(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220614BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20220614BHJP
G03G 21/06 20060101ALI20220614BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20220614BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G15/02 101
G03G15/02 102
G03G21/06
G03G21/16 165
G03G21/16 190
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2018118590
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 久
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-085888(JP,A)
【文献】特開2011-170101(JP,A)
【文献】特開平04-343373(JP,A)
【文献】特開2004-117960(JP,A)
【文献】特開平10-186976(JP,A)
【文献】特開2015-135469(JP,A)
【文献】特開平06-324526(JP,A)
【文献】特開2013-195945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/02
G03G 21/06
G03G 21/16
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に構成された像担持体と、
前記像担持体に当接することにより前記像担持体を清掃するクリーニング部と、
前記クリーニング部に対して前記像担持体の回転方向の下流側に配置され、前記像担持体を帯電する第一帯電部と、
前記第一帯電部に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部の結果に応じて前記クリーニング部の寿命を検知する第三制御部と、
を備え、
前記第一帯電部は、前記クリーニング部に設けられており、
前記第一帯電部により電圧が前記像担持体に印加されることにより、前記クリーニング部が前記像担持体に押し付けられる、画像形成装置。
【請求項2】
前記第一帯電部は、シート状である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第一帯電部の材料は、シリコンである、請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第一帯電部によりマイナス極性の電圧が前記像担持体に印加される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第一帯電部に対して前記回転方向の下流側に配置され、前記像担持体を帯電する第二帯電部をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記クリーニング部は、前記像担持体に当接される弾性部と、前記弾性部を支持する板バネとを含み、
前記第一帯電部は、前記弾性部に設けられている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記クリーニング部は、前記像担持体に当接される弾性部と、前記弾性部を支持する板バネとを含み、
前記第一帯電部は、前記板バネに接合されて設けられている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記クリーニング部は、前記板バネと接合している保持体をさらに含み、
前記第一帯電部は、前記像担持体の軸方向にみて、前記板バネと前記保持体との接合部分に対して前記弾性部側に取付けられている、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第一帯電部に電圧を印加する電源部と、
記録媒体の印刷枚数に応じて、前記電源部を制御する第一制御部と、をさらに備える、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第一帯電部に電圧を印加する電源部と、
