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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20220614BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20220614BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220614BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220614BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/36 Z
H01L23/36 D
H02M7/48 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019084647
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020181912
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊東 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 一善
(72)【発明者】
【氏名】吉川 薫
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-23181(JP,A)
【文献】特開2014-49475(JP,A)
【文献】特開2018-195700(JP,A)
【文献】国際公開第2009/093982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/36
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパワー素子を並べたパワー素子群が間隔を空けて複数配列されているパワー基板と、
前記パワー基板の板厚方向に前記パワー基板と間隔を空けて配置されており、前記パワー素子を制御する電子部品が実装された制御基板と、
前記パワー基板と前記制御基板との間に配置されており、複数のコンデンサが実装されたコンデンサ基板と、
前記パワー基板が固定されたヒートシンクと、
前記パワー基板と前記コンデンサ基板とを電気的に接続しているスペーサと、を備え、
前記スペーサは、
隣り合う前記パワー素子群同士の間に配置された本体と、
前記パワー素子の並ぶ方向において、前記パワー素子群よりも外側であり、かつ、前記コンデンサ基板の板厚方向から見て前記コンデンサと重なり合わない位置に設けられた筒状の伝熱部と、を備え、
前記伝熱部は、
前記パワー基板に接触する第1接触面と、
前記コンデンサ基板に接触する第2接触面と、
前記第1接触面から前記第2接触面に向けて凹んでおり、前記伝熱部の内外を連通させる切欠部と、を備え、
前記パワー基板には、前記切欠部に向かい合う位置に回路素子が実装されている半導体装置。
【請求項2】
前記伝熱部の軸線方向に直交する方向を前記伝熱部の厚み方向とすると、
前記伝熱部は、前記切欠部の前記厚み方向の寸法よりも前記厚み方向の寸法が長い厚肉部を備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記厚肉部は、前記パワー素子の並ぶ方向において、前記パワー素子群側とは反対側に設けられている請求項2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、直流電力を交流電力に変換して出力する半導体装置は、パワー素子が実装されたパワー基板を備える。パワー基板には、パワー素子に加えてチップコンデンサ等の回路素子が実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-38145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置においては、コストの低減や、配置上の制約を少なくすること等を目的として、パワー基板の小型化が求められる場合がある。
