(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ピストン式圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 27/18 20060101AFI20220614BHJP
F04B 27/12 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
F04B27/18 Z
F04B27/12 H
(21)【出願番号】P 2019064500
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】西井 圭
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】金井 明信
(72)【発明者】
【氏名】井上 宜典
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 洋介
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-306680(JP,A)
【文献】特開平05-312145(JP,A)
【文献】特開平06-117363(JP,A)
【文献】特開平07-119631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F04B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックを有し、吐出室と、斜板室と、軸孔とが形成されたハウジングと、
前記軸孔内で回転可能に支承された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能であり、前記駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である固定斜板と、
前記シリンダボア内に圧縮室を形成し、前記固定斜板に連結されるピストンと、
前記圧縮室内の冷媒を前記吐出室に吐出させる吐出弁と、
前記駆動軸に設けられて前記軸孔内に位置し、前記駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて駆動軸心方向に前記駆動軸に対して移動可能である移動体と、
前記制御圧力を制御する制御弁とを備え、
前記シリンダブロックには、前記圧縮室に連通する第1連通路が形成され、
前記移動体には、前記移動体の周方向に延び、前記駆動軸の回転に伴い間欠的に前記第1連通路と連通することにより、前記第1連通路を通じて前記圧縮室に冷媒を吸入させる第2連通路が形成され、
前記移動体の前記駆動軸心方向の位置に応じて、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量が変化するピストン式圧縮機であって、
前記第2連通路は、前記移動体の回転方向の先行側に位置する先端縁と、前記先端縁よりも前記回転方向の後行側に位置する後端縁とを有し、
前記先端縁は、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量が最大であるときに前記第1連通路と対向する第1縁部と、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量が最大よりも少ないときに前記第1連通路と対向する第2縁部とを有し、
前記第1縁部は、前記第2縁部よりも前記回転方向の後行側に位置していることを特徴とするピストン式圧縮機。
【請求項2】
前記駆動軸には、前記移動体を前記駆動軸心方向に移動可能に配置する案内窓が形成され、
前記移動体は、前記第2連通路が形成されるとともに、前記案内窓に配置される第1移動体と、前記駆動軸内に配置される第2移動体とを有し、
前記第1移動体によって、前記第1連通路と前記第2連通路とが連通され、
前記駆動軸によって、前記第1連通路と前記第2連通路とが非連通とされる請求項1記載のピストン式圧縮機。
【請求項3】
前記第1縁部と前記第2縁部とは、前記回転方向に徐々に変化しつつ連続している請求項1又は2記載のピストン式圧縮機。
【請求項4】
前記第1縁部と前記第2縁部とは、段差を有して連続している請求項1又は2記載のピストン式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピストン式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のピストン式圧縮機(以下、単に圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機は、ハウジングと、駆動軸と、固定斜板と、複数のピストンと、吐出弁と、移動体と、制御弁とを備えている。
【0003】
ハウジングは、シリンダブロックを有している。シリンダブロックには、複数のシリンダボアが形成されている他、圧縮室に連通する第1連通路が形成されている。また、ハウジングには、吐出室と、斜板室と、軸孔と、制御圧室とが形成されている。斜板室には圧縮機の外部から吸入圧力の冷媒が吸入される。これにより、斜板室は、吸入圧雰囲気となっており、吐出室よりも低圧となっている。また、斜板室は軸孔と連通している。制御圧室は制御圧力とされている。
【0004】
駆動軸は、軸孔内で回転可能に支承されている。固定斜板は、駆動軸の回転によって斜板室内で回転可能であり、駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である。ピストンは、シリンダボア内に圧縮室を形成し、固定斜板に連結されている。圧縮室と吐出室との間には、圧縮室内の冷媒を吐出室に吐出させるリード弁式の吐出弁が設けられている。
【0005】
移動体は、駆動軸を挿通させている。これにより、移動体は駆動軸に設けられており、軸孔内に配置されている。そして、移動体は、軸孔と制御圧室とを区画している。移動体は、軸孔内で駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて駆動軸の駆動軸心方向に駆動軸に対して移動可能となっている。また、移動体の外周面には、第2連通路が形成されている。第2連通路は、移動体の周方向に延びており、駆動軸の回転に伴って、間欠的に第1連通路と連通する。制御弁は、制御圧力を調整する。
【0006】
この圧縮機では、駆動軸が回転し、固定斜板が回転することにより、ピストンがシリンダボア内を上死点と下死点との間で往復動する。ここで、上死点にあるピストンが下死点に向かって移動を開始し始めることにより、圧縮室は、内部に残留する冷媒が再膨張する再膨張行程となる。そして、第1連通路と第2連通路とが連通されることにより、圧縮室は、再膨張行程から吸入行程に移行する。この際、第2連通路は、第1連通路を通じて軸孔内、すなわち斜板室内の冷媒を圧縮室に吸入させる。そして、圧縮室は、ピストンが上死点から下死点に向かって移動する間、吸入した冷媒を圧縮する圧縮行程となり、さらに、圧縮した冷媒を吐出室に吐出する吐出行程に移行する。
【0007】
そして、この圧縮機では、駆動軸に対する移動体の駆動軸心方向の位置に応じて、駆動軸の1回転当たりで第1連通路と第2連通路とが連通する駆動軸心周りの連通角度が変化する。これにより、この圧縮機では、圧縮室に吸入される冷媒の流量を変化させることで、圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量を変化させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量が最大であるとき(以下、最大流量時という)には、圧縮室から吐出室に吐出される冷媒が高圧となり、また、圧縮室内に残留する冷媒も高圧となる。このため、再膨張行程によって、圧縮室内に残留する冷媒が吸入圧雰囲気よりも低圧となる前に、第1連通路と第2連通路とが連通すれば、圧縮室内に残留する冷媒が第1連通路から第2連通路、ひいては、吸入圧雰囲気側に逆流してしまう。
【0010】
ここで、圧縮機の作動時に上死点側から下死点側に向かって移動するピストンは、圧縮室内の圧力を動力の一部に利用する。このため、圧縮室内に残留する冷媒が第2連通路に逆流し、圧縮室内が急激に減圧されると、ピストンが上死点側から下死点側に向かって移動し難くなる。このため、ピストンを移動させるために、駆動軸の回転駆動力を大きくする必要がある。また、圧縮室内に残留する冷媒が吸入圧雰囲気側に逆流することにより、吸入圧雰囲気側の圧力変動が大きくなるため、吸入脈動も大きくなる。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、作動時における駆動軸の回転駆動力の増大を抑制するとともに、吸入脈動を抑制可能なピストン式圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のピストン式圧縮機は、複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックを有し、吐出室と、斜板室と、軸孔とが形成されたハウジングと、
前記軸孔内で回転可能に支承された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能であり、前記駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である固定斜板と、
前記シリンダボア内に圧縮室を形成し、前記固定斜板に連結されるピストンと、
前記圧縮室内の冷媒を前記吐出室に吐出させる吐出弁と、
前記駆動軸に設けられて前記軸孔内に位置し、前記駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて駆動軸心方向に前記駆動軸に対して移動可能である移動体と、
前記制御圧力を制御する制御弁とを備え、
前記シリンダブロックには、前記圧縮室に連通する第1連通路が形成され、
前記移動体には、前記移動体の周方向に延び、前記駆動軸の回転に伴い間欠的に前記第1連通路と連通することにより、前記第1連通路を通じて前記圧縮室に冷媒を吸入させる第2連通路が形成され、
前記移動体の前記駆動軸心方向の位置に応じて、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量が変化するピストン式圧縮機であって、
前記第2連通路は、前記移動体の回転方向の先行側に位置する先端縁と、前記先端縁よりも前記回転方向の後行側に位置する後端縁とを有し、
