(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ライダー、およびライダーの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20220614BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20220614BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/89
G02B26/10 A
(21)【出願番号】P 2018085199
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小島 清仁
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-84006(JP,A)
【文献】特開2017-227569(JP,A)
【文献】特開2016-70974(JP,A)
【文献】特開2017-62398(JP,A)
【文献】特開2014-109686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G02B 26/10-26/12
G01C 3/00-3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状のレーザー光を発光するレーザー光源と、
前記レーザー光を反射させる少なくとも1つのミラー面を有し、回転することで前記ミラー面の位置を変えて前記レーザー光を測定空間へ向けて走査するポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーの回転角を検出するポリゴンミラー回転角検出部と、
あらかじめ決められた最小発光間隔、定常状態における前記レーザー光の発光間隔である定常発光間隔、定常状態におけるポリゴンミラーの回転速度である定常回転速度、および定常状態において前記ポリゴンミラーの回転位置が所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を発光させるまでの間隔である初回発光タイミングを記憶した記憶部と、
前記レーザー光源から発光させる前記レーザー光の発光タイミングを制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転速度が定常回転速度
より速くなった場合に、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転位置が第1の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングで発光させると、発光間隔が前記最小発光間隔未満となってしまうときには、発光間隔が前記最小発光間隔以上となるように、第1の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングよりも遅延させたタイミングで発光させ、
初回の前記レーザー光の発光後、次の前記レーザー光を前記最小発光間隔以上かつ前記定常発光間隔以下となるように前記レーザー光を発光させる、ライダー。
【請求項2】
前記記憶部は、さらに、あらかじめ決められた最大発光間隔を記憶し、
前記制御部は、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転速度が定常回転速度
より遅くなった場合に、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転位置が第1の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングで発光した場合に、発光間隔が前記最大発光間隔以上となってしまうときには、前記ポリゴンミラーの回転角が第1の前記所定位置の次の第2の前記所定位置に到達した際に、発光間隔が前記定常発光間隔以上かつ前記最大発光間隔未満となるように、第2の前記所定位置に到達後に使用する前記初回発光タイミングを
遅らせるように変更して
前記記憶部へ記憶させ、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転位置が第2の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記記憶部に記憶した変更後の前記初回発光タイミングで発光させる、請求項1に記載のライダー。
【請求項3】
前記レーザー光源は、パルスごとに前記レーザー光の光量を変更可能であり、
前記制御部は、前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる回転角度を検出したタイミングに合わせて、パルスごとに前記レーザー光の光量を変更する、請求項1または2に記載のライダー。
【請求項4】
前記ポリゴンミラー回転角検出部は、前記ポリゴンミラーの回転位置を示すパルス信号を出力するエンコーダーであり、
前記制御部は、前記エンコーダーから第1の前記所定位置に該当する第1パルスを受信後、次の第2の前記所定位置に該当する第2パルスを受信するまでの間に複数のパルスの前記レーザー光のパルスを発光させていて、
前記エンコーダーから前記第1パルスを受信後、初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングより遅延させて発光させる場合に、
前記定常発光間隔をt0、前記初回発光タイミングの遅延時間をt1とし、初回以降の発光間隔を前記定常発光間隔より短くする短縮時間t2として、下記(1)式を満たす遅延時間t1および短縮時間t2を設定して、設定した遅延時間t1および短縮時間t2で前記レーザー光を発光させる、請求項1~3のいずれか1つに記載のライダー。
t1=t2×n …(1)
(ただしnは、初回後(初回含まず)の前記レーザー光の発光回数である)
【請求項5】
前記制御部は、前記初回発光タイミングより遅延させて発光させても、前記最小発光間隔未満となる場合は、前記レーザー光の発光を一時停止させる、請求項1~4のいずれか1つに記載のライダー。
【請求項6】
前記レーザー光が前記ポリゴンミラーの回転により走査される方向を主走査方向とし、当該主走査方向と直交する方向を副走査方向とするとき、
副走査方向に複数の前記レーザー光源が配置されている、請求項1~5のいずれか1つに記載のライダー。
【請求項7】
前記制御部は、前記ポリゴンミラー回転角検出部からの信号間隔があらかじめ決められた時間間隔以上開いた場合に、前記レーザー光の発光を停止する、請求項1~6のいずれか1つに記載のライダー。
