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特許7087955蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20220614BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20220614BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20220614BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220614BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20220614BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20220614BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/14
H01M50/10
H01M10/04 Z
H01G11/84
H01G11/82
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018220225
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020082512
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】真里谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴文
(72)【発明者】
【氏名】小竹 広和
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125142(JP,A)
【文献】特開2018-125125(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150700(WO,A1)
【文献】特開2013-107229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
B29C 33/00 - 33/76
H01M 10/00 - 10/04
H01M 10/06 - 10/34
H01G 11/00 - 11/86
H01M 50/00 - 50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバイポーラ電極を積層した積層体の外縁部を封止体により封止して構成される蓄電モジュールの製造方法であって、
金型の内部に前記積層体の前記外縁部を配置する配置工程と、
前記金型のゲートから前記金型の前記内部に樹脂を射出して前記積層体の前記外縁部に前記封止体を樹脂成形する成形工程と、
を備え、
前記配置工程では、前記積層体の積層方向から視て前記積層体の前記外縁部と前記ゲートとが重なるように前記金型の内部に前記積層体を配置し、
前記成形工程では、前記ゲートから前記金型の前記内部に前記積層体の積層方向に沿って射出された前記樹脂が前記積層体の前記積層方向の最も外側における前記積層体の前記外縁部に最初に接触するように、前記ゲートから前記金型の前記内部に前記樹脂を射出する、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記配置工程では、前記バイポーラ電極のそれぞれの周縁部に一次シールが設けられた前記積層体の外縁部を前記金型の前記内部に配置し、
前記成形工程では、前記積層体の前記積層方向から視て前記バイポーラ電極と前記一次シールとが重複している位置に前記樹脂を射出する、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
複数のバイポーラ電極を積層した積層体と、
前記積層体の外縁部を封止する封止体と、
を備え、
前記封止体は、樹脂成形により形成されており、前記積層体の積層方向から視て前記積層体の前記積層方向の最も外側における前記積層体の前記外縁部と前記封止体とが重複している位置に、前記樹脂成形の金型のゲートによるゲート痕を有する、蓄電モジュール。
【請求項4】
前記積層体の前記バイポーラ電極のそれぞれの周縁部には一次シールが設けられ、
前記封止体は、前記積層体の前記積層方向から視て前記バイポーラ電極と前記一次シールとが重複している位置に前記ゲート痕を有する、請求項3に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電モジュールとして、例えば、特許文献1に記載されるように、正極層と負極層の間に集電体を配置したバイポーラ電極を複数積層して積層体とし、その積層体の外縁部を封止体により封止した蓄電モジュールが知られている。この蓄電モジュールの製造方法としては、金型の内部に積層体の外縁部を配置し、型のゲートから金型の内部に樹脂を射出して積層体の外縁部に封止体を樹脂成形することによって、蓄電モジュールを製造することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4370902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような蓄電モジュールの製造方法では、樹脂成形において、積層されたバイポーラ電極の間に樹脂が流入して積層体がめくれることがある。また、上記のような蓄電モジュールの製造方法では、ゲートから金型の内部に射出された樹脂が、ジェッティングにより、金型の壁面に濡れ拡がることなく、棒状に飛び出すことがある。ジェッティングによりゲートから棒状に飛び出した樹脂は、空気に触れることで樹脂の表面に急速に固化層が形成される。このような棒状の樹脂が金型の内部で湾曲しつつ互いに重なり合うと、重なり合った棒状の樹脂の間に小さいウェルドが発生することがある。このようなウェルドにより、積層体と封止体との接合強度が低下することがある。