前記クリーニング部の周辺の温度および湿度の少なくとも一方の変化に応じて、前記電源部を制御する第二制御部と、をさらに備える、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記クリーニング部は、前記像担持体に当接される弾性部と、前記弾性部を支持する板バネとを含み、
前記像担持体の軸方向に見て、前記板バネの先端は、前記弾性部の先端に対して突出して設けられている、請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記板バネの前記先端は、前記像担持体との間で放電が生じないように設けられている、請求項
11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記板バネの前記先端は、弾性部材により覆われている、請求項
11または請求項
12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記クリーニング部は、前記像担持体に当接される弾性部と、前記弾性部を支持する板バネとを含み、
前記像担持体の軸方向に見て、前記弾性部の先端は、前記板バネの先端に対して突出して設けられている、請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置において、像担持体を清掃するクリーニングブレードに関する技術が、特開2002-132022号公報(特許文献1)、および特開2004-85888号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-132022号公報
【文献】特開2004-85888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1および上記特許文献2に開示されるクリーニングブレードが、長期間に亘って使用されると、ブレードが摩耗し清掃能力が低下する。清掃能力が低下すると、拭き残しの発生等により画像ノイズが生じる場合がある。そのため、ブレードの清掃能力が低下した場合、クリーニングブレードを交換する必要がある。
【0005】
クリーニングブレードの交換頻度を小さくできれば、画像形成装置のコストを抑制することができる。そのため、クリーニングブレードの交換頻度を小さくすることが求められている。
【0006】
本発明の目的は、コストを抑制できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る画像形成装置は、像担持体と、第一帯電部と、クリーニング部とを備えている。上記像担持体は、回転可能に構成されている。上記クリーニング部は、上記像担持体に当接することにより上記像担持体を清掃する。上記第一帯電部は、上記クリーニング部に対して上記像担持体の回転方向の下流側に配置されている。上記第一帯電部は、上記像担持体を帯電する。上記第一帯電部は、上記クリーニング部に設けられている。上記第一帯電部により電圧が上記像担持体に印加されることにより、上記クリーニング部が上記像担持体に押し付けられる。
【0008】
上記画像形成装置において、上記第一帯電部は、シート状である。
上記画像形成装置において、上記第一帯電部の材料は、シリコンである。
【0009】
上記画像形成装置において、上記第一帯電部によりマイナス極性の電圧が上記像担持体に印加される。
【0010】
上記画像形成装置において、上記第一帯電部に対して上記回転方向の下流側に配置され、上記像担持体を帯電する第二帯電部をさらに備える。
【0011】
上記画像形成装置において、上記クリーニング部は、上記像担持体に当接される弾性部と、上記弾性部を支持する板バネとを含んでいる。上記第一帯電部は、上記弾性部に設けられている。
【0012】
上記画像形成装置において、上記クリーニング部は、上記像担持体に当接される弾性部と、上記弾性部を支持する板バネとを含んでいる。上記第一帯電部は、上記板バネに接合されて設けられている。
【0013】
上記画像形成装置において、上記クリーニング部は、上記板バネと接合している保持体をさらに含んでいる。上記第一帯電部は、上記像担持体の軸方向にみて、上記板バネと上記保持体との接合部分に対して上記弾性部側に取付けられている。
【0014】
上記画像形成装置は、電源部と、第一制御部とをさらに備えている。電源部は、上記第一帯電部に電圧を印加する。第一制御部は、記録媒体の印刷枚数に応じて、上記電源部を制御する。
【0015】
上記画像形成装置は、上記第一帯電部に電圧を印加する電源部と、上記クリーニング部の周辺の温度および湿度の少なくとも一方の変化に応じて、上記電源部を制御する第二制御部と、をさらに備えている。
