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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】追越し車両判定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220614BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20220614BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/04
G01S13/87
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018200091
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020067821
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】宇江田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】森谷 貴行
(72)【発明者】
【氏名】玉積 英明
(72)【発明者】
【氏名】田丸 順基
(72)【発明者】
【氏名】山本 祥寛
(72)【発明者】
【氏名】有永 剛
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055427(JP,A)
【文献】特開2016-224785(JP,A)
【文献】特開平11-321379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 40/04
G01S 13/87
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する車線の隣の車線を走行する他車両が追越し車両であるか否かを判定する追越し車両判定装置であって、
前記自車両の前側方の前記他車両を検出可能な前側方レーダと、
前記自車両の後側方の前記他車両を検出可能な後側方レーダと、
前記前側方レーダおよび前記後側方レーダによる検出結果を取得し、前記自車両に対する前記他車両の相対速度を算出するとともに、前記他車両が追越し車両であるか否かを判定する追越し車両判定部と、
を備え、
前記追越し車両判定部は、前記相対速度が所定速度以上である場合に、前記前側方レーダおよび前記後側方レーダにより前記他車両を検出する第1追越し判定エリアと、前記前側方レーダにより前記他車両を検出する第2追越し判定エリアと、を設定し、当該第1追越し判定エリアおよび前記第2追越し判定エリアでの両検出結果を用いて前記他車両が前記追越し車両であるか否かの判定を実行する、
追越し車両判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の追越し車両判定装置において、
前記追越し車両判定部は、前記相対速度が所定速度未満である場合に、前記前側方レーダにより前記他車両を検出する前記第2追越し判定エリアだけを設定し、当該第2追越し判定エリアでの検出結果を用いて前記他車両が前記追越し車両であるか否かの判定を実行する、
追越し車両判定装置。
【請求項3】
自車両が走行する車線の隣の車線を走行する他車両が追越し車両であるか否かを判定する追越し車両判定装置であって、
前記自車両の前側方の前記他車両を検出可能な前側方レーダと、
前記自車両の後側方の前記他車両を検出可能な後側方レーダと、
前記前側方レーダおよび前記後側方レーダによる検出結果を取得し、前記他車両が追越し車両であるか否かを判定する追越し車両判定部と、
を備え、
前記追越し車両判定部は、前記前側方レーダおよび前記後側方レーダにより前記他車両を検出する第1追越し判定エリアと、前記前側方レーダにより前記他車両を検出する第2追越し判定エリアと、を設定し、当該第1追越し判定エリアおよび前記第2追越し判定エリアでの両検出結果を用いて前記他車両が前記追越し車両であるか否かの判定を実行する、
追越し車両判定装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の追越し車両判定装置において、
前記追越し車両判定部は、前記第1追越し判定エリアで前記他車両を検出した後に、当該他車両を前記第2追越し判定エリアで検出した場合に、前記他車両が前記追越し車両であると判定する、
追越し車両判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の追越し車両判定装置において、
前記追越し車両判定部は、前記第1追越し判定エリアで前記他車両を検出した時点から、前記第2追越し判定エリアで当該他車両を検出した時点までの時間が、所定時間以内の場合に、前記他車両が前記追越し車両であると判定する、
追越し車両判定装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の追越し車両判定装置において、
前記追越し車両判定部は、前記第1追越し判定エリアにおける前記車線の延伸方向での長さを、前記相対速度が高いほど長く設定する、
追越し車両判定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の追越し車両判定装置において、
前記追越し車両判定部は、前記長さを前記相対速度に比例した値に設定する、
