(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220614BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B32B15/08 D
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2018118757
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】増田 勇作
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030313(JP,A)
【文献】特開2013-208819(JP,A)
【文献】特開2016-087814(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157652(WO,A1)
【文献】特開2019-166809(JP,A)
【文献】特開2011-012797(JP,A)
【文献】特開2001-322200(JP,A)
【文献】特開平11-100659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/08 - 15/098
B32B 7/02 - 7/035
B32B 27/00 - 27/42
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から、基材フィルム、アルミニウム蒸着フィルム、シーラントフィルムを少なくともこの順に積層してなる積層体
の製造方法であって、
前記アルミニウム蒸着フィルムは、酸素透過度が1.0cc/m
2・day・atm以下であり、尚且つ延伸されており、位相差測定法により測定される分子鎖の配向角がMD方向に対して55°から90°または、-55°から-90°であり、
前記アルミニウム蒸着フィルムの少なくとも蒸着面にアンカーコート剤層が積層されて
おり、
このアンカーコート剤層上に押出樹脂を介して、押し出しラミネート法により前記シーラントフィルムを積層することを特徴とする積層体
の製造方法。
【請求項2】
前記アンカーコート剤層が、ウレタン系接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の積層体
の製造方法。
【請求項3】
前記押出樹脂が、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、アイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)及びエチレン-アクリル酸エステル共重合体(EEA)から選択された樹脂から成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素バリア性と紫外線遮蔽性を有する積層包装材料を用いた、厚みと重みのある物を梱包、輸送した際に、ピンホールの発生し難い包装袋用積層体に関し、医療、医薬品や、食品などの分野において、酸素や紫外線の侵入により品質が容易に劣化するような内容物の包装に利用する包装袋に適した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用薬液等の充填容器として従来使用されていたガラス壜は、重く、衝撃による破損の危険性があるほか、嵩張るため、輸送や保管に不便である等の不具合があり、近年では、ガラス壜に代えて、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のプラスチック素材からなる軟質の袋ないし袋状の容器が多く用いられている。
【0003】
このような容器は、ハンドリング(取扱い)性の良さや、容器の軽量化、ゴミの容積低減などの観点から、例えば特許文献1のような柔軟なプラスチック製の一次容器に充填されている場合が多い。
【0004】
このような容器に充填されている内容液の中でも、特にアミノ酸液や糖、電解質液などの薬液は、酸素によって著しく変質し、ビタミンは近紫外線によって容易に劣化してしまうものも多い。
【0005】
他方で、これらの薬液を直接体内に注入することもあることから、これらの薬液と直接接触する袋状容器は、容器自体からの成分の溶出で薬液に悪影響を与えることの無いように、無添加のプラスチックを使用した容器を用いることが多い。
【0006】
しかしながら、無添加のプラスチックを使用した容器では、先に示したような薬液の変質や劣化を防止できるような高度な酸素バリア性や紫外線遮蔽性を保証することは困難である。
【0007】
そこで、近年では薬液を充填密封した1次容器をバリア性の高い外装袋で2次包装することが行われている。
【0008】
上述のような酸素バリア性と紫外線遮蔽性を有するバリア層としては、例えばアルミニウム箔などを例示することができるが、アルミニウム箔をプラスチックフィルムとラミネート加工した場合には、バリア効果は優れるもののポリ袋タイプに比べて袋が硬くなることは避けられず、用途によっては取り扱いに難点があり、また価格的にも高価なものになっている。
