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特許7088046光ディスク装置及び光ディスク回転位置検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】光ディスク装置及び光ディスク回転位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20220614BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G01B11/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019009283
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020118537
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】岩間 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-138186(JP,A)
【文献】特開平08-320240(JP,A)
【文献】特開昭62-042366(JP,A)
【文献】実開昭59-010196(JP,U)
【文献】特開平4-355324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0225295(US,A1)
【文献】米国特許第5889586(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
G01B 9/00 - G01B 9/10
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01D 5/26 - G01D 5/38
G01N 33/48 - G01N 33/98
G01N 35/00 - G01N 37/00
G01V 1/00 - G01V 99/00
C12M 1/00 - C12M 3/10
G11B 21/08
G11B 27/10 - G11B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通過部を有する光ディスクを回転させる回転駆動部と、
前記光ディスクに検出光を照射し、出力信号を生成する光センサと、
前記光ディスクが回転している状態において前記光通過部が通過する位置に配置され、前記光センサから照射され、かつ、前記光通過部を通過した前記検出光を反射する光反射部材と、
前記回転駆動部及び前記光センサを制御する制御回路と、
を備え、
前記光センサは、前記光反射部材及び前記光ディスクが前記検出光を反射することにより生成される第1の信号波形と第2の信号波形とを含む前記出力信号を生成し、
前記制御回路は、前記出力信号から前記第1及び第2の信号波形を抽出し、前記第1及び第2の信号波形に基づいて前記光ディスクの回転基準位置を特定する、
光ディスク装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1の信号波形の第1の波形幅と前記第2の信号波形の第2の波形幅とを取得し、前記第1の波形幅と前記第2の波形幅との変化量に基づく比率により前記光ディスクの前記回転基準位置を特定する、
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記光ディスクの回転方向における前記光反射部材の一方の端部から他方の端部までの距離は、前記光ディスクの回転方向における前記光通過部を含む検出領域の一方の端部から他方の端部までの距離よりも短い、
請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
光センサが、光通過部を有し、かつ、回転している光ディスクに検出光を照射し、
前記光ディスクが回転している状態において前記光通過部が通過する位置に配置されている光反射部材が、前記光通過部を透過した前記検出光を反射し、
前記光センサが、前記光ディスク及び前記光反射部材によって反射した前記検出光を検出し、前記光反射部材が前記検出光を反射することにより生成される第1の信号波形と第2の信号波形とを含む出力信号を生成し、
制御回路が、前記出力信号から前記第1及び第2の信号波形を抽出し、前記第1及び第2の信号波形に基づいて前記光ディスクの回転基準位置を特定する、
光ディスク回転位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及び光ディスク回転位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾病に関連付けられた特定の抗原または抗体を検体として検出することで、疾病の発見や治療の効果等を定量的に分析する免疫検定法(immunoassay)が知られている。特許文献1及び特許文献2には、光ディスク上の反応領域に固定された抗体と試料中の抗原とを結合させ、抗体を有する微粒子によって抗原を標識する光ディスク装置が記載されている。