【0005】
そこで、本発明は、積層体がめくれることを低減でき、積層体と封止体との接合強度を向上させることができる蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のバイポーラ電極を積層した積層体の外縁部を封止体により封止して構成される蓄電モジュールの製造方法であって、金型の内部に積層体の外縁部を配置する配置工程と、金型のゲートから金型の内部に樹脂を射出して積層体の外縁部に封止体を樹脂成形する成形工程とを備え、成形工程では、ゲートから金型の内部に積層体の積層方向に沿って射出された樹脂が積層体の積層方向の最も外側における積層体の外縁部に最初に接触するように、ゲートから金型の内部に樹脂を射出する蓄電モジュールの製造方法である。
【0007】
この構成によれば、複数のバイポーラ電極を積層した積層体の外縁部を封止体により封止して構成される蓄電モジュールの製造方法において、配置工程で金型の内部に積層体の外縁部が配置され、成形工程で金型のゲートから金型の内部に樹脂が射出され積層体の外縁部に封止体が樹脂成形される。成形工程では、ゲートから金型の内部に積層体の積層方向に沿って射出された樹脂が積層体の積層方向の最も外側における積層体の外縁部に最初に接触するように、ゲートから金型の内部に樹脂が射出されるため、ゲートから射出された樹脂によって積層体が積層方向に押さえられ、積層されたバイポーラ電極の間に樹脂が流入して積層体がめくれることが低減される。また、ゲートから積層体の積層方向に沿って射出された直後の樹脂が最初に積層体の外縁部にぶつかることでジェッティングが抑制され、積層体と封止体との接合強度を向上させることができる。
【0008】
この場合、配置工程では、バイポーラ電極のそれぞれの周縁部に一次シールが設けられた積層体の外縁部を金型の内部に配置し、成形工程では、積層体の積層方向から視てバイポーラ電極と一次シールとが重複している位置に樹脂を射出することが好適である。
【0009】
この構成によれば、配置工程では、バイポーラ電極のそれぞれの周縁部に一次シールが設けられた積層体の外縁部が金型の内部に配置され、成形工程では、積層体の積層方向から視てバイポーラ電極と一次シールとが重複している強度が強い位置に樹脂が射出されるため、樹脂の射出による一次シールの破損を低減することができる。
【0010】
一方、本発明は、複数のバイポーラ電極を積層した積層体と、積層体の外縁部を封止する封止体とを備え、封止体は、樹脂成形により形成されており、積層体の積層方向から視て積層体の外縁部と封止体とが重複している位置に、樹脂成形の金型のゲートによるゲート痕を有する蓄電モジュールである。
【0011】
この構成によれば、複数のバイポーラ電極を積層した積層体と、積層体の外縁部を封止する封止体とを備えた蓄電モジュールにおいて、封止体は、樹脂成形により形成されており、積層体の積層方向から視て積層体の外縁部と封止体とが重複している位置に、樹脂成形の金型のゲートによるゲート痕を有し、樹脂成形において、ゲートから金型の内部に積層体の積層方向に沿って射出された樹脂が積層体の外縁部に最初に接触したものであるため、積層されたバイポーラ電極の間に樹脂が流入することによる積層体のめくれが低減され、ジェッティングの抑制により積層体と封止体との接合強度が向上したものとなる。
【0012】
この場合、積層体のバイポーラ電極のそれぞれの周縁部には一次シールが設けられ、封止体は、積層体の積層方向から視てバイポーラ電極と一次シールとが重複している位置にゲート痕を有することが好適である。
【0013】
この構成によれば、積層体のバイポーラ電極のそれぞれの周縁部には一次シールが設けられ、封止体は積層体の積層方向から視てバイポーラ電極と一次シールとが重複している位置にゲート痕を有し、樹脂成形において、積層体の積層方向から視てバイポーラ電極と一次シールとが重複している強度が強い位置に樹脂が射出されたものであるため、樹脂の射出による一次シールの破損が低減され、歩留まりが向上し、より安価なものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールによれば、積層体がめくれることを低減でき、積層体と封止体との接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る蓄電モジュールを用いた蓄電装置の概略断面図である。
図2図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3】実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法の配置工程を示す図である。
図4】実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法の成形工程を示す図である。
図5】従来の蓄電モジュールの製造方法において金型の内部に積層体の外縁部が配置された状態を示す図である。
図6】(A)は射出成形における理想的な湯流れを示す図であり、(B)はゲートから金型の内部に射出された樹脂がジェッティングにより金型の壁面に濡れ拡がることなく棒状に飛び出した状態を示し、(C)は(B)の棒状の樹脂が金型の内部で湾曲しつつ互いに重なり合うことにより重なり合った棒状の樹脂の間に小さいウェルドが発生した状態を示す図である。