【0009】
これに対して、アルミニウム蒸着フィルムを用いる考え方もあるが、一般のアルミニウム蒸着フィルムは、加工工程上で、ロールとの接触などによりアルミニウム蒸着膜が傷付き易いこともあり、比較的傷の発生し難いドライラミネート法が用いられる場合が多い。
【0010】
しかし、ドライラミネート法を用いる場合には、接着剤層の膜厚も薄く、搬送中の衝撃などによるピンホールの発生を抑制するために、補強層を要する場合が多い。
【0011】
中には、特許文献2のように、ナイロン層/エチレン-ビニルアルコール共重合体層/ナイロン層からなる共押共延伸フィルムであるバリア層とアルミニウム蒸着フィルムとを、予めドライラミネートして、アルミ層を保護した後に、この予めドライラミネートしたフィルムに対して最外層と最内層とを押出樹脂を介してラミネート加工する、所謂押出ラミネートする方法なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平10-314272号公報
【文献】特開2004-050605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような状況に鑑み、アルミニウム蒸着フィルムを酸素バリア層および紫外線遮蔽層として用いながら、特殊な補強層を用いることなく、安価に薬液用の外装袋を提供できる積層体を作製しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものである。
すなわち、請求項1に記載の発明は、外側から、基材フィルム、アルミニウム蒸着フィルム、シーラントフィルムを少なくともこの順に積層してなる積層体の製造方法であって、
前記アルミニウム蒸着フィルムは、酸素透過度が1.0cc/m2・day・atm以下であり、尚且つ延伸されており、位相差測定法により測定される分子鎖の配向角がMD方向に対して55°から90°または、-55°から-90°であり、
前記アルミニウム蒸着フィルムの少なくとも蒸着面にアンカーコート剤層が積層されており、
このアンカーコート剤層上に押出樹脂を介して、押し出しラミネート法により前記シーラントフィルムを積層することを特徴とする積層体の製造方法である。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記アンカーコート剤層が、ウレタン系接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法である。
また、請求項3に記載の発明は、前記押出樹脂が、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、アイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)及びエチレン-アクリル酸エステル共重合体(EEA)から選択された樹脂から成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アルミニウム蒸着フィルムをバリア層ならびに紫外線遮蔽層として用いながら、特殊な補強層を必要とせず、薬液用の外装袋として使用可能な押出ラミネート積層体の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の積層体の構成例を示す断面図である。
【
図2】本発明のアルミニウム蒸着フィルムの構成例を示す断面図である。
【
図3】本発明のアルミニウム蒸着フィルムの配向角につて定義を示す説明図である。
【
図4】本発明のアルミニウム蒸着フィルムの配向角と酸素バリア性の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の説明において適宜図面を参照するが、図面に記載された態様は本発明の例示であり、本発明はこれらの図面に記載された態様に制限されない。
【0020】
なお、全ての図面を通じて、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の積層体の構成例を示す断面図である。
【0022】
図1は、基材フィルム(11)、両面にアンカーコート剤層(13)が設けられたアルミニウム蒸着フィルム(14)、シーラント層(15)の各層が、押出樹脂層(12)を介してラミネートされている構成例が示されている。
【0023】
ここで、基材フィルム(11)は、従来公知のフィルムを何れも使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、6-ナイロン、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどが挙げられるが、機械的強度や寸法安定性を有するものであれば、特に限定されるものではない。特に二軸延伸されたフィルムなどが好ましく、基材フィルムの厚みとしては、加工性を考慮すると、10~50μmの範囲であることが好ましい。
