IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーカラー株式会社の特許一覧

特許7088150カーボンナノチューブ分散液およびその利用
<>
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図1
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図2
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図3
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図4
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図5
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図6
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図7
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図8
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図9
  • 特許-カーボンナノチューブ分散液およびその利用 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ分散液およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/174 20170101AFI20220614BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220614BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220614BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220614BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20220614BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220614BHJP
【FI】
C01B32/174 ZNM
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
B82Y30/00
B82Y40/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019161799
(22)【出願日】2019-09-05
(62)【分割の表示】P 2018122748の分割
【原出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020002007
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄
(72)【発明者】
【氏名】枡岡 友明
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206413(JP,A)
【文献】国際公開第2006/013706(WO,A1)
【文献】特開2015-150515(JP,A)
【文献】国際公開第2009/110570(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/126534(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/158-32/178
H01M 4/62
H01M 4/13-4/1399
B82Y 30/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とするカーボンナノチューブ(A)。
(1)カーボンナノチューブの平均外径が3nmを超えて10nm未満であること。
(2)粉末X線回折分析において、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が3°~6°であること。
(3)カーボンナノチューブ(A)のラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が1.0~4.5であること。
【請求項2】
カーボンナノチューブ(A)の外径の標準偏差が0.7nmを超えて3.5nm以下であることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブ(A)。
【請求項3】
カーボンナノチューブ(A)の体積抵抗率が1.0×10-2~2.5×10-2Ω・cmであることを特徴とする請求項1または2記載のカーボンナノチューブ(A)。
【請求項4】
カーボンナノチューブ(A)のラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が1.0~3.0であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載のカーボンナノチューブ(A)。
【請求項5】
カーボンナノチューブ(A)の平均外径をX、カーボンナノチューブの外径の標準偏差をσとした際に、X±σが、5.0nm≦X±σ≦14.0nmを満たすことを特徴とする請求項1~4いずれか記載のカーボンナノチューブ(A)。
【請求項6】
下記(1)、(2)および(3)を満たすカーボンナノチューブ(A)を含んでなる二次電池。
(1)カーボンナノチューブの平均外径が3nmを超えて10nm未満であること。
(2)粉末X線回折分析において、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が3°~6°であること。
(3)カーボンナノチューブ(A)のラマンスペクトルにおいて1560~1600cm -1 の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm -1 の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が0.5~4.5であること。
【請求項7】
下記(1)、(2)および(3)を満たすカーボンナノチューブ(A)の製造方法であって、
下記工程(1)、(2)および(3)の工程を順に含むことを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。

(1)カーボンナノチューブの平均外径が3nmを超えて10nm未満であること。
(2)粉末X線回折分析において、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が3°~6°であること。
(3)カーボンナノチューブ(A)のラマンスペクトルにおいて1560~1600cm -1 の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm -1 の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が0.5~4.5であること。

工程(1)カーボンナノチューブが入った耐熱性容器を炉内に設置する工程
工程(2)炉内の酸素濃度を0.1%以下にした後、炉内温度を最大温度で1000~1600℃まで昇温する工程
工程(3)前記最大温度まで達した後、塩素ガスを導入する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの分散液に関する。さらに詳しくは、カーボンナノチューブ分散液と樹脂とを含む樹脂組成物、カーボンナノチューブ分散液と樹脂と活物質とを含む合材スラリー、それを塗布した電極膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの普及に伴って、リチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池は、通常、炭素系材料からなる負極と、リチウムイオンを可逆的に出入りさせる活物質を含有する正極と、それらを浸漬する非水系電解質とを備えており、正極は、活物質、導電材およびバインダーからなる電極ペーストを、集電板に塗工することにより製造されている。
【0003】
