(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20220614BHJP
B60C 11/01 20060101ALI20220614BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20220614BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B60C11/12 C
B60C11/01 B
B60C5/00 H
B60C11/03 100B
(21)【出願番号】P 2018088857
(22)【出願日】2018-05-02
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小林 達矢
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147484(JP,A)
【文献】特開平07-276924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
B60C 11/01
B60C 5/00
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤであって、
トレッド部に、最もトレッド端側をタイヤ周方向に連続して延びるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に形成されたショルダー陸部とを含み、
前記ショルダー陸部は、前記トレッド端からタイヤ軸方向外側にトレッド幅の10%の領域である外側領域と、前記トレッド端からタイヤ軸方向内側に前記トレッド幅の10%の領域である中間領域と、前記中間領域と前記ショルダー主溝との間の内側領域を含み、
前記ショルダー陸部には、タイヤ軸方向の成分を有する複数のショルダーサイプが設けられており、
前記外側領域、前記中間領域及び前記内側領域それぞれにおいて、各領域の踏面の全面積に対する各領域に含まれる前記ショルダーサイプの合計開口面積の比をサイプ比率とするとき、前記中間領域の前記サイプ比率は、前記外側領域の前記サイプ比率及び前記内側領域の前記サイプ比率よりも小さ
く、
前記ショルダー陸部は、前記トレッド端を中心としてタイヤ軸方向の両側へ前記トレッド幅の10%の領域であるトレッド端領域を含み、
前記複数のショルダーサイプは、前記トレッド端領域に一端を有する端サイプを含み、
車両への装着の向きが指定されることにより、前記ショルダー陸部は、車両外側に位置する外側ショルダー陸部を含み、
前記外側ショルダー陸部の前記端サイプは、前記一端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向の内側に配され、かつ、タイヤ軸方向の外側へ延びる第1端サイプを含む、
タイヤ。
【請求項2】
前記複数のショルダーサイプは、前記外側ショルダー陸部の前記中間領域を横断する主サイプを含む、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記主サイプは、前記中間領域において、曲線状に延びる、請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記主サイプは、前記トレッド端上において、タイヤ軸方向に対する角度が35~55度である、請求項2又は3に記載のタイヤ。
【請求項5】
タイヤであって、
トレッド部に、最もトレッド端側をタイヤ周方向に連続して延びるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に形成されたショルダー陸部とを含み、
前記ショルダー陸部は、前記トレッド端からタイヤ軸方向外側にトレッド幅の10%の領域である外側領域と、前記トレッド端からタイヤ軸方向内側に前記トレッド幅の10%の領域である中間領域と、前記中間領域と前記ショルダー主溝との間の内側領域を含み、
前記ショルダー陸部には、タイヤ軸方向の成分を有する複数のショルダーサイプが設けられており、
前記外側領域、前記中間領域及び前記内側領域それぞれにおいて、各領域の踏面の全面積に対する各領域に含まれる前記ショルダーサイプの合計開口面積の比をサイプ比率とするとき、前記中間領域の前記サイプ比率は、前記外側領域の前記サイプ比率及び前記内側領域の前記サイプ比率よりも小さく、
前記ショルダー陸部は、前記トレッド端を中心としてタイヤ軸方向の両側へ前記トレッド幅の10%の領域であるトレッド端領域を含み、
前記複数のショルダーサイプは、前記トレッド端領域に一端を有する端サイプを含み、
車両への装着の向きが指定されることにより、前記ショルダー陸部は、車両内側に位置する内側ショルダー陸部を含み、
前記内側ショルダー陸部の前記端サイプは、前記一端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向の内側に配され、かつ、タイヤ軸方向の内側へ延びる第2端サイプと、前記一端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向の外側に配され、かつ、タイヤ軸方向の外側へ延びる第3端サイプとを含む、
タイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部は、前記内側ショルダー陸部とタイヤ軸方向で隣接する内側ミドル陸部を含み、
前記内側ミドル陸部には、前記内側ミドル陸部を横断する内側ミドル横溝が設けられ、
前記内側ミドル横溝は、タイヤ周方向の一方側に突出する第1頂部と、前記第1頂部よりも車両外側に配され、かつ、タイヤ周方向の他方側に突出する第2頂部とを有し、
前記内側ミドル陸部は、タイヤ軸方向に3等分したときに、最も車両外側の第1領域と、前記第1領域に隣接する第2領域とを含み、
前記第1頂部は、前記第2領域に配され、
前記第2頂部は、前記第1領域に配される、請求項5記載のタイヤ。
【請求項7】
前記中間領域の前記サイプ比率は、前記外側領域の前記サイプ比率及び前記内側領域の前記サイプ比率の70%以下である、請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部にショルダー陸部が設けられたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の高性能化に伴い、優れた操縦安定性能を有するタイヤが望まれている。このような観点より、コーナリングパワーを高めることを目的として、例えば、トレッドのゴム厚さを小さくすることが提案されていた。
【0003】
しかしながら、このようなタイヤは、トレッドゴムによって走行時の振動を十分に吸収できず、乗り心地性能やノイズ性能が低減しやすいという問題があった(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出されたもので、操縦安定性能を高めるとともに、乗り心地性能やノイズ性能の低減を抑制し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤであって、トレッド部に、最もトレッド端側をタイヤ周方向に連続して延びるショルダー主溝と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に形成されたショルダー陸部とを含み、前記ショルダー陸部は、前記トレッド端からタイヤ軸方向外側にトレッド幅の10%の領域である外側領域と、前記トレッド端からタイヤ軸方向内側に前記トレッド幅の10%の領域である中間領域と、前記中間領域と前記ショルダー主溝との間の内側領域を含み、前記ショルダー陸部には、タイヤ軸方向の成分を有する複数のショルダーサイプが設けられており、前記外側領域、前記中間領域及び前記内側領域それぞれにおいて、各領域の踏面の全面積に対する各領域に含まれる前記ショルダーサイプの合計開口面積の比をサイプ比率とするとき、前記中間領域の前記サイプ比率は、前記外側領域の前記サイプ比率及び前記内側領域の前記サイプ比率よりも小さい。
【0007】
本発明に係るタイヤは、前記中間領域の前記サイプ比率が、前記外側領域の前記サイプ比率及び前記内側領域の前記サイプ比率の70%以下であるのが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤは、前記ショルダー陸部が、前記トレッド端を中心としてタイヤ軸方向の両側へ前記トレッド幅の10%の領域であるトレッド端領域を含み、前記複数のショルダーサイプは、前記トレッド端領域に一端を有する端サイプを含むのが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤは、車両への装着の向きが指定されることにより、前記ショルダー陸部は、車両外側に位置する外側ショルダー陸部を含み、前記外側ショルダー陸部の前記端サイプは、前記一端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向の内側に配され、かつ、タイヤ軸方向の外側へ延びる第1端サイプを含むのが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤは、前記複数のショルダーサイプが、前記外側ショルダー陸部の前記中間領域を横断する主サイプを含むのが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤは、前記主サイプが、前記中間領域において、曲線状に延びるのが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤは、前記主サイプが、前記トレッド端上において、タイヤ軸方向に対する角度が35~55度であるのが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤは、車両への装着の向きが指定されることにより、前記ショルダー陸部は、車両内側に位置する内側ショルダー陸部を含み、前記内側ショルダー陸部の前記端サイプは、前記一端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向の内側に配され、かつ、タイヤ軸方向の内側へ延びる第2端サイプと、前記一端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向の外側に配され、かつ、タイヤ軸方向の外側へ延びる第3端サイプとを含むのが