IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-積層型コイル部品 図1
  • 特許-積層型コイル部品 図2
  • 特許-積層型コイル部品 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】積層型コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20220614BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20220614BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/00 C
H01F27/28 K
H01F27/28 104
H01F41/04 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019038544
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020145222
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】比留川 敦夫
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-139742(JP,A)
【文献】特開2001-196240(JP,A)
【文献】特開平10-335143(JP,A)
【文献】特開2005-072170(JP,A)
【文献】特開平11-307344(JP,A)
【文献】特開平11-329844(JP,A)
【文献】特開2009-289995(JP,A)
【文献】特開2018-142644(JP,A)
【文献】特開平10-041163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0057408(US,A1)
【文献】特開2018-035027(JP,A)
【文献】特開2011-109020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/28
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、
前記コイルに電気的に接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備える積層型コイル部品であって、
前記コイルは、前記絶縁層とともに積層された複数のコイル導体が電気的に接続されることにより形成され、
前記積層体は、長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、前記長さ方向に直交する高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、前記長さ方向および前記高さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面とを有し、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の一部を覆い、かつ、前記第1の端面から延伸して前記第1の主面の一部を覆って配置され、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の一部を覆い、かつ、前記第2の端面から延伸して前記第1の主面の一部を覆って配置され、
前記第1の主面が実装面であり、
前記積層体の積層方向、及び、前記コイルの軸方向が前記実装面に対して平行であり、
さらに、前記積層体の内部に第1の連結導体及び第2の連結導体を備え、
前記第1の連結導体は、前記第1の端面を覆う部分の前記第1の外部電極とこれに対向する前記コイル導体との間を直線状に接続し、
前記第2の連結導体は、前記第2の端面を覆う部分の前記第2の外部電極とこれに対向する前記コイル導体との間を直線状に接続し、
前記第1の連結導体及び前記第2の連結導体は、いずれも、前記積層方向から平面視したときに前記コイル導体と重なり、かつ、前記コイルの中心軸よりも前記実装面側に位置し、
前記積層方向から平面視したときに、前記コイル導体は互いに重なり、
前記積層方向に直交する方向から側面視したときに、前記コイル導体間の距離が一定ではなく、
前記コイル導体間の距離は、前記第1の端面から前記第2の端面に向かって順に長くなっている、積層型コイル部品。
【請求項2】
前記長さ方向において、前記コイルの長さは、前記積層体の長さの85.0%以上94.0%以下である請求項1に記載の積層型コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型コイル部品として、例えば、特許文献1には、電極部、巻回部及び引き出し部を備えるインダクタ部品において、巻回部における各ターンの巻線間隔を一端から他端に向かって単調減少させることによって、インピーダンスの変化を抑制して信号の反射の発生を少なくすることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-289995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電気機器の通信速度の高速化、及び、小型化に応じて、積層インダクタには高周波帯(例えば、30GHz以上のGHz帯)での高周波特性が充分であることが求められている。
