(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】放射線撮影装置及び放射線画像診断システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
A61B6/00 300W
(21)【出願番号】P 2019058357
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 伸
(72)【発明者】
【氏名】禅野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】駒坂 友則
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 康史
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-061263(JP,A)
【文献】特開2011-160816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0276942(US,A1)
【文献】特開2009-050689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0187427(US,A1)
【文献】特開2006-208298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0129653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受けた放射線に応じた放射線画像の画像データを生成する画像生成部と、
他の装置とデータの送受信を無線で行う無線デバイスを有する通信部と、
前記画像生成部及び前記通信部を制御する制御部と、
少なくとも前記通信部へ電力を供給する電源部と、を備え、
前記通信部は、少なくとも前記画像生成部が画像データを生成している間、前記通信部が消費する電力の経時変化を、前記無線デバイスがデータの送信を行うときに消費する電力で一定となった状態になるように又は近づくように調整する電力調整部を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記電力調整部は、
スイッチ部を介して前記無線デバイスと並列に接続され、前記無線デバイスがデータの受信を行うときに消費する第一電力よりも大きい第二電力と前記第一電力との差分である差分電力を消費する電力消費部と、
前記無線デバイスが消費する電力を監視するモニター部と、を備え、
前記制御部は、
前記モニター部が測定した電力が前記第二電力であるときに、前記スイッチ部を非導通状態に切り替え、
前記モニター部が測定した電力が前記第一電力であるときに、前記スイッチ部を導通状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記無線デバイス及び前記電力消費部が前記電源部に近接するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線撮影装置と、
前記放射線撮影装置から放射線画像の画像データを無線で受信する通信部と、受信した画像データに基づく放射線画像を表示する表示部と、を有する画像表示装置と、を備える放射線画像診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置及び放射線画像診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像データを生成する又は画像データに基づく画像を表示する電子機器の内部には、様々な要因によりノイズが発生する。こうしたノイズは、表示される画像の画質を低下させたり、画像にアーチファクトが生じさせたりする原因となる。
そこで、従来、電子機器が画像データを生成したり表示したりするときに受けるノイズの影響を低減する各種技術が提案されている。
例えば特許文献1には、画素内の発光素子に印加される電圧が変動した際に映像信号の出力タイミングを変更することで、電圧変動の影響を受けていない高画質な画像を表示することのできる画像表示装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像を生成する電子機器の一つに、放射線画像を生成する可搬型の放射線撮影装置がある。可搬型の放射線撮影装置は、近年、運搬性・取り扱い性を向上させたり、放射線撮影装置を含む放射線画像診断システムの構成の自由度を向上させたりする必要から、無線通信機能を備えたものが一般的となってきている。