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤは、前記トレッド部が、前記内側ショルダー陸部とタイヤ軸方向で隣接する内側ミドル陸部を含み、前記内側ミドル陸部には、前記内側ミドル陸部を横断する内側ミドル横溝が設けられ、前記内側ミドル横溝は、タイヤ周方向の一方側に突出する第1頂部と、前記第1頂部よりも車両外側に配され、かつ、タイヤ周方向の他方側に突出する第2頂部とを有し、前記内側ミドル陸部は、タイヤ軸方向に3等分したときに、最も車両外側の第1領域と、前記第1領域に隣接する第2領域とを含み、前記第1頂部は、前記第2領域に配され、前記第2頂部は、前記第1領域に配されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤでは、ショルダー陸部が、トレッド端からタイヤ軸方向外側にトレッド幅の10%の領域である外側領域と、前記トレッド端からタイヤ軸方向内側に前記トレッド幅の10%の領域である中間領域と、前記中間領域と前記ショルダー主溝との間の内側領域とを含んでいる。
【0016】
旋回時の操縦安定性を向上させるためには、旋回時に接地長が長くなる領域である前記中間領域の陸部剛性を高めることが重要である。本発明では、前記中間領域のサイプ比率が、前記外側領域のサイプ比率及び前記内側領域のサイプ比率よりも小さく構成される。このため、前記ショルダー領域の前記中間領域の剛性が相対的に高められ、優れた操縦安定性が発揮される。
【0017】
一方、本発明のタイヤは、前記ショルダー陸部において、前記中間領域に比べれば、旋回時の接地長の増加率が比較的小さい前記外側領域及び前記内側領域では、サイプ比率が、相対的に大きく構成される。このため、これらの領域の剛性が相対的に低下し、乗り心地性能とノイズ性能とが向上する。特に、前記内側領域は、ショルダー主溝と隣接しており、この領域の剛性を低下させると、接地時に内側領域が適度に変形し、ショルダー主溝内での定常波の生成が抑制される。これは、ショルダー主溝内での気柱共鳴音を抑制するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図4】
図1の外側ミドル陸部及び内側ミドル陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、低発熱性のトレッドゴムが配された乗用車用の空気入りタイヤとして好適に利用される。なお、本発明は、乗用車用に限定されるものではなく、例えば、重荷重用や自動二輪車用の空気入りタイヤ、及び、空気が充填されない非空気式タイヤにも採用されうる。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、車両への装着の向きが指定されたトレッドパターンを具えている。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)等に文字やマークで表示されている。
図1において、左側が車両外側に対応し、右側が車両内側に対応している。
【0021】
トレッド部2は、本実施形態では、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Tiと、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Toとを有している。
【0022】
各トレッド端To、Tiは、正規状態のタイヤ1に正規荷重を負荷し、キャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。両トレッド端Ti、To間のタイヤ軸方向の距離がトレッド幅TWである。
【0023】
「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0024】
「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0025】
「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0026】
トレッド部2には、タイヤ周方向に連続して延びる主溝3が設けられる。本実施形態の主溝3は、外側ショルダー主溝3aと内側ショルダー主溝3bと外側クラウン主溝3cと内側クラウン主溝3dとを含んでいる。本実施形態の外側ショルダー主溝3aは、最も外側トレッド端To側に配されている。本実施形態の内側ショルダー主溝3bは、最も内側トレッド端Ti側に配されている。外側クラウン主溝3cは、例えば、外側ショルダー主溝3aとタイヤ赤道Cとの間に配されている。内側クラウン主溝3dは、本実施形態では、タイヤ赤道Cと内側ショルダー主溝3bとの間に配されている。
【0027】
これにより、本実施形態のトレッド部2は、外側ショルダー陸部5Aと内側ショルダー陸部5Bと外側ミドル陸部5Cと内側ミドル陸部5Dとクラウン陸部5Eとが形成される。本実施形態の外側ショルダー陸部5Aは、外側ショルダー主溝3aの車両外側に配されている。本実施形態の内側ショルダー陸部5Bは、内側ショルダー主溝3bの車両内側に配されている。外側ミドル陸部5Cは、本実施形態では、外側ショルダー主溝3aと外側クラウン主溝3cとの間に配されている。内側ミドル陸部5Dは、例えば、内側ショルダー主溝3bと内側クラウン主溝3dとの間に配されている。本実施形態のクラウン陸部5Eは、外側クラウン主溝3cと内側クラウン主溝3dとの間に配されている。