【0016】
上記画像形成装置は、上記第一帯電部に流れる電流を検出する電流検出部と、上記電流検出部の結果に応じて上記クリーニング部の寿命を検知する第三制御部と、をさらに備えている。
【0017】
上記画像形成装置において、上記クリーニング部は、上記像担持体に当接される弾性部と、上記弾性部を支持する板バネとを含んでいる。上記像担持体の軸方向に見て、上記板バネの先端は、上記弾性部の先端に対して突出して設けられている。
【0018】
上記画像形成装置において、上記板バネの上記先端は、上記像担持体との間で放電が生じないように設けられている。
【0019】
上記画像形成装置において、上記板バネの上記先端は、弾性部材により覆われている。
上記画像形成装置において、上記クリーニング部は、上記像担持体に当接される弾性部と、上記弾性部を支持する板バネとを含んでいる。上記像担持体の軸方向に見て、上記弾性部の先端は、上記板バネの先端に対して突出して設けられている。
【発明の効果】
【0020】
本開示に従えば、コストを抑制できる画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】除電シートに用いる各材料ごとの印加電圧に対する静電吸着力の関係を示す図である。
【
図4】適正な除電電圧の範囲を決定するために行った試験の結果を示す図である。
【
図5】除電能力とクリーニング能力との両方を担保するための除電シートの印加電圧Veの範囲を示す図である。
【
図6】実施の形態2の作像ユニットの概略図である。
【
図7】実施の形態3の作像ユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、画像形成装置として、電子写真方式を採用したいわゆるタンデム型のカラープリンターおよびこれに具備された画像形成装置を例示して説明を行なう。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0023】
(実施の形態1)
<画像形成装置100>
図1は、実施の形態の画像形成装置100の概略図である。
図1を参照して、実施の形態の画像形成装置100の概略的な構成および動作について説明する。
【0024】
画像形成装置100は、装置本体2と、収容部9と、制御装置101とを主として備えている。装置本体2は、記録媒体としての用紙Sに画像を形成するための部位である画像形成部2Aと、画像形成部2Aに用紙Sを供給するための部位である給紙部2Bとを含んでいる。収容部9は、画像形成部2Aに供給するための用紙Sを収納するものであり、給紙部2Bに着脱自在に設けられている。
【0025】
画像形成装置100の内部には、複数のローラー3が設置されており、これにより用紙Sが所定の方向に沿って搬送される搬送経路4が、上述した画像形成部2Aおよび給紙部2Bに跨って構築されている。
図1中に示すように、装置本体2には、画像形成部2Aに用紙Sを供給するための手差しトレイ9aが別途設けられていてもよい。
【0026】
画像形成部2Aは、たとえばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナー像を形成可能な作像ユニット5と、作像ユニット5に含まれる像担持体11を露光するための露光ユニット6と、作像ユニット5に張架された中間転写ベルト7aと、搬送経路4上であってかつ中間転写ベルト7aの走路上に設けられた二次転写部7と、ベルトクリーニング部8と、二次転写部7よりも下流側の部分の搬送経路4上に設けられた、定着装置1とを主として備えている。
【0027】
制御装置101は、画像形成装置100全体を制御する。制御装置101は、露光ユニット6に用紙Sに形成される画像に応じた信号を送信する。露光ユニット6は、制御装置101からの信号に基づいて、各色の露光手段(ポリゴンミラーとレーザー用いたものやLEDのライン発光素子)のそれぞれを駆動させる。
【0028】
作像ユニット5は、回転可能に構成された像担持体11を含んでいる。作像ユニット5は、露光ユニット6からの露光を受けてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナー像あるいはブラック(K)のみからなるトナー像を像担持体11の表面に形成される。上記各色のトナー像は、各一次転写ローラー12によって中間転写ベルト7aに転写される(いわゆる一次転写)。これにより、中間転写ベルト7aには、カラートナー像あるいはモノクロトナー像が形成されることになる。作像ユニット5についての詳細は後述する。
