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特許7088107インクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20220614BHJP
   B41J 2/055 20060101ALI20220614BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/055
B41J2/16 503
B41J2/14
B41J2/14 605
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019062203
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020157697
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】比江島 一樹
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194776(WO,A1)
【文献】特開2003-118121(JP,A)
【文献】特開2017-164918(JP,A)
【文献】特開2009-184213(JP,A)
【文献】特開平7-156384(JP,A)
【文献】特開2003-154674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルと、前記ノズルに連通するインク流路とを有し、一又は二以上の前記インク流路の複数の開口部が所定の開口形成面に形成されているヘッドチップと、
内壁面の一部が前記開口形成面からなるインク室を有し、当該インク室が前記開口形成面の前記複数の開口部を介して前記一又は二以上のインク流路に連通しているインク貯留部と、
を備え、
前記インク貯留部は、前記インク室を複数の副インク室に仕切る、前記開口形成面に端面が接合された隔壁を有し、
前記隔壁の少なくとも一部が弾性体からなることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記隔壁のうち、少なくとも前記開口形成面に接する端部が前記弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記弾性体の前記開口形成面との接合面は矩形であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記弾性体のヤング率は1MPa以上100MPa以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記弾性体は、前記開口形成面と垂直な方向に圧縮された状態で設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記弾性体は、前記開口形成面と垂直な方向についての長さが非圧縮時の70%以上100%未満となるように圧縮された状態で設けられていることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記弾性体は、前記開口形成面に平行な面内における前記隔壁の長手方向に圧縮された状態で設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記弾性体は、前記長手方向についての長さが非圧縮時の95%以上100%未満となるように圧縮された状態で設けられていることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記インク貯留部は、前記弾性体と、前記インク貯留部のうち前記弾性体に隣り合う隣接部材とを接着している接着層を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記接着層は、前記開口形成面に平行な面内における前記隔壁の長手方向についての前記弾性体の端部と、当該端部に前記長手方向に隣り合う前記隣接部材とを接着していることを特徴とする請求項9に記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記インク貯留部のうち前記弾性体に隣り合う隣接部材には、前記弾性体を押圧するための所定の押圧部材が通過可能な貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項12】
前記貫通孔は、前記開口形成面に垂直な方向から見て、前記弾性体が配置されている領域内に設けられていることを特徴とする請求項11に記載のインクジェットヘッド。
【請求項13】
前記インク貯留部は、前記貫通孔が設けられている前記隣接部材と、前記弾性体との間に設けられた、前記弾性体より剛性の高い板状部材を有することを特徴とする請求項11又は12に記載のインクジェットヘッド。
【請求項14】
前記板状部材は金属からなることを特徴とする請求項13に記載のインクジェットヘッド。
【請求項15】
前記開口形成面に平行な面内における前記隔壁の長手方向について、前記板状部材の長さは前記弾性体の長さの1/2以上であり、前記面内における前記隔壁の前記長手方向に垂直な厚さ方向について、前記板状部材の長さは前記弾性体の長さの1/2以上であることを特徴とする請求項13又は14に記載のインクジェットヘッド。
【請求項16】
前記弾性体と、前記インク貯留部のうち前記弾性体に隣り合う隣接部材とが一体的に成形されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項17】
前記隔壁は、前記弾性体と、前記弾性体より剛性の高い基部と、を有し、
前記弾性体は、前記基部と前記開口形成面とを接着している接着剤であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項18】
前記隣接部材は、前記隔壁の一部であることを特徴とする請求項9~16のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項19】
前記隔壁は、前記弾性体からなることを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項21】
インクを吐出するノズルと、前記ノズルに連通するインク流路とを有し、一又は複数の前記インク流路の複数の開口部が所定の開口形成面に形成されているヘッドチップと、内壁面の一部が前記開口形成面からなるインク室を有し、当該インク室が前記開口形成面の前記複数の開口部を介して前記一又は二以上のインク流路に連通しているインク貯留部と、を備え、前記インク貯留部は、前記インク室を複数の副インク室に仕切る、前記開口形成面に端面が接合された隔壁を有し、前記隔壁の少なくとも一部が弾性体からなるインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記インク貯留部の所定の位置に、前記弾性体より剛性の高い板状部材を配置し、前記板状部材上の所定の位置に前記弾性体を配置する工程と、
前記インク貯留部に、前記開口形成面を有する部材を取り付ける工程と、
前記インク貯留部のうち前記板状部材を挟んで前記弾性体に隣り合う隣接部材に設けられた複数の貫通孔のうち一部の貫通孔に、所定の押圧部材を通し、前記押圧部材により前記板状部材及び前記弾性体を前記開口形成面に対して押圧する工程と、