【0028】
各ショルダー陸部5A、5Bは、それぞれ、外側領域Asと中間領域Amと内側領域Aiとを含んでいる。各外側領域Asは、外側トレッド端To又は内側トレッド端Tiからタイヤ軸方向外側にトレッド幅TWの10%の領域である。各中間領域Amは、外側トレッド端To又は内側トレッド端Tiからタイヤ軸方向内側にトレッド幅TWの10%の領域である。各内側領域Aiは、中間領域Amと外側ショルダー主溝3a又は内側ショルダー主溝3bとの間の領域である。
【0029】
外側ショルダー陸部5A及び内側ショルダー陸部5Bは、各トレッド端To、Tiを中心としてタイヤ軸方向の両側へトレッド幅TWの10%の領域であるトレッド端領域Atを含んでいる。
【0030】
発明者らの種々の実験の結果、旋回時、各トレッド端To、Tiからタイヤ軸方向内側にトレッド幅TWの10%の領域は、この領域よりも内側の領域に比して、大きな横力を受ける部分であることが判明した。したがって、例えば、この領域にタイヤ周方向に延びる主溝を設けると、横力を支えることができず、操縦安定性能の向上に不利となることが判明した。したがって、本発明では、各トレッド端To、Tiからタイヤ軸方向内側へトレッド幅TWの10%の領域に中間領域Amが設けられ、中間領域Amのタイヤ軸方向内側に内側領域Aiが設けられ、これらが連なることで操縦安定性能が確保されている。
【0031】
また、旋回時、各トレッド端To、Tiからタイヤ軸方向外側にトレッド幅TWの10%の領域は、旋回時に接地する部分であり、操縦安定性能へ影響を与える部分であることが判明した。このため、本発明では、各トレッド端To、Tiからタイヤ軸方向外側にトレッド幅TWの10%の領域を外側領域Asとしている。
【0032】
外側ショルダー陸部5Aには、タイヤ軸方向の成分を有する複数の外側ショルダーサイプ7が設けられている。このような外側ショルダーサイプ7は、外側ショルダー陸部5Aの剛性を小さくして、走行時の振動の吸収性を高め乗り心地性能やノイズ性能を向上するのに役立つ。本明細書では、サイプ(後述のサイプを含む)は、トレッド部2の踏面2aでの最大開口幅が1.5mm未満の切れ込みとして定義され、最大開口幅が1.5mmを超える溝と区別される。
【0033】
本実施形態では、外側ショルダー陸部5Aにおいて、中間領域Amのサイプ比率Rmは、外側領域Asのサイプ比率Rs及び内側領域Aiのサイプ比率Riよりも小としている。なお、各サイプ比率Rは、外側領域As、中間領域Am及び内側領域Aiそれぞれにおいて、各領域As、Am及びAiの踏面の全面積に対する各領域に含まれる外側ショルダーサイプ7の合計開口面積の比である。各領域As、Am及びAiの踏面の全面積には、各領域As、Am及びAiに配される溝の表面積は含まれない。
【0034】
旋回時の操縦安定性を向上させるためには、旋回時に接地長が長くなる領域である中間領域Amの陸部剛性を高めることが重要である。このため、上述のサイプ比率Rを採用することにより、外側ショルダー陸部5Aの中間領域Amの剛性が相対的に高められ、優れた操縦安定性が発揮される。また、外側ショルダー陸部5Aにおいて、中間領域Amに比べれば、旋回時の接地長の増加率が比較的小さい外側領域As及び内側領域Aiでは、サイプ比率Rs、Riが、相対的に大きく構成される。このため、これらの領域As、Aiの剛性が相対的に低下し、乗り心地性能とノイズ性能とが向上する。特に、内側領域Aiは、外側ショルダー主溝3aと隣接しており、この領域Aiの剛性を低下させると、接地時に内側領域Aiが適度に変形し、外側ショルダー主溝3a内での定常波の生成が抑制される。これは、外側ショルダー主溝3a内での気柱共鳴音を抑制するのに役立つ。
【0035】
本実施形態の内側ショルダー陸部5Bは、タイヤ軸方向の成分を有する複数の内側ショルダーサイプ8が設けられている。このような内側ショルダーサイプ8は、走行時の振動の吸収性を高め乗り心地性能やノイズ性能をさらに向上するのに役立つ。
【0036】
内側ショルダー陸部5Bにおいて、中間領域Amのサイプ比率Rmは、外側領域Asのサイプ比率Rs及び内側領域Aiのサイプ比率Riよりも小さいのが望ましい。これにより、外側ショルダー陸部5Aに設定されたサイプ比率Rによる作用と同じ作用が発揮され、操縦安定性能がさらに高めるとともに、乗り心地性能やノイズ性能の低減が一層抑制される。
【0037】
このように、本実施形態では、外側ショルダー陸部5A及び内側ショルダー陸部5Bにおいて、上述のサイプ比率Rが設定されている。しかしながら、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、旋回走行時に相対的に大きな横力が作用する外側ショルダー陸部5Aのみにサイプ比率Rが設定されても良い。また、内側ショルダー陸部5Bのみにサイプ比率Rが設定されても良い。
【0038】