可搬型の放射線画像装置に無線通信機能を備えるには、無線デバイスを搭載する必要があるが、可搬型の放射線画像装置は、既存の撮影台等への格納を可能とするため筐体のサイズが予め規定されている。つまり、可搬型の放射線画像装置の中には無線デバイスを格納するスペースが限られているため、無線デバイスを搭載する際には、画像データを生成する画像生成部に近接して配置せざるを得ない場合が多い。
【0005】
一般的な無線デバイスは、画像データのようなサイズの大きいデータを転送する際、データを複数のパケットに分割し、パケットの送信と、パケットを受信した旨の応答情報の受信と、を交互に繰り返す。
また、無線デバイスは、送信時には受信時よりも多い電力を消費するため、送受信を繰り返すと電源回路と無線デバイスとを接続する配線に流れる電流に変動が生じる。この電流変動により配線の周囲に磁界の変動が生じ、その磁界変動が近接して配置された画像生成部にノイズを生じさせ、生成される放射線画像の画質を低下させてしまう。
【0006】
しかしながら、引用文献1に記載された技術を放射線撮影装置に適用した場合、画像生成部の電圧変動に起因するノイズの発生を抑えることはできるが、近接して配置された無線デバイスが原因となって画像生成部に発生するノイズに対応することはできない。
一方、センサー部と無線デバイスとの間に高透磁率シート等の対策部材を介在させるといった対策も考えられるが、可搬型の放射線撮影装置の中にはスペースが限られている。このため、可搬型の放射線撮影装置の中に対策部材を配置するには、筐体のサイズを大きくしなければならず、そのようにすると既存の撮影台等に格納できなくなってしまう。
また、こうした対策部材を使用すると、使用する部品数が増えるため、放射線撮影装置の製造コストが高くなってしまう。
また、画像データの生成を行う間は、画像データの転送を規制するといった対策も考えられるが、そのようにすると、画像データの転送先(例えばコンソール)での放射線画像の表示が、画像データの生成と転送を並行して行えない分だけ遅くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、無線デバイスを用いて放射線画像の画像データを転送する放射線撮影装置において、ノイズの影響を防ぐ対策部材を中に配置することなく、ノイズの影響を受けていない放射線画像の画像データを短時間で転送できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の放射線撮影装置は、
受けた放射線に応じた放射線画像の画像データを生成する画像生成部と、
他の装置とデータの送受信を無線で行う無線デバイスを有する通信部と、
前記画像生成部及び前記通信部を制御する制御部と、
少なくとも前記通信部へ電力を供給する電源部と、を備え、
前記通信部は、少なくとも前記画像生成部が画像データを生成している間、前記通信部が消費する電力の経時変化を、前記無線デバイスがデータの送信を行うときに消費する電力で一定となった状態になるように又は近づくように調整する電力調整部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノイズの影響を防ぐ対策部材を中に配置することなく、ノイズの影響を受けていない放射線画像の画像データを短時間で転送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射線画像診断システムを表すブロック図である。
【
図2】
図1の放射線画像診断システムが備える放射線撮影装置の斜視図である。
【
図3】
図2の放射線撮影装置を表すブロック図である。
【
図5】
図2の放射線撮影装置が備える一部の電気的構成を表すブロック図である。
【
図6】
図2の放射線撮影装置の状態遷移を示すフローチャートである。
【
図7】(a)は従来の放射線撮影装置が画像データを転送するときの通信部の消費電力を示すグラフ、(b)は本実施形態に係る放射線撮影装置が画像データを転送するときの通信部の消費電力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。しかし、本発明は、図面に図示されたものに限定されるものではない。
【0012】
〔放射線画像診断システムの構成〕
まず、本実施形態に係る放射線画像診断システムの概略構成について説明する。
図1は、本実施形態の放射線画像診断システム100の構成を表すブロック図である。
放射線画像診断システム100は、
図1に示したように、放射線発生装置100aと、放射線撮影装置100bと、コンソール100cと、を備えている。
【0013】
なお、放射線画像診断システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)、画像解析装置等と接続することが可能となっていてもよい。
【0014】