前記先端縁は、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量が最大であるときに前記第1連通路と対向する第1縁部と、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量が最大よりも少ないときに前記第1連通路と対向する第2縁部とを有し、
前記第1縁部は、前記第2縁部よりも前記回転方向の後行側に位置していることを特徴とする。
【0013】
本発明のピストン式圧縮機は、第2連通路の先端縁が第1縁部と第2縁部とを有しており、第1縁部は、第2縁部よりも駆動軸の回転方向の後行側に位置している。このため、最大流量時は、最大流量時よりも圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量が少ないときに比べて、第1連通路と第2連通路とが連通するタイミングが遅くなることで、圧縮室が再膨張行程から吸入行程に移行するタイミングが遅くなる。
【0014】
このため、この圧縮機では、最大流量時に圧縮室内に残留する冷媒を再膨張行程で十分に減圧できるため、第1連通路と第2連通路とが連通した際に、圧縮室内に残留する冷媒が第2連通路に逆流することを抑制できる。これにより、第1連通路と第2連通路とが連通しても圧縮室内の圧力が急激に低下し難いことから、最大流量時にピストンが移動し易く、駆動軸の回転駆動力の増大を抑制できる。また、圧縮室内に残留する冷媒が第2連通路に逆流することが抑制されるため、最大流量時における吸入脈動を抑制できる。
【0015】
そして、この圧縮機では、最大流量時よりも圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量が少ないときは、最大流量時に比べて、第1連通路と第2連通路とが連通するタイミングが早くなることで、圧縮室が再膨張行程から吸入行程に移行するタイミングが早くなる。
【0016】
このため、この圧縮機では、最大流量時よりも圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量が少ないときに、再膨張行程によって、圧縮室内が吸入圧力よりも低圧となることを防止できる。この結果、圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量が最大流量時よりも少ない状態においても、ピストンが移動し易く、駆動軸の回転駆動力の増大を抑制できる。また、圧縮室内が吸入圧力よりも低圧となることを防止することにより、この圧縮機では、最大流量時よりも圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量が少ないときにおける吸入脈動も抑制できる。
【0017】
したがって、本発明のピストン式圧縮機によれば、作動時における駆動軸の回転駆動力の増大を抑制できるとともに、吸入脈動を抑制できる。
【0018】
駆動軸には、移動体を駆動軸心方向に移動可能に配置する案内窓が形成され得る。また、移動体は、第2連通路が形成されるとともに、案内窓に配置される第1移動体と、動軸内に配置される第2移動体とを有し得る。さらに、第1移動体によって、第1連通路と第2連通路とが連通され得る。そして、駆動軸によって、第1連通路と第2連通路とが非連通とされることが好ましい。
【0019】
この圧縮機では、圧縮行程や吐出行程にある圧縮室と連通する第1連通路を通じ、圧縮行程で圧縮された高圧の冷媒が第2連通路に向かって流通する。ここで、この圧縮機では、駆動軸によって第1連通路と第2連通路とが非連通とされるため、圧縮室内で圧縮された高圧の冷媒による荷重(以下、圧縮荷重という。)は、第1連通路を通じて駆動軸に作用する。これにより、駆動軸が圧縮荷重を受け止めることで、移動体には、圧縮荷重が作用し難い。このため、移動体が駆動軸心方向に移動し易いことから、この圧縮機では、制御性を高くできる。また、この圧縮機では、移動体を駆動軸心方向に移動させるに当たり、過度に大きな推力が不要であり、移動体を大型化して制御圧力に対する受圧面積を大きく確保する必要がない。このため、この圧縮機では小型化も可能となる。
【0020】
第1縁部と第2縁部とは、回転方向に徐々に変化しつつ連続していることが好ましい。また、第1縁部と第2縁部とは、段差を有して連続していることも好ましい。これらの場合には、先端縁を含め、第2連通路の設計の自由度を高くしつつ、最大流量時における第1連通路と第2連通路との連通タイミングと、最大流量時よりも圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量が少ないときにおける第1連通路と第2連通路との連通タイミングとを好適に設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のピストン式圧縮機によれば、作動時における駆動軸の回転駆動力の増大を抑制できるとともに、吸入脈動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最少流量時における断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最大流量時における断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、駆動軸及び移動体等を示す分解図である。
【
図4】
図4は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、キャップを示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、
図4のC-C断面を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、第1移動体を圧縮機の前方側から見た拡大正面図である。
【
図7】
図7は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、第2移動体を圧縮機の後方側から見た拡大後面図である。
【
図8】
図8は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最少流量時における駆動軸及び移動体等を示す要部拡大断面図である。
【
図9】
図9は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最大流量時における駆動軸及び移動体等を示す要部拡大断面図である。
【
図10】
図10は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、
図1のA-A断面を示す要部拡大断面図である。
【
図11】
図11は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、
図1に示す位置よりも移動体が後方に移動した状態を示す
図10と同様の要部拡大断面図である。
【
図12】
図12は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、
図2のB-B断面を示す要部拡大断面図である。
【
図13】
図13は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最少流量時における第1移動体と第1連通路との位置関係を示す模式図である。
【
図14】
図14は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、中間流量時における第1移動体と第1連通路との位置関係を示す模式図である。
【
図15】
図15は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最大流量時における第1移動体と第1連通路との位置関係を示す模式図である。
【
図16】
図16は、実施例2のピストン式圧縮機に係り、第1移動体を示す側面図である。
【
図17】
図17は、実施例3のピストン式圧縮機に係り、第1移動体を示す側面図である。
【
図18】
図18は、実施例4のピストン式圧縮機に係り、第1移動体を示す側面図である。
【
図19】
図19は、実施例4のピストン式圧縮機に係り、
図18のD-D断面を示す要部拡大断面図である。
【
図20】
図20は、実施例5のピストン式圧縮機に係り、第1移動体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例1~5を図面を参照しつつ説明する。これらの圧縮機は、片頭ピストン式圧縮機である。これらの圧縮機は、車両に搭載されており、空調装置の冷凍回路を構成している。
【0024】
(実施例1)
図1及び
図2に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング1と、駆動軸3と、固定斜板5と、複数のピストン7と、弁形成プレート9と、移動体10と、制御弁13とを備えている。弁形成プレート9は、本発明の「吐出弁」の一例である。
【0025】
ハウジング1は、フロントハウジング17と、リヤハウジング19と、シリンダブロック21とを有している。本実施例では、フロントハウジング17が位置する側を圧縮機の前方側とし、リヤハウジング19が位置する側を圧縮機の後方側として、圧縮機の前後方向を規定している。また、
図1及び
図2の紙面の上方を圧縮機の上方側とし、紙面の下方を圧縮機の下方側として、圧縮機の上下方向を規定している。そして、
図3以降では、
図1及び
図2に対応させて前後方向及び上下方向を表示する。なお、実施例における前後方向等は一例であり、本発明の圧縮機は、搭載される車両に対応して、その姿勢が適宜変更される。
【0026】
フロントハウジング17は、径方向に延びる前壁17aと、前壁17aと一体をなして、前壁17aから駆動軸3の駆動軸心O方向で後方に延びる周壁17bとを有しており、略円筒状をなしている。駆動軸心Oは、圧縮機の前後方向と平行に延びている。
【0027】
前壁17aには、第1ボス部171と、第2ボス部172と、第1軸孔173とが形成されている。第1ボス部171は駆動軸心O方向で前方に向かって突出している。第1ボス部171内には軸封装置25が設けられている。第2ボス部172は後述する斜板室31内において、駆動軸心O方向で後方に向かって突出している。第1軸孔173は、駆動軸心O方向で前壁17aを貫通している。
【0028】
