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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】注出口栓及び注出口栓を備える包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20220614BHJP
   B65D 5/74 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B65D41/04 200
B65D5/74 020Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018140154
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2019034790
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2017155976
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
(72)【発明者】
【氏名】仲野 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】山出 聡
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 明彦
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027303(WO,A1)
【文献】特開2013-151310(JP,A)
【文献】特開2016-69083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/04
B65D 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に溶着される口栓本体と、前記口栓本体に螺着されるキャップとを備える注出口栓であって、
前記キャップは、天板と、前記天板の外周縁に接続され、内周面に内ネジが形成された側壁と、前記天板の内面に周状に設けられたインナーリングとを有し、
前記インナーリングは、外周面に、前記天板側から、第1の外径を有する第1の領域と、最外径が前記第1の外径より小さい第2の外径を有する第2の領域とを有し、
前記口栓本体は、外周面に外ネジが形成された側壁を有し、かつ、前記キャップよりも剛性が低い材料からなり、
前記口栓本体の側壁は、内周面に、前記容器本体側と反対の上端側から、第1の内径を有する第1の領域と、最内径が前記第1の内径より小さい第2の内径を有する第2の領域とを有し、
前記キャップが前記口栓本体に螺着された状態において、
前記インナーリングの前記第1の領域と前記口栓本体の側壁の前記第1の領域とが全周にわたって密着し、
前記インナーリングの前記第2の領域と前記口栓本体の側壁の前記第2の領域とが全周にわたって密着し、
前記キャップの側壁の内周面の所定の部分と前記口栓本体の側壁の外周面の所定の部分とが全周にわたって密着するとともに、
前記インナーリングの前記第1の領域と前記口栓本体の側壁の前記第1の領域とが密着した領域と、前記インナーリングの前記第2の領域と前記口栓本体の側壁の前記第2の領域とが密着した領域との間に空間を有する、注出口栓。
【請求項2】
前記キャップは、前記天板の前記側壁と前記インナーリングとの間にコンタクトリングを更に有し、
前記キャップが前記口栓本体に螺着された状態において、前記コンタクトリングと前記口栓本体の側壁の上端とが密着する、請求項1に記載の注出口栓。
【請求項3】
前記キャップを前記口栓本体に取り付けて閉方向に回転させる過程において、
前記インナーリングの前記第1の領域が、前記口栓本体の側壁を外方に押し込んで前記口栓本体の側壁の内周面と接触し、
その後、前記インナーリングの前記第2の領域が、前記口栓本体の側壁を更に外方に押し込んで前記口栓本体の側壁の内周面と接触し、
その後、前記キャップが前記口栓本体に螺着された状態となることを特徴とする、請求項2に記載の注出口栓。
【請求項4】
前記キャップが前記口栓本体から取り外された状態において、
前記インナーリングの前記第1の外径と、前記口栓本体の側壁の前記第1の内径との差が、前記インナーリングの前記第2の外径と、前記口栓本体の側壁の前記第2の内径との差よりも大きいことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の注出口栓。
【請求項5】
前記キャップが前記口栓本体から取り外された状態において、
前記インナーリングの前記第1の外径と、前記口栓本体の側壁の前記第1の内径との差が0.30mm以上0.50mm以下であり、
