(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/447 20060101AFI20220614BHJP
B41J 2/45 20060101ALI20220614BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20220614BHJP
G02B 13/24 20060101ALI20220614BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B41J2/447 101C
B41J2/45
B41J2/447 101A
G02B3/00 A
G02B13/24
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2018236098
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大木 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
(72)【発明者】
【氏名】池田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】ヌルナビラ ムハマドマクタ
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-051194(JP,A)
【文献】特開2010-253896(JP,A)
【文献】特開2009-104107(JP,A)
【文献】特開2010-125836(JP,A)
【文献】特開2008-221707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0188875(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/447
B41J 2/45
G02B 3/00
G02B 13/24
G02B 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、感光体と光プリントヘッドとを備えた画像形成装置であって、
前記光プリントヘッドが、2次元に配列した発光点群を有する発光素子と、
前記発光点群からの光を、発光点ごとに前記感光体の受光面上の異なる位置に結像させる光学系とを有し、
前記光学系の結像倍率は-1であり、
前記発光点群と前記光学系の組が複数存在し、副走査方向について位置が異なるものを含み、
前記感光体の回転軸の方向から見たとき、それぞれの前記光学系の共役長は前記副走査方向の位置によって角度が異なり、前記副走査方向の位置に応じて単調に増加又は減少し、
それぞれの前記光学系について、レンズが絞りより上流側と下流側に各1枚あり、
2枚の前記レンズはそれぞれ、曲率を持つ二つの面が共通の回転対称軸を有し、
前記2枚のレンズについて、前記絞りに近い側の面は同一形状であり、かつ、前記絞りから遠い側の面は同一形状であり、また、心厚が等しく、
前記2枚のレンズの、前記絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線上に、前記絞りの中心が配置されており、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線と、前記レンズの前記回転対称軸はゼロでない角度をもち、前記2枚のレンズの前記回転対称軸は互いに平行である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記2枚のレンズの4面のレンズ面が、前記絞りの中心に対して点対称であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の光学系について、前記絞りの前記上流側のレンズはすべて一つのガラス基板上に樹脂を積み重ねて形成されていて、一方、絞りの前記下流側のレンズはすべて一つのガラス基板上に樹脂を積み重ねて形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ガラス基板は、いずれも、前記2枚のレンズの絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して垂直でないことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記ガラス基板の法線が傾いている方向と、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記レンズの前記回転対称軸が傾いている方向とが同じであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記上流側の前記ガラス基板と前記下流側の前記ガラス基板とが、平行でないことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記レンズの前記回転対称軸が傾いている角度が、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記上流側の前記ガラス基板の法線が傾いている角度と下流側の前記ガラス基板の法線が傾いている角度の間にあることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体と光プリントヘッドとを備えた画像形成装置に関し、より詳しくは、2次元に配列した発光点群を有する発光素子を備えた画像形成装置であって、副走査方向に関しても結像状態を向上させた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロレンズアレイを用いて発光素子列を被照射面上に投影して結像スポット列を形成するラインヘッドを用いた画像形成装置が下記特許文献1に開示されている。