リヤハウジング19には、吸入室28と、吸入口28aと、吐出室29と、吐出口29aと、第3接続路26cとが形成されている。吸入室28は、リヤハウジング19の中心側に位置している。吸入口28aは、吸入室28と連通しており、リヤハウジング19の軸方向に延びてリヤハウジング19の外部に開いている。吸入口28aは、配管を介して蒸発器と接続している。これにより、吸入室28は、蒸発器を経た低圧の冷媒ガス、つまり、吸入圧力の冷媒ガスが吸入口28aから吸入される。こうして、吸入室28は吸入圧力となっている。吐出室29は環状に形成されており、吸入室28の外周側に位置している。吐出口29aは、吐出室29と連通しており、リヤハウジング19の径方向に延びてリヤハウジング19の外部に開いている。吐出口29aは、配管を介して凝縮器と接続している。吸入口28a及び吐出口29aの形状は適宜設計可能である。なお、配管、蒸発器及び凝縮器の図示は省略する。第3接続路26cは、吸入口28aとは異なる位置で吸入室28と接続している。
【0029】
シリンダブロック21は、フロントハウジング17とリヤハウジング19との間に位置している。
図10~
図12に示すように、シリンダブロック21には、シリンダボア21a~21fが形成されている。シリンダボア21a~21fは、それぞれ周方向に等角度間隔で配置されている。
図1及び
図2に示すように、シリンダボア21a~21fは、それぞれ駆動軸心O方向に延びている。なお、シリンダボア21a~21fの個数は適宜設計可能である。
【0030】
シリンダブロック21は、フロントハウジング17と接合されることにより、フロントハウジング17の前壁17a及び周壁17bとの間に斜板室31を形成している。斜板室31は、図示しない連絡通路によって吸入室28と連通している。
【0031】
また、シリンダブロック21には、第2軸孔23が形成されている。第1軸孔173及び第2軸孔23は、本発明の「軸孔」の一例である。第2軸孔23は、シリンダブロック21の中心側に位置しており、シリンダブロック21を駆動軸心O方向に貫通している。第2軸孔23の後方側は、シリンダブロック21が弁形成プレート9を介してリヤハウジング19と接合されることにより、吸入室28内に位置する。これにより、第2軸孔23は吸入室28と連通している。
【0032】
一方、第2軸孔23の前方側には、環状溝24が形成されている。環状溝24は、第2軸孔23に円環状に凹設されており、第2軸孔23の内周面に臨んでいる。環状溝24は第1接続路26aと接続している他、第1接続路26aとは異なる位置で第2接続路26bと接続している。第1、2接続路26a、26bは、シリンダブロック21及びリヤハウジング19に形成されている。また、第1接続路26aは、環状溝24と反対側で吐出室29と接続している。これにより、第1接続路26aは、環状溝24と吐出室29とを連通させている。
【0033】
また、
図10~
図12に示すように、シリンダブロック21には、第1連通路22a~22fが形成されている。第1連通路22a~22fは、シリンダボア21a~21fと第2軸孔23との間に位置している。第1連通路22a~22fは、それぞれシリンダボア21a~21fと第2軸孔23とを接続している。
【0034】
図1及び
図2に示すように、弁形成プレート9は、リヤハウジング19とシリンダブロック21との間に設けられている。この弁形成プレート9を介して、リヤハウジング19とシリンダブロック21とが接合されている。
【0035】
弁形成プレート9は、バルブプレート90と、吐出弁プレート92と、リテーナプレート93とを有している。バルブプレート90には、シリンダボア21a~21fに連通する6つの吐出孔911が形成されている。シリンダボア21a~21fは、各吐出孔911を通じて吐出室29に連通する。
【0036】
吐出弁プレート92は、バルブプレート90の後面に設けられている。吐出弁プレート92には、弾性変形によって各吐出孔911を開閉可能な6つの吐出リード弁92aが設けられている。リテーナプレート93は、吐出弁プレート92の後面に設けられている。リテーナプレート93は、吐出リード弁92aの最大開度を規制する。
【0037】
駆動軸3は、駆動軸本体33とキャップ35とで構成されており、駆動軸心O方向でハウジング1の前方側から後方側に向かって延びている。駆動軸本体33及びキャップ35は鉄鋼製であり、高圧の冷媒ガスの圧縮荷重に対する剛性を有している。駆動軸本体33は、駆動軸3の前側部分を構成している。駆動軸本体33は、ねじ部33aと、第1軸部33bと、第2軸部33cとを有している。ねじ部33aは、駆動軸本体33の前端、すなわち、駆動軸3の前端に位置している。このねじ部33aを介して駆動軸3は、図示しないプーリや電磁クラッチ等と連結されている。こうして、駆動軸3は、車両から回転駆動力を得ている。
【0038】
第1軸部33bは、ねじ部33aの後端と連続しており、駆動軸心O方向に延びている。第2軸部33cは、第1軸部33bの後端と連続しており、駆動軸心O方向に延びている。第2軸部33cは、第1軸部33bよりも小径に形成されている。
図3に示すように、第2軸部33cには、第1軸路33dが形成されている。第1軸路33dは、第2軸部33c内を駆動軸心O方向に延びており、第2軸部33cの後端面、つまり駆動軸本体33の後端面に開口している。また、第2軸部33cには、第1径路33eが形成されている。
図9及び
図10に示すように、第1径路33eは、第1軸路33dと連通しつつ、第2軸部33c内を駆動軸3の径方向に延びており、第2軸部33cの外周面に開口している。
【0039】
図1及び
図2に示すように、キャップ35は、駆動軸3の後側部分を構成している。
図1~
図5に示すように、キャップ35は、第2軸孔23とほぼ同径をなす円筒状をなしており、駆動軸心O方向に延びている。
図4及び
図5に示すように、キャップ35には、案内窓35aが形成されている。
図5に示すように、案内窓35aは、キャップ35を周方向に半周に亘って形成されており、駆動軸心O方向に延びている。一方、キャップ35において、駆動軸心Oを挟んで案内窓35aの反対側に位置する部分は、本体部35bとされている。本体部35bは、案内窓35aに対向して駆動軸心O方向に延びる半円形の樋形状をなしている。なお、案内窓35aについて、キャップ35の周方向に半周よりも大きく形成しても良く、また、キャップ35の周方向に半周よりも小さく形成しても良い。
【0040】
図4に示すように、キャップ35内には、第2軸路35cが形成されている。第2軸路35cは、駆動軸心O方向に延びており、キャップ35を前後に貫通している。第2軸路35cは、第1径部351と、第2径部352と、第3径部353とで構成されている。第1径部351と、第2径部352と、第3径部353とは、互いに同軸をなしている。
【0041】
第1径部351は、駆動軸本体33の第2軸部33cとほぼ同径に形成されている。第1径部351は、キャップ35の前端面に開口しており、後方に向かって延びている。第2径部352は、第1径部351の後端と接続しており、後方に向かって延びている。第2径部352は、
図3に示す第1軸路33dとほぼ同径であって、第1径部351よりも小径に形成されている。これにより、第1径部351と第2径部352との間には、
図4に示す第1段部354が形成されている。また、第1径部351と第2径部352とは、案内窓35aと連通している。これにより、第1、2径部351、352は、案内窓35aと連通する箇所において、キャップ35の外部と連通している。第3径部353は、第2径部352の後端と接続して後方に向かって延びており、キャップ35の後端面に開口している。第3径部353は、第2径部352よりも小径に形成されている。これにより、第2径部352と第3径部353との間には第2段部355が形成されている。
【0042】
また、キャップ35の前端側には、第1環状凹溝356と第2環状凹溝357とが形成されている。第1環状凹溝356には第1シールリング358が設けられており、第2環状凹溝357には第2シールリング359が設けられている。第1、2シールリング358、359は、PTFE等の樹脂で形成されている。また、キャップ35の前端側において、第1環状凹溝356と第2環状凹溝357との間、すなわち、第1シールリング358と第2シールリング359との間となる位置には、第2径路35dが形成されている。第2径路35dは、第1径部351と連通しつつ、キャップ35内を径方向に延びており、キャップ35の外周面に開口している。
【0043】
さらに、
図3~
図5に示すように、キャップ35は、第1規制面301と、第2規制面302と、第1端面303と、第2端面304とを有している。
図4に示すように、第1規制面301は、キャップ35の内周側から外周側に向かって平面状に延びており、案内窓35aに後向きに面している。第2規制面302は、第1規制面301と対向しつつキャップ35の内周側から外周側に向かって平面状に延びており、案内窓35aに前向きに面している。
図3に示すように、第1端面303及び第2端面304は、案内窓35a内、つまり、第1規制面301と第2規制面302との間に位置している。第1端面303と第2端面304とは、駆動軸心Oを挟んで配置されており、互いに平行で駆動軸心O方向に平面状に延びている。これにより、第1端面303及び第2端面304は、それぞれ第1規制面301と第2規制面302とに接続している。第1端面303及び第2端面304は、本体部35bの端面を構成している。
【0044】
図8及び
図9に示すように、駆動軸本体33の第2軸部33cは、キャップ35に圧入されている。より具体的には、第2軸路35cの第1径部351に対して、第2軸部33cの後端側が圧入されている。そして、第2軸部33cの後端が第1段部354に当接することにより、第1径部351内で第2軸部33cが位置決めされる。この際、第1径路33eと第2径路35dとが整合することで、互いに連通している。こうして、駆動軸本体33とキャップ35とが一体化されることにより、駆動軸3が形成されている。
【0045】
図1及び
図2に示すように、駆動軸3は、駆動軸本体33の第1軸部33bを第1軸孔173に支承させるとともに、キャップ35を第2軸孔23に支承させることにより、ハウジング1に回転可能に挿通されている。これにより、駆動軸3は駆動軸心O周りに回転可能となっている。具体的には、駆動軸3は、
図10~
図12等に示すR1方向に回転する。
【0046】
ここで、キャップ35が第2軸孔23に支承されることにより、
図8及び