【請求項8】
パルス状のレーザー光を発光するレーザー光源と、
前記レーザー光を反射させる少なくとも1つのミラー面を有し、回転することで前記ミラー面の位置を変えて前記レーザー光を測定空間へ向けて走査するポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーの回転角を検出するポリゴンミラー回転角検出部と、
あらかじめ決められた最小発光間隔、定常状態における前記レーザー光の発光間隔である定常発光間隔、定常状態におけるポリゴンミラーの回転速度である定常回転速度、および定常状態において前記ポリゴンミラーの回転位置が所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を発光させるまでの間隔である初回発光タイミングを記憶した記憶部と、を有するライダーの制御方法であって、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転速度が定常回転速度
より速くなった場合に、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転位置が第1の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングで発光させると、発光間隔が前記最小発光間隔未満となってしまうときには、発光間隔が前記最小発光間隔以上となるように、第1の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングよりも遅延させたタイミングで発光させ、
初回の前記レーザー光の発光後、次の前記レーザー光を前記最小発光間隔以上かつ前記定常発光間隔以下となるように前記レーザー光を発光させる、ライダーの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライダー、およびライダーの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ライダーは、レーザー光を測定空間へ向けて発射し、その発射から反射光の受光までの時間などから測定空間内の物体までの距離を測定する。このようなライダーはレーザーレーダーとも称されている。
【0003】
従来、このようなライダーでは、レーザー光を走査する手段としてポリゴンミラーを備える。ライダーは、ポリゴンミラーを回転させて、パルス状のレーザー光を出射して、このレーザー光をミラー部分に反射させて測定空間を走査し、物体からの反射光を再びミラー部分で受光手段の方向へ反射させて受光手段で受光させている。
【0004】
従来、このようなポリゴンミラーを用いてレーザー光を走査する技術としては、レーザープリンタが広く知られている。たとえば、特許文献1では、レーザー光は回転多面体(ポリゴンミラー)によってドラムの方向へ偏光、走査されて、ドラム上に画像データに基づく静電潜像が形成される。この特許文献1では、回転多面体の変動要因である精度バラツキや回転ムラなどを周波数データとしてあらかじめ記録しておく。そして、記録した周波数データを用いて画像データを周波数変調して回転多面体へ向けてレーザー光を出射している。これによりドラムに形成される静電潜像の密度が均一になるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ポリゴンミラーは、振動などの突発的な外乱要因によってポリゴンミラーの回転が乱れて、回転ムラなどが生じやすい。このようなポリゴンミラーの回転ムラは同じ周期では発生しない。
【0007】
しかしながら、従来の技術は、あらかじめポリゴンミラーに生じる変動要因を記録して、これにより周波数変調を掛けているため、突発的に発生するポリゴンミラーの回転ムラ、つまり周期性がない回転ムラには対応できないという問題がある。
【0008】
また、レーザー光を空間に向けて発光する場合、レーザー光の安全基準(日本工業規格「レーザー製品の放射安全基準」JIS C 6802)を満たすようにしなければならないが、特許文献1の技術はそもそも空間に向けてレーザー光を発射していないため、このような安全基準が考慮されていない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、ポリゴンミラーの回転に回転ムラなどが生じた場合でも、安全基準を満たしたうえで、回転ムラによる測定誤差を抑制することのできるライダー、およびライダーの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0011】
(1)パルス状のレーザー光を発光するレーザー光源と、
前記レーザー光を反射させる少なくとも1つのミラー面を有し、回転することで前記ミラー面の位置を変えて前記レーザー光を測定空間へ向けて走査するポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーの回転角を検出するポリゴンミラー回転角検出部と、
あらかじめ決められた最小発光間隔、定常状態における前記レーザー光の発光間隔である定常発光間隔、定常状態におけるポリゴンミラーの回転速度である定常回転速度、および定常状態において前記ポリゴンミラーの回転位置が所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を発光させるまでの間隔である初回発光タイミングを記憶した記憶部と、
前記レーザー光源から発光させる前記レーザー光の発光タイミングを制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転速度が定常回転速度より速くなった場合に、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転位置が第1の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングで発光させると、発光間隔が前記最小発光間隔未満となってしまうときには、発光間隔が前記最小発光間隔以上となるように、第1の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングよりも遅延させたタイミングで発光させ、
初回の前記レーザー光の発光後、次の前記レーザー光を前記最小発光間隔以上かつ前記定常発光間隔以下となるように前記レーザー光を発光させる、ライダー。
【0012】
(2)パルス状のレーザー光を発光するレーザー光源と、
