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  • 特許-半導体レーザモジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】半導体レーザモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0683 20060101AFI20220614BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20220614BHJP
【FI】
H01S5/0683
H01S5/022
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018194127
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020064894
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】藤井 淳
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037531(JP,A)
【文献】特開2011-008221(JP,A)
【文献】特開2014-115443(JP,A)
【文献】特開平07-134101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0024428(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107209448(CN,A)
【文献】特開2009-002774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S5/00-5/50
G02B26/10-26/12
G01N21/62-21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体の励起光源として用いられる半導体レーザモジュールであって、
レーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射されたレーザ光を整形する整形レンズと、
前記整形レンズで整形されたレーザ光の波長を通過させる多孔質であるフィルタと、
前記フィルタで通過されたレーザ光を分岐するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタで分岐されたレーザ光を受光する受光素子と、
前記受光素子で受光されたレーザ光に基づく受光信号が所定値になるように前記半導体レーザの電流を制御する制御部と、
を備え、
前記フィルタは、入射面が前記半導体レーザの電場方向に対して平行であることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【請求項2】
蛍光体の励起光源として用いられる半導体レーザモジュールであって、
レーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射されたレーザ光を整形する整形レンズと、
前記整形レンズで整形されたレーザ光の波長を通過させる多孔質であるフィルタと、
前記フィルタで通過されたレーザ光を分岐するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタで分岐されたレーザ光を受光する受光素子と、
前記受光素子で受光されたレーザ光に基づく受光信号が所定値になるように前記半導体レーザの電流を制御する制御部と、
を備え
前記フィルタは、入射面が前記半導体レーザの磁場方向に対して平行であることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体の励起光源として用いられる半導体レーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体レーザモジュールで蛍光体を励起し、蛍光体の蛍光を検出する光検出型電気泳動装置が記載されている。
【0003】
この場合、励起光源としての半導体レーザモジュールのレーザ光の発振波長と蛍光体の発光波長が近接することがある。この場合、半導体レーザから出射されるLED発光スペクトルによって、蛍光体の発光波長帯のSN(信号対雑音比)が悪くなる。
【0004】
このため、半導体レーザモジュールのレーザ出射側にフィルタを配置して、蛍光体の発光波長帯のスペクトルを減衰させることで、蛍光体の発光波長帯のSNの悪化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-94617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体レーザモジュールのレーザ光の発振波長と蛍光体の発光波長が近接しているので、フィルタのカットオフ周波数をレーザ光の発振波長付近となるように調整する必要がある。
【0007】
このため、フィルタの透過率曲腺が半導体レーザモジュールのレーザ光の発振波長と近接することになる。このため、温度変化によって、フィルタの透過率曲腺の特性が変化すると、フィルタの出力が変動してしまう。
【0008】