前記インナーリングの前記第2の外径と、前記口栓本体の側壁の前記第2の内径との差が0.10mm以上0.30mm以下であり、
前記キャップの側壁の内周面の所定の部分の内径と、前記口栓本体の側壁の外周面の所定の部分の外径との差が0.20mmである、請求項4に記載の注出口栓。
【請求項6】
前記インナーリングの前記第1の領域における厚みは、前記口栓本体の側壁の前記第1の領域における厚みよりも厚く、インナーリングの第2の領域における厚みは、口栓本体の側壁の第2の領域における厚みより薄い、請求項1~5に記載の注出口栓。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載された注出口栓を備える、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出口栓及び注出口栓を備える包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体等の内容物の包装容器として、注出口栓を設けた包装容器が広く使用されている。この注出口栓は、容器本体に溶着される口栓本体と、口栓本体に螺着されるキャップとを備えている。
【0003】
特許文献1には、紙製容器に溶着される樹脂製の本体と、本体に着脱自在な樹脂製のねじ蓋とを備えた注出装置において、本体は、外周に雄ねじが形成された注出口と、注出口の内部に設けられた閉止板と、閉止板に設けられたプルリングとを有し、ねじ蓋は、本体の注出口に外側から嵌まり、内面に雌ねじが形成された筒部と、天板と、インナーリングとを有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-011128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の注出装置は、注出口に設けられたプルリングに指を挿入してプルリングを引っ張って、閉止板を注出口から切除することで開封されるものである。閉止板によって密封性を保つ方式では、閉止板に設けたプルリングのサイズによっては開封し難かったり、プルリングを引く抜く作業に手間がかかったりした。
【0006】
本発明は、口栓本体に閉止板を設けない構成であっても、高い密封性を確保することが可能な注出口栓及び注出口栓を備える包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器本体に溶着される口栓本体と、口栓本体に螺着されるキャップとを備える注出口栓に関するものであって、キャップは、天板と、天板の外周縁に接続され、内周面に内ネジが形成された側壁と、天板の内面に周状に設けられたインナーリングとを有し、インナーリングは、外周面に、天板側から、第1の外径を有する第1の領域と、最外径が第1の外径より小さい第2の外径を有する第2の領域とを有し、口栓本体は、外周面に外ネジが形成された側壁を有し、かつ、キャップよりも剛性が低い材料からなり、口栓本体の側壁は、内周面に、容器本体側と反対の上端側から、第1の内径を有する第1の領域と、最内径が第1の内径より小さい第2の内径を有する第2の領域とを有し、キャップが口栓本体に螺着された状態において、インナーリングの第1の領域と口栓本体の側壁の第1の領域とが全周にわたって密着し、インナーリングの第2の領域と口栓本体の側壁の第2の領域とが全周にわたって密着し、キャップの側壁の内周面の所定の部分と口栓本体の側壁の外周面の所定の部分とが全周にわたって密着するとともに、インナーリングの第1の領域と口栓本体の側壁の第1の領域とが密着した領域と、インナーリングの第2の領域と口栓本体の側壁の第2の領域とが密着した領域との間に空間を有する。
【0008】
また、キャップは、天板の側壁とインナーリングとの間にコンタクトリングを更に有し、キャップが口栓本体に螺着された状態において、コンタクトリングと口栓本体の側壁の上端とが密着することが好ましい。
【0009】
また、キャップを口栓本体に取り付けて閉方向に回転させる過程において、インナーリングの第1の領域が、口栓本体の側壁を外方に押し込んで口栓本体の側壁の内周面と接触し、その後、インナーリングの第2の領域が、口栓本体の側壁を更に外方に押し込んで口栓本体の側壁の内周面と接触し、その後、キャップが口栓本体に螺着された状態となることが好ましい。
【0010】
また、キャップが口栓本体から取り外された状態において、インナーリングの第1の外径と、口栓本体の側壁の第1の内径との差が、インナーリングの第2の外径と、口栓本体の側壁の第2の内径との差よりも大きいことが好ましい。
【0011】