【0029】
中間転写ベルト7aは、中間転写ベルト7aの表面に形成されたカラートナー像あるいはモノクロトナー像を二次転写部7へと移送し、給紙部2Bから二次転写部7へと搬送されてきた用紙Sとともに二次転写部7において圧接される。これにより、中間転写ベルト7aの表面に形成されたカラートナー像あるいはモノクロトナー像が用紙Sへと転写される(いわゆる二次転写)。
【0030】
二次転写部7により用紙Sにカラートナー像あるいはモノクロトナー像を転写した後、用紙Sを曲率分離した中間転写ベルト7aは、ベルトクリーニング部8により残留トナーが除去される。
【0031】
カラートナー像あるいはモノクロトナー像が転写された用紙Sは、その後、定着装置1によって加圧および加熱され、用紙S上に形成されたトナー像が定着される。これにより、用紙Sにカラー画像あるいはモノクロ画像が形成されることになり、当該カラー画像あるいはモノクロ画像が形成された用紙Sは、その後、装置本体2から排出される。
【0032】
<作像ユニット5>
図2は、
図1に示す領域IIの拡大概略図である。
図2では、像担持体11周辺の拡大図を概略的に図示している。
図2では、中間転写ベルト7aの記載を省略している。
図2中の回転方向DR1は、像担持体11の回転方向である。
【0033】
作像ユニット5は、第一帯電部と、クリーニング部20と、第二帯電部15と、現像装置13とをさらに含んでいる。クリーニング部20、第一帯電部(後述する除電シート21)、第二帯電部15、現像装置13、および一次転写ローラー12は、回転方向DR1に沿ってこの順に配置されている。
【0034】
実施の形態において、第一帯電部は、シート状の形状を有している。実施の形態において、第一帯電部は、除電シート21である。除電シート21は、像担持体11を帯電する。除電シート21により、マイナス極性の電圧が像担持体11に印加される。除電シート21は、像担持体11の電位を均一にするべく像担持体11に電圧を印加し、電位ムラを除去する(除電)。除電シート21の詳細については後述する。
【0035】
第二帯電部15は、除電シート21に対して回転方向DR1の下流側に配置されている。第二帯電部15は、像担持体11を帯電する。第二帯電部15が像担持体11を帯電した後に、露光ユニット6が像担持体11に向かって発光することにより、像担持体11の表面上に静電潜像が形成される。
【0036】
現像装置13は、像担持体11に現像剤を供給する。これにより、像担持体11の表面にトナー像が形成される。トナー像は、現像装置13に対して回転方向DR1の下流側に配置された一次転写ローラー12によって、図示しない中間転写ベルト7aに一次転写される。一次転写後の像担持体11の表面には、中間転写ベルト7aに転写されなかったトナー(転写残トナー)が残存する。
【0037】
一次転写ローラー12に対して回転方向DR1の下流側に配置されたクリーニング部20は、転写残トナーを清掃する。クリーニング部20は、像担持体11に当接することにより像担持体11を清掃する。
【0038】
クリーニング部20は、弾性部25と、板バネ24と、保持体23とを有している。弾性部25は、弾性体から構成されている。弾性部25は、板状の形状を有している。弾性部25は、像担持体11の表面に当接されている。弾性部25は、先端25aを有している。先端25aは、像担持体11の軸方向に見て、像担持体11に近い方の端部である。弾性部25は、板バネ24に接合されている。
【0039】
板バネ24は、板状の形状を有している。板バネ24は、弾性部25を支持している。板バネ24は、先端24aを有している。先端24aは、像担持体11の軸方向に見て、像担持体11に近い方の端部である。像担持体11の軸方向に見て、先端24aは、弾性部25の先端25aに対して突出して設けられている。先端24aは、先端25aよりも保持体23から離れて設けられている。
【0040】
先端24aは、像担持体11との間で放電が生じないように設けられている。先端24aと像担持体11の表面との距離(
図2中のd)は、パッシェン則により放電しない程度にその長さが保たれている。先端24aは、弾性部材により覆われていることが好ましい。
【0041】
保持体23の位置は、固定されている。保持体23は、板バネ24を保持している。保持体23は、板バネ24と接合されている。保持体23には、板バネ24と保持体23とが接合している接合領域23aが形成されている。
【0042】
(除電シート21)