当該特許文献1に開示されているラインヘッドは、第1の方向に複数の発光素子がアレイ状に配されてなる発光素子列を1列以上含む発光体ブロックが少なくとも第1の方向に間隔をおいて複数配された発光体アレイの射出側に、各発光体ブロックに対応して1個の正レンズ系が配されてなるレンズアレイが配置され、前記レンズアレイの結像側に書き込み面が配されており、前記レンズアレイを構成する正レンズ系が2群の正レンズ群を共焦点で配してなる望遠光学系からなり、前記望遠光学系の共焦点面に開口絞が配されていることを特徴としている。
このラインヘッドの技術は、光軸が互いに平行な複数の光学系を用いて、それぞれの光学系に対応した発光点群からの光をそれぞれ結像して描画する技術である。
【0003】
しかし、この技術によると、発光点群を同一のガラス基板上に形成すると、相対的な位置の精度を出しやすい一方で、ドライブ回路などを同一ガラス基板上に作りこむと、ガラス基板上で回路が占める面積が増大し、ユニットが大型化する懸念がある。また、形成される画像の画質も、必ずしも十分なものではなく、改良の余地があるものと考えられる。
したがって、ユニットを小型化すると伴に、形成される画像の一層の改善化を可能とする技術開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、2次元に配列した発光点群を有する発光素子を備えた画像形成装置であって、副走査方向に関しても結像状態を向上させた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、画像形成装置に備えられる光プリントヘッドの光学系における発光点、レンズ、及び感光体面等の相対的位置関係等について検討する過程において、レンズ基板に設けられるレンズの傾き等が副走査方向での結像状態に大きな影響を及ぼすことを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0007】
1.少なくとも、感光体と光プリントヘッドとを備えた画像形成装置であって、
前記光プリントヘッドが、2次元に配列した発光点群を有する発光素子と、
前記発光点群からの光を、発光点ごとに前記感光体の受光面上の異なる位置に結像させる光学系とを有し、
前記光学系の結像倍率は-1であり、
前記発光点群と前記光学系の組が複数存在し、副走査方向について位置が異なるものを含み、
前記感光体の回転軸の方向から見たとき、それぞれの前記光学系の共役長は前記副走査方向の位置によって角度が異なり、前記副走査方向の位置に応じて単調に増加又は減少し、
それぞれの前記光学系について、レンズが絞りより上流側と下流側に各1枚あり、
2枚の前記レンズはそれぞれ、曲率を持つ二つの面が共通の回転対称軸を有し、
前記2枚のレンズについて、前記絞りに近い側の面は同一形状であり、かつ、前記絞りから遠い側の面は同一形状であり、また、心厚が等しく、
前記2枚のレンズの、前記絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線上に、前記絞りの中心が配置されており、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線と、前記レンズの前記回転対称軸はゼロでない角度をもち、前記2枚のレンズの前記回転対称軸は互いに平行である
ことを特徴とする画像形成装置。
【0008】
2.前記2枚のレンズの4面のレンズ面が、前記絞りの中心に対して点対称であることを特徴とする第1項に記載の画像形成装置。
【0009】
3.前記複数の光学系について、前記絞りの前記上流側のレンズはすべて一つのガラス基板上に樹脂を積み重ねて形成されていて、一方、絞りの前記下流側のレンズはすべて一つのガラス基板上に樹脂を積み重ねて形成されていることを特徴とする第1項又は第2項に記載の画像形成装置。
【0010】
4.前記ガラス基板は、いずれも、前記2枚のレンズの絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して垂直でないことを特徴とする第3項に記載の画像形成装置。
【0011】
5.前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記ガラス基板の法線が傾いている方向と、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記レンズの前記回転対称軸が傾いている方向とが同じであることを特徴とする第4項に記載の画像形成装置。
