケースが振動したり、変速機ケース内で発生する振動または騒音が増加する可能性がある。
【0005】
特許文献1に記載の自動変速機にあっては、変速機ケースの振動や騒音の発生を抑制することに関して、さらに検討の余地があった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、シフトユニットが変速機ケースの外壁に取り付けられた自動変速機において、変速機ケースで発生する振動や騒音を低減することができる自動変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、摩擦クラッチと、前記摩擦クラッチから動力が伝達される入力軸と、変速用のシフトアンドセレクト軸とを有する変速機と、前記摩擦クラッチおよび前記変速機を外周側から囲む周壁と、該周壁の内部を前記摩擦クラッチが収納されるクラッチ室と前記変速機が収納される変速機室とに区画する隔壁と、を有する変速機ケースと、前記周壁の外面に固定されるベースプレートを有し、前記摩擦クラッチを操作するクラッチアクチュエータと、前記シフトアンドセレクト軸を操作するシフトアクチュエータとが、前記ベースプレートに取り付けられたシフトユニットと、を有する自動変速機であって、前記シフトアンドセレクト軸及び前記ベースプレートは、前記入力軸に沿う方向で前記隔壁と隣接する位置に配置され、前記ベースプレートは、前記入力軸に沿う方向で前記隔壁を跨ぐように配置され、かつ、前記周壁における前記クラッチ室の外面と前記変速機室の外面とに複数の固定部において締結により固定され、複数の前記固定部は、前記入力軸に沿う方向で前記隔壁の両側に配置され、前記隔壁および前記シフトアンドセレクト軸は、前記入力軸に沿う方向で前記ベースプレートの複数の前記固定部の間に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、シフトユニットが変速機ケースの外壁に取り付けられた自動変速機において、変速機ケースで発生する振動や騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る自動変速機の平面図である。
図2図2は、図1のII-II方向矢視断面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る自動変速機を車両右方側から見た右側面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る自動変速機の、シフトユニットが取り付けられた状態のフロントケースの右側面を示す拡大側面図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る自動変速機のフロントケースを前方から見た正面図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る自動変速機のフロントケースを後方から見た背面図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る自動変速機の、シフトユニットのベースプレートのみが取り付けられた状態のフロントケースの右側面を示す拡大側面図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る自動変速機の、シフトユニットが取り付けられていない状態のフロントケースの右側面を示す拡大側面図である。
図9図9は、図5のIX-IX方向矢視断面図である。
図10図10は、図5のX-X方向矢視断面図である。
図11図11は、図5のXI-XI方向矢視断面図である。
図12図12は、本発明の一実施例に係る自動変速機のフロントケースを、オイルパンを外した状態で下方から見た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る自動変速機は、摩擦クラッチと、摩擦クラッチから動力が伝達される入力軸と、変速用のシフトアンドセレクト軸とを有する変速機と、摩擦クラッチおよび変速機を外周側から囲む周壁と、該周壁の内部を摩擦クラッチが収納されるクラッチ室と変速機が収納される変速機室とに区画する隔壁と、を有する変速機ケースと、周壁の外面に固定されるベースプレートを有し、摩擦クラッチを操作するクラッチアクチュエータと、シフトアンドセレクト軸を操作するシフトアクチュエータとが、ベースプレートに取り付けられたシフトユニットと、を有する自動変速機であって、シフトアンドセレクト軸及びベースプレートは、入力軸に沿う方向で隔壁と隣接する位置に配置され、ベースプレートは、周壁におけるクラッチ室の外面と変速機室の外面とに固定されることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る自動変速機は、変速機ケースで発生する振動や騒音を低減することができる。