前記複数の貫通孔のうち前記押圧部材を通していない貫通孔から接着剤を供給して、前記隣接部材及び前記弾性体を接着する工程と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吐出させて所望の位置に着弾させることで画像を記録するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置に用いられるインクジェットヘッドとしては、ノズル及び当該ノズルに連通するインク流路が設けられたヘッドチップを有し、ヘッドチップのうちインク流路の開口部が形成されている開口形成面上に、内壁面の一部が当該開口形成面からなるインク室が設けられたものがある。このインクジェットヘッドでは、インク室内のインクが開口形成面の開口部からインク流路に供給され、ノズルから吐出される。
【0003】
このようなインク室を有するインクジェットヘッドでは、端面が開口形成面に接合される隔壁によってインク室を複数の副インク室に仕切り、これらの複数の副インク室を異なる目的で用いる技術がある。
例えば、各副インク室から異なる色のインクをヘッドチップに供給することで、一のインクジェットヘッドにより複数の色の画像を記録する技術がある(例えば、特許文献1)。
また、一の副インク室からインク流路に供給されたインクの一部を他の副インク室に還流させることで、インク流路内の気泡や異物をインクとともにヘッドチップ内から除去する技術がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-109476号公報
【文献】特開2017-209966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、隔壁がインクの圧力により押圧されて開口形成面から剥離して副インク室同士が連通してしまうことがある。これに対し、隔壁の強度及び開口形成面との接合強度を確保するために隔壁の厚さを増大させると、隔壁と開口形成面との位置関係が熱変形により変化した場合に隔壁が当該変化に追従できず、やはり隔壁の剥離が生じ得る。
このように、上記従来の技術では、隔壁の剥離を抑制しつつ必要な隔壁の強度を確保するのが容易でないという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、隔壁の剥離を抑制しつつ必要な隔壁の強度を確保することができるインクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインクジェットヘッドの発明は、
インクを吐出するノズルと、前記ノズルに連通するインク流路とを有し、一又は二以上の前記インク流路の複数の開口部が所定の開口形成面に形成されているヘッドチップと、
内壁面の一部が前記開口形成面からなるインク室を有し、当該インク室が前記開口形成面の前記複数の開口部を介して前記一又は二以上のインク流路に連通しているインク貯留部と、
を備え、
前記インク貯留部は、前記インク室を複数の副インク室に仕切る、前記開口形成面に端面が接合された隔壁を有し、
前記隔壁の少なくとも一部が弾性体からなることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記隔壁のうち、少なくとも前記開口形成面に接する端部が前記弾性体からなることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記弾性体の前記開口形成面との接合面は矩形であることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記弾性体のヤング率は1MPa以上100MPa以下であることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記弾性体は、前記開口形成面と垂直な方向に圧縮された状態で設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記弾性体は、前記開口形成面と垂直な方向についての長さが非圧縮時の70%以上100%未満となるように圧縮された状態で設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記弾性体は、前記開口形成面に平行な面内における前記隔壁の長手方向に圧縮された状態で設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記弾性体は、前記長手方向についての長さが非圧縮時の95%以上100%未満となるように圧縮された状態で設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インク貯留部は、前記弾性体と、前記インク貯留部のうち前記弾性体に隣り合う隣接部材とを接着している接着層を有することを特徴としている。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記接着層は、前記開口形成面に平行な面内における前記隔壁の長手方向についての前記弾性体の端部と、当該端部に前記長手方向に隣り合う前記隣接部材とを接着していることを特徴としている。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1~10のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インク貯留部のうち前記弾性体に隣り合う隣接部材には、前記弾性体を押圧するための所定の押圧部材が通過可能な貫通孔が設けられていることを特徴としている。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記貫通孔は、前記開口形成面に垂直な方向から見て、前記弾性体が配置されている領域内に設けられていることを特徴としている。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項11又は12に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インク貯留部は、前記貫通孔が設けられている前記隣接部材と、前記弾性体との間に設けられた、前記弾性体より剛性の高い板状部材を有することを特徴としている。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記板状部材は金属からなることを特徴とすることを特徴としている。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項13又は14に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記開口形成面に平行な面内における前記隔壁の長手方向について、前記板状部材の長さは前記弾性体の長さの1/2以上であり、前記面内における前記隔壁の前記長手方向に垂直な厚さ方向について、前記板状部材の長さは前記弾性体の長さの1/2以上であることを特徴としている。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記弾性体と、前記インク貯留部のうち前記弾性体に隣り合う隣接部材とが一体的に成形されていることを特徴としている。
【0023】
請求項17に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記隔壁は、前記弾性体と、前記弾性体より剛性の高い基部と、を有し、