放射線発生装置100aは、図示を省略するが、照射指示スイッチが押下されたことに基づいて、予め設定された放射線照射条件(管電圧や管電流、照射時間(mAs値)等)に応じた電圧を印加するジェネレーターや、ジェネレーターから電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線(例えばX線)を生成する放射線源等を備えている。
そして、放射線発生装置100aは、撮影する放射線画像(静止画・動画)に応じた態様で放射線R(例えばX線)を発生させるようになっている。
【0015】
なお、放射線発生装置100aは、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、コンソール100c等と共に回診車と呼ばれる移動可能に構成されたものとなっていてもよい。
【0016】
そして、放射線撮影装置100bは、受けた放射線の線量に応じた放射線画像の画像データを生成するようになっている。
また、放射線撮影装置100bは、通信部3を備え、生成した画像データを、通信部3を介してコンソール100cへ転送することが可能となっている。
なお、放射線撮影装置100bの詳細については後述する。
【0017】
コンソール100cは、PCや携帯端末又は専用の装置によって構成されている。
また、コンソール100cは、通信部7と、表示部8と、を備えている。
通信部7は、放射線撮影装置100bから放射線画像の画像データを無線で受信することが可能となっている。
表示部8は、受信した画像データに基づく放射線画像を表示することが可能となっている。
【0018】
また、コンソール100cは、放射線発生装置100a及び放射線撮影装置100bのうちの少なくとも一方に各種撮影条件(管電圧や管電流、照射時間(mAs値)、フレームレート等)を設定する機能を有している。
また、コンソール100cは、照射指示スイッチの押下を契機として、放射線発生装置100a及び放射線撮影装置100bのうちの少なくとも一方に放射線画像の撮影(放射線照射や電荷蓄積・読み出し)を指示する機能を有している。
また、コンソール100cは、所定操作(例えば照射指示スイッチの押下等)を契機として画像データ転送コマンドを放射線撮影装置100bへ送信する機能、及び画像データの転送が完了したことを契機として画像データ転送終了コマンドを放射線撮影装置100bへ送信する機能を有している。
【0019】
なお、本実施形態においては、放射線画像診断システム100にコンソール100cを備えることとしたが、コンソール100cの代わりに画像データの受信機能及び放射線画像の表示機能だけを有する画像表示装置を備えるようにしてもよい(撮影条件の設定や撮影指示、コマンドの送受信を他の装置から行うようにしてもよい)。
また、コンソール100cの代わりに、受信した画像データに所定の画像処理を施す画像解析装置を備えるようにしてもよい。
また、
図1には、放射線撮影装置100bとコンソール100cとが直接無線通信している状態を例示したが、図示しないAP(アクセスポイント)を配置し、APを経由して通信するようにしてもよい。
【0020】
〔放射線撮影装置の構成〕
次に、上記放射線画像診断システム100が備える放射線撮影装置100bの構成について説明する。
図2は放射線撮影装置100bの斜視図、
図3は放射線撮影装置100bを表すブロック図、
図4は
図2のIV-IV断面図である。
なお、
図2には、放射線撮影装置100bとして、パネル状をした可搬型のものを例示したが、本発明は、支持台等と一体的に形成されたいわゆる据え付け型の放射線撮影装置に対しても適用可能である。
【0021】
放射線撮影装置100bは、
図2~4に示すように、筐体1の他、この筐体1に収納される、画像生成部2と、通信部3と、記憶部4と、制御部5と、電源部6と、を備えている。
各部1~6は、電気的に接続されている。
【0022】
本実施形態に係る筐体1は、薄い箱状(パネル状)に形成されており、複数の面のうちの一つが放射線入射面11となっている。
また、筐体1における放射線入射面と隣接する側面には、
図2に示したように、電源スイッチ12や各種操作スイッチ13、インジケーター14、コネクター15等が設けられている。
【0023】
画像生成部2は、シンチレーター21と、センサー部22と、走査駆動部23、読み出し部24と、を備えている。
シンチレーター21を除く各部22~24は、電気的に接続されている。
【0024】
シンチレーター21は、例えばCsIの柱状結晶等で平板状に形成されている。
そして、シンチレーター21は、放射線を受けることで、放射線よりも波長の長い電磁波(例えば可視光等)を、受けた放射線の線量に応じた強度で発するようになっている。
また、シンチレーター21は、
図4に示したように、筐体1内に、放射線入射面11と平行に広がるよう配置されている。
【0025】