【実施例
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る自動変速機について、図面を用いて説明する。図1から図12は、本発明に係る一実施例の自動変速機を示す図である。図1から図12において、上下前後左右方向は、車両の進行する方向を前、後退する方向を後とした場合に、車両の幅方向が左右方向、車両の高さ方向が上下方向である。また、車両の幅方向を車幅方向ともいう。
【0012】
まず、構成を説明する。図1図3において、車両1には自動変速機2が搭載されており、自動変速機2は、駆動力源および内燃機関としてのエンジン3に固定された状態で車両1のフロアパネル1Aの下方に縦置きに設置されている。すなわち、本実施例の車両1は、後輪駆動車両である。
【0013】
自動変速機2は変速機ケース4を備えており、変速機ケース4は、トルクコンバータハウジング(以下、単にトルコンハウジングという)5と、フロントケース6と、リヤケース7と、エクステンションケース8とを備えている。変速機ケース4の前端部は、図示しないボルトによってエンジン3に接続されている。変速機ケース4のうち、トルコンハウジング5を除くフロントケース6、リヤケース7及びエクステンションケース8は、変速機ケース本体40を構成する。すなわち、変速機ケース4は、トルコンハウジング5と変速機ケース本体40とからなる。
【0014】
自動変速機2はシフトユニット100を備えており、このシフトユニット100は、自動変速機2のシフト操作およびクラッチ操作を行うように駆動する。ここで、シフト操作とは、自動変速機2の変速段を切り替える操作をいい、クラッチ操作とは、自動変速機2の摩擦クラッチ17(図2参照)を係合(接続)または開放(切断)する操作をいう。
【0015】
図2において、トルコンハウジング5にはトルクコンバータ10が収容されている。トルクコンバータ10は、エンジン3の図示しないクランク軸に連結されるフロントカバー10Aと、フロントカバー10Aに連結されたシェル10Bとを備えており、エンジン3から自動変速機2にオイルを介して動力を伝達している。
【0016】
シェル10Bの内面には、図示しないポンプインペラが固定されている。シェル10Bの内部には、図示しないタービンランナがポンプインペラに対向して設置されており、タービンランナは、タービン軸11に連結されている。ポンプインペラとタービンランナとの間には図示しないステータが設置されている。
【0017】
エンジン3のクランク軸が回転すると、トルクコンバータ10において、フロントカバー10A、シェル10Bおよびポンプインペラが一体で回転する。このとき、ポンプインペラの回転による遠心力によって、トルクコンバータ10の内部の流体に、ポンプインペラからタービンランナに向かう流れが生じる。ステータは、タービンランナからの流体の流れをポンプインペラの回転方向に沿うように変換する。トルクコンバータ10は、エンジン3から受け取った動力をトルク増幅作用により増幅されてタービン軸11から出力する。
【0018】
シェル10Bの外周部にはリングギヤ10Cが設けられている。リングギヤ110Cは、エンジン3の始動時に図示しないスタータのピニオンが噛み合うことにより、スタータの回転をエンジン3に伝達する。
【0019】
トルコンハウジング5は、トルクコンバータ10を外周側から囲む周壁51と、この周壁51の内部に設けられ、トルクコンバータ10と摩擦クラッチ17の間でタービン軸11を支持する隔壁55とを有している。
【0020】
隔壁55は、トルコンハウジング5の内部のトルコン室81とフロントケース6の内部のクラッチ室82とを区画している。タービン軸11は、隔壁55に形成された軸受部において軸受38Aを介して回転自在に支持されている。
【0021】