【0003】
光ディスク装置は、光ピックアップから照射されるレーザ光を走査することにより、光ディスク上の反応領域に捕捉された微粒子を検出する。従って、特許文献1及び特許文献2に記載されている光ディスク装置は、検体検出用の分析装置として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002-521666号公報
【文献】特開2006-322819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ディスク装置は、光ディスクを回転させながら光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動させる。光ディスク上には複数の反応領域が形成されているため、微粒子が検出された反応領域を特定する必要がある。特許文献1では光ディスクのアドレス情報を用いて反応領域を特定している。特許文献2では光ディスク内部に反応領域の位置情報を記録したピット群を形成している。
【0006】
従って、特許文献1及び特許文献2に記載されている光ディスク及び光ディスク装置では、光ディスクに予め反応領域の位置を特定するためのアドレス情報を記録しておく必要がある。そのため、光ディスクの製造工程が煩雑になり、光ディスクの製造コストが高くなってしまう。
【0007】
本発明は、光ディスクにアドレス情報が記録されていなくても、光ディスクの回転方向の基準位置を検出できる光ディスク装置及び光ディスク回転位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光通過部を有する光ディスクを回転させる回転駆動部と、前記光ディスクに検出光を照射し、出力信号を生成する光センサと、前記光ディスクが回転している状態において前記光通過部が通過する位置に配置され、前記光センサから照射され、かつ、前記光通過部を通過した前記検出光を反射する光反射部材と、前記回転駆動部及び前記光センサを制御する制御回路とを備え、前記光センサは、前記光反射部材及び前記光ディスクが前記検出光を反射することにより生成される第1の信号波形と第2の信号波形とを含む前記出力信号を生成し、前記制御回路は、前記出力信号から前記第1及び第2の信号波形を抽出し、前記第1及び第2の信号波形に基づいて前記光ディスクの回転基準位置を特定する光ディスク装置を提供する。
【0009】
本発明は、光センサが、光通過部を有し、かつ、回転している光ディスクに検出光を照射し、前記光ディスクが回転している状態において前記光通過部が通過する位置に配置されている光反射部材が、前記光通過部を透過した前記検出光を反射し、前記光センサが、前記光ディスク及び前記光反射部材によって反射した前記検出光を検出し、前記光反射部材が前記検出光を反射することにより生成される第1の信号波形と第2の信号波形とを含む出力信号を生成し、制御回路が、前記出力信号から前記第1及び第2の信号波形を抽出し、前記第1及び第2の信号波形に基づいて前記光ディスクの回転基準位置を特定する光ディスク回転位置検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ディスク装置及び光ディスク回転位置検出方法によれば、光ディスクにアドレス情報が記録されていなくても、光ディスクの回転方向の基準位置を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態の光ディスク装置を側面から見た状態を示す構成図である。
図2】光ディスクの一例を示す平面図である。
図3図2AのA-Aで切断した光ディスクの断面図である。
図4】一実施形態の光ディスク装置における光センサと光ディスクと光反射部材との位置関係を示す部分拡大図である。
図5A】光反射部材が配置されていない場合の光ディスクが回転している状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図5B】光反射部材が配置されていない場合の光ディスクが回転している状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図5C】光反射部材が配置されていない場合の光ディスクが回転している状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図6】光反射部材が配置されていない場合の光センサの出力信号を示す図である。
図7A】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置に位置している状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図7B】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置に位置している状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図7C】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置に位置している状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図8】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置に位置している状態における光センサの出力信号を示す図である。