また、キャップが口栓本体から取り外された状態において、インナーリングの第1の外径と、口栓本体の側壁の第1の内径との差が0.30mm以上0.50mm以下であり、インナーリングの第2の外径と、口栓本体の側壁の第2の内径との差が0.10mm以上0.30mm以下であり、キャップの側壁の内周面の所定の部分の内径と、口栓本体の側壁の外周面の所定の部分の外径との差が0.20mmであることが好ましい。
【0012】
また、インナーリングの第1の領域における厚みは、口栓本体の側壁の第1の領域における厚みよりも厚く、インナーリングの第2の領域における厚みは、口栓本体の側壁の第2の領域における厚みより薄いことが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記注出口栓を備える包装容器に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、口栓本体に閉止板を設けない構成であっても、高い密封性を確保することが可能な注出口栓及び注出口栓を備える包装容器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る注出口栓の断面図
図2】本実施形態に係る注出口栓を備える包装容器の斜視図
図3】本実施形態に係る口栓本体へのキャップの螺着過程を説明する図
図4】キャップの断面及び口栓本体の断面を重ね合わせた模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(注出口栓の構成)
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る注出口栓の断面図である。図1(a)は注出口栓の断面図であり、図1(b)は図1(a)に示す矩形で囲まれた領域の拡大図である。図2は、本実施形態に係る注出口栓を備える包装容器の斜視図である。図1(a)、図1(b)及び図2に示すように、注出口栓1は、容器本体2に溶着される口栓本体3と、口栓本体3に螺着されるキャップ4とを備える。キャップ4は、天板5と、天板5の外周縁に接続され、内周面に内ネジが形成された側壁6と、天板5の内面に周状に設けられたインナーリング7と、天板5の側壁6とインナーリング7との間に設けられたコンタクトリング8とを有する。インナーリング7は、外周面に、天板5側から、第1の外径を有する第1の領域9と、最外径が第1の外径より小さい第2の外径を有する第2の領域10とを備える。口栓本体3は、外周面に外ネジが形成された側壁11を有する。口栓本体3の側壁11は、内周面に、容器本体2側と反対の上端側から、第1の内径を有する第1の領域12と、最内径が第1の内径より小さい第2の内径を有する第2の領域13とを有する。
【0017】
図1(b)に示すように、キャップ4が口栓本体3に螺着された状態において、インナーリング7の第1の領域9と口栓本体3の側壁11の第1の領域12とが全周にわたって密着し、インナーリング7の第2の領域10と口栓本体3の側壁11の第2の領域13とが全周にわたって密着している。
【0018】
また、キャップ4が口栓本体3に螺着された状態において、キャップ4の側壁6の内周面の所定の部分14と口栓本体3の側壁11の外周面の所定の部分15とが全周にわたって密着している。キャップ4の側壁6の内周面の所定の部分14は、キャップ4の側壁6の内周面において、側壁6と天板5との接続箇所と、最も天板5側に設けられた内ネジとの間に形成された部分である。口栓本体3の側壁11の外周面の所定の部分15は、側壁11の容器本体2側と反対の上端と、最も上端側に設けられた外ネジとの間に形成された部分である。また、キャップ4が口栓本体3に螺着された状態において、キャップ4のコンタクトリング8と口栓本体3の側壁11の上端とが密着している。
【0019】
つまり、キャップ4が口栓本体3に螺着された状態において、インナーリング7の第1の領域9と口栓本体3の側壁11の第1の領域12との接触箇所、インナーリング7の第2の領域10と口栓本体3の側壁11の第2の領域13との接触箇所、キャップ4の側壁6の内周面の所定の部分14と口栓本体3の側壁11の外周面の所定の部分15との接触箇所、及びコンタクトリング8と口栓本体3の側壁11の上端との接触箇所の4箇所がそれぞれ密着していることで、容器本体2は密封されている。
【0020】
また、キャップ4が口栓本体3に螺着された状態において、インナーリング7の第1の領域9と口栓本体3の側壁11の第1の領域12とが密着した領域と、インナーリング7の第2の領域10と口栓本体3の側壁11の第2の領域13とが密着した領域との間に、空間16を有する。空間16を有することで、インナーリング7の内周面と口栓本体3の側壁11の外周面とにおいて、全周にわたって確実に密着した領域を2つ設けることができる。
【0021】