本発明の目的は、パワー基板を小型化することができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する半導体装置は、複数のパワー素子を並べたパワー素子群が間隔を空けて複数配列されているパワー基板と、前記パワー基板の板厚方向に前記パワー基板と間隔を空けて配置されており、前記パワー素子を制御する電子部品が実装された制御基板と、前記パワー基板と前記制御基板との間に配置されており、複数のコンデンサが実装されたコンデンサ基板と、前記パワー基板が固定されたヒートシンクと、前記パワー基板と前記コンデンサ基板とを電気的に接続しているスペーサと、を備え、前記スペーサは、隣り合う前記パワー素子群同士の間に配置された本体と、前記パワー素子の並ぶ方向において、前記パワー素子群よりも外側であり、かつ、前記コンデンサ基板の板厚方向から見て前記コンデンサと重なり合わない位置に設けられた筒状の伝熱部と、を備え、前記伝熱部は、前記パワー基板に接触する第1接触面と、前記コンデンサ基板に接触する第2接触面と、前記第1接触面から前記第2接触面に向けて凹んでおり、前記伝熱部の内外を連通させる切欠部と、を備え、前記パワー基板には、前記切欠部に向かい合う位置に回路素子が実装されている。
【0006】
パワー基板には、回路素子が実装されている。伝熱部に切欠部を設けることで、切欠部を設けない場合に比べて、切欠部に向かい合う位置に配置される回路素子からスペーサまでの絶縁距離を長くすることができる。切欠部を設けていない場合、伝熱部との絶縁距離を確保するため、伝熱部と回路素子との離間距離を長くする必要がある。即ち、パワー基板において、回路素子を実装可能な面積が少なくなる。切欠部を設けて、回路素子を伝熱部の近くに配置できるようにすることで、パワー基板を小型化することができる。
【0007】
上記半導体装置について、前記伝熱部の軸線方向に直交する方向を前記伝熱部の厚み方向とすると、前記伝熱部は、前記切欠部の前記厚み方向の寸法よりも前記厚み方向の寸法が長い厚肉部を備えていてもよい。
【0008】
これによれば、厚肉部によって伝熱部の強度を向上させることができる。
上記半導体装置について、前記厚肉部は、前記パワー素子の並ぶ方向において、前記パワー素子群側とは反対側に設けられていてもよい。
【0009】
厚肉部を設けた箇所では、回路素子と伝熱部との距離が近付き、絶縁距離を確保するために回路素子を離間させる必要が生じる場合がある。パワー素子の並ぶ方向において、パワー素子群側には回路素子が配置される一方で、パワー素子の並ぶ方向において、パワー素子群側の反対側には回路素子が配置されにくい。パワー素子の並ぶ方向において、パワー素子群とは反対側に厚肉部を設けることで、回路素子を伝熱部から離間させる必要が生じにくい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パワー基板を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体装置の分解斜視図。
図2】パワー基板の平面図。
図3】パワー基板の一部を拡大して示す図。
図4】スペーサの斜視図。
図5】スペーサの斜視図。
図6】伝熱部を拡大して示すスペーサの平面図。
図7】コンデンサ基板の平面図。
図8】制御基板を省略した状態の半導体装置の斜視図。
図9図8の9-9線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、半導体装置の一実施形態について説明する。なお、本実施形態の半導体装置は、フォークリフト等の産業車両に搭載されるインバータである。インバータは、バッテリから入力された直流電力を交流電力に変換して、三相モータに出力する。これにより、三相モータが駆動する。三相モータの駆動により産業車両は走行する。
【0013】
図1に示すように、半導体装置10は、ヒートシンク11と、パワー基板20と、制御基板60と、コンデンサ基板50と、を備える。ヒートシンク11は、アルミニウム系金属や銅等の金属製である。ヒートシンク11は、板状の載置部12と、載置部12の板厚方向の一面から突出するフィン13と、を備える。
【0014】
制御基板60は、パワー基板20の板厚方向に対して、パワー基板20と間隔を空けて配置されている。コンデンサ基板50は、パワー基板20と、制御基板60との間に配置されている。パワー基板20の板厚方向と、制御基板60の板厚方向と、コンデンサ基板50の板厚方向は一致している。ヒートシンク11、パワー基板20、コンデンサ基板50及び制御基板60は、層状に配置されているといえる。
【0015】
図1及び図2に示すように、半導体装置10は、複数のパワー素子24と、2つの入力端子25と、3つの出力端子35と、回路素子38と、2つのスペーサ40と、を備える。パワー素子24、入力端子25、出力端子35、スペーサ40及び回路素子38は、パワー基板20に実装されている。本実施形態のパワー素子24は、MOSFETである。なお、パワー素子24としては、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ等を用いることもできる。複数のパワー素子24は、6つのパワー素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6に分かれて配置されている。各パワー素子群G1~G6において、各パワー素子24は、一列に並んでいる。以下、各パワー素子群G1~G6を構成するパワー素子24の並ぶ方向を第1方向とする。