除電シート21は、クリーニング部20に設けられている。除電シート21は、固定されている一端21a、および自由端である他端21bを有している。一端21aは、板バネ24に接合されている。除電シート21は、板バネ24に接合されて設けられている。除電シート21は、たとえば導電性のある部材で板バネ24に接合されている。除電シート21と板バネ24との接合態様は、たとえば溶接、接着剤および銅性のテープ等による態様があるが、溶接が好ましい。
【0043】
他端21bは、像担持体11の表面と接触している。像担持体11が回転している際、除電シート21は、像担持体11の表面に沿うようにしなって変形する。他端21bの先端は、回転方向DR1の下流側を向く。像担持体11が回転している際、他端21bは、像担持体11の表面と摺動する。
【0044】
他端21bは、弾性部25と像担持体11との接触部25cに対して回転方向DR1の下流側に設けられている。除電シート21は、クリーニング部20(弾性部25)に対して回転方向DR1の下流側に配置されている。
【0045】
除電シート21は、像担持体11の軸方向にみて、板バネ24と保持体23との接合部分(接合領域23a)に対して弾性部25側に取付けられている。除電シート21の一端21aは、接合領域23aから弾性部25側に離れて設けられている。一端21aは、像担持体11の軸方向にみて、接合領域23aおよび弾性部25の間に設けられている。
【0046】
(除電シート21の静電吸着力)
画像形成装置100は、電源部22をさらに備えている。除電シート21は、電源部22に電気的に接続されている(
図2では電気的に接続されている状態を点線で図示している)。電源部22は、除電シート21に電圧を印加する。除電シート21に電圧が印加される際には、板バネ24全体にも電圧がかかる。除電シート21に電圧が印加されると、除電シート21の他端21bと像担持体11との間に静電吸着力が生じる。
【0047】
他端21bと像担持体11とが吸着したまま、像担持体11が回転することにより、他端21bと像担持体11との接点における接線方向に他端21bが引張られることになる(
図2中の白抜き矢印A方向)。除電シート21(他端21b)が引張られることに伴って、除電シート21と接合して設けられた板バネ24が、像担持体11に向かって引張られることになる。
【0048】
これにより、弾性部25が像担持体11に押し付けられ、弾性部25と像担持体11との接触圧が向上する。以上のように、除電シート21により、所定の電圧が像担持体11に印加されると、クリーニング部20(弾性部25)が像担持体11に押し付けられる。
【0049】
本開示の除電シート21は、従来の除電機能に加えて、上記接触圧を向上させる機能をさらに有している。本開示の画像形成装置100では、除電のための印加電圧を上記接触圧向上のための印加電圧と兼用している。
【0050】
一次転写ローラー12によってトナー像が中間転写ベルト7aに転写された後のタイミングで、除電シート21に電圧が印加される。除電シート21に電圧が印加されるとクリーニング部20が像担持体11に押し付けられ、クリーニング部20は、転写残トナーを清掃する。除電シート21は、クリーニング部20によって清掃された後の像担持体11の表面を除電する。
【0051】
なお、クリーニング部20は、除電シート21に電圧が印加された時に、上記接触圧が適正範囲内の中心値となるように設置される。
【0052】
(除電シート21の材料)
図3は、除電シート21に用いる各材料ごとの印加電圧に対する静電吸着力の関係を示す図である。
図3では、除電シート21の材料が、アクリル、石英ガラス、サファイア、およびシリコンである場合を示している。除電シート21の誘電層の厚みは、100[μm]とした。
【0053】
除電シート21に印加する電圧を大きくするほど、除電シート21の静電吸着力は大きくなる。特にシリコンを除電シート21の材料に用いた際、小さい電圧でも大きい静電吸着力を得られる。除電シート21の材料は、シリコンであることが好ましい。
【0054】
(制御部30)
図2に示すように、画像形成装置100は、制御部30と、電流検出部34と、耐刷量検出部35とをさらに備えている。制御部30は、電源部22に接続されている。制御部30は、耐刷量検出部35に接続されている。耐刷量検出部35は、像担持体11の耐刷量を検出する。像担持体11の耐刷量は、たとえば像担持体11を用いて印刷された記録媒体の累積枚数(耐刷枚数)、像担持体11の累積回転数又は累積回転時間、および、像担持体11を用いて行った印刷により消費された累積現像剤量などである。
【0055】