しかし、特許文献1に記載のインダクタ部品は、特に30GHz以上の高周波領域において、ノイズ吸収用部品として用いるには特性が充分ではない。また、特許文献1では、平面視形状を1/2ターンとしたコイル導体を積層した積層体の上下面に外部電極を設けたインダクタ部品を開示しているが、外部電極が積層体の端面と上下面の両方に設けられていることに起因して浮遊容量が増加し、高周波特性を低下させてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、高周波特性に優れる積層型コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層型コイル部品は、複数の絶縁層が積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、上記コイルに電気的に接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備える積層型コイル部品であって、上記コイルは、上記絶縁層とともに積層された複数のコイル導体が電気的に接続されることにより形成され、上記積層体は、長さ方向に相対する第1の端面及び第2の端面と、上記長さ方向に直交する高さ方向に相対する第1の主面及び第2の主面と、上記長さ方向および上記高さ方向に直交する幅方向に相対する第1の側面及び第2の側面とを有し、上記第1の外部電極は、上記第1の端面の一部を覆い、かつ、上記第1の端面から延伸して上記第1の主面の一部を覆って配置され、上記第2の外部電極は、上記第2の端面の一部を覆い、かつ、上記第2の端面から延伸して上記第1の主面の一部を覆って配置され、上記第1の主面が実装面であり、上記積層体の積層方向、及び、上記コイルの軸方向が上記実装面に対して平行であり、さらに、上記積層体の内部に第1の連結導体及び第2の連結導体を備え、上記第1の連結導体は、上記第1の端面を覆う部分の上記第1の外部電極とこれに対向する上記コイル導体との間を直線状に接続し、上記第2の連結導体は、上記第2の端面を覆う部分の上記第2の外部電極とこれに対向する上記コイル導体との間を直線状に接続し、上記第1の連結導体及び上記第2の連結導体は、いずれも、上記積層方向から平面視したときに上記コイル導体と重なり、かつ、上記コイルの中心軸よりも上記実装面側に位置し、上記積層方向から平面視したときに、上記コイル導体は互いに重なり、上記積層方向に直交する方向から側面視したときに、上記コイル導体間の距離が一定ではない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高周波特性に優れる積層型コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層型コイル部品を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)は、図1に示す積層型コイル部品の側面図であり、図2(b)は、図1に示す積層型コイル部品の正面図であり、図2(c)は、図1に示す積層型コイル部品の底面図である。
図3図3は、図1に示す積層型コイル部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の積層型コイル部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型コイル部品を模式的に示す斜視図である。
図2(a)は、図1に示す積層型コイル部品の側面図であり、図2(b)は、図1に示す積層型コイル部品の正面図であり、図2(c)は、図1に示す積層型コイル部品の底面図である。
【0011】
図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示す積層型コイル部品1は、積層体10と第1の外部電極21と第2の外部電極22とを備えている。積層体10は、6面を有する略直方体形状である。積層体10の構成については後述するが、複数の絶縁層が積層されてなり、内部にコイルを内蔵している。第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、それぞれ、コイルに電気的に接続されている。
【0012】
本発明の積層型コイル部品及び積層体では、長さ方向、高さ方向、幅方向を、図1におけるx方向、y方向、z方向とする。ここで、長さ方向(x方向)と高さ方向(y方向)と幅方向(z方向)は互いに直交する。
【0013】
図1図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示すように、積層体10は、長さ方向(x方向)に相対する第1の端面11及び第2の端面12と、長さ方向に直交する高さ方向(y方向)に相対する第1の主面13及び第2の主面14と、長さ方向及び高さ方向に直交する幅方向(z方向)に相対する第1の側面15及び第2の側面16とを有する。
【0014】
図1には示されていないが、積層体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。
【0015】
第1の外部電極21は、図1及び図2(b)に示すように、積層体10の第1の端面11の一部を覆い、かつ、図1及び図2(c)に示すように、第1の端面11から延伸して第1の主面13の一部を覆って配置されている。図2(b)に示すように、第1の外部電極21は、第1の端面11のうち、第1の主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っているが、第2の主面14と交わる稜線部を含む領域は覆っていない。そのため、第2の主面14と交わる稜線部を含む領域では、第1の端面11が露出している。また、第1の外部電極21は、第2の主面14を覆っていない。
第1の端面11のうちの一部は第1の外部電極21により覆われていないため、第1の外部電極によって第1の端面の全部が覆われた積層型コイル部品と比較して、浮遊容量を低下させ、高周波特性を向上させることができる。
【0016】
なお、図2(b)では、積層体10の第1の端面11を覆う部分の第1の外部電極21の高さE2は一定であるが、積層体10の第1の端面11の一部を覆う限り、第1の外部電極21の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の端面11において、第1の外部電極21は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、図2(c)では、積層体10の第1の主面13を覆う部分の第1の外部電極21の長さE1は一定であるが、積層体10の第1の主面13の一部を覆う限り、第1の外部電極21の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の主面13において、第1の外部電極21は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0017】