正極では、導電材の配合により、活物質の導電性が高められるが、活物質に対する導電材の分散が不十分であると、導電性の改善も不十分となる。そのため、電極活物質、導電材、バインダーおよび極性溶媒を含有し、導電材を分散した際の平均粒径が500nm以下である、リチウムイオン電池の電極形成用スラリーが提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
導電材としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、フラーレン、グラフェン、微細炭素材料等が使用されている。特に微細炭素繊維の一種であるカーボンナノチューブは、直径1μm以下の太さのチューブ状のカーボンであり、その特異な構造に基づく高い導電性などからリチウムイオン電池用の導電材としての使用が検討されている。(例えば、特許文献2、3および4参照)中でも、外径10nm~数10nmの多層カーボンナノチューブは比較的安価であり、実用化が期待されている。
【0005】
平均外径が小さいカーボンナノチューブを用いると、少量で効率的に導電ネットワークを形成することができ、リチウムイオン電池用の正極および負極中に含まれる導電材量を低減することができる。しかしながら、平均外径が細いカーボンナノチューブは凝集力が強く分散が困難であるため、十分な分散性を有するカーボンナノチューブ分散液を得ることができなかった。
【0006】
そこで、カーボンナノチューブの分散媒に対する分散性を改善するため、様々な試みがなされている。例えば、超音波をかけながらカーボンナノチューブをアセトン中に分散させる方法(特許文献5参照)が提案されている。しかし、超音波を照射している間は分散できても照射が終了するとカーボンナノチューブの凝集が始まり、カーボンナノチューブの濃度が高くなると凝集してしまう問題があった。
【0007】
また、様々な分散剤を用いてカーボンナノチューブを分散安定化する方法が提案されている。例えば、水溶性高分子ポリビニルピロリドン(以下、PVP)等のポリマー系分散剤を用いた水及びNMPへの分散が提案されている(特許文献2、3および6参照)。しかしながら、引用文献2では、外径10~15nmのカーボンナノチューブを用いて作製した電極の評価を行っているが、電極抵抗が高い問題があった。また、引用文献3では、DBP吸油量の小さなカーボンナノチューブを用いた分散液が提案されているが、分散性は向上するものの、高い導電性を得ることが難しい問題があった。引用文献6では、外径の小さい単層CNTを用いた分散の検討が行われているが、溶媒中にカーボンナノチューブを高濃度分散することが困難であった。また、引用文献7では、粉末X線回折分析を行った時に24°±2°に2θピークが存在し、そのピークの半価幅が6.27°であるカ
ーボンナノチューブが検討されているが、単層カーボンナノチューブと2層カーボンナノチューブの混合組成物であり、超音波ホモジナイザーを用いて、分散処理を行う必要があった。したがって、外径が小さいカーボンナノチューブを分散媒中に高濃度かつ均一分散したカーボンナノチューブ分散液を得ることは、用途拡大に向けた重要な課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-309958号公報
【文献】特開2011-70908号公報
【文献】特開2014-19619号公報
【文献】特開2008-285368号公報
【文献】特開2000-86219号公報
【文献】特開2005-162877号公報
【文献】特開2008-230947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来の問題を解決するためのものであり、平均外径が小さいカーボンナノチューブを用いたカーボンナノチューブ分散液を提供することである。
【0010】
また、本発明が解決しようとする課題は、導電性の高い電極膜を得るためのカーボンナノチューブ分散液およびカーボンナノチューブ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。発明者らは、平均外径が3nmを超えて10nm未満であり、粉末X線回折において、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が3°~6°のカーボンナノチューブを使用することにより、導電性に優れたカーボンナノチューブ分散液が得られることを見出した。発明者らは、かかる発見を基に、本発明をするに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とするカーボンナノチューブ(A)。に関する。
(1)カーボンナノチューブの平均外径が3nmを超えて10nm未満であること。
(2)粉末X線回折分析において、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が3°~6°であること。
(3)カーボンナノチューブ(A)のラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が0.5~4.5であること。
【0013】
また、本発明は、カーボンナノチューブ(A)の外径の標準偏差が0.7nmを超えて3.5nm以下であることを特徴とする前記カーボンナノチューブ(A)に関する。
【0014】
また、本発明は、カーボンナノチューブ(A)の体積抵抗率が1.0×10-2~2.5×10-2Ω・cmであることを特徴とする前記カーボンナノチューブ(A)に関する。
【0015】
また、本発明は、カーボンナノチューブ(A)のラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が1.0~3.0であることを特徴とする前記カーボンナノチューブ(A)に関する。
【0017】
また、本発明は、カーボンナノチューブ(A)の平均外径をX、カーボンナノチューブの外径の標準偏差をσとした際に、X±σが、5.0nm≦X±σ≦14.0nmを満たすことを特徴とする前記カーボンナノチューブ(A)に関する。
また、本発明は、前記カーボンナノチューブ(A)を含んでなる二次電池に関する。
また、本発明は、下記(1)、(2)および(3)の工程を順に含むことを特徴とする請求項1~5いずれか記載のカーボンナノチューブの製造方法に関する。
(1)カーボンナノチューブが入った耐熱性容器を炉内に設置する工程
(2)炉内の酸素濃度を0.1%以下にした後、炉内温度を最大温度で1000~1600℃まで昇温する工程
(3)前記最大温度まで達した後、塩素ガスを導入する工程
【発明の効果】
【0021】
本発明のカーボンナノチューブ分散液を使用することにより、導電性に優れた樹脂組成物、合材スラリーおよび電極膜が得られる。よって、高い導電性が求められる様々な用途分野において、本発明のカーボンナノチューブ分散液を使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
図2図2は、実施例2で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
図3図3は、実施例3で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
図4図4は、実施例4で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
図5図5は、実施例5で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
図6図6は、実施例6で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
図7図7は、比較例1で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
図8図8は、比較例2で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
図9図9は、比較例3で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
図10図10は、比較例4で使用したカーボンナノチューブについて、透過型電子顕微鏡を用いて、任意に300本のカーボンナノチューブを観察した際のカーボンナノチューブの外径と本数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のカーボンナノチューブ分散液、樹脂組成物、合材スラリーおよびそれを塗工した電極膜について詳しく説明する。