【0016】
各パワー素子群G1~G6は、間隔を空けて配列されている。詳細にいえば、各パワー素子群G1~G6は、パワー基板20の板厚方向の面に沿う方向のうち、第1方向に交差する方向に配列されている。以下、各パワー素子群G1~G6の配列方向を第2方向とする。各パワー素子群G1~G6は、インバータにおける三相の上下アームを構成している。
【0017】
パワー基板20は、載置部12の板厚方向の両面のうちフィン13が設けられた面の反対面に固定されている。本実施形態のパワー基板20は、絶縁金属基板であり、金属製のベースに絶縁層を設けたものである。
【0018】
図2及び図3に示すように、パワー基板20は、絶縁層から露出した複数の導体パターン21,22,23を備える。導体パターン21,22,23には、パワー素子24及び回路素子38が電気的に接続されている。導体パターン21,22,23は、互いに間隔を空けて第2方向に並んで配置されている。導体パターン21,22,23は、入力端子25に接続される2つの導体パターン21、出力端子35に接続される3つの導体パターン22及びスペーサ40に接続される2つの導体パターン23を含む。なお、回路素子38には、抵抗素子、チップコンデンサ、コイル、ダイオード等の種々の部品が含まれる。
【0019】
導体パターン21は、各パワー素子群G1~G6を挟んで配置されている。導体パターン22と、導体パターン23とは、隣り合うパワー素子群G1~G6同士の間に配置されている。導体パターン22と、導体パターン23とは、交互に配置されている。
【0020】
導体パターン23は、隣り合うパワー素子群G1~G6同士の間で第1方向に延びる第1部位23Aと、隣り合う2つのパワー素子群G1~G6よりも第1方向に突出した第2部位23Bと、を備える。第2部位23Bは、第1方向においてパワー素子群G1~G6よりも外側に設けられている。
【0021】
パワー基板20は、第1貫通孔H1を形成する第1貫通孔形成面A1と、第2貫通孔H2を形成する第2貫通孔形成面A2と、を備える。第1貫通孔H1及び第2貫通孔H2は、パワー基板20を板厚方向に貫通している。第1貫通孔H1及び第2貫通孔H2は、それぞれ、複数設けられている。第1貫通孔形成面A1は、第1貫通孔H1を囲む環状の面である。第2貫通孔形成面A2は、第2貫通孔H2を囲む環状の面である。第1貫通孔H1は、パワー基板20において、導体パターン21,22,23の配置された部分に設けられている。第1貫通孔H1は、導体パターン21の配置された部分及び導体パターン22の配置された部分のそれぞれに2つずつ設けられている。第1貫通孔H1は、第1部位23Aの配置された部分に2つ、第2部位23Bの配置された部分に1つ設けられている。
【0022】
図1に示すように、2つの入力端子25と、3つの出力端子35とは、第2方向に間隔を空けて並んでいる。2つの入力端子25は、各パワー素子群G1~G6を挟んで配置されている。即ち、入力端子25は、第2方向において、パワー素子群G1~G6よりもパワー基板20の外縁に寄って配置されている。3つの出力端子35は、2つの入力端子25同士の間に配置されている。入力端子25は、基部26と、基部26から突出する柱状部27と、柱状部27の周面から突出する台座部28と、を備える。出力端子35は、基部36と、基部36から突出する柱状部37と、を備える。入力端子25、及び、出力端子35は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。2つの入力端子25のうちの一方には、バッテリの正極が接続され、2つの入力端子25のうちの他方には、バッテリの負極が接続される。出力端子35には、三相モータが接続される。
【0023】
2つのスペーサ40は、第2方向に間隔を空けて並んでいる。各スペーサ40は、出力端子35同士の間に配置されている。スペーサ40は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。
【0024】
図4及び図5に示すように、スペーサ40は、矩形板状の本体41と、本体41の長手方向の一端に設けられた筒状の伝熱部42と、を備える。本体41は、基部45と、基部45から突出する2つの接触部43と、を備える。2つの接触部43は、本体41の板厚方向に突出している。2つの接触部43と、伝熱部42とは、本体41の長手方向に並んで配置されている。スペーサ40は、本体41の板厚方向にスペーサ40を貫通したスペーサ孔44を形成しているスペーサ孔形成面46を備える。スペーサ孔44は、本体41において各接触部43を備える部分及び伝熱部42に設けられている。
