(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】エンジンの排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20220614BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220614BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20220614BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
F01N3/24 N ZAB
F01N3/24 E
F01N3/08 B
F01N3/035 A
F01N3/035 E
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 400
(21)【出願番号】P 2018121286
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】權田 良平
(72)【発明者】
【氏名】八城 紘一
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017146(JP,A)
【文献】特開2006-009793(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194201(WO,A1)
【文献】特開2017-145804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0308316(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00~ 3/38
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気装置であって、
上記エンジンの排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
上記排気通路における上記排気浄化触媒よりも下流側に、該排気浄化触媒と隣接して配置された微粒子捕集フィルタと、
上記排気浄化触媒と上記微粒子捕集フィルタとを接続する接続通路とを備え、
上記微粒子捕集フィルタは、相対する一対の短辺と相対する一対の長辺とを含む扁平形状の横断面を有し、
上記接続通路は、その流路断面積が上記微粒子捕集フィルタの上記横断面の面積よりも小さい小断面積部を部分的に有し、
上記接続通路における上記微粒子捕集フィルタとの接続部分には、その流路断面積が上記微粒子捕集フィルタの上記横断面の面積と同程度になるように拡大される拡大部が形成され、
上記拡大部には、上記小断面積部を通過した後の排気ガスを、該拡大部の周壁に沿って旋回させるようなガイド壁部が設けられて
おり、
上記排気浄化触媒は、横方向に延びるように、上記エンジンのエンジン本体の側壁部に支持されており、
上記微粒子捕集フィルタは、上記排気浄化触媒の下側に配置されているとともに、上記横方向に延びかつ上記扁平形状における上記一対の長辺が上下方向に延びるように上記エンジン本体の上記側壁部に支持されており、
上記接続通路は、上記小断面積部が上下方向に延びるように、上記排気浄化触媒及び上記微粒子捕集フィルタに接続されており、
上記ガイド壁部は、上記拡大部の周壁における上記エンジン本体の上記側壁部から遠い側の部分に形成されかつ上下方向に延びかつ下側に向かって上記エンジン本体の上記側壁部に近づくように湾曲していることを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のエンジンの排気装置において、
上記排気浄化触媒は、上記接続通路との接続部分に近づくにつれて下側に位置するように傾斜して配設されていることを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載のエンジンの排気装置において、
上記接続通路は、上記エンジン本体の上記側壁部の面直方向から見て、下側に向かって上記微粒子捕集フィルタに近づくように傾斜していることを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか1つに記載のエンジンの排気装置において、
上記拡大部の周壁における上記ガイド壁部と対向する部分には、排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサが装着されていることを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1つに記載のエンジンの排気装置において、
上記微粒子捕集フィルタの下流側に隣接して配設され、供給される還元剤により排気ガス中のNOxを還元する第1選択還元型触媒と、
上記接続通路における上記小断面積部よりも上流側の部分に設けられ、上記還元剤を供給するための還元剤供給手段とを更に備えることを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のエンジンの排気装置において、
上記微粒子捕集フィルタには、上記第1選択還元型触媒と同じ機能の第2選択還元型触
媒が担持されていることを特徴とするエンジンの排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、エンジンの排気装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排気通路に排気浄化触媒と微粒子捕集フィルタとが設けられた、エンジンの排気装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排気浄化装置(排気浄化触媒)が、相対する一対の短辺と相対する一対の長辺とを含む扁平形状の横断面を有しかつ触媒コンバータを収容するよう構成されたケースと、排気ガスの流路の横断面が拡大するよう、排気ガスの主流方向に対し傾斜した傾斜壁により構成されたコーン部を有しかつタービンの出口と上記ケースの入口とをつなぐよう構成されたインレットコーンと、を有し、上記コーン部の上記傾斜壁における一対の長辺それぞれに対応する部位に、内方に凹んだ凹部が形成された排気装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献1の排気装置では、排気浄化装置の下側に、第2の排気浄化装置として、相対する一対の短辺と相対する一対の長辺とを含む扁平形状の横断面を有するケースに収容されたディーゼルパティキュレートフィルタ(微粒子捕集フィルタ)が配設されている。