(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】負極材料の製造方法、及び電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20220614BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220614BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2019185985
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2021-02-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】力田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】唐 捷
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/142066(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/175173(WO,A1)
【文献】特開2011-028918(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163931(WO,A1)
【文献】特開2018-045904(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157735(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056448(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/162885(WO,A1)
【文献】特開2014-127313(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107579253(CN,A)
【文献】特開2001-291528(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108598439(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の負極材料の製造方法であって、
溶解用溶液に三酸化タングステンを添加して、前記三酸化タングステンを溶解させる溶解ステップと、
前記三酸化タングステンが溶解した前記溶解用溶液に、アモルファスカーボンを添加して、添加溶液を生成する添加ステップと、
前記添加溶液の液体成分を除去することで、表面に官能基を含むアモルファスカーボンと、前記アモルファスカーボンの表面に設けられる三酸化タングステンとを含む負極材料を生成する負極材料生成ステップと、
を含む、負極材料の製造方法。
【請求項2】
前記三酸化タングステンの添加量と前記アモルファスカーボンの添加量との合計量に対する、前記三酸化タングステンの添加量の比率を、2重量%より多く8重量%以下とする、請求項
1に記載の負極材料の製造方法。
【請求項3】
平均粒径が100nm以上20μm以下の前記三酸化タングステンを添加する、請求項
1又は請求項
2に記載の負極材料の製造方法。
【請求項4】
前記負極材料生成ステップは、
前記添加溶液を乾燥させて負極中間物を生成する乾燥ステップと、
前記負極中間物を加熱する加熱ステップと、を含む、請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の負極材料の製造方法。
【請求項5】
前記溶解ステップにおいて、前記溶解用溶液として、アルカリ性の溶液を用いる、請求項
1から請求項
4のいずれか1項に記載の負極材料の製造方法。
【請求項6】
請求項
1から請求項
5のいずれか1項に記載の負極材料の製造方法と、正極材料を製造するステップと、を含む、電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極材料、電池、負極材料の製造方法、及び電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池の負極材料としては、炭素が用いられる場合がある。例えば特許文献1には、黒鉛の表面に三酸化タングステンを配置した負極が記載されている。黒鉛の表面に三酸化タングステンを配置することで、リチウムイオンの拡散性を向上させることが可能となり、容量などの電池の特性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような負極材料においては、炭素の表面に適切に三酸化タングステンを配置するためには、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、炭素の表面に適切に三酸化タングステンを配置できる負極材料、電池、負極材料の製造方法、及び電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る負極材料は、電池の負極材料であって、アモルファスカーボンと、前記アモルファスカーボンの表面に設けられる三酸化タングステンと、を含む。