画像形成時、像担持体11の耐刷量に関する情報が耐刷量検出部35から制御部30に送信される。制御部30は、耐刷量検出部35から取得した耐刷量に応じて電源部22の出力電圧を制御する。これにより、調整された電圧が除電シート21に印加される。
【0056】
制御部30は、第一制御部31と、第二制御部32と、第三制御部33とを含んでいる。第一制御部31は、耐刷量検出部35にて取得した耐刷枚数(クリーニング部20が寿命に至るまでに印刷される記録媒体の累積枚数)に応じて、電源部22の出力電圧を制御する。第一制御部31は、耐刷枚数が多くなったときに、除電シート21に大きな電圧が印加されるように電源部22の出力電圧を制御する。
【0057】
第二制御部32は、図示しない温湿度検出部により取得したクリーニング部20の周辺の温度および湿度の少なくとも一方の変化に応じて、電源部22の出力電圧を制御する。
【0058】
電流検出部34は、除電シート21に流れる電流を検出する。除電シート21に流れる電流値により、像担持体11の膜厚を推測することができる。第三制御部33は、電流検出部34の結果(電流検出部34で取得した電流値)に応じて、クリーニング部20の寿命を検知する。
【実施例】
【0059】
除電シート21が像担持体11を除電するにあたって、除電シート21に印加する電圧には適正な範囲がある。除電シート21に印加する適正な除電電圧(除電能力を担保するために必要な電圧)の範囲を求める試験を実施の形態の画像形成装置を用いて実施した。
【0060】
除電位置に達した時の像担持体11の表面電位Vsと除電シート21への印加電圧Veとの電位差が一定以上になった場合に除電効果が現れる。除電効果が現れ始める電位差をVth(放電開始電位差)とすると、実施例の画像形成装置における、耐刷試験前の初期の像担持体のVthは、600[V]、耐刷末期の像担持体のVthは、500[V]であった。
【0061】
試験により適正な除電電圧の範囲を求めるにあたり、除電シートへの印加電圧Ve(除電電圧)を変化させた際に、初期の像担持体、および耐刷末期の像担持体にポジメモリ、除電不良(縦筋)、およびネガメモリのそれぞれの現象が生じるか否かを評価した。
【0062】
図4は、適正な除電電圧の範囲を決定するために行った試験の結果を示す図である。
図4中の「良」は、評価結果に問題なし(ポジメモリ等の発生なし)、「可」は、実使用するにあたって問題なし、「不可」は、実使用することができない、という結果を示している。
【0063】
初期の像担持体(耐刷枚数がゼロ)にVeを印加する時、300≦Ve≦700の範囲において、ポジメモリ、ネガメモリ、および除電不良の発生がないことがわかる。さらに、耐刷末期の像担持体(耐刷枚数が寿命に近い)にVeを印加する時、250≦Ve≦600の範囲において、ポジメモリ、ネガメモリ、および除電不良の発生がないことがわかる。
【0064】
耐刷枚数が大きくなるほど、除電機能を担保できる適正な除電電圧は小さくなる傾向にあった。耐刷によって像担持体の膜厚が削れるため、削れ量にともない除電電圧を下げなければポジメモリ等が発生するためである。
【0065】
一方、除電電圧を小さくしすぎると、弾性部25と像担持体11との接触圧が小さくなり、クリーニング性が確保できなくなる。耐刷によってブレード(弾性部25)が摩耗した場合、その摩耗量にともなって上記接触圧をあげる必要がある。上記接触圧を上げるためには、除電シート21の除電電圧を上げて、除電シート21の静電吸着力を大きくする必要がある。
【0066】
図5は、除電能力とクリーニング能力との両方を担保するための除電シート21の印加電圧Veの範囲を示す図である。横軸は、耐刷枚数を示している。縦軸の上側は、除電シート21への印加電圧(Ve)を示しており、縦軸の下側は、弾性部25と像担持体11との接触圧を示している。
【0067】
除電機能を確保するための適正な除電電圧の範囲は、
図4の結果から、初期の像担持体(耐刷枚数がゼロ)において、300≦Ve≦700であり(
図5中のX)、耐刷末期の像担持体(耐刷枚数が寿命に近い)において、250≦Ve≦600である(
図5中のY)。
【0068】
図5に示すように、耐刷枚数が大きくなるほど弾性部25が摩耗し、クリーニング部20の清掃能力が低下するため、上記接触圧を上げる必要がある(
図5中のJ)。すなわち、除電シート21の印加電圧を上げる必要がある(
図5中のM)。上記接触圧の適正範囲が、たとえば14[N/mm^
2]以上19[N/mm^
2]以下の場合(
図5中のV)、除電シート21の印加電圧は、300[V]以上500[V]以下に設定しなければならない(
図5中のZ)。