さらに、特許文献1の排気装置では、排気浄化装置とディーゼルパティキュレートフィルタとを接続するアウトレット(接続通路)には、その流路断面積が、ディーゼルパティキュレートフィルタの横断面の面積よりも狭い部分が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エンジンに設けられる排気装置は、エンジンルームが狭いときでも該エンジンルーム内に収容できるように、出来る限りコンパクトな構成とされることが望ましい。特許文献1のように排気浄化触媒や微粒子捕集フィルタを扁平形状にすると、エンジンルームが比較的狭い場合に、排気浄化触媒や微粒子捕集フィルタをエンジンの近傍に効率的に配置することができ、コンパクトな構成とすることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、接続通路の一部の流路断面積が、微粒子捕集フィルタの横断面の面積よりも狭くなっていると、一旦、排気ガスが狭い範囲に集約されるため、微粒子捕集フィルタに流入する排気ガスの速度分布に偏りが生じるおそれがある。微粒子捕集フィルタに流入する排気ガスの速度分布に偏りが生じると、微粒子捕集フィルタによる排気浄化性能が低下してしまう。また、微粒子捕集フィルタに捕集された微粒子を高温の排気ガスにより燃焼除去して、該微粒子捕集フィルタを再生する際に、該微粒子捕集フィルタの温度分布が不均一になってしまう。このため、扁平形状を有する微粒子捕集フィルタに対して、排気ガスの速度分布を均一にする観点からは改良の余地がある。
【0008】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、扁平形状を有する微粒子捕集フィルタに流入する排気ガスの速度分布を出来る限り均一にして、微粒子捕集フィルタを適切に再生可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、ここに開示された技術では、エンジンの排気装置を対象として、上記エンジンの排気通路に設けられた排気浄化触媒と、上記排気通路における上記排気浄化触媒よりも下流側に、該排気浄化触媒と隣接して配置された微粒子捕集フィルタと、上記排気浄化触媒と上記微粒子捕集フィルタとを接続する接続通路とを備え、上記微粒子捕集フィルタは、相対する一対の短辺と相対する一対の長辺とを含む扁平形状の横断面を有し、上記接続通路は、その流路断面積が上記微粒子捕集フィルタの上記横断面の面積よりも小さい小断面積部を部分的に有し、上記接続通路における上記微粒子捕集フィルタとの接続部分には、その流路断面積が上記微粒子捕集フィルタの上記横断面の面積と同程度になるように拡大される拡大部が形成され、上記拡大部には、上記小断面積部を通過した後の排気ガスを、該拡大部の周壁に沿って旋回させるようなガイド壁部が設けられており、上記排気浄化触媒は、横方向に延びるように、上記エンジンのエンジン本体の側壁部に支持されており、上記微粒子捕集フィルタは、上記排気浄化触媒の下側に配置されているとともに、上記横方向に延びかつ上記扁平形状における上記一対の長辺が上下方向に延びるように上記エンジン本体の上記側壁部に支持されており、上記接続通路は、上記小断面積部が上下方向に延びるように、上記排気浄化触媒及び上記微粒子捕集フィルタに接続されており、上記ガイド壁部は、上記拡大部の周壁における上記エンジン本体の上記側壁部から遠い側の部分に形成されかつ上下方向に延びかつ下側に向かって上記エンジン本体の上記側壁部に近づくように湾曲している、構成とした。
【0010】
この構成によると、接続通路には、その流路断面積が微粒子捕集フィルタの横断面の面積よりも小さい小断面積部を部分的に形成されている。このため、排気ガスは、小断面積部を通過する際に狭い範囲に集約された後、微粒子捕集フィルタに流入することになる。排気ガスに狭い範囲に集約されたまま微粒子捕集フィルタに流入すると、排気ガスの速度分布に偏りが生じて、微粒子捕集フィルタによる排気浄化性能が低下してしまう。また、微粒子捕集フィルタの温度分布が不均一になってしまい、微粒子捕集フィルタの再生が適切に実行されなくなる。特に、上記の構成においては、微粒子捕集フィルタが扁平形状を有しているため、温度分布が不均一になりやすい。
【0011】
これに対して、上記の構成では、流路断面積が微粒子捕集フィルタの横断面の面積と同程度になるように拡大される拡大部が形成され、該拡大部には、小断面積部を通過した後の排気ガスを、該拡大部の周壁に沿って旋回させるようなガイド壁部が設けられている。これにより、小断面積部から拡大部に流入した排気ガスは、ガイド壁部により拡大部の周壁に沿って旋回しながら、該拡大部の横断面全体に広がる。拡大部の流路断面積は、最終的に微粒子捕集フィルタの横断面の面積と同程度になるため、排気ガスが微粒子捕集フィルタに入流するときには、該排気ガスは微粒子捕集フィルタの横断面全体に分布するようになる。したがって、扁平形状を有する微粒子捕集フィルタに流入する排気ガスの速度分布を出来る限り均一にして、微粒子捕集フィルタを適切に再生可能にすることができる。
【0013】
また、小断面積部とガイド壁部とが上下方向に延びているため、小断面積部から流出した排気ガスが、スムーズにガイド壁部に沿って流れるようになる。そして、拡大部の周壁におけるエンジン本体の側壁部から遠い側の部分に形成されたガイド壁部が、下側に向かってエンジン本体の側壁部に近づくように湾曲していることにより、排気ガスは、ガイド壁部に沿って流れた後、拡大部の周壁に沿って旋回するように流れる。この結果、排気ガスをスムーズに拡大部の周壁に沿って旋回させることができ、扁平形状を有する微粒子捕集フィルタに流入する排気ガスの速度分布の均一化を向上させることができる。
【0014】
また、微粒子捕集フィルタは、横方向に延びかつ扁平形状における一対の長辺が上下方向に延びるようにエンジンの側壁部に支持されているため、排気装置の構成をコンパクトにすることができる。
【0015】
上記一実施形態において、上記排気浄化触媒は、上記接続通路との接続部分に近づくにつれて下側に位置するように傾斜して配設されていてもよい。