前記レーザー光を反射させる少なくとも1つのミラー面を有し、回転することで前記ミラー面の位置を変えて前記レーザー光を測定空間へ向けて走査するポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーの回転角を検出するポリゴンミラー回転角検出部と、
あらかじめ決められた最小発光間隔、定常状態における前記レーザー光の発光間隔である定常発光間隔、定常状態におけるポリゴンミラーの回転速度である定常回転速度、および定常状態において前記ポリゴンミラーの回転位置が所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を発光させるまでの間隔である初回発光タイミングを記憶した記憶部と、を有するライダーの制御方法であって、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転速度が定常回転速度より速くなった場合に、
前記ポリゴンミラー回転角検出部から得られる前記ポリゴンミラーの回転位置が第1の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングで発光させると、発光間隔が前記最小発光間隔未満となってしまうときには、発光間隔が前記最小発光間隔以上となるように、第1の前記所定位置に到達後の初回の前記レーザー光を前記初回発光タイミングよりも遅延させたタイミングで発光させ、
初回の前記レーザー光の発光後、次の前記レーザー光を前記最小発光間隔以上かつ前記定常発光間隔以下となるように前記レーザー光を発光させる、ライダーの制御方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリゴンミラーに回転角検出部を設けることで、ポリゴンミラーの回転位置を検出し、その位置に応じてレーザー光の発光タイミングを制御することとした。そしてこの発光タイミングを制御する際には、レーザー光の発光間隔が最小発光間隔未満とならないようにした。このため、ポリゴンミラーに回転ムラが発生した場合、その回転ムラに応じてレーザー光の発光タイミングを即座に合わせることができるので、測定誤差を抑制することができる。しかも、最小発光間隔未満とならないようにしているので、最小発光間隔として安全基準を満たす間隔を設定することで、確実に安全基準を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るライダーを示す断面図である。
【
図2】ライダーの制御部の構成を示すブロック図である。
【
図4】ポリゴンミラーを底面方向から見た平面図である。
【
図5】ライダーにより取得される距離画像を説明するための説明図である。
【
図6】定常状態におけるポリゴンミラー1回転分のタイミングチャートである。
【
図7】
図6のタイミングチャートの部分拡大図である。
【
図8】
図8は
図6のタイミングチャートのさらに部分拡大図である。
【
図9】ポリゴンミラーの回転速度が速くなった場合における、エンコーダーパルスおよびレーザーパルスを部分拡大したタイミングチャートである。
【
図10】ポリゴンミラーの回転速度が遅くなった場合における、エンコーダーパルスおよびレーザーパルスを部分拡大したタイミングチャートである。
【
図11】レーザーパルスの出力エネルギーを変更する場合を説明するための説明図である。
【
図12】レーザーパルスのパルス幅を変更する場合を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
本実施形態のライダーは、ポリゴンミラーにレーザー光を反射させて測定空間内を二次元的に走査する一方、物体などからの反射光を再びポリゴンミラーに反射させてフォトダイオードへ導く。これにより、測定空間を向いた複数の方向に関する情報を得ることができる。得られた情報は距離画像と称し、レーザー光の送受部から見た物体の方向と、その物体までの距離という3次元の情報を有する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るライダーを示す断面図である。
【0018】
ライダー(Lidar:Light Detection and Ranging)10は、投受光ユニット11、および制御部12を備え、筐体57に収容されている。
【0019】
投受光ユニット11は、半導体レーザー51、コリメートレンズ52、ポリゴンミラー53、レンズ54、フォトダイオード55、およびモーター56を有する。
【0020】
後述するように、ポリゴンミラー53には、ポリゴンミラー53の回転角度を検出するポリゴンミラー回転角検出部(エンコーダー71)が設けられている。
【0021】
制御部12は、半導体レーザー51の発光からフォトダイオード55の受光までの時間差に応じて距離情報(距離値)を求める。得られた距離情報から、測定空間内の物体までの距離値の分布を示す複数の画素で構成される距離画像が生成される。距離画像は測距点群データまたは距離マップとも称される。また、制御部12は、後述するように、投受光ユニット11を構成するモーター56の回転制御および半導体レーザー51の発光タイミングも制御している。
【0022】
【0023】
制御部12は、コンピューターであり、演算装置であるCPU121、ワークエリアや記憶部として用いられるRAM122、コンピューターの起動など基本プログラムを記憶しているROM123、および、発光タイミングを制御するためのプログラムやパラメーターデータなどを記憶するHDD(hard disk drive)124、一定時間間隔のパルス信号を発しているクロック発振器125を有し、それらが互いにバスなどにより接続されている。制御部12のこのような構成は、周知のコンピューターと同様であるので詳細な説明は省略するが、後述する制御方法を行うためのプログラムがCPU121により実行されることで、各制御が行われる。なお、コンピューターとしての制御部12の構成は、たとえば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの回路によって構成されていてもよい。
【0024】
制御部12は、直接または外部機器接続のためのインターフェースを介して、投受光ユニット11内の各部と接続されている。
【0025】
制御部12はモーター56の回転速度を一定に保つように制御している。モーター56の制御自体は周知の方法でよく、たとえばモーター56にサーボモーターを用いて、フィードバック制御やフィードフォワード制御などを行うとよい。
【0026】
半導体レーザー51は、レーザー光源であり、副走査方向に複数のレーザー光源が配置されている(詳細後述)。
【0027】
コリメートレンズ52は、半導体レーザー51からの発散光を平行光に変換する。