【0024】
(1)カーボンナノチューブ(A)
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、平面的なグラファイトを円筒状に巻いた形状を有している。カーボンナノチューブ(A)は単層カーボンナノチューブが混在するものであってもよい。単層カーボンナノチューブは一層のグラファイトが巻かれた構造を有する。多層カーボンナノチューブは、二又は三以上の層のグラファイトが巻かれた構造を有する。また、カーボンナノチューブ(A)の側壁はグラファイト構造でなくともよい。例えば、アモルファス構造を有する側壁を備えるカーボンナノチューブをカーボンナノチューブ(A)として用いることもできる。
【0025】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の形状は限定されない。かかる形状としては、針状、円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボーン又はカップ積層型)、トランプ状(プレートレット)及びコイル状を含む様々な形状が挙げられる。本実施形態においてカーボンナノチューブ(A)の形状は、中でも、針状、又は、円筒チューブ状であることが好ましい。カーボンナノチューブ(A)は、単独の形状、または2種以上の形状の組合せであってもよい。
【0026】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の形態は、例えば、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ及びカーボンナノファイバーを挙げることができるが、これらに限定されない。カーボンナノチューブ(A)は、これらの単独の形態又は二種以上を組み合わせられた形態を有していてもよい。
【0027】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の平均外径は3nmを超えて10nm未満である。中でも、4nmを超えて10nm未満であることが好ましく、4nmを超えて8nm未満であることがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の外径の標準偏差は0.7nmを超えて3.5nm以下であることが好ましく、1.4nmを超えて3.5nm以下であることが好ましく、1.4nmを超えて3nm以下であることがより好ましい。
【0029】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の平均外径は、カーボンナノチューブの平均外径をX[nm]、カーボンナノチューブの外径の標準偏差をσ[nm]とした時に、X±σ[nm]が、5.0nm≦X±σ≦14.0nmであることが好ましく、5.0nm≦X±σ≦10.0nmであることがさらに好ましい。X±2σ[nm]が、2.0nm≦X±2σ≦17.0nmであることが好ましく、3.0nm≦X±2σ≦13.5nmであることがより好ましく、3.0nm≦X±2σ≦12.0nmであることがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の外径および平均外径は次のように求められる。まず透過型電子顕微鏡によって、カーボンナノチューブ(A)を観測するとともに撮像する。次に観測写真において、任意の300本のカーボンナノチューブ(A)を選び、それぞれの外径を計測する。次に外径の数平均としてカーボンナノチューブ(A)の平均
外径(nm)を算出する。
【0031】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の繊維長は、0.1~150μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0032】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の炭素純度はカーボンナノチューブ(A)中の炭素原子の含有率(質量%)で表される。炭素純度はカーボンナノチューブ(A)100質量%に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、99.5質量%以上がより好ましい。
【0033】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)中に含まれる金属量はカーボンナノチューブ(A)100質量%に対して、10質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましく、1質量%未満がさらに好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。カーボンナノチューブ(A)に含まれる金属としては、カーボンナノチューブ(A)を合成する際に触媒として使用される金属や金属酸化物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、シリカ、マンガンやモリブデン等の金属、金属酸化物やこれらの複合酸化物が挙げられる。
【0034】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、通常二次粒子として存在している。この二次粒子の形状は、例えば一般的な一次粒子であるカーボンナノチューブ(A)が複雑に絡み合っている状態でもよい。カーボンナノチューブ(A)を直線状にしたものの集合体であってもよい。直線状のカーボンナノチューブ(A)の集合体である二次粒子は、絡み合っているものと比べるとほぐれ易い。また直線状のものは、絡み合っているものに比べると分散性が良いのでカーボンナノチューブ(A)として好適に利用できる。
【0035】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、表面処理を行ったカーボンナノチューブでもよい。またカーボンナノチューブ(A)は、カルボキシル基に代表される官能基を付与させたカーボンナノチューブ誘導体であってもよい。また、有機化合物、金属原子、又はフラーレンに代表される物質を内包させたカーボンナノナノチューブ(A)も用いることができる。
【0036】
カーボンナノチューブ(A)の層構成は下記方法で粉末X線回折分析することにより解析することができる。
【0037】
まず、カーボンナノチューブ(A)を所定のサンプルホルダーに表面が平らになるように詰め、粉末X線回折分析装置にセットし、15°から35°までX線源の照射角度を変化させ測定する。X線源としては例えばCuKα線が用いられる。その時にピークが現れる回折角2θを読み取ることでカーボンナノチューブ(A)の評価が可能である。グラファイトでは通常2θが26°付近にピークが検出され、これが層間回折によるピークであることが知られている。カーボンナノチューブ(A)もグラファイト構造を有するため、この付近にグラファイト層間回折によるピークが検出される。ただし、カーボンナノチューブは円筒構造であるために、その値はグラファイトとは異なってくる。その値2θが25°±2°の位置にピークが出現することで単層ではなく、多層構造を有している組成物を含んでいることが判断できる。この位置に出現するピークは多層構造の層間回折によるピークであるため、カーボンナノチューブ(A)の層数を判断することが可能となる。単層カーボンナノチューブは層数が1枚しかないので、単層カーボンナノチューブのみでは25°±2°の位置にピークは出現しない。しかしながら、単層カーボンナノチューブであっても、100%単層カーボンナノチューブということはなく、多層カーボンナノチューブ等が混入している場合は2θが25°±2°の位置にピークが出現する場合がある。
【0038】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は2θが25°±2°の位置にピークが出現する。また粉末X線回折分析により検出される25°±2°のピークの半価幅からも層構成を解析することができる。すなわち、このピークの半価幅が小さいほど多層カーボンナノチューブ(A)の層数が多いと考えられる。逆にこのピークの半価幅が大きいほど、カーボンナノチューブの層数が少ないと考えられる。