トルコンハウジング5にはオイルポンプ12が収容されており、オイルポンプ12は、例えば、トロコイド式のオイルポンプから構成されている。オイルポンプ12はポンプハウジング12Aを備えており、ポンプハウジング12Aは、図示しないボルトによって隔壁55に固定された第2ポンプハウジング14と、図示しないボルトによって第2ポンプハウジング14に締結された第1ポンプハウジング13とからなる。第1ポンプハウジング13および第2ポンプハウジング14はオイルポンプ12の筐体を構成している。第1ポンプハウジング13と第2ポンプハウジング14との内部にはポンプ室15が形成されており、ポンプ室15には図示しないインナロータおよびアウタロータが設けられている。インナロータは、インペラハブを介してシェル10Bに取付けられており、シェル10Bと一体で回転する。
【0022】
アウタロータは、インナロータの半径方向外方に設けられており、インナロータの回転に伴って回転する。トロコイド式のオイルポンプ12は、アウタロータに形成された内歯とインナロータに形成された外歯とが接触することにより、外歯と内歯との間にオイルを収容する図示しない作動室が形成されている。
【0023】
エンジン3の動力がフロントカバー10Aを介してインナロータに伝達されると、オイルポンプ12において、インナロータとアウタロータとが一方向に回転する。このとき、作動室の容積増加および容積減少が連続して発生することにより、オイルが作動室に吸入され、作動室からオイルが吐出される。
【0024】
タービン軸11の後端部には円盤状のフランジ部11Aが形成されており、フランジ部11Aは、タービン軸11の前端部や中央部よりも大径に形成されている。フランジ部11Aには環状のフライホイール16が取付けられている。フライホイール16は、フロントケース6に収容されている。
【0025】
フロントケース6には摩擦クラッチ17および変速機20が収容されており、摩擦クラッチ17は、フライホイール16に軸方向に対向している。
【0026】
フロントケース6は、摩擦クラッチ17および変速機20を外周側から囲む周壁61と、この周壁61の内部を摩擦クラッチ17が収納されるクラッチ室82と変速機20が収納される変速機室83とに区画する隔壁65と、を有する。
【0027】
リヤケース7は、変速機20を外周側から囲む周壁71と、変速機20の回転軸を支持する隔壁75と、を有する。隔壁75はリヤケース7の後端部に形成されており、周壁71の内部空間を封止している。
【0028】
摩擦クラッチ17は、入力軸21の軸方向の前端部21aの近傍に取付けられている。入力軸21は、フロントケース6およびリヤケース7に収容されており、軸方向の前端部21aにおいて軸受38Bを介してフランジ部11Aに回転自在に支持され、軸方向の後端部21bにおいて出力軸22に回転自在に支持されている。入力軸21の軸線上にトルクコンバータ10が配置され、トルクコンバータ10の出力側に摩擦クラッチ17が連結されている。
【0029】
出力軸22は、入力軸21の軸方向において入力軸21に対向している。出力軸22は、リヤケース7の後端部の隔壁75およびエクステンションケース8において軸受38D、38Eをそれぞれ介して回転自在に支持されている。出力軸22は入力軸21に対して相対回転する。
【0030】
摩擦クラッチ17は、入力軸21に一体回転自在、かつ入力軸21の軸方向に移動自在に設けられたクラッチディスク17Aと、クラッチディスク17Aをフライホイール16に押し付けるプレッシャプレート17Bと、プレッシャプレート17Bをフライホイール16側に付勢するダイヤフラムスプリング17Cとを備えている。
【0031】
フロントケース6の隔壁65には、入力軸21が通過する筒状部66が形成されており、筒状部66は、隔壁65の半径方向の内端から入力軸21の軸方向に沿って摩擦クラッチ17側に延びている。すなわち、筒状部66は隔壁65からクラッチ室82側に突出して形成されている。入力軸21は、筒状部66の内周に軸受38Cを介して支持されている。
【0032】
筒状部66の外周部にはレリーズベアリング18が設けられており、レリーズベアリング18は、入力軸21の軸方向に移動してダイヤフラムスプリング17Cの半径方向内方に接触および離隔する。
【0033】