図1及び図2(a)に示すように、第1の外部電極21は、さらに、第1の端面11及び第1の主面13から延伸して第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、図2(a)に示すように、第1の側面15及び第2の側面16を覆う部分の第1の外部電極21は、いずれも、第1の端面11と交わる稜線部及び第1の主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第1の外部電極21は、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0018】
第2の外部電極22は、積層体10の第2の端面12の一部を覆い、かつ、第2の端面12から延伸して第1の主面13の一部を覆って配置されている。第1の外部電極21と同様、第2の外部電極22は、第2の端面12のうち、第1の主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っているが、第2の主面14と交わる稜線部を含む領域は覆っていない。そのため、第2の主面14と交わる稜線部を含む領域では、第2の端面12が露出している。また、第2の外部電極22は、第2の主面14を覆っていない。
第2の端面12のうちの一部は第2の外部電極22により覆われていないため、第2の外部電極によって第2の端面の全部が覆われた積層型コイル部品と比較して、浮遊容量を低下させ、高周波特性を向上させることができる。
【0019】
第1の外部電極21と同様、積層体10の第2の端面12の一部を覆う限り、第2の外部電極22の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第2の端面12において、第2の外部電極22は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、積層体10の第1の主面13の一部を覆う限り、第2の外部電極22の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の主面13において、第2の外部電極22は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0020】
第1の外部電極21と同様、第2の外部電極22は、さらに、第2の端面12及び第1の主面13から延伸して第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、第1の側面15及び第2の側面16を覆う部分の第2の外部電極22は、いずれも、第2の端面12と交わる稜線部及び第1の主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第2の外部電極22は、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0021】
以上のように第1の外部電極21及び第2の外部電極22が配置されているため、積層型コイル部品1を基板上に実装する場合には、積層体10の第1の主面13が実装面となる。
【0022】
本発明の積層型コイル部品のサイズは特に限定されないが、0603サイズ、0402サイズ又は1005サイズであることが好ましい。
【0023】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、0.63mm以下であることが好ましく、0.57mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
【0024】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の長さ(図2(a)中、両矢印Lで示される長さ)は、0.63mm以下であることが好ましく、0.57mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の幅(図2(c)中、両矢印Wで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の高さ(図2(b)中、両矢印Tで示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
【0025】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ(図2(c)中、両矢印E1で示される長さ)は、0.12mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.12mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。
なお、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ、及び、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さが一定でない場合、最も長い部分の長さが上記範囲にあることが好ましい。
【0026】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ(図2(b)中、両矢印E2で示される長さ)は、0.10mm以上、0.20mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.10mm以上、0.20mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
なお、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ、及び、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さが一定でない場合、最も高い部分の高さが上記範囲にあることが好ましい。
【0027】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の長さは、0.38mm以上、0.42mm以下であることが好ましく、積層体の幅は、0.18mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の高さは、0.18mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。