前記弾性体は、前記基部と前記開口形成面とを接着している接着剤であることを特徴としている。
【0024】
請求項18に記載の発明は、請求項9~16のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記隣接部材は、前記隔壁の一部であることを特徴としている。
【0025】
請求項19に記載の発明は、請求項1~16のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記隔壁は、前記弾性体からなることを特徴としている。
【0026】
また、上記目的を達成するため、請求項20に記載のインクジェット記録装置の発明は、
請求項1~19のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備えることを特徴としている。
【0027】
また、上記目的を達成するため、請求項21に記載のインクジェットヘッドの製造方法の発明は、
インクを吐出するノズルと、前記ノズルに連通するインク流路とを有し、一又は複数の前記インク流路の複数の開口部が所定の開口形成面に形成されているヘッドチップと、内壁面の一部が前記開口形成面からなるインク室を有し、当該インク室が前記開口形成面の前記複数の開口部を介して前記一又は二以上のインク流路に連通しているインク貯留部と、を備え、前記インク貯留部は、前記インク室を複数の副インク室に仕切る、前記開口形成面に端面が接合された隔壁を有し、前記隔壁の少なくとも一部が弾性体からなるインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記インク貯留部の所定の位置に、前記弾性体より剛性の高い板状部材を配置し、前記板状部材上の所定の位置に前記弾性体を配置する工程と、
前記インク貯留部に、前記開口形成面を有する部材を取り付ける工程と、
前記インク貯留部のうち前記板状部材を挟んで前記弾性体に隣り合う隣接部材に設けられた複数の貫通孔のうち一部の貫通孔に、所定の押圧部材を通し、前記押圧部材により前記板状部材及び前記弾性体を前記開口形成面に対して押圧する工程と、
前記複数の貫通孔のうち前記押圧部材を通していない貫通孔から接着剤を供給して、前記隣接部材及び前記弾性体を接着する工程と、
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明に従うと、隔壁の剥離を抑制しつつ必要な隔壁の強度を確保することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
図2】インクジェットヘッドの構成を示す斜視図である。
図3】ヘッドチップの分解斜視図である。
図4】インクジェットヘッドの構成を示す断面図である。
図5】隔壁の構成を示す図である。
図6】弾性体のZ方向についての圧縮状態を説明する図である。
図7】弾性体のY方向についての圧縮状態を説明する図である。
図8】第1の実施形態の変形例に係る隔壁のY方向に垂直な断面を示す図である。
図9】第2の実施形態の隔壁のY方向に垂直な断面を示す図である。
図10】第3の実施形態の隔壁のY方向に垂直な断面を示す図である。
図11】第4の実施形態の隔壁を示す図である。
図12図11の隔壁を有するインクジェットヘッドの製造方法を説明する図である。
図13図11の隔壁を有するインクジェットヘッドの製造方法を説明する図である。
図14】第4の実施形態の変形例1に係る隔壁の、X方向に垂直な断面を示す図である。
図15】第4の実施形態の変形例2に係る隔壁の、Y方向に垂直な断面を示す図である。
図16】第5の実施形態の隔壁を示す図である。
図17】複数の副インク室の他の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のインクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置100の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置100は、搬送ベルト101、搬送ローラー102、ヘッドユニット103などを備える。
【0032】
搬送ローラー102は、図示しない搬送モーターの駆動によって、図1のX方向に平行な回転軸を中心に回転する。搬送ベルト101は、一対の搬送ローラー102により内側が支持された輪状のベルトであり、搬送ローラー102が回転動作するのに従って一対の搬送ローラー102の回りを周回移動する。インクジェット記録装置100は、搬送ベルト101上に記録媒体Mが載置された状態で、搬送ローラー102の回転速度に応じた速度で搬送ベルト101が周回移動することで記録媒体Mを搬送ベルト101の移動方向(図1のY方向)に搬送する搬送動作を行う。
【0033】
ヘッドユニット103は、搬送ベルト101により搬送される記録媒体Mに対して画像データに基づいてノズル111(図2(b)参照)からインクを吐出して記録媒体M上に画像を記録する。本実施形態のインクジェット記録装置100では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット103が記録媒体Mの搬送方向上流側から順に所定の間隔で並ぶように配列されている。ヘッドユニット103の数は、記録に用いる色の数に応じて3つ以下又は5つ以上とされていても良い。
【0034】
各ヘッドユニット103は、平板状の基部103aと、当該基部103aを貫通する孔部に篏合した状態で基部103aに固定された複数の(ここでは7つの)インクジェットヘッド1とを有する。ヘッドユニット103は、複数のインクジェットヘッド1を含む構成要素を格納する筐体を有するが、図1では記載が省略されている。
【0035】
インクジェットヘッド1では、インクを吐出する複数のノズル111が記録媒体Mの搬送方向と交差する方向(本実施形態では搬送方向と直交する幅方向、すなわちX方向)に配列されている。また、各インクジェットヘッド1では、X方向に一次元配列されたノズル111からなるノズル列が設けられている(図2(b)参照)。なお、インクジェットヘッド1には、ノズル111の位置が互いにX方向にずれる位置関係で、複数のノズル列が設けられていても良い。
インクジェットヘッド1には、各ノズル111に対応して、ノズル111からインクを吐出させるための機構であるインク吐出部が設けられている。
【0036】
各ヘッドユニット103における複数のインクジェットヘッド1は、ノズル111のX方向についての配置範囲が、搬送ベルト101上の記録媒体Mのうち画像が記録可能な領域のX方向についての幅をカバーするように千鳥格子状に配置されている。このようにインクジェットヘッド1が配置されることで、インクジェット記録装置100では、ヘッドユニット103を固定した状態でインクジェットヘッド1から画像データに応じた適切なタイミングでインクを吐出することにより、搬送される記録媒体M上に画像を記録することができる。すなわち、インクジェット記録装置100は、シングルパス方式で画像を記録する。
【0037】
図2は、インクジェットヘッド1の構成を示す斜視図である。図2(a)は、インクジェットヘッド1を上側(+Z方向側)から見た斜視図であり、図2(b)は、インクジェットヘッド1を下側(-Z方向側)から見た斜視図である。なお、図2(b)では、説明の便宜上、ノズル111の数を7つに省略して描いているが、実際には数百個以上のノズル111が配列されている。