【0016】
この構成によると、排気浄化触媒を通過した排気ガスが、上下方向に延びる小断面積部に向かってスムーズに流れるようになる。これにより、接続通路内において、排気ガスはガイド壁部までスムーズに流れるようになる。この結果、排気ガスをよりスムーズに旋回させることができ、扁平形状を有する微粒子捕集フィルタに流入する排気ガスの速度分布の均一化をより向上させることができる。
【0017】
上記一実施形態において、上記接続通路は、上記エンジン本体の上記側壁部の面直方向から見て、下側に向かって上記微粒子捕集フィルタに近づくように傾斜していてもよい。
【0018】
この構成によると、接続通路を流れる排気ガスに、微粒子捕集フィルタに向かう流れ成分を与えることができるため、ガイド壁部により拡大部の周壁に沿って旋回する排気ガスが、微粒子捕集フィルタに向かってスムーズに流れるようになる。これにより、扁平形状を有する微粒子捕集フィルタに流入する排気ガスの速度分布の均一化を一層向上させることができる。
【0019】
上記一実施形態において、上記拡大部の周壁における上記ガイド壁部と対向する部分には、排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサが装着されていてもよい。
【0020】
すなわち、一般に、接続通路には、排気ガスの状態(例えば、温度や圧力)を検出するための排気ガスセンサが設けられる。排気ガスセンサを、上記拡大部の周壁における上記ガイド壁部と対向する部分に設けることで、ガイド壁部により排気ガスに旋回成分を与える際に、排気ガスセンサが抵抗にならない。これにより、扁平形状を有する微粒子捕集フィルタに流入する排気ガスの速度分布の均一化をより一層向上させることができる。
【0021】
上記エンジンの排気装置において、上記微粒子捕集フィルタの下流側に隣接して配設され、供給される還元剤により排気ガス中のNOxを還元する第1選択還元型触媒と、上記接続通路における上記小断面積部よりも上流側の部分に設けられ、上記還元剤を供給するための還元剤供給手段とを更に備えていてもよい。
【0022】
すなわち、選択還元型触媒への還元剤の供給は、一般に、排気通路を流れる排気ガスに還元剤を噴射して、排気ガスの流れによって還元剤を選択還元型触媒まで送ることで行われる。上記の構成のように、接続通路における小断面積部よりも上流側の部分に還元剤供給手段を配設しておけば、還元剤供給手段から排気ガスに供給された還元剤は、排気ガスが拡大部の周壁に沿って旋回することにより、微粒子捕集フィルタの横断面全体に広がる。これにより、第1選択還元型触媒に供給される還元剤の分布を出来る限り均一にすることができる。
【0023】
上記第1選択還元型触媒を備えたエンジンの排気装置において、上記微粒子捕集フィルタには、上記第1選択還元型触媒と同じ機能の第2選択還元型触媒が担持されていてもよい。
【0024】
この構成によると、排気装置における排気ガス中のNOxの浄化性能を向上させることができる。
【0025】
また、還元剤供給手段から排気ガスに供給された還元剤は、排気ガスが拡大部の周壁に沿って旋回することにより、微粒子捕集フィルタの横断面全体に広がるため、第2選択還元型触媒に供給される還元剤の分布も出来る限り均一にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、微粒子捕集フィルタが扁平形状を有するとともに、排気浄化触媒と微粒子捕集フィルタとを接続する接続通路に、微粒子捕集フィルタの横断面の面積よりも流路断面積が狭い部分が形成されていたとしても、排気ガスを旋回させることにより、扁平形状を有する微粒子捕集フィルタに流入する排気ガスの速度分布を出来る限り均一にして、微粒子捕集フィルタを適切に再生可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態1に係る排気装置を備えるエンジンの概略構成図である。
【
図4】
図2のIV-IV線で排気装置を切断した断面図である。
【
図5】
図2のV-V線で排気装置を切断した断面図である。
【
図6】
図2のVI-VI線で排気装置を断面図である。
【
図7】
図3のVII-VII線で排気装置を断面図である。
【
図8】DPFに流入する排気ガスの速度分布を解析する際に用いた従来の排気装置のモデルの側面図である。
【
図9】
図8に示すモデルを用いて、DPFに流入する排気ガスの速度分布を解析した結果を示す図である。
【
図10】実施形態1に係る排気装置をモデルにして、DPFに流入する排気ガスの分布を解析した結果を示す図である。
【
図11】実施形態2に係る排気装置を備えるエンジンの概略構成図である。
【
図12】実施形態2に係るエンジンを車両右側から見た側面図である。
【
図13】実施形態2に係るエンジンを車両前側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るエンジン1を示す。このエンジン1のエンジン本体10は、複数の気筒11が直列に並んだ多気筒エンジンであって、軽油を主成分とした燃料が供給されるディーゼルエンジンである。エンジン本体10は車両のエンジンルームに縦置きに配設されている。つまり、エンジン本体10の気筒列方向が車両前後方向と一致するようになっている。尚、以下の説明では、車両後側から車両前側を見たときの左側を車両左側、右側を車両右側という。
【0030】
複数の気筒11(
図1において1つのみ図示している)が設けられたシリンダブロック12と、このシリンダブロック12上に配設されたシリンダヘッド13と、シリンダブロック12の下側に配設され、潤滑油が貯留されたオイルパン14とを有している。このエンジン本体10の各気筒11内には、ピストン15が往復摺動可能にそれぞれ嵌挿されていて、このピストン15と、シリンダブロック12と、シリンダヘッド13とによって燃焼室が区画されている。ピストン15は、シリンダブロック12内においてコンロッド17を介してクランクシャフト18と連結されている。
【0031】