【0024】
また、基材フィルム(11)には、必要に応じて適宜印刷層などを設けることができる。印刷層としては、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系など従来公知のバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料および可塑剤、乾燥剤、安定剤などが任意に添加されてなるインキなどを用いて構成することができる。
【0025】
印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷など従来公知の手法を任意に用いることができる。
【0026】
また、基材フィルム(11)の表面には、コロナ処理やオゾン処理といった易接着処理が施されていても良い。
【0027】
アルミニウム蒸着フィルム(14)は、
図2に示すように、蒸着フィルム基材(141)上に、アルミニウム蒸着膜(142)を設けたもので、少なくともアルミニウム蒸着膜(142)上には、アンカーコート剤層(13)が積層されている。
図2に示すように、アンカーコート剤層(13)は、アルミニウム蒸着フィルム(14)の両面に設けられていても良い。
【0028】
蒸着フィルム基材(141)は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロプレンなどのポリオレフィンフィルム、ナイロンフィルム、エチレン-ポリビニルアルコール共重合体フィルムなどを用いることができる。
【0029】
中でも、機械的強度や取扱いの容易性などを考慮すると、延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを好適に用いることができる。
【0030】
ここで、蒸着フィルム基材(141)は、位相差測定法により測定される分子鎖の配向角がMD方向(Machine Direction:流れ方向)に対して、55°から90°または-55°から-90°である。
【0031】
ここで、配向角は、図に示すように、MD方向を0°とし、左側に傾いて分子鎖が並んでいれば(+)、右に傾いて分子鎖が並んでいれば(-)と定義する。なお、図中におけるTD(Transvers Direction)は、アルミニウム蒸着フィルム(14)の幅方向を示している。
【0032】
分子鎖の配向角は、可視光を用いた位相差測定法、マイクロウエーブを用いた分子配向測定法などの手法を用いて求めることができるが、マイクロウエーブを用いた分子配向測
定法の場合には測定者による特定値のバラつきが大きくなる。
【0033】
これに対して、位相差測定法は測定者によらず安定して測定することができ、測定値のバラつきも少ない。しかも正確に配向角を測定することができるため、分子鎖の配向角の測定においては、位相差測定法を用いることが望ましい。
【0034】
本発明者らは、アルミニウム蒸着フィルム(14)の酸素バリア性の低下すなわち酸素透過度の増加要因について検討を行った結果、アルミニウム蒸着フィルムに対する後加工工程すなわち、アンカーコート剤層(13)の塗工工程などにおいて、アルミニウム蒸着フィルム(14)の搬送経路中に、アルミニウム蒸着面が、装置内のロールやコーティング用の版、あるいは巻取り状態のアルミニウム蒸着フィルム(14)を巻き出す際の裏面の蒸着フィルム基材(141)などとの、擦れなどが生じることによって、アルミニウム蒸着膜(142)の部分的欠落が発生するためであることを見出した。
【0035】
また、このようなアルミニウム蒸着膜(142)と装置内のロールやコーティング版、蒸着フィルム基材(141)などとの擦れは、アルミニウム蒸着フィルム(14)にわずかな撓み(弛み、ヨレ、シワなど)があることにより、搬送中のアルミニウム蒸着フィルム(14)のバタつきやズレなどが生じ易くなることに起因することを究明した。
【0036】
更に、この様なアルミニウム蒸着フィルム(14)のわずかな撓みは、蒸着フィルム基材(141)の分子鎖の配向角を所定範囲のものとすることで、撓みを小さくすることが可能であることを見出したのである。
【0037】
すなわち、蒸着フィルム基材(141)に用いられる2軸延伸フィルムは、通常、2軸延伸した後、適切な熱固定温度で保持し、分子鎖が一定方向に配列するように調整される。この分子鎖の配向の角度で、MD方向に対する配向角が決まる。
【0038】
このMD方向に対する分子鎖の配向角を55°から90°または-55°から-90°とすることにより、アルミニウム蒸着フィルム(14)の撓みを低減することが可能となり、結果としてアルミニウム蒸着膜(142)の擦れ傷のような部分的欠落を抑制することが可能となる。
【0039】
蒸着フィルム基材(141)の厚さは、3~200μm程度とすることができるが、より好ましくは、6~50μmである。
【0040】