図9に示すように、環状溝24と第2径路35d及び第1径路33eとが対向する。これにより、第1、2径路33e、35dを通じて、環状溝24と第1軸路33dとが連通する。そして、第1、2シールリング358、359によって、第2軸孔23内と環状溝24との間が封止される。また、キャップ35が第2軸孔23に支承されることで、キャップ35の後端が第2軸孔23内から突出しつつ吸入室28内に延びる状態となる。これにより、第3径部353を通じて、第2軸路35cが吸入室28と繋がっている。一方、
図1及び
図2に示すように、第1ボス部171内では、軸封装置25に駆動軸3が挿通される。これにより、軸封装置25は、ハウジング1の内部とハウジング1の外部との間を封止する。
【0047】
また、キャップ35が第2軸孔23に支承されることにより、
図10~
図12に示すように、案内窓35a及び本体部35bは、第1連通路22a~22fと対向する。具体的には、案内窓35aは、第1連通路22a~22fのうち、再膨張行程又は吸入行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する。一方、本体部35bは、第1連通路22a~22fのうち、圧縮行程又は吐出行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する。なお、圧縮室45a~45fについては後述する。
【0048】
図1及び
図2に示すように、固定斜板5は、駆動軸本体33の第2軸部33cに圧入されることで、駆動軸本体33に固定されている。この際、固定斜板5は、第2軸部33cと第1軸部33bとの間に形成された段部33fに当接することで、駆動軸本体33に対する位置決めがされている。こうして、固定斜板5は、斜板室31内に配置されており、駆動軸3が回転することによって、斜板室31内で駆動軸3とともに回転可能となっている。ここで、固定斜板5は、駆動軸3に垂直な平面に対する傾斜角度が一定となっている。また、斜板室31内において、第2ボス部172と固定斜板5との間には、スラスト軸受6が設けられている。
【0049】
各ピストン7は、シリンダボア21a~21f内にそれぞれ収容されている。各ピストン7と、弁形成プレート9とにより、
図10~
図12に示すように、シリンダボア21a~21f内に圧縮室45a~45fがそれぞれ形成されている。圧縮室45a~45fは、それぞれ第1連通路22a~22fと連通している。
【0050】
図1及び
図2に示すように、各ピストン7には、係合部7aが形成されている。係合部7a内には、半球状のシュー8a、8bがそれぞれ設けられている。これらのシュー8a、8bによって、ピストン7は固定斜板5に連結されている。これにより、各シュー8a、8bは、固定斜板5の回転をピストン7の往復動に変換する変換機構として機能する。このため、ピストン7は、それぞれシリンダボア21a~21f内をピストン7の上死点とピストン7の下死点との間で往復動することが可能となっている。
【0051】
図3に示すように、移動体10は、第1移動体11と第2移動体12とで構成されている。
図10~
図12に示すように、移動体10は、駆動軸3に取り付けられることにより、駆動軸3とともに駆動軸心O周りに回転する。これにより、第1移動体11には、駆動軸心Oを挟んで、回転方向の先行側と、回転方向の後行側とが規定されている。なお、駆動軸3に対する移動体10の取り付けついては後述する。
【0052】
図6及び
図10~
図12に示すように、第1移動体11は、周壁部11aと立壁部11bとを有している。周壁部11aは、キャップ35とほぼ同径をなす略半円の樋状に形成されており、駆動軸心O方向に延びている。
図8及び
図9に示すように、第1移動体11における駆動軸心O方向の長さ、つまり第1移動体11の前後方向の長さは、案内窓35aにおける前後方向の長さに比べて短く設定されている。
【0053】
図6に示すように、周壁部11aは、表面111と裏面112とを有している。周壁部11aには、第2連通路41が形成されている。第2連通路41は、表面111から裏面112まで貫通する孔部41aによって形成されている。
図13~
図15に示すように、第2連通路41は、周壁部11aにおいて、前後方向に延びるように形成されている。そして、第2連通路41は、後端から前端に向かうにつれて、次第に周壁部11aの周方向、つまり、第1移動体11の回転方向の先行側から後行側に向かって長く延びるように形成されている。つまり、第1移動体11の回転方向に小さく形成された第1部位411が第2連通路41の後端側に位置しており、第1移動体11の回転方向に大きく形成された第2部位412が第2連通路41の前端側に位置している。
【0054】
このような形状で第2連通路41が周壁部11aに形成されることにより、第2連通路41は、先端縁61と、後端縁63と、第1接続縁65と、第2接続縁67とを有している。先端縁61は、第1移動体11の回転方向の最も先行側に位置しており、駆動軸心O方向、つまり、第1移動体11の前後方向に延びている。後端縁63は、先端縁61よりも駆動軸3及び移動体10の回転方向の後行側に位置しており、第2連通路41の前後方向に延びている。後端縁63は、第2連通路41の前方に向かうにつれて、先端縁61から回転方向の後行側に遠ざかる形状をなしている。第1接続縁65及び。第2接続縁67は、第1移動体11の周方向に延びており、先端縁61と後端縁63とにそれぞれ接続している。
【0055】
先端縁61は、第1縁部61aと、第2縁部61bと、第3縁部61cとで構成されている。第1縁部61aは、先端縁61における前端側を構成しており、第1接続縁65と接続している。第1縁部61aは、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最大であるとき、つまり、最大流量時に第1連通路22a~22fと対向するようになっている。
【0056】
第3縁部61cは、先端縁61における後端側を構成しており、第2接続縁67と接続している。第3縁部61cは、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少であるとき(以下、最少流量時という)に第1連通路22a~22fと対向するようになっている。
【0057】
第2縁部61bは、第1縁部61aと第3縁部61cとの間に位置しており、第1縁部61aと第3縁部61cとに接続している。第2縁部61bは、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最大よりも少なく、かつ、最少よりも多いとき(以下、中間流量時という)に第1連通路22a~22fと対向するようになっている。ここで、中間流量は、最大流量と最少流量との間で一定の幅を有している。これにより、第2縁部61bは、第1縁部61a及び第3縁部61cよりも前後方向に長く延びている。なお、最大流量時、最少流量時及び中間流量時における第1~3縁部61a~61cと第1連通路22a~22fとの対向については、後述する。また、最少流量時から中間流量時まで第2縁部61bを第1連通路22a~22fと対向するように形成することにより、先端縁61を第1縁部61aと第2縁部61bとで構成しても良い。
【0058】
ここで、第1縁部61aは、第2縁部61b及び第3縁部61cと比べて、駆動軸3及び移動体10の回転方向の後行側に位置している。また、第1縁部61aは、第2縁部61bに向かって回転方向の先行側に湾曲する湾曲部位611を有している。第1縁部61aは、湾曲部位611を通じて第2縁部61bと接続している。こうして、第1縁部61aと第2縁部61bとは、回転方向に徐々に変化しつつ連続している。
図15に示すように、湾曲部位611は、第1連通路22a~22fの形状に沿う曲率で形成されている。一方、第2縁部61bと第3縁部61cとには、回転方向の位置に差が存在していない。
【0059】
図6、
図8及び
図9に示すように、立壁部11bは、周壁部11aの裏面112に対して一体で形成されており、第1移動体11の後方側に配置されている。立壁部11bは、駆動軸心O方向に直交して上下に延びる板状をなしている。
図6に示すように、立壁部11bは端面113を有している。端面113は、周壁部11aの反対側に位置している。また、立壁部11bには、半円状をなす切欠き部114が形成されている。なお、切欠き部114の形状は適宜設計可能である他、切欠き部114の形成を省略することもできる。また、
図13~
図15では、説明を容易にするため、立壁部11b及び切欠き部114の図示を省略している。後述する
図16~
図18及び
図20についても同様である。
【0060】
図3及び
図7~
図9に示すように、第2移動体12は、第1軸路33d及び第2軸路35cの第2径部352とほぼ同径をなす略円筒状に形成されている。第2移動体12の後端には、平面状をなす係合部12aが形成されている。また、第2移動体12には、連絡路120が形成されている。
【0061】
図8及び
図9に示すように、連絡路120は、第2移動体12内を駆動軸心O方向に延びており、第2移動体12の後端に開口している。また、連絡路120における係合部12a側は、第2移動体12の外周面に開口している。ここで、連絡路120は、第2移動体12内を駆動軸心O方向に貫通しておらず、第2移動体12の前端には開口していない。これにより、第2移動体12には、平面状をなす第1面121と第2面122とが形成されている。第1面121は、第2移動体12の前端面を構成しており、前方に面している。第2面122は、連絡路120の前方に位置しており、後方に面している。なお、係合部12aは、立壁部11bと係合可能であれば、形状を適宜設計可能である。
【0062】
また、第2移動体12において、第1面121と第2面122との間、つまり、連絡路120よりも前方側となる箇所には、リング溝12bが形成されている。リング溝12bには、Oリング37が設けられている。
【0063】
第2移動体12は、係合部12aを案内窓35a側に向けた状態、つまり、連絡路120を案内窓35aに対向させた状態で、キャップ35の第2径部352内に配置されている。また、キャップ35内において、第2移動体12は、前端側を第1軸路33d内に進入させている。これにより、第1軸路33d内、すなわち駆動軸3内には、駆動軸本体33と第2移動体12とによって区画された制御圧室27が形成されている。制御圧室27は、第1径路33e及び第2径路35dを通じて、環状溝24と連通している。これらの1接続路26a、環状溝24及び第1、2径路33e、35dによって、給気通路13aが形成されている。この給気通路13aによって、吐出室29と制御圧室27とが連通している。また、制御圧室27と、第2径部352との間は、Oリング37によって封止されている。