【0007】
六方晶の結晶構造の前記三酸化タングステンを含むことが好ましい。
【0008】
単斜晶と三斜晶との少なくともいずれか一方の結晶構造の前記三酸化タングステンを含むことが好ましい。
【0009】
黒鉛を含まないことが好ましい。
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る電池は、前記負極材料と、正極材料とを含む。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る負極材料の製造方法は、電池の負極材料の製造方法であって、溶解用溶液に三酸化タングステンを添加して、前記三酸化タングステンを溶解させる溶解ステップと、前記三酸化タングステンが溶解した前記溶解用溶液に、アモルファスカーボンを添加して、添加溶液を生成する添加ステップと、前記添加溶液の液体成分を除去することで、負極材料を生成する負極材料生成ステップと、を含む。
【0012】
前記三酸化タングステンの添加量と前記アモルファスカーボンの添加量との合計量に対する、前記三酸化タングステンの添加量の比率を、2重量%より多く8重量%以下とすることが好ましい。
【0013】
平均粒径が100nm以上20μm以下の前記三酸化タングステンを添加することが好ましい。
【0014】
前記負極材料生成ステップは、前記添加溶液を乾燥させて負極中間物を生成する乾燥ステップと、前記負極中間物を加熱する加熱ステップと、を含むことが好ましい。
【0015】
前記溶解ステップにおいて、前記溶解用溶液として、アルカリ性の溶液を用いることが好ましい。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る電池の製造方法は、前記負極材料の製造方法と、正極材料を製造するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、炭素の表面に適切に三酸化タングステンを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電池の模式的な一部断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る負極の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の電池の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施例における負極材料を撮像した図である。
【
図5】
図5は、本実施例における負極材料を撮像した図である
【
図6】
図6は、比較例における負極材料を撮像した図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
【
図14】
図14は、本実施形態の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
【
図15】
図15は、比較例の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0020】
(電池)
図1は、本実施形態に係る電池の模式的な一部断面図である。本実施形態に係る電池1は、リチウムイオン二次電池である。電池1は、ケージング10と、電極群12と、図示しない電解液と、を備える。ケージング10は、内部に電極群12及び電解液を収納するケースである。ケージング10内には、電極群12以外にも、電極群12に接続される配線や端子などを備えていてよい。
【0021】
電極群12は、負極14と、正極16と、セパレータ18とを備える。電極群12は、負極14と正極16との間に、セパレータ18が配置される構成となっている。
図1の例では、電極群12は、矩形状のセパレータ18を間に挟んで、矩形状の負極14と矩形状の正極16とが交互に積層された、いわゆる積層型の電極群構造である。ただし、電極群12は、積層型の電極群構造に限られない。例えば、電極群12は、帯状のセパレータ18を間に挟んで、帯状の負極14と帯状の正極16とが積層されて、これらが巻回される、巻回型の電極群構造であってもよい。
【0022】
(負極)
図2は、本実施形態に係る負極の模式的な断面図である。
図2に示すように、負極14は、集電層20と、負極材料層22と、を備える。集電層20は、導電性部材で構成される層である。集電層20の導電性部材としては、例えば銅が挙げられる。負極材料層22は、本実施形態に係る負極材料を含む層である。負極材料層22は、集電層20の表面に設けられる。集電層20の厚みは、例えば、15μm以上40μm以下程度であってよく、負極材料層22の厚みは、例えば20μm以上200μm以下程度であってよい。
【0023】