【0028】
ポリゴンミラー53は、モーターに回転する。ポリゴンミラー53は、コリメートレンズ52で平行とされたレーザー光をミラー面に反射させて、その回転により測定空間に向かってレーザー光を走査投光する(後述)。また、ポリゴンミラー53は、物体からの反射光を反射させて、フォトダイオード55の方向へ導く。
【0029】
レンズ54は、ポリゴンミラー53で反射された物体からの反射光を集光する。フォトダイオード55は、レンズ54により集光された光を受光し、Z方向に並んだ複数の画素を有する。
【0030】
モーター56はポリゴンミラー53を回転駆動する。
【0031】
半導体レーザー51とコリメートレンズ52とで出射部501を構成し、レンズ54とフォトダイオード55とで受光部502を構成する。出射部501、受光部502の光軸は、ポリゴンミラー回転軸530に対して直交していることが好ましい。
【0032】
ボックス状の筐体57は、支持部材100に固定されている。筐体57は、上壁57aと、これに対向する下壁57bと、上壁57aと下壁57bとを連結する側壁57cとを有する。側壁57cの一部に開口57dが形成され、開口57dには透明板58が取り付けられている。支持部材100は、路面や駐車場、広場、公園など、ライダー10を固定して設置する場合は支柱や壁などである。また、車両などの移動物体にライダー10を固定して使用する場合、支持部材100は、それら移動物体の一部である。
【0033】
ポリゴンミラー53の詳細を説明する。
図3はポリゴンミラー53の正面図、
図4はポリゴンミラー53を底面方向から見た平面図である。
【0034】
ポリゴンミラー53は、少なくとも1つのミラー面を有する。本実施形態では8面のミラー面を有している。
【0035】
ポリゴンミラー53は、2つの四角錐を逆向きに接合して一体化した形状を有している。したがって、対になって向き合う方向に傾いたミラー面を4対有している。一対のミラー面としては、第1ミラー面M1と第2ミラー面M2、第3ミラー面M3と第4ミラー面M4(
図1で図示されない面)、第5ミラー面M5と第6ミラー面M6、第7ミラー面M7と第8ミラー面M8(
図1で図示されない面)である。第1ミラー面M1、第3ミラー面M3、第5ミラー面M5、第7ミラー面M7は、互いにポリゴンミラー回転軸530に対する傾斜角αが異なる。同様に第2ミラー面M2、第4ミラー面M4、第6ミラー面M6、第8ミラー面M8は、互いにポリゴンミラー回転軸530に対する傾斜角βが異なる。傾斜角は各ミラー面の延長線と、この延長線がポリゴンミラー回転軸530と交わる部分のなす角αおよびβである。
図1においては、第1ミラー面M1の傾斜角αと第2ミラー面M2の傾斜角βを示したが、他のミラー面においても同様である(ただし傾斜角そのものは既に説明したとおりミラー面ごとに異なる)。なお、各ミラー面を総称または区別しないで記す場合はミラー面Mとする。
【0036】
これら各ミラー面Mは、ポリゴンミラー53の形状をした樹脂素材(たとえばPC(ポリカーボネート))の表面に、反射膜を蒸着することにより形成されている。
【0037】
ポリゴンミラー53は、その中央部(2つの四角錐の接合部分)にモーター軸56aと接続される支持部材76が設けられている。ポリゴンミラー53は中空である。筐体57に固定されたモーター56のモーター軸56a(
図1参照)に支持部材76が連結され、ポリゴンミラー53全体が回転駆動される。たとえば、モーター軸56aの軸線(回転軸線)が鉛直方向であるZ方向に延在しており、Z方向に直交するX方向およびY方向よりなるXY平面が水平面となっている。しかし、モーター軸56aは、その軸線を鉛直方向に対して傾けても良い。
【0038】
ポリゴンミラー53の底面部分は、各ミラー面Mを保持するためのリング部材75が設けられている。
【0039】
リング部材75には、一定間隔で光を反射させる反射部材72が非反射部材72aと交互に、ストライプとなるように、リング部材75の円周方向に複数設けられている。一方、リング部材75の近傍にフォトセンサー73が設けられ、筐体などに固定されている。フォトセンサー73は、リング部材75方向に光を発する発光器と、光を受光する受光器(いずれも不図示)を有していて、発光器からの光が反射部材72に反射して、その光が受光器で受光されてパルスを発生する。このパルス信号は、制御部12が受信する。このようなフォトセンサー73は反射型フォトセンサー、フォトリフレクタなどとも称されている。反射部材72とフォトセンサー73によりパルスを発生するポリゴンミラー用エンコーダー(本明細書では単にエンコーダー71と称する)が構成されている。なお、エンコーダー71は、このような光を利用したエンコーダー71以外に、磁気方式のエンコーダーやその他の方式であってもよい。
【0040】
図示するように、この反射部材72はリング部材75に設けている。これはポリゴンミラー53全体の外周に相当する位置である。このようなポリゴンミラー53の底面の外周に反射部材72を設けたことで、回転軸の近くに設けるよりも、ポリゴンミラー53の速度の変化をとらえやすくなる。
【0041】
ポリゴンミラー53の回転によって走査される方向を主走査方向という。また、主走査方向と直交する方向を副走査方向という。ポリゴンミラー53の回転によって走査される際に出射されるパルス状のレーザー光の発光回数を走査分解能(パルス数と同じ)という。一方、エンコーダー71の分解能は、反射部材72の数によって決まる。
【0042】
次に、ライダー10により取得される距離画像について説明する。
図5はライダーにより取得される距離画像を説明するための説明図である。この
図5は、ポリゴンミラー53の回転に応じて、出射するレーザースポット光600でライダー10の測定空間内を走査した状態を示している。
【0043】
図1において半導体レーザー51からパルス状に間欠的に出射された発散光は、コリメートレンズ52で平行光に変換され、回転するポリゴンミラー53の第1ミラー面M1に入射する。その後、第1ミラー面M1で反射され、さらに第2ミラー面M2で反射した後、透明板58を透過して外部の測定空間に向けて出射される。出射されたレーザー光は、たとえば、
図5に示すように、縦長の矩形断面を持つレーザースポット光600(ハッチングで示す)として走査投光される。なお、出射されたレーザースポット光600が物体601や602で反射し、反射光として戻ってくる方向を投受光方向という。同一の投受光方向に進行するレーザースポット光は、図示するように縦長の矩形面を形成していて、これは、副走査方向に複数のレーザー光源(半導体レーザー)を並べて配置することで形成している。この場合、受光部502も、レーザー光源の数に対応した複数のフォトダイオードとすることで、一度に副走査方向に複数の画素を得ることもできる。