【0025】
本体41は、パワー基板20に接触する接触面47Aと、コンデンサ基板50に接触する接触面48Aと、を備える。本体41の板厚方向の両面のうち各接触部43が設けられた面の反対面はパワー基板20に接触する接触面47Aであり、各接触部43の先端面はコンデンサ基板50に接触する接触面48Aである。伝熱部42は、パワー基板20に接触する第1接触面47Bと、コンデンサ基板50に接触する第2接触面48Bと、を備える。各接触面47A,47B,48A,48Bは、切削加工によって平滑化されている。
【0026】
伝熱部42の軸線方向に直交する方向を伝熱部42の厚み方向とする。図6に示すように、伝熱部42は、厚み方向の寸法が他の部位よりも長い厚肉部49を備える。厚肉部49は、伝熱部42において本体41とは反対側の縁に設けられている。伝熱部42は、第1接触面47Bから第2接触面48Bに向けて凹んでおり、伝熱部42の内外を連通させる切欠部Cを備える。切欠部Cは、本体41の短手方向に向かい合って2箇所に設けられている。伝熱部42の厚み方向に対する切欠部Cの寸法d1は、伝熱部42の厚み方向に対する厚肉部49の寸法d2よりも短い。言い換えれば、厚肉部49の厚み方向の寸法d2は、切欠部Cの厚み方向の寸法d1よりも長い。
【0027】
図2及び図3に示すように、スペーサ40の本体41は、導体パターン23の第1部位23Aに重なりあっている。スペーサ40の伝熱部42は、導体パターン23の第2部位23Bに重なりあっている。これにより、接触面47A,47Bは、パワー基板20の導体パターン23に電気的に接続されている。スペーサ40は、切欠部Cが第2方向を向くように配置されている。2つの切欠部Cは、互いに向かい合うように配置されているため、切欠部Cは、第2方向の両側に開口するように配置されている。パワー基板20に配置された複数の回路素子38のうちの一部の回路素子38Aは、切欠部Cに向かい合っている。
【0028】
スペーサ40の本体41は、パワー素子群G1~G6同士の間に配置されている。スペーサ40の伝熱部42は、パワー素子24の並ぶ方向である第1方向において、パワー素子群G1~G6よりも外側に配置されている。
【0029】
図7及び図8に示すように、半導体装置10は、コンデンサ基板50に実装された複数のコンデンサ54と、樹脂部59と、を備える。コンデンサ基板50において、第1方向の両縁55,56のうち一方の縁55に沿って複数のコンデンサ54は配置されている。コンデンサ基板50の第1方向での中心C1よりも、各コンデンサ54は縁55側に集約して配置されている。コンデンサ基板50の第1方向での中心C1でコンデンサ基板50を二分すると、一方の領域にはコンデンサ54が配置されており、他方の領域にはコンデンサ54が配置されていないことになる。なお、コンデンサ基板50は、縁55に沿う部分の一部に、コンデンサ54が設けられていない非配置領域57を備える。コンデンサ54は、円柱状であり、軸線方向とコンデンサ基板50の板厚方向とが一致するように配置されている。コンデンサ54は、コンデンサ基板50に立設しているといえる。
【0030】
図1及び図7に示すように、コンデンサ基板50は、レジスト51と、レジスト51から露出するパターン52と、出力孔53を形成する出力孔形成面A3と、第3貫通孔H3を形成する第3貫通孔形成面A4と、を備える。パターン52は、コンデンサ54に沿うように設けられている。出力端子35の柱状部37は、出力孔53を挿通している。第3貫通孔H3は、非配置領域57を含む複数箇所に設けられている。第3貫通孔H3は、第1貫通孔H1と同数設けられている。第3貫通孔H3同士の間隔は、第1貫通孔H1同士の間隔と同一である。第3貫通孔H3と、第1貫通孔H1とは、コンデンサ基板50の板厚方向に向かい合って配置されている。樹脂部59は、各パターン52に設けられている。樹脂部59は、パターン52及びコンデンサ54の両方に接触するようにポッティングされた樹脂である。樹脂部59としては、例えば、樹脂に熱伝導性のフィラーを含ませたものが用いられる。
【0031】
図1図8及び図9に示すように、コンデンサ基板50は、入力端子25の基部26、出力端子35の基部36及びスペーサ40に重ねて配置されている。コンデンサ基板50は、非配置領域57とスペーサ40の伝熱部42とが向かい合うように配置されている。コンデンサ基板50の板厚方向から見て、伝熱部42は、コンデンサ54と重ならない位置に配置されているといえる。スペーサ40の接触面48A,48Bは、コンデンサ基板50に接触している。入力端子25の基部26、出力端子35の基部36及びスペーサ40を介して、コンデンサ基板50とパワー基板20とは、電気的に接続されている。