負極材料層22は、負極材料を含む。負極材料は、アモルファスカーボンと、アモルファスカーボンの表面に設けられる三酸化タングステンと、を含む。より具体的には、負極材料層22の負極材料は、アモルファスカーボンの粒子であるアモルファスカーボン粒子30と、三酸化タングステンの粒子であるWO3(三酸化タングステン)粒子32と、を含む。なお、ここでの粒子とは、形状が球状などに限定されるものではなく、線状やシート形状など、任意の形状であってよい。
【0024】
負極材料層22の負極材料は、複数のアモルファスカーボン粒子30を含む。アモルファスカーボンとは、結晶構造を有さない非晶質なカーボンであり、グラファイト構造のような平面的な結晶構造やダイヤモンドの様な結晶構造を有さないカーボンである。アモルファスカーボンは、無定形炭素やダイヤモンドライクカーボンと呼ばれることもあり、sp2結合とsp3結合とが混在した炭素であるともいえる。
【0025】
アモルファスカーボン粒子30は、粒子全体がアモルファスカーボンで構成されており、不可避的不純物を除き、アモルファスカーボン以外の成分を含有しないことが好ましい。具体的には、アモルファスカーボン粒子30には、黒鉛が含まれていないことが好ましい。
【0026】
アモルファスカーボン粒子30は、平均粒径が、1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。平均粒径がこの範囲にあることで、電極膜の強度を保つことができる。
【0027】
負極材料層22の負極材料は、複数のWO3粒子32を含む。WO3粒子32は、アモルファスカーボン粒子30の表面に設けられている。より詳しくは、それぞれのアモルファスカーボン粒子30に対し、複数のWO3粒子32が設けられている。WO3粒子32は、アモルファスカーボン粒子30の表面に密着(接触)しており、さらに言えば、WO3粒子32とアモルファスカーボン粒子30とは、複合化されている。ここでの複合化とは、少なくとも外力が作用しない場合においては、WO3粒子32をアモルファスカーボン粒子30から引き離すことが不可能になっている状態を指す。
【0028】
WO3粒子32は、六方晶の結晶構造のものと、単斜晶と三斜晶の結晶構造のものとを含む。すなわち、負極材料は、六方晶の結晶構造の三酸化タングステンと、単斜晶と三斜晶の結晶構造の三酸化タングステンとを含む。ただし、負極材料は、六方晶の結晶構造の三酸化タングステンと、単斜晶の結晶構造の三酸化タングステンと、三斜晶の結晶構造の三酸化タングステンとの少なくとも1つを含んでいてよい。以上をまとめると、負極材料は、六方晶、単斜晶及び三斜晶の少なくとも1つの三酸化タングステンを含むことが好ましく、六方晶の三酸化タングステンと、単斜晶又は三斜晶の三酸化タングステンとを含むことがより好ましく、六方晶、単斜晶及び三斜晶の三酸化タングステンを含むことがさらに好ましい。なお、負極材料が、六方晶の三酸化タングステンに加えて、単斜晶や三斜晶などの他の結晶構造の三酸化タングステンも含んでいる場合は、それぞれの結晶構造の三酸化タングステンのうち、六方晶の三酸化タングステンの含有量が最大であることが好ましい。ただし、負極材料に含まれる三酸化タングステンの結晶構造はこれに限られず、例えば、他の結晶構造の三酸化タングステンを含んでもよい。また、負極材料は、非晶質の三酸化タングステンを含んでいてもよい。
【0029】
WO3粒子32の平均粒径は、アモルファスカーボン粒子30の平均粒径より小さい。WO3粒子32の平均粒径は、100nm以上20μm以下であることが好ましく、100nm以上1μm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
このように、負極材料は、アモルファスカーボン粒子30の表面に、粒子状の三酸化タングステン(WO3粒子32)が設けられた構造となっているが、それに限られない。負極材料は、アモルファスカーボンの表面に三酸化タングステンが設けられる構造であればよく、アモルファスカーボンの表面に設けられる三酸化タングステンの形状は、任意であってよい。
【0031】
なお、負極材料層22は、負極材料(アモルファスカーボン粒子30及びWO3粒子32)以外の物質を含んでよい。負極材料層22は、例えば、バインダを含んでよい。バインダの材料は任意であってよいが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)等が挙げられる。バインダは1種類のみで使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。ただし、負極材料層22は、言い換えれば負極材料は、黒鉛を含まないことが好ましい。
【0032】
アモルファスカーボン及び三酸化タングステンの同定は、X線回折法によって行うことができる。例えば、分析対象物のX線回折分析結果におけるピーク波形が、カーボンのピーク波形を示すが、既知のグラファイト構造における(002)ピーク波形がブロードになる場合に、アモルファスカーボンであると判断できる。また例えば、分析対象物のX線回折分析結果におけるピークを示す位置(角度)が、既知の三酸化タングステンにおけるピークを示す位置に一致する場合には、その分析対象物が、三酸化タングステンを含むと判断してよい。