図9A】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置から光ディスクの回転方向側にずれた状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図9B】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置から光ディスクの回転方向側にずれた状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図9C】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置から光ディスクの回転方向側にずれた状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図10】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置から光ディスクの回転方向側にずれた状態における光センサの出力信号を示す図である。
図11A】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置から光ディスクの回転方向とは逆方向側にずれた状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図11B】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置から光ディスクの回転方向とは逆方向側にずれた状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図11C】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置から光ディスクの回転方向とは逆方向側にずれた状態における検出領域と光通過部との位置関係を示す部分拡大図である。
図12】光反射部材が配置され、光ディスクが回転し、かつ、検出領域が基準位置から光ディスクの回転方向とは逆方向側にずれた状態における光センサの出力信号を示す図である。
図13】一実施形態の光ディスク回転位置検出方法の一例を示すフローチャートである。
図14A】光通過部の一例を示す光ディスクの部分拡大図である。
図14B】光通過部の一例を示す光ディスクの部分拡大図である。
図14C】光通過部の一例を示す光ディスクの部分拡大図である。
図14D】光通過部の一例を示す光ディスクの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を用いて、一実施形態の光ディスク装置の構成例を説明する。光ディスク装置1は、筐体2と、トラバースメカ3と、防振部材4と、光センサ5と、制御回路6と、光反射部材20とを備える。トラバースメカ3は、筐体2の内部に収容され、防振部材4を介して筐体2に固定されている。防振部材4としてダンパーゴムを用いてもよい。防振部材4は、筐体2の振動を吸収することにより、筐体2の振動がトラバースメカ3へ伝搬することを防止する。光センサ5は筐体2に固定されている。
【0013】
制御回路6は、トラバースメカ3及び光センサ5と電気的に接続されている。制御回路6は、トラバースメカ3及び光センサ5を制御する。制御回路6として、光ディスクドライブ基板を用いてもよい。トラバースメカ3は、回転テーブル31と、回転駆動部32と、光ピックアップ33とを有する。回転駆動部32としてモータを用いてもよい。
【0014】
制御回路6がトラバースメカ3を制御することにより、トラバースメカ3は、光ディスク10を回転テーブル31へ移動させ、さらに光ディスク10を回転テーブル31に装着する。さらに、トラバースメカ3は、回転テーブル31に装着されている光ディスク10をトラバースメカ3から排出する。制御回路6は、トラバースメカ3の回転駆動部32及び光ピックアップ33を制御する。トラバースメカ3は、回転テーブル31を所定の回転数または角速度一定で回転させたり、光ピックアップ33を光ディスク10の半径方向における所定の位置へ移動させたりする。
【0015】
回転駆動部32は、光ディスク10が回転テーブル31に装着されている状態において、回転テーブル31を回転させることにより、光ディスク10を所定の回転数または角速度一定で回転させることができる。トラバースメカ3は、光ピックアップ33から光ディスク10へ照射されるレーザ光の焦点位置を調整することができる。
【0016】
図2及び図3を用いて、光ディスク10について説明する。図2は、図1に示す光ディスク10を上方側から見た状態を示している。図3は、図2のA-Aで切断した光ディスク10の断面を示している。光ディスク10は、第1の面10aと第2の面10bとを有する。第1の面10aとは反対側の第2の面10bには、情報を記録したり読み出したりするためのトラック、または、反応領域が形成されている。