【0039】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、粉末X線回折分析を行った時に回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が3°~6°であり、4°~6°であることが好ましく、5°~6°であることがより好ましい。
【0040】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)のG/D比はラマン分光分析法により求められる。本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、ラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際に、G/D比が、0.5~4.5であり、0.7~3.0であることが好ましく、1.0~3.0であることがより好ましい。
【0041】
ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は種々あるが、ここでは532nmおよび632nmを利用する。ラマンスペクトルにおいて1590cm-1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm-1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高い。
【0042】
測定条件によってラマン分光分析の波数は変動することがあるため、ここで規定する波数は波数±10cm-1で規定するものとする。
【0043】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)の体積抵抗率は1.0×10-2~2.5×10-2Ω・cmであることが好ましく、1.0×10-2~2.0×10-2Ω・cmであることが好ましく、1.2×10-2~1.8×10-2Ω・cmであることがさらに好ましい。カーボンナノチューブ(A)の体積抵抗率は粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51))を用いて測定することができる。
【0044】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)のBET比表面積は200~1000m2
gのものが好ましく、300~900m2/gのものがより好ましく、400~800m2/gのものが特に好ましい。
【0045】
本実施形態のカーボンナノチューブ(A)は、平均外径が3nmを超えて10nm未満であり、粉末X線回折分析において、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅3°~6°であり、ラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が0.5~3.0であれば特に限定されず、どのような方法で製造したカーボンナノチューブでもよい。例えば、レーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法及び燃焼法により、カーボンナノチューブ(A)を得ることができる。
【0046】
(2)溶媒(B)
本実施形態の溶媒(B)は、カーボンナノチューブ(A)が分散可能な範囲であれば特に限定されないが、水、及びまたは、水溶性有機溶媒のいずれか一種、若しくは二種以上からなる混合溶媒であることが好ましい。
【0047】
水溶性有機溶媒としては、アルコール系(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ベンジルアルコールなど)、多価アルコール系(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコールなど)、多価アルコールエーテル系(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなど)、アミン系(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなど)、アミド系(N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルカプロラクタムなど)、複素環系(シクロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトンなど)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシドなど)、スルホン系(ヘキサメチルホスホロトリアミド、スルホランなど)、低級ケトン系(アセトン、メチルエチルケトンなど)、その他、テトラヒドロフラン、尿素、アセトニトリルなどを使用することができる。この中でも、水またはアミド系有機溶媒であることがより好ましく、アミド系溶媒の中でもN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンが特に好ましい。
【0048】
本実施形態の溶媒(B)として、アミド系有機溶媒のみを使用する場合、溶媒(B)中の水分量が500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
【0049】
(3)分散剤(C)
本実施形態の分散剤(C)は、カーボンナノチューブ(A)を分散安定化できる範囲で特に限定されず、界面活性剤、樹脂型分散剤を使用することができる。界面活性剤は主にアニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性に分類される。カーボンナノチューブ(A)の分散に要求される特性に応じて適宜好適な種類の分散剤を、好適な配合量で使用することができる。
【0050】
アニオン性界面活性剤を選択する場合、その種類は特に限定されない。具体的には脂肪酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸スルホン酸塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル及びポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩及びβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮
合物のナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
またカチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩類及び第四級アンモニウム塩類がある。具体的にはステアリルアミンアセテート、トリメチルヤシアンモニウムクロリド、トリメチル牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、メチルオレイルジエタノールクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムジサルフェート、セチルピリジニウムブロマイド、4-アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)-ドデシルブロマイド及びドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。また両性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
またノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びアルキルアリルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
選択される界面活性剤は単独の界面活性剤に限定されない。このため二種以上の界面活性剤を組み合わせて使用することも可能である。例えばアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の組み合わせ、又はカチオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の組み合わせが利用できる。その際の配合量は、それぞれの界面活性剤成分に対して好適な配合量とすることが好ましい。組み合わせとしてはアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の組み合わせが好ましい。アニオン性界面活性剤はポリカルボン酸塩であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤はポリオキシエチレンフェニルエーテルであることが好ましい。