【0044】
図5において物体601は車両であり、物体602は人である。もちろんこれら以外の建物や構造物なども物体として検知される。
【0045】
ポリゴンミラー53のミラーの組み合わせは、既に説明したように、ポリゴンミラー回転軸530に対する傾斜角が異なっている。このためレーザー光は、まず、1番対の第1ミラー面M1と第2ミラー面M2(両ミラーを合わせて1番対ミラー面ともいう、以下同様)にて反射したレーザー光は、ポリゴンミラー53の回転に応じて、測定空間の一番上の領域Ln1を水平方向に左から右へと走査される(
図5の状態)。次に、2番対の第3ミラー面M3と第4ミラー面M4(2番対ミラー面)で反射したレーザー光は、ポリゴンミラー53の回転に応じて、測定空間の上から2番目の領域Ln2を水平方向に左から右へと走査される。次に、3番対の第5ミラー面M5と第6ミラー面M6(3番対ミラー面)で反射したレーザー光は、ポリゴンミラー53の回転に応じて、測定空間の上から1番目の領域Ln3を水平方向に左から右へと走査される。次に、4番対の第7ミラー面M7と第8ミラー面M8(4番対ミラー面)で反射したレーザー光は、ポリゴンミラー53の回転に応じて、測定空間の最も下の領域Ln4を水平方向に左から右へと走査される。
【0046】
このようにしてライダー10は、測定空間全体の1回の走査を完了する。この領域Ln1~Ln4の走査により得られた画像を組み合わせて、1つのフレームFLが得られる。そして、ポリゴンミラー53が1回転した後、再び1番対の第1ミラー面M1と第2ミラー面M2に戻り、以降は測定空間の一番上の領域Ln1から最も下の領域Ln4までの走査を繰り返し、次のフレームFLが得られる。
【0047】
図1において、走査投光されたレーザー光のうち物体に当たって反射したレーザー光の一部は、再び透明板58を透過して筐体57内のポリゴンミラー53の第2ミラー面M2に入射し、ここで反射され、さらに第1ミラー面M1で反射されて、レンズ54により集光され、それぞれフォトダイオード55の受光面で画素ごとに検知される。このとき、制御部12が半導体レーザー51の発光タイミングとフォトダイオード55の受光タイミングとの時間差に応じて距離情報を求める。これにより測定空間内の全領域で物体の検出を行って、画素ごとに距離情報を持つ距離画像としてのフレームFLを得ることができる。なお、かかる距離画像は、不図示のネットワーク等を介して遠方のモニターに送信されて表示されたり、HDD124に記憶されたりする。また、得られた距離画像を背景差分法による物体検出のために背景画像データとして記憶してもよい。
【0048】
次に、制御方法について説明する。
【0049】
まず、エンコーダー71のパルス数とレーザー光のパルス数について説明する。なお、以下の説明において、発光間隔(パルス間隔)、パルスカウント、および発光などのタイミングはパルスの立ち上がりエッジを基準とする。また、エンコーダー71のパルスをエンコーダーパルス、レーザー光のパルスをレーザーパルスとも称する。
【0050】
以下に説明する本実施形態では、エンコーダー71のパルス数がレーザー光のパルス数より少ない。
【0051】
図6は定常状態におけるポリゴンミラー1回転分のタイミングチャートであり、
図7は
図6のタイミングチャートの部分拡大図であり、
図8は
図6のタイミングチャートのさらに部分拡大図である。
【0052】
定常状態とは、ポリゴンミラーが設定した回転速度で回転し、誤差がない場合である。
【0053】
この
図6~8に示した例では、エンコーダー71のパルス数は、レーザー光のパルス数より少ない。レーザー光のパルス数は4000パルス/回転(ミラー対1面当たり、1000パルス)である。定常状態におけるレーザーパルスの発光間隔は36.2μsとする。定常状態でのポリゴンミラー1回転の時間は200msである。回転方向におけるミラー面同士の接続部分ではレーザー光を出射しない。このパルス数で空間に向けた主走査方向の走査範囲120度とする。
【0054】
一方、エンコーダー71のパルス数は1000パルス/回転である。したがって、定常状態でエンコーダーパルスの間隔は200μsとなる。なお、クロックは100MHz(10μs周期)である。
【0055】
また、レーザー光の安全基準(日本工業規格「レーザー製品の放射安全基準」JIS C 6802。以下同じ)を満たすための最小発光間隔を36.0μsとする。この最小発光間隔は、あくまでも一例であり、レーザー光の光量(放射したレーザー光が物体に照射される際の露光量ともいう)に応じて、異なる値を取り得る。
【0056】
制御部12は、エンコーダー71のパルス数をカウントして、ミラー面の始まりを示すカウント数となったときに、制御部12からミラー面の始まりを示す面信号を発生させている。面信号発生後、最初のエンコーダーパルス受信後(またはさらに所定数エンコーダーパルスカウント後)、そのミラー面における最初のレーザー光を発光させる。これにより上述したフレームFLにおける副走査方向のLn1~Ln4の位置を整合させることができる。
【0057】
なお、ポリゴンミラー53の1回転の最初の位置(基準位置)は起動時に設定する。または、エンコーダー71の反射部材72を1か所だけ異なるサイズとして、エンコーダー71のパルス幅が違うようにしておいて、それを検出した時点をポリゴンミラー53の1回転の最初の位置にしてもよい。
【0058】
このようにエンコーダー71のパルス数をカウントして、ミラー面におけるレーザー光の発光を開始することで、ポリゴンミラー53の回転速度に変動があっても、副走査方向(Ln1~Ln4)の画像の乱れをなくすことができる。
【0059】
次に、
図7を参照して、制御部12は、定常状態においてはエンコーダーパルスを200μs間隔で受信することになる。したがって、制御部12はレーザー光を36.2μs間隔(周期)で発光させる。
【0060】
ここでは、
図7に示しているエンコーダーパルスをP1~P4とする(図示したなかでの最初のエンコーダーパルスをP0としている)。そして、エンコーダーパルスP1~P4は、ポリゴンミラー53の回転位置として第1~第4の所定位置に該当する。したがって、P1を第1パルス、P2を第2パルスとすると、それぞれポリゴンミラー53の回転位置が第1の所定位置、第2の所定位置に到達したことがわかる。
【0061】