センサー部22は、シンチレーター21が発生させた電磁波の強度に応じた量の電荷を生成する検出素子及び各検出素子と配線との間に設けられたスイッチ素子を有する画素が二次元状に複数配列された基板を有している。
また、センサー部22は、シンチレーター21の放射線入射面11が存在する側とは反対側に、放射線入射面11やシンチレーター21と平行に広がるよう配置されている。
【0026】
走査駆動部23は、各スイッチ素子のオン/オフを切り替えるようになっている。
【0027】
読み出し部24は、各画素に蓄積された電荷の量を信号値として読み出し、各信号値に基づいて放射線画像の画像データを生成するようになっている。
【0028】
通信部3は、例えば無線モジュールで構成されている。
そして、通信部3は、他の装置(例えばコンソール100c)とデータや信号の送受信を無線で行うようになっている。
また、通信部3は、筐体1(特に放射線入射面11)のサイズを既存の撮影台等に格納できるようにする(JIS規格に適合させる)必要から、センサー部22に近接して設けられている。本実施形態においては、例えば
図3に示すように、センサー部22のシンチレーター21が存在する側とは反対側の面に接するように配置されている。
この通信部3の詳細については後述する。
【0029】
記憶部4は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリー等により構成され、各種処理を実行するための処理プログラムや、当該処理プログラムの実行に必要なパラメーターや、ファイル等を記憶している。
なお、記憶部4を、生成した放射線画像の画像データを記憶できるように構成してもよい。
【0030】
制御部5は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)を備えている。
そして、CPUが、記憶部4に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該処理プログラムに従って各種処理を実行することで、画像生成部2及び通信部3を含む放射線撮影装置100b各部の動作を統括的に制御するようになっている。
【0031】
電源部6は、バッテリー61と、通信部3用の電源回路62と、を備えている。
また、本実施形態に係る電源部6は、図示しない画像生成部2用の電源回路を備えている。
そして、電源部6は、少なくとも通信部3を含む放射線撮影装置100bの各部へ電力を供給するようになっている。
【0032】
〔通信部の構成〕
次に、上記放射線撮影装置100bが備える通信部3の具体的構成について説明する。
図5は、放射線撮影装置100bが備える一部の電気的構成(主に通信部3)を表すブロック図である。
【0033】
通信部3は、
図5に示すように、基板31と、無線デバイス32と、電力調整部33と、を有している。
【0034】
無線デバイス32は、他の装置(例えばコンソール100c)と各種データや各種コマンドの送受信を無線で行うようになっている。
また、本実施形態に係る無線デバイス32は、画像データのようにサイズの大きいデータを転送する場合に、データを複数のパケットに分割し、パケットの送信と、パケットの受信した旨の応答情報の受信と、を交互に繰り返すようになっている。
また、無線デバイス32は、電力調整部33(後述するモニター部33b)を介して電源部6(電源回路62)と接続されている。
また、無線デバイス32は、データを送信するときと受信するときとで、異なる量の電力を消費する。具体的には、受信するときには相対的に少ない電力を消費し、送信するときには受信するときよりも多い電力を消費するようになっている。
以下、無線デバイス32がデータを受信するときに消費する電力を第一電力、データを送信するときに消費する電力を第二電力と称する。
なお、第二電力は、送信時の消費電力である必要はなく、送信するときに消費する電力を超えない範囲で第一電力よりも多い電力であればよい。
【0035】
本実施形態に係る電力調整部33は、電力消費部33aと、モニター部33bと、AND回路33cと、スイッチ部33dと、を備えている。
【0036】
電力消費部33aは、スイッチ部33dを介して無線デバイス32と並列に電源部6(電源回路62)と接続されている。
また、電力消費部33aは、第二電力と第一電力との差分である差分電力を消費するようになっている。
【0037】
モニター部33bは、無線デバイス32が消費する電力(電源回路62と無線デバイス32とを接続する配線を流れる電流)を測定するようになっている。
また、モニター部33bは、AND回路33cへ制御信号を出力しており、測定した無線デバイス32の消費電力に応じて制御信号のHigh/Lowを切り替えるようになっている。具体的には、無線デバイス32の消費電力が第二電力(送信時の消費電力)である間は制御信号をLowにし、消費電力が第一電力(受信時の消費電力)である間は制御信号をHighにする。