【0012】
6.前記上流側の前記ガラス基板と前記下流側の前記ガラス基板とが、平行でないことを特徴とする第4項又は第5項に記載の画像形成装置。
【0013】
7.前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記レンズの前記回転対称軸が傾いている角度が、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記上流側の前記ガラス基板の法線が傾いている角度と下流側の前記ガラス基板の法線が傾いている角度の間にあることを特徴とする第6項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記手段により、2次元に配列した発光点群を有する発光素子を備えた画像形成装置であって、副走査方向に関しても結像状態を向上させた画像形成装置を提供することができる。
(本発明及びその効果についての基本的考え方)
以下において、本発明の特徴を明確にすべく、本発明に至った、基本的考え方等について説明する。
前記特許文献1において開示されている技術には、前述のような問題点がある。
そこで、前記問題点の解決策の一つとして、副走査方向の位置が同じである発光点群を一つのガラス基板上に形成し、副走査方向の位置が異なる発光点群を別のガラス基板上に形成し、さらに、ガラス基板の感光体からの距離をそれぞれ変えて、あるガラス基板上の発光点群の背後に別のガラス基板のドライブ回路を配置するように構成することで、ユニットを小型化する技術が考えられる。
【0015】
しかし、そのような構成を採用した場合、副走査方向の位置に応じて、光学系の共役長が異なる状態になる。異なる位置にあるレンズを共通のガラス板上に樹脂を積層する形で形成する技術を使い、さらに、ガラス板が感光体に正対する形で光学系を構成した場合、レンズ最終面から感光体までの距離がほぼ等しいのに対して、発光点群からレンズ先頭面までの距離は共役長の差に応じて変化することになり、倍率を揃えることが困難になる。
【0016】
また、レンズに対して光源や感光体の距離が変化した際に像の大きさが変化してしまうことを避けるために、光学系をテレセントリックにする技術がある。光学系をテレセントリックにするためには、絞り前後の部分的な光学系の焦点距離に応じて、レンズと絞りの位置関係を設定することが必要だが、条件の差が小さい感光体側はすべての光学系を同時にテレセントリックにすることが可能なのに対し、距離の差が大きい光源側は、同時にテレセントリックにすることが難しい。倍率をそろえることや光源側をテレセントリックとするためには、レンズを共通のレンズ基板上に形成することをやめて、複数のレンズに分割する方法もあるが、相対的に位置がずれてしまうと画像の不具合となるので、ただでさえ光源基板が複数に分割されていて個別に調整・保持しなければならない状況では、レンズの保持機構の構成が極端に複雑になり、調整は大変難しいものとなる。
【0017】
そこで、レンズ面については共通の対称軸を持ったまま、レンズ基板を斜めにして、光源基板を積層にしつつも、光学系の倍率をそろえ、また、光源側も感光体側もテレセントリックな光学系を実現する技術が考えられる。
ところが、レンズ面を傾けずにガラス基板を傾けた場合、ガラス基板を基準として見ればレンズ面が傾いて形成された状態であり、副走査方向について厚さの差がある状態になる。特に、絞りよりも光源側のレンズにおいて、感光体に対してガラス基板の傾きが大きくなるために、ガラス基板上の樹脂の厚さの差が大きくなってしまうという問題が生じてしまう。
【0018】
したがって、上記のような考察及び実験を経て、本発明に至った。すなわち、前記「課題を解決するための手段」の欄に記載したような手段により、絞りの上流側にあるレンズと下流側にあるレンズについて、それぞれ、表裏面の回転対称軸は一致した状態のまま、同じ角度だけ回転し得て、上流側のレンズと下流側のレンズは、同一形状のものを180度回転した状態とすれば、レンズを傾けたことによって発生する非対称な収差成分が上流側と下流側で互いに打ち消しあい、対称な成分のみが残存する状態となり、例えば一方のみを傾けた場合や異なる角度で傾けた場合と比較して良好な結像状態を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の画像形成装置の概略構成を示す部分断面図
【
図2】像形成ユニットを構成する光プリントヘッドの構造及び光路を説明する概念図
【
図3】比較例の光プリントヘッドの構造及び光路を説明する概念図
【