口栓本体3は、キャップ4よりも剛性が低い材料からなる。口栓本体3の材料としては、例えば、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられ、キャップ4の材料としては、例えば、ポリプロピレンが挙げられるが、口栓本体3及びキャップ4の材料はこれらに限定されない。また、口栓本体3がキャップ4よりも剛性(曲げ弾性率)が低い(小さい)材料からなることを条件として、口栓本体3の材料の曲げ弾性率は、100MPa以上1200MPa以下とし、キャップ4の材料の曲げ弾性率は、1000MPa以上2100MPa以下とすることが好ましい。
【0022】
口栓本体3の側壁11は、下端縁に、外方に延出するフランジ17を有する。フランジ17は容器本体2と容器本体2に取り付けられた口栓本体3との接合箇所となる。
【0023】
(口栓本体へのキャップの螺着過程の説明)
以下、図3及び図4を参照しながら、口栓本体3へのキャップ4の螺着過程と、容器本体2の密封状態とについて説明する。図3の(a)~(d)は、本実施形態に係る口栓本体へのキャップの螺着過程を説明する図である。図3の(a)~(d)は、それぞれ図1(a)に示す矩形で囲まれた領域に相当する領域の拡大図である。図4は、キャップの断面及び口栓本体の断面を重ね合わせた模式図である。図4は、キャップを口栓本体から取り外した状態におけるキャップ及び口栓本体の断面を重ね合わせた図であり、図1(a)に示す矩形で囲まれた領域に相当する領域の模式図である。理解を容易にするため、キャップ4の断面にはハッチングを施し、口栓本体3の断面にはハッチングを施していない。
【0024】
口栓本体3へキャップ4を螺着するには、まず、図3(a)に示すように、キャップ4の側壁6の内部に口栓本体3の側壁11の上端部分を挿入する。キャップ4を口栓本体3に取り付けて閉方向に回転させると、口栓本体3の側壁11の上端側の一部がキャップ4の側壁6とインナーリング7との間に挿入される。このとき、インナーリング7の第1の領域9は、口栓本体3の側壁11の内周面と接触していない。また、インナーリング7の第2の領域10と口栓本体3の側壁11の内周面、キャップ4の側壁6の内周面の所定の部分14と口栓本体3の側壁11の外周面の所定の部分15、及びコンタクトリング8と口栓本体3の側壁11の上端も、それぞれ接触していない。
【0025】
その後、キャップ4を閉方向に更に回転させると、図3(b)に示すように、インナーリング7の第1の領域9が、口栓本体3の側壁11を外方に押し込んで口栓本体3の側壁11の内周面と接触する。このとき、インナーリング7の第2の領域10と口栓本体3の側壁11の内周面、キャップ4の側壁6の内周面の所定の部分14と口栓本体3の側壁11の外周面の所定の部分15、及びコンタクトリング8と口栓本体3の側壁11の上端は、それぞれ接触していない。
【0026】
図4に示すように、インナーリング7の第1の領域9の第1の外径は、図3(b)に示す口栓本体3の側壁11の内周面におけるインナーリング7の第1の領域9と接触する領域の内径よりも大きい。また、上述のように、口栓本体3は、キャップ4よりも剛性が低い材料からなる。そのため、インナーリング7が口栓本体3の内部に挿入される際に、インナーリング7の第1の領域9が、インナーリング7の第1の領域9と接触する口栓本体3の側壁11の内周面を外方に押し込む。
【0027】
その後、キャップ4を閉方向に更に回転させると、図3(c)に示すように、インナーリング7の第2の領域10が、口栓本体3の側壁11を外方に押し込んで口栓本体3の側壁11の内周面と接触する。また、インナーリング7の第1の領域9が、口栓本体3の側壁11を更に外方に押し込む。このとき、キャップ4の側壁6の内周面の所定の部分14と口栓本体3の側壁11の外周面の所定の部分15、及びコンタクトリング8と口栓本体3の側壁11の上端は、それぞれ接触していない。
【0028】
図4に示すように、インナーリング7の第2の領域10の第2の外径は、図3(c)に示す口栓本体3の側壁11の内周面におけるインナーリング7の第2の領域10と接触する領域の内径よりも大きい。また、上述のように、口栓本体3は、キャップ4よりも剛性が低い材料からなる。そのため、インナーリング7が口栓本体3の内部に挿入される際に、インナーリング7の第2の領域10が、インナーリング7の第2の領域10と接触する口栓本体3の側壁11の内周面を外方に押し込む。
【0029】
その後、キャップ4を閉方向に更に回転させると、図3(d)に示すように、キャップ4が口栓本体3に螺着された状態となる。つまり、インナーリング7の第1の領域9と口栓本体3の側壁6の第1の領域12とが全周にわたって密着し、インナーリング7の第2の領域10と口栓本体3の側壁11の第2の領域13とが全周にわたって密着し、キャップ4の側壁6の内周面の所定の部分14と口栓本体3の側壁11の外周面の所定の部分15とが全周にわたって密着し、コンタクトリング8と口栓本体3の側壁11の上端とが密着した状態となる。尚、図3(d)は、図1(b)と同じである。