シリンダヘッド13には、気筒11毎に、吸気ポート19及び排気ポート20が形成されているとともに、これら吸気ポート19及び排気ポート20には、上記燃焼室側の開口を開閉する吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ配設されている。各吸気ポート19及び各排気ポート20はそれぞれ車幅方向に延びている。本実施形態1では、エンジン1が上記車両に搭載された状態において、各吸気ポート19はシリンダヘッド13における車両左側にそれぞれ位置し、各排気ポート20はシリンダヘッド13における車両右側にそれぞれ位置する。
【0032】
各吸気弁21は吸気側カム31によって開閉され,各排気弁22は排気側カム41によって開閉される。吸気側カム31及び排気側カム41は、クランクシャフト18の回転と連動してそれぞれ回転駆動される。図示は省略するが、吸気弁21及び排気弁22のそれぞれの開閉タイミングや開閉期間を調整するための、例えば油圧作動式の弁可変機構が設けられている。
【0033】
シリンダヘッド13には、気筒11毎に、気筒11内に燃料を直接噴射するインジェクタ23が取り付けられている。インジェクタ23は、
図2に示すように、その噴口が上記燃焼室の天井面の中央部分から、該燃焼室内に臨むように配設されている。
【0034】
図1に示すように、エンジン本体10の一側壁部(本実施形態1では、エンジン本体10の左側側壁部)には、各気筒11の吸気ポート19に連通する様に吸気通路50が接続されている。一方、エンジン本体10の他側壁部(エンジン本体10の後述する右側側壁部10a)には、各気筒11からの既燃ガス(つまり、排気ガス)を排出する排気通路60が接続されている。
【0035】
吸気通路50の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ51が配設されている。一方、吸気通路50における下流側近傍には、サージタンク52が配設されている。このサージタンク52よりも下流側の吸気通路50は、気筒11毎に分岐する独立吸気通路とされ、これら各独立吸気通路の下流端が各気筒11の吸気ポート19にそれぞれ接続されている。
【0036】
吸気通路50におけるエアクリーナ51とサージタンク52との間には、上流側から下流側へ向かって順に、ターボ過給機53のコンプレッサ53aと、吸気調整弁54と、熱交換器としての水冷式のインタークーラ58とが配設されている。
【0037】
上記排気通路60の上流側の部分は、気筒11毎に分岐して排気ポート20の外側端に接続された独立排気通路と該各独立排気通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。
【0038】
この排気通路60における上記排気マニホールドよりも下流側には、ターボ過給機53のタービン53bと、排気浄化触媒としての酸化触媒61が配設されている。排気通路60における酸化触媒61よりも下流側には、微粒子捕集フィルタとしてのディーゼルパティキュレートフィルタ62(以下、DPF62という)が配設されている。酸化触媒61とDPF62との間には、酸化触媒61とDPF62とを接続する接続通路63が設けられている。排気通路60におけるDPF62よりも下流側には、排気シャッター弁64が配設されている。
【0039】
ターボ過給機53は、タービン53bに流入する排気ガスの流路断面積を変化させることで、タービン53bに流入する排気ガスの流速を調整可能な可変容量型のターボ過給機として構成されている。タービン53bの入口、つまり排気通路60におけるタービン53bの直上流部には、排気ガスの流路断面積を調整のための可動式ベーン53cが配設されている。排気通路60には、ターボ過給機53をバイパスするための排気側バイパス通路65が設けられている。この排気側バイパス通路65には、該排気側バイパス通路65へ流れる排気ガスの流量を調整するためのウエストゲートバルブ66が配設されている。ターボ過給機53のタービン53b及びベーン53cは、タービンケース53d(
図2参照)内に収容されている。
【0040】
酸化触媒61は、排気ガス中のCO及びHCが酸化されてCO2及びH2Oが生成される反応を促すものである。
【0041】
DPF62は、エンジン1の排気ガス中に含まれるスート(煤)等の微粒子を捕集するものである。DPF62は、再生可能なフィルタである。DPF62に上記微粒子が所定量捕集されたときには、排気ガスに未燃燃料(未燃HC)を含ませるようにインジェクタ23から燃料が噴射される。該未燃燃料は、酸化触媒61により酸化反応されて、該酸化反応の反応熱によって排気ガスが昇温される。そして、昇温された高温の排気ガスがDPF62に流入することで、DPF62に捕集された上記微粒子が燃焼除去されて、DPF62が再生される。
【0042】
排気シャッター弁64は、その開度を調整することで、排気通路60内の排気圧を調整することが可能な弁である。この排気シャッター弁64は、例えば、後述する低圧EGR通路70によって、排気通路60を流れる排気ガスの一部を吸気通路50に還流させる際に、排気通路60内の排気圧を高めるために利用される場合がある。
【0043】
本実施形態では、吸気通路50と排気通路60とに接続され、排気通路60を流れる排気ガスの一部を吸気通路50に還流可能な高圧EGR通路70及び低圧EGR通路80が設けられている。
【0044】
高圧EGR通路70は、吸気通路50におけるインタークーラ58とサージタンク52との間の部分と、排気通路60における上記排気マニホールドとターボ過給機53のタービン53bとの間の部分とに接続されている。高圧EGR通路70内には、該高圧EGR通路70を通って吸気通路50に還流される排気ガスの流量を調整する電磁式の高圧EGR弁72が設けられている。
【0045】
一方で、低圧EGR通路80は、吸気通路50におけるエアクリーナ51とターボ過給機53のコンプレッサ53aとの間の部分と、排気通路60におけるDPF62と排気シャッター弁64との間の部分とに接続されている。低圧EGR通路80には、該低圧EGR通路80を通って吸気通路50に還流される排気ガスを冷却するEGRクーラ81と、低圧EGR通路80を通って還流される排気ガスの流量を調整する電磁式の低圧EGR弁82とが設けられている。
【0046】
図2は、エンジン1を車両右側から見た側面図である。
図3は、エンジン1を車両前側から見た正面図である。尚、
図3では、吸気系に関する要素(吸気通路50等)及びEGRシステムに関する要素(高圧EGR通路70等)は省略している。
【0047】
本実施形態1では、