【0028】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層型コイル部品の長さは、0.42mm以下であることが好ましく、0.38mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層型コイル部品の幅は、0.22mm以下であることが好ましく、0.18mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層型コイル部品の高さは、0.22mm以下であることが好ましく、0.18mm以上であることが好ましい。
【0029】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さは、0.08mm以上、0.15mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.08mm以上、0.15mm以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さは、0.06mm以上、0.13mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.06mm以上、0.13mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
【0031】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の長さは、0.95mm以上、1.05mm以下であることが好ましく、積層体の幅は、0.45mm以上、0.55mm以下であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の高さは、0.45mm以上、0.55mm以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層型コイル部品の長さは、1.05mm以下であることが好ましく、0.95mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層型コイル部品の幅は、0.55mm以下であることが好ましく、0.45mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層型コイル部品の高さは、0.55mm以下であることが好ましく、0.45mm以上であることが好ましい。
【0033】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さは、0.20mm以上、0.38mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.20mm以上、0.38mm以下であることが好ましい。
【0034】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さは、0.15mm以上、0.33mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.15mm以上、0.33mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
【0035】
本発明の積層型コイル部品を構成する積層体が内蔵するコイルについて説明する。
コイルは、絶縁層とともに積層された複数のコイル導体が電気的に接続されることにより形成される。
【0036】
図3は、図1に示す積層型コイル部品の断面図である。
図3に示すように、積層型コイル部品1を構成する積層体10は、コイル導体30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30h、30i、30jを含む。
コイル導体30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30h、30i、30jは、いずれも同じ形状のコイル導体であり、積層方向から平面視したときに、互いに重なる。
【0037】
コイル導体30aとコイル導体30bとの間の距離は両矢印gで示される長さである。
コイル導体30bとコイル導体30cとの間の距離は両矢印gで示される長さである。
コイル導体30cとコイル導体30dとの間の距離は両矢印gで示される長さである。
コイル導体30dとコイル導体30eとの間の距離は両矢印gで示される長さである。
コイル導体30eとコイル導体30fとの間の距離は両矢印gで示される長さである。
コイル導体30fとコイル導体30gとの間の距離は両矢印gで示される長さである。
コイル導体30gとコイル導体30hとの間の距離は両矢印gで示される長さである。
コイル導体30hとコイル導体30iとの間の距離は両矢印gで示される長さである。
コイル導体30iとコイル導体30jとの間の距離は両矢印gで示される長さである。
図3から明らかなように、コイル導体間の距離は、g<g<g<g<g<g<g<g<gという関係である。従って、本発明の積層型コイル部品は、積層方向に直交する方向から側面視したときに、コイル導体間の距離が一定ではない。
コイル導体間の距離は、第1の端面11から第2の端面12に向かって順に大きくなっている。
浮遊容量はコイル導体間の距離の2乗に比例する。従って、コイル導体間の距離が一定ではないと、浮遊容量がばらついて共鳴周波数のピークが低くなるため、高周波特性を向上させることができる。また、コイル導体間の距離が変動することによって、各コイル導体間の結合係数も変化するため、高周波特性を向上させることができる。
【0038】
さらに、図3に示す積層型コイル部品では、第1の外部電極21と、これに対向するコイル導体とが第1の連結導体41により直線状に接続されており、第2の外部電極22と、これに対向するコイル導体とが第2の連結導体42により直線状に接続されている。第1の連結導体41及び第2の連結導体42は、それぞれ、実装面となる第1の主面13に最も近い部分のコイル導体と接続されている。
第1の連結導体41及び第2の連結導体42はいずれも、積層方向から平面視したときにコイル導体と重なり、かつ、コイルの中心軸よりも実装面となる第1の主面13側に位置している。
第1の連結導体41及び第2の連結導体42はいずれも、コイル導体の最も実装面に近い部分に接続されているため、外部電極の大きさを小さくして高周波特性を向上させることができる。