図4】本発明の実施形態における光源とレンズの位置関係を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の画像形成装置は、前記光プリントヘッドが、2次元に配列した発光点群を有する発光素子と、前記発光点群からの光を、発光点ごとに前記感光体の受光面上の異なる位置に結像させる光学系とを有し、前記光学系の結像倍率は-1であり、前記発光点群と前記光学系の組が複数存在し、副走査方向について位置が異なるものを含み、前記感光体の回転軸の方向から見たとき、それぞれの前記光学系の共役長は前記副走査方向の位置によって角度が異なり、前記副走査方向の位置に応じて単調に増加又は減少し、それぞれの前記光学系について、レンズが絞りより上流側と下流側に各1枚あり、2枚の前記レンズはそれぞれ、曲率を持つ二つの面が共通の回転対称軸を有し、前記2枚のレンズについて、前記絞りに近い側の面は同一形状であり、かつ、前記絞りから遠い側の面は同一形状であり、また、心厚が等しく、前記2枚のレンズの、前記絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線上に、前記絞りの中心が配置されており、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線と、前記レンズの前記回転対称軸はゼロでない角度をもち、前記2枚のレンズの前記回転対称軸は互いに平行であることを特徴とする。
この特徴は下記各実施形態に共通する技術的特徴である。
【0021】
本発明の画像形成装置では、絞りの上流側にあるレンズと下流側にあるレンズについて、それぞれ、表裏面の回転対称軸は一致した状態のまま、同じ角度だけ回転し得る。したがって、上流側のレンズと下流側のレンズは、同一形状のものを180度回転した状態とすれば、レンズを傾けたことによって発生する非対称な収差成分が上流側と下流側で互いに打ち消しあい、対称な成分のみが残存する状態となり、例えば一方のみを傾けた場合や異なる角度で傾けた場合と比較して良好な結像状態を得ることが可能になる。
【0022】
本発明の実施形態としては、前記2枚のレンズの4面のレンズ面が、絞りの中心に対して点対称であることが好ましい。
当該2枚のレンズの間に絞りのみがある場合、非対称成分を除去するためには、その絞りの中心について点対称になるように上流側と下流側のレンズを配置するのが良いからである。
【0023】
また、前記複数の光学系について、前記絞りの前記上流側のレンズはすべて一つのレンズ基板上に樹脂を積み重ねて形成されていて、一方、絞りの前記下流側のレンズはすべて一つのガラス基板上に樹脂を積み重ねて形成されていることが好ましい。
一つのガラス基板上に複数のレンズを形成してそのガラス基板の位置を調整・保持するようにすれば、分けた場合と比べて構成が簡単になり、相対的な位置が固定されているので精度も出しやすいからである。絞りの上流側にあるすべてのレンズを一つのガラス基板上に形成し、絞りの下流側にあるすべてのレンズを一つのガラス基板上に形成することが望ましい。なお、ガラス基板は、その上に発光点群やドライブ回路が形成されたものと、樹脂を積層してレンズが形成されたものがあるので、これ以降、それらを区別するために、発光点群が形成されたガラス基板を「発光基板」、レンズが形成されたガラス基板を「レンズ基板」と表記する。
【0024】
さらに、前記レンズ基板は、いずれも、前記2枚のレンズの絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して垂直でないことが好ましい。
本発明においては、発光基板を分割し、発光点群の背後にドライブ回路を配置することによってユニットの小型化を実現し得るが、このとき、発光点群に対してドライブ回路を同じ側に配置したほうが、逆向きのものと混在させた場合と比べて副走査方向についてより小型になる。その際、共役長は、副走査方向の位置に応じて単調に増加もしくは減少することになる。そのとき、上記のように副走査方向について異なる位置にあるレンズを共通のレンズ基板上に形成するとすれば、互いに共役長が異なる光学系について倍率をそろえるためには、感光体からレンズまでの距離が、共役長の比とおおよそ同じになるようにレンズ基板を傾けることが望ましい。そのとき、いずれのガラス基板も傾いた状態となる。
【0025】
本発明の実施形態としては、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記レンズ基板の法線が傾いている方向と、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記レンズの前記回転対称軸が傾いている方向とが同じであることが好ましい。
【0026】
また、前記上流側の前記レンズ基板と前記下流側の前記レンズ基板とが、平行でないことが好ましい。
傾きの角度は、レンズ基板が発光点から感光体までのどの位置にあるかによって異なることになるので、2枚のレンズ基板の間で角度の差があることになる。
【0027】
さらに前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記レンズの前記回転対称軸が傾いている角度が、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線に対して前記上流側の前記レンズ基板の法線が傾いている角度と下流側の前記レンズ基板の法線が傾いている角度の間にあることが好ましい。
【0028】