【0033】
また、WO3粒子32がアモルファスカーボン粒子30の表面に配置されていることは、SEM(Scanning Electron Microscope)や、TEM(Transmission Electron Microscope)などの電子顕微鏡で観察することで、確認することができる。
【0034】
また、本実施形態における平均粒径とは、一次粒径(1つの粒子の径)の平均を指す。平均粒径の測定方法は任意であるが、例えば、SEM写真を用いて測定してもよい。
【0035】
(正極)
正極16は、集電層と正極材料層とを備える。正極16の集電層は、導電性部材で構成される層であり、ここでの導電性部材としては、例えばアルミニウムが挙げられる。正極材料層は、正極材料の層であり、正極16の集電層の表面に設けられる。正極の集電層の厚みは、例えば、10μm以上30μm以下程度であってよく、正極材料層の厚みは、例えば10μm以上100μm以下程度であってよい。
【0036】
正極材料層は、正極材料を含む。正極材料は、リチウムを含有する化合物であるリチウム化合物の粒子を含む。リチウム化合物としては、リチウム含有金属酸化物やリチウム含有リン酸塩などであってよい。より詳しくは、リチウム化合物は、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNiaCobMncO2(ただし、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1である)、LiFePO4等が挙げられる。リチウム化合物は、1種類の材料のみを含んでもよいし、2種類以上の材料を含んでもよい。また、正極材料層は、正極材料以外の物質を含んでよく、例えば、バインダを含んでよい。バインダの材料は任意であってよいが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PAA等が挙げられる。バインダは1種類のみで使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
【0037】
(セパレータ)
セパレータ18は、絶縁性の部材である。本実施形態では、セパレータ18は、例えば、樹脂製の多孔質膜であり、樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。また、セパレータ18は、異なる材料の膜が積層された構造であってもよい。また、セパレータ18は、セパレータ13は、耐熱層を有していてもよい。耐熱層は、高融点の物質を含有する層である。耐熱層は、たとえば、アルミナ等の無機材料の粒子を含有してもよい。
【0038】
(電解液)
電池1に設けられる電解液は、非水電解液である。電解液は、電極群12内の空隙に含浸されている。電解液は、例えば、リチウム塩および非プロトン性溶媒を含む。リチウム塩は、非プロトン性溶媒に分散、溶解している。リチウム塩としては、たとえば、LiPF6、LiBF4、Li[N(FSO2)2]、Li[N(CF3SO2)2]、Li[B(C2O4)2]、LiPO2F2などが挙げられる。非プロトン性溶媒は、例えば、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルの混合物であってよい。環状炭酸エステルとしては、たとえば、EC、PC、ブチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等が挙げられる。
【0039】
(電池の製造方法)
次に、本実施形態に係る電池1の製造方法を説明する。
図3は、本実施形態の電池の製造方法を説明するフローチャートである。
図3に示すように、本製造方法においては、ステップS10からステップS16の工程で、負極14を形成する。
【0040】
具体的には、溶解用溶液にWO3原料を添加して、WO3原料を溶解用溶液に溶解させる(ステップS10;溶解ステップ)。WO3原料は、負極材料の原料として用いられる三酸化タングステンである。WO3原料は、例えば、平均粒径が100nm以上20μm以下であることが好ましく、100nm以上1μm以下であることがさらに好ましい。溶解用溶液は、WO3原料、すなわち三酸化タングステンが溶解可能な溶液である。溶解用溶液は、例えばアルカリ性の溶液が用いられ、本実施形態ではアンモニア水溶液が用いられる。溶解用溶液は、溶解用溶液全体に対するアンモニアの濃度が、重量%で、5%以上30%以下であることが好ましい。
【0041】
WO3原料は、例えば、CaWO4を塩酸と反応後、アンモニアで溶解し、結晶化させたパラタングステン酸アンモニウム焼成することで製造されるが、任意の方法で製造されてよい。
【0042】