【0030】
インナーリング7の第1の領域9は、図3(b)の状態及び図3(c)の状態の両方で口栓本体3の側壁11を外方に押し込み、図3(d)の状態において口栓本体3の側壁11の第1の領域12と全周にわたって密着する。これに対し、インナーリング7の第2の領域10は、図3(b)の状態において口栓本体3の側壁11の内周面と接触しておらず、図3(c)の状態において口栓本体3の側壁11を外方に押し込み、図3(d)の状態において口栓本体3の側壁11の第2の領域13と全周にわたって密着する。そのため、図4に示すように、キャップ4が口栓本体3から取り外された状態において、インナーリング7の第1の領域9の第1の外径と、口栓本体3の側壁11の第1の領域12の第1の内径との差が、インナーリング7の第2の領域10の第2の外径と、口栓本体3の側壁11の第2の領域13の第2の内径との差よりも大きい。このような構成とすることで、インナーリング7の第1の領域9及び第2の領域10と口栓本体3の側壁11の内周面との接触を確保しつつ、口栓本体3の側壁11の内周面を二回押し込む第1の領域9及び口栓本体3の側壁11を一回押し込む第2の領域10の押し込み量のバランスを図ることができる。
【0031】
インナーリング7の第1の外径と口栓本体3の側壁11の第1の内径との差が、インナーリング7の第2の外径と口栓本体3の側壁11の第2の内径との差よりも大きいことを条件として、上記第1の外径と第1の内径との差、及び上記第2の外径と第2の内径との差は、それぞれ直径において0.10mm以上0.50mm以下とすることが好ましい。一例として、第1の外径と第1の内径との差を0.30mm以上0.50mm以下とし、第2の外径と第2の内径との差を0.10mm以上0.30mm以下とし、所定の部分14の内径と所定の部分15の外径との差を0.20mmとすることができる。第1の外径と第1の内径との差、及び上記第2の外径と第2の内径との差をそれぞれ上記の範囲に設定することで、より高い密封性を確保することができる。なお、上記の内径及び外径は、直径における内径及び外径を意味する。
【0032】
ここで、キャップ4が口栓本体3に螺着された状態において、インナーリング7の外周面と口栓本体3の側壁11の内周面との接触領域が、キャップ4の中心軸と平行の方向に所定の距離を有する1箇所である場合、当該接触領域において各々が接触している部分と各々が接触していない部分とが形成されている場合がある。つまり、当該接触領域に隙間ができている場合があり、この隙間が連通することで容器本体2が密封されていない状態となっている場合がある。
【0033】
本実施形態に係る注出口栓1によれば、インナーリング7の第1の領域9及び第2の領域10が、それぞれ口栓本体3の側壁11を外方に押し込み、空間16を挟んで、それぞれ口栓本体3の側壁11の第2の領域12及び第2の領域13と密着する。これにより、インナーリング7の外周面と口栓本体3の内周面において全周にわたって確実に密着した領域を2箇所設けることができる。そのため、口栓本体3に閉止板を設けない構成であっても高い密封性を確保することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る注出口栓1によれば、開封前だけでなく開封後の再封時においても、インナーリング7の外周面と口栓本体3の内周面において全周にわたって確実に密着した領域を2箇所設けることができるため、高い密封性を確保することができる。
【0035】
また、内容物が収納された容器本体2を床などに落とした場合であっても、注出口栓1は空間16を挟んで全周にわたって確実に密着した領域を2つ有している。これにより、内容物がインナーリング7の第2の領域10と口栓本体3の側壁11の第2の領域13との1箇所目の密着領域を超えて空間16に侵入したとしても、注出口栓1は更にインナーリング7の第1の領域9と口栓本体3の側壁11の第1の領域12との2箇所目の密着領域を有する。つまり、インナーリング7の外周面と口栓本体3の側壁11の内周面において密着領域が二重に形成されているため、口栓本体3に閉止板を設けない構成であっても、内容物がこれらの密着領域を超えて容器本体2から流出することを抑制することができる。
【0036】
また、口栓本体3へのキャップ4の螺着過程において、インナーリング7の第1の領域9と口栓本体3の側壁11の第1の領域12とが密着した後に、インナーリング7の第2の領域10と口栓本体3の側壁11の第2の領域13とが密着する。これにより、空間16の形成の際に空間16内から容器本体2内に空気を逃がすことができ、かつ、空間16に留まる空気は微量である。そのため、キャップ4の締め込み時の抵抗が小さな注出口栓1を備える包装容器を実現できる。