先に述べたようにレンズ面を傾ける角度は上流側と下流側で同じにする必要があるので、レンズ基板の角度に合わせてレンズ面を傾けることは、上流側と下流側のどちらか一方しかできないことになる。従って、樹脂層の厚さの差を完全になくすことはできないが、なるべく厚さの差を抑えるためには、二つのレンズ基板の間の角度でレンズ面を回転することが望ましい。
【0029】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態について詳細な説明をする。
(本発明の画像形成装置の概要)
本発明の画像形成装置は、少なくとも、感光体と光プリントヘッドとを備えた画像形成装置であって、
前記光プリントヘッドが、2次元に配列した発光点群を有する発光素子と、
前記発光点群からの光を、発光点ごとに前記感光体の受光面上の異なる位置に結像させる光学系とを有し、
前記光学系の結像倍率は-1であり、
前記発光点群と前記光学系の組が複数存在し、副走査方向について位置が異なるものを含み、
前記感光体の回転軸の方向から見たとき、それぞれの前記光学系の共役長は前記副走査方向の位置によって角度が異なり、前記副走査方向の位置に応じて単調に増加又は減少し、
それぞれの前記光学系について、レンズが絞りより上流側と下流側に各1枚あり、
2枚の前記レンズはそれぞれ、曲率を持つ二つの面が共通の回転対称軸を有し、
前記2枚のレンズについて、前記絞りに近い側の面は同一形状であり、かつ、前記絞りから遠い側の面は同一形状であり、また、心厚が等しく、
前記2枚のレンズの、前記絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線上に、前記絞りの中心が配置されており、前記絞りに近い側の前記二つの主点を結ぶ直線と、前記レンズの前記回転対称軸はゼロでない角度をもち、前記2枚のレンズの前記回転対称軸は互いに平行であることを特徴とする。
【0030】
〔実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る画像形成装置の実施形態の一例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、下記実施形態例に限定されるものではない。
【0031】
(画像形成装置全体の構成)
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100は、例えばデジタル複写機等として用いられ、原稿Dに形成された色画像を読み取る画像読取部10と、原稿Dに対応する画像を用紙Pに形成する画像形成部20と、画像形成部20に用紙Pを給紙する給紙部40と、用紙Pを搬送する搬送部50と、装置全体の動作を統括的に制御する制御部90とを含む。
【0032】
画像形成部20は、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの色毎に設けられた像形成ユニット70Y,70M,70C,70Kと、各色を合成したトナー像が形成される中間転写部81と、トナー像を定着させる定着部82とを備えている。
【0033】
画像形成部20のうち、画像形成ユニット70Yは、Y(イエロー)色の画像を形成する部分であり、感光体71、帯電部72、光プリントヘッド(光書込装置)73、現像部74等を備えている。感光体71は、Y色のトナー像を形成し、帯電部72は、感光体71の周囲に配置されてコロナ放電により感光体71の表面を帯電させ、光プリントヘッド73は、感光体71に対してY色成分の画像に対応する光を照射し、現像部74は、感光体71の表面にY色成分のトナーを付着させることにより静電潜像からトナー像を形成する。感光体71は、円筒形状を有し、回転軸RXのまわりに回転する。感光体71の円筒表面は、光プリントヘッド73による像を結像させる受光面71aとなっている。
【0034】
他の像形成ユニット70M,70C,70Kは、形成する画像の色が異なる以外はY色用の画像形成ユニット70Yと同様の構造及び機能を有するため、これらの構造等については説明を省略する。なお、像形成ユニット70は、4色の像形成ユニット70Y,70M,70C,70Kのうち任意のユニットを意味し、それぞれの色に適合させた要素として、感光体71、帯電部72、光プリントヘッド73、及び現像部74を備える。
【0035】
(光プリントヘッドの構成)
図2は、前記像形成ユニット70のうち光プリントヘッド(「光書込装置」ともいう。)73の構造及び当該光プリントヘッド73内における光路を説明する概念的な側面図(以下において、「光路図」ともいう。)であり、感光体71の回転軸の方向から見た図である。感光体71は円筒形であるが、図ではその一部分を示している。
【0036】
光源はボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子(「有機EL素子」ともいう。)であり、ガラス板4の上に複数の発光点で構成される発光点群3が2次元配列されている。図の縦方向が副走査方向に相当するが、3箇所に発光点群があり、それぞれに対応する光学系がある。
【0037】