ステップS10では、溶解用溶液に含有されるアンモニア量に対するWO3原料の添加量の比率を、モル%で、1%以上10%以下とすることが好ましい。WO3原料の添加量の比率を1%以上とすることで、溶解用溶液内での三酸化タングステンの量を十分にすることができ、WO3原料の添加量の比率を10%以下とすることで、三酸化タングステンが溶解せずに残ることを抑制できる。また、ステップS10では、溶解用溶液にWO3原料を添加して、所定時間撹拌することで、溶解用溶液にWO3原料を溶解させる。ここでの所定時間は、6時間以上24時間以下であることが好ましい。所定時間を6時間以上とすることでWO3原料を溶解用溶液に適切に溶解させ、所定時間を24時間以下とすることで、製造時間が長くなり過ぎることを抑制できる。
【0043】
次に、WO3原料が溶解した溶解用溶液(ここではタングステン酸アンモニウム溶液)に、アモルファスカーボン原料を添加して、添加溶液を生成する(ステップS12;添加ステップ)。アモルファスカーボン原料は、原料として用いられるアモルファスカーボンである。アモルファスカーボン原料は、例えば、平均粒径が、1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。アモルファスカーボン原料の平均粒径をこの範囲とすることで、電池の容量を高くすることが可能となる。
【0044】
アモルファスカーボン原料は、例えば、オイルファーネス法で製造されてよい。オイルファーネス法では、例えば高温雰囲気中に原料油を噴霧して熱分解させた後、急冷することで、粒子状のアモルファスカーボン原料を製造する。ただし、アモルファスカーボン原料の製造方法はこれに限られず任意であってよい。
【0045】
ここで、溶解用溶液へWO3原料とアモルファスカーボン原料とを添加する際の、WO3原料の添加量とアモルファスカーボン原料の添加量との合計量に対する、WO3原料の添加量の比率を、WO3原料添加割合とする。本製造方法では、WO3原料添加割合を、重量%で、2%より多く8%以下とすることが好ましく、5%以上8%以下とすることがより好ましい。WO3原料添加割合をこの範囲とすることで、アモルファスカーボン粒子30の表面にWO3粒子32を適切に形成して、負極として、電池の容量を高くすることが可能となる。
【0046】
ステップS12では、WO3原料が溶解してアモルファスカーボン原料が添加された溶解用溶液、すなわち添加溶液を撹拌して、添加溶液中にアモルファスカーボン原料を分散させる。また、ステップS12では、アモルファスカーボン原料とWO3との親和性を向上させるために、添加溶液に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いてよい。界面活性剤の添加量は、溶解用溶液に対するWO3原料の添加量に対して、重量%で、2%より多く8%以下とすることが好ましい。この数値範囲とすることで、アモルファスカーボン原料とWO3との親和性を適切に向上させる。
【0047】
次に、添加溶液の液体成分を除去することで、負極材料を生成する(負極材料生成ステップ)。本実施形態では、負極材料生成ステップとして、ステップS14、S16を実行する。具体的には、添加溶液を乾燥させて、負極中間物を生成する(ステップS14;乾燥ステップ)。ステップS14においては、大気中で添加溶液を80℃で12時間乾燥させることで、添加溶液に含まれる液体成分を除去、すなわち蒸発させる。負極中間物は、添加溶液の液体成分が除去されて残った固形成分を含むものであるといえる。
【0048】
次に、負極中間物を加熱することで、負極材料を生成する(ステップS16;加熱ステップ)。負極中間物を加熱することで、アモルファスカーボン粒子30の表面にWO3粒子32が設けられた負極材料が形成される。負極中間物を加熱する温度は、500℃以上900℃以下であることが好ましい。負極中間物を加熱する温度をこの範囲とすることで、負極材料を適切に形成できる。また、負極中間物を加熱する時間は、1時間以上10時間以下であることが好ましい。負極中間物の加熱時間をこの範囲とすることで、負極材料を適切に形成できる。
【0049】
次に、形成した負極材料を用いて、負極14を形成する(ステップS18)。すなわち、集電層20の表面に、負極材料を含んだ負極材料層22を形成して、負極14を形成する。
【0050】
また、本製造方法は、正極16を形成する(ステップS20)。ステップS20においては、アモルファスカーボン原料の代わりに、リチウム化合物であるリチウム化合物原料を用いる点以外は、ステップS10からステップS16と同じの方法で、正極材料を形成する。そして、正極16用の集電層の表面に、正極材料を含んだ正極材料層を形成して、正極16を形成する。
【0051】
負極14と正極16を形成したら、負極14と正極16とを用いて、電池1を製造する(ステップS22)。具体的には、負極14とセパレータ18と正極16とを積層して電極群12を形成して、電極群12と電解液とをケージング10内に収納して、電池1を製造する。
【0052】