追越し車両判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追越し車両判定装置に関し、特に、レーダを備える追越し車両判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、自車両の周囲の物標(例えば、自車両の周囲の他車両)を検出するためのレーダが搭載されたものがある。このようにレーダを搭載した車両では、例えば、自車両が走行する車線の隣の車線を走行している他車両を認識することにより、当該他車両が追越し車両であるか否かを判定することが可能である。
【0003】
特許文献1には、自車両の前方の物標を検出するための前方レーダと、自車両の前側方の物標を検出するための前側方レーダと、を備えた車両が開示されている。特許文献1に開示の車両では、前側方レーダにより隣車線を走行する車両を認識し、これにより当該認識車両が自車両の前に割り込んでくるか否かを判定することとしている。
【0004】
特許文献2には、自車両の前方の物標を検出するための前方レーダと、自車両の前側方の物標を検出するための前側方レーダと、自車両の後側方の物標を検出するための後側方レーダと、を備えた車両が開示されている。特許文献2に開示の車両では、前方レーダ、前側方レーダ、および後側方レーダの検出結果を用いて、隣車線を走行する他車両の相対速度を算出し、当該算出結果に基づいて該他車両が自車両の前方に割り込んだ場合の自車両との間隔を予測することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-61167号公報
【文献】特開2017-136897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示の技術では、高い精度で追越し車両を判定することは困難である。即ち、レーダは、ビーム中心での検出精度が最も高く、ビーム中心から角度がつくほど検出精度が低下するという特性を有する。よって、特許文献1,2に開示の技術では、各レーダにおけるビーム中心から角度がついた領域では低い精度でしか他車両の検出ができず、高い精度で追越し車両を判定することは困難である。
【0007】
なお、上記特許文献2に係る技術では、複数のレーダの検出結果を用いて、他車両が自車両の前方に割り込んだ場合の間隔(車間距離)を予測するのみであって、該他車両が自車両の前方に割り込むか否かの判定までは行っていない。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、隣車線を走行する車両が追越し車両であるか否かを、レーダを用いて高い精度で判定することができる追越し車両判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る追越し車両判定装置は、自車両が走行する車線の隣の車線を走行する他車両が追越し車両であるか否かを判定する追越し車両判定装置であって、前記自車両の前側方の前記他車両を検出可能な前側方レーダと、前記自車両の後側方の前記他車両を検出可能な後側方レーダと、前記前側方レーダおよび前記後側方レーダによる検出結果を取得し、前記自車両に対する前記他車両の相対速度を算出するとともに、前記他車両が追越し車両であるか否かを判定する追越し車両判定部と、を備え、前記追越し車両判定部は、前記相対速度が所定速度以上である場合に、前記前側方レーダおよび前記後側方レーダにより前記他車両を検出する第1追越し判定エリアと、前記前側方レーダにより前記他車両を検出する第2追越し判定エリアと、を設定し、当該第1追越し判定エリアおよび前記第2追越し判定エリアでの両検出結果を用いて前記他車両が前記追越し車両であるか否かの判定を実行する。
【0010】
上記の追越し車両判定装置では、相対速度が所定速度以上の場合に、第1追越し判定エリアと第2追越し判定エリアの2つのエリアを設定した上で、これら2つのエリアでの検出結果を用いて他車両が追越し車両であるか否かを判定することとしているので、各レーダの検出精度にかかわらず高い精度での追越し車両判定が可能である。即ち、自車両の隣を他車両が追い抜いてゆく過程において、後側方レーダあるいは前側方レーダだけを用いて該他車両が追越し車両であるか否かを判定する場合には、検出結果を採用するレーダの検出精度によって誤判定を生じる場合が発生し得る。
【0011】
しかしながら、上記の追越し車両判定装置では、前側方レーダと後側方レーダとにより検出がなされる第1追越し判定エリアでの検出結果と、前側方レーダにより検出がなされる第2追越し判定エリアでの検出結果と、を両方用いて追越し車両判定を行うこととしているので、前側方レーダの検出結果だけを用いて追越し車両判定を行う上記特許文献1の技術よりも高い精度での追越し車両判定が可能である。
【0012】
上記態様に係る追越し車両判定装置では、前記追越し車両判定部が、前記相対速度が所定速度未満である場合に、前記前側方レーダにより前記他車両を検出する前記第2追越し判定エリアだけを設定し、当該第2追越し判定エリアでの検出結果を用いて前記他車両が前記追越し車両であるか否かの判定を実行する、こととしてもよい。
【0013】
上記の追越し車両判定装置では、相対速度が所定速度未満である場合に、前側方レーダにより検出を行う第2追越し判定エリアだけを設定し、当該第2追越し判定エリアでの検出結果を以って他車両が追越し車両であるか否かを判定するので、相対速度が小さく、サンプリング間隔との関係で後側方レーダの検出結果を保存しきれないような場合にも、高い精度での追越し車両判定が可能となる。よって、追越し車両判定部におけるメモリ容量を大きくしなくても、高い精度での追越し車両判定が可能となる。
【0014】