【0069】
図5に示すように、初期の像担持体において、除電能力とクリーニング能力との両方を担保できる印加電圧Veは、300≦Ve≦500であることがわかる(
図5中のZ)。耐刷末期の像担持体において、クリーニング能力を確保するために必要な印加電圧Veは、500[V]であるので、耐刷末期に近づくにつれて、印加電圧Veを500[V]に近づけていかなければならない。したがって、除電能力とクリーニング能力との両方を担保できる印加電圧Veの範囲は、
図5中の領域W(斜線部)となる。
【0070】
(作用効果)
図2に示すように、除電シート21に電源部22から電圧が印加されることにより、除電シート21と像担持体11との間に静電吸着力が生じる。除電シート21は、クリーニング部20の板バネ24に接合されて設けられていることから、板バネ24は像担持体11に近づく方向に引張られる。
【0071】
これにより、弾性部25が像担持体11に押圧され、弾性部25と像担持体11との接触圧が大きくなる。したがって、像担持体11の表面に残存するトナーを掻き取る力を向上させることができる。そのため、クリーニング部20の清掃能力が向上する。クリーニング部20の清掃能力が向上することにより、拭き残しを抑制することができる。これにより、画像ノイズの発生を抑制することができる。
【0072】
弾性部25が摩耗し、クリーニング部20の清掃能力が低下したときであっても、除電シート21に印加する電圧を調整することにより、静電吸着力をコントロールし、弾性部25と像担持体11との接触圧を大きくすることができる。これにより、印刷した記録媒体の累積枚数が大きくなったとしても、除電シート21に印加する電圧を大きくすることで、クリーニング部20の清掃能力を確保することができる。したがって、クリーニング部20の交換頻度を少なくすることができる。そのため、画像形成装置100のランニングコストを抑制することができる。
【0073】
さらに、除電シート21は、像担持体11を除電する機能と、弾性部25と像担持体11との接触圧を大きくする機能の双方を兼ねているため、上記接触圧を大きくする別機構を採用する必要がなくなり、画像形成装置100を簡素な構成(コンパクト)にすることができる。さらに、画像形成装置100の製造コストを抑制することができる。
【0074】
弾性部25と像担持体11との接触圧を電気的に制御する構成とすることにより、微細な調整ができるため、上記接触圧を調整する際の精度が向上する。
【0075】
実施の形態の第一帯電部は、シート状である。第一帯電部をシート状に構成することにより、第一帯電部自体が柔軟に変形しやすくなり、第一帯電部の他端21bが像担持体11の表面に沿うように設けられる。これにより、第一帯電部と像担持体11との接触面積を確保することができるため、静電吸着力が生じやすくなる。
【0076】
さらに、第一帯電部が柔軟に変形することにより、棒状等の場合(剛性が大きい場合)と比べて、像担持体11の回転に伴って第一帯電部を引張りやすくなる。
【0077】
第一帯電部(除電シート21)に対して回転方向DR1の下流側に第二帯電部15が配置されている。転写残トナーを清掃後の像担持体11の表面電位は、電位ムラを持った状態にある。そのため、第二帯電部15により像担持体11が帯電される前に像担持体11の表面電位を均一にしないと、静電潜像にムラができ、画像ムラが生じる。
【0078】
一次転写ローラー12によりトナー像が転写された後の像担持体11の表面電位を第一帯電部(除電シート21)により一定(ゼロ)にした後に、第二帯電部15により像担持体11を帯電することにより、ムラなく静電潜像を形成することができる。
【0079】
第一帯電部は、板バネ24に接合されて設けられている。弾性部25から保持体23側に離れた位置に第一帯電部を接合することにより、第一帯電部がクリーニング部20を引張る力が大きくなる。これにより、弾性部25が像担持体11に当接される力が大きくなる。これにより、弾性部25と像担持体11との接触圧が大きくなる。
【0080】
第一帯電部が、接合領域23aに対して弾性部25側に取付けられている。仮に第一帯電部が、接合領域23aに設けられている場合、第一帯電部を引張っても板バネ24を撓ませることができない。第一帯電部(除電シート21)の一端21aが接合領域23aから弾性部25側に離れて設けられていることにより、確実に板バネ24を撓ませることができる。
【0081】