【0017】
光ディスク10は、中心孔11と所定の形状を有する光通過部12とを有する。中心孔11及び光通過部12は光ディスク10を貫通している。中心孔11の中心C11は、光ディスク10の回転中心C10と一致している。光通過部12は所定の形状を有する切り欠きまたは貫通孔である。光通過部12は光ディスク10の外周部またはその近傍に形成されていることが望ましい。図2では、光通過部12の一例として、U字の形状を有する切り欠き部が光ディスク10の外周部に形成されている状態を示している。
【0018】
光ピックアップ33は、光ディスク10の半径方向において、情報の記録または読み出しが可能な範囲内、または、反応領域を検出できる範囲内に移動自在に配置されている。
【0019】
図1及び図4を用いて、光センサ5と光ディスク10と光反射部材20との位置関係を説明する。図4は、図2の光通過部12及びその周辺を拡大して示している。図4に示す矢印は、光ディスク10の回転方向を示している。図2及び図4では、光通過部12の一例として、U字の形状を有する切り欠きが光ディスク10の外周部に形成されている状態を示している。
【0020】
光センサ5は、光ディスク10の第1の面10aの上方に配置され、かつ、光ディスク10の光通過部12を検出できる位置に配置されている。光センサ5は、光ディスク10の光通過部12を含む領域に検出光を照射する。
【0021】
光反射部材20は、光ディスク10の第2の面10bの下方に、光センサ5と対向して配置されている。光ディスク10が回転している状態において、光反射部材20は、光通過部12が光反射部材20の上方を通過する位置に配置されている。光反射部材20は、トラバースメカ3上またはトラバースメカ3の上方に配置されている。図1では、一例として、光反射部材20がトラバースメカ3上に配置されている状態を示している。
【0022】
光反射部材20は、トラバースメカ3上に反射膜(例えばアルミニウム膜)を成膜(例えば蒸着)し、さらにフォトリソグラフィにより反射膜をパターン化することによって形成してもよい。光反射部材20は、トラバースメカ3上に反射膜(例えばアルミニウム膜)をマスキングによりパターン化して成膜(例えば蒸着)することによって形成してもよい。
【0023】
光反射部材20は、トラバースメカ3上に反射部材を所定の形状に印刷または塗布することにより形成してもよいし、所定の形状の反射部材を貼り付けることにより形成してもよい。反射膜及び反射部材は、光反射性を有する材料であればよい。
【0024】
光センサ5から射出された検出光は、光ディスク10によって反射し、戻り光として光センサ5へ戻る。検出光は光通過部12を通過し、光反射部材20によって反射する。光センサ5は、光ディスク10及び光反射部材20からの戻り光を検出する。光センサ5は、光ディスク10からの戻り光を検出することにより、光通過部12を検出することができる。
【0025】
図4に示す符号DA5は、光センサ5の検出領域を示している。図4では、検出領域DA5を円形で示しているが、検出領域DA5の形状は、使用される光センサに応じて異なるものであり、円形に限定されるものではない。
【0026】
図4に示すように、光ディスク10の回転方向における光反射部材20の一方の端部から他方の端部までの距離La20は、光ディスク10の回転方向における検出領域DA5の一方の端部から他方の端部までの距離La5よりも短く(La20<La5)なるように設計されている。光ディスク10の半径方向における光反射部材20の一方の端部から他方の端部までの距離Lb20は、光ディスク10の半径方向における検出領域DA5の一方の端部から他方の端部までの距離Lb5よりも長く(Lb20>Lb5)なるように設計されていることが望ましい。距離La20及びLb20は光反射部材20の長さ及び幅に相当する。検出領域DA5が円形を有する場合、距離La5及び距離Lb5は、検出領域DA5の直径に相当する。
【0027】
図5A図5C、及び図6を用いて、比較例として光反射部材20が配置されていない場合の光センサ5の出力信号について説明する。図5A図5Cは、光ディスク10が回転している状態における検出領域DA5と光通過部12との位置関係を示している。図6は光反射部材20が配置されていない場合の光センサ5の出力信号USを示している。図4の縦軸は出力信号USの出力レベル(信号レベル)を示し、横軸は光ディスク10が回転している状態における各時点を示している。
【0028】
図5Aは、図6に示す時点taにおける検出領域DA5と光通過部12との位置関係を示している。図5Bは、図6に示す時点ta後の時点tbにおける検出領域DA5と光通過部12との位置関係を示している。図5Cは、図6に示す時点tb後の時点tcにおける検出領域DA5と光通過部12との位置関係を示している。
【0029】