また、本発明の別態様に係る追越し車両判定装置は、自車両が走行する車線の隣の車線を走行する他車両が追越し車両であるか否かを判定する追越し車両判定装置であって、前記自車両の前側方の前記他車両を検出可能な前側方レーダと、前記自車両の後側方の前記他車両を検出可能な後側方レーダと、前記前側方レーダおよび前記後側方レーダによる検出結果を取得し、前記他車両が追越し車両であるか否かを判定する追越し車両判定部と、を備え、前記追越し車両判定部は、前記前側方レーダおよび前記後側方レーダにより前記他車両を検出する第1追越し判定エリアと、前記前側方レーダにより前記他車両を検出する第2追越し判定エリアと、を設定し、当該第1追越し判定エリアおよび前記第2追越し判定エリアでの両検出結果を用いて前記他車両が前記追越し車両であるか否かの判定を実行する。
【0015】
上記の追越し車両判定装置では、相対速度の大小にかかわらず、第1追越し判定エリアと第2追越し判定エリアの2つのエリアを設定した上で、これら2つのエリアでの検出結果を用いて他車両が追越し車両であるか否かを判定することとしているので、上述同様に、各レーダの検出精度にかかわらず高い精度での追越し車両判定が可能である。
【0016】
上記態様に係る追越し車両判定装置では、前記追越し車両判定部が、前記第1追越し判定エリアで前記他車両を検出した後に、当該他車両を前記第2追越し判定エリアで検出した場合に、前記他車両が前記追越し車両であると判定する、こととしてもよい。
【0017】
上記の追越し車両判定装置では、具体的に、第1追越し判定エリアで他車両を検出した後に、当該他車両を第2追越し判定エリアで検出した場合に、他車両が追越し車両であると判定する、としているので、他車両が第1追越し判定エリアから第2追越し判定エリアへと進むことで、該他車両が追越し車両であると正確に判定することができる。
【0018】
上記態様に係る追越し車両判定装置では、前記追越し車両判定部が、前記第1追越し判定エリアで前記他車両を検出した時点から、前記第2追越し判定エリアで当該他車両を検出した時点までの時間が、所定時間内の場合に、前記他車両が前記追越し車両であると判定する、こととしてもよい。
【0019】
上記の追越し車両判定装置では、他車両が、所定時間内に第1追越し判定エリアから第2追越し判定エリアへと進んだ場合にだけ、当該他車両が追越し車両であると判定することとしているので、より正確に追越し車両判定を行うことができる。例えば、他車両が第1追越し判定エリアに侵入した後に、所定時間内に第2追越し判定エリアに侵入しない場合には、該他車両が進路を変更し、他車両とは別の車両が進路変更などにより第2追越し判定エリアに侵入してきたような状況も考えられる。上記の追越し車両判定装置では、上記のような状況での追越し車両判定を排除して、より正確な追越し車両判定を可能としている。
【0020】
上記態様に係る追越し車両判定装置では、前記追越し車両判定部が、前記第1追越し判定エリアにおける前記車線の延伸方向での長さを、前記相対速度が高いほど長く設定する、こととしてもよい。
【0021】
上記の追越し車両判定装置では、第1追越し判定エリアの長さを、相対速度が高いほど長くすることとしているので、各レーダにおけるサンプリング間隔との関係においても、該エリアで複数回の検出が可能となり、高い精度での追越し車両判定を行うのに優位である。
【0022】
上記態様に係る追越し車両判定装置では、前記追越し車両判定部が、前記長さを前記相対速度に比例した値に設定する、こととしてもよい。
【0023】
第1追越し判定エリアの長さについては、相対速度との関係で段階的に増減させることとしてもよいが、相対速度に比例した長さとすることにより、綿密な追越し車両判定制御が実行可能となる。
【発明の効果】
【0024】
上記の各態様Jに係る追越し車両判定装置では、隣車線を走行する車両が追越し車両であるか否かを、レーダを用いて高い精度で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る車両の構成を示す模式図である。
図2】車両における追越し車両判定に係る制御構成を示すブロック図である。
図3】車両におけるレーダの検出範囲を示す模式平面図である。
図4】レーダの検出箇所を示す模式平面図である。
図5】自車両を隣車線の他車両が追い抜いてゆく状態を示す模式平面図である。
図6】隣車線を走行する車両をレーダで検出した結果を示す模式図である。
図7】コントローラが実行する追越し車両判定の方法を示すフローチャートの一部である。
図8】コントローラが実行する追越し車両判定の方法を示すフローチャートの残部である。
図9】(a)は、隣車線を走行する車両の相対速度が高い場合に設定される第1追越し判定エリアおよび第2追越し判定エリアを示す模式平面図であり、(b)は、隣車線を走行する車両の相対速度が低い場合に設定される第1追越し判定エリアおよび第2追越し判定エリアを示す模式平面図である。
図10】隣車線を走行する車両の相対速度が所定速度未満である場合に設定される追越し判定エリアを示す模式平面図である。
図11】(a)は、隣車線を走行する車両が第1追越し判定エリアに侵入した状態を示す模式平面図であり、(b)は、隣車線を走行する車両が第2追越し判定エリアに侵入した状態を示す模式平面図である。
図12】(a)は、隣車線を走行する車両が第2追越し判定エリアに侵入する前の状態を示す模式平面図であり、(b)は、隣車線を走行する車両が第2追越し判定エリアに侵入した状態を示す模式平面図である。
図13】変形例に係るレーダの検出範囲を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0027】
以下の説明で用いる図面において、「Fr」は車両の進行方向における前方側、「Re」は車両の進行方向における後方側、「Le」は車両の進行方向に向かって左方側、「Ri」は車両の進行方向に向かって右方側をそれぞれ指す。
【0028】
[実施形態]
1.車両1の概略構成
本実施形態に係る車両1の概略構成について、図1および図2を用いて説明する。
【0029】