それぞれの光学系は2つの凸レンズ1及び2からなる。レンズ1及び2は、それぞれ、レンズ基板5a及び5bの上に樹脂を積層する方法で形成されている。光源側のレンズは一枚の共通のレンズ基板5a上に形成されており、感光体側のレンズはそれとは別の一枚の共通のレンズ基板5b上に形成されている。また、感光体側のレンズ2と感光体71の間には平板のガラス板であるウインドウ5cがある。このウインドウ5cと、図示しない外装によって、2枚のレンズ基板が覆われており、レンズにごみが付着しないように構成されている。
【0038】
図3は、比較例の光路図である。図示された3つの光学系のうち一つについて見れば、曲率を持つ面が4つあるが、その4つの面はいずれも軸対称非球面であり、回転対称軸はすべて一致している。また、3つの光学系の回転対称軸は互いに平行である。発光点3を構成する発光点群(DG)の中心は回転対称軸の延長線上にあり、また、感光体71上の結像点もその中心が回転対称軸の延長線上にある。光学系は、両側テレセントリックで倍率が-1倍である。それを実現するために、発光点群DG、上流側レンズ1、絞り6、下流側レンズ2、感光体71上の結像点7が、概ね等間隔になっている。ある発光点群の背後に他の発光点群のドライブ回路等を配置しているために、図示された3つの光学系に対応する3つの発光点群は概ね直線上に配列しており、その直線は光軸に対して傾いている。
【0039】
発光点群から感光体上結像点7までの距離は、図の上側ほど長くなっている。感光体が平面でなく円筒形状であるために、副走査方向の位置に対する上記の距離の変化は線形ではないが、単調に増加している。2枚のレンズ基板5a及び5bと絞り6は平板で、発光点3と感光体上の結像点7を概ね4等分するように配置されているので、光軸となす角度が垂直からずれた角度について、それぞれタンジェント(正接)を計算したときの値が、発光点(群)を1としたときに、上流側レンズ基板が約3/4、絞りが約1/2、下流側レンズ基板が約1/4となっている。光軸とレンズ基板の角度差は、そのまま、レンズ面がレンズ基板に対して傾いている量を示している。レンズ基板上の樹脂部分の厚さが、図の上側と下側で異なっており、特に上流側のレンズで差が大きくなっている。
【0040】
これに対して本発明の実施形態では、レンズ1及び2の回転対称軸が、絞り6の角度に近い角度に合わせる形で傾いている。これによって、上流側レンズでは厚さの差が大きく軽減している。下流側レンズでは、傾きの方向が反対になっているが厚さの差は改善していない。
もしも、それぞれのレンズ基板5a及び5bに対して傾きを合わせたとすれば、上流側レンズと下流側レンズで傾きが違う量になってしまい、非対称な収差が残存して、結像状態を悪化させてしまう。
そこで、本発明では、レンズ基板5a及び5bの角度が異なっていても、レンズ傾きの角度を上流側と下流側でそろえて、結像状態を悪化させずに、レンズ基板5a及び5bに対するレンズの傾きを軽減することを狙っている。そのためには、レンズの傾きは2つのレンズ基板5a及び5bの間の角度にすることが望ましい。
【0041】
図4は、本発明の実施形態における、光源とレンズの位置関係を示す模式図である。説明のため、
図2に比べてレンズの回転角度を大きくして図示している。レンズは曲率を持つ面のみ、断面を示した。また、図中央の二本の短い直線は絞りを示している。レンズ面の間に二つずつある「十」の印は、そのレンズの主点を示している。各レンズにある二つの主点のうち、絞り側の二つの主点を結ぶ直線は絞りの中央を通っている。
【0042】
また、図の左側のレンズの、外側の主点から水平に伸ばした線の延長線上に、発光点群3の中心が位置している。発光点群3の中心から水平に飛んだ光線は、傾いたレンズによって図の上方向にずれるが、レンズ後は水平に飛び、絞り6の中心を通過した後、もう一枚のレンズで再び上方向にずれ、水平に射出される。右側のレンズの、外側の主点から水平に伸ばした直線の延長線上に、結像点7の中心が位置している。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の画像形成装置に組み込まれる前記光プリントヘッド73の光学系の具体的な実施例について説明する。
【0044】
表I(1)~表(III)は、本発明の実施形態の一例として
図2に示した光プリントヘッド73の光学系を数値的に示したものである。中央、上側、下側の三つについてそれぞれ示している。
平板については、中央の光学系と共通の座標となっている。発光点群3については、表Iでは発光点群の中央の座標を示している。
また、感光体71は半径25mmの円筒形で、面としては三つの光学系とも共通であるが、表では、感光体表面については光軸と交わる位置の位置と傾きを示した。非球面係数を見ると、絞りをはさんで、絶対値が同じで符号が反対になっているので、同一形状で反対向きになっていることがわかる。
なお、屈折率は、波長650nmに対して、レンズ基板は1.5145であり、レンズ面とレンズ基板との間は樹脂であり、その屈折率は1.5285である。また、結像倍率は、いずれの光学系も-1である。
【0045】
I 中央の光学系について
(相対的位置関係について)
表I(1)は、中央の光学系(結像系)の相対的位置関係をXYZ座標で表したものである。なお、距離の単位は、mmである。
【0046】
【0047】
(非球面形状について)