【0039】
本発明の積層型コイル部品においては、積層方向に直交する方向から側面視したときのコイル導体間の距離が一定ではない。
コイル導体間の距離が一定であるとは、全てのコイル導体間の距離が等しい、すなわち、コイル導体間の距離が1種類であることを意味する。
【0040】
本発明の積層型コイル部品におけるコイル導体の配置は、コイル導体間の距離が2種類以上存在するようであれば、コイル導体間の距離が同じ箇所が存在していてもよく、コイル導体間の距離が同じ箇所が隣接していてもよい。
コイル導体の配置順序は、例えば、図3に示したように、第1の端面11から第2の端面12に向かって、コイル導体間の距離が順に長くなっていてもよく、逆に第1の端面11から第2の端面12に向かってコイル導体間の距離が順に短くなっていてもよい。
また、第1の端面から第2の端面に向かって、最初はコイル導体間の距離が順に長くなるが、途中からコイル導体間の距離が順に短くなっていてもよい。
コイル導体間の距離は規則的に配置されていてもよく、ランダムに配置されていてもよい。
【0041】
なお、本明細書において、「コイル導体間の距離」とは、積層体を作製する際に用いられるコイルシートに形成されたコイル導体間の距離(すなわち、絶縁層の厚さ)を意味し、コイルを構成する導体間の積層方向における物理的な距離ではない。
従って、コイル導体間の距離とは、コイル導体間を積層方向に接続するビア導体の長さであるともいえる。本発明の積層型コイル部品においては、コイル導体間を接続するビア導体の長さが一定ではない。
【0042】
コイル導体の形状は特に限定されないが、円形であってもよく、多角形であってもよい。
コイル導体の形状が多角形の場合、多角形の面積相当円の直径をコイル径とする。
【0043】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、コイル導体の内径は、50μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0044】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、コイル導体の内径は、30μm以上70μm以下であることが好ましい。
【0045】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、コイル導体の内径は、80μm以上170μm以下であることが好ましい。
【0046】
積層方向から平面視した際の、コイル導体の線幅は特に限定されないが、積層体の幅に対して10%以上、30%以下であることが好ましい。コイル導体の線幅が積層体の幅の10%未満であると、直流抵抗Rdcが大きくなる場合がある。一方、コイル導体の線幅が積層体の幅の30%を超えると、コイルの静電容量が大きくなり、高周波特性が悪化する場合がある。
【0047】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、コイル導体の線幅は、30μm以上90μm以下であることが好ましく、30μm以上70μm以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、コイル導体の線幅は、20μm以上60μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0049】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、コイル導体の線幅は、50μm以上150μm以下であることが好ましく、50μm以上120μm以下であることがより好ましい。
【0050】
積層方向から平面視した際の、コイル導体の内径は、積層体の幅に対して15%以上、40%以下であることが好ましい。
【0051】
本発明の積層型コイル部品は、積層方向におけるコイル導体間の距離が3μm以上、21μm以下であることが好ましい。積層方向におけるコイル導体間の距離を3μm以上、21μm以下とすることで、コイルのターン数を多くできるので、インピーダンスを大きくすることができる。また、後述する高周波帯での透過係数S21も大きくすることや、電極間の浮遊容量を低減することができる。
【0052】
積層型コイル部品を構成する積層体の内部には、第1の連結導体及び第2の連結導体を備えている。
第1の連結導体及び第2の連結導体の形状は、外部電極とコイル導体との間を直線状に接続している。
コイル導体から外部電極までを直線状に接続することにより、引き出し部を簡便にすることができるとともに、高周波特性を向上させることができる。
【0053】
積層体の長手方向の長さは、コイルと、第1の連結導体と第2の連結導体の長さの合計となる。
ここで、長さ方向におけるコイルの長さは、積層体の長さの85.0%以上、94.0%以下であることが好ましい。
【0054】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、第1の連結導体及び第2の連結導体の長さは、15μm以上45μm以下であることが好ましく、15μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0055】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、第1の連結導体及び第2の連結導体の長さは、10μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0056】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、第1の連結導体及び第2の連結導体の長さは、25μm以上75μm以下であることが好ましく、25μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0057】
なお、積層方向から平面視したときに、連結導体を構成するビア導体が互いに重なっていれば、連結導体を構成するビア導体同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0058】
第1の連結導体の幅及び第2の連結導体の幅は、積層体の幅の8%以上、20%以下であることが好ましい。