【0037】
また、高温の内容物を充填した場合、内容物を冷却するために容器全体に冷却水をシャワーすることがある。その際、シャワーされた冷却水がキャップ4と口栓本体3との隙間に浸入する場合がある。本実施形態に係る注出口栓1によれば、キャップ4が口栓本体3に螺着された状態において、キャップ4の側壁6の内周面の所定の部分14と口栓本体3の側壁11の外周面の所定の部分15とが全周にわたって密着している。そのため、キャップ4と口栓本体3との隙間から侵入した冷却水は、上記所定の部分14及び15との密着領域を超えて、口栓本体3の上端部や口栓本体3の内部まで侵入することができない。その結果、冷却水による口栓本体3の上端部や口栓本体3の内部の汚染を防ぐことができる。
【0038】
尚、図1の(b)に示すように、口栓本体3の側壁11の上端部に、液だれ防止のために突起部18及び溝19をさらに設けてもよい。溝19は、突起部18のフランジ17側の外周面に形成される。突起部18及び溝19を設けている場合には、口栓本体3の側壁11の外周面の所定の部分15は、当該溝19と、最も上端側に設けられた外ネジとの間に形成されることが好ましい。これにより、液だれ防止のための突起部18及び溝19にシャワー冷却水が付着することを防ぐことができるため、内容物を注出する際に、当該突起部18及び溝19に付着したシャワー冷却水の残留物が内容物と混ざって注出されることを防ぐことができる。
【0039】
また、突起部18の内径を側壁11の第1の領域12の内径よりも大きく形成し、かつ突起部18の外径を所定の部分15の外径よりも小さく形成することにより、突起部18とキャップ4の所定の部分14及び第1の領域9との隙間を大きく確保することができる。これにより、上述の螺着過程において側壁11がインナーリング7により外方に押し込まれた際に、側壁11の上端部がキャップ4の所定の部分14に当接してキャップ4の回転トルクが上昇してしまうことを抑制することができる。
【0040】
さらに、溝19を設けることにより、突起部18の上端がキャップ4の側壁6や天板15等に当接した場合に、突起部18を溝19周辺において撓ませることができる。これにより、螺着過程において、突起部18がキャップ4の側壁6や天板15等に当接することにより側壁6が内方に押し込まれてインナーリング7の第1の領域9側に押し込まれることで、インナーリング7の第2の領域10と側壁11の第2の領域13との間に隙間が生じて密封性が低下してしまうことを抑制できる。
【0041】
また、上述の実施形態では、口栓本体3をキャップ4よりも曲げ弾性率が低い材料で形成することで側壁11をインナーリング7よりも剛性が低い構造とすることで、口栓本体3に閉止板を設けない構成であっても高い密封性を確保することができたが、これに加え、あるいは、これに代えて、インナーリング7および側壁11の半径方向における厚みを適切に設定して、側壁11をインナーリング7よりも低い剛性としてもよい。例えば、インナーリング7の第1の領域9における半径方向の厚みを、側壁11の第1の領域12における半径方向の厚みよりも厚く形成することができる。また、第2の領域10における半径方向の厚みを、側壁11の第2の領域13における半径方向の厚みより薄く形成することができる。これによって、口栓本体3及びキャップ4に同程度の曲げ弾性率の材料を用いた場合にも、側壁6の第1の領域12の剛性を、インナーリング7の第1の領域9の剛性よりも小さくできる。
【0042】
以上のように、本発明に係る注出口栓及び注出口栓を備える包装容器によれば、口栓本体に閉止板を設けない構成であっても、高い密封性を確保することができる。また、開封前だけでなく、開封後の再封時においても高い密封性を確保することができ、かつ、包装容器の落下時において注出口栓からの内容物の流出を抑制することができる。
【0043】
尚、初回の開封が行われたか否かを明確にするための改ざん防止機能をキャップに付与するため、キャップの側壁の下端にタンパーエビデントバンドを設けてもよい。タンパーエビデントバンドとしては、公知のものを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明における注出口栓及び注出口栓を備える包装容器は、例えば、液体等の内容物を収納した包装容器に設けられる注出口栓や注出口栓を備える包装容器に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
1 注出口栓
2 容器本体
3 口栓本体
4 キャップ
5 天板
6 側壁
7 インナーリング
8 コンタクトリング
9 第1の領域
10 第2の領域
11 側壁
12 第1の領域
13 第2の領域
14 所定の部分
15 所定の部分
16 空間
17 フランジ
18 突起
19 溝
図1
図2
図3
図4