このように、本実施形態においては、ステップS10からステップS16で示したように、三酸化タングステンを溶解した溶解用溶液にアモルファスカーボンを添加した後に液体成分を除去することにより、負極材料を製造する。このような負極材料の製造方法を、以下、適宜、溶液法と記載する。ただし、本実施形態の負極材料の製造方法は、溶液法であることに限られない。例えば、溶液法の代わりに、ボールミルを用いた方法や、噴霧乾燥法や、CVD法などを用いて、負極材料を製造してもよい。ボールミルを用いた方法とは、アモルファスカーボンと三酸化タングステンとをボールミル内に添加して、所定の回転速度で所定時間ボールミルを回転させることで、負極材料を製造する方法である。噴霧乾燥法とは、三酸化タングステンを溶解した溶解用溶液にアモルファスカーボンを添加して、その溶解用溶液を噴霧して乾燥させることにより、負極材料を製造する方法である。CVD法とは、三酸化タングステンを溶解した溶解用溶液を乾燥させて、アモルファスカーボンと共にCVD炉に入れて、所定の温度下で化学気相堆積を行って、負極材料を製造する方法である。また、正極材料の製造方法も、同様に、溶液法に限られず、ボールミルを用いた方法や、噴霧乾燥法や、CVD法など、任意の方法を用いてもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る電池の負極材料は、アモルファスカーボンと、アモルファスカーボンの表面に設けられる三酸化タングステンと、を含む。本実施形態に係る負極材料は、カーボンの表面に三酸化タングステンを設けることにより、容量などの電池特性を向上させることができる。また、カーボンの表面に三酸化タングステンを設けた負極材料においては、カーボンの表面に三酸化タングステンを適切に配置することが求められる。カーボンの表面に三酸化タングステンを適切に配置できない場合、すなわちカーボンの表面に三酸化タングステンが設けられていなかったり、三酸化タングステンがカーボンの表面から切り離されてしまったりする場合には、電池特性を適切に向上できなくなる。それに対し、本実施形態に係る負極材料は、カーボンとして、非晶質のアモルファスカーボンを用いて、アモルファスカーボンの表面に三酸化タングステンを設けている。アモルファスカーボンは、表面に三酸化タングステンを配置する処理の際に、表面に官能基を含むことができる。そのため、この官能基によって、アモルファスカーボンの表面に三酸化タングステンを適切にトラップすることが可能となり、表面に三酸化タングステンを適切に配置できる。また、この官能基によって、アモルファスカーボンの表面への三酸化タングステンの密着性を高くすることができ、酸化タングステンがカーボンの表面から切り離されることを抑制できる。そのため、本実施形態に係る負極材料は、カーボンの表面に三酸化タングステンを適切に配置することができる。そして、本実施形態のようにアモルファスカーボンの表面に三酸化タングステンが設けられた負極材料を用いることで、特に高電流を充放電する際の容量を向上することが可能となるため、電池の特性を向上させることができる。特に、アモルファスカーボン原料は、例えば黒鉛に比べて低温で製造されるため、官能基が除去されずに残りやすく、表面に三酸化タングステンを適切に配置できる。
【0054】
また、本実施形態に係る負極材料は、六方晶の結晶構造の三酸化タングステンを含むことが好ましく、単斜晶と三斜晶との少なくともいずれか一方の結晶構造の三酸化タングステンを含むことが好ましい。六方晶、単斜晶または三斜晶の三酸化タングステンをアモルファスカーボンの表面に設けることで、カーボンの表面に三酸化タングステンを適切に配置することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る負極材料は、黒鉛を含まないことが好ましい。黒鉛を含まずにアモルファスカーボンを用いることで、カーボンの表面に三酸化タングステンを適切に配置することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る負極材料の製造方法は、溶解ステップと、添加ステップと、負極材料生成ステップと、を含む。溶解ステップにおいては、溶解用溶液に三酸化タングステン(三酸化タングステン原料)を添加して、三酸化タングステン原料を溶解させる。添加ステップにおいては、三酸化タングステンが溶解した溶解用溶液に、アモルファスカーボン(アモルファスカーボン原料)を添加して、添加溶液を生成する。負極材料生成ステップにおいては、添加溶液の液体成分を除去することで、負極材料を生成する。本実施形態に係る負極の製造方法は、このように、三酸化タングステンを溶解した溶解用溶液にアモルファスカーボンを添加して、負極材料を製造することにより、カーボンの表面に三酸化タングステンを適切に配置することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態に係る負極材料の製造方法においては、三酸化タングステンの添加量とアモルファスカーボンの添加量との合計量に対する、三酸化タングステンの添加量の比率を、2重量%より多く8重量%以下とすることが好ましい。三酸化タングステンの添加量をこの範囲とすることで、アモルファスカーボンの表面に三酸化タングステンを適切に形成して、負極として、電池特性を向上できる。
【0058】