アルミニウム蒸着膜(142)は、酸素バリア性の付与と紫外線の遮蔽を目的として設けられる。
【0041】
アルミニウム蒸着膜(142)を有するアルミニウム蒸着フィルム(14)としての酸素バリア性としては、JIS K7126による酸素透過度が、1.0cc/m2・day・atm(温度22℃、湿度65%RH条件下)以下であることが望ましい。
【0042】
これは、一般的にアミノ酸液や糖、電解質液などの薬液を充填した1次容器用の外装袋となる外装袋には、1.0cc/m2・day・atm以下の酸素透過度が求められているためである。
【0043】
また、アルミニウム蒸着フィルム(14)としての紫外線遮蔽性としては、日本電色工業(株)製 SZ-Σ80による光透過率が、0.1%以下であることが望ましい。
【0044】
上述のようなアルミニウム蒸着膜(142)の膜厚としては、5~300nm程度の範
囲とすることができるが、より好ましくは、10~100nmの範囲である。
【0045】
アルミニウム蒸着膜(142)を形成する方法としては、従来公知の薄膜形成法であればいずれを用いても良く、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法などを例示することができる。
【0046】
アルミニウム蒸着膜(142)の形成に先立って、蒸着フィルム基材(141)の表面には、コロナ処理、プラズマ処理、イオンボンバード処理などの表面処理が施されても何ら問題ない。
【0047】
上述のようにして得られるアルミニウム蒸着フィルム(14)の少なくとも蒸着面側すなわちアルミニウム蒸着膜(142)上には、アンカーコート剤層(13)が設けられる。
【0048】
アンカーコート剤層(13)は、例えば、溶剤溶解性または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、イミン系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂またはアルキルチタネート等から選択され、これらは単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
またアンカーコート剤層(13)には、用いる樹脂に応じて、硬化剤や触媒、安定剤、開始剤などの各種添加剤が添加されていても良い。
【0050】
特に、2液硬化型ウレタン系樹脂などのウレタン系接着剤を好適に用いることができる。
【0051】
アンカーコート剤層(13)は、通常、5nm~5μm程度の厚さにすることができる。このような厚さを有するアンカーコート剤層(13)は、内部応力が抑制された均一な膜厚で、アルミニウム蒸着フィルム(14)の表面に形成することができる。より好ましいアンカーコート剤層(13)の膜厚は、10nm~1μmである。
【0052】
アンカーコート剤層(13)の塗布性、接着性を改良するために、アンカーコート剤層形成に先立って、アルミニウム蒸着フィルム(14)表面に、コロナ処理などが施されていても良い。
【0053】
このようなアンカーコート剤層(13)は、従来公知のコーティング法を用いて設けることができ、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ダイコート法などを例示することができるが、中でもグラビアコート法を好適に用いることができる。
【0054】
シーラント層(15)は、ポリオレフィン系樹脂を用いることができ、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂などを例として、挙げることができる。
【0055】
このようなシーラント層(15)は、単独の層であっても良いし、2層以上の多層構成であっても何ら問題ない。
【0056】
以上のような、基材フィルム(11)、アンカーコート剤層(13)を含むアルミニウム蒸着フィルム(14)、シーラント層(15)の各層は、押出樹脂層(12)を介して積層されている。
【0057】
押出樹脂層(12)は、一般的に上市されている押し出し樹脂を使用することが可能であり、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)やポリプロピレン樹脂(PP)、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、やエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、更にはアイオノマーやエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、又はエチレン-アクリル酸共重合体(EAA)やエチレン-アクリル酸エステル共重合体(EEA)などを用いることができる。
【0058】
押出樹脂層の厚さは、10~30μm程度であることが望ましい。この様に、押出樹脂層を用いた押出ラミネート法を用いることにより、接着剤樹脂をコーティングしてラミネートするドライラミネート法に比べて、厚い樹脂層を設ける事が可能となる。