外側ショルダー陸部5A及び内側ショルダー陸部5Bにおいて、中間領域Amのサイプ比率Rmに対する、外側領域Asのサイプ比率Rs及び内側領域Aiのサイプ比率Riの比であるサイプ比率比が70%以下であるのが望ましい。前記サイプ比率比が70%を超える場合、内側領域Aiや外側領域Asでの乗り心地性能やノイズ性能の低減抑制効果が小さくなる。又は、中間領域Amの陸部剛性が小さくなり、操縦安定性能が悪化するおそれがある。このような観点より、外側ショルダー陸部5A及び内側ショルダー陸部5Bにおいて、前記サイプ比率比は、60%以下がより望ましく、50%以下がさらに望ましい。操縦安定性能及び乗り心地性能やノイズ性能をバランス良く向上させるため、外側ショルダー陸部5Aでは、前記サイプ比率比は、20%以上が望ましい。また、内側ショルダー陸部5Bの前記サイプ比率比は、外側ショルダー陸部5Aの前記サイプ比率比よりも小さいのが望ましい。
【0039】
外側領域Asは、内側領域Aiに比して、旋回走行時、より大きな横力が作用する。このため、外側ショルダー陸部5A及び内側ショルダー陸部5Bにおいて、外側領域Asの剛性を内側領域Aiの剛性に比して高めることが、操縦安定性能のさらなる向上に役立つ。このため、外側ショルダー陸部5A及び内側ショルダー陸部5Bにおいて、外側領域Asのサイプ比率Rsは、内側領域Aiのサイプ比率Riよりも小さいのが望ましい。
【0040】
特に限定されるものではないが、操縦安定性能の高めるために、外側ショルダー陸部5Aの内側領域Aiのタイヤ軸方向の幅We及び内側ショルダー陸部5Bの内側領域Aiのタイヤ軸方向の幅Wjは、例えば、トレッド幅TWの4%~12%であるのが望ましい。
【0041】
各主溝3は、本実施形態では、直線状に延びている。主溝3は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、タイヤ周方向に波状やジグザグ状に延びるものでも良い。
【0042】
各主溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの2%~10%が望ましい。各主溝3の溝深さ(図示省略)は、例えば、5~12mmが望ましい。
【0043】
図2は、
図1の外側ショルダー陸部5Aの拡大図である。
図2に示されるように、外側ショルダー陸部5Aでは、外側ショルダーサイプ7は、中間領域Amを横断する主サイプ7Aと、トレッド端領域Atに一端を有する端サイプ7Bとを含んでいる。端サイプ7Bは、接地する機会が多くかつとりわけ大きな横力が作用するトレッド端領域Atの剛性の確保と、振動吸収効果とをバランス良く発揮する。
【0044】
主サイプ7Aは、中間領域Amにおいて曲線状に延びている。このような主サイプ7Aは、横力によるサイプの開き(変形)を抑制するので、中間領域Amの陸部剛性を高く維持するため、操縦安定性能の向上に役立つ。
【0045】
主サイプ7Aは、本実施形態では、中間領域Amにおいて、タイヤ周方向の一方側(図では上側)に凸の円弧となる第1円弧状部9aと、第1円弧状部9aとは逆側(図では下側)に凸の円弧となる第2円弧状部9bとを含んでいる。このような主サイプ7Aは、上述の作用を効果的に発揮させる。
【0046】
主サイプ7Aは、例えば、外側ショルダー主溝3aと外側領域Asの車両外側の一端T1とを継いでいる。このような主サイプ7Aは、外側領域Asのサイプ比率Rs及び内側領域Aiのサイプ比率Riを大きくして、ノイズ性能や乗り心地性能を向上しうる。
【0047】
主サイプ7Aは、外側トレッド端To上において、タイヤ軸方向に対する角度θaが35~55°であるのが望ましい。前記角度θaが35度未満の場合、外側ショルダー陸部5Aの外側トレッド端To近傍のタイヤ軸方向の剛性が高く維持され、旋回時、外側領域Asの変形が抑制されるので、乗り心地性能やノイズ性能の低減を抑制できないおそれがある。前記角度θaが55度を超える場合、外側ショルダー陸部5Aの外側トレッド端To近傍のタイヤ軸方向の剛性が小さくなり、操縦安定性能が低下するおそれがある。
【0048】
端サイプ7Bは、一端10aが外側トレッド端Toよりもタイヤ軸方向の内側に配され、かつ、タイヤ軸方向の外側に延びる第1端サイプ10を含んでいる。第1端サイプ10は、本実施形態では、外側領域Asの外端T1を超えて延びている。換言すると、第1端サイプ10は、外側領域Asを横断して延びている。このような第1端サイプ10は、外側領域Asの剛性を低下させるのに役立つ。第1端サイプ10は、例えば、直線状に延びているので、大きな横力が作用する外側ショルダー陸部5Aの過度の剛性低下を抑制する。
【0049】
外側ショルダーサイプ7は、本実施形態では、セミオープンタイプの外側ショルダー副サイプ7Cをさらに含んでいる。本実施形態の外側ショルダー副サイプ7Cは、直線状に延びている。外側ショルダー副サイプ7Cは、本実施形態では、外側ショルダー主溝3aから車両外側に向かって延びて内側領域Ai内で終端している。このような外側ショルダーサイプ7は、中間領域Amの剛性を高く維持すると共に、外側ショルダー主溝3a内での定常波の生成を効果的に抑制する。
【0050】
外側ショルダー陸部5Aは、本実施形態では、外側ショルダー陸部5Aを横断する外側ショルダー横溝11が設けられている。このような外側ショルダー横溝11は、外側ショルダー陸部5Aの振動吸収効果を高めるので、外側ショルダー主溝3a内での気柱共鳴音を低減する。
【0051】