【0032】
図1に示すように、制御基板60は、板厚方向に貫通した出力孔61を形成する出力孔形成面A5を備える。出力端子35の柱状部37は、出力孔61を挿通している。制御基板60は、図示しない基板支持部材によってコンデンサ基板50との間隔を維持した状態で固定されている。
【0033】
半導体装置10は、制御基板60に実装された複数の電子部品63を備える。電子部品63は、各パワー素子群G1~G6を制御する制御回路を構成している。制御回路により各パワー素子群G1~G6が制御されることで、電力変換が行われる。
【0034】
半導体装置10は、パワー基板20及びコンデンサ基板50をヒートシンク11に固定するための複数のネジS1と、絶縁性のインシュレータIと、を備える。
複数のネジS1は、インシュレータIとともにコンデンサ基板50の第3貫通孔H3と、パワー基板20の第1貫通孔H1とを挿通して、ヒートシンク11の載置部12に締結されている。これにより、ネジS1は、パワー基板20とコンデンサ基板50とを共締めしている。また、複数のネジS1のうち一部のネジS1は、第3貫通孔H3、第1貫通孔H1とともにスペーサ40のスペーサ孔44を挿通している。これにより、スペーサ40がパワー基板20に実装されている。
【0035】
次に、半導体装置10の作用について説明する。
半導体装置10を駆動させると、パワー素子24や電子部品63などの電流が流れる部材が発熱する。パワー素子24及びパワー基板20で発した熱は、パワー基板20からヒートシンク11に伝導する。
【0036】
コンデンサ54及びコンデンサ基板50で発した熱は、入力端子25、出力端子35及びスペーサ40を介してパワー基板20に伝導する。パワー基板20に伝導した熱は、ヒートシンク11に伝導する。パワー基板20を介して、コンデンサ基板50の熱をヒートシンク11に伝導させることができる。本実施形態のスペーサ40は、本体41と、伝熱部42を備えているため、本体41及び伝熱部42の両方を伝熱経路としてコンデンサ基板50からパワー基板20に熱が伝導する。仮に、スペーサ40が伝熱部42を備えていない場合、コンデンサ基板50の熱をパワー基板20に伝導させる伝熱経路は、本体41のみとなる。スペーサ40の伝熱経路が本体41のみの場合、コンデンサ基板50及びパワー基板20とのスペーサ40の接触面積が少ないことに加え、スペーサ40の熱容量も少なくなる。このため、スペーサ40を介してパワー基板20に伝導する熱量が少ない。
【0037】
実施形態の半導体装置10では、コンデンサ基板50の縁55側にコンデンサ54が集約されている。コンデンサ54をこのように配置すると、コンデンサ54の重量によって、コンデンサ基板50の縁55側に荷重が集中し、重心位置がコンデンサ基板50の中心C1よりも縁55側に寄る。すると、振動や衝撃などでコンデンサ基板50の縁55側は撓みやすく、コンデンサ54が脱落しやすい。
【0038】
本実施形態のように、伝熱部42をパワー基板20と、コンデンサ基板50の縁55側との間に配置することで、コンデンサ基板50を伝熱部42で支持して、コンデンサ基板50の撓みを抑制できる。
【0039】
また、樹脂部59を設けることで、コンデンサ54の発した熱は、樹脂部59を介してパターン52に伝わる。樹脂部59を設けることで、コンデンサ54からコンデンサ基板50への伝熱経路を増やすことができ、コンデンサ54の放熱性を向上させることができる。また、コンデンサ54の根元が樹脂部59によって補強されることで、コンデンサ54の脱落が更に抑制される。
【0040】
上記したように、伝熱部42を設けることで、伝熱経路を増加させることによるコンデンサ基板50の放熱性の向上や、コンデンサ基板50の撓みの抑制といった効果が得られる。一方で、伝熱部42を設けると、回路素子38を実装する際に、伝熱部42との絶縁距離を確保しつつ回路素子38を配置する必要がある。従って、伝熱部42を設ける場合、パワー基板20において回路素子38を実装可能な面積が少なくなることで、パワー基板20が大型化する原因となる。
【0041】
本実施形態では、伝熱部42に切欠部Cを設けることで、切欠部Cを設けない場合に比べて、切欠部Cに向かい合う位置に配置される回路素子38Aからスペーサ40までの絶縁距離を長くすることができる。切欠部Cを設けていない場合に比べると、回路素子38Aを伝熱部42の近くに配置することができる。
【0042】
本実施形態の効果について説明する。
(1)スペーサの伝熱部42に切欠部Cを設けて、切欠部Cに向かい合うように回路素子38Aを配置している。切欠部Cを設けていない場合に比べると、回路素子38Aを伝熱部42の近くに配置することができる。切欠部Cを設けていない場合に比べて、回路素子38を実装可能な面積が広くなることで、伝熱部42を設けることによるパワー基板20の大型化を抑制することができる。