レリーズベアリング18は、レリーズレバー19によって入力軸21の軸方向で前方に移動されると、ダイヤフラムスプリング17Cの径方向の内端部を前方に向かって押圧する。これにより、プレッシャプレート17Bの付勢が解除され、クラッチディスク17Aがフライホイール16から離隔される。この結果、エンジン3のクランク軸の回転が入力軸21に伝達されなくなる。
【0034】
レリーズベアリング18は、レリーズレバー19によって入力軸21の軸方向に対して後方に移動されると、ダイヤフラムスプリング17Cの系方向の内端部から離れる。このとき、ダイヤフラムスプリング17Cがプレッシャプレート17Bを付勢してクラッチディスク17Aをフライホイール16に押し付けることにより、エンジン3のクランク軸の回転を入力軸21に伝達する。このように摩擦クラッチ17は、エンジン3のクランク軸と入力軸21との間で動力伝達状態を伝達状態または遮断状態に切り替える。レリーズレバー19は、前述のシフトユニット100に連結されており、シフトユニット100によって操作される。
【0035】
フロントケース6およびリヤケース7にはカウンタ軸23が収容されており、カウンタ軸23は、隔壁65、75に回転自在に支持されている。カウンタ軸23は、入力軸21および出力軸22に対して平行に延びている。
【0036】
入力軸21には、摩擦クラッチ17側から出力軸22に向かって4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dおよびリバース入力ギヤ24Eが設置されている。
【0037】
4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dおよびリバース入力ギヤ24Eは、入力軸21に相対回転自在に連結されている。
【0038】
出力軸22の前端部には5速クラッチギヤ22Aが設けられており、5速クラッチギヤ22Aは、出力軸22の外周部に形成されたドグから構成される。
【0039】
カウンタ軸23には、摩擦クラッチ17側から出力軸22に向かって4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dおよびカウンタドライブギヤ26Eが設けられている。
【0040】
4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dおよびカウンタドライブギヤ26Eは、カウンタ軸23に固定されている。
【0041】
4速カウンタギヤ26A、3速カウンタギヤ26B、2速カウンタギヤ26C、1速カウンタギヤ26Dは、それぞれ同一の変速段を構成する4速入力ギヤ24A、3速入力ギヤ24B、2速入力ギヤ24C、1速入力ギヤ24Dに噛み合っている。
【0042】
カウンタドライブギヤ26Eは、カウンタドリブンギヤ27に噛み合っており、カウンタドリブンギヤ27は、出力軸22と一体で回転するように出力軸22に固定されている。
【0043】
フロントケース6およびリヤケース7には3速-4速用の同期装置28、1速-2速用の同期装置29およびリバース-5速用の同期装置30が収容されている。
【0044】
3速-4速用の同期装置28は、入力軸21と一体で回転可能で、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられている。3速-4速用の同期装置28は、シフトアンドセレクト軸33が操作されたときに、いずれも図示しない3速-4速用のシフト軸、シフトヨークおよびシフトフォークを介して入力軸21の軸方向に移動される。
【0045】
1速-2速用の同期装置29は、入力軸21と一体で回転可能で、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられている。1速-2速用の同期装置29は、シフトアンドセレクト軸33が操作されたときに、いずれも図示しない1速-2速用のシフト軸、シフトヨークおよびシフトフォークを介して入力軸21の軸方向に移動される。
【0046】
リバース-5速用の同期装置30は、入力軸21と一体で回転可能で、かつ、入力軸21の軸方向に移動自在に設けられている。リバース-5速用の同期装置30は、シフトアンドセレクト軸33が操作されたときに、いずれも図示しないリバース-5速用のシフト軸、シフトヨークおよびシフトフォークを介して入力軸21の軸方向に移動される。
【0047】