インクジェットヘッド1は、ノズル111が設けられているヘッドチップ10と、ヘッドチップ10に供給されるインクやヘッドチップ10から排出されたインクを一時的に貯留するインク貯留部3と、ヘッドチップ10及びインク貯留部3の間に設けられてヘッドチップ10を保持する保持部材5などを備える。
【0038】
インク貯留部3の内部には、インクを貯留するインク室300が設けられている。また、インク室300は、隔壁30(図4(a)及び図4(b)参照)によって複数の副インク室に仕切られている。図2の例では、副インク室として、供給インク室300aと、供給インク室300aを挟む一対の排出インク室300bとが設けられている。供給インク室300aは、ヘッドチップ10のノズル111に供給されるインクを貯留する。また、排出インク室300bは、ヘッドチップ10から排出されたインクを貯留する。また、インク貯留部3は、外部から供給インク室300aに供給されるインクが流入するインレット301と、排出インク室300bから外部へ排出されるインクが流出するアウトレット302などを備える。
【0039】
ヘッドチップ10は、インク貯留部3の供給インク室300aから供給されたインクをノズル111から吐出する。また、ヘッドチップ10には、供給されたインクの一部をインク貯留部3の排出インク室300bに排出させるためのインク排出流路が設けられている。
【0040】
図3は、ヘッドチップ10の分解斜視図である。図3では、ノズル111が上方となる向きで(すなわち、図2(b)と同一の向きで)ヘッドチップ10の構成要素が分解されて描かれている。
ヘッドチップ10は、ノズル基板11、流路基板12、圧力室基板13、配線基板14がこの順に積層された構造となっている。また、図3には、配線基板14に電気的に接続されるFPC20(Flexible Printed Circuit)が併せて描かれている。
【0041】
ノズル基板11は、厚さ方向(Z方向)に貫通する孔であるノズル111がX方向に沿って列をなすように設けられているポリイミドの基板である。ノズル基板11の-Z方向側の面は、インクジェットヘッド1のインク吐出面112をなす。
【0042】
流路基板12には、ノズル111に連通する貫通流路121と、貫通流路121から分岐する個別排出流路122とが設けられている。
また、圧力室基板13には、貫通流路121に連通する圧力室131と、個別排出流路122に連通する共通排出流路132と、共通排出流路132に連通する垂直排出流路133と、が設けられている。
また、配線基板14には、圧力室131に連通するインク供給孔141と、垂直排出流路133に連通する排出孔142と、が設けられている。
【0043】
流路基板12及び圧力室基板13は、Z方向から見た形状がノズル基板11とほぼ同一である直方体形状の板状部材である。
流路基板12は、例えばシリコン基板からなる。流路基板12の-Z方向側の面にはノズル基板11が、また+Z方向側の面には圧力室基板13が、それぞれ接着剤を介して接着(固着)されている。
圧力室基板13の材質は、セラミックスの圧電体(電圧の印加に応じて変形する部材)である。このような圧電体の例としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛などが挙げられる。本実施形態の圧力室基板13では、PZTが用いられている。
配線基板14は、圧力室基板13の面積よりも大きな面積を有する平板状の基板であり、接着剤を介して圧力室基板13の+Z方向側の面に接着されている。配線基板14としては、例えばガラス、セラミックス、シリコン、プラスチックなどの基板を用いることができる。
【0044】
流路基板12、圧力室基板13及び配線基板14が接合された状態では、貫通流路121、圧力室131及びインク供給孔141が一繋がりとなって、インクチャネル15(図4(a)参照)を構成する。インクチャネル15は、Z方向から見てノズル111と重なる位置に設けられており、ノズル111に連通している。インクチャネル15及びノズル111によりインク吐出流路16(図4(a)参照)が構成される。インク吐出流路16は、「インク流路」の一態様である。また、各インクチャネル15には、インク供給孔141の開口部1411を介して供給インク室300aからインクが供給される。
【0045】
インクチャネル15の内壁面には、図示しない電極が形成されている。隣り合うインクチャネル15の電極に印加される駆動信号の電位差に応じて、インクチャネル15間の壁面(詳しくは、壁面のうち圧力室基板13の圧電体からなる部分)が変位する。この壁面がシアモード型の変位を繰り返すことで、インクチャネル15内のインクの圧力が変動し、この圧力の変動に応じて、インクチャネル15内のインクがノズル111から吐出される。すなわち、本実施形態のインクジェットヘッド1は、シアモード型のインク吐出を行う。
【0046】
流路基板12では、複数の貫通流路121(インクチャネル15)の各々から+Y方向に第1個別流路1221が分岐しており、第1個別流路1221の+Y方向側の端部に、+Z方向に延びて流路基板12を貫通する第2個別流路1222が接続されている。この第1個別流路1221a及び第2個別流路1222aにより、個別排出流路122が構成される。
圧力室基板13のうち流路基板12との接合面には、Z方向から見て複数の第2個別流路1222と重なる範囲に、X方向に延びる共通排出流路132をなす溝が設けられている。共通排出流路132は、流路基板12と圧力室基板13とが接合された状態において、圧力室基板13に設けられた上記の溝の開口が流路基板12によって塞がれることで形成される。また、流路基板12と圧力室基板13とが接合された状態において、共通排出流路132は、複数の個別排出流路122と接続される。
また、共通排出流路132のX方向側の両端部には、圧力室基板13をZ方向に貫通する垂直排出流路133がそれぞれ接続されている。
配線基板14には、Z方向から見て一対の垂直排出流路133と重なる位置に、配線基板14を貫通する一対の排出孔142が設けられている。排出孔142の開口部1421は、排出インク室300bに連通している。
【0047】
これらの個別排出流路122、共通排出流路132、垂直排出流路133及び排出孔142により、インク排出流路17(図4(b)参照)が構成される。インク排出流路17が設けられていることで、供給インク室300aからインクチャネル15に供給されたインクの一部を、インク排出流路17を介して排出インク室300bに排出させることができるようになっている。これにより、インクチャネル15内の気泡や異物をインクとともにヘッドチップ10の外部に排出することができる。インク排出流路17は、「インク流路」の一態様である。
なお、共通排出流路132のX方向の両端からインクを排出する構成に代えて、共通排出流路132の一端のみからインクを排出する構成としても良い。すなわち、垂直排出流路133及び排出孔142がそれぞれ一つのみ設けられている構成としても良い。この場合には、インク貯留部3の排出インク室300bは、排出孔142に対応して1つのみ設けられれば良い。
【0048】