【0054】
また樹脂型分散剤として具体的には、セルロース誘導体(セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、シアノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンが挙げられる。特にメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0055】
(4)カーボンナノチューブ分散液
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブ(A)と溶媒(B)と分散剤(C)を含むものである。
【0056】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液を得るには、カーボンナノチューブ(A)を溶媒(B)中に分散させる処理を行うことが好ましい。かかる処理を行うために使用される分散装置は特に限定されない。
【0057】
分散装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機を使用することができる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(BRANSON社製Advanced Digital Sonifer(登録商標)、MODEL 450DA、エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMI
X社「フィルミックス」等、シルバーソン社製「アブラミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、コロイドミル(PUC社製「PUCコロイドミル」
、IKA社製「コロイドミルMK」)類、コーンミル(IKA社製「コーンミルMKO」等)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液の固形分の量は、カーボンナノチューブ分散液100質量%に対して、0.1~30質量%が好ましく、0.5~25質量%が好ましく、1~10質量%が好ましく、1~5質量%が特に好ましい。
【0059】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液中の分散剤(C)の量は、カーボンナノチューブ(A)100質量%に対して、3~300質量%使用することが好ましい。また導電性の観点から5~100質量%使用することが好ましく、5~50質量%使用することがさらに好ましく、5~25質量%使用することが特に好ましい。
【0060】
本実施形態のカーボンナノチューブ分散液中のカーボンナノチューブ(A)の繊維長は、0.1~10μmが好ましく、0.2~5μmが好ましく、0.3~2μmが特に好ましい。
【0061】
(4)バインダー(D)
バインダー(D)とは、物質間を結合する樹脂である。
【0062】
本実施形態のバインダー(D)としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を有する高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
【0063】
本実施形態のバインダー(D)としてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000~2,000,000が好ましく、100,000~1,000,000がより好ましく、200,000~1,000,000が特に好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性や密着性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性や密着性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、分散された粒子が著しく凝集してしまうことがある。
【0064】
本発明の想定する産業上の利用可能性から、バインダー(D)は、フッ素原子を有する高分子化合物を含むことが好ましく、フッ素原子を有する高分子化合物であることが好ましく、フッ化ビニリデン系共重合体であることがさらに好ましく、ポリフッ化ビニリデンであることが特に好ましい。
【0065】
(5)カーボンナノチューブ樹脂組成物
本実施形態のカーボンナノチューブ樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(A)と溶媒
(B)と分散剤(C)とバインダー(D)とを含むものである。
【0066】
本実施形態のカーボンナノチューブ樹脂組成物を得るには、カーボンナノチューブ分散液(C)とバインダー(D)を混合し、均一化することが好ましい。混合方法としては、従来公知の様々な方法を行うことができる。カーボンナノチューブ樹脂組成物は前記カーボンナノチューブ分散液で説明した分散装置を用いて作製することができる。
【0067】
(6)活物質(E)
本実施形態の活物質(E)とは、電池反応の基となる材料のことである。活物質は起電力から正極活物質と負極活物質に分けられる。
【0068】
正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリ
アニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0069】
負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiXFe23、LiXFe34、LiXWO2(xは0<x<1の数である。)、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
【0070】
正極活物質は、Al、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属を含むリチウムとの複合酸化物であることが好ましく、Al、Co、Ni、Mnのうちいずれかを含むリチウムとの複合酸化物であることがより好ましく、Ni、および/または、Mnを含むリチウムとの複合酸化物であることが特に好ましい。これらの活物質を用いたとき、特に良好な効果を得ることができる。
【0071】
活物質のBET比表面積は0.1~10m2/gのものが好ましく、0.2~5m2/gのものがより好ましく、0.3~3m2/gのものがさらに好ましい。
【0072】
活物質の平均粒子径は0.05~100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1~50μmの範囲内である。本明細書でいう活物質の平均粒子径とは、活物質を電子顕微鏡で測定した粒子径の平均値である。
【0073】
(7)合材スラリー
本実施形態の合材スラリーとは、カーボンナノチューブ(A)と溶媒(B)と分散剤(C)とバインダー(D)と活物質(E)を含むものである。
【0074】
本実施形態の合材スラリーを得るには、カーボンナノチューブ樹脂組成物に活物質を加
えた後、分散させる処理を行うことが好ましい。かかる処理を行うために使用される分散装置は特に限定されない。合材スラリーは前記カーボンナノチューブ分散液で説明した分散装置を用いて、合材スラリーを得ることができる。
【0075】
合材スラリー中の活物質(E)の量は合材スラリー100質量%に対して、20~85質量%であることが好ましく、40~85質量%であることが特に好ましい。
【0076】
合材スラリー中のカーボンナノチューブ(A)の量は活物質100質量%に対して、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることが好ましく0.1~3質量%であることが好ましい。
【0077】
合材スラリー中のバインダー(A)の量は活物質100質量%に対して、0.5~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましく、1~5質量%であることが特に好ましい。
【0078】
合材スラリーの固形分の量は、合材スラリー100質量%に対して、30~90質量%であることが好ましく、40~85質量%であることが好ましい。