3速-4速用の同期装置28は、中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動することにより、4速入力ギヤ24Aを入力軸21に連結して前進4速段を成立させ、入力軸21の動力を4速入力ギヤ24Aおよび4速カウンタギヤ26Aを介してカウンタ軸23に伝達する。
【0048】
カウンタ軸23に伝達される動力は、カウンタドライブギヤ26Eからカウンタドリブンギヤ27を介して出力軸22に伝達される。出力軸22には図示しないプロペラ軸を介していずれも図示しないディファレンシャル装置、ドライブ軸および駆動後輪が連結されている。
【0049】
これにより、出力軸22に伝達された動力は、プロペラ軸を介してディファレンシャル装置に伝達された後、ディファレンシャル装置によって左右のドライブ軸に分配され、ドライブ軸から駆動後輪に伝達される。この結果、車両1が走行される。
【0050】
3速-4速用の同期装置28は、中立位置から入力軸21の軸方向の後側に移動することにより、3速入力ギヤ24Bを入力軸21に連結して前進3速段を成立させ、入力軸21の動力を3速入力ギヤ24Bおよび3速カウンタギヤ26Bを介してカウンタ軸23に伝達する。
【0051】
1速-2速用の同期装置29は、中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動することにより、2速入力ギヤ24Cを入力軸21に連結して前進2速段を成立させ、入力軸21の動力を2速入力ギヤ24Cおよび2速カウンタギヤ26Cを介してカウンタ軸23に伝達する。
【0052】
1速-2速用の同期装置29は、中立位置から入力軸21の軸方向の後側に移動することにより、1速入力ギヤ24Dを入力軸21に連結して前進1速段を成立させ、入力軸21の動力を1速入力ギヤ24Dおよび1速カウンタギヤ26Dを介してカウンタ軸23に伝達する。
【0053】
リバース-5速用の同期装置30は、中立位置から入力軸21の軸方向の前側に移動することにより、リバース入力ギヤ24Eを入力軸21に連結して後進段を成立させ、入力軸21の動力をリバース入力ギヤ24Eからいずれも図示しないリバースアイドラギヤおよびリバース出力ギヤと、1速カウンタギヤ26Dとを介してカウンタ軸23に伝達する。このとき、カウンタ軸23は、前進時の回転方向と逆方向に回転するので、車両1が後進される。
【0054】
リバース-5速用の同期装置30は、中立位置から入力軸21の軸方向の後側に移動することにより、5速クラッチギヤ22Aを入力軸21に連結して前進5速段を成立させ、入力軸21の動力を出力軸22に直接伝達する。
【0055】
フロントケース6の上部にはシフトケース9が設けられており、シフトアンドセレクト軸33は、シフトケース9の内部に設けられている。シフトアンドセレクト軸33は、入力軸21の延びる方向と直交する車幅方向に延びている。
【0056】
シフトアンドセレクト軸33は、シフトケース9に回転自在かつ、軸方向に移動自在に設けられており、その端部に連結されたシフトユニット100によって操作される。
【0057】
フロントケース6の下部にはオイルパン41が取付けられており、オイルパン41の内部には、オイルを貯留するオイル貯留室43が形成されている。また、オイルパン41とフロントケース6の下部との間にはバルブボディ42が収容されており、バルブボディ42は、フロントケース6の下部に固定されている。
【0058】
バルブボディ42は、オイルポンプ12によってオイルパン41から吸い上げられたオイルを、トルコンハウジング5の内部を通してトルクコンバータ10に供給する。
【0059】
トルクコンバータ10に供給されるオイルは、トルクコンバータ10の図示しないロックアップクラッチを締結または解放するオイル、あるいは、ポンプインペラからタービンランナに流れるオイルとして用いられる。
【0060】
また、バルブボディ42は、オイルポンプ12によってオイルパン41から吸い上げられたオイルを、トルコンハウジング5の内部を通して軸受38A等の潤滑が必要な部位に供給する。
【0061】
図3図4において、フロントケース6の周壁61の右側面には、シフトユニット100が取り付けられている。シフトユニット100は、オイルを貯留するリザーブタンク104と、リザーブタンク104から供給されたオイルを昇圧するオイルポンプ105と、オイルポンプ105を駆動するモータ106と、オイルポンプ105で昇圧されたオイルの圧力を蓄圧するアキュムレータ107とを有する。