光ディスク10は、光センサ5から照射された検出光を反射し、光通過部12は検出光を透過させる。光センサ5は、光ディスク10により反射された検出光を戻り光として受光し、出力信号USを生成する。光通過部12が検出領域DA5内に移動すると、光センサ5から照射された検出光は光通過部12を通過するため、光ディスク10により反射された検出光の光量が減少する。従って、図6に示すように、光通過部12が検出領域DA5内を移動している期間では、光センサ5の出力信号USは出力レベルが低下する。
【0030】
図7A図7C、及び図8を用いて、光反射部材20が配置されている場合の光センサ5の出力信号USについて説明する。図7A図7Cは、図5A図5Cに対応し、光ディスク10が回転している状態における検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。図8は、図6に対応し、光反射部材20が配置されている場合の光センサ5の出力信号USを示している。図8の縦軸は出力信号USの出力レベルを示し、横軸は光ディスク10が回転している状態における各時点を示している。説明をわかりやすくするために、同じ時点には同じ符号を付す。図7A図7C、及び図8は、検出領域DA5が基準位置に位置している状態を示している。
【0031】
図7A図7Cは、時点ta~時点tcにおける検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。光通過部12が検出領域DA5内に移動すると、光センサ5から照射された検出光は光通過部12を通過するため、光ディスク10により反射された検出光の光量が減少する。光通過部12が光反射部材20に対応する領域に移動すると、光通過部12を通過した検出光は、光反射部材20により反射し、さらに光通過部12を通過して光センサ5に照射される。そのため、光通過部12により減少した検出光の光量は、光反射部材20により増加する。
【0032】
従って、図8に示すように、光通過部12が検出領域DA5内を移動している期間では、出力信号USは、出力レベルが低下した2つの信号波形SWを有する。2つの信号波形SWは、検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との相対的な位置関係に対応して生成されることになる。出力信号USにおいて、最初に生成される信号波形SWを第1の信号波形SW1とし、次に生成される信号波形SWを第2の信号波形SW2とする。
【0033】
光センサ5側から光反射部材20を見た状態において、光反射部材20(具体的には光反射部材20の中心線)に対して、光ディスク10の回転方向とは反対側の検出領域DA5を第1の検出領域DA51とし、光ディスク10の回転方向側の検出領域DA5を第2の検出領域DA52とする。
【0034】
従って、第1の信号波形SW1は第1の検出領域DA51に対応して生成され、第2の信号波形SW2は第2の検出領域DA52に対応して生成されることになる。即ち、第1及び第2の信号波形SW1及びSW2は、光センサ5により光通過部12に対応して生成された出力信号USが光反射部材20によって分割されることにより生成されることになる。
【0035】
検出領域DA5が基準位置に位置している状態では、光通過部12が第1の検出領域DA51を通過する距離と、光通過部12が第2の検出領域DA52を通過する距離とが互いに等しくなる。そのため、第1の信号波形SW1の第1の波形幅W1と第2の信号波形SW2の第2の波形幅W2とは互いに等しくなる(W1=W2)。言い換えれば、第1の波形幅W1と第2の波形幅W2との比率W1/W2は、W1/W2=1となる。
【0036】
アドレス情報を有さない光ディスク10に対して、光ピックアップ33の位置を検出することにより、光ディスク10の半径方向の位置を特定することができる。しかし、光ディスク10はアドレス情報を有さないため、光ディスク10のトラック方向における位置を特定するためには、光ディスク10の回転方向の基準位置を検出することが必要である。
【0037】
図1に示すように、トラバースメカ3は防振部材4を介して筐体2に固定されているため、筐体2の振動はトラバースメカ3へ伝搬しない。従って、光ピックアップ33と光ディスク10とは筐体2の振動の影響を受けない。光センサ5をトラバースメカ3の内部に収容することができれば、光センサ5と光ディスク10とは筐体2の振動の影響を受けない。
【0038】
再生時または記録時の光ピックアップ33と光ディスク10との距離が決まっているため、通常、光ディスク10に対応する領域におけるトラバースメカ3上には、光センサ5を収容できる空間を確保することは困難である。そのため、図1に示すように、光センサ5は筐体2に固定されることになる。
【0039】
光センサ5は筐体2に固定されているため、筐体2の振動は光センサ5へ伝搬する。従って、光センサ5は筐体2の振動の影響を受けるため、光通過部12に対する光センサ5の検出精度が筐体2の振動によって悪化する。
【0040】
一実施形態の光ディスク回転位置検出方法について説明する。図9A図9C、及び図10を用いて、光センサ5が筐体2の振動等の影響を受けることにより、例えば光センサ5(検出領域DA5)が基準位置から光ディスク10の回転方向側にずれた場合の出力信号USについて説明する。
