(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気マニホールド
(51)【国際特許分類】
F02M 35/104 20060101AFI20220614BHJP
F02M 35/108 20060101ALI20220614BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
F02M35/104 A
F02M35/104 Q
F02M35/104 N
F02M35/108 Z
F02M35/10 301D
(21)【出願番号】P 2018227223
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金海 考祐
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 泰啓
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-073774(JP,A)
【文献】特開2002-372177(JP,A)
【文献】実開昭63-017831(JP,U)
【文献】特開2004-036598(JP,A)
【文献】特開2004-066887(JP,A)
【文献】特開2010-163955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/104
F02M 35/108
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サージタンクと、サージタンクから分岐して延びる複数の分岐管とを備え、前記分岐管内の吸気流れ方向の下流側に、分岐して並んで延在する一対の分岐通路を有する内燃機関の吸気マニホールドであって、
前記分岐管内の吸気流れ方向の上流側及び下流側を上流側及び下流側とするとき、
前記分岐管は、前記一対の分岐通路を隔てる隔壁部を有し、
前記隔壁部は、
前記一対の分岐通路の並び方向における間隔が下流側ほど所定の変化率にて大きくなる一対の第1面と、
前記一対の第1面の下流側にそれぞれ連なって形成され、前記並び方向における間隔が下流側ほど大きくなるように前記並び方向の内側に向かって凹となるように湾曲する一対の第2面と、
前記一対の第2面の下流側にそれぞれ連なって形成され、前記並び方向における間隔が下流側ほど大きくなるように前記並び方向の外側に向かって凸となるように湾曲する一対の第3面と、を有している、
内燃機関の吸気マニホールド。
【請求項2】
前記一対の第1面同士の上流端により前記隔壁部の先鋭な上流端が形成されている、
請求項1に記載の内燃機関の吸気マニホールド。
【請求項3】
前記隔壁部は、前記一対の第3面の下流側にそれぞれ滑らかに連なって形成され、前記一対の分岐通路の下流側開口までそれぞれ延在する一対の第4面を有している、
請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸気マニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気マニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多気筒内燃機関の吸気システムには、サージタンクと、サージタンクから各気筒に対応して分岐して延びる複数の分岐管とを有する吸気マニホールドが設けられている。各分岐管内の通路は、シリンダヘッドの吸気ポートに連通される。
【0003】
また、気筒当たり2つの吸気ポート(吸気バルブ)が設けられた内燃機関においては、分岐管内の下流側に、2つの吸気ポートにそれぞれ対応して分岐して延びる一対の分岐通路を有しているものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
同文献1の一対の分岐通路は、吸気の上流側に向かって断面先細り形状の分岐壁部により区画されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の吸気マニホールドにおいて、分岐管内の分岐壁部よりも上流側の部分の延在方向に対する分岐壁部の傾斜角度が小さいほど、分岐壁部の表面において吸気の剥離が生じにくくなり、吸気を円滑に分岐させることができる。
【0007】
しかしながら、上記傾斜角度が小さいほど、分岐壁部が上流側に延びることとなり、分岐通路の流路長が長くなることで分岐壁部との摩擦に起因した吸気の圧力損失が増大する。
【0008】
本発明の目的は、吸気の分岐時における圧力損失を低減できる内燃機関の吸気マニホールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための内燃機関の吸気マニホールドは、サージタンクと、サージタンクから分岐して延びる複数の分岐管とを備え、前記分岐管内の吸気流れ方向の下流側に、分岐して並んで延在する一対の分岐通路を有する内燃機関の吸気マニホールドであって、前記分岐管内の吸気流れ方向の上流側及び下流側を上流側及び下流側とするとき、前記分岐管は、前記一対の分岐通路を隔てる隔壁部を有し、前記隔壁部は、前記一対の分岐通路の並び方向における間隔が下流側ほど所定の変化率にて大きくなる一対の第1面と、前記一対の第1面の下流側にそれぞれ連なって形成され、前記並び方向における間隔が下流側ほど大きくなるように前記並び方向の内側に向かって凹となるように湾曲する一対の第2面と、前記一対の第2面の下流側にそれぞれ連なって形成され、前記並び方向における間隔が下流側ほど大きくなるように前記並び方向の外側に向かって凸となるように湾曲する一対の第3面と、を有している。
【0010】