【0079】
合材スラリー中の水分量は500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
【0080】
(7)電極膜
本実施形態の電極膜とは、集電体上に合材スラリーを塗工乾燥することで、電極合材層を形成した塗膜である。
【0081】
本実施形態の電極膜に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0082】
集電体上に合材スラリーを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0083】
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0084】
以上のようなカーボンナノチューブ分散液を用いた合材スラリーは導電性が良好であることがわかった。
【0085】
導電性が良好である理由は、平均外径が3nmを超えて10nm未満であり、粉末X線回折分析において、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅3°~6°のカーボンナノチューブは、一般的なカーボンナノチューブと比較し、外径が小さく、層の厚みが小さいため、導電パスを形成しやすいためである。
【実施例
【0086】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中、「カーボンナノチューブ」を「CNT」を略記することがある。
【0087】
<物性の測定方法>
後述の各実施例及び比較例において使用されたCNTの物性は以下の方法により測定した。
【0088】
<CNTの体積抵抗率>
粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51))を用い、試料質量1.2gとし、粉体用プローブユニット(四探針・リング電極、電極間隔5.0mm、電極半径1.0mm、試料半径12.5mm)により、印加電圧リミッタを90Vとして、種々加圧下の導電性粉体の体積抵抗率[Ω・cm]を測定した。1g/cm3の密度におけるCNTの体積抵抗率の値につい
て評価した。
【0089】
<CNTのラマン分光分析>
ラマン顕微鏡(XploRA、株式会社堀場製作所社製)にCNTを設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定条件は取り込み時間60秒、積算回数2回、減光フィルタ10%、対物レンズの倍率20倍、コンフォーカスホール500、スリット幅100μm、測定波長は100~3000cm-1とした。測定用のCNTはスライドガラス上に分取し、スパチュラを用いて平坦化した。得られたピークの内、スペクトルで1560~1600cm-1の範囲内で最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内で最大ピーク強度をDとし、G/Dの比をCNTのG/D比とした。
【0090】
<CNTの粉末X線回折分析>
アルミ試料板(外径φ46mm、厚さ3mm、試料部φ26.5mm、厚さ2mm)の中央凹部にCNTをのせ、スライドガラスを用いて、平坦化した。その後、試料を載せた面に薬包紙をのせ、さらにアルミハイシートパッキンをのせた面に対して、1トンの荷重をかけて平坦化した。その後、薬包紙とアルミハイシートパッキンを除去して、CNTの粉末X線回折分析用サンプルを得た。その後、X線回折装置(Ultima2100、株式会社リガク社製)にCNTの粉末X線回折分析用サンプルを設置し、15°から35°まで操作し、分析を行った。サンプリングは0.02°毎に行い、スキャンスピードは2°/min.とした。電圧は40kV、電流は40mA、X線源はCuKα線とした。この時得られる回折角2θ=25°±2°に出現するプロットをそれぞれ11点単純移動平均し、そのピークの半価幅をCNTの半価幅とした。ベースラインは2θ=16°および2θ=34°のプロットを結んだ線とした。
【0091】
<CNT純度の測定>
CNTをマイクロ波試料前処理装置(マイルストーンゼネラル社製、ETHOS1)を使用し、酸分解し、CNTに含まれる金属を抽出した。その後、マルチ型ICP発光分光分析装置(Agilent社製、720-ES)を用いて分析を行い、抽出液に含まれる金属量を算出した。CNTの純度は次のようにして計算した。
CNT純度(%)=((CNT質量-CNT中の金属質量)÷CNT質量)×100
【0092】
<電極膜の体積抵抗率>
合材スラリーを、アプリケーターを用いて、70±10μmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、(株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP、MCP-T610を用いて乾燥後の
塗膜の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。測定後、アルミ箔上に形成した電極合材層の厚みを掛けて、電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)とした。電極合材層の厚みは、膜厚計(NIKON社製、DIGIMICRO MH-15M)を用いて、電極膜中の3点を測定した平均値から、アルミ箔の膜厚を引き算し、電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)とした。
【0093】
<電極膜の剥離強度>
合材スラリーを、アプリケーターを用いて、70±10μmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。その後、塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本カットした。剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ(株)製)をステンレス板上に貼り付け、作製した電池電極合材層を両面テープのもう一方の面に密着させ、一定速度(50mm/分)で下方から上方に引っ張りながら剥がし、このときの応力の平均値を剥離強度とした。
【0094】
<CNT合成用触媒及びCNTの製造例>
後述の各実施例及び比較例において使用されたCNTは以下の方法により作製した。
【0095】
CNT合成用触媒(A)
水酸化コバルト60質量部、酢酸マグネシウム・四水和物138質量部、酢酸マンガン16.2質量部をそれぞれ耐熱性容器に秤取り、電気オーブンを用いて、170±5℃の温度で1時間乾燥させて水分を蒸発させた後、粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)を用いて、SPEEDのダイヤルを3に調整し、1分間粉砕した。その後、粉砕したそれぞれの粉末を粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)を用いて、SPPEDのダイヤルを2に調整し、30秒間混合してCNT合成用触媒前駆体(A)を作製した。そして、CNT合成用触媒前駆体(A)を耐熱性容器に移し替え、マッフル炉(FO510、ヤマト科学株式会社製)を使用し、空気雰囲気、450±5℃の条件で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してCNT合成用触媒(A)を得た。
【0096】
CNT合成用触媒(B)
水酸化コバルト60質量部、酢酸マグネシウム・四水和物138質量部、炭酸マンガン16.2質量部、アエロジル(AEOSIL(登録商標)200、日本アエロジル株式会社製)4.0質量部をそれぞれ耐熱性容器に秤取り、電気オーブンを用いて、170±5℃の温度で1時間乾燥させて水分を蒸発させた後、粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)を用いてSPEEDのダイヤルを3に調整し、1分間粉砕した。その後、粉砕したそれぞれの粉末を粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)を用いて、SPEEDのダイヤルを2に調整し、30秒間混合してCNT合成用触媒前駆体(B)を作製した。そして、CNT合成用触媒前駆体(B)を耐熱性容器に移し替え、マッフル炉(FO510、ヤマト科学株式会社製)を使用し、空気雰囲気、450±5℃の条件で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してCNT合成用触媒(B)を得た。