図2に示すように、排気通路60の上流側の部分(低圧EGR通路80との接続部分よりも上流側)は、エンジン本体10に対して車両右側に配設されている。ターボ過給機53のタービン53b、酸化触媒61、接続通路63及びDPF62は、エンジン本体10の右側側壁部10a(厳密には、シリンダヘッド12の右側側壁部及びシリンダブロック13の右側側壁部)に支持されている。
【0048】
ターボ過給機53のタービン53bは、
図2に示すように、右側側壁部10aにおける車両前後方向の中央の上側部分にタービンケース53dを介して支持されている。タービン53bの車両後側には、ターボ過給機53のコンプレッサ53aが配設されている。
【0049】
酸化触媒61は、
図2に示すように、タービン53bの車両前側に配設されている。酸化触媒61は、触媒入口部61aが車両後側に位置し、触媒出口部61bが車両前側に位置するように、車両右側から見て横方向(厳密には、車両前後方向)に延びるように、右側側壁部10aに支持されている。酸化触媒61の触媒出口部61bには、接続通路63が接続されている。酸化触媒61は、
図2に示すように、接続通路63との接続部分(つまり、触媒出口部61b)に近づくにつれて下側に位置するように傾斜して配設されている。具体的には、酸化触媒61は、車両前側に向かって下側に傾斜して配設されている。本実施形態1では、
図5に示すように、酸化触媒61は、円形の横断面を有している。酸化触媒61は、
図5に示すように、触媒ケース61c内に酸化触媒コンバータ61dが収容された構成となっている。
【0050】
DPF62は、
図2及び
図3に示すように、酸化触媒61の下側に、該酸化触媒61と隣接して配置されている。DPF62は、フィルタ入口部62aが車両前側に位置し、フィルタ出口部62bが車両前側に位置するように、車両右側から見て横方向(厳密には、車両前後方向)に延びている。DPF62は、
図5に示すように、相対する一対の短辺と相対する一対の長辺とを含む扁平形状の横断面を有している。DPF62は、上記扁平形状における上記一対の長辺が上下方向に延びるように、すなわち、上下方向に長くかつ車幅方向に短くなるように配設されている。より具体的には、DPF62は、
図3~
図5に示すように、上下方向に延びつつ、下側に向かってエンジン本体10の右側側壁部10aに近づくように、すなわち、下側に向かって左側に傾斜して配設されている。DPF62は、
図5に示すように、フィルタケース62c内に、フィルタ本体62dが収容された構成となっている。
【0051】
DPF62のフィルタ出口部62bには、アウトレットコーン67が取り付けられている。アウトレットコーン67は、
図2に示すように、車両右側から見て、下側の部分が車両後側に向かって真っ直ぐに伸びている一方、上側の部分が車両後側に向かって下側に傾斜して延びている。アウトレットコーン67の上側の部分には、第1ブラケット101が取り付けられている。第1ブラケット101は、2つのボルトを介してエンジン本体10の右側側壁部10aに取付固定されている。また、アウトレットコーン67の下側の部分には、第2ブラケット102が取り付けられている。第2ブラケット102は、ボルトを介して右側側壁部10aに取付固定されている。さらに、DPF62の下側の部分におけるフィルタ入口部62aの近傍部分には、第3ブラケット103が取り付けられている。第3ブラケット103は、ボルトを介して右側側壁部10aに取付固定されている。
【0052】
接続通路63は、
図2及び
図7に示すように、酸化触媒61及びDPF62よりも車両前側に配設されている。接続通路63は、酸化触媒61の触媒出口部61bとDPF62のフィルタ入口部62aとを接続するようにU字状をなしている。接続通路63は、全体的に、エンジン本体10の右側側壁部10aの面直方向から見て(つまり、車両右側から見て)、下側に向かってDPF62に近づくように、すなわち、下側に向かって傾斜するように配設されている。接続通路63は、触媒出口部61bと接続された導入部631と、導入部631から下側に向かって延びかつ流路断面積がDPF62の上記横断面の面積よりも小さい小断面積部632と、小断面積部632の下端部から車両後側に延びかつ流路断面積がDPF62の上記横断面の面積と同程度になるように拡大される拡大部633とを有している。つまり、接続通路63は、流路断面積がDPF62の上記横断面の面積よりも小さい小断面積部632を部分的に有している。
【0053】
導入部631は、
図2及び
図7に示すように、触媒出口部61bから車両前側に向かって僅かに下側に傾斜して延びた後、下側に向かって車両後側に僅かに傾斜して延びている。導入部631の車両左側の壁部には、
図3に示すように、第4ブラケット104が取り付けられている。第4ブラケット104は、ボルトを介して、エンジン本体10の右側側壁部10aの前側端部に取付固定されている。
【0054】
小断面積部632は、
図2及び
図7に示すように、上下方向に延びるように、具体的には、下側に向かって車両後側に僅かに傾斜して延びるように配設されている。このことから、接続通路63は、小断面積部632が上下方向に延びるように、酸化触媒61及びDPR62に接続されている。小断面積部632は、
図4に示すように、拡大部633との接続部分が、該小断面積部632の他の部分よりも拡径されている。小断面積部632は、この拡径された部分でも、その流路断面積がDPF62の上記横断面の面積よりも狭くなっている。
【0055】
拡大部633は、
図2及び
図7に示すように、小断面積部632の下端から、下側かつ車両後側に向かって広がるように延びている。拡大部633は、DPF62のフィルタ入口部62aとの接続部分の流路断面積が、DPF62の上記横断面の面積と同程度になるように、車両後側に向かって徐々に拡大されている。具体的には、拡大部633は、
図7に示すように、上側の部分が車両後側に向かって上側に傾斜し、下側の部分が車両後側に向かって下側に傾斜して延びている。
【0056】
拡大部633の車両前側の前側壁部633aは、
図2及び
図7に示すように、導入部631及び小断面積部632の傾斜角度と同程度の角度で、下側に向かってDPF62に近づくように傾斜して、すなわち、下側に向かって車両後側に傾斜して延びている。
【0057】
図3及び
図4に示すように、拡大部633の車両右側の壁部(つまり、拡大部633の周壁におけるエンジン本体10の右側側壁部10aから遠い側の部分)及び車両左側の壁部(以下、左側側壁部633bという)は、下側に向かって車両左側に傾斜して延びている。また、