図7】(A)及び(B)は従来の蓄電モジュールの製造方法による湯流れを示す図である。
図8】(A)、(B)及び(C)は実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法による湯流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、実施形態に係る蓄電モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、互いに複数の蓄電モジュール4を積層してなる蓄電モジュール積層体2と、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0017】
蓄電モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3体)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4枚)の導電板5とによって構成されている。蓄電モジュール4は、例えば後述するバイポーラ電極14を備えたバイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0018】
積層方向に隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側と、にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0019】
各導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。各流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ交差(直交)する方向に互いに平行に延在している。これらの流路5aに冷媒を流通させることで、導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0020】
拘束部材3は、蓄電モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(蓄電モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0021】
エンドプレート8の縁部には、蓄電モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されて蓄電モジュール積層体2としてユニット化されると共に、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0022】
次に、蓄電モジュール4の構成について更に詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図2に示すように、蓄電モジュール4は、積層方向D1に積層された複数のバイポーラ電極14を積層した積層体11と、積層体11の外縁部11pを封止する封止体である二次シール(封止体)22とを備えている。
【0023】
積層体11は、セパレータ13を介して積層方向D1に積層された複数の電極を含む。複数の電極は、複数のバイポーラ電極14と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。本実施形態では、積層体11の積層方向D1は蓄電モジュール積層体2の積層方向と一致している。積層体11のバイポーラ電極14のそれぞれの周縁部には一次シール21aが設けられている。正極終端電極19の周縁部には一次シール21bが設けられている。一次シール21a,21bと二次シール22とが一体化されることにより、積層体11と二次シール22との間は封止(シール)される。
【0024】
バイポーラ電極14は、電極板15、電極板15の一方面15aに設けられた正極活物質層16、電極板15の他方面15bに設けられた負極活物質層17を含んでいる。正極活物質層16は、正極活物質を含む正極スラリーを塗工することにより形成されている。負極活物質層17は、負極活物質を含む負極スラリーを塗工することにより形成されている。積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極活物質層16は、セパレータ13を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極活物質層17と対向している。積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極活物質層17は、セパレータ13を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極活物質層16と対向している。
【0025】
積層体11において、積層方向D1の一端には負極終端電極18が配置され、積層方向D1の他端には正極終端電極19が配置されている。負極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の他方面15bに設けられた負極活物質層17を含んでいる。負極終端電極18の負極活物質層17は、セパレータ13を介して積層方向D1の一端のバイポーラ電極14の正極活物質層16と対向している。負極終端電極18の電極板15の一方面15aには、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5が接触している。
【0026】