同構成によれば、分岐管内を流れる吸気は、隔壁部の上流端に衝突することにより2つの流れに分岐され、一対の第1面に沿って流れるようになる。ここで、一対の第1面の上記並び方向における間隔の所定の変化率を小さく設定すれば、吸気が隔壁部に衝突する際の衝突角度が小さくなり、吸気の剥離を抑制しながら吸気を分岐することができる。
【0011】
第1面に沿って流れた吸気は、次に、第2面に沿って流れる。ここで、一対の第2面は上記並び方向の内側に向かって凹となるように湾曲しているため、一対の第2面を一対の第1面に滑らかに連ねることができるとともに、一対の第2面の上記並び方向における間隔の変化率を小さく抑えることができ、第2面における吸気の剥離を抑制することができる。
【0012】
そして、第2面に沿って流れた吸気は、次に、第3面に沿って流れる。ここで、一対の第3面は上記並び方向の外側に向かって凸となるように湾曲しているため、一対の第3面を一対の第2面に滑らかに連ねることができるとともに、一対の第3面の上記並び方向における間隔の変化率を小さく抑えることができ、第3面における吸気の剥離を抑制することができる。
【0013】
また、こうした構成によれば、隔壁部が一対の第2面や一対の第3面を有していない構成、すなわち一対の第3面の下流端に相当する部位までが一対の第1面によって形成される構成に比べて、隔壁部の全長が短くなる。
【0014】
これらにより、隔壁部の全長を短くしながらも吸気の剥離を低減できるようになる。したがって、吸気の分岐時における吸気の圧力損失を低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸気の分岐時における圧力損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】吸気マニホールドの一実施形態を模式的に示す斜視図。
【
図3】同実施形態の分岐管の隔壁部を中心とした拡大断面図。
【
図4】同実施形態の隔壁部の第2面及び第3面の形状を示す模式図。
【
図5】変更例の分岐管の隔壁部を中心とした拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図4を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の吸気マニホールド10は、直列3気筒の車載内燃機関のシリンダヘッド100に取り付けられるものであり、樹脂材料により形成されている。
【0018】
吸気マニホールド10は、吸気を導入する吸気口(図示略)を有するサージタンク11と、サージタンク11から分岐して延びる複数(本実施形態では3つ)の分岐管12とを備えている。各分岐管12は、サージタンク11から上方に向かって延びるとともに屈曲して側方に向かって延びている。各分岐管12の先端には、フランジ部14が設けられている。フランジ部14は、シリンダヘッド100の壁面に複数のボルト110により固定される。これにより、吸気マニホールド10がシリンダヘッド100に取り付けられる。
【0019】
図2に示すように、吸気マニホールド10の各分岐管12の下流側には、分岐して並んで延在する一対の分岐通路13が設けられている。分岐管12は、一対の分岐通路13を隔てる隔壁部20を有している。
【0020】
シリンダヘッド100には、各気筒に対応して設けられた都合三対の吸気ポート101が設けられている。各気筒に対応する一対の吸気ポート101は、各気筒毎に設けられた一対の吸気バルブ(図示略)により開閉される。吸気マニホールド10がシリンダヘッド100に取り付けられることによって、吸気マニホールド10の各分岐管12の一対の分岐通路13が各気筒に対応する一対の吸気ポート101に連通する。なお、以降において、分岐管12内の吸気の流れ方向の上流側及び下流側を単に上流側及び下流側と称する。また、一対の分岐通路13の並び方向(
図2の左右方向)を単に並び方向と称する。
【0021】
図3に示すように、隔壁部20は、上流端に位置し、並び方向における間隔が下流側ほど所定の変化率Δにて大きくなる一対の第1面21を有している。第1面21は、分岐管12の延在方向に対して傾斜して延在している。第1面21に沿って吸気が円滑に流れるためには、上記所定の変化率Δが小さいこと、すなわち、各第1面21の上記延在方向に対する傾斜角度が小さいことが望ましい。本実施形態における各第1面21の上記傾斜角度は略3度である。なお、第1面21の上流側には、断面半円状をなす湾曲面20aが連なって形成されている。
【0022】
一対の第1面21の下流側には、並び方向における間隔が下流側ほど大きくなるように並び方向の内側に向かって凹となるように湾曲する一対の第2面22がそれぞれ滑らかに連なって形成されている。
図4に二点鎖線にて示すように、各第2面22は、単一の曲率半径R1にて湾曲している。
【0023】
図3に示すように、一対の第2面22の下流側には、並び方向における間隔が下流側ほど大きくなるように並び方向の外側に向かって凸となるように湾曲する一対の第3面23がそれぞれ滑らかに連なって形成されている。
図4に二点鎖線にて示すように、各第3面23は、第2面22の曲率半径R1よりも大きい単一の曲率半径R2にて湾曲している。また、一対の第3面23の変化率Δは、一対の第1面21の変化率Δよりも大きい。
【0024】
なお、第1面21及び第3面23の上記延在方向における長さは略同一である。
図3に示すように、一対の第3面23の下流側には、上記延在方向に沿って一対の分岐通路13の下流側開口13aまでそれぞれ延在する一対の第4面24がそれぞれ滑らかに連なって形成されている。
【0025】
本実施形態の作用について説明する。