図6に示すように、拡大部633の車両右側の壁部及び左側側壁部633bは、車両後側に向かって左側に傾斜して延びている。特に、拡大部633の車両右側の壁部は、下側に向かって車両後側に延びつつエンジン本体10の右側側壁部10aに近づくように(つまり、車両左側に)湾曲傾斜している。詳しくは後述するが、拡大部633の車両右側の壁部が上記のような構成をしていることにより、小断面積部632を通過して拡大部633に流入した排気ガスの一部は、該拡大部633の周壁に沿って旋回するようになる。つまり、拡大部633の車両右側の壁部は、小断面積部632を通過した後の排気ガスを、該拡大部633の周壁に沿って旋回させるようなガイド壁部634を構成する。以下の説明では、拡大部633の車両右側の壁部をガイド壁部634という。
【0058】
ガイド壁部634の内面は、
図4に示すように、小断面積部632の車両右側の内面に連続して延びている。また、ガイド壁部634の内面は、小断面積部632よりも車両右側に位置しないようになっている。つまり、小断面積部632を上側から見たときには、ガイド壁部634の内面と小断面積部632の少なくとも一部とが重複するようになっている。
【0059】
ガイド壁部634の下側部分は、
図4に示すように、車両左側に向かって上側に湾曲傾斜している。
【0060】
拡大部633の左側側壁部633bには、
図3、
図4及び
図6に示すように、車両右側に向かって凹んだ凹部633cが形成されている。凹部633cには、湾曲していない平らな平面部633dが形成されている。凹部633cの該平面部633dには、
図3に示すように、排気ガスの状態を検出するための排気ガスセンサ90が接続されている。つまり、排気ガスセンサ90は、拡大部633の周壁におけるガイド壁部634と対向する部分である左側側壁部633bの凹部633cに接続されている。排気ガスセンサ90は、例えば、排気ガスの温度を検出する排気温度センサや、排気ガスの排気通路内での圧力を検出する排気圧センサである。
【0061】
ここで、本実施形態1のように接続通路63に、その流路断面積がDPF62の横断面の面積よりも小さい小断面積部632が形成されていると、排気ガスは、小断面積部632を通過する際に狭い範囲に集約された後、DPF62に流入することになる。排気ガスに狭い範囲に集約されたままDPF62に流入すると、DPF62に流入する排気ガスの速度分布に偏りが生じて、DPF62による排気浄化性能が低下してしまう。また、DPF62に流入する排気ガスの速度分布に偏りが生じると、DPF62を再生させる際に、DPF62の温度分布が不均一になってしまい、DPF62の再生が適切に実行されなくなる。特に、本実施形態1では、DPF62が扁平形状を有しているため、温度分布が不均一になりやすい。
【0062】
そこで、本実施形態1では、拡大部633にガイド壁部634を設けて、拡大部633に流入した排気ガスを、該拡大部633の周壁に沿って旋回させるようにして、DPF62に流入する排気ガスの速度分布を出来る限り均一にするようにしている。以下、接続通路63内での排気ガスの流れについて説明する。
【0063】
酸化触媒61を通過して導入部631に流入した排気ガスは、
図7に示すように、導入部631の壁面に沿って小断面積部632に向かって流れる。小断面積部632に流入した排気ガスは小断面積部632を通過する際に狭い範囲に集約される。
【0064】
小断面積部632を通過した排気ガスは、
図4に示すように、拡大部633のガイド壁部634に沿って流れる。ガイド壁部634は、上述したように、下側に向かって車両後側に延びつつ車両左側に湾曲傾斜しているため、ガイド壁部634に沿って流れた排気ガスには、車両後側及び車両左側の流れ成分が与えられる。また、ガイド壁部634の下側の部分は、車両左側に向かって上側に湾曲傾斜しているため、ガイド壁部634の下側の部分に到達した排気ガスには、車両左側及び上側の流れ成分が与えられる。これにより、拡大部633内の排気ガスは、
図4に示すように、拡大部633の車両左側の部分では左側側壁部633bに沿って上側に上昇する。この結果、拡大部633内において、排気ガスが、DPF62に向かって流れつつ拡大部633の周壁に沿って旋回するようになる。
【0065】
排気ガスが拡大部633の周壁に沿って旋回することにより、排気ガスが拡大部633の横断面全体に広がる。拡大部633の流路断面積は、最終的にDPF62の横断面の面積と同程度になるため、排気ガスがDPF62に入流するときには、該排気ガスはDPF62の横断面全体に分布するようになる。これにより、DPF62に流入する排気ガスの速度分布を出来る限り均一にすることができる。
【0066】
車両前側から見たときの、ガイド部634の入口部分における排気ガスの主流方向に対する鋭角側の傾斜角度αは、排気ガスに旋回成分を与えつつ出来る限り排気抵抗を発生させない角度に設定されている。具体的には、上記傾斜角度αは10°~20°に設定されている。
【0067】
ここで、接続通路の形状がDPF62に流入する排気ガスの速度分布に与える影響についてシミュレーションを行った結果を
図9及び
図10に示す。
図9は、本実施形態1のような拡大部633を有していないモデル(以下、従来構造のモデルという)を用いてDPF62の入口部62aにおける排気ガスの速度分布を算出した結果であり、
図10は、本実施形態1のようなガイド壁634を有する拡大部633が設けられたモデル(以下、本実施形態1のモデルという)を用いてDPF62の入口部62aにおける排気ガスの速度分布を算出した結果である。
図9及び
図10のいずれも、図中の矢印の向きが排気ガスの流れ方向を示している。
【0068】
この解析で用いた従来構造のモデルは
図8に示している。従来構造のモデルでは、本実施形態1のような拡大部633を有しておらず、小断面積部632と同程度の流路断面積の通路がDPF62のフィルタ入口部62aまで延びた構成となっている。従来構造のモデルでも、導入部631から小断面積部632までの構成は同じ構成としている。
【0069】