【0064】
ここで、環状溝24は第2軸孔23に円環状に凹設されているため、駆動軸3が回転しても、環状溝24と、第2径路35d及び第1径路33eとは、常に対向する。このため、駆動軸3が回転しても、環状溝24と制御圧室27とは、常に連通するようになっている。
【0065】
第1移動体11は、立壁部11bを第2移動体12に向けた状態で、案内窓35a内に設けられている。これにより、第1移動体11がキャップ35に取り付けられており、周壁部11aは、駆動軸心Oを挟んで本体部35bの反対側において、第2軸孔23内に位置する。ここで、周壁部11aは、キャップ35とほぼ同径をなす半円の樋状であることから、第1移動体11は、案内窓35a内に設けられることにより、
図10~
図12に示すように、本体部35bとともに第2軸孔23とほぼ同径をなす円筒体を構成する。これにより、第1移動体11は、本体部35bとともに第2軸孔23と整合する。
【0066】
さらに、
図8及び
図9に示すように、第1移動体11は、案内窓35a内に設けられた状態で、立壁部11bを第2移動体12の係合部12aに当接させている。これにより、立壁部11bと係合部12aとが係合されることで、第1移動体11と第2移動体12とが組み付けられている。こうして、キャップ35に移動体10が取り付けられている。そして、第2連通路41は、連絡路120と対向しつつ、連絡路120と連通する。
【0067】
また、キャップ35内、すなわち駆動軸3内には、第2径部352、第3径部353及び切欠き部114によって、吸入通路39が形成されている。この吸入通路39を通じて、連絡路120は吸入室28と連通している。これにより、吸入通路39及び連絡路120は、吸入圧力となっている。また、連絡路120は、吸入通路39を通じて第2連通路41を吸入室28に連通させている。一方、吸入通路39は、第2移動体12によって、制御圧室27と区画されている。これにより、吸入通路39及び連絡路120と、制御圧室27とは非連通となっている。
【0068】
この圧縮機では、駆動軸3が駆動軸心O周りに回転することにより、第1端面303を通じて第1移動体11に駆動軸3の回転が伝達される。これにより、第1移動体11を含め、移動体10は、駆動軸3とともに駆動軸心O周りに回転可能となっている。ここで、立壁部11bと係合部12aとが係合することにより、第2移動体12は、第1軸路33d内及び第2径部352内において、第1移動体11から独立して駆動軸心O周りに回転することが規制されている。
【0069】
また、キャップ35内において、第1移動体11の立壁部11bと、第2移動体12の第2面122とには、吸入圧力が作用する。一方、第2移動体12の第1面121には、制御圧力が作用する。なお、制御圧力については後述する。
【0070】
そして、立壁部11bと係合部12aとが係合することにより、第1移動体11と第2移動体12とが駆動軸心O方向に一体で移動可能となっている。こうして、第1移動体11は、案内窓35a内を駆動軸心O方向で前後に移動可能となっている。一方、第2移動体12は、第1軸路33d及び第2径部352内を摺動することにより、駆動軸心O方向で前後に移動可能となっている。こうして、移動体10は、第2軸孔23内において、駆動軸3に対して駆動軸心O方向で前後に移動可能となっている。
【0071】
また、第2連通路41は、駆動軸3が回転することによって、
図10~
図12に示すように、第1連通路22a~22fと間欠的に連通する。そして、第2連通路41は、第1移動体11の案内窓35a内における位置に応じて、駆動軸3の1回転当たりで第1連通路22a~22fと連通する駆動軸心O周りの連通角度が変化する。以下では、駆動軸3の1回転当たりで第1連通路22a~22fと第2連通路41とが連通する駆動軸心O周りの連通角度について、単に連通角度と記載する。なお、
図4~
図9では、説明を容易にするため、
図1及び
図2に示す位置よりも、駆動軸3及び固定斜板5が回転した状態におけるキャップ35や第1、2移動体11、12を図示している。また、
図8~
図12では、説明を容易にするため、第2連通路41の形状等を簡略化して図示している。
【0072】
図8及び
図9に示すように、キャップ35内において、第2段部355と、移動体10との間には、付勢ばね43が設けられている。付勢ばね43は、移動体10をキャップ35の前方に向けて付勢している。
【0073】
図1及び
図2に示すように、制御弁13は、リヤハウジング19に設けられている。制御弁13は、第2接続路26bと接続している。これにより、制御弁13は、第2接続路26bを通じて、環状溝24、ひいては、制御圧室27と接続している。また、制御弁13は、第3接続路26cと接続している。これにより、制御弁13は、第3接続路26cを通じて、吸入室28と接続している。このように、制御弁13を通じて第2接続路26bと第3接続路26cとが接続している。こうして、第2接続路26bと第3接続路26cとは、抽気通路13bを形成している。つまり、この圧縮機では、抽気通路13b及び制御弁13によって、制御圧室27と吸入室28とが接続している。また、制御弁13は、図示しない検知通路によっても吸入室28と接続している。
【0074】
この圧縮機では、給気通路13aを通じて、吐出室29内の冷媒ガスの一部が制御圧室27に流通する。また、抽気通路13bを通じて、制御圧室27内の冷媒ガスが吸入室28に流通する。そして、制御弁13は、検知通路を通じて吸入室28内の吸入圧力を感知することで、弁開度が調整される。これにより、制御弁13は、抽気通路13bの開度を調整することにより、抽気通路13bを流通する冷媒ガスの流量を調整する。具体的には、制御弁13は、弁開度を大きくすることにより、抽気通路13bを経て制御圧室27から吸入室28に流通する冷媒ガスの流量を増大させる。一方、制御弁13は、弁開度を小さくすることにより、抽気通路13bを経て制御圧室27から吸入室28に流通する冷媒ガスの流量を減少させる。こうして、制御弁13は、吐出室29から制御圧室27に流通する冷媒ガスの流量に対して、制御圧室27から吸入室28に流通する冷媒ガスの流量を変化させることで、制御圧室27の冷媒ガスの圧力である制御圧力を制御する。なお、第3接続路26cが吸入室28に換えて斜板室31と接続することにより、第3接続路26cを通じて制御弁13と斜板室31とを接続する構成、すなわち、抽気通路13b及び制御弁13によって、制御圧室27と斜板室31とを接続する構成としても良い。
【0075】
以上のように構成された圧縮機では、駆動軸3が駆動軸心O周りで回転することにより、斜板室31内で固定斜板5が回転する。これにより、ピストン7がシリンダボア21a~21f内を上死点と下死点との間で往復動する。以下、シリンダボア21a~21f内におけるピストン7の上死点から下死点への移動を往路という。また、シリンダボア21a~21f内におけるピストン7の下死点から上死点への移動を復路という。そして、ピストン7が往路にあるとき、圧縮室45a~45fでは、内部に残留する冷媒ガス(以下、残留ガスという)が再膨張する再膨張行程となり、さらに、第1連通路22a~22fと第2連通路41とが連通することにより、冷媒ガスを吸入する吸入行程に移行する。一方、ピストン7が復路にあるとき、圧縮室45a~45fでは、内部の冷媒ガスを圧縮する圧縮行程が行われ、その後、圧縮された冷媒ガスを吐出室29に吐出する吐出行程に移行する。なお、ピストン7が復路にあるとき、第1連通路22a~22fと第2連通路41とは非連通となる。また、吐出行程によって吐出室29に吐出された冷媒ガスは、吐出口29aを経て凝縮器に吐出される。
【0076】
具体的には、この圧縮機において、駆動軸3が
図1、
図2及び
図10~
図12に示す回転角度にある際、圧縮室45a~45cでは、ピストン7が往路となる。つまり、圧縮室45aではピストン7が往路の初期段階となり、圧縮室45bではピストン7が往路の初期段階よりも進んだ中期段階となり、圧縮室45cではピストン7が往路の中期段階よりも進んだ後期段階となる。一方、圧縮室45d~45fでは、ピストン7が復路となる。つまり、圧縮室45dではピストン7が復路の初期段階となり、圧縮行程の初期段階となる。また、圧縮室45eではピストン7が復路の中期段階となり、圧縮行程の中期段階となる。そして、圧縮室45fではピストン7が復路の後期期段階となり、圧縮行程の後期段階から吐出行程に移行する。なお、
図10~
図12では、説明を容易にするためピストン7の図示を省略している。
【0077】
そして、この圧縮機では、第1移動体11が案内窓35a内に設けられることにより、第1移動体11は、第1連通路22a~22fのうち、ピストン7が往路にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する。より具体的には、駆動軸3が
図1、
図2及び
図10~
図12に示す回転角度にある際、第1移動体11は、圧縮室45aに連通する第1連通路22aと、圧縮室45bに連通する第1連通路22bと、圧縮室45cに連通する第1連通路22cとに対向する。そして、駆動軸3が
図10等に示す状態よりもさらにR1方向に回転すれば、圧縮室45fにおいてピストン7が往路となり、圧縮室45cにおいてピストン7が復路となるため、第1移動体11は、圧縮室45fに連通する第1連通路22fと、圧縮室45aに連通する第1連通路22aと、圧縮室45bに連通する第1連通路22bとに対向する。こうして、駆動軸3が回転することにより、第1移動体11は、ピストン7が往路にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと順次対向する。
【0078】
これにより、ピストン7が往路にある圧縮室45a~45は、再膨張行程から吸入行程に移行する。これにより、吸入行程にある圧縮室45a~45fには、吸入通路39、連絡路120、第2連通路41及び第1連通路22a~22fを通じて、吸入室28内の冷媒ガスが吸入される。つまり、第1移動体11は、再膨張行程又は吸入行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと順次対向する。
【0079】
一方、キャップ35の本体部35bは、駆動軸心Oを挟んで案内窓35aの反対側、すなわち、第1移動体11の反対側に位置している。このため、本体部35bは、第1連通路22a~22fのうち、ピストン7が復路にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する。より具体的には、駆動軸3が