【0062】
また、シフトユニット100は、シフトアンドセレクト軸33を操作するシフトアクチュエータ102と、摩擦クラッチ17を操作するクラッチアクチュエータ103と、これらのシフトアクチュエータ102およびクラッチアクチュエータ103を制御する制御装置108とを有する。制御装置108は、図示しないソレノイドバルブ等の油路切替バルブを有しており、油路切替バルブによって、アキュムレータ107からシフトアクチュエータ102およびクラッチアクチュエータ103へのオイルの供給経路を切り替えることにより、シフトアクチュエータ102およびクラッチアクチュエータ103を駆動する。
【0063】
また、シフトユニット100は、シフトアクチュエータ102およびクラッチアクチュエータ103等が取り付けられるベースプレート101を有している。ベースプレート101は、側面視で矩形の平板状に形成されており、周壁61の外面に固定される。本実施例では、周壁61の右側面にベースプレート101が固定されている。
【0064】
シフトユニット100は、周壁61の外面に対して締結により固定される第1固定部101A、第2固定部101B、第3固定部101Cおよび第4固定部101Dを有している。第1固定部101Aはベースプレート101の上端部かつ前端部の近傍に配置されており、第4固定部101Dはベースプレート101の上端部かつ後端部の近傍に配置されている。第2固定部101Bはベースプレート101の下端部かつ前端部の近傍に配置されており、第3固定部101Cはベースプレート101の下端部かつ後端部の近傍に配置されている。
【0065】
一方、周壁61の外面には、ベースプレート101が締結により固定される第1被固定部61A、第2被固定部61B、第3被固定部61Cおよび第4被固定部61Dが形成されている。
【0066】
第1被固定部61A、第2被固定部61B、第3被固定部61Cおよび第4被固定部61Dは、第1固定部101A、第2固定部101B、第3固定部101Cおよび第4固定部101Dにそれぞれ対応する位置に配置されている。ここで、「締結により固定」とは、ボルトによる固定、またはスタッドボルトとナットによる固定をいう。
【0067】
図10において、第1被固定部61A、第4被固定部61Dは、ベースプレート101側に突出するボス形状に形成されている。同様に、第2被固定部61B、第3被固定部61Cは、図5図6に示すように、ベースプレート101側に突出するボス形状に形成されている。
【0068】
図7図9において、ベースプレート101は、入力軸21に沿う方向(軸方向)で隔壁65と隣接する位置に配置されている。
【0069】
図7図8図9において、ベースプレート101は、周壁61におけるクラッチ室82の外面と変速機室83の外面とに固定されている。
【0070】
図9において、シフトアンドセレクト軸33は、入力軸21に沿う方向(軸方向)で隔壁65と隣接する位置に配置されている。
【0071】
図5図11において、入力軸21に沿う方向でベースプレート101が配置される領域において、周壁61の内面と隔壁65と筒状部66とがリブ131、132によって連結されている。リブ131、132は、入力軸21を中心とする放射方向に延びている。
【0072】
図5図6において、隔壁65は、支持部65B、65Cを有している。支持部65B、65Cにおいて、隔壁65の変速機室83側の面は窪んでおり、隔壁65のクラッチ室82側の面は突出している。支持部65Bは、軸受を介してカウンタ軸23の前端部を支持しており、支持部65Cは、軸受を介してリバース軸34の前端部を支持している。
【0073】
図5図6図12において、オイル貯留室43は、周壁61のうちクラッチ室82を形成しかつベースプレート101が固定される領域の下方に配置されるオイルパン41と、周壁61の下面からオイルパン41の周縁部に向かって下方に延びる縦壁部63と、縦壁部63の下端に形成されオイルパン41に接合されるフランジ部63Aと、から構成される。図12に示すように、変速機ケース4を下方から見て、縦壁部63が環状または矩形に形成されている。すなわち、変速機ケース4を下方から見て、縦壁部63は、直線状または円弧状の形状ではなく、オイル貯留室43の周囲を周回する形状に形成されており、その内部に閉じた領域(オイル貯留室43)を形成している。