図1に示すように、車両1は、動力源としてのエンジン2を備える。本実施形態に係る車両1では、エンジン2の一例として、多気筒のガソリンエンジンを採用している。
【0030】
エンジン2には、変速機3が接続されている、変速機3には、デファレンシャルギヤ4が接続されている。デファレンシャルギヤ4からは、左右方向に向けてドライブシャフト5が延びている。ドライブシャフト5の端部には、左右の前輪6l,6rが取り付けられている。
【0031】
ドライブシャフト5には、左前輪6lに近い部分に左前ブレーキ7lが設けられ、右前輪6rに近い部分に右前ブレーキ7rが設けられている。
【0032】
車両1の後方には、左右の後輪8l,8rが配設されている。左右の後輪8l,8rのそれぞれは、図示を省略するリヤアームに取り付けられている。そして、左後輪8lを軸支するシャフト(図示を省略)には、左後ブレーキ9lが設けられ、右後輪8rを軸支するシャフト(図示を省略)には、右後ブレーキ9rが設けられている。
【0033】
図1に示すように、車両1には、4つのレーダ10~13が設けられている。4つのレーダ10~13のうち、レーダ10は、車両1の前方右角部分1aに配設されており、車両1の前右側方の物標(車両等)を検出可能となっている(右前側方レーダ10)。
【0034】
レーダ11は、車両1の前方左角部分1bに配設されており、車両1の前左側方の物標(車両等)を検出可能となっている(左前側方レーダ11)。なお、本実施形態では、右前側方レーダ10と左前側方レーダ11とを「フロントサイドレーダ」と記載する場合があり、前側方レーダに相当する。
【0035】
レーダ12は、車両1の後方右角部分1cに配設されており、車両1の後右側方の物標(車両等)を検出可能となっている(右後側方レーダ12)。
【0036】
レーダ13は、車両1の後方左角部分1dに配設されており、車両1の後左側方の物標(車両等)を検出可能となっている(左後側方レーダ13)。なお、本実施形態では、右後側方レーダ12と左後側方レーダ13とを「リヤサイドレーダ」と記載する場合があり、後側方レーダに相当する。
【0037】
図1に示すように、車両1には、乗車する乗員に警報の発報が可能な警報機15が設けられている。
【0038】
また、車両1には、コントローラ14が設けられている。本実施形態におけるコントローラ14は、追越し車両判定部に相当する。これについては、後述する。
【0039】
コントローラ14は、CPU、ROM、RAMなどから構成されたマイクロプロセッサを有して構成されているとともに、図1および図2に示すように、フロントサイドレーダ10,11およびリヤサイドレーダ12,13などと接続されており、これらレーダ10~13の検出結果を取得するようになっている。本実施形態では、コントローラ14とフロントサイドレーダ10,11およびリヤサイドレーダ12,13との組み合わせを以って追越し車両判定装置16が構成されている。
【0040】
図1および図2に示すように、コントローラ14は、エンジン2、ブレーキ7r,7l,9r,9l、および警報機15にも接続されており、受け付けた検出結果を基に、必要に応じて指令することができるようになっている。
【0041】
また、図2に示すように、コントローラ14は、相対速度算出部141、第1追越し判定エリア設定部142、および第2追越し判定エリア設定部143を有する。これらについては、後述する。
【0042】
2.レーダ10~13の検出範囲
レーダ10~13のそれぞれの検出範囲について、図3を用いて説明する。図3は、車両1におけるレーダ10~13の検出範囲を示す模式平面図である。
【0043】
図3に示すように、車両1は、隣り合う2車線LN1,LN2のうち、左側の車線LN1を矢印Aの方向に向けて走行している。車線LN1は、区画線DL1と区画線DL2とで区画されている。車線LN2は、区画線DL2と区画線DL3とで区画されている。
【0044】
右前側方レーダ10は、車両1の前方右角部分1aから右前側方に向くビーム中心L10を中心とした±θ1の範囲にミリ波を発信し、物標(車両等)で反射されて戻ってきた反射波を受信する。
【0045】
左前側方レーダ11は、車両1の前方左角部分1bから左前側方に向くビーム中心L11を中心とした±θ4の範囲にミリ波を発信し、物標(車両等)で反射されて戻ってきた反射波を受信する。
【0046】
右後側方レーダ12は、車両1の後方右角部分1cから右後側方に向くビーム中心L12を中心とした±θ2の範囲にミリ波を発信し、物標(車両等)で反射されて戻ってきた反射波を受信する。
【0047】
左後側方レーダ13は、車両1の後方左角部分1dから左後側方に向くビーム中心L13を中心とした±θ3の範囲にミリ波を発信し、物標(車両等)で反射されて戻ってきた反射波を受信する。
【0048】
ここで、図3に示すように、右前側方レーダ10と右後側方レーダ12とは、車両1の右方で、それぞれの検出範囲の一部同士が重複する(重複検出エリアAR0)。なお、重複検出エリアAR0は、その一部が車線LN2内にも配されている。
【0049】
また、左前側方レーダ11と左後側方レーダ13とについても、車両1の左方で、それぞれの検出範囲の一部同士が重複する。同様に、右前側方レーダ10と左前側方レーダ11とについても、車両1の前方で、それぞれの検出範囲の一部同士が重複する。右後後方レーダ12と左後後方レーダ13とについても、車両1の後方で、それぞれの検出範囲の一部同士が重複する。
【0050】
各レーダ10~13の検出精度は、それぞれが発信するミリ波のビーム中心L10~L13およびその近傍で最も高く、角度がつくほど低くなる。
【0051】
3.他車両500,501におけるレーダ10,12の検出箇所
隣の車線LN2を走行する他車両500,501におけるレーダ10,12の検出箇所について、図4を用いて説明する。図4は、レーダ10,12の検出箇所を示す模式平面図である。