正極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の一方面15aに設けられた正極活物質層16を含んでいる。正極終端電極19の正極活物質層16は、セパレータ13を介して積層方向D1の他端のバイポーラ電極14の負極活物質層17と対向している。正極終端電極19の電極板15の他方面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。
【0027】
電極板15は、金属製であり、例えばニッケル又はニッケルメッキ鋼板からなる。電極板15は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の周縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。積層体11のバイポーラ電極14の電極板15のそれぞれの周縁部15cに一次シール21aが設けられている。また、積層体11の正極終端電極19の電極板15の周縁部15cに一次シール21bが設けられている。
【0028】
正極活物質層16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極活物質層17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極活物質層17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極活物質層16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0029】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0030】
一次シール21a,21b及び二次シール22は、例えば絶縁性の樹脂によって矩形の枠状に形成されている。シール部材12を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。一次シール21a,21b及び二次シール22は、積層体11を取り囲み、複数の電極板15の周縁部15cを直接的及び間接的に保持するように構成されている。
【0031】
上述したように一次シール21a,21bは電極板15の周縁部15cに設けられている。二次シール22は積層方向D1から視て一次シール21を囲繞する。一次シール21a,21bは所定の厚さ(積層方向D1の長さ)を有するフィルムである。一次シール21a,21bは、積層方向D1から見て、矩形枠状をなし、例えば超音波又は熱により、電極板15の周縁部15cの全周にわたって連続的に溶着されている。一次シール21a,21bは、電極板15の他方面15b側の周縁部15cに設けられている。一次シール21a,21bは、周縁部15cに設けられ、電極板15の端面を覆っている。一次シール21a,21bは、積層方向D1から視て、正極活物質層16及び負極活物質層17から離間して設けられている。積層方向D1で隣り合う一次シール21a,21b同士は、互いに当接している。電極板15の周縁部15cに設けられた一次シール21aのそれぞれには、電極板15の負極活物質層17に接するセパレータ13の外縁部が、例えば溶着により固定されている。
【0032】
二次シール22は、積層体11及び一次シール21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。二次シール22は、例えば、後述するように樹脂の射出成形等の樹脂成形によって形成され、積層方向D1において積層体11の全長にわたって延在している。二次シール22は、積層方向D1を軸方向として延在する筒状部材である。二次シール22は、積層方向D1に延在する一次シール21の外側面を覆っている。二次シール22は、一次シール21の外側面に接合され、一次シール21の外側面をシールしている。二次シール22は、例えば、射出成形時の熱によって一次シール21の外側面に溶着されている。一次シール21を構成する樹脂材料と二次シール22を構成する樹脂材料とは互いに相溶可能である。一次シール21は例えばPPからなり、二次シール22は例えば変性PPEからなる。
【0033】
二次シール22は、射出成形等の樹脂成形により形成されており、積層体11の積層方向D1から視て積層体11の外縁部11pと二次シール22とが重複している位置に樹脂成形の金型のゲートによるゲート痕22gを有する。積層体11の積層方向D1から視て積層体11の外縁部11pと二次シール22とが重複している位置にゲート痕22gを有するとは、積層体11の積層方向D1から視て、ゲート痕22gの全部のみならずゲート痕22gの一部が、積層体11の外縁部11pと二次シール22とが重複している位置に重なっていることを含む。
【0034】
より具体的には、二次シール22は、積層体11の積層方向D1から視て、バイポーラ電極14と一次シール21aとが重複している位置及び正極終端電極19と一次シール21bとが重複している位置である重複部位11lにゲート痕22gを有する。積層体11の積層方向D1から視て、バイポーラ電極14と一次シール21aとが重複している位置及び正極終端電極19と一次シール21bとが重複している位置である重複部位11lにゲート痕22gを有するとは、積層体11の積層方向D1から視て、ゲート痕22gの全部のみならずゲート痕22gの一部が、バイポーラ電極14と一次シール21aとが重複している位置及び正極終端電極19と一次シール21bとが重複している位置である重複部位11lに重なっていることを含む。
【0035】
ゲート痕22gは、二次シール22が樹脂成形により形成される際に、樹脂成形の金型のゲートにより生じる。ゲート痕22gは、例えば、重複部位11lにおいて二次シール22の表面から窪んだ凹部である。