ポリゴンミラー53が誤差なく回転している定常状態においては、エンコーダーパルスP0~P4のそれぞれの間をレーザー光が5または6パルス、すべて36.2μs間隔で発光される。この発光間隔を定常発光間隔t0としてRAM122に記憶しておく。
【0062】
エンコーダーパルスP1に注目すると、制御部12は、エンコーダーパルスP1の前のレーザーパルスであるレーザーカウンターの値が6番(レーザーパルス6番と記す。以下同様)から、エンコーダーパルスP1受信後の初回のレーザーパルス1番までの発光間隔は、定常状態であるから36.2μsである。したがって、エンコーダーパルスP1受信後、初回のレーザーパルス1番までの間隔は17.2μsとなる。制御部12は、この値を初回発光タイミングtf1=17.2μsとしてRAM122に記憶しておく。同様に、エンコーダーパルスp2では初回発光タイミングtf2=34.4μsとなる。他のエンコーダーパルス後も同様であり、各パルスP1~P4受信後のそれぞれの初回発光タイミングtf1~tf4としてRAM122に記憶しておく。
【0063】
制御部12は、エンコーダーパルスをトリガとして、エンコーダーパルス受信後、初回発光タイミングtf1~tf4分だけ時間を待ってからレーザーパルスを発光する。なお、時間の計測は、クロック信号をカウントすることで得られる。
【0064】
この例では、
図8に示すように、クロックカウンターを、レーザーパルスの発光ごと、およびエンコーダーパルス受信ごとにリセットする。エンコーダーパルスP1を例にすると、制御部12はエンコーダーパルスP1を受信すると、その時点でクロックカウンターをリセットする。このため、エンコーダーパルスP1受信前のレーザーパルス6番以降カウントしていたクロックカウンター値は1900(=19.0μs)で終了する。
【0065】
そして、制御部12は、エンコーダーパルスP1受信時からクロックカウンター値1720(=17.2μs)をカウントした時点でレーザーパルスを発光させる。その後は、レーザーパルスを発光させるごとにカウンターをリセットして、クロックカウンター値3620(36.2μs)をカウントごとにレーザーパルスを発光させる。さらにエンコーダーパルスP2を受信すると、カウンターをリセットして、以降同様にしてレーザーパルスを発光させて行く。
【0066】
なお、
図6~8においては、説明を簡単にするために、エンコーダーパルスP0の時点で、クロックカウンター値「1」で、レーザーパルスを発光させたものとしている(後述する他の図においても同様)。
【0067】
次に、ポリゴンミラー53の回転速度が定常状態より速くなった場合を説明する。
【0068】
図9は、ポリゴンミラー53の回転速度が速くなった場合における、エンコーダーパルスおよびレーザーパルスを部分拡大したタイミングチャートである。
【0069】
図9の例では、ポリゴンミラー53の回転速度が定常状態より速く、エンコーダーパルスP0~P1の間隔が199.6μsである。定常状態では200μs間隔である。このため、何もせずに初回発光タイミングtf1=17.2μsでレーザー光を発光させると、エンコーダーパルスP1の前の最後のレーザーパルス6番からこのエンコーダーパルスP1後の初回レーザーパルス1番までの間隔が35.8μsとなる。これでは安全基準である最小発光間隔36.0μs未満となってしまう(図示35.8μs:NG)。
【0070】
そこで、本実施形態では、逆に、エンコーダーパルスP1の前の最後のレーザーパルス6番からエンコーダーパルスP1後の初回レーザーパルス1番までの発光間隔を遅延させ、その後のレーザーパルスの間隔を、安全基準を見たす範囲内で、遅延させた分速く発光させることにした。
【0071】
このエンコーダーパルスP1後の初回レーザーパルス1番の発光を遅延させる時間は、初回発光タイミングtf1から遅くする遅延時間t1とする。遅延時間t1はその前のレーザーパルス6番からの発光間隔が36.0~36.8μsの範囲となるように設定する。36.0μsは前述の最小発光間隔である。一方、36.8μsは最大発光間隔である。遅延時間t1の算出および設定は制御部12が行う。
【0072】
最大発光間隔について説明する。遅延時間t1は、もともと回転速度が速くなってレーザーパルスに乱れが出るのを補正するために設定する。しかし、この値を大きくし過ぎると、発光間隔が長くなり過ぎてしまう。このため、許容できる発光間隔として、最大発光間隔を設定している。
【0073】
この例では、遅延時間t1=0.8μsとした。したがって、エンコーダーパルスP1の前の最後のレーザーパルス6番からエンコーダーパルスP1後の初回レーザーパルス1番までの発光間隔は、レーザーパルス6番からエンコーダーパルスP1までの時間+初回発光タイミングtf1+遅延時間t1=18.6+17.2+0.8=36.6μsとなる。これにより、エンコーダーパルスP1の前のレーザーパルス6番からエンコーダーパルスP1後、初回のレーザーパルス1番までの発光間隔が最小発光間隔以上となる。
【0074】
その後は、0.8μs遅らせたので、制御部12は、その分の遅れを初回以降のレーザーパルスの発光間隔を変えることで吸収する。ここで初回以降の発光間隔を、定常発光間隔から短縮する短縮時間t2とする。最小発光間隔は36.0μsであるから発光間隔はこれ未満にはできない。一方、定常発光間隔36.2μsである。このため初回以降のレーザーパルスの発光間隔は各間隔0.2μs短縮できる。0.8μsの遅れは、0.2μsずつ4回速くすれば元に戻すことができる。したがって短縮時間t2=0.2μsとする。
【0075】
このため制御部12は、エンコーダーパルスP1を受信後、18.0μs経過後の初回以降のレーザーパルスを発光させる。その後の初回以降のレーザーパルスの発光間隔であるレーザーパルス1~2番(1回目)、2~3番(2回目)、3~4番(3回目)、4~5番(4回目)を、いずれも発光間隔36.0μsで発光させる。その後、制御部12はレーザーパルス5~6番を定常状態に戻し36.2μsとなるように発光させる。
【0076】
これらの関係を式で表すと、下記(1)式のようになる。
【0077】
t1=t2×n …(1)
ただし(1)式中、nは、初回後(初回含まず)のレーザー光の発光回数である。
【0078】
ここで、t1およびt2は、エンコーダーパルスP1前の最後のレーザーパルス6番からエンコーダーパルスP1後の初回発光までの発光間隔(エンコーダーパルスを跨ぐ発光間隔)が最小発光間隔36.0μs未満にならず、nがエンコーダーパルス間隔内でのレーザー光の発光回数を超えない任意の値を選定する。
【0079】