図9に示すように、従来構造のモデルでは、狭い範囲に集約された排気ガスがそのままDPF62に流入するため、排気ガスの速度分布に大きな偏りが生じていることが分かる。特に、DPF62の下側には排気ガスがほとんど流れていないことが分かる。一方で、本実施形態1のモデルでは、排気ガスがDPF62の入口部62aの周壁に沿って旋回していることが分かる。また、排気ガスが入口部62aの横断面全体に広がって、排気ガスの速度分布が均一になっていることが分かる。このように、本実施形態1のようなガイド壁部634を有する拡大部633を設けることにより、DPF62の横断面が扁平形状を有していたとしても、DPF62に流入する排気ガスの速度分布を出来る限り均一にすることができる。
【0070】
しがたって、本実施形態1では、接続通路63は、その流路断面積がDPF62の横断面の面積よりも小さい小断面積部632を部分的に有し、接続通路62におけるDPF62との接続部分には、その流路断面積がDPF62の横断面の面積と同程度になるように拡大される拡大部633が形成され、拡大部633には、小断面積部632を通過した後の排気ガスを、該拡大部633の周壁に沿って旋回させるようなガイド壁部634が設けられているため、排気ガスが小断面積部632で狭い範囲に集約されたとしても、ガイド壁部634により排気ガスを旋回させて、DPF62に流入する排気ガスの速度分布を出来る限り均一にすることができる。これにより、DPF62による排気浄化性能を向上させることができる。また、DPF62を再生させる際の、DPF62の温度分布が出来る限り均一にすることができ、DPF62の再生を適切に実行することができる。
【0071】
また、本実施形態1では、車両前側から見て、小断面積部632とガイド壁部634とが上下方向に延びている。これにより、小断面積部632から流出した排気ガスが、スムーズにガイド壁部634に沿って流れるようになる。この結果、排気ガスをスムーズに拡大部633の周壁に沿って旋回させることができ、扁平形状を有するDPF62に流入する排気ガスの速度分布の均一化を向上させることができる。
【0072】
特に、本実施形態1では、ガイド壁部634が小断面積部632の車両右側の内面に連続して延びている。このため、小断面積部632からガイド壁部634までの排気ガスの流れをかなりスムーズにすることができる。これにより、排気ガスをスムーズに拡大部633の周壁に沿って旋回させることができる。
【0073】
さらに、本実施形態1では、小断面積部632を上側から見たときには、ガイド壁部634の内面と小断面積部632の少なくとも一部とが重複するようになっている。これにより、小断面積部632を通過した排気ガスの少なくとも一部は、確実にガイド壁部634に沿って流れるようになる。このため、拡大部633内において、排気ガスを該拡大部633の周壁に沿って旋回させやすくすることができる。
【0074】
また、本実施形態1では、酸化触媒61は、接続通路63との接続部分に近づくにつれて下側に位置するように傾斜して配設されている。このため、酸化触媒61を通過した排気ガスが、上下方向に延びる小断面積部632に向かってスムーズに流れるようになる。これにより、接続通路63内において、排気ガスはガイド壁部634までスムーズに流れるようになる。この結果、排気ガスをよりスムーズに旋回させることができ、扁平形状を有するDPF62に流入する排気ガスの速度分布の均一化をより向上させることができる。
【0075】
さらに、本実施形態1では、接続通路63は、エンジン本体10の右側側壁部10aの面直方向から見て(車両右側から見て)、下側に向かってDPF62に近づくように傾斜している。このため、接続通路63を流れる排気ガスに、DPF62に向かう流れ成分を効果的に与えることができる。これにより、ガイド壁部634により拡大部633の周壁に沿って旋回する排気ガスが、DPF62に向かってスムーズに流れるようになる。この結果、扁平形状を有するDPF62に流入する排気ガスの速度分布の均一化を一層向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態1では、ガイド壁部634は、拡大部633の車両右側の壁部は、下側に向かって車両後側(DPF62に近づく方向)に延びつつエンジン本体10の右側側壁部10aに近づくように(つまり、車両左側に)湾曲傾斜している。これにより、ガイド壁部634自体でも、排気ガスに、DPF62に向かう流れ成分を効果的に与えることができる。この結果、扁平形状を有するDPF62に流入する排気ガスの速度分布の均一化をさらに向上させることができる。
【0077】
さらに、本実施形態1では、排気ガスセンサ90が設けられる平面部633dの内面が、DPF62の外周部に向かう傾斜面で形成されている。これにより、DPF62に向かう流れ成分を与えられた排気ガスは、拡大部633内で旋回しながらも、平面部633dの上記傾斜面に沿って案内されて、DPF62に向かって流れていく。この結果、扁平形状を有するDPF62に流入する排気ガスの速度分布の均一化をより向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態1では、排気ガスセンサ90は、拡大部633の周壁におけるガイド壁部634と対向する部分(左側側壁部633b)に設けることで、ガイド壁部634により排気ガスを旋回させる際に、排気ガスセンサ90が抵抗にならない。これにより、扁平形状を有するDPF62に流入する排気ガスの速度分布の均一化をより一層向上させることができる。
【0079】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0080】
図11は、本実施形態2の排気装置を備えるエンジン201を示す。本実施形態2では、エンジン201において、供給される還元剤により排気ガス中のNOxを還元する第1選択還元型触媒(以下、Selective Catalytic Reductionを省略して第1SCR触媒268という)が、DPF62の下流側に隣接して配設されている。また、本実施形態2では、DPR62に、上記第1SCR触媒268と同じ機能の第2選択還元型触媒(以下、第2SCR触媒269という)が担持されている。さらに、本実施形態2では、接続通路63に、第1及び第2SCR触媒268,269に還元剤としてのアンモニアを供給するための尿素インジェクタ292(還元剤供給手段)が配設されている。また、本実施形態2では、排気通路60における低圧EGR通路80よりも下流側でかつ排気シャッター弁67よりも上流側の部分に、第1及び第2SCR触媒268,269から排出された未反応のアンモニアを酸化させて浄化するスリップ触媒270が設けられている。