配線基板14の圧力室基板13との接着面には、インクチャネル15の電極にそれぞれ接続される複数の配線143が設けられている。また、配線基板14のうち配線143が設けられている端部には、FPC20が、例えばACF(異方性導電フィルム)を介して接続される。FPC20上の配線21と、配線143とを介して、図示しない駆動回路から出力された駆動信号がインクチャネル15の電極に供給される。
【0049】
図4は、インクジェットヘッド1の構成を示す断面図である。
図4(a)は、図3のA-A線の位置でのY方向に垂直な断面を示す図であり、図4(b)は、図3のB-B線の位置でのY方向に垂直な断面を示す図である。以下では、+Z方向を上方、-Z方向を下方とも記す。
図4(a)及び図4(b)に示すように、ヘッドチップ10のうち開口部1411、1421が形成されている開口形成面10aの上方側(+Z方向側)に、インク貯留部3が配置されている。インク貯留部3は、インク貯留部3の外壁39とヘッドチップ10の開口形成面10aとによって囲まれたインク室300を有する。すなわち、インク室300は、一の面が開口している略直方体形状の外壁39と、外壁39の開口部を塞ぐ開口形成面10aとにより形成されている。したがって、インク室300は、内壁面の一部(底面)が開口形成面10aにより構成されている。
インク貯留部3の外壁39の材質は、特には限られないが、機械的強度及びインクに対する耐薬品性に優れたPPS樹脂等の各種樹脂や、金属、合金などを用いることができる。
【0050】
また、図4(a)及び図4(b)に示すように、インク貯留部3は、インク室300を供給インク室300a及び排出インク室300bに仕切る隔壁30を有している。隔壁30は、YZ平面に沿って伸びる板状の部材であり、-Z方向の端面(下方の端面)が開口形成面10aに接合されている。以下では、隔壁30と開口形成面10aとが接合される部分を接合部30aと記す。
【0051】
図4(a)に示すように、供給インク室300aは、開口形成面10aに形成されている開口部1411を介してインクチャネル15に連通している。これにより、供給インク室300a内のインクが複数のインクチャネル15に共通に供給され、ノズル111から吐出される。
【0052】
また、図4(b)に示すように、一対の排出インク室300bは、それぞれ開口形成面10aに形成されている開口部1421を介してインク排出流路17に連通している。これにより、インクチャネル15からインク排出流路17を介して排出されたインクが排出インク室300bに流入して貯留される。
【0053】
図5は、隔壁30の構成を示す図である。
図5(a)は、Y方向に垂直な隔壁30の断面を示す図であり、図4(a)及び図4(b)の部分拡大図に相当する。
図5(b)は、隔壁30を通る位置における、インク貯留部3のX方向に垂直な断面を示す図である。図5(b)では、インク室300の内壁面の位置が破線で示されている。したがって、図5(b)において破線で囲まれた範囲が、隔壁30に相当する。
【0054】
隔壁30は、少なくとも一部が弾性体31からなる。図5(a)及び図5(b)に示す本実施形態の隔壁30は、インク貯留部3の外壁39から延設されたリブ状の基部32と、基部32の先端に設けられた弾性体31とからなる。すなわち、隔壁30のうち先端の弾性体31が開口形成面10aに接合されている。弾性体31は、直方体形状を有しており、開口形成面10aとの接合面は矩形となっている。本実施形態では、基部32が、インク貯留部3のうち弾性体31に隣り合う「隣接部材」に対応する。換言すれば、隔壁30の一部(基部32)が隣接部材となっている。
基部32は、外壁39と一体的に整形されており、外壁39と同一の材質からなる。したがって、基部32は、弾性体31より高い剛性を有している。ここで、一体的に成型されている、とは、同一工程(例えば、樹脂を金型に入れて固化させる射出成型工程)で一度に成型されていることをいう。また、剛性が高いとは、ヤング率が大きいことをいう。
【0055】
弾性体31としては、特には限られないが、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などを用いることができる。また、弾性体31としては、ヤング率が1MPa以上100MPa以下である材質のものを用いるのが好ましい。
【0056】
弾性体31は、開口形成面10aに垂直な方向(Z方向)に圧縮された状態で設けられている。また、弾性体31は、開口形成面10aに平行な面内(XY平面内)における隔壁30の長手方向(すなわち、Y方向)に圧縮された状態で設けられている。
【0057】
図6は、弾性体31のZ方向についての圧縮状態を説明する図である。
図6に示すように、弾性体31は、非圧縮時よりもZ方向の長さ(高さ)が小さくなるようにZ方向に圧縮された状態で組み込まれている。このように圧縮されることで、熱変形などにより基部32と開口形成面10aとの距離が増大した場合に、弾性体31がその分伸長することで熱変形を吸収し、隔壁30が開口形成面10aから剥離するのを抑制することができる。これにより、供給インク室300aと排出インク室300bとの間でインクが漏れるのを抑制することができる。
弾性体31のZ方向についての圧縮率は、0%より大きく30%以下とすることができる。換言すれば、Z方向についての長さが非圧縮時の70%以上100%未満となるように圧縮された状態とすることができる。
【0058】
また、弾性体31がZ方向について圧縮された状態とすることで、弾性体31が常に開口形成面10aに対して弾性力を及ぼして付勢した状態となるため、弾性体31と開口形成面10aとを、接着剤を用いずに接合することが可能となる。なお、弾性体31を圧縮した上で、さらに接着剤を用いて弾性体31と開口形成面10aとを接着しても良い。
同様に、弾性体31が常に基部32に対して弾性力を及ぼして付勢した状態となるため、弾性体31と基部32とを、接着剤を用いずに接合することが可能となる。なお、弾性体31を圧縮した上で、さらに接着剤を用いて弾性体31と基部32とを接着しても良い。
【0059】
図7は、弾性体31のY方向についての圧縮状態を説明する図である。
図7に示すように、弾性体31は、非圧縮時よりもY方向の長さが小さくなるようにY方向に圧縮された状態で組み込まれている。具体的には、弾性体31のY方向についての圧縮率は、0%より大きく5%以下とすることができる。換言すれば、Y方向についての長さが非圧縮時の95%以上100%未満となるように圧縮された状態とすることができる。このように圧縮されることで、弾性体31が、インク貯留部3の外壁39のうち弾性体31のY方向についての両端に接する部分(側壁)に対して弾性力を及ぼして付勢した状態となるため、弾性体31と側壁との間からインクが漏れるのを抑制することができる。
このような構成により、弾性体31がY方向に接する外壁39に対して弾性力を及ぼして付勢した状態となるため、弾性体31と外壁39とを、接着剤を用いずに接合することが可能となる。なお、弾性体31を圧縮した上で、さらに接着剤を用いて弾性体31と外壁39とを接着しても良い。
【0060】
なお、弾性体31は、X方向及びY方向のいずれか一方にのみ圧縮されていても良い。また、X方向についての両端、及びY方向についての両端における密閉性が確保される場合には、弾性体31を圧縮させずに組み込んでも良い。
【0061】
(変形例)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
図8は、変形例に係る隔壁30のY方向に垂直な断面を示す図である。