なお、連結導体の幅とは、連結導体のうち最も狭い部分の幅を指す。すなわち、連結導体がランドを含む場合であっても、ランドを除いた形状を連結導体の形状とする。
【0059】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、連結導体の幅は、30μm以上60μm以下であることが好ましい。
【0060】
本発明の積層型コイル部品が0402サイズである場合、連結導体の幅は、20μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0061】
本発明の積層型コイル部品が1005サイズである場合、連結導体の幅は、40μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0062】
本発明の積層型コイル部品においては、第1の連結導体及び第2の連結導体の長さがいずれも、積層体の長さの2.5%以上、7.5%以下であることが好ましく、3.0%以上、7.5%以下であることがより好ましく、3.0%以上、5.0%以下であることがさらに好ましい。
【0063】
本発明の積層型コイル部品において、第1の連結導体及び第2の連結導体は2つ以上存在していてもよい。
連結導体が2つ以上存在する場合とは、端面を覆う部分の外部電極とこれに対向するコイル導体とが、連結導体によって2箇所以上で接続されている状態を指す。
【0064】
本発明の積層型コイル部品は、高周波帯(特に30GHz以上、80GHz以下)での高周波特性に優れる。具体的には、40GHzでの透過係数S21が-1dB以上、0dB以下であることが好ましく、50GHzでの透過係数S21が-2dB以上、0dB以下であることが好ましい。透過係数S21は、入力信号に対する透過信号の電力の比から求められる。透過係数S21は、基本的に無次元量であるが、通常、常用対数をとってdB単位で表される。
上記条件を満たす場合、例えば、光通信回路内のバイアスティー(Bias-Tee)回路等に好適に使用することができる。
【0065】
以下、本発明の積層型コイル部品の製造方法の一例について説明する。
【0066】
まず、絶縁層となるセラミックグリーンシートを作製する。
例えば、フェライト原料に、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤及び分散剤等を加えて混練し、スラリー状にする。その後、ドクターブレード法などの方法により、厚さ12μm程度の磁性体シートを得る。
【0067】
フェライト原料として、例えば、鉄、ニッケル、亜鉛及び銅の酸化物原料を混合して800℃、1時間で仮焼した後、ポールミルにより粉砕し、乾燥することにより、平均粒径が約2μmのNi-Zn-Cu系のフェライト原料(酸化物混合粉末)を得ることができる。
【0068】
なお、絶縁層となるセラミックグリーンシートの材料としては、例えば、フェライト材料等の磁性材料、ガラスセラミック材料等の非磁性材料、又は、これらの磁性材料や非磁性材料を混合した混合材料等を用いることができる。フェライト材料を用いてセラミックグリーンシートを作製する場合、高いL値(インダクタンス)を得るためには、Fe:40mol%以上49.5mol%以下、ZnO:5mol%以上35mol%以下、CuO:4mol%以上12mol%以下、残部:NiO及び微量添加剤(不可避不純物を含む)の組成のフェライト材料を用いることが好ましい。
【0069】
作製したセラミックグリーンシートに、所定のレーザー加工を施して、直径20μm以上、30μm以下程度のビアホールを形成する。ビアホールを有する特定のシート上にAgペーストを用いて、ビアホールに充填し、さらに、11μm程度の厚みを有する所定のコイル周回用の導体パターン(コイル導体)をスクリーン印刷し、乾燥することでコイルシートを得る。
【0070】
コイルシートを構成するセラミックグリーンシートの厚さは、所望のコイル導体間の距離に応じて適宜選択すればよい。セラミックグリーンシートの厚さを調整することで、コイル導体間の距離を調整することができる。
また、セラミックグリーンシートの厚さを調整するのではなく、コイルシートとコイルシートの間にビア導体が形成されたビアシートを積層し、該ビアシートの積層枚数及び/又はシート厚さを調整する方法によっても、コイル導体間の距離を調整することができる。
【0071】
個片化後に実装面と平行な方向に周回軸を有するコイルが積層体の内部に形成されるように、かつ、コイル導体間の距離が所望の配置となるような順序でコイルシートを積層する。さらに、連結導体となるビア導体が形成されたビアシートを上下に積層する。このとき、連結導体の長さがいずれも、積層体の長さの3.0%以上、7.5%以下となるように、コイルシート及びビアシートの積層枚数並びにこれらの厚さを調整することが好ましい。
【0072】
積層体を熱圧着して圧着体を得た後、所定のチップ寸法になるように切断し、個片化したチップを得る。個片化したチップに対しては、回転バレルを行い、角部及び稜線部に所定の丸みを付けてもよい。
【0073】
所定の温度、時間で脱バインダ及び焼成を施すことで、内部にコイルを内蔵した焼成体(積層体)を得る。
【0074】
Agペーストを所定の厚みに引き伸ばした層にチップを斜めに浸漬させ、焼き付けることで、積層体の4面(主面、端面及び両側面)に外部電極の下地電極を形成する。
上記の方法では、積層体の主面と端面の2回に分けて下地電極を形成する場合に比べて、下地電極を1回で形成することができる。
【0075】
下地電極に対して、めっきにより、所定の厚みのNi皮膜及びSn皮膜を順次形成して、外部電極を形成する。
以上により、本発明の積層型コイル部品を作製することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 積層型コイル部品
10 積層体
11 第1の端面
12 第2の端面
13 第1の主面
14 第2の主面
15 第1の側面
16 第2の側面
21 第1の外部電極
22 第2の外部電極
30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30h、30i、30j コイル導体
41 第1の連結導体
42 第2の連結導体
、g、g、g、g、g、g、g、g コイル導体間の距離
図1
図2
図3