第一制御部31は、記録媒体の印刷枚数(耐刷枚数)に応じて、電源部22を制御する。耐刷枚数が大きくなると、弾性部25が摩耗して、弾性部25と像担持体11との接触圧が小さくなる。上記接触圧が小さくなることに伴って、第一帯電部に印加する電圧を大きくすることにより、上記接触圧の低下を抑制することができる。これにより、耐刷枚数が大きくなっても、クリーニング部20の清掃能力を確保することができる。したがって、クリーニング部20の交換頻度を少なくできる。
【0082】
第二制御部32は、クリーニング部20の周辺の温度および湿度の少なくとも一方の変化に応じて、電源部22を制御する。クリーニング部20周辺の温度および湿度は、上記接触圧等に影響を与える。クリーニング部20周辺の温度および湿度に応じて、第一帯電部に印加する電圧を調整することで、精度よく静電吸着力をコントロールできる。
【0083】
第三制御部33は、電流検出部34の結果(第一帯電部を流れる電流値)に応じて、像担持体11の膜厚を推測し、クリーニング部20の寿命を検知することができる。これにより、精度よく、クリーニング部20の寿命を検知することができる。
【0084】
板バネ24の先端24aは、弾性部25の先端25aに対して突出して設けられている。弾性部25の裏面(像担持体11に向く面と反対の面)の全体が板バネ24に支持される構成となるため、弾性部25が均一に像担持体11に当接されることになる。これにより、クリーニング能力が向上する。
【0085】
先端24aは、像担持体11の間で放電が生じないように設けられている。像担持体11の表面電位が定まると、パッシェン則により、像担持体11と弾性部25との間で放電が生じない距離を定めることができる。これにより、像担持体11と先端24aとの間に発生する放電を確実に抑制することができる。
【0086】
先端24aは、弾性部材により覆われていることが好ましい。これにより、像担持体11と先端24aとの間に発生する放電をより確実に抑制することができる。
【0087】
図3に示すように、第一帯電部の材料は、シリコンが好ましい。シリコンを第一帯電部の材料に用いることにより、静電吸着力を制御しやすくなる。
【0088】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2の作像ユニット5の概略図である。実施の形態1の除電シート21と異なり、実施の形態2の除電シート21は、弾性部25に設けられている。
【0089】
実施の形態2の作像ユニット5においても、実施の形態1の作像ユニット5と同様の効果が得られる。
【0090】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3の作像ユニット5の概略図である。実施の形態1のクリーニング部20と異なり、像担持体11の軸方向に見て、実施の形態3の弾性部25の先端25aは、板バネ24の先端24aに対して突出して設けられている。これにより、像担持体11と板バネ24との間に発生する放電を確実に抑制することができる。
【0091】
(その他)
実施の形態において、第一帯電部の形状は、シート状であったが(除電シート21であったが)、これに限定されない。第一帯電部の形状は、たとえば、棒状であってもよく、または、複数の糸が像担持体11の軸方向に亘って設けられているような(短冊状に並んで配置されているような)構成であってもよい。
【0092】
第一帯電部(除電シート21)は、除電機能に加えて、第二帯電部15の機能(静電潜像を形成させるために像担持体11に帯電する機能)をさらに有している構成であってもよい。すなわち、第一帯電部は、第二帯電部15の役割を兼用させた構成であってもよい。この場合、第二帯電部15を配置しなくてもよくなるため、画像形成装置100のコストを抑制することができる。
【0093】
今回開示された実施の形態および実施例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 定着装置、2 装置本体、2A 画像形成部、2B 給紙部、3 ローラー、4 搬送経路、5 作像ユニット、6 露光ユニット、7 二次転写部、7a 中間転写ベルト、8 ベルトクリーニング部、9 収容部、9a 手差しトレイ、11 像担持体、12 一次転写ローラー、13 現像装置、15 第二帯電部、20 クリーニング部、21 除電シート、21a 一端、21b 他端、22 電源部、23 保持体、23a 接合領域、24 板バネ、24a,25a 先端、25 弾性部、25c 接触部、30 制御部、31 第一制御部、32 第二制御部、33 第三制御部、34 電流検出部、35 耐刷量検出部、100 画像形成装置、101 制御装置、DR1 回転方向、S 用紙。