図1、
図2及び
図10~
図12に示す回転角度にある際、本体部35bは、圧縮室45dに連通する第1連通路22dと、圧縮室45eに連通する第1連通路22eと、圧縮室45fに連通する第1連通路22fとに対向する。こうして、本体部35bは、駆動軸3が回転することにより、ピストン7が復路にある圧縮室45a~45f、すなわち、圧縮行程又は吐出行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと順次対向する。
【0080】
そして、この圧縮機では、移動体10を駆動軸3に対して駆動軸心O方向に移動させることにより、駆動軸3の1回転当たりで吸入室28から圧縮室45a~45fに吸入される冷媒ガスの流量を変更することができる。これにより、この圧縮機では、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変更することができる。
【0081】
具体的には、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を減少させる場合には、制御弁13が弁開度を大きくし、抽気通路13bの開度を大きくすることで、制御圧室27から吸入室28に流通する冷媒ガスの流量を増大させる。こうして、制御弁13は、制御圧室27の制御圧力を減少させる。これにより、制御圧力と吸入圧力との差圧である可変差圧が小さくなる。
【0082】
このため、移動体10では、第2移動体12が付勢ばね43の付勢力によって、
図9に示す位置から第1軸路33d内及び第2径部352内を駆動軸心O方向で前方に移動し始める。また、第1移動体11も付勢ばね43の付勢力によって、案内窓35a内を駆動軸心O方向で前方に移動し始める。このため、第2連通路41は、第1連通路22a~22fに対して前方に相対移動する。こうして、この圧縮機では、連通角度が徐々に小さくなる。
【0083】
そして、制御弁13が制御圧室27の制御圧力をさらに減少させることで、可変差圧が最小となる。これにより、
図8に示すように、移動体10では、第1移動体11が案内窓35a内を最も前方に移動した状態となり、第1規制面301と当接する。これにより、案内窓35a内における第1移動体11の前方への移動が規制される。また、第1移動体11を通じて、第1軸路33d内及び第2径部352内における第2移動体12の前方への移動も規制される。このように、第1移動体11が案内窓35a内を最も前方に移動することにより、第2連通路41では、第1部位411において第1連通路22a~22fと連通する状態となる。これにより、この圧縮機では、連通角度が最小となる。
【0084】
このため、駆動軸3が
図10に示す回転角度にあるとき、第1移動体11は、第1連通路22aと第2連通路41とを連通させる。そして、第1移動体11は、周壁部11aによって、第1連通路22b、22cと、第2連通路41とを非連通とする。つまり、第1移動体11は、ピストン7が往路の初期段階にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fのみ、第2連通路41と連通させる。一方、キャップ35の本体部35bは、第1連通路22d~22fと、第2連通路41とを非連通とする。こうして、本体部35bは、圧縮行程又は吐出行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと、第2連通路41とを非連通とする。
【0085】
圧縮室45a及び圧縮室45aに連通する第1連通路22aを例に説明すると、可変差圧が最小、ひいては連通角度が最小の状態では、第1移動体11が案内窓35a内を最も前方に移動することにより、
図13に示すように、第2連通路41では、先端縁61の第3縁部61cが第1連通路22aと対向する。そして、駆動軸3とともに第1移動体11が回転することにより、第1連通路22aは、第3縁部61cよりも回転方向の後行側、つまり
図13の紙面の下方から上方に相対移動する。こうして、第1連通路22aは、後端縁63に対向するまでの間、第2連通路41と連通する。このため、圧縮室45aは、再膨張行程から吸入行程に移行することになる。そして、第1連通路22aが後端縁63に対向することにより、吸入行程が終了する。
【0086】
このように、連通角度が最小となることにより、圧縮室45a~45fには、ピストン7が往路の初期段階にあるときだけ、吸入通路39、連絡路120、第2連通路41及び第1連通路22a~22fを通じて、吸入室28から冷媒ガスが吸入される。このため、吸入室28から圧縮室45a~45fに吸入される冷媒ガスの流量が最も少なくなる。こうして、この圧縮機では、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスが最少流量となる。
【0087】
一方、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を増大せる場合には、制御弁13が弁開度を小さくし、抽気通路13bの開度を小さくすることで、制御圧室27から吸入室28に流通する冷媒ガスの流量を減少させる。こうして、制御弁13は、制御圧室27の制御圧力を増大させる。これにより、可変差圧が最小よりも大きくなる。
【0088】
このため、移動体10では、第2移動体12が付勢ばね43の付勢力に抗しつつ、
図8に示す位置から第1軸路33d内及び第2径部352内を駆動軸心O方向で後方に移動し始める。これにより、第1移動体11も付勢ばね43の付勢力に抗しつつ、案内窓35a内を駆動軸心O方向で後方に移動し始める。このため、第2連通路41は、第1連通路22a~22fに対して後方に相対移動する。こうして、この圧縮機では、連通角度が最小よりも大きく、最大よりも小さくなる。
【0089】
このため、駆動軸3が
図11に示す回転角度にあるとき、第1移動体11は、第1連通路22a、22bと第2連通路41とを連通させる。そして、第1移動体11は、周壁部11aによって、第1連通路22cと第2連通路41とを非連通とする。つまり、第1移動体11は、ピストン7が往路の初期段階にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと、ピストン7が往路の中期段階にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと、第2連通路41と連通させる。また、この際も、第1連通路22d~22fと、第2連通路41とを非連通とすることにより、圧縮行程又は吐出行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと、第2連通路41とを非連通とする。
【0090】
圧縮室45a及び第1連通路22aを例に説明すると、可変差圧が最小よりも大きくなり、
図14の黒色矢印で示すように、第1移動体11が案内窓35a内を後方に移動することにより、第2連通路41では、先端縁61の第2縁部61bが第1連通路22aと対向する。そして、駆動軸3とともに第1移動体11が回転することで、第1連通路22aは第2縁部61bよりも回転方向の後行側に相対移動する。こうして、第1連通路22aは、後端縁63に対向するまでの間、第2連通路41と連通する。ここで、第2縁部61bが第1連通路22aと対向するときには、第3縁部61cが第1連通路22aと対向するときに比べて、後端縁63が回転方向のより後行側に位置する。これにより、第2縁部61bが第1連通路22aと対向するときには、連通角度が最小よりも大きくなる。
【0091】
このように、連通角度が最小よりも大きくなることにより、圧縮室45a~45fには、ピストン7が往路の初期段階から中期段階にある間において、吸入通路39、連絡路120、第2連通路41及び第1連通路22a~22fを通じて、吸入室28から冷媒ガスが吸入される。このため、吸入室28から圧縮室45a~45fに吸入される冷媒ガスの流量が最小よりも多くなる。こうして、この圧縮機では、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスが中間流量となる。ここで、
図13及び
図14に示すように、第2縁部61bと第3縁部61cとの間には、回転方向の位置に差が存在しない。このため、最少流量時と中間流量時とにおいて、圧縮室45a~45fが再膨張行程から吸入行程に移行するタイミング、つまり、往路にあるピストン7の位置は同じである。
【0092】
そして、制御弁13が制御圧室27の制御圧力をさらに増大させることにより、可変差圧が最大となる。このため、
図8に示すように、移動体10では、第1移動体11が案内窓35a内を最も後方に移動した状態となり、第2規制面302と当接する。これにより、案内窓35a内における第1移動体11の後方への移動が規制される。また、第1移動体11を通じて、第1軸路33d内及び第2径部352内における第2移動体12の後方への移動も規制される。このように、第1移動体11が案内窓35a内を最も後方に移動することにより、第2連通路41では、第2部位412において第1連通路22a~22fと連通する状態となる。これにより、この圧縮機では、連通角度が最大となる。
【0093】
このため、駆動軸3が
図12に示す回転角度にあるとき、第1移動体11は、第1連通路22a~22cと第2連通路41とを連通させる。すなわち、第1移動体11は、ピストン7が往路の初期段階にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと、ピストン7が往路の中期段階にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと、ピストン7が往路の後期段階にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと、第2連通路41と連通させる。また、この際も、第1連通路22d~22fと、第2連通路41とを非連通とすることにより、圧縮行程又は吐出行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと、第2連通路41とを非連通とする。
【0094】
圧縮室45a及び圧縮室45aに連通する第1連通路22aを例に説明すると、可変差圧が最大となり、