図8(a)に示すように、弾性体31の位置は、開口形成面10aと接する位置に限られず、Z方向について基部32の途中に挟まれた状態で弾性体31が設けられていても良い。
また、図8(b)に示すように、別個の2以上の弾性体31が隔壁30に含まれていても良い。このうち一の弾性体31が開口形成面10aに接合されていても良い。
【0062】
以上のように、本実施形態のインクジェットヘッド1は、インクを吐出するノズル111と、ノズル111に連通するインク流路としてのインク吐出流路16及びインク排出流路17とを有し、インク吐出流路16の開口部1411及びインク排出流路17の開口部1421(複数の開口部)が開口形成面10aに形成されているヘッドチップ10と、内壁面の一部が開口形成面10aからなるインク室300を有し、インク室300が開口形成面10aの開口部1411を介してインク吐出流路16に、また開口部1421を介してインク排出流路17に連通しているインク貯留部3と、を備え、インク貯留部3は、インク室300を供給インク室300a及び排出インク室300bに仕切る、開口形成面10aに端面が接合された隔壁30を有し、隔壁30の少なくとも一部が弾性体31からなる。
このような構成によれば、隔壁30が開口形成面10aから剥離する不具合の発生を抑制することができる。すなわち、供給インク室300aと排出インク室300bとの圧力差により隔壁30がX方向に押圧された場合に弾性体31が変形することで、接合部30aに掛かる力を緩和させて、隔壁30を開口形成面10aから剥離しにくくすることができる。また、隔壁30と開口形成面10aとの位置関係が熱変形により変化した場合に(すなわち、インク貯留部3及び/又はヘッドチップ10が熱により変形した場合に)、弾性体31がこれに追従して変形することで、熱変形により接合部30aに掛かる力を緩和させて、隔壁30を剥離しにくくすることができる。これにより、隔壁30の剥離を抑制しつつ必要な隔壁30の強度を確保することができる。
【0063】
また、隔壁30のうち、少なくとも開口形成面10aに接する端部が弾性体31からなる。これにより、隔壁30の先端(弾性体31)と開口形成面10aとの密着性を向上させることができるため、接着剤を用いずに隔壁30を開口形成面10aに接合させることができる。
【0064】
また、弾性体31の開口形成面10aとの接合面は矩形である。これにより、隔壁30と開口形成面10aとの接合面積を最も大きく確保することができる。
【0065】
また、弾性体31のヤング率を1MPa以上100MPa以下とすることで、隔壁30の先端(弾性体31)と開口形成面10aとの密着性を必要かつ十分な範囲で確保することができる。また、周辺の部材に与える応力負荷を抑えつつ、インク貯留部3及び/又はヘッドチップ10の熱変形に対して、隔壁30を追従変形しやすくすることができる。
【0066】
また、弾性体31は、開口形成面10aと垂直な方向に圧縮された状態で設けられている。これにより、弾性体31が常に開口形成面10aに対して弾性力を及ぼして付勢した状態となるため、弾性体31と開口形成面10aとの密着性をさらに向上させることができる。この結果、弾性体31と開口形成面10aとを、接着剤を用いずに接合することが可能となる。また、隔壁30が供給インク室300a及び排出インク室300bのインクの圧力差により押圧された場合に、弾性体31の開口形成面10aに対する接合位置がずれたり、剥離したりする不具合の発生を抑制することができる。また、隔壁30と開口形成面10aとが離隔する方向にインク貯留部3及び/又はヘッドチップ10が熱変形した場合に、弾性体31が伸長することで当該熱変形を吸収できるため、弾性体31と開口形成面10aとの間に隙間が生じる不具合の発生を抑制することができる。
【0067】
また、弾性体31は、開口形成面10aと垂直な方向についての長さが非圧縮時の70%以上100%未満となるように圧縮された状態で設けられている。このような範囲で圧縮することで、弾性体31が開口形成面10aに対して十分な弾性力を及ぼす状態とすることができるとともに、弾性力が強すぎてインク貯留部3やヘッドチップ10が破損する不具合の発生を抑制することができる。
【0068】
また、弾性体31は、開口形成面10aに平行な面内における隔壁30の長手方向(Y方向)に圧縮された状態で設けられている。これにより、弾性体31が、インク貯留部3の外壁39のうち弾性体31のY方向についての両端に接する部分(側壁)に対して弾性力を及ぼして付勢した状態となるため、弾性体31と外壁39との間からインクが漏れるのを抑制することができる。
【0069】
また、弾性体31を、Y方向についての長さが非圧縮時の95%以上100%未満となるように圧縮された状態で設けることで、弾性体31の撓みを抑制しつつ、外壁39(側壁)との間からのインクの漏洩を抑制するのに十分な弾性力を生じさせることができる。
【0070】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、上記インクジェットヘッドを備えるため、供給インク室300aと排出インク室300bとの間のインクの漏洩に起因する、インク吐出不良や画質不良といった不具合の発生を抑制することができる。
【0071】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、隔壁30の構成が第1の実施形態と異なる。
図9は、第2の実施形態の隔壁30のY方向に垂直な断面を示す図である。
本実施形態の隔壁30は、弾性体31が、弾性を有する接着剤からなる。このような接着剤としては、液状で塗布し、紫外線や熱などのエネルギーを付与することで硬化するものを用いることができる。図8に示すように、弾性体31をなす接着剤は、液状で塗布されたときに開口形成面10a上で濡れ広がるため、開口形成面10aに向かって裾が広がった形状を有している。
弾性体31をなす接着剤としては、硬化後のヤング率が1MP以上100MPa以下となるものを用いることができる。本実施形態では、弾性体31としてフッ素樹脂が用いられている。
【0072】
以上のように、第2の実施形態のインクジェットヘッド1では、隔壁30は、弾性体31と、弾性体31より剛性の高い基部32と、を有し、弾性体31は、基部32と開口形成面10aとを接着している接着剤である。これにより、隔壁30と開口形成面10aとの密着性を向上させることができる。
【0073】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、隔壁30の構成が第1の実施形態と異なる。
図10は、第3の実施形態の隔壁30のY方向に垂直な断面を示す図である。
本実施形態の隔壁30は、弾性体31と基部32との間に接着層33を有する。接着層33は、弾性体31と基部32とを接着している。
接着層33の硬化後の硬度(ヤング率)は任意であり、弾性体31の硬度より高くても良い。
【0074】
以上のように、第3の実施形態のインクジェットヘッド1では、インク貯留部3は、弾性体31と、インク貯留部3のうち弾性体31に隣り合う隣接部材としての基部32とを接着している接着層33を有する。このような構成では、弾性体31の高さ(圧縮率)を調整した後に、弾性体31と基部32との間の隙間に接着剤を供給することで接着層33を形成できるため、弾性体31の高さによらず、弾性体31と基部32との間の隙間を接着層33により埋めることができる。よって、隔壁30の高さを一定に保ちつつ、弾性体31を所望の高さに調整することができる。