なお、モニター部33bは、基板31上に設けられていなくても(通信部3の外に設けられていても)よい。
【0038】
AND回路33cは、二つの入力端子と、一つの出力端子と、を有している。
そして、AND回路33cは、一方の入力端子に制御部5からの制御信号が入力され、他方の入力端子にモニター部33bからの制御信号が入力されている。
また、AND回路33cは、出力端子からスイッチ部33dへ制御信号を出力しており、二つの入力端子に入力される制御信号に応じて出力する信号のHigh/Lowを切り替えるようになっている。具体的には、制御部5から入力されている制御信号がHighであり、且つモニター部33bから入力されている制御信号がHighである間は出力する制御信号をHighにし、それ以外のときは出力する制御信号をLowにする。
【0039】
スイッチ部33dは、AND回路33cから入力される制御信号に応じてON/OFFを切り替えるようになっている。具体的には、AND回路33cから入力されている制御信号がHighである間はONにし、Lowである間はOFFにする。
上述したように、電力消費部33aは、スイッチ部33dを介して無線デバイス32と並列に接続されている。
【0040】
また、本実施形態における通信部3は、無線デバイス32及び電力消費部33aが電源部6(電源回路62)に近接するように配置されている。
具体的には、無線デバイス32及び電力消費部33aが実装された基板31の一端部が、電源回路62と隣接するように配置されている。
このため、電源回路62と無線デバイス32とを接続する配線、及び電源回路62と電力消費部33aとを接続する配線は、無線デバイス32及び電力消費部33aが電源回路62に近接していない場合に比べて短くなっている。また、これにより、通信部3内部で電流の変動が生じても、それに起因する磁界の変動が生じにくくなっている。
【0041】
〔放射線撮影装置の動作・効果〕
次に、上記放射線撮影装置100bの動作及びその効果について説明する。
図6は放射線撮影装置100bの状態遷移を表すフローチャート、
図7(a)は従来の放射線撮影装置が画像データを転送するときの通信部の消費電力を示すグラフ、
図7(b)は本実施形態に係る放射線撮影装置100bが画像データを転送するときの通信部3の消費電力を示すグラフである。
【0042】
上述したように構成された本実施形態に係る制御部5は、例えば放射線入射面11に受けた放射線Rの線量に応じた放射線画像の画像データを生成する機能を有している。
具体的には、まず走査駆動部23にスイッチ素子をOFFにさせることで各検出素子が発生させた電荷を各画素にそれぞれ蓄積させ、次いで走査駆動部23にスイッチ素子をONにさせて蓄積された電荷を読み出し回路へ出力させる。そして、読み出し部24に各画素の信号値を読み出させ、更に複数の信号値に基づいて画像データを生成させる。
【0043】
また、制御部5は、通信部3を介して、他の装置(例えばコンソール100c)と、コマンドの送受信を行う機能を有している。
また、制御部5は、通信部3を介して、生成した画像データを他の装置へ転送する機能を有している。
【0044】
また、制御部5は、放射線撮影装置100bの動作状態を遷移させる機能を有している。なお、この状態遷移は、画像データの生成と並行して行われる。
【0045】
まず、電源スイッチ12がONにされると、放射線撮影装置100bは、
図6に示すように、画像データ未転送状態に遷移する(ステップS1)。
【0046】
この状態における制御部5は、まず、電源回路62を用いて待機時の電流を通信部3へ供給する。
また、制御部5は、AND回路33cへ出力する制御信号をLowにする。
また、モニター部33bは、無線デバイス32がデータを送信している(消費電力が第二電力である)場合は、AND回路33cへ出力している制御信号をLowにし、データを受信している(消費電力が第一電力である)場合は制御信号をHighにする。
この状態におけるAND回路33cは、制御部5から入力される制御信号がLowになっているため、モニター部33bから入力される制御信号に関係なくスイッチ部33dへ出力する出力信号をLowにする。このため、この状態におけるスイッチ部33dは非導通状態となり、電源回路62からの電力は電力消費部33aへ供給されることなく全て無線デバイス32へ供給される。
【0047】
また、この状態における制御部5は、他の装置(例えばコンソール100c)からの画像データ転送コマンドの受信状況を監視する。具体的には、画像データ転送コマンドを受信したか否かの判断(ステップS2)を繰り返す。
すなわち、この画像データ未転送状態は、画像データ転送コマンドを受信したと制御部5が判断するまで継続される。