【0097】
CNT合成用触媒(C)
酢酸マグネシウム4水和物1000質量部を耐熱性容器に秤取り、電気オーブンを用いて、170±5℃の雰囲気温度で6時間乾燥させた後、粉砕機(サンプルミルKIIW-I型、株式会社ダルトン社製)を用いて、1mmのスクリーンを装着し、粉砕し、酢酸マグネシウム乾燥粉砕品を得た。酢酸マグネシウム乾燥粉砕品45.8部、炭酸マンガン8.1部、酸化珪素(SiO2、日本アエロジル社製:AEROSIL(登録商標)200
)1.0部、スチールビーズ(ビーズ径2.0mmφ)200部をSMサンプル瓶(株式
会社三商製)に仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて、30分間粉砕混合処理を行った。その後、ステンレスふるいを使用し、粉砕混合した粉末とスチールビーズ(ビーズ径2.0mmφ)を分離し、CNT合成用触媒担持体を得た。その後、水酸化コバルト(II)30質量部を耐熱性容器に秤取り、170±5℃の雰囲気温度で2時間乾燥させ、CoHO2を含むコバルト組成物を得た。さらにその後、CNT合成用
触媒担持体54.9質量部とコバルト組成物29質量部を粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)に仕込み、標準フタを装着し、SPEEDダイヤルを2に調節し、30秒間粉砕混合し、CNT合成用触媒前駆体を得た。CNT合成用触媒前駆体を耐熱性容器に移し替え、マッフル炉(FO510、ヤマト科学株式会社製)を使用し、空気雰囲気、450±5℃の条件で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してCNT合成用触媒(C)を得た。
【0098】
CNT合成用触媒(D)
特開2015-123410の実施例1と同様の方法により、CNT合成用触媒(D)を得た。
【0099】
<CNT(A)の合成>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、前記CNT合成用触媒(A)2gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。窒素ガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、横型反応管中の雰囲気を酸素濃度1体積%以下とした。次いで、外部ヒーターにて加熱し、横型反応管内の中心温度が680℃になるまで加熱した。680℃に到達した後、炭素源としてプロパンガスを毎分2Lの流速で反応管内に導入し、1時間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管の温度を100℃以下になるまで冷却し取り出すことで、CNT(A)を得た。
【0100】
<CNT(B)の合成>
CNT合成用触媒(A)をCNT合成用触媒(B)に変更した以外はCNT(A)の合成と同様の方法により、CNT(B)を得た。
【0101】
<CNT(C)の合成>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、前記CNT合成用触媒(C)1gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。窒素ガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、横型反応管中の雰囲気温度が710℃になるまで加熱した。710℃に到達した後、炭化水素としてエチレンガスを毎分2Lの流速で反応管内に導入し、7分間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管の温度を100℃以下になるまで冷却し取り出すことでCNT(C)を得た。
【0102】
<CNT(D)の合成>
接触反応時間を7分から15分に変更した以外はCNT(C)の合成と同様の方法により、CNT(D)を得た。
【0103】
<CNT(E)>
多層カーボンナノチューブ(JEIO社製、JENOTUBE 8S)をCNT(E)とした。
【0104】
<CNT(F)の合成>
CNT(E)をカーボン製の耐熱性容器に1000gを計量した。その後、CNTが入ったカーボン製の耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内を1Torr(133Pa
)以下に真空排気し、更にカーボン製ヒーターに通電を行い、炉の内部を1000℃まで昇温させた。次に、アルゴンガスを炉内に導入して、炉内の圧力が70Torr(9.33kPa)となるように調整し、その後毎分1Lのアルゴンガスを炉内に導入した。その後、アルゴンガスに加えて、塩素ガスを導入し、炉内の圧力が90Torr(11.99kPa)となるように調整し、当該圧力となった後は毎分0.3Lの塩素ガスを炉内に導入した。そのままの状態で、1時間保持した後に通電を停止し、さらにアルゴンガスと塩素ガスとの導入を停止して、真空冷却した。最後に、1Torr(133Pa)以下の圧力で真空冷却を12時間行った後、炉内が室温まで冷却されていることを確認したうえで大気圧になるまで窒素ガスを炉内に導入し、耐熱性容器を取り出し、純化CNT(F)を得た。
【0105】
<CNT(G)の合成>
CNT(E)120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、CNTが入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内に窒素ガスを導入して、陽圧を保持しながら、炉内中の空気を排出した。炉内の酸素濃度が0.1%以下になった後、30時間かけて、1600℃まで加熱した。炉内温度を1600℃に保持しながら、塩素ガスを50L/分の速度で50時間導入した。その後、窒素ガスを50L/分で導入して陽圧を維持したまま冷却し、CNT(G)を得た。
【0106】
<CNT(H)の合成>
CNT合成用触媒(D)を用いた以外は、特開2015-123410の実施例9と同様の方法により、CNT(H)を得た。
【0107】
(実施例1)
ガラス瓶(M-225、柏洋硝子株式会社製)に、CNT(A)を3.9部、分散剤(株式会社日本触媒社製、ポリビニルピロリドン K-30)を1.95部、NMPを124部およびジルコニアビーズ(ビーズ径1.25mmφ)200部を仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて10時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを分離して、CNT分散液(A)を得た。
【0108】
(実施例2~4)、(比較例1~5)
表1に掲載したCNTに変更した以外は同様の方法により、CNT分散液(B)~(D)、(H)~(L)を得た。
【0109】
(実施例5)
ガラス瓶(M-225、柏洋硝子株式会社製)に、CNT(E)を1.95部、分散剤(株式会社日本触媒社製、ポリビニルピロリドン K-30)を0.98部、NMPを127部およびジルコニアビーズ(ビーズ径1.25mmφ)200部を仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて10時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを分離して、CNT分散液(E)を得た。
(実施例6、7)
表1に掲載したCNTに変更した以外は同様の方法により、CNT分散液(F)~(G)を得た。
【0110】
【表1】
【0111】
(実施例8)
容量150cm3のプラスチック容器にPVDF(Solvey社製、Solef#5
130)を8質量%溶解したNMPを4.7質量部に計量した。その後、CNT分散液(A)0.5質量部を添加し、自転・公転ミキサー(シンキ―社製あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらに、CNT分散液(A)を5.7質量部を添加し、再度自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌して、カーボンナノチューブ樹脂組成物(A)を得た。さらにその後、正極活物質(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製、HED(登録商標)NCM-111 1100)を36.9質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌した。最後に、NMPを2.2質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌し、合材スラリー(A)を得た。