【0041】
図9A図9Cは、図7A図7Cに対応し、光ディスク10が回転している状態における検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。図10は、図8に対応し、光センサ5の出力信号USを示している。図10の縦軸は出力信号USの出力レベルを示し、横軸は光ディスク10が回転している状態における各時点を示している。図9A図9C、及び図10は、検出領域DA5が基準位置から光ディスク10の回転方向側にずれた状態を示している。
【0042】
図9Aは、図10に示す時点tdにおける検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。図9Bは、図10に示す時点td後の時点teにおける検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。図9Cは、図10に示す時点te後の時点tfにおける検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。
【0043】
光反射部材20は、トラバースメカ3上に配置されているため、筐体2の振動の影響を受けない。そのため、検出領域DA5が基準位置から光ディスク10の回転方向側にずれた場合、図9A図9Cに示すように、光反射部材20は、検出領域DA5に対して光ディスク10の回転方向とは逆方向側にずれた状態となる。
【0044】
従って、光センサ5が基準位置から光ディスク10の回転方向側にずれた状態では、光通過部12が第1の検出領域DA51を通過する距離は、光通過部12が第2の検出領域DA52を通過する距離よりも短くなる。そのため、第1の波形幅W1は第2の波形幅W2よりも小さくなる(W1<W2)。言い換えれば、比率W1/W2は、W1/W2<1となる。
【0045】
例えば、光ディスク10の回転方向における検出領域DA5の一方の端部から他方の端部までの距離La5に基づいて、距離La5における波形幅W1またはW2の変化量に基づく比率により光センサ5のずれ量を近似して算出することができる。検出領域DA5を通過する光通過部12の軌跡は円弧を描く。光ディスク10の大きさに対して光通過部12および検出領域DA5の大きさは十分に小さいので、距離La5は、その円弧の長さを用いて近似することができる。即ち、光ディスク10の角速度をω、半径をrとすると、距離La5はW1×ωr+W2×ωr+La20のように近似できる。よって、光センサ5のずれ量は、関係式1/2×(W1-W2)/(W1+W2)×(La5-La20)により近似して算出することができる。
【0046】
図11A図11C、及び図12を用いて、光センサ5が筐体2の振動等の影響を受けることにより、例えば光センサ5(検出領域DA5)が基準位置から光ディスク10の回転方向とは逆方向側にずれた場合の出力信号USについて説明する。
【0047】
図11A図11Cは、図7A図7Cに対応し、光ディスク10が回転している状態における検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。図12は、図8に対応し、光センサ5の出力信号USを示している。図12の縦軸は出力信号USの出力レベルを示し、横軸は光ディスク10が回転している状態における各時点を示している。図11A図11C、及び図12は、検出領域DA5が基準位置から光ディスク10の回転方向とは逆方向側にずれた状態を示している。
【0048】
図11Aは、図12に示す時点tgにおける検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。図11Bは、図12に示す時点tg後の時点thにおける検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。図11Cは、図12に示す時点th後の時点tkにおける検出領域DA5と光通過部12と光反射部材20との位置関係を示している。
【0049】
光反射部材20は、トラバースメカ3上に配置されているため、筐体2の振動の影響を受けない。そのため、検出領域DA5が基準位置から光ディスク10の回転方向とは逆方向側にずれた場合、図11A図11Cに示すように、光反射部材20は、検出領域DA5に対して光ディスク10の回転方向側にずれた状態となる。
【0050】
従って、光センサ5が基準位置から光ディスク10の回転方向とは逆方向側にずれた状態では、光通過部12が第1の検出領域DA51を通過する距離は、光通過部12が第2の検出領域DA52を通過する距離よりも長くなる。そのため、第1の波形幅W1は第2の波形幅W2よりも大きくなる(W1>W2)。言い換えれば、比率W1/W2は、W1/W2>1となる。
【0051】