【0048】
画像データ未転送状態において、画像データ転送コマンドを受信したと制御部5が判断する(無線デバイス32がデータの送信を開始する、ステップS2:Yes)と、放射線撮影装置100bは、第一画像データ転送状態に遷移する(ステップS3)。
【0049】
この状態における制御部5は、画像生成部2に画像データの生成を行わせる。
制御部5は、電源回路62を用いてデータ転送時の電流を通信部3へ供給する。
また、制御部5は、AND回路33cへ出力する制御信号をHighにする。
また、この状態では、無線デバイス32がデータを送信するため、モニター部33bが測定する消費電力が第二電力となり、モニター部33bは、AND回路33cへ出力する制御信号をLowにする。
この状態におけるAND回路33cは、制御部5から入力される制御信号がHighであっても、モニター部33bから入力される制御信号がLowであるため、スイッチ部33dへ出力する出力信号をLowにする。このため、この状態におけるスイッチ部33dはOFFになり、電源回路62からの電力は電力消費部33aへ供給されることなく全て無線デバイス32へ供給される。
すなわち、制御部5は、モニター部33bが測定した電力が第二電力であるときに、スイッチ部33dを非導通状態(OFF)に切り替える。
【0050】
なお、この状態において、通信部3全体で消費される消費電力は、無線デバイス32の送信時の消費電力(第二電力)となる。
【0051】
この第一画像データ転送状態は、無線デバイス32がデータを送信している間(モニター部33bが測定する無線デバイス32の消費電力が第一電力である間)継続される。
【0052】
無線デバイス32の第一画像データ転送状態が終了する(無線デバイスの消費電力が第一電力になる、ステップS4:Yes)と、放射線撮影装置100bは、第二画像データ転送状態に遷移する(ステップS5)。
【0053】
制御部5は、この状態においても、画像生成部2に画像データの生成を行わせる。
また、制御部5は、電源回路62を用いてデータ転送時の電流を通信部3へ供給する。
また、制御部5は、この状態においても、AND回路33cへ出力する制御信号をHighにする。
また、この状態では、無線デバイス32がデータを受信するため、モニター部33bが測定する消費電力が第一電力となり、モニター部33bは、AND回路33cへ出力する制御信号をHighにする。
この状態におけるAND回路33cは、制御部5から入力される制御信号及びモニター部33bから入力される制御信号が共にHighになるため、スイッチ部33dへ出力する出力信号をHighにする。このため、この状態におけるスイッチ部33dはONになり、電源回路62からの電力が、無線デバイス32だけでなく、電力消費部33aにも供給される。
すなわち、制御部5は、モニター部33bが測定した電力が第一電力であるときに、スイッチ部33dを導通状態(ON)に切り替える。
【0054】
上述したように、本実施形態に係る電力消費部33aは、第二電力と第一電力との差分である差分電力を消費するようになっている。
このため、この状態において、通信部3全体で消費される電力は、無線デバイス32の受信時の消費電力(第一電力)+電力消費部33aの消費電力(第二電力-第一電力)=無線デバイス32の送信時の消費電力(第二電力)となり、上記第一画像データ転送状態のときの通信部3全体の消費電力と等しくなる。
【0055】
この第二画像データ転送状態は、無線デバイス32がデータを受信している間(モニター部33bが測定する無線デバイス32の消費電力が第二電力である間)継続される。
【0056】
また、この状態における制御部5は、他の装置(例えばコンソール100c)からの画像データ転送終了コマンドの受信状況を監視する。具体的には、画像データ転送終了コマンドを受信したか否かの判断(ステップS6)を繰り返す。
画像データを転送する際、無線デバイス32はデータの送信及び受信を繰り返すことになるため、第一画像データ転送状態及び第二画像データ送信状態は、画像データ転送終了コマンドを受信したと制御部5が判断するまで交互に繰り替えされる。
【0057】
この第一画像データ転送状態及び第二画像データ送信状態が交互に繰り返されることにより、電力調整部33は、少なくとも画像生成部2が画像データを生成している間、通信部3が消費する電力の経時変化を、無線デバイス32がデータの送信を行うときに消費する電力で一定となった状態になるように調整することになる。
なお、第二電力をデータの送信時の消費電力よりも低く設定した場合には、第一画像データ転送状態及び第二画像データ送信状態が交互に繰り返される際に、通信部3の消費電力は一定とはならない。しかし、第二電力は第一電力よりもデータの送信時の消費電力に近いため、通信部3が消費する電力の経時変化は、電力調整部33を備えない場合に比べると一定となった状態に近づくように調整することになる。