各分岐管12の一対の分岐通路13を隔てる隔壁部20は、上流側から順に湾曲面20a、一対の第1面21、一対の第2面22、一対の第3面23、一対の第4面24を有している。
【0026】
このため、分岐管12内を流れる吸気は、まず隔壁部20の湾曲面20aに衝突することにより2つの流れに分岐され、一対の第1面21に沿って流れるようになる。ここで、一対の第1面21の並び方向における間隔の変化率Δを小さく設定すれば、吸気が隔壁部20に衝突する際の衝突角度が小さくなり、吸気の剥離を抑制しながら吸気を分岐することができる。
【0027】
第1面21に沿って流れた吸気は、次に、第2面22に沿って流れる。ここで、一対の第2面22は並び方向の内側に向かって凹となるように湾曲しているため、一対の第2面22を一対の第1面21に滑らかに連ねることができるとともに、一対の第2面22の並び方向における間隔の変化率Δを小さく抑えることができ、第2面22における吸気の剥離を抑制することができる。
【0028】
そして、第2面22に沿って流れた吸気は、次に、第3面23に沿って流れる。ここで、一対の第3面23は並び方向の外側に向かって凸となるように湾曲しているため、一対の第3面23を一対の第2面22に滑らかに連ねることができるとともに、一対の第3面23の並び方向における間隔の変化率Δを小さく抑えることができ、第3面23における吸気の剥離を抑制することができる。
【0029】
また、こうした構成によれば、隔壁部20が一対の第2面22や一対の第3面23を有していない構成、すなわち一対の第3面23の下流端に相当する部位までが一対の第1面21によって形成される構成に比べて、隔壁部20の全長が短くなる(以上、作用1)。
【0030】
そして、第3面23に沿って流れた吸気は、次に、第4面24に沿って流れる。ここで、一対の第3面23と一対の第4面24とが滑らかに連なっているため、これらの境界において吸気が円滑に流れるようになり、吸気の剥離を抑制することができる(以上、作用2)。
【0031】
本実施形態の効果について説明する。
(1)吸気マニホールド10は、サージタンク11と、サージタンク11から分岐して延びる複数の分岐管12とを備える。分岐管12の下流側には、隔壁部20により隔てられ、分岐して並んで延在する一対の分岐通路13が設けられている。隔壁部20は、並び方向における間隔が下流側ほど所定の変化率Δにて大きくなる一対の第1面21を有している。また、隔壁部20は、一対の第1面21の下流側にそれぞれ連なって形成され、並び方向における間隔が下流側ほど大きくなるように並び方向の内側に向かって凹となるように湾曲する一対の第2面22を有している。また、隔壁部20は、一対の第2面22の下流側にそれぞれ連なって形成され、並び方向における間隔が下流側ほど大きくなるように並び方向の外側に向かって凸となるように湾曲する一対の第3面23を有している。
【0032】
こうした構成によれば、上記作用1を奏することから、隔壁部20の全長を短くしながらも吸気の剥離を低減できるようになる。したがって、吸気の分岐時における吸気の圧力損失を低減できる。
【0033】
また、分岐管12内において吸気に速度差が生じる場合には、各分岐通路13に流入する吸気の流量にばらつきが生じるおそれがある。この点、上記構成によれば、隔壁部20の全長を短くすることができるため、吸気の速度差が小さくなった状態で吸気を分岐することができる。したがって、上記吸気の流量のばらつきを抑制することができる。
【0034】
(2)隔壁部20は、一対の第3面23の下流側にそれぞれ滑らかに連なって形成され、一対の分岐通路13の下流側開口13aまでそれぞれ延在する一対の第4面24を有している。
【0035】
こうした構成によれば、上記作用2を奏することから、吸気の分岐時における圧力損失を低減できる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0036】
なお、以下の
図5に示す変更例において、上記実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すとともに、対応する構成については「100」を加算した符号を付すことにより、重複した説明を省略する。
【0037】
・
図5に示すように、一対の第1面121同士の上流端により隔壁部120の先鋭な上流端120aが形成されるようにしてもよい。
こうした構成によれば、隔壁部120の上流端120aにおける吸気の衝突角度を小さくすることができるため、上流端120aにおける吸気の剥離を抑制することができる。
【0038】
・本実施形態の隔壁部20においては、第3面23と第4面24とが滑らかに連なるものであったが、第3面23と第4面24とが、並び方向の外側に向かって凸となるように湾曲する曲面を介して連なっていてもよい。
【0039】
・第2面22及び第3面23は、複数の曲率半径にて段階的に湾曲するものであってもよい。
・本実施形態では、直列3気筒の車載内燃機関に適用される吸気マニホールドについて例示したが、直列4気筒などの車載内燃機関に対して本実施形態の吸気マニホールドと同様な構成を有する吸気マニホールドを適用してもよい。また同様に、V型内燃機関や水平対向型内燃機関に対しても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0040】
10…吸気マニホールド、11…サージタンク、12…分岐管、13…分岐通路、13a…下流側開口、14…フランジ部、20…隔壁部、20a…湾曲面、21…第1面、22…第2面、23…第3面、24…第4面、100…シリンダヘッド、101…吸気ポート、110…ボルト、120…隔壁部、120a…上流端、121…第1面。