例えば、光ディスク10の回転方向における検出領域DA5の一方の端部から他方の端部までの距離La5に基づいて、距離La5における波形幅W1またはW2の変化量に基づく比率により光センサ5のずれ量を近似して算出することができる。検出領域DA5を通過する光通過部12の軌跡は円弧を描く。光ディスク10の大きさに対して光通過部12および検出領域DA5の大きさは十分に小さいので、距離La5は、その円弧の長さを用いて近似することができる。即ち、光ディスク10の角速度をω、半径をrとすると、距離La5はW1×ωr+W2×ωr+La20のように近似できる。よって、光センサ5のずれ量は、関係式1/2×(W1-W2)/(W1+W2)×(La5-La20)により近似して算出することができる。
【0052】
図13に示すフローチャートを用いて、光ディスク装置1による光ディスク回転位置検出方法の一例を説明する。図13に示すフローチャートにおいて、制御回路6は、ステップS1にて、トラバースメカ3及び光センサ5を制御する。具体的には、制御回路6は、トラバースメカ3を制御することにより、光ディスク10を回転させ、光ピックアップ33から光ディスク10に向けてレーザ光を照射させる。また、制御回路6は、光センサ5を制御することにより、光センサ5から検出光を光ディスク10の光通過部12が形成されている領域(検出領域DA51)に向けて照射させる。
【0053】
光センサ5は、ステップS2にて、光ディスク10に照射された検出光の戻り光を検出し、出力信号USを生成する。図8図10、または図12に示すように、制御回路6は、ステップS3にて、出力信号USと、出力信号USの信号レベルの最大値と最小値との間で所定の信号レベルに設定された閾値TRとを比較する。さらに、制御回路6は、出力信号USから閾値TRを下回った第1の信号波形SW1と第2の信号波形SW2とを抽出する。光ディスク10の回転方向における光通過部12及び光反射部材20の一方の端部から他方の端部までの各距離は、第1及び第2の信号波形SW1及びSW2の各振幅の最小値が閾値TRを下回るように設定されている。
【0054】
制御回路6は、ステップS4にて、第1の信号波形SW1の第1の波形幅W1、及び、第2の信号波形SW2の第2の波形幅W2を取得する。制御回路6は、所定の信号レベルにおける第1の信号波形SW1の第1の波形幅W1と第2の信号波形SW2の第2の波形幅W2とを取得する。図8図10、及び図12では、閾値TRに対応する信号レベルにおける第1の信号波形SW1の第1の波形幅W1と第2の信号波形SW2の第2の波形幅W2とを取得する場合を示している。
【0055】
制御回路6は、ステップS5にて、第1の波形幅W1と第2の波形幅W2との比率W1/W2を算出する。制御回路6は、ステップS6にて、比率W1/W2に基づいて光ディスク10の回転基準位置を特定する。
【0056】
一実施形態の光ディスク装置及び光ディスク回転位置検出方法では、検出領域DA5に対応するトラバースメカ3上またはその上方の領域に、光反射部材20が配置されている。光センサ5から照射された検出光が、光通過部12を通過し、光反射部材20で反射することにより、光センサ5の出力信号USには第1の信号波形SW1と第2の信号波形SW2とが生成される。即ち、光反射部材20は、出力信号USに第1の信号波形SW1と第2の信号波形SW2とが生成される位置に配置されている。制御回路6は、第1の信号波形SW1の第1の波形幅W1と第2の信号波形SW2の第2の波形幅W2との比率W1/W2に基づいて光ディスク10の回転基準位置を特定する。
【0057】
一実施形態の光ディスク装置及び光ディスク回転位置検出方法によれば、光センサ5が筐体2の振動の影響によって光ディスク10の回転方向にずれたとしても、比率W1/W2に基づいて光ディスク10の回転基準位置を特定することができる。従って、一実施形態の光ディスク装置及び光ディスク回転位置検出方法によれば、光ディスク10にアドレス情報が記録されていなくても、光ディスク10の回転方向の基準位置を検出することができる。
【0058】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0059】
上述した実施形態では、光ディスク10の外周部に形成されているU字の形状を有する切り欠き部を光通過部12として説明した。図14Aに示すように、光通過部12は、光ディスク10の外周部に形成されている矩形の形状を有する切り欠き部であってもよい。図14Bに示すように、光通過部12は、光ディスク10の外周部の近傍に形成されている長孔または楕円形状を有する貫通孔であってもよい。図14Cに示すように、光通過部12は、光ディスク10の外周部の近傍に形成されている円形状を有する貫通孔であってもよい。図14Dに示すように、光通過部12は、光ディスク10の外周部の近傍に形成されている四角形状を有する貫通孔であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 光ディスク装置
5 光センサ
6 制御回路
10 光ディスク
12 光通過部
20 光反射部材
32 回転駆動部
DA5 検出領域
DA51 第1の検出領域
DA52 第2の検出領域
SW1 第1の信号波形
SW2 第2の信号波形
US 出力信号
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D