【0059】
従って、ドライラミネート法を用いた場合に必要とされた補強層などを設けなくとも、薬液を充填した1次包装袋を封入した後の運搬作業における衝撃等でもピンホールの発生しない薬液用の外装袋を提供可能な積層体とすることができる。
【実施例】
【0060】
以下に示す実施例は、1例を示すものであり、本発明は必ずしも以下に示したものに限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
表層の基材フィルムにポリプロピレンを用いて、アルミニウム蒸着フィルム、シーラント層と順に押出ラミネートにより貼りあわせて積層体サンプル1を作製した。
【0062】
その際に、MD方向に対する分子鎖の配向角が55°のアルミニウム蒸着フィルムを使用し、アルミニウム蒸着面には、以下に示すアンカーコート剤層を設けた。
【0063】
(基材フィルム)
延伸プロピレンフィルム(OPP) … フタムラ化学(株)製 FOS 50μm
(アルミニウム蒸着フィルム)
アルミニウム蒸着したPETフィルム … 尾池パックマテリアル(株)製
JC-V8 12μm
(シーラント層)
直鎖低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE) … 三井化学東セロ(株)製
LスマートC-1 40μm
(押出樹脂層)
低密度ポリエチレン … 日本ポリエチレン(株)製
LC600A 20μm
(アンカーコート剤層)
2液硬化型ウレタン系樹脂
【0064】
<実施例2>
アルミニウム蒸着フィルムとして、MD方向に対する分子鎖の配向角が67°のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体サンプル2を作製した。
【0065】
<比較例1>
アルミニウム蒸着フィルムとして、MD方向に対する分子鎖の配向角が48°のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体サンプル3を作製した。
【0066】
<比較例2>
アルミニウム蒸着フィルムとして、MD方向に対する分子鎖の配向角が52°のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体サンプル4を作製した。
【0067】
上記実施例1、実施例2、比較例1、比較例2において使用したアルミニウム蒸着フィルムとそれぞれ作製した各積層体サンプルについて、温度22℃、湿度65%RH条件下でのJIS K7126による酸素透過度の測定を実施し、積層体加工前と加工後の酸素透過度の変化を確認した。
【0068】
測定結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
実施例1ならびに実施例2の結果から、配向角が55°以上の場合には、積層体加工前と加工後での酸素透過度の変化量が0.2cc/m2・day・atm未満であるのに対し、比較例1および比較例2の結果より、配向角が55°未満の場合には、酸素透過度の変化量が0.2cc/m2・day・atm以上であることが判った。
【0071】
これはすなわち、配向角が55°以上のアルミニウム蒸着フィルムを用いた場合には、フィルムの撓み(弛み、ヨレ、シワなど)によって発生する搬送中のアルミニウム蒸着フィルムのバタつきやズレなどを低減して、アルミニウム蒸着膜の擦れによる部分的欠落の発生を抑制していることによるものと考えることができる。
【0072】
従って、積層体加工前と加工後の酸素透過度の差が少なく、十分な酸素バリア効果を発揮していると考えられる。
【0073】
<追加実験>
上記の実施例ならびに比較例と同様にして、配向角が55°以上の場合と55°未満の場合のそれぞれについて、試作サンプル数を追加し、合計60サンプルの積層体サンプルについて、積層体加工後、すなわちラミネート加工品(ラミ品)の酸素透過度を測定した結果を
図4に示した。
【0074】
図4に示すように、配向角が55°以上の場合には、酸素透過度のバラつきが0.4cc/m
2・day・atm程度の範囲内に安定しているのに対して、配向角が55°未満の場合には、酸素透過度のバラつきが大きく、積層体加工前のアルミニウム蒸着フィルム自体の酸素透過度のバラつきを考慮すると、薬液を充填した1次容器に対する外装袋に求められる1.0cc/m
2・day・atm以下の酸素透過度を超える可能性を示唆していると考えることができる。
【0075】
以上の結果より、本発明の積層体を用いることにより、薬液を充填した1次容器に対する外装袋用として十分な特性を有すると伴に、各種要求特性を満たすための補強層を特に必要としない安価な外装袋用の積層体を提供することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 … 積層体
11 … 基材フィルム
12 … 押出樹脂層
13 … アンカーコート剤層
14 … アルミニウム蒸着フィルム
15 … シーラント層