図15の黒色矢印で示すように、第1移動体11が案内窓35a内を最も後方に移動することにより、第2連通路41では、先端縁61の第1縁部61aが第1連通路22aと対向する。そして、駆動軸3とともに第1移動体11が回転することで、第1連通路22aが第1縁部61aよりも回転方向の後行側に相対移動する。こうして、第1連通路22aは、後端縁63に対向するまでの間、第2連通路41と連通する。ここで、第1縁部61aが第1連通路22aと対向するときには、第2縁部61bや第3縁部61cが第1連通路22aと対向するときに比べて、後端縁63が回転方向のより後行側に位置する。これにより、第1縁部61aが第1連通路22aと対向するときには、連通角度が最大となる。
【0095】
こうして、連通角度が最大であるときには、圧縮室45a~45fには、ピストン7が往路の初期段階から後期段階にある間において、吸入通路39、連絡路120、第2連通路41及び第1連通路22a~22fを通じて、吸入室28から冷媒ガスが吸入される。このため、吸入室28から圧縮室45a~45fに吸入される冷媒ガスの流量が最も多くなる。これにより、この圧縮機では、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最大流量となる。
【0096】
ここで、第1縁部61aは、第2縁部61b及び第3縁部61cに比べて、回転方向の後行側に位置している。このため、第1連通路22aを例にすると、最少流量時や中間流量時において、第2連通路41が第1連通路22aに連通し始める駆動軸3の回転角度では、最大流量時には、未だ第1連通路22aが第1縁部61aと対向しておらず、第2連通路41が第1連通路22aと非連通となる。つまり、最大流量時では、最少流量時や中間流量時において、第2連通路41が第1連通路22aに連通し始める駆動軸3の回転角度よりも、更に駆動軸3がR1方向に回転する必要がある。この結果、最大流量時では、最少流量時及び中間流量時に比べて、圧縮室45a~45fが再膨張行程から吸入行程に移行するタイミングが遅くなる。つまり、最大流量時では、最少流量時及び中間流量時に比べ、ピストン7が往路をより進んだ時点で、圧縮室45a~45fが再膨張行程から吸入行程に移行する。換言すれば、最大流量時では、ピストン7が往路の中間段階に近づいた際に、圧縮室45a~45fが再膨張行程から吸入行程に移行することで、駆動軸3の1回転あたりにおける再膨張行程の期間が長くなり、吸入行程の開始が遅くなる。なお、最大流量時では、このように吸入行程の開始が遅くなるものの、上記のように、ピストン7が往路の後期段階にある間も吸入室28から冷媒ガスが吸入されるため、吸入室28から圧縮室45a~45fに吸入される冷媒ガスの流量は最も多くなる。
【0097】
この圧縮機において、最大流量時には、最少流量時及び中間流量時に比べて、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの圧力が高くなっている。このため、最大流量時には、最少流量時及び中間流量時に比べて、吐出行程で吐出室29に吐出されずに圧縮室45a~45f内に残留する残留ガスの圧力も高くなっている。
【0098】
この点、この圧縮機では、最大流量時は、最大流量時及び中間流量時に比べて、第1連通路22a~22fと第2連通路41とが連通するタイミングが遅くなることで、圧縮室45a~45fが再膨張行程から吸入行程に移行するタイミングが遅くなっている。このため、この圧縮機では、最大流量時に残留ガスを再膨張行程で十分に減圧できる。このため、第1連通路22a~22fと第2連通路41とが連通した際、つまり、吸入行程の開始時に、圧縮室45a~45f内の残留ガスが第2連通路41、ひいては吸入室28に逆流することを抑制できる。これにより、第1連通路22a~22fと第2連通路41とが連通しても、圧縮室45a~45f内の圧力が急激に低下し難くなっている。こうして、ピストン7は上死点から下死点に向かって移動するに当たり、再膨張行程時の圧縮室45a~45f内の圧力、すなわち残留ガスの圧力を好適に利用できる。これにより、この圧縮機では、最大流量時にピストン7が上死点から下死点に向かって移動し易いことから、駆動軸3の回転駆動力の増大を抑制することが可能となっている。また、圧縮室45a~45f内に残留する残留ガスが第2連通路41に逆流することが抑制されるため、この圧縮機では、最大流量時における吸入脈動を抑制することが可能となっている。
【0099】
一方、最少流量時及び中間流量時では、最大流量時に比べて、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの圧力が低く、その分、圧縮室45a~45f内に残留する残留ガスの圧力も低くなっている。この点、この圧縮機では、最少流量時及び中間流量時では、最大流量時に比べて、圧縮室45a~45fが再膨張行程から吸入行程に移行するタイミングが早くなる。
【0100】
このため、この圧縮機では、最少流量時及び中間流量時に、再膨張行程によって、圧縮室45a~45f内が吸入圧力、すなわち吸入室28の圧力よりも低圧となることを防止できる。この結果、最少流量時及び中間流量時においても、ピストン7が上死点から下死点に向かって移動し易いことから、駆動軸3の回転駆動力の増大を抑制することが可能となっている。また、圧縮室45a~45f内が吸入圧力よりも低圧となることを防止することにより、この圧縮機では、最少流量時及び中間流量時における吸入脈動も抑制可能となっている。
【0101】
したがって、実施例1の圧縮機によれば、作動時における駆動軸3の回転駆動力の増大を抑制できるとともに、吸入脈動を抑制できる。
【0102】
また、この圧縮機では、圧縮行程又は吐出行程にある圧縮室45a~45fと連通する第1連通路22a~22fを通じて、圧縮行程で圧縮された高圧の冷媒ガスの一部が第2軸孔23内に向かって流通する。この点、この圧縮機では、移動体10が第1移動体11と第2移動体12とを有しており、キャップ35には、第1移動体11を配置する案内窓35aが形成されている。これにより、この圧縮機では、第2軸孔23内において、キャップ35の本体部35bが圧縮行程又は吐出行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと対向する。こうして、本体部35bは、圧縮行程又は吐出行程にある圧縮室45a~45fに連通する第1連通路22a~22fと、第2連通路41とを非連通にする。ここで、キャップ35は鉄鋼製であることから、この圧縮機では、キャップ35、つまり駆動軸3は、圧縮行程や吐出行程にある圧縮室45a~45fからの圧縮荷重を好適に受け止めることができる。
【0103】
このため、第1移動体11、ひいては移動体10には圧縮荷重が作用し難くなることで、移動体10は駆動軸心O方向に移動し易くなっている。これにより、この圧縮機では、駆動軸3の1回転当たりで各圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変化させ易くなっている。また、この圧縮機では、制御圧力に対する受圧面積を大きくするために、第2移動体12を過度に大型化させる必要もない。
【0104】
また、この圧縮機では、第2連通路41の先端縁61において、第1縁部61aは、湾曲部位611を通じて第2縁部61bと接続している。これにより、第1縁部61aと第2縁部61bとは、回転方向に徐々に変化しつつ連続している。このため、先端縁61を含め、第2連通路41の設計の自由度を高くしつつ、最大流量時における第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングと、最少流量時及び中間流量時における第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングとを好適に設定することが可能となっている。
【0105】
また、この圧縮機では、中間流量時から最大流量時に変化する過渡期には、湾曲部位611によって、第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングが徐々に遅くなるようになっている。そして、湾曲部位611は、第1連通路22a~22fに沿う曲率で形成されているため、湾曲部位611が第1連通路22a~22fと好適に対向する。これにより、湾曲部位611を通じて、第2連通路41から第1連通路22a~22fへ冷媒ガスが漏れること、つまり、湾曲部位611において、第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングが早まることを好適に防止することが可能となっている。
【0106】
さらに、この圧縮機では、抽気通路13bを経て制御圧室27から吸入室28に流通する冷媒ガスの流量を制御弁13によって変化させる抜き制御を行っている。これにより、この圧縮機では、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変化させるに当たって使用する吐出室29内の冷媒ガスの量を少なくできることから、圧縮機の効率を高くすることが可能となっている。
【0107】
(実施例2)
図16に示すように、実施例2の圧縮機では、第2連通路41の先端縁61において、第1縁部61a、第2縁部61b及び第3縁部61cが回転方向に徐々に変化しつつ連続している。これにより、先端縁61は、後端から前端に向かうにつれて、回転方向の先行側から後行側に徐々に延びる形状となっている。この圧縮機における他の構成は、実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0108】
この圧縮機では、最少流量時から、中間流量時を経て最大流量時まで変化する間、第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングが徐々に遅くなるように変化する。こうして、この圧縮機においても、実施例1の圧縮機と同様の作用を奏することが可能となっている。
【0109】
(実施例3)
図17に示すように、実施例3の圧縮機では、第2連通路41の先端縁61において、第1縁部61aと第2縁部61bとは、段差612を有して連続している。これにより、この圧縮機において、先端縁61は、段差612の部分で第2縁部61bから第1縁部61aに一度に変化するようになっている。この圧縮機における他の構成は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0110】
この圧縮機では、中間流量時から最大流量時に変化する際、段差612によって、第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングが急激に変化する。つまり、この圧縮機では、中間流量時から最大流量時に変化した際に、第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングが一気に遅くなるように変化することになる。この圧縮機における他の作用は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0111】