【0036】
積層方向D1に隣り合う電極板15の間に、電極板15、正極活物質層16、負極活物質層17及び一次シール21a,21bが協働して内部空間Vを形成している。換言すると、積層方向D1に隣り合う2つの電極板15、一方の電極板15の正極活物質層16、他方の電極板15の負極活物質層17及び一次シール21a,21bによって囲われた空間が内部空間Vである。そのため、積層方向D1に隣り合うバイポーラ電極14の間には、内部空間Vが存在する。従って、積層体11には、複数の内部空間Vが設けられている。セパレータ13内を含む内部空間Vには、アルカリ性の電解液が注入されている。アルカリ性の電解液としては、例えば水酸化カリウム水溶液等を含むアルカリ溶液が用いられている。一次シール21aは、内部空間Vを封止する。
【0037】
以下、本実施形態の蓄電モジュールの製造方法について説明する。図3に示すように、複数のバイポーラ電極14を積層した積層体11の外縁部11pを二次シール22により封止して構成される蓄電モジュール4の製造方法において、金型50の内部に積層体11の外縁部11pを配置する配置工程が行われる。配置工程では、バイポーラ電極14のそれぞれの電極板15の周縁部15cに一次シール21a設けられた積層体11の外縁部11pが金型50の内部に配置される。
【0038】
配置工程では、積層体11の積層方向D1から視て、積層体11の外縁部11pとゲート51とが重なるように金型50の内部に積層体11の外縁部11pが配置される。より具体的には、配置工程では、積層体11の積層方向D1から視て、バイポーラ電極14と一次シール21aとが重複している位置である重複部位11lとゲート51とが重なるように金型50の内部に積層体11の外縁部11pが配置される。
【0039】
図4に示すように、金型50のゲートから金型50の内部に樹脂52を射出して積層体11の外縁部11pに二次シール22を樹脂成形する成形工程が行われる。成形工程では、ゲート51から金型50の内部に積層体11の積層方向D1に沿って射出された樹脂52が積層体11の積層方向D1の最も外側における積層体11の外縁部11pに最初に接触するように、金型50のゲート51から金型50の内部に樹脂52が射出される。
【0040】
ゲート51から金型50の内部に積層体11の積層方向D1に沿って射出された樹脂52が積層体11の積層方向D1の最も外側における積層体11の外縁部11pに最初に接触するとは、樹脂52の全部のみならず樹脂52の一部が積層体11の積層方向D1の最も外側における積層体11の外縁部11pに接触することを含む。また、積層体11の積層方向D1に沿って射出された樹脂52とは、積層体11の積層方向D1に平行な方向に射出された樹脂52の他に、例えば、積層体11の積層方向D1に平行な方向から45°以内に傾斜した方向に射出された樹脂52を含む。樹脂52は、ゲート51から下方に射出される他に、ゲート51から上方に射出されてもよい。また、樹脂52は、積層体11の積層方向D1の両方の最も外側における積層体11の外縁部11pに最初に接触するように射出されてもよい。
【0041】
成形工程では、積層体11の積層方向D1から視てバイポーラ電極14と一次シール21a,21bとが重複している位置である重複部位11lに樹脂52が射出される。積層体11の積層方向D1から視てバイポーラ電極14と一次シール21a,21bとが重複している位置である重複部位11lに樹脂52が射出されるとは、樹脂52の全部のみならず樹脂52の一部が、積層体11の積層方向D1から視てバイポーラ電極14と一次シール21a,21bとが重複している位置である重複部位11lに樹脂52が射出されることを含む。
【0042】
本実施形態では、複数のバイポーラ電極14を積層した積層体11の外縁部11pを二次シール22により封止して構成される蓄電モジュール4の製造方法において、配置工程で金型50の内部に積層体11の外縁部11pが配置され、成形工程で金型50のゲート51から金型50の内部に樹脂52が射出され積層体11の外縁部11pに二次シール22が樹脂成形される。成形工程では、ゲート51から金型50の内部に積層体11の積層方向D1に沿って射出された樹脂52が積層体11の積層方向Dの最も外側における積層体11の外縁部11pに最初に接触するように、金型50のゲート51から金型50の内部に樹脂52が射出されるため、ゲート51から射出された樹脂52によって積層体11が積層方向D1に押さえられ、積層されたバイポーラ電極14の間に樹脂52が流入して積層体11がめくれることが低減される。また、ゲート51から積層体11の積層方向D1に沿って射出された直後の樹脂52が最初に積層体11の外縁部11pにぶつかることでジェッティングが抑制され、積層体11と二次シール22との接合強度を向上させることができる。
【0043】
図5に示すように、従来の蓄電モジュールの製造方法では、積層体11の積層方向D1から視て、積層体11の外縁部11pとゲート51とが重ならないように金型50の内部に積層体11の外縁部11pが配置される。ゲート51から金型50の内部に射出された樹脂52は最初に積層体11には接触せずに、金型50の壁面に最初に接触する。この場合、図6(A)に示すように、理想的な湯流れでは、金型50は温められているため、ゲート51から射出された樹脂52の表面の固化層形成はゆっくりと進行する。ゲート51から射出された樹脂52は金型50の内部の壁面に濡れながら扇形に拡がっていく。このような理想的な湯流れでは、積層体11のめくれや、積層体11と二次シール22との接合強度の低下は生じ難い。
【0044】