【0043】
(2)伝熱部42は、厚肉部49を備える。厚肉部49によって伝熱部42の強度を向上させることができる。切欠部Cを設けることで、伝熱部42の強度は低下する。切欠部Cを設けることで低下した強度を補うように厚肉部49を設けることで、ネジS1を締結する際の応力等によって伝熱部42が破断することを抑制できる。また、厚肉部49を設けることで、第1接触面47B及び第2接触面48Bの面積を増加させることができることに加えて、伝熱部42の熱容量が増加する。このため、コンデンサ基板50からパワー基板20に熱を伝導させやすくなる。
【0044】
(3)厚肉部49は、第1方向のうちパワー素子群G1~G6側とは反対側に設けられている。厚肉部49を設けた箇所では、回路素子38と伝熱部42との距離が近付き、絶縁距離を確保するために回路素子38を離間させる必要が生じる場合がある。第1方向において、パワー素子群G1~G6側には回路素子38が配置される一方で、第1方向において、パワー素子群G1~G6側の反対側には回路素子38が配置されにくい。厚肉部49を第1方向において、パワー素子群G1~G6とは反対側に設けることで、回路素子38を伝熱部42から離間させる必要が生じにくい。
【0045】
なお、実施形態は、以下のように変更してもよい。
○厚肉部49は、第1方向のうちパワー素子群G1~G6側など、どのような位置に設けられていてもよい。この場合、パワー基板20に実装された回路素子38との絶縁距離を確保できる位置に厚肉部49を設けることが好ましい。
【0046】
○伝熱部42全体に厚肉部を設けてもよい。この場合、伝熱部42の軸線方向の両端部のうちコンデンサ基板50側の端部の厚み方向の寸法を、伝熱部42の軸線方向の両端部のうちパワー基板20側の端部の厚み方向の寸法よりも長くする。即ち、回路素子38との絶縁距離を確保する必要がある第1接触面47B側では伝熱部42の厚み方向の寸法を短くし、第2接触面48B側では伝熱部42の厚み方向の寸法を長くする。
【0047】
○伝熱部42は、厚肉部49を備えていなくてもよい。
○スペーサ40に設けられる切欠部Cの数及び位置は適宜変更してもよい。切欠部Cの数及び位置は、回路素子38の配置位置などによって適宜変更することができる。
【0048】
○スペーサ40は、ネジS1以外で固定されていてもよい。例えば、スペーサ40は、半田などの接合材により、パワー基板20及びコンデンサ基板50に固定されていてもよい。
【0049】
○コンデンサ54は、中心C1よりも縁55側に集約されていなくてもよい。即ち、コンデンサ基板50の中心C1を挟んだ両側にコンデンサ54が配置されていてもよい。なお、この場合、中心C1を挟んで一方に配置されるコンデンサ54の数と、他方に配置されるコンデンサ54の数とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。コンデンサ54の数が異なる場合、第1方向において、重心位置が偏っている方向に伝熱部42を設けてもよい。即ち、コンデンサ基板50の撓みやすい位置に伝熱部42が設けられるようにしてもよい。
【0050】
○スペーサ40の伝熱部42は、本体41の長手方向の両端に設けられていてもよい。この場合、各伝熱部42が第1方向において、パワー素子群G1~G6よりも外側に配置されることになる。
【0051】
○ヒートシンク11としては、フィン13を有さない放熱板などでもよい。なお、ヒートシンクとしては、気体状の冷媒によって冷却されるものでもよいし、液状の冷媒によって冷却されるものでもよい。
【0052】
○半導体装置10は、樹脂部59を備えていなくてもよい。この場合、パターン52はレジスト51から露出していなくてもよい。
○半導体装置10は、インバータ以外であってもよい。例えば、半導体装置10はコンバータなど、インバータ以外の電力変換装置であってもよい。また、パワー素子24として、例えば、ダイオード等を用いた半導体装置10であってもよい。
【0053】
○半導体装置10は、産業車両に搭載されるものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0054】
C…切欠部、G1~G6…パワー素子群、10…半導体装置、11…ヒートシンク、20…パワー基板、24…パワー素子、38,38A…回路素子、40…スペーサ、41…本体、42…伝熱部、47B…第1接触面、48B…第2接触面、49…厚肉部、50…コンデンサ基板、54…コンデンサ、60…制御基板、63…電子部品。
図1
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図9