【0052】
本実施形態に係る車両1では、レーダ10,12は、物標である他車両500,501の最も近い箇所(最近箇所)を検出するようになっている。具体的に、図4に示すように、自車両である車両1が矢印Bで示すように走行し、隣の車線LN2を走行する他車両500,501が矢印C,Dで示すように走行している状況において、右前側方レーダ10は、他車両500の左フロントドアの前部あたり(矢印Eで指し示す箇所)を検出する。
【0053】
また、隣の車線LN2における車両1に対して右斜め後方を走行している他車両501については、前方左角のバンパーあたり(矢印Fで指し示す箇所)を検出する。
【0054】
なお、図4では、レーダ11,13の検出箇所については、特に図示をしなかったが、レーダ10,12と同様に、最近箇所を検出可能となっている。
【0055】
4.レーダ10~13の検出精度
車両1が備えるレーダ10~13の検出精度について、図5および図6を用いて説明する。図5は、車両1を隣車線LN2の他車両502が追い抜いてゆく状態を示す模式平面図であり、図6は、レーダ10,12による他車両502の検出結果を示す模式図である。
【0056】
図5に示すように、自車両である車両1が車線LN1を走行しており、他車両502が隣の車線LN2を走行している。そして、隣の車線LN2の他車両502は、矢印Gで示すように、車両1を追い抜いてゆく状況にある。
【0057】
図6に示すように、他車両502をレーダ10,12では、検出点P10,P12として検出される。他車両502が追い抜いてゆく状況においては、先ず、他車両502を右後側方レーダ12により検出点P12として検出する。そして、車両1と他車両502との相対速度により、車両1に対して検出点P12は、検出軌跡LT12に沿って相対的に前方側へと移動する。
【0058】
検出点P12は、レーダ12の検出精度の関係により、ビーム中心L12の近傍では他車両502の進行方向に合致した軌跡となるが、ビーム中心L12から離れた領域では、外方(図6の右方)に逸れる軌跡となる。
【0059】
次に、レーダ12の検出範囲の端部分に他車両502がさしかかった時点から、レーダ10による検出がなされる。即ち、重複検出エリアAR0においては、右前側方レーダ10と右後側方レーダ12との双方で、他車両502の検出がなされる。
【0060】
右前側方レーダ10による他車両502の検出点P10は、レーダ10の検出精度に関係により、重複検出エリアAR0では、外方(図6の右方)から内方に向けて侵入してくる軌跡LT10となる。そして、検出点P10の軌跡LT10は、右前側方レーダ10のビーム中心L10の近傍に近付くに従って、他車両502の進行方向に合致する。
【0061】
なお、車両1の左側に設けられているレーダ11,13についても、同様の検出精度を有する。
【0062】
図6を用いて上述したように、本実施形態に係る車両1のレーダ10~13では、ビーム中心L10,L12の近傍では、他車両502の実際の走行軌跡に合致する検出軌跡LT10,LT12を以って検出がなされる。
【0063】
一方、ビーム中心L10,L12から離れた領域では、他車両502の実際の走行軌跡と乖離した検出軌跡LT10,LT12を以って検出がなされる。
【0064】
5.コントローラ14による追越し車両判定制御
追越し車両判定装置16におけるコントローラ14による追越し車両判定制御方法について、図7から図12を用いて説明する。図7および図8は、コントローラ14が実行する追越し車両判定の方法を示すフローチャートである。図9(a)は、隣車線LN2を走行する他車両503の相対速度が高い場合に設定される第1追越し判定エリアAR3,AR4および第2追越し判定エリアAR1,AR2を示す模式平面図であり、図9(b)は、隣車線LN2を走行する他車両504の相対速度が低い場合に設定される第1追越し判定エリアAR3,AR4および第2追越し判定エリアAR1,AR2を示す模式平面図である。
【0065】
図10は、隣車線LN2を走行する他車両505の相対速度が所定速度未満である場合に設定される第2追越し判定エリアAR1,AR2を示す模式平面図である。図11(a)は、隣車線LN2を走行する他車両506が第1追越し判定エリアAR3に侵入した状態を示す模式平面図であり、図11(b)は、隣車線LN2を走行する他車両506が第2追越し判定エリアAR1に侵入した状態を示す模式平面図であり、図12(a)は、隣車線LN2を走行する他車両507が第2追越し判定エリアAR1に侵入する前の状態を示す模式平面図であり、図12(b)は、隣車線LN2を走行する他車両507が第2追越し判定エリアAR1に侵入した状態を示す模式平面図である。
【0066】
図7に示すように、車両1のキーがONされた状態では、コントローラ14はリヤサイドレーダ(右後側方レーダ、左後側方レーダ)12,13により他車両が検出されるまで待機する(ステップS1:No)。
【0067】
コントローラ14は、リヤサイドレーダ(右後側方レーダ、左後側方レーダ)12,13により他車両が検出されたと判断した場合には(ステップS1:Yes)、内蔵するタイマーをONにする(ステップS2)。そして、コントローラ14の相対速度算出部141は、自車両1に対する他車両の相対速度△Vを算出する(ステップS3)。
【0068】
コントローラ14は、上記のように算出した他車両の相対速度が予め設定された所定相対速度Vth以上であるか否かを判定する(ステップS4)。なお、本実施形態においては、一例として所定相対速度Vthを10km/hとしている。
【0069】