外側ショルダー横溝11は、本実施形態では、トレッド端領域Atよりもタイヤ軸方向内側に配される幅狭部11aと、トレッド端領域Atを含みトレッド端領域Atの車両外側で、幅狭部11aよりも大きな溝幅を有する幅広部11bとを含んでいる。このような外側ショルダー横溝11は、外側領域Asの踏面の面積を小さくして、内側領域Aiのサイプ比率Riを外側領域Asのサイプ比率Rsよりも小さくするのに役立つ。
【0052】
外側ショルダー横溝11は、本実施形態では、外側ショルダーサイプ7と同じ向きに傾斜している。具体的には、外側ショルダー横溝11は、第1端サイプ10及び外側ショルダー副サイプ7Cと実質的に同じ角度で傾斜している。前記「実質的」とは、外側ショルダー横溝11のタイヤ軸方向に対する角度θ2と外側ショルダーサイプ7の第1端サイプ10及び外側ショルダー副サイプ7Cのタイヤ軸方向に対する角度θ1との差の絶対値|θ1-θ2|が10度以下であることをいう。
【0053】
図3は、
図1の内側ショルダー陸部5Bの拡大図である。
図3に示されるように、内側ショルダー陸部5Bは、内側ショルダーサイプ8が、トレッド端領域Atに一端を有する端サイプ8Aを含んでいる。
【0054】
端サイプ8Aは、本実施形態では、第2端サイプ13と第3端サイプ14とを含んでいる。本実施形態の第2端サイプ13は、一端13eが内側トレッド端Tiよりもタイヤ軸方向の内側に配され、かつ、タイヤ軸方向の内側へ延びている。本実施形態の第3端サイプ14は、一端14eが内側トレッド端Tiよりもタイヤ軸方向の外側に配され、かつ、タイヤ軸方向の外側へ延びている。また、本実施形態の内側ショルダー陸部5Bは、第2端サイプ13の前記一端13eと第3端サイプ14の前記一端14eとの間には、タイヤ周方向において、他のサイプが設けられていない。このように、本実施形態の内側ショルダー陸部5Bでは、第2端サイプ13の一端13eと第3端サイプ14の一端14eとの間にサイプがタイヤ周方向に設けられない領域Bが形成される。本実施形態では、領域Bは、中間領域Am内において、内側トレッド端Tiよりもタイヤ軸方向内側に設けられている。このような領域Bは、内側ショルダー陸部5Bの中間領域Amの剛性を大きく維持して、操縦安定性能の向上に役立つ。
【0055】
第2端サイプ13は、本実施形態では、内側ショルダー主溝3bに連通している。このような第2端サイプ13は、内側ショルダー主溝3b内での気柱共鳴を抑制する。第2端サイプ13は、例えば、直線状にのびかつタイヤ軸方向に対して一方側に傾斜している。なお、第2端サイプ13はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、ジグザグ状や波状に延びても良い。
【0056】
第3端サイプ14は、本実施形態では、第2端サイプ13を滑らかに車両内側に延長させた仮想線13c上に配されている。このような第3端サイプ14は、内側ショルダーサイプ8の開き(変形)を促進して、外側領域Asや内側領域Aiの陸部剛性を低下させて、乗り心地性能やノイズ性能の向上に役立つ。
【0057】
内側ショルダーサイプ8は、さらに、トレッド端領域Atよりもタイヤ赤道C側に配される内側ショルダー副サイプ15を含んでいる。内側ショルダー副サイプ15は、本実施形態では、内側ショルダー主溝3bから車両内側に向かって延び中間領域Am内で終端している。換言すると、内側ショルダー副サイプ15は、内側領域Aiを横断している。このため、内側ショルダー副サイプ15は、内側ショルダー主溝3b内の気柱共鳴音の抑制に役立つ。
【0058】
内側ショルダー副サイプ15は、例えば、第2端サイプ13とタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。これにより、内側領域Aiの変形を促進して、乗り心地性能を高めるとともに、内側ショルダー主溝3b内での定常波の生成を抑制する。このような作用を効果的に発揮させるために、第2端サイプ13及び内側ショルダー副サイプ15は、本実施形態では、平行に延びている。
【0059】
内側ショルダー副サイプ15は、内側ショルダー主溝3bの溝壁を面取りした面取り部16に連なっている。面取り部16は、内側ショルダー主溝3bの溝壁近傍の剛性段差を大きくするので、内側ショルダー陸部5Bの内側領域Aiの変形を促進して、内側ショルダー主溝3b内での定常波の生成をより抑制する。
【0060】
面取り部16は、特に限定されるものではないが、タイヤ軸方向の幅wが、内側領域Aiのタイヤ軸方向の幅wの10%~20%が望ましい。また、面取り部16のタイヤ周方向の長さLは、内側ショルダー副サイプ15、15間のタイヤ周方向ピッチPの10%~25%が望ましい。面取り部16の最大高さ(図示省略)は、例えば、内側ショルダー主溝3bの深さの25%~75%が望ましい。
【0061】
内側ショルダー陸部5Bは、内側ショルダー横溝17が設けられている。本実施形態の内側ショルダー横溝17は、内側ショルダー陸部5B内において、直線状に延びている。内側ショルダー横溝17は、本実施形態では、内側ショルダーサイプ8と同じ向きに傾斜している。内側ショルダー横溝17は、内側ショルダーサイプ8と実質的に同じ角度で傾斜している。前記「実質的」とは、内側ショルダー横溝17のタイヤ軸方向に対する角度θ4と内側ショルダーサイプ8の第2端サイプ13のタイヤ軸方向に対する角度θ3との差の絶対値|θ3-θ4|が10度以下であることをいう。