【0081】
第1及び第2SCR触媒268,269は、尿素インジェクタ292から噴射された尿素((NH2)2CO)から生成されたアンモニアを吸着し、この吸着したアンモニアを排気ガス中のNOxと反応(還元)させて浄化する。尿素インジェクタ292から噴射された尿素は、排気ガスの流れによって接続通路63を流れる。アンモニアは、接続通路63を流れる尿素が、接続通路63内で熱分解反応又は加水分解反応することによって生成される。尚、尿素では無く、アンモニアそのものを供給するようにしてもよく、尿素以外のアンモニアの前駆体を供給するようにしてもよい。
【0082】
図12は、本実施形態2のエンジン201を車両右側から見た側面図である。
図13は、エンジン201を車両前側から見た正面図である。尚、
図12及び
図13では、EGRシステムに関する要素(高圧EGR通路70、低圧EGR通路80等)は省略している。
【0083】
本実施形態2でも、
図12に示すように、排気通路60の上流側の部分(低圧EGR通路80との接続部分よりも上流側)は、エンジン本体10に対して車両右側に配設されている。ターボ過給機53のタービン53b、酸化触媒61、接続通路63、DPF62、第1SCR触媒268及び第2SCR触媒269は、エンジン本体10の右側側壁部10a(厳密には、シリンダヘッド12の右側側壁部及びシリンダブロック13の右側側壁部)に支持されている。
【0084】
本実施形態2では、
図12に示すように、DPF62及び第1SCR触媒268は、同じケース内に車両前後方向に隣接して収容されている。つまり、DPF62に担持された第2SCR触媒269と第1SCR触媒268とは、車両前後方向に隣接して配設されている。DPF62及び第1SCR触媒268を隣接して配設するために、上記ケースは、上記実施形態1と比べて、車両後側に長く延びている。DPF62は、上記実施形態1と同様に、相対する一対の短辺と相対する一対の長辺とを含む扁平形状の横断面を有するとともに、上下方向に長くかつ車幅方向に短くなるように配設されている。第1及び第2SCR触媒268,269も、DPF62と同様に、相対する一対の短辺と相対する一対の長辺とを含む扁平形状の横断面を有しているとともに、上下方向に長くかつ車幅方向に短くなるように配設されている。
【0085】
本実施形態2でも、上記実施形態1と同様に、DPF62は、酸化触媒61の下側に、該酸化触媒61と隣接して配置されている。このため、第1及び第2SCR触媒268,269も、酸化触媒61の下側に配設される。
【0086】
接続通路63の導入部631の上側の壁部には、
図13に示すように、尿素インジェクタ292及び排気ガス中のNOxの濃度を検出するNOxセンサ(図示省略)を取り付ける取付部631aがそれぞれ設けられている。
【0087】
本実施形態2でも、上記実施形態1と同様に、接続通路63には、流路断面積がDPF62の横断面の面積よりも小さい小断面積部632と、流路断面積がDPF62の横断面の面積と同程度になるように拡大される拡大部633とが形成されている。また、拡大部633には、上記実施形態1と同様に、小断面積部632を通過した後の排気ガスを、該拡大部633の周壁に沿って旋回させるようなガイド壁部634が設けられている。このため、排気ガスが小断面積部632で狭い範囲に集約されたとしても、ガイド壁部634により排気ガスを旋回させて、DPF62に流入する排気ガスの速度分布を出来る限り均一にすることができる。これにより、本実施形態2でも、DPF62による排気浄化性能を向上させることができる。また、DPF62を再生させる際の、DPF62の温度分布が出来る限り均一にすることができ、DPF62の再生を適切に実行することができる。
【0088】
また、ガイド壁部634により、排気ガスを拡大部633の周壁に沿って旋回させることで、還元剤としてのアンモニアがDPF62の横断面全体に広がる。これにより、第1及び第2SCR触媒268,269に供給されるアンモニアの分布(第1及び第2SCR触媒268,269の横断面における分布)を出来る限り均一にすることができる。これにより、還元剤としてのアンモニアが第1及び第2SCR触媒268,269の横断面全体に吸着されるため、排気ガスも第1及び第2SCR触媒268,269の排気ガスの浄化効率を向上させることができる。
【0089】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態1及び2では、エンジン本体10はディーゼルエンジンであったが、これに限らず、ガソリンを主成分とした燃料が供給されるガソリンエンジンであってもよい。このときには、微粒子捕集フィルタは、ディーゼルパティキュレートフィルタではなく、ガソリンパティキュレートフィルタとなる。
【0091】
また、上記実施形態1及び2では、エンジン本体10は車両のエンジンルームに縦置きに配設されていたが、これに限らず、エンジン本体10は車両のエンジンルームに横置きに配設されていてもよい。このとき、酸化触媒61やDPF62等を含む排気通路60は、エンジン本体10の車両後側に配置される。
【0092】
さらに、上記実施形態1及び2では、排気浄化触媒として酸化触媒61を用いていたが、これに限らず、例えば、NOxを吸蔵及び還元可能な触媒を用いてもよい。
【0093】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
ここに開示された技術は、エンジンの排気装置において、排気浄化触媒と微粒子捕集フィルタとを接続する接続通路に、流路断面積が微粒子捕集フィルタの横断面の面積よりも小さい小断面積部が形成されている場合に有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 エンジン
10 エンジン本体
10a 右側側壁部(エンジン本体の側壁部)
60 排気通路
61 酸化触媒(排気浄化触媒)
62 DPF(微粒子捕集フィルタ)
63 接続通路
90 排気ガスセンサ
268 第1SCR触媒(第1選択還元型触媒)
269 第2SCR触媒(第2選択還元型触媒)
292 尿素インジェクタ(還元剤供給手段)
632 小断面積部
633 拡大部
633b 左側側壁部(拡大部の周壁におけるガイド壁部と対向する部分)
634 ガイド壁部