コントローラ14が相対速度△Vが所定相対速度Vth以上であると判定した場合には(ステップS4:Yes)、第1追越し判定エリア設定部142が第1追越し判定エリアAR3,AR4を設定し(ステップS5)、第2追越し判定エリア設定部143が第2追越し判定エリアAR1,AR2を設定する(ステップS6)。
【0070】
図9(a)に示すように、本実施形態に係る車両1では、車両1の前端よりも後方の領域において、車両1の右側に右側第1追越し判定エリアAR3が設定され、車両1の左側に左側第1追越し判定エリアAR4が設定される。
【0071】
また、車両1では、車両の前端よりも前方の領域において、車両1の右側に右側第2追越し判定エリアAR1が設定され、車両1の左側に左側第2追越し判定エリアAR2が設定される。
【0072】
なお、第1追越し判定エリアAR3,AR4は、前側方レーダ10,11と後側方レーダ12,13とで他車両503,504を検出可能な領域であり、第2追越し判定エリアAR1,AR2は、前側方レーダ10,11で他車両503,504を検出可能な領域である。
【0073】
また、図9(a)は、車両1の速度V1と他車両503の速度V2との差分である相対速度△Vが高い場合を示しており、当該場合には、車線LN1,LN2の延伸方向において、第1追越し判定エリアAR3,AR4の長さがL3,L4に設定されている。本実施形態では、長さL3と長さL4とは同じ長さとしている。
【0074】
一方、図9(b)に示すように、車両1の速度V1と他車両504の速度V3との差分である相対速度△Vが低い場合には、車線LN1,LN2の延伸方向において、第1追越し判定エリアAR3,AR4の長さが、長さL3,L4よりも短いL5,L6に設定されている。本実施形態では、長さL5と長さL6とについても、同じ長さとしている。
【0075】
このように、本実施形態に係る第1追越し判定エリア設定部142は、相対速度△Vの大きさに比例させて、1次関数的または2次関数的または指数関数的に、第1追越し判定エリアAR3,AR4の長さL3,L4,L5,L6を可変させることとしている。
【0076】
図7に戻って、コントローラ14は、ステップS4において、相対速度△Vが所定相対速度Vth未満であると判定した場合には(ステップS4:No)、図8に示すように、第1追越し判定エリア設定部142による第1追越し判定エリアAR3,AR4の設定はなされず、第2追越し判定エリア設定部143による第2追越し判定エリアAR1,AR2の設定のみがなされる(ステップS7)。具体的には、図10に示すように、車両1の速度V1と他車両505の速度V4との差分である相対速度△Vが所定相対速度Vth未満の場合には、車両1の前端よりも前方の領域において、車両1の右側に右側第2追越し判定エリアAR1が設定され、車両1の左側に左側第2追越し判定エリアAR2が設定される。
【0077】
上記同様に、第1追越し判定エリアAR3,AR4は、第2追越し判定エリアAR1,AR2は、前側方レーダ10,11で他車両505を検出可能な領域である。
【0078】
ここで、本実施形態に係るコントローラ14は、相対速度算出部141が算出した相対速度△V、即ち、自車両1に対する他車両503~505の相対速度が、正の値である場合にのみ追越し車両判定を実行する。これは、自車両1の方が高速である場合には、追越し車両判定を行う必要がないためである。
【0079】
図7に戻って、コントローラ14は、第1追越し判定エリアAR3,AR4および第2追越し判定エリアAR1,AR2を設定した後(ステップS5,S6)、第1追越し判定エリアAR3,AR4(本実施形態の場合は、第1追越し判定エリアAR3)に他車両506が侵入したか否かを判定する(ステップS8)。他車両506が第1追越し判定エリアAR3,AR4に侵入するまで、当該状態を継続する(ステップS8:No)。
【0080】
図11(a)に示すように、隣の車線LN2を走行する他車両506が第1追越し判定エリアAR3に侵入した場合には(ステップS8:Yes)、コントローラ14は、当該他車両506が第2追越し判定エリアAR1に侵入したか否かの判定を行う(ステップS9)。図7に示すように、コントローラ14は、ステップS9の判定を、タイマーの計時時間Tが予め設定された所定時間Tthとなるまで継続して行う(ステップS10:No)。
【0081】
一方、コントローラ14は、タイマーの計時時間Tが所定時間Tthに達した場合には(ステップS10:Yes)、ステップS14で第1追越し判定エリアAR3,AR4および第2追越し判定エリアAR1,AR2の設定を解除するとともに、ステップS15でタイマーをリセット(停止)する。
【0082】
図11(b)に示すように、隣の車線LN2を走行する他車両506が、第1追越し判定エリアAR3への侵入から時間Tthまでの間に第2追越し判定エリアAR1に侵入した場合には(ステップS9:Yes)、コントローラ14は、当該他車両(検出車両)506が“追越し車両”であると判定する(ステップS11)。
【0083】
コントローラ14は、ステップS11で他車両506が“追越し車両”であると判定した場合には、警報機15に対して発報指令を出すとともに(ステップS12)、ブレーキ7l,7r,9l,7rに対して制動指令を出して減速を行う(ステップS13)。
【0084】
その後、コントローラ14は、ステップS14で第1追越し判定エリアAR3,AR4および第2追越し判定エリアAR1,AR2の設定を解除するとともに、ステップS15でタイマーをリセット(停止)して、制御をリターンする。
【0085】
図8に示すように、相対速度△Vが所定相対速度Vth未満であるためにステップS7で第2追越し判定エリアAR1,AR2だけを設定した場合には、第2追越し判定エリアAR1,AR2(本実施形態の場合は、第2追越し判定エリアAR1)に他車両507が侵入したか否かを判定する(ステップS16)。図12(a)に示すように、他車両507が第2追越し判定エリアAR1,AR2に侵入するまで、当該状態を継続する(ステップS16:No)。