しかし、ジェッティングは、溶融した樹脂52がノズル、ランナー及びゲート51等の流動が制限される領域を通り、厚肉の開放領域に金型50の壁面と接触することなく高速で押し出されるときに発生する。ジェッティングが発生すると、図6(B)に示すように、ゲート51から射出された樹脂52が金型50の壁面に濡れ拡がることなく、棒状に飛び出す。ジェッティングによりゲート51から棒状に飛び出した樹脂52は、空気に触れることで樹脂52の表面に急速に固化層が形成される。図6(C)に示すように、このような棒状の樹脂52が金型50の内部で湾曲しつつ互いに重なり合うと、重なり合った棒状の樹脂52の間に小さいウェルドが発生することがある。このようなウェルドは、積層体11と二次シール22との接合強度の低下の原因となる。
【0045】
図7(A)に示すように、従来の蓄電モジュールの製造方法では、ゲート51から射出された直後の樹脂52は、ジェッティングにより金型50の壁面に当たるまで拡散せずに金型50の内部に流入する。図7(B)に示すように、金型50の内部に流入した樹脂52は、金型50の壁面に当たった後、金型50の上部で扇形に拡散していく。樹脂52は、積層方向D1に一気に流入してから金型50の上部で拡散していくため、積層体11を積層方向D1に押さえる力よりも、積層体11のバイポーラ電極14の間に樹脂52が侵入していく力の方が大きい。その結果、樹脂52がバイポーラ電極14の間に入り込み、めくれが生じる。
【0046】
一方、本実施形態では、図8(A)、図8(B)及び図8(C)に示すように、ゲート51から積層体11の積層方向D1に沿って射出された樹脂52は積層方向Dの最も外側における積層体11の外縁部11pに最初に接触するため、ゲート51から射出された樹脂52によって積層体11が積層方向D1に押さえられ、積層されたバイポーラ電極14の間に樹脂52が流入して積層体11がめくれることが低減される。また、ゲート51から射出された直後の樹脂52が最初に積層体11の外縁部11pにぶつかることでジェッティングが抑制され、積層体11と二次シール22との接合強度を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、配置工程では、バイポーラ電極14のそれぞれの電極板15の周縁部15c及び正極終端電極19の電極板15の周縁部15cに一次シール21a,21bが設けられた積層体11の外縁部11pが金型50の内部に配置され、成形工程では、積層体11の積層方向D1から視てバイポーラ電極14及び正極終端電極19と一次シール21a,21bとが重複している強度が強い位置である重複部位11lに樹脂52が射出されるため、樹脂52の射出による一次シール21aの破損を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態では、複数のバイポーラ電極14を積層した積層体11と、積層体11の外縁部11pを封止する二次シール22とを備えた蓄電モジュール4において、二次シール22は、樹脂成形により形成されており、積層体11の積層方向D1から視て積層体11の外縁部11pと二次シール22とが重複している位置に、樹脂成形の金型50のゲート51によるゲート痕22gを有し、樹脂成形において、ゲート51から金型50の内部に積層体11の積層方向D1に沿って射出された樹脂52が積層体11の外縁部11pに最初に接触したものであるため、積層されたバイポーラ電極14の間に樹脂52が流入することによる積層体11のめくれが低減され、ジェッティングの抑制により積層体11と二次シール22との接合強度が向上したものとなる。
【0049】
また、本実施形態では、積層体11のバイポーラ電極14のそれぞれの電極板15の周縁部15cには一次シール21aが設けられ、二次シール22は積層体11の積層方向D1から視てバイポーラ電極14と一次シール21aとが重複している位置である重複部位11lにゲート痕22gを有し、樹脂成形において、積層体11の積層方向D1から視てバイポーラ電極14と一次シール21aとが重複している強度が強い位置である重複部位11lに樹脂52が射出されたものであるため、樹脂52の射出による一次シール21aの破損が低減され、歩留まりが向上し、より安価なものとなる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態における一次シール21a,21b及び二次シール22の形状は任意であり、適宜変更可能である。また、上述した実施形態では、図1のように蓄電モジュール4を積層した蓄電装置1として用いる場合について説明したが、蓄電モジュール4を異なる構造又は形式で用いてもよい。また、上述した実施形態では、蓄電モジュール4をフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いる場合について説明したが、その他の用途に用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…蓄電装置、2…蓄電モジュール積層体、3…拘束部材、4…蓄電モジュール、5…導電板、5a…流路、6…正極端子、7…負極端子、8…エンドプレート、8a…挿通孔、9…締結ボルト、10…ナット、11…積層体、11p…外縁部、11l…重複部位、13…セパレータ、14…バイポーラ電極(電極)、15…電極板、15a…一方面、15b…他方面、15c…周縁部、16…正極活物質層、17…負極活物質層、18…負極終端電極、19…正極終端電極、21a,21b…一次シール、22…二次シール(封止体)、22g…ゲート痕、50…金型、51…ゲート、52…樹脂、F…フィルム、D1…積層方向、V…内部空間。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8