【0112】
(実施例9~11)、(比較例6~10)
表2に掲載したCNT分散液に変更した以外は実施例8と同様の方法により、カーボンナノチューブ樹脂組成物および合材スラリーを得た。
【0113】
【表2】
【0114】
(実施例12)
容量150cm3のプラスチック容器にPVDF(Solvey社製、Solef#5
130)を8質量%溶解したNMPを4.3質量部に計量した。その後、CNT分散液(E)0.5質量部を添加し、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらに、CNT分散液(E)11.1質量部を添加し、再度自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌して、カーボンナノチューブ樹脂組成物(E)を得た。さらにその後、正極活物質(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製、HED(登録商標)NCM-111 1100)を34.1質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌した。最後に、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで
2.5分間撹拌し、合材スラリー(E)を得た。
【0115】
(実施例13、14)
CNT分散液(E)をCNT分散液(F)、(G)に変更した以外は実施例12と同様の方法により、カーボンナノチューブ樹脂組成物(F)、(G)および合材スラリー(F)、(G)を得た。
【0116】
(実施例15)
容量150cm3のプラスチック容器にPVDF(Solvey社製、Solef#5
130)を8質量%溶解したNMPを4.3質量部に計量した。その後、CNT分散液(E)0.5質量部を添加し、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらに、CNT分散液(E)8.7質量部を添加し、再度自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌して、カーボンナノチューブ樹脂組成物(M)を得た。さらにその後、正極活物質(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製、HED(登録商標)NCM-111 1100)を34.2質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌した。最後に、NMPを2.3質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌し、合材スラリー(M)を得た。
【0117】
(実施例16、17)
CNT分散液(E)をCNT分散液(F)、(G)に変更した以外は実施例15と同様の方法により、カーボンナノチューブ樹脂組成物(N)、(O)および合材スラリー(N)、(O)を得た。
【0118】
表3に実施例12~17で作製したカーボンナノチューブ樹脂組成物および合材スラリーを示す。
【0119】
【表3】
【0120】
(実施例18)
合材スラリー(A)を、アプリケーターを用いて、70±10μmとなるようにアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させた。
【0121】
(実施例19~27)、(比較例11~15)
表4に掲載した合材スラリーに変更した以外は実施例18と同様の方法により、電極膜(B)~(O)を得た。
【0122】
【表4】
【0123】
表5に実施例18~27、比較例11~15で作製した合材スラリーの評価結果を示す。評価基準は以下の通りとした。導電性評価は電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)が6未満を+++(優良)、6以上8未満を++(良)、8以上10未満を(可)、10を超えるものを-(不可)とした。密着性評価は剥離強度(N/cm)が0.4以上を+++(優良)、0.2以上0.4未満を++(良)、0.1以上0.2未満を+(可)、0.1未満を-(不可)とした。総合評価は、導電性評価と密着性評価の+の数の和が4個以上かつ-を含まないものを◎(優良)、導電性評価と密着性評価の+の数の和が2個以上かつ-を含まないものを○(良)、導電性評価または密着性評価に-を含むものを×(不可)とした。
【0124】
【表5】
【0125】
(実施例28)
ガラス瓶(M-225、柏洋硝子株式会社製)に、CNT(E)を1.95部、分散剤(株式会社日本触媒社製、ポリビニルピロリドン K-30)を0.98部、イオン交換水を127部およびジルコニアビーズ(ビーズ径1.25mmφ)200部を仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて10時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを分離して、CNT分散液(WA)を得た。
【0126】
(実施例29)
容量150cm3のプラスチック容器に増粘剤としてのエーテル化度0.45~0.5
5のカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲンPL-15)2質量%水溶液7.4質量部と、結着剤としてのSBRエマルション40質量%溶液(日本ゼオン(株)製、品名:BM-400B)0.9質量部を計量した。その後、CNT分散液(S)0.5質量部を添加し、自転・公転ミキサー(シンキ―社製あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌した。さらに、CNT分散液(WA)を11.5質量部を添加し、再度自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで30秒間撹拌して、カーボンナノチューブ樹脂組成物(WA)を得た。さらにその後、正極活物質(炭素被覆量5質量%のLiFePO4)を3
5.5質量部加えて、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌した。最後に、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpmで2.5分間撹拌し、合材スラリー(WA)を得た。
【0127】
表6に実施例29で作製した合材スラリーの評価結果を示す。評価基準は以下の通りとした。導電性評価は電極膜の体積抵抗率(Ω・cm)が6未満を+++(優良)、6以上8未満を++(良)、8以上10未満を(可)、10を超えるものを-(不可)とした。密着性評価は剥離強度(N/cm)が0.4以上を+++(優良)、0.2以上0.4未満を++(良)、0.1以上0.2未満を+(可)、0.1未満を-(不可)とした。総合評価は、導電性評価と密着性評価の+の数の和が4個以上かつ-を含まないものを◎(優良)、導電性評価と密着性評価の+の数の和が2個以上かつ-を含まないものを○(良)、導電性評価または密着性評価に-を含むものを×(不可)とした。
【0128】
【表6】
【0129】
表7に実施例1~7、29および比較例1~5で用いたCNTを使用して作製した、CNT分散液、合材スラリー、電極膜の評価結果を示す。総合評価は、電極膜の総合評価と同様とした。
【0130】
【表7】
【0131】
上記実施例では、平均外径が3nmを超えて10nm未満であり、半価幅が3~6°のCNTを用いた。比較例では、半価幅が3°未満のCNTを用いた。実施例では、比較例に比べて導電性の高い電極膜が得られた。少ない添加量にて導電性の高い電極膜が得られることから、本発明は従来のCNT分散液では実現しがたい導電性を有する電極膜を提供できることが明らかとなった。
【0132】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定され
るものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10