t1およびt2の選定方法は特に限定されないが、たとえば以下のような方法がある。nを大きな値に決めておいて、その値からt1を求めて最初に使用する値とする。上記の例ではn=4として、これに対応するt1=0.8μsをあらかじめ決めておくのである。t1=0.8μsであれば回転速度がある程度速くなった場合でも、エンコーダーパルスを跨ぐ発光間隔を最小発光間隔以上とできる可能性が高い。そしてt1=0.8μsで発光間隔が最小発光間隔未満になる場合は、さらにt1=1.0μsとする。この場合n=5である。エンコーダーパルス間隔内で初回後(初回含まず)のレーザー光の発光回数は5回であるから、nの値はこれ以上増やせない。したがって、t1=1.0μsで最小発光時間未満となれば、その回のレーザーパルスは一時停止することになる(後述)。このように、n=4で導かれるt1=0.8μsなどある程度大きな値を決めておいて、その値を入れることで1回または2回のトライで遅延時間t1を決定することができる(または一時停止を選択することになる)。t1の値が決まれば、t2の値も(1)式から得られる。もちろんすべての発光間隔が最小発光間隔以上の値となるようにする。
【0080】
また、別の方法としては、たとえば、エンコーダーパルスを跨ぐ発光間隔が定常発光間隔(この例では36.2μs)に近くなるt1をまず選定して、(1)式を満たし、かつ、すべての発光間隔が最小発光間隔以上となるかを確認する。そして、すべての発光間隔が最小発光間隔以上とならない場合は、さらにt1を増やすかまたは減らしてt1およびt2を選定することとしてもよい。
【0081】
図9に戻り説明を続ける。その後のエンコーダーパルスP1~P2の間隔は199.4μsである(18.0+36.0×4+36.2+1.2=199.4μs)。ここでも上記同様に遅延時間t1および初回以降の発光間隔を短縮する短縮時間t2を決定する。
【0082】
エンコーダーパルスP2後の初回発光タイミングtf2は34.4μsである。そのままでは、エンコーダーパルスp2を跨ぐ発光間隔は最小発光間隔36.0μs未満となってしまう。ここでもt1=0.8μs遅延させる。そうすると、エンコーダーパルスP2前の最後のレーザーパルス6番からエンコーダーパルスP2後の初回発光までは、1.2+tf2+t1=1.2+34.4+0.8=36.4μsとなる。その後は、短縮時間t2=0.2μsずつ4回短縮する。そうすると、エンコーダーパルスP2後のレーザーパルス1~2番(1回目)、2~3番(2回目)、3~4番(3回目)、4~5番(4回目)を発光間隔36.0μsで発光させる。その後、制御部12はレーザーパルス間隔を定常状態に戻し36.2μsで発光させる。
【0083】
以後、さらに同様にしては回転速度が速く、エンコーダーパルスの受信後、初回発光タイミングで発光させると、発光間隔が最小発光間隔未満となってしまう場合には、逆に初回発光タイミングを遅延させる。その後のレーザーは発光間隔を最小発光間隔以上かつ定常発光間隔以下となるように調整することでそして遅延分を複数回のレーザー発光で吸収する。
【0084】
一方で、このような処理を行っても、回転速度が速すぎて、最小発光間隔を守れなくなるような場合がある。その場合には、その回のレーザーパルスを一時停止する。たとえば、エンコーダーパルスを跨ぐレーザーパルス間隔が、初回レーザーパルスを最大限遅延させて(
図9の例ではt1=1.0μs)、エンコーダーパルスを跨ぐレーザーパルス間隔を36.0μsとした場合に、その後の複数回のレーザーパルス間隔を36.0μsとしても、遅延分(1.0μs)を吸収できない場合である。このような場合、初回のレーザーパルスを一時停止する。これにより、確実に安全基準を満たすことができる。
【0085】
次に、ポリゴンミラー53の回転速度が定常状態より遅くなった場合を説明する。
【0086】
図10は、ポリゴンミラー53の回転速度が遅くなった場合における、エンコーダーパルスおよびレーザーパルスを部分拡大したタイミングチャートである。
【0087】
ここでも、あらかじめ最大発光間隔として、たとえば、36.8μsを設定しておく。最大発光間隔は、既に説明した回転速度が速くなった場合と同様であり、発光間隔が広くなり過ぎないようにするためである。
【0088】
図10を参照して、ポリゴンミラー53の回転速度が定常状態より遅くなった場合は、エンコーダーパルスの受信後、遅くなった分を次のエンコーダーパルス受信後の初回発光タイミングを遅らせるのである。エンコーダーパルスP0~P1の間隔は、200.8μsであり、定常状態よりも間隔が開いている。このまま初回発光タイミングで発光すると、エンコーダーパルスP1を跨ぐ前後のレーザーパルスの発光間隔は36.8μsを超えてしまう。このまま補正せずにレーザーパルスの発光を続けると、ポリゴンミラーの回転に対して、レーザーパルスが早く出射されてしまうことになる。
【0089】
そこで、発光間隔が開いた分(37.0-36.2=0.8μs)を次のエンコーダーパルスP2を受信後に補正する。このために制御部12は、エンコーダーパルスP2後の初回発光タイミングtf2をその分(0.8μs)遅らせて新tf2に更新する。この例では、初回発光タイミングtf2=34.4μsを0.8μs遅らせて新tf2=35.2μsにする。更新した新tf2=35.2μsはRAM122に記憶する。以後、エンコーダーパルスP2に到達したなら、この新tf2で初回レーザーパルスを発光する。その後は、元の定常状態の発光間隔36.2μsで発光させる。これにより、発光間隔が最大発光間隔を超えるほど回転速度が遅くなった場合に、次のエンコーダーパルス後のレーザーパルスの発光間隔を遅くすることで、同期をとることができる。
【0090】
この場合も、新tf2によりレーザーパルスを発光すると、最小発光間隔未満となるような場合にはその回のレーザーパルスを一時停止して、安全基準を満たすようにする。
【0091】
上述の例においては、最小発光間隔未満となるような場合にレーザーパルスを一時停止することとした。この処理は、たとえば、クロックカウンターの値が最小発光間隔(3600=36.0μs)となる前にレーザー発光指令があった場合に、その指令を取り消すことで、一時停止する。このときクロックカウンターもリセットし、そこからまたカウントを開始して、クロックカウンターの値がレーザー光を発光させる値となれば発光させる。
【0092】
なお、レーザー光源である半導体レーザーとして、レーザー光の光量を可変できるものを使用することで、一時停止に代えて、レーザー光の光量を変えることで、安全基準を満たすようにしてもよい。
【0093】
レーザー光の光量は放射(出射)したレーザー光の出力エネルギーと、物体に照射される露光量とからなる。したがって、レーザー光の光量を変えるにはいずれか一方または両方を変えればよい。
【0094】