【0086】
図12(b)に示すように、隣の車線LN2を走行する他車両507が、車両1の前端よりも右斜め前方の第2追越し判定エリアAR1に侵入した場合には(ステップS16:Yes)、コントローラ14は、当該他車両(検出車両)507が“追越し車両”であると判定する(ステップS17)。
【0087】
コントローラ14は、ステップS17で他車両507が“追越し車両”であると判定した場合には、警報機15に対して発報指令を出すとともに(ステップS18)、ブレーキ7l,7r,9l,7rに対して制動指令を出して減速を行う(ステップS19)。
【0088】
その後、コントローラ14は、ステップS20で第2追越し判定エリアAR1,AR2の設定を解除するとともに、ステップS15でタイマーをリセット(停止)して、制御をリターンする。
【0089】
6.効果
本実施形態に係る車両1の追越し車両判定装置16では、相対速度△Vが所定相対速度Vth以上の場合に(図7のステップS4:Yes)、第1追越し判定エリアAR3,AR4と第2追越し判定エリアAR1,AR2とを設定した上で、これらのエリアAR1~AR4に他車両506が侵入したか否かの検出結果を用いて当該他車両506が“追越し車両”であるか否かを判定することとしている。このため、本実施形態に係る追越し車両判定装置16では、各レーダ10~13の検出精度にかかわらず高い精度での追越し車両判定が可能である。即ち、自車両1の隣を他車両506が追い抜いてゆく過程において、後側方レーダ12,13あるいは前側方レーダ10,11の一方だけを用いて該他車両506が“追越し車両”であるか否かを判定する場合には、検出結果を採用するレーダの検出精度によって誤判定を生じる場合が発生し得る。
【0090】
しかしながら、本実施形態に係る追越し車両判定装置16では、前側方レーダ10,11と後側方レーダ12,13とにより検出がなされる第1追越し判定エリアAR3,AR4での検出結果と、前側方レーダ10,11により検出がなされる第2追越し判定エリアAR1,AR2での検出結果と、を連続的に用いて追越し車両判定を行うこととしているので、特許文献1の技術をはじめとする従来技術よりも高い精度での追越し車両判定が可能である。
【0091】
また、本実施形態に係る追越し車両判定装置16では、相対速度△Vが所定相対速度Vth未満である場合に(図7のステップS4:No)、前側方レーダ10,11により検出を行う第2追越し判定エリアAR1,AR2だけを設定し、当該第2追越し判定エリアAR1,AR2での検出結果をだけを以って他車両507が“追越し車両”であるか否かを判定するので、相対速度△Vが小さく、サンプリング間隔との関係で後側方レーダ12,13での検出結果を保存しきれないような場合にも、高い精度での追越し車両判定が可能となる。よって、追越し車両判定部におけるメモリ容量を大きくしなくても、高い精度での追越し車両判定が可能となる。
【0092】
また、本実施形態に係る追越し車両判定装置16では、図7のステップS8およびステップS9に示した通り、第1追越し判定エリアAR3,AR4で他車両506を検出した後に、当該他車両506を第2追越し判定エリアAR1,AR2で検出した場合に、当該他車両506が“追越し車両”であると判定する(図7のステップS11)、としているので、他車両506が第1追越し判定エリアAR3,AR4から第2追越し判定エリアAR1,AR2へと進むことで、該他車両506が“追越し車両”であると正確に判定することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る追越し車両判定装置16では、隣の車線LN2を走行する他車両506が、所定時間Tth内に第1追越し判定エリアAR3,AR4から第2追越し判定エリアAR1,AR2へと進んだ場合にだけ、当該他車両506が“追越し車両”であると判定することとしているので、より正確に追越し車両判定を行うことができる。例えば、他車両506が第1追越し判定エリアAR3,AR4に侵入した後に、所定時間Tth内に第2追越し判定エリアAR1,AR2に侵入しない場合には、該他車両506が進路を変更し、他車両506とは別の車両が進路変更などにより第2追越し判定エリアAR1,AR2に侵入してきたような状況も考えられる。本実施形態に係る追越し車両判定装置16では、上記のような状況での追越し車両判定を排除して、より正確な追越し車両判定を可能としている。
【0094】
また、本実施形態に係る追越し車両判定装置16では、図9(a)、(b)で示したように、第1追越し判定エリアAR3,AR4の長さL3,L4,L5,L6を、相対速度△Vが高いほど長くすることとしているので、各レーダ10~13におけるサンプリング間隔との関係においても、該エリアAR3,AR4で複数回の検出が可能となり、高い精度での追越し車両判定を行うのに優位である。
【0095】
また、第1追越し判定エリアAR3,AR4の長さL3,L4,L5,L6については、相対速度△Vとの関係で段階的に増減させることとしてもよいが、相対速度△Vに比例した(1次関数的、2次関数的、指数関数的に比例した)長さとすることにより、綿密な追越し車両判定制御が実行可能となる。
【0096】
なお、本実施形態に係る追越し車両判定装置16では、相対速度△Vが正の値、即ち、自車両1よりも他車両506,507の方が高速である場合にのみ追越し車両判定を行うこととしてもよい。このようにすることで、自車両1の方が他車両506,507よりも高速であるような場合にまで追跡して追越し車両判定を行う必要がなく、追越し車両判定が必要となる場合にのみ、他車両506,507を追跡して検出するので、無駄な判定制御の実行を抑制することができる。