【0075】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、隔壁30の構成が第1の実施形態と異なる。
図11は、第4の実施形態の隔壁30を示す図である。
図11の上図は、Y方向に垂直な断面を示す図である。この上図に示すように、本実施形態の隔壁30は、弾性体31の上面に、弾性体31より剛性の高い板状部材34が配置されている。板状部材34としては、SUS316等のステンレスや、各種金属を用いることができる。
弾性体31は、板状部材34により下方に押圧されて圧縮された状態で設けられている。これにより、基部32の下面と板状部材34との間には、隙間が形成されている。
弾性体31を均一に押圧するために、板状部材34は、Y方向(すなわち、開口形成面10aに平行な面内における隔壁30の長手方向)についての長さが、弾性体31の長さの1/2以上であり、X方向(すなわち、上記面内における隔壁30のY方向に垂直な厚さ方向)についての長さが、弾性体31の長さの1/2以上であることが好ましい。
【0076】
また、外壁39の外面から基部32の下面に亘って、外壁39及び基部32をZ方向に貫通する貫通孔32aが設けられている。
図11の下図は、+Z方向から見たときの貫通孔32aと弾性体31との位置関係を示したものであり、接着層33及び板状部材34を透視して示した平面図である。図11の下図のC-C線における断面図が、図11の上図に相当する。図11の下図に示すように、貫通孔32aは、+Z方向から見て、弾性体31が配置されている領域内に設けられている。
【0077】
基部32の下面と板状部材34との隙間には、接着層33が充填されている。これにより、基部32と板状部材34とが接着されている。また、図11のC-C線を通る断面の貫通孔32aには、接着層33が充填されている。
【0078】
図12及び図13は、図11の隔壁30を有するインクジェットヘッド1の製造方法を説明する図である。
図11の隔壁30を有するインクジェットヘッド1の製造方法では、まず、図12(a)のように、Y方向に異なる3か所に、外壁39及び基部32をZ方向に貫通する貫通孔32aが設けられたインク貯留部3を製造する。
【0079】
次に、図12(b)に示すように、-Z方向側から、板状部材34をインク貯留部3に対して位置決めして配置し、さらに、板状部材34上に弾性体31を位置決めして配置する。続いて、図12(c)に示すように、開口形成面10aを有する部材をインク貯留部3及び弾性体31の下面に取り付ける。図12(c)では、開口形成面10aを有する部材として配線基板14が描かれているが、ここでは、配線基板14を有するヘッドチップ10全体を取り付ければ良い。
図12(b)及び図12(c)の工程は、実際には、インク貯留部3を、図と上下逆にした状態で行われる。
【0080】
次に、図13(a)に示すように、3つの貫通孔32aのうち中央を除いた両端の貫通孔32aに棒状の押圧部材40(ピン)を通し、押圧部材40により板状部材34を下方に(-Z方向に)所定の圧力で押圧する。これにより、弾性体31がZ方向に圧縮され、基部32と板状部材34との間に隙間が生じる。
【0081】
次に、図13(b)に示すように、中央の貫通孔32aから液状の接着層33を流し込む。接着層33は、中央の貫通孔32aを通って、基部32と板状部材34との隙間に濡れ広がり、当該隙間に充填される。その後、所定の方法で接着層33を硬化させる。
【0082】
最後に、図13(c)に示すように、押圧部材40を貫通孔32aから除去して、インクジェットヘッド1が完成する。
【0083】
(変形例1)
次に、第4の実施形態の変形例1について説明する。
図14は、変形例1に係る隔壁30の、X方向に垂直な断面を示す図である。
図14に示すように、弾性体31を長手方向(Y方向)に圧縮せずに組み込み、Y方向についての弾性体31の端部と、当該端部にY方向に隣り合う外壁39(側壁)とを接着層33により接着しても良い。本変形例1では、外壁39のうち弾性体31に隣り合う側壁が、インク貯留部3のうち弾性体31に隣り合う隣接部材に相当する。
【0084】
(変形例2)
次に、第4の実施形態の変形例2について説明する。
図15は、変形例2に係る隔壁30の、Y方向に垂直な断面を示す図である。
変形例2の隔壁は、図11に示す隔壁30において板状部材34を省略したものに相当する。弾性体31を押圧部材40により上方から直接押圧したときに、弾性体31の変形量の位置によるばらつきが十分小さい場合には、このように板状部材34を省略しても良い。
図15の隔壁30を有するインクジェットヘッド1の製造方法は、板状部材34を配置しない点を除き、図13、14に示した製造方法と同様である。
【0085】
以上のように、第4の実施形態のインクジェットヘッド1では、インク貯留部3のうち弾性体31に隣り合う隣接部材としての基部32には、弾性体31を押圧するための押圧部材40が通過可能な貫通孔32aが設けられている。これにより、押圧部材40により弾性体31を押圧することができるため、簡易に弾性体31を押圧した状態で組み込むことができる。また、押圧部材40による圧力を調整することで、容易に弾性体31の圧縮率を調整することができる。
【0086】
また、貫通孔32aは、開口形成面10aに垂直な方向から見て、弾性体31が配置されている領域内に設けられている。これにより、貫通孔32aに供給された接着層33が弾性体31の側面から隔壁30の外部に流れてしまう不具合の発生を抑制することができる。
【0087】
また、インク貯留部3は、貫通孔32aが設けられている基部32と、弾性体31との間に設けられた、弾性体31より剛性の高い板状部材34を有する。これによれば、押圧部材40により板状部材34を押圧することで、板状部材34の面により弾性体31を均一に押圧して圧縮することができる。
【0088】
また、板状部材34は金属からなる。このような板状部材34は、剛性が高いため、より効果的に弾性体31を均一に押圧して圧縮することができる。また、板状部材34がインクにより浸食(腐食)される不具合の発生を抑制することができる。
【0089】
また、開口形成面10aに平行な面内における隔壁30の長手方向(Y方向)について、板状部材34の長さは弾性体31の長さの1/2以上であり、上記面内における隔壁30の冤罪方向に垂直な厚さ方向(X方向)について、板状部材34の長さは弾性体31の長さの1/2以上である。このような大きさの板状部材34を用いることで、板状部材34の面により弾性体31を効果的に均一に押圧して圧縮することができる。
【0090】
また、変形例1では、接着層33は、開口形成面10aに平行な面内における隔壁30の長手方向(Y方向)についての弾性体31の端部と、当該端部にY方向に隣り合う隣接部材としての外壁39とを接着している。これにより、弾性体31をY方向に圧縮させずに組み込む構成において、弾性体31の側面からインクが漏れる不具合の発生を抑制することができる。また、弾性体31をY方向に圧縮させて組み込む構成においても、インク貯留部3が膨張した場合に弾性体31の側面からインクが漏れる不具合の発生を抑制することができる。
【0091】