(実施例4)
図18及び
図19に示すように、実施例4の圧縮機では、第2連通路41が孔部41aと、凹部41bとによって構成されている。凹部41bは、表面111に凹設されている。凹部41bは、孔部41aに臨みつつ、孔部41aと連通している。これにより、この圧縮機では、第2連通路41の先端縁61が孔部41aと凹部41bとによって形成されている。具体的には、先端縁61において、第2縁部61b及び第3縁部61cは、凹部41bによって形成されている。これにより、第2縁部61b及び第3縁部61cは、第3縁部61cよりも第1移動体11の回転方向の先行側に位置している。また、この圧縮機では、第1縁部61aと第2縁部61b、すなわち、第1縁部61aと凹部41bとは、段差612を有して連続している。この圧縮機における他の構成は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0112】
この圧縮機では、中間流量時において、先端縁61の第2縁部61bが第1連通路22a~22fと対向する。そして、駆動軸3とともに第1移動体11が回転することにより、第1連通路22a~22fは、第2縁部61bよりも回転方向の後行側に相対移動することで凹部41bと対向する。これにより、第1連通路22a~22fが凹部41bと対向している間は、冷媒ガスは、孔部41aから凹部41bを経て、第1連通路22a~22fに流通する。最少流量時についても同様である。これにより、この圧縮機では、最少流量時及び中間流量時では、最大流量時よりも第1連通路22a~22fと第2連通路41とが連通するタイミングが早くなる。換言すれば、この圧縮機においても、最大流量時は、第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングが遅くなる。この圧縮機における他の作用は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0113】
(実施例5)
図20に示すように、実施例3の圧縮機では、第2連通路41の先端縁61において、第3縁部61cが第2縁部61bよりも第1移動体11の回転方向の後行側に位置している。より具体的には、第3縁部61cは、第2縁部61bよりも回転方向の後行側であって、第1縁部61aよりも回転方向の先行側に位置している。つまり、先端縁61において、第2縁部61bが最も回転方向の先行側に位置している。また、第1縁部61aと第2縁部61bとは、段差612を有して連続している。そして、第3縁部61cと第2縁部61bとは、段差613を有して連続している。これにより、この圧縮機において、先端縁61は、段差612の部分で第2縁部61bから第1縁部61aに一度に変化するようになっているとともに、段差613の部分で第3縁部61cから第2縁部61bに一度に変化するようになっている。この圧縮機における他の構成は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0114】
この圧縮機では、第3縁部61cが第2縁部61bよりも回転方向の後行側に位置しているため、最少流量時は、中間流量時よりも、第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングが遅くなる。このため、この圧縮機では、実施例1の圧縮機と比べて、最少流量時に圧縮室45a~45fが再膨張行程から吸入行程に移行するタイミングが遅くなる。これにより、この圧縮機では、最少流量時における吸入行程の期間がより短くなるため、圧縮室45a~45fに吸入される冷媒ガスの流量、ひいては、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量がより少なくなる。ここで、第3縁部61cは、第1縁部61aよりも回転方向の先行側に位置しているため、最少流量時における第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングは、最大流量時における第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングよりも早くなっている。この圧縮機における他の作用は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0115】
ここで、この圧縮機において、最少流量時における第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングと、最大流量時における第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングとが同じとなるように、第3縁部61cにおける回転方向の位置を設計しても良い。また、最大流量時における第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングよりも、最少流量時における第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通タイミングが遅くなるように、第3縁部61cにおける回転方向の位置を設計しても良い。
【0116】
以上において、本発明を実施例1~5に即して説明したが、本発明は上記実施例1~5に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0117】
例えば、実施例1~5の圧縮機を両頭ピストン式圧縮機として構成しても良い。
【0118】
また、実施例1~5の圧縮機において、第2連通路41の先端縁61に第1移動体11の回転方向の後行側に向かって突出する突部等を形成し、この突部等によって第1縁部61aを構成しても良い。また、第2連通路41の先端縁61に第1移動体11の回転方向の先行側に向かって延びる切欠き部等を形成し、この切欠き部等によって第2縁部61bを構成しても良い。
【0119】
さらに、実施例1~5の圧縮機では、第1移動体11及び第2移動体12によって、移動体10を形成している。しかし、これに限らず、移動体10について、第2軸孔23とほぼ同径をなす円筒状に形成し、駆動軸3を移動体10に挿通させても良い。
【0120】
また、実施例1~5の圧縮機について、圧縮室45a~45fに一旦吸入された冷媒ガスの一部が第2連通路41によって圧縮室45a~45fから排出される構成としても良い。そして、連通角度の変化によって、圧縮室45a~45fから排出される冷媒ガスの流量を変化させることにより、駆動軸3の1回転あたりで、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変化させても良い。
【0121】
さらに、実施例1~5の圧縮機では、第1移動体11の案内窓35a内における位置、すなわち、移動体10の駆動軸心O方向の位置に応じて、連通角度が変化することにより、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変化させている。しかし、これに限らず、移動体10の駆動軸心O方向の位置に応じて、第1連通路22a~22fと第2連通路41との連通面積が変化することにより、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を変化させる構成としても良い。
【0122】
また、実施例1~5の圧縮機について、第2移動体12は、第2径部352と摺動せずに、第2移動体12と第2径部352との間に間隙が形成されていても良い。
【0123】
さらに、実施例1~5の圧縮機について、各シュー8a、8bに換えて、固定斜板5の後面側にスラスト軸受を介して揺動板を支持するとともに、揺動板とピストン7とをコンロッドによって連接するワッブル型の変換機構を採用しても良い。
【0124】
また、実施例1~5の圧縮機において、外部から制御弁13への電流のONとOFFとを切り替えて制御圧力を制御する外部制御を行っても良く、外部からの電流に依らずに制御圧力を制御する内部制御を行っても良い。ここで、制御弁13への電流をOFFにすることによって弁開度を大きくするように構成すると、圧縮機の停止時において、弁開度が大きくなり、制御圧室27の制御圧力を低くできる。このため、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少の状態で圧縮機を起動できることから、起動ショックを低減することができる。
【0125】
さらに、実施例1~5の圧縮機において、給気通路13aを経て吐出室29から制御圧室27に導入される冷媒ガスの流量を制御弁13によって変化させる入れ制御を行っても良い。この場合には、制御圧室27を迅速に高圧にすることができ、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量を速やか増大させることができる。ここで、外部制御を行う場合であって、制御弁13への電流をOFFにすることによって、制御弁13が弁開度を小さくするように構成すると、圧縮機の停止時において、弁開度が小さくなり、制御圧室27の制御圧力を低くできる。このため、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が最少の状態で圧縮機を起動できることから、起動ショックを低減することができる。
【0126】
また、実施例1~5の圧縮機において、制御弁13に換えて、給気通路13aと抽気通路13bとの両者で開度を調整可能な三方弁を採用しても良い。
【0127】
さらに、実施例1~5の圧縮機について、制御弁13が制御圧室27の制御圧力を減少させることで、圧縮室45a~45fから吐出室29に吐出される冷媒ガスの流量が増大する構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0129】
1…ハウジング
3…駆動軸
5…固定斜板
7…ピストン
9…弁形成プレート(吐出弁)
10…移動体
13…制御弁
21…シリンダブロック
21a~21f…シリンダボア
22a~22f…第1連通路
23…第2軸孔(軸孔)
29…吐出室
31…斜板室
35a…案内窓
41…第2連通路
45a~45f…圧縮室
61…先端縁
61a…第1縁部
61b…第2縁部
63…後端縁
173…第1軸孔(軸孔)
612…段差