【0062】
内側ショルダー横溝17は、例えば、内側ショルダー陸部5Bを横断する第1内側ショルダー横溝17Aと、外側領域Asよりも車両内側からタイヤ赤道C側に向かって延び内側ショルダー陸部5B内で終端する第2内側ショルダー横溝17Bとを含んでいる。
【0063】
第2内側ショルダー横溝17Bは、本実施形態では、トレッド端領域Atと内側領域Aiとの間で終端し、内側ショルダー副サイプ15に連通している。このような第2内側ショルダー横溝17Bは、内側ショルダー副サイプ15の変形を促進して、内側ショルダー主溝3b内での定常波の生成をさらに抑制する。
【0064】
図4は、外側ミドル陸部5C及び内側ミドル陸部5Dの拡大図である。
図4に示されるように、外側ミドル陸部5Cは、タイヤ軸方向に延びる外側ミドル横溝20と、タイヤ軸方向に延びる外側ミドルサイプ21とを含んで設けられている。
【0065】
外側ミドル横溝20は、外側クラウン主溝3cから車両外側に向かって延び、外側ミドル陸部5C内で終端している。外側ミドル横溝20は、タイヤ軸方向に沿って直線状に延びる直線状部20aと、直線状部20aに滑らかに連なって円弧状に延びる円弧状部20bとを含んでいる。このような外側ミドル横溝20は、外側ミドル陸部5Cの剛性を適度に変形させる。
【0066】
外側ミドルサイプ21は、タイヤ軸方向に対して傾斜している。外側ミドルサイプ21は、本実施形態では、第1外側ミドルサイプ22と、第2外側ミドルサイプ23と、第3外側ミドルサイプ24とを含んでいる。第1外側ミドルサイプ22は、外側ショルダー主溝3aからタイヤ赤道C側に延びて外側ミドル陸部5Cで終端している。第2外側ミドルサイプ23は、外側ショルダー主溝3aからタイヤ赤道C側に向かって延びて円弧状部20bに連通している。第3外側ミドルサイプ24は、外側クラウン主溝3cから車両外側に延びて外側ミドル陸部5C内で終端している。
【0067】
第1外側ミドルサイプ22は、タイヤ周方向に対して一方側(図では上側)に凸の円弧状で形成されている。第1外側ミドルサイプ22は、タイヤ軸方向に対して傾斜してる。第2外側ミドルサイプ23は、第1外側ミドルサイプ22と同じ向きに傾斜し、直線状に延びている。第3外側ミドルサイプ24は、第1外側ミドルサイプ22とは逆向き(図では下側)に凸の円弧状で形成されている。第3外側ミドルサイプ24は、円弧状部20bと同じ向きに傾斜している。このような外側ミドルサイプ21は、外側ショルダー主溝3a及び外側クラウン主溝3c内での気柱共鳴音を抑制する。
【0068】
外側ミドル陸部5Cは、第1外側ミドルサイプ22のタイヤ赤道C側の一端22eと第3外側ミドルサイプ24の車両外側の一端24eとの間は、タイヤ周方向において、サイプが設けられていない領域Dが配される。これにより、外側ミドル陸部5Cの内側の剛性が高く確保されるので、優れた操縦安定性能が発揮される。
【0069】
内側ミドル陸部5Dは、タイヤ軸方向に3等分したときに、最も車両外側の第1領域A1と、第1領域A1に隣接する第2領域A2と、最も車両内側の第3領域A3とに区分される。
【0070】
内側ミドル陸部5Dは、本実施形態では、内側ミドル横溝25と内側ミドルサイプ26とを含んでいる。内側ミドル横溝25は、例えば、内側ミドル陸部5Dを横断する第1内側ミドル横溝25Aと、内側ショルダー主溝3bからタイヤ赤道C側に向かって延び、内側ミドル陸部5D内で終端する第2内側ミドル横溝25Bとを含んでいる。
【0071】
第1内側ミドル横溝25Aは、タイヤ周方向の他方側に突出する第1頂部27aと、第1頂部27aよりも車両外側に配され、かつ、タイヤ周方向の一方側に突出する第2頂部27bとを有して屈曲状に延びている。このような第1内側ミドル横溝25Aは、内側ミドル陸部5Dの陸部剛性を低減して、乗り心地性能やノイズ性能を高めるのに役立つ。
【0072】
第1頂部27aは、第2領域A2に配され、第2頂部27bは、第1領域A1に配される。第1頂部27a及び第2頂部27bは、これらが配された近傍の領域の剛性を相対的に低下させる。本実施形態では、第1頂部27a及び第2頂部27bが、内側ミドル陸部5Dのタイヤ赤道C側に配されることにより、内側ミドル陸部5Dのタイヤ軸方向外側の剛性が高く確保される。これにより、操縦安定性能が向上する。
【0073】
第2内側ミドル横溝25Bは、本実施形態では、タイヤ周方向の他方側に突出する頂部28を有して屈曲して延びている。頂部28は、第2領域A2に設けられ、第3領域A3には設けられていない。これにより、上述の作用が、より効果的に発揮される。
【0074】
本実施形態の内側ミドルサイプ26は、内側ミドル陸部5Dを横断しかつ円弧状にのびる円弧状サイプ26Aと、タイヤ軸方向に対して屈曲して延びる屈曲状サイプ26Bとを含んでいる。
【0075】
円弧状サイプ26Aは、タイヤ周方向の一方側に凸の円弧を有する第1円弧状サイプ30aと、第1円弧状サイプ30aとは逆向きに凸の円弧を有する第2円弧状サイプ30bとを含んでいる。このような円弧状サイプ26Aは、乗り心地性能とノイズ性能とを向上する。第1円弧状サイプ30aと第2円弧状サイプ30bとは、本実施形態では、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0076】