図11は、レーザーパルスの出力エネルギーを変更する場合を説明するための説明図である。この図はエンコーダーパルスP1を跨いだ前後のレーザーパルス部分を示していて、エンコーダーパルスの受信タイミングに合わせて、レーザー光の出力を変えている例である。
【0095】
エンコーダー71から受信したエンコーダーパルスの間隔が定常状態より短く、最小発光間隔未満となる可能性が高くなることが予想させる場合、エンコーダーパルスP1受信後の初回発光の出力エネルギーを下げる。たとえば、回転速度が速い場合に、エンコーダーパルス同士の間隔が短く、上述した処理を行っても発光間隔を最小発光間隔以下とできない場合である。このような場合に、制御部12は、
図11に示すように、エンコーダーパルスP1受信後の初回発光(図示レーザーパルス1番)の出力エネルギーを下げる。もちろん、次のエンコーダーパルスを受信した時点で間隔が長くなれば、元のレーザー光の出力エネルギーに戻す。出力エネルギーの低下量は、たとえば、定常状態の出力エネルギーの2/3、半分、さらには1/3、1/4などとしてもよい。このように出力エネルギーを下げると、光量が低下するためレーザー光が届く範囲が短くなるが、近い部分だけでも物体までの距離が得られるようになる。
【0096】
レーザー光のパルス幅を変えることでもレーザー光の光量を変更できる。
図12はレーザーパルスのパルス幅を変更する場合を説明するための説明図である。
【0097】
レーザー光のパルス幅の変更は、パルス状に発光しているレーザーパルス一つひとつの発光時間(露光時間)を変えるのである。たとえばレーザーパルスのパルス幅(そのパルスの発光時間)を短くすれば光量が下がり、逆に、パルス幅(そのパルスの発光時間)を長くすれば光量が上がる。
【0098】
たとえば、回転速度が速い場合に、エンコーダーパルス同士の間隔が短く、上述した処理を行っても発光間隔を最小発光間隔以下とできない場合に、制御部12は、
図12に示すように、エンコーダーパルスP1受信後の初回発光(図示レーザーパルス1番)のパルス幅を他のパルス幅より短くする。もちろん、次のエンコーダーパルスを受信した時点で間隔が長くなれば、元のレーザー光のパルス幅に戻す。パルス幅は、たとえば、定常状態のパルス幅に対して2/3、半分、さらには1/3、1/4などとしてもよい。このようにパルス幅を短くすると、光量が低下するが、この場合はレーザー光の届く範囲は通常と合わらない。したがって、定常状態のレーザー光と同様に物体までの距離が得られる。ただし、パルス幅が短いので、物体の大きさや表面の質によっては反射光が得られない場合もある。
【0099】
このように光量を変えることのできるレーザー光源を使用することで、安全基準を満たし、かつ、一時停止させずに発光タイミングを制御することができる。ただし、光量を変えても安全基準を満たせなくなるような場合には、レーザー光の発光を一時停止する。
【0100】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0101】
本実施形態では、ポリゴンミラー53にその回転角を検出するためのポリゴンミラー回転角検出部を設け、そこから得られるポリゴンミラー53の回転位置と時間からポリゴンミラー53の回転速度が定常回転速度未満か否かを判断する。そして、ポリゴンミラー53の回転速度が速くなっていて、ポリゴンミラー53の回転位置が第1の所定位置に到達後の初回のレーザー光を初回発光タイミングで発光させると、最小発光間隔未満となってしまう場合には、発光タイミングを遅らせるのである。そして、遅延させた分はその後のレーザー発光タイミングを速めることで吸収する。これにより、ポリゴンミラー53の回転速度が速まった場合でも、ポリゴンミラー53の回転速度に合わせて、かつ、安全基準などの最小発光間隔以上となるように、レーザー光を発光させることができる。したがって、回転ムラなど周期性のない回転変動(ランダムな変動)に対応してレーザー光の発光タイミングを合わせることができる。
【0102】
また、ライダーに振動が加わって発生する回転ムラだけでなく、たとえば、複数のミラー面を組み合わせるとき、各面の組み付け公差、部品公差などで生じる、装置固有の周期性のある回転ムラによって生じる誤差も解消することができる。
【0103】
また、ポリゴンの回転ムラの影響をなくすことで複数の面を組み合わせるときの画素位置のずれを解消することができる。
【0104】
以上本発明を適用した実施形態を説明したが、説明のなかで使用した条件や各数値などはあくまでも説明のためのものであり、本発明がこれら条件や数値に限定されるものではない。
【0105】
上述した定常回転速度、定常発光間隔、および定常状態における初回発光タイミングは、設計時にこれらの値を決めてもよいが、実際の製品では微妙な組み立て誤差なども発生する。そこで、ライダーを設置後、実際に動かして、定常状態において定常回転速度、定常発光間隔、および初回発光タイミングを固有の装置ごとに取得して、それらをHDD124などに、その装置固有の値として記憶するようにしてもよい。ライダー動作時には、それらの値をRAM122に読み出して使用する。もちろん組み立て誤差などのない製品を作れば、設計値をそのまま使用することができる。
【0106】
また、初回発光タイミングは、上述のタイミングチャートを用いた説明では、エンコーダーパルスP0~P4ごとに異なる値(tf1=17.2μs、tf2=34.4μs)となっていた。しかし、初回発光タイミングは、常に同じ値となるようにすることもできる。たとえば、エンコーダー71を構成する反射部材72とパルス発光間隔を一定の倍数の関係となるようにすればよい。
【0107】
また、ポリゴンミラー53にエンコーダー71を設けたことで、たとえば、制御部12は、エンコーダー71からの信号が一定時間受信できない場合に、ポリゴンミラー53の回転に異常が発生したものとして、レーザー光の発光をすべて禁止にすることもできる。これにより、回転停止時などに、同じ方向へ向けてレーザーパルスが連続発射されるのを防止することができる。
【0108】
本発明は特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0109】
10 ライダー、
11 投受光ユニット、
12 制御部、
51 半導体レーザー、
53 ポリゴンミラー、
55 フォトダイオード、
56 モーター、
56a モーター軸、
71 ポリゴンミラー用エンコーダー、
72 反射部材、
72a 非反射部材、
73 フォトセンサー、
75 リング部材、
121 CPU、
122 RAM、
123 ROM、
124 HDD、
125 クロック発振器。