【0074】
次に、上記のように構成された自動変速機2の効果を説明する。
【0075】
本実施例の自動変速機2において、シフトアンドセレクト軸33及びベースプレート101は、入力軸21に沿う方向で隔壁65と隣接する位置に配置され、ベースプレート101は、周壁61におけるクラッチ室82の外面と変速機室83の外面とに固定されている。
【0076】
このように、本実施例では、シフトアンドセレクト軸33及びベースプレート101は、入力軸21に沿う方向で隔壁65と隣接する位置に配置されているため、ベースプレート101の大半をクラッチ室82の外壁に配置できる。
【0077】
また、ベースプレート101が、クラッチ室82の外壁と変速機室83の外壁とに固定されるため、ベースプレート101を、隔壁65がその内部に配置されており変速機ケース4のなかでも比較的に剛性の高い部分に固定できるため、ベースプレート101が取り付けられた変速機ケース4の振動を抑制できる。
【0078】
また、変速機ケース4は、変速機室83よりクラッチ室82の方が変速機ケース4の断面が大きくなるため、ベースプレート101の一部をクラッチ室82の外壁に固定することによってベースプレート101を安定して支持でき、シフトユニット100の振動を抑制できる。
【0079】
この結果、シフトユニット100が変速機ケース4の外壁に取り付けられる自動変速機2において、変速機ケース4で発生する振動や騒音を低減することができる。
【0080】
本実施例の自動変速機2において、隔壁65には、入力軸21が通過する筒状部66がクラッチ室82側に突出して形成されており、入力軸21に沿う方向でベースプレート101が配置される領域において、周壁61の内面と隔壁65と筒状部66とがリブ131、132によって連結されている。
【0081】
このように、本実施例では、リブ131、132によってクラッチ室82の内壁のうちベースプレート101が固定される領域の剛性を向上させ、変速機ケース4の外壁の振動を抑制できる。このため、変速機ケース4で発生する振動や騒音を低減することができる。
【0082】
本実施例の自動変速機2において、入力軸21の軸線上にトルクコンバータ10が配置され、トルクコンバータ10の出力側に摩擦クラッチ17が連結されている。また、変速機ケース4は、トルクコンバータ10に供給するオイルを貯留するオイル貯留室43を有し、オイル貯留室43は、周壁61のうちクラッチ室82を形成しかつベースプレート101が固定される領域の下方に配置されるオイルパン41と、周壁61の下面からオイルパン41の周縁部に向かって下方に延びる縦壁部63と、縦壁部63の下端に形成されオイルパン41に接合されるフランジ部63Aと、から構成される。
【0083】
このように、本実施例では、剛性の高いフランジ部63Aを有する縦壁部63が、周壁61のうちクラッチ室82を形成しかつベースプレート101が固定される領域の下方に配置されるので、当該領域における周壁61の剛性を向上でき、変速機ケース4の外壁の振動を抑制できる。このため、変速機ケース4で発生する振動や騒音を低減することができる。
【0084】
本実施例の自動変速機2において、変速機ケース4を下方から見て、縦壁部63が環状または矩形に形成されている。
【0085】
このように、本実施例では、縦壁部63が環状または矩形に形成しているため、縦壁部63の剛性を車両前後方向および車幅方向に向上させることができる。このため、変速機ケース4で発生する振動や騒音を低減することができる。
【0086】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0087】
2...自動変速機、4...変速機ケース、10...トルクコンバータ、17...摩擦クラッチ、20...変速機、21...入力軸、33...シフトアンドセレクト軸、41...オイルパン、43...オイル貯留室、61...周壁、63...縦壁部、63A...フランジ部、65...隔壁、66...筒状部、82...クラッチ室、83...変速機室、100...シフトユニット、101...ベースプレート、102...シフトアクチュエータ、103...クラッチアクチュエータ、131,132...リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12