第2円弧状サイプ30bは、本実施形態では、内側ショルダー主溝3bの溝壁を切り欠いた面取り部31に連なっている。これにより、内側ショルダー主溝3bの溝壁近傍の剛性段差が大きくなり、さらに、内側ショルダー主溝3b内での定常波の生成が抑制される。
【0077】
本実施形態では、第1円弧状サイプ30aは、第2円弧状サイプ30bとは異なって、面取り部を介することなく、内側ショルダー主溝3bに連なっている。第1円弧状サイプ30aは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、面取り部に連なっていても良い。
【0078】
円弧状サイプ26Aは、本実施形態では、車両内側に向かってタイヤ周方向の他方側へ連続して傾斜している。このような円弧状サイプ26Aは、内側ミドル陸部5Dの陸部剛性の過度の低減を抑制して、操縦安定性能を高く維持する。
【0079】
屈曲状サイプ26Bは、第2内側ミドル横溝25Bと内側クラウン主溝3dとを継いでいる。このような屈曲状サイプ26Bは、内側ミドル陸部5Dの内側クラウン主溝3d側の変形を促進する。
【0080】
図5は、クラウン陸部5Eの拡大図である。
図5に示されるように、本実施形態のクラウン陸部5Eは、クラウン横溝35とクラウンサイプ36とが設けられている。
【0081】
本実施形態のクラウン横溝35は、第1クラウン横溝35Aと第2クラウン横溝35Bとを含んでいる。本実施形態の第1クラウン横溝35Aは、外側クラウン主溝3cから車両内側に向かって延びクラウン陸部5E内で終端している。本実施形態の第2クラウン横溝35Bは、内側クラウン主溝3dから車両外側に向かって延びクラウン陸部5E内で終端している。
【0082】
クラウン横溝35は、本実施形態では、直線状に延びて、主溝3の溝壁を切り欠いた面取り部37に連なっている。面取り部37は、第1クラウン横溝35Aと外側クラウン主溝3cとを継ぐ第1クラウン面取り部37Aと、第2クラウン横溝35Bと内側クラウン主溝3dとを継ぐ第2クラウン面取り部37Bとを含んでいる。
【0083】
第1クラウン横溝35Aの車両内側の内端35aは、第2クラウン横溝35Bの車両外側の内端35bよりも車両内側に位置している。換言すると、タイヤ周方向に見て、第1クラウン横溝35Aと第2クラウン横溝35Bとが重なる重複部38が設けられている。
【0084】
重複部38は、タイヤ赤道Cよりも車両外側に位置している。これにより、クラウン陸部5Eでは、車両内側よりも車両外側において、より適度に変形するので、内側クラウン主溝3dよりもノイズ性能に影響を与える車両外側の外側クラウン主溝3c内での気柱共鳴音が抑制される。
【0085】
本実施形態のクラウンサイプ36は、クラウン横溝35に連なって直線状に延びている。クラウンサイプ36は、第1クラウン横溝35Aと内側クラウン主溝3dと連通する第1クラウンサイプ36Aと、第2クラウン横溝35Bと外側クラウン主溝3cとを連通する第2クラウンサイプ36Bとを含んでいる。このようなクラウンサイプ36は、各クラウン主溝3c、3dの変形を促進する。
【0086】
以上、本発明の実施形態について、詳述したが、本発明は例示の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変形して実施し得るのは言うまでもない。
【実施例】
【0087】
図1の基本パターンを有するサイズ265/50R22の乗用車空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの操縦安定性能、乗り心地性能及びノイズ性能がテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0088】
<操縦安定性能・乗り心地性能・ノイズ性能>
下記テスト車両に各試供タイヤが装着され、テストドライバーが乾燥アスファルト路面や不整地路面のテストコースを走行した。このときの旋回時の安定性に関する操縦安定性能、縦バネに関する乗り心地性能及びタイヤ騒音に関するノイズ性能が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1の値を100とする評点で表示されている。数値が大きい程、各種性能が優れており、また、95以上は良と判断できる。
装着リム:22×8.5J
タイヤ内圧:230kPa
タイヤ装着位置:全輪
テスト車両:排気量3700ccのSUV
テストの結果などが表1に示される。
【0089】
【0090】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、操縦安定性能が高められるとともに、乗り心地性能やノイズ性能の低減が抑制されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0091】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 ショルダー主溝
5 ショルダー横溝
10 ショルダーサイプ
As 外側領域
Am 中間領域
Ai 内側領域
Rs、Rm、Ri サイプ比率