中央の光学系の各レンズの非球面形状について、表I(2)に非球面係数をまとめた。記載した非球面は、いずれも軸対称非球面で、球面項は無く、形状式は、X、Y、Zに対応するローカル座標をx、y、zとして、下記式(I)に従った。なお、表に無い非球面係数aiはすべて0である。これらの点は以下でも同様である。
【0048】
【0049】
【0050】
II 上側の光学系について
(相対的位置関係について)
表II(1)は、中央の光学系(結像系)の相対的位置関係をXYZ座標で表したものである。なお、距離の単位は、mmである。
【表3】
【0051】
(非球面形状について)
上側の光学系の各レンズの非球面形状について、表II(2)に非球面係数をまとめた。記載した非球面は、いずれも軸対称非球面で、球面項は無く、形状式は、X、Y、Zに対応するローカル座標をx、y、zとして、前記式(I)に従った。なお、表に無い非球面係数a
iはすべて0である。これらの点は以下でも同様である。
【表4】
【0052】
III 下側の光学系について
(相対的位置関係について)
表III(1)は、中央の光学系(結像系)の相対的位置関係をXYZ座標で表したものである。なお、距離の単位は、mmである。
【0053】
【0054】
(非球面形状について)
下側の光学系の各レンズの非球面形状について、表III(2)に非球面係数をまとめた。記載した非球面は、いずれも軸対称非球面で、球面項は無く、形状式は、X、Y、Zに対応するローカル座標をx、y、zとして、前記式(I)に従った。なお、表に無い非球面係数a
iはすべて0である。これらの点は以下でも同様である。
【表6】
【0055】
以上の表I~IIIに示した光学系の座標の数値等から分かるように、本発明の画像形成装置の光プリントヘッドは、2次元に配列した発光点群を有する発光素子と、前記発光点群からの光を、発光点3ごとに前記感光体の受光面7上の異なる位置に結像させる光学系とを有し、前記光学系の結像倍率は-1であり、前記発光点群と前記光学系の組が複数存在し、副走査方向について位置が異なるものを含み、前記感光体71の回転軸の方向から見たとき、それぞれの前記光学系の共役長は前記副走査方向の位置によって角度が異なり、前記副走査方向の位置に応じて単調に増加又は減少し、それぞれの前記光学系について、レンズが絞り6より上流側と下流側に各1枚(レンズ1及びレンズ2)あり、前記2枚のレンズはそれぞれ、曲率を持つ二つの面が共通の回転対称軸を有し、前記2枚のレンズについて、前記絞りに近い側の面は同一形状であり、かつ、前記絞りから遠い側の面は同一形状であり、また、心厚が等しく、前記2枚のレンズの、前記絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線上に、前記絞りの中心が配置されており、前記絞りに近い側の主点を結ぶ直線と、前記レンズの前記回転対称軸はゼロでない角度をもち、前記2枚のレンズの回転対称軸は互いに平行であることを特徴とする。
【0056】
なお、実施例に示されているように、前記2枚のレンズの4面のレンズ面が、絞りの中心に対して点対称であることが好ましい。
また、前記複数の光学系について、前記絞りの上流側のレンズはすべて一つのレンズ基板上に樹脂を積み重ねて形成されていて、一方、絞りの下流側のレンズはすべて一つのレンズ基板上に樹脂を積み重ねて形成されていることが好ましい。
さらに、前記レンズ基板は、いずれも、前記2枚のレンズの絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線に対して垂直でないことが好ましい。
【0057】
また、
図4に示したように、前記絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線に対してレンズ基板の法線が傾いている方向と、前記絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線に対して前記レンズの前記回転対称軸が傾いている方向とが同じであることが好ましい。
さらに、前記上流側の前記レンズ基板と下流側の前記レンズ基板とが、平行でないことが好ましく、前記絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線に対して前記レンズの前記回転対称軸が傾いている角度が、前記絞りに近い側の二つの主点を結ぶ直線に対して上流側の前記レンズ基板の法線が傾いている角度と前記下流側の前記レンズ基板の法線が傾いている角度の間にあることが好ましい。
すなわち、本発明の画像形成装置は、上記の構成要件を満たすことにより、副走査方向に関しても結像状態を向上させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 光学レンズ1
2 光学レンズ2
3 発光点群からなる発光点
4 ガラス板
5a,5b レンズ基板(ガラス基板)
5c ウインドウ
6 絞り
7 感光体71上の結像点
100 画像形成装置
10 画像読取部
20 画像形成部
40 給紙部
50 搬送部
70 画像形成ユニット
71 感光体
72帯電部
73 光プリントヘッド(光書込装置)
74 現像部