【0097】
以上のように、本実施形態に係る追越し車両判定装置16では、隣車線LN2を走行する他車両506,507が“追越し車両”であるか否かを、レーダ10~13を用いて高い精度で判定することができる。
【0098】
[変形例]
変形例に係る追越し車両判定装置の構成について、図13を用いて説明する。図13は、本変形例に係るレーダ10~13の検出範囲を示す模式平面図である。なお、本変形例に係る追越し車両判定装置は、以下で説明するレーダ10~13の検出箇所について、上記実施形態との差異を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じであるので、重複となる構成についての説明を省略する。
【0099】
図13に示すように、本変形例に係る車両1のレーダ10~13では、隣の車線LN2を走行する他車両508,509の各車両長さ中心L508,L509を検出することが可能となっている。具体的に、レーダ10は、他車両508の車両長さL7を検出することができ、その中点である車両長さ中心L508を検出可能である。
【0100】
本変形例に係るレーダ10は、他車両508の検出を、車両長さ中心L508に当たる箇所で行うこととしている(矢印Hで指し示す箇所)。
【0101】
同様に、レーダ12は、他車両509の車両長さL8を検出することができ、その中点である車両長さ中心L509を検出可能である。レーダ12は、他車両509の検出についても、車両長さ中心L509に当たる箇所で行うこととしている(矢印Iで指し示す箇所)。
【0102】
本変形例に係る追越し車両判定装置では、隣の車線LN2を追い抜いてゆく他車両508,509をその車両長さ中心L508,L509で検出することとしているので、他車両508,509の検出箇所が車両1との相対位置によって変化することがなく、より正確な追越し車両判定を行うのに優位である。
【0103】
なお、本変形例に係る追越し車両判定装置は、レーダ10~13による他車両508,509の検出箇所を除き、上記実施形態に係る追越し車両判定装置16と同様の構成を有するので、上記と同じ効果を奏することが可能である。
【0104】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例では、自車両1が走行する車線LN1に対して右側の車線LN2を他車両500~509が追い抜いてゆく態様を一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、自車両が走行する車線の左側の車線を追い抜いてゆく他車両について、追越し車両判定を行うこととしてもよい。
【0105】
上記実施形態および上記変形例では、車両1の各角部分1a~1dにレーダ10~13を配した構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、これらのレーダ10~13に加えて、車両の前方や後方に向けてミリ波を発信可能なレーダを追加的に設けたり、車両の左右方に向けてミリ波を発信可能なレーダを追加的に設けたりすることも可能である。
【0106】
上記実施形態および上記変形例では、他車両500~509が“追越し車両”であると判定した場合に、警報機15に対して警報を発報させ、且つ、ブレーキ7l,7r,9l,9rを作動させることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、警報機15の警報発報だけを行うこととしてもよいし、ブレーキ7l,7r,9l,9rの作動だけを行うこととしてもよい。
【0107】
上記実施形態および上記変形例では、自車両1と他車両500~509との相対速度△Vが所定相対速度Vth以上か否かで、第1追越し判定エリアAR3,AR4と第2追越し判定エリアAR1,AR2との両方を設定するか、第2追越し判定エリアAR1,AR2だけを設定するか、を決めることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、相対速度の大小にかかわらず、第1追越し判定エリアと第2追越し判定エリアの両方を設定することとしてもよい。
【0108】
上記実施形態および上記変形例では、車両1の構成において、4つのレーダ10~13からの検出結果をコントローラ14に入力し、コントローラ14は、入力されたレーダ10~13の検出結果を基に追越し車両判定を実行することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、4つのレーダに加えて、撮像装置(カメラなど)やレーザ装置などを車両に設けておき、これらからの検出結果も受け付けて追越し車両判定を行いこととしてもよい。
【0109】
上記実施形態および上記変形例では、車両1の動力源としてエンジン2を一例として採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、エンジンと電動モータとの組み合わせからなる動力源を備えるハイブリッド電気自動車(HEV)や、電動モータを動力源として備える電気自動車(PEV)等に本発明を適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 車両
10,11 フロントサイドレーダ
12,13 リヤサイドレーダ
14 コントローラ(追越し車両判定部)
16 追越し車両判定装置
141 相対速度算出部
142 第1追越し判定エリア設定部
143 第2追越し判定エリア設定部
AR0 重複検出エリア
AR1,AR2 第2追越し判定エリア
AR3,AR4 第1追越し判定エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13