【0058】
第一画像データ転送状態又は第二画像データ転送状態において、画像データ転送終了コマンドを受信したと制御部5が判断すると(ステップS6;Yes)、放射線撮影装置100bは、画像データ未転送状態に遷移する。
【0059】
本実施形態に係る無線デバイス32を含む一般的な無線デバイスは、サイズが大きい画像データを転送する際に、送信と受信を繰り返す。
また、上述したように、通信部の消費電力は、
図7(a)に示すように送信時と受信時で異なるため、電流の増減により放射される磁界が変化する。
この磁界の変化は、画像生成部と無線デバイスとの距離が遠ければ、画像データに与える影響は無視できるほどに小さくなる。しかし、筐体のサイズに制約がある(本実施形態のように放射線撮影装置100bが可搬型のものである)場合、
図4に示したように、無線デバイス32を画像生成部2に近接して配置せざるを得なくなるため、画像生成部2が画像データを生成する際に磁界の変動の影響を受け、放射線画像に横スジが生じてしまう。
【0060】
しかしながら、本実施形態に係る放射線撮影装置100bは、第二画像データ転送状態のとき(無線デバイス32がデータを受信するとき)の通信部3の消費電力が、第一画像データ転送状態のとき(無線デバイス32がデータを送信するとき)の通信部3の消費電力である第二電力と等しくなる、すなわち、転送期間を通して通信部3の消費電力が第二電力で一定となる。このため、配線を流れる電流に変動が生じず、それによる磁界の変化も生じないため、画像データの転送時に並行して画像データを生成している画像生成部にノイズが生じない。その結果、画像データの転送先であるコンソール100cの表示部8に表示される放射線画像に横スジが生じるのを防ぐことができる。
【0061】
また、画像データの生成と画像データの転送を並行して行っても放射線画像に横スジが入らないため、放射線画像を生成する間、画像データの転送を規制するといった対策が不要となる。このため、コンソール100cでの放射線画像の表示が、画像データの生成と画像データの転送を並行して行えない分だけ遅くなってしまうのを防ぐことができる。
また、画像生成部2と通信部3との間に、高透磁率シート等の対策部材を配置する必要がないため、配置スペースを確保するために筐体1を大型化する必要がなくなるし、部品数を増やさない分だけ製造コストの増加を抑えることができる。
すなわち、本実施形態に係る放射線撮影装置100bによれば、ノイズの影響を防ぐ対策部材を中に配置することなく、ノイズの影響を受けていない放射線画像の画像データを短時間で転送することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る放射線撮影装置100bは、画像データの生成と転送が並行して行われる第一画像データ転送状態及び第二画像データ転送状態のときのみ電力調整部33を駆動させる。すなわち、画像データの生成が行われない(無線デバイス32の消費電力が変動しても画像データにノイズがのることがない)画像データ未転送状態では電力調整部33を駆動させない。このため、画像データ未転送状態の期間中、電力消費部33aが電力を消費しない分だけ、バッテリー61を長持ちさせることができる。
【0063】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0064】
例えば、上記実施形態においては、放射線撮影装置100b及びコンソール100cの組み合わせを例に説明したが、本発明は、無線で画像データを送受信し、電気的に画像を生成又は表示する電子機器全般に適用することが可能である。すなわち、デジタルカメラとPCやタブレット端末の組み合わせ等にも適用可能である。
【0065】
また、上記実施形態においては、AND回路33cを用いてスイッチ部33dのON/OFFを切り替えるようにしたが、無線デバイス32の状態を制御部5で検知し、制御部5がスイッチ部33dの切り替えを直接行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
100 放射線画像診断システム
100a 放射線発生装置
100b 放射線撮影装置
1 筐体
11 放射線入射面
12 電源スイッチ
13 操作スイッチ
14 インジケーター
15 コネクター
2 画像生成部
21 シンチレーター
22 センサー部
23 走査駆動部
24 読み出し部
3 通信部
31 基板
32 無線デバイス
33 電力調整部
33a 電力消費部
33b モニター部
33c スイッチ部
33d AND回路
4 記憶部
5 制御部
6 電源部
61 バッテリー
62 電源回路
100c コンソール
7 通信部
8 表示部