本発明の課題は、温度変化によって、フィルタの透過率曲腺の特性が変化しても、一定の出力を得ることができる半導体レーザモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、蛍光体の励起光源として用いられる半導体レーザモジュールであって、レーザ光を出射する半導体レーザと、前記半導体レーザから出射されたレーザ光を整形する整形レンズと、前記整形レンズで整形されたレーザ光の波長を通過させる多孔質であるフィルタと、前記フィルタで通過されたレーザ光を分岐するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタで分岐されたレーザ光を受光する受光素子と、前記受光素子で受光されたレーザ光に基づく受光信号が所定値になるように前記半導体レーザの電流を制御する制御部とを備え、前記フィルタは、入射面が前記半導体レーザの電場方向に対して平行であることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明では、蛍光体の励起光源として用いられる半導体レーザモジュールであって、レーザ光を出射する半導体レーザと、前記半導体レーザから出射されたレーザ光を整形する整形レンズと、前記整形レンズで整形されたレーザ光の波長を通過させる多孔質であるフィルタと、前記フィルタで通過されたレーザ光を分岐するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタで分岐されたレーザ光を受光する受光素子と、前記受光素子で受光されたレーザ光に基づく受光信号が所定値になるように前記半導体レーザの電流を制御する制御部とを備え、前記フィルタは、入射面が前記半導体レーザの磁場方向に対して平行であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度変化によって、フィルタの透過率曲腺の特性が変化しても、制御部は、受光素子で受光されたレーザ光に基づく受光信号が所定値になるように半導体レーザの電流を制御するので、一定の出力を得ることができる。その結果、環境温度の変化の影響を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の半導体レーザモジュールの構成を示す図である。
図2】実施例1の半導体レーザモジュールに設けられるショートパスフィルタの透過率特性を示す図である。
図3図2に示すショートパスフィルタの透過率特性の515nm付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の半導体レーザモジュールの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
(実施例1)
図1は、実施例1の半導体レーザモジュールの構成を示す図である。半導体レーザモジュールは、蛍光体の励起光源として用いられる半導体レーザモジュールであって、半導体レーザ1、ビーム整形光学系2、ショートパスフィルタ3、ビームスプリッタ4、フォトダイオード(PD)5、APC回路(Auto Power Control)6、窓7を備えている。
【0017】
半導体レーザ1は、蛍光体を励起する励起用レーザであり、励起用のレーザ光を出射する。半導体レーザ1の発振波長は、488nm、505nm、515nmのレーザダイオードが用いられる。
【0018】
ビーム整形光学系2は、整形レンズからなり、半導体レーザ1から出射されたレーザ光を所望のビーム形状に整形して窓7を介して出射側に空間伝搬させる。
【0019】
ショートパスフィルタ3は、ビーム整形光学系2で整形されたレーザ光の波長を通過させる。ショートパスフィルタ3は、短波長側を通過させ、長波長側を遮断する機能を有した誘電体多層膜フィルタからなり、透過帯から透過阻止帯への移行が急峻になるように誘電体多層膜が形成されている。
【0020】
また、ショートパスフィルタ3の入射面が半導体レーザ1の磁場方向に対して平行になるように設置されている。さらに、ショートパスフィルタ3への入射角が5~15°となるように角度を調整することで、カットオフ周波数が各半導体レーザ1のロットのばらつきの上限値付近となる。ここで、カットオフ周波数fcとは、ショートパスフィルタ3の透過率が50%となる周波数である。
【0021】
例えば、半導体レーザ1の発振波長が505nmである場合、カットオフ周波数が507nm付近となるようにする入射角を調整する。
【0022】
即ち、ショートパスフィルタ3は、カットオフ周波数が半導体レーザ1のレーザ光の波長付近となるように調整される。
【0023】
その結果、図2図3に示すような透過率特性となり、515nm以上の波長域に対しては、透過率は0.1%以下となる。図3からもわかるように、515nmでは、透過率は0.07%となる。
【0024】
ビームスプリッタ4は、ショートパスフィルタ3で通過されたレーザ光を2分岐し、一方のレーザ光をフォトダイオード5に導光し、他方のレーザ光を窓7を介して外部に出射する。
【0025】
フォトダイオード5は、本発明の受光素子に対応し、ビームスプリッタ4で分岐されたレーザ光を受光し、受光光信号を電気信号に変換する。APC回路6は、本発明の制御部に対応し、フォトダイオード5からの電気信号が所定値になるように半導体レーザ1の電流を制御する。ビームスプリッタ4の分岐率が変化しない場合には、窓7から出射した光の出力は、一定値となる。
【0026】
このように、実施例1の半導体レーザモジュールによれば、温度変化によって、ショートパスフィルタ3の透過率曲腺の特性が変化しても、APC回路6は、フォトダイオード5で受光されたレーザ光に基づく受光信号が所定値になるように半導体レーザ1の電流を制御するので、一定の出力を得ることができる。その結果、環境温度の変化の影響を受けない。
【0027】
また、ショートパスフィルタ3の膜質が多孔質である場合、ショートパスフィルタ3の複屈折性に起因して、レーザ光の偏光方向が回転してしまう。
【0028】
これに対して、ショートパスフィルタ3の入射面を半導体レーザ1の磁場方向に対して平行になるように調整することで、レーザ光の偏光方向を回転しないようにすることができる。
【0029】
また、ショートパスフィルタ3入射面を半導体レーザ1の電場方向に対して平行になるように調整することで、レーザ光の偏光方向を回転しないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る半導体レーザモジュールは、励起光源に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 半導体レーザ
2 ビーム整形光学系
3 ショートパスフィルタ
4 ビームスプリッタ
5 フォトダイオード
6 APC回路
7 窓
図1
図2
図3