また、第4の実施形態のインクジェットヘッド1の製造方法は、インク貯留部3の所定の位置に、弾性体31より剛性の高い板状部材34を配置し、板状部材34上の所定の位置に弾性体31を配置する工程と、インク貯留部3に、開口形成面10aを有する部材を取り付ける工程と、インク貯留部3のうち板状部材34を挟んで弾性体31に隣り合う隣接部材(基部32)に設けられた複数の貫通孔32aのうち一部の貫通孔32aに押圧部材40を通し、押圧部材40により板状部材34及び弾性体31を開口形成面10aに対して押圧する工程と、複数の貫通孔32aのうち押圧部材40を通していない貫通孔32aから接着層33を供給して、隣接部材及び板状部材34を接着する工程と、を含む。このような製造方法によれば、弾性体31を均一に、かつ所望の圧縮率で圧縮した状態で隔壁30に組み込むことができる。これにより、インク室300を確実に仕切り、インク貯留部3及び/又はヘッドチップ10の熱変形により柔軟に追従する隔壁30を形成することができる。
【0092】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、隔壁30の構成が第1の実施形態と異なる。
図16は、第5の実施形態の隔壁30を示す図である。図16(a)は、隔壁30のY方向に垂直な断面を示す図であり、図16(b)は、隔壁30を通る位置における、インク貯留部3のX方向に垂直な断面を示す図である。
【0093】
本実施形態の隔壁30は、全体が弾性体31からなる。図16に示すように、外壁39のうち隔壁30(弾性体31)が取り付けられる位置に溝部39aが形成されており、板状の弾性体31を溝部39a内に埋め込むことで隔壁30が形成される。このとき、弾性体31をY方向に圧縮して溝部39aに埋め込んでも良い。また、弾性体31と外壁39との間を接着剤により接着しても良い。外壁39の溝部39aに加えて(又は溝部39aに代えて)、開口形成面10a(配線基板14)に溝部を設けても良い。また、外壁39のうち弾性体31の側面が取り付けられる位置にも溝部を設けても良い。また、溝部を設けずに隔壁30(弾性体31)を外壁39に固着させても良い。
また、第5の実施形態は、上記第4の実施形態と組み合わされても良い。すなわち、外壁39のうち溝部39aの位置に貫通孔を設けて、貫通孔を通して押圧部材40により弾性体31をZ方向に圧縮した状態で弾性体31と外壁39とを接着しても良い。この場合、弾性体31の上面に板状部材34を配置することで、弾性体31をより均一に押圧することができる。
本実施形態では、外壁39が、インク貯留部3のうち弾性体31に隣り合う「隣接部材」を構成する。
【0094】
以上のように、第5の実施形態のインクジェットヘッド1は、隔壁30が弾性体31からなる。これにより、インク貯留部3及び/又はヘッドチップ10が変形した場合に、隔壁30をより柔軟に追従して変形させることができる。また、隔壁30を厚くしても、インク貯留部3及び/又はヘッドチップ10の変形への追従性を確保することができるため、開口形成面10aに掛かる荷重を抑えて、ヘッドチップ10の破損や変形を抑制することができる。
【0095】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。
上記各実施形態では、インク貯留部3の外壁39や、外壁39から延設された基部32に対して弾性体31を取り付けることで、弾性体31を有する隔壁30が形成されていたが、本実施形態では、インク貯留部3の構成部材のうち弾性体31に隣り合う隣接部材と、弾性体31とが、一体的に成型されている。すなわち、隣接部材と弾性体とが同一工程で成型されることで、一体的な部材として形成されている。例えば、樹脂を金型に入れて固化させる射出成型工程において、インク貯留部3の外壁39及び基部32に対応する領域に、硬化後に剛性の高い樹脂となる材料を供給し、弾性体31に対応する領域に、硬化後に弾性を有する材料を供給した上で、これらの材料を同時に硬化させることで、本実施形態のインク貯留部3を製造することができる。
【0096】
以上のように、第6の実施形態のインクジェットヘッド1では、弾性体31と、インク貯留部3のうち弾性体31に隣り合う隣接部材とが一体的に成形されている。これにより、弾性体31と隣接部材との間でインクが漏れる不具合の発生を確実に抑えることができる。また、弾性体31を含む隔壁30をより精度の高い位置及び形状に形成することができる。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、隔壁30によりインク室を複数の副インク室に仕切り、一の副インク室を供給インク室300aとして用い、他の副インク室を排出インク室300bとして用いる例を挙げて説明したが、複数の副インク室の構成及び用途はこれに限られない。例えば、図17に示すように、複数の副インク室300c、300dの各々を別個のインクチャネル15に連通させ、副インク室300c、300dにそれぞれ異なるインクを貯留することで、一のインクジェットヘッド1が異なる複数の色のインクをノズル111から吐出する構成としても良い。このような構成では、インクチャネル15の隣り合う開口部1411の間で隔壁30を開口形成面10aに接合する必要があることから、隔壁30の厚さを確保しにくいが、少なくとも一部が弾性体31からなる隔壁30を用いることで、隔壁の剥離を抑制しつつ必要な隔壁の強度を確保することができる。
【0098】
また、上記実施形態では、インク貯留部3の外壁39と隔壁30の基部32とが一体的に整形されている例を用いて説明したが、基部32が、外壁39に対して接合されている構成であっても良い。この場合、基部32及び外壁39の材質が互いに異なっていても良い。
【0099】
また、ヘッドチップ10の構成は、上記実施形態に記載したものに限られず、ノズルと、ノズルに連通するインク流路とを有し、一又は二以上のインク流路の複数の開口部が所定の開口形成面に形成されている構成であれば、任意のヘッドチップを用いることができる。例えば、インク流路の途中にある圧力室の壁面に固着された圧電素子を変形させることで圧力室内のインクの圧力を変動させてインクを吐出させる、ベントモードのヘッドチップを有するインクジェットヘッドに対して本発明を適用しても良い。
【0100】
また、上記実施形態では、シングルパス形式のインクジェット記録装置100を例に挙げて説明したが、インクジェットヘッドを走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用しても良い。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0102】
1 インクジェットヘッド
3 インク貯留部
5 保持部材
10 ヘッドチップ
10a 開口形成面
11 ノズル基板
12 流路基板
13 圧力室基板
14 配線基板
15 インクチャネル
16 インク吐出流路
17 インク排出流路
30 隔壁
30a 接合部
31 弾性体
32 基部(隣接部材)
32a 貫通孔
33 接着層
34 板状部材
39 外壁(隣接部材)
39a 溝部
40 押圧部材
100 インクジェット記録装置
103 ヘッドユニット
111 ノズル
121 貫通流路
122 個別排出流路
131 圧力室
132 共通排出流路
133 垂直排出流路
141 インク供給孔
142 排出孔
143 配線
300 インク室
300a 供給インク室(副インク室)
300b 排出インク室(副インク室)
1411、1421 開口部
M 記録媒体
図1
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