また、本実施形態に係る負極材料の製造方法においては、平均粒径が100nm以上20μm以下の三酸化タングステンを添加することが好ましい。このような粒径の三酸化タングステンを用いることで、アモルファスカーボンの表面に三酸化タングステンを適切に形成して、負極として、電池特性を向上できる。
【0059】
また、負極材料生成ステップは、添加溶液を乾燥させて負極中間物を生成する乾燥ステップと、負極中間物を加熱する加熱ステップと、を含むことが好ましい。添加溶液を乾燥させて形成した負極中間物を加熱して負極材料を生成することにより、アモルファスカーボンの表面に三酸化タングステンを適切に形成して、負極として、電池特性を向上できる。
【0060】
また、溶解ステップにおいては、溶解用溶液として、アルカリ性の溶液を用いることが好ましい。アルカリ性の溶液を用いることで、三酸化タングステンを適切に溶解できる。
【0061】
(実施例)
(製造条件)
次に、実施例について説明する。実施例1から実施例2においては、アモルファスカーボンと三酸化タングステンとを用いて、実施形態で説明した溶液法で、負極材料を製造した。具体的には、50ml容量のビーカー内に、濃度が28%のアンモニア溶液を5mlと、WO3原料とを添加して、12時間撹拌して、アンモニア溶液にWO3原料を溶解させた。そして、このアンモニア溶液に、アモルファスカーボン原料と5mlの純水とを添加した。さらに、このアンモニア溶液に、WO3原料との重量比が1:1となるように、SDSも添加した。そして、このアンモニア溶液を撹拌した後、乾燥させて、負極中間物を生成した。そして、この負極中間物を、管状炉内に導入し、アルゴン雰囲気下で、700℃で2時間加熱して、負極材料を製造した。
【0062】
実施例1では、WO3原料割合を、すなわち、アモルファスカーボン原料の添加量とWO3原料の添加量との合計値に対する、WO3原料の添加量を、重量%で5%とした。実施例1では、WO3原料の添加量を0.05gとし、アモルファスカーボン原料の添加量を0.95gとした。実施例2では、WO3原料割合を、重量%で8%とした。実施例2では、WO3原料の添加量を0.08gとし、アモルファスカーボン原料の添加量を0.92gとした。
【0063】
実施例3においては、アモルファスカーボンと三酸化タングステンとを用いて、ボールミルを用いた方法で、負極材料を製造した。実施例3においては、WO3原料割合を、重量%で5%とした。具体的には、実施例3においては、0.05gのWO3原料と0.95gのアモルファスカーボン原料とを、ボールミル(フリッチュ社製のPULVERISETTE 7)に添加して、500rpmで8時間回転させて、負極材料を製造した。
【0064】
実施例4においては、アモルファスカーボンと三酸化タングステンとを用いて、噴霧乾燥法で、負極材料を製造した。実施例4においては、WO3原料割合を、重量%で5%とした。具体的には、実施例4においては、0.05gのWO3原料を、濃度が28%のアンモニア溶液に溶解させ、0.95gのアモルファスカーボン原料を添加した。また、このアンモニア溶液に、WO3原料との重量比が1:1となるように、SDSを添加し、95mlの純水も添加した、そして、このアンモニア溶液を撹拌して、噴霧乾燥装置(ビュッヒ社製のB-290)を用いて、噴霧乾燥した。噴霧乾燥の際の処理温度は、180℃であり、アンモニア溶液の噴霧乾燥速度は、1ml/分とした。そして、噴霧乾燥した後の試料を、700℃で2時間加熱して、負極材料を製造した。
【0065】
実施例5においては、アモルファスカーボンと三酸化タングステンとを用いて、CVD法で、負極材料を製造した。実具体的には、実施例5においては、WO3原料を、濃度が28%のアンモニア溶液に溶解させて、このアンモニア溶液を蒸発乾固させた。そして、蒸発乾固させた試料の1gと、アモルファスカーボン原料の50mgとを、CVD炉に入れて、温度をそれぞれ850℃、600℃に設定して、化学気相堆積を2時間行って、負極材料を製造した。
【0066】
比較例においては、黒鉛と三酸化タングステンとを用いて、溶液法で、負極材料を製造した。比較例においては、黒鉛の添加量とWO3原料の添加量の合計値に対する、WO3原料の添加量を、重量%で5%とした。比較例においては、アモルファスカーボン原料の代わりに黒鉛を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、負極材料を製造した。
【0067】
(負極材料の評価結果)
実施例1から実施例5、及び比較例の方法で製造した負極材料を、評価した。評価としては、負極材料をSEMで撮像して、カーボンの表面にWO3材料が設けられているかを観察した。また、XRDにより、カーボンと三酸化タングステンとのピークがあるかを確認した。また、負極材料を用いた負極を製造して、充放電を繰り返した際の容量を測定した。
【0068】
図4は、本実施例における負極材料を撮像した図である。
図4は、実施例1から実施例2の負極材料を、SEMで撮像した写真を示している。
図4に示すように、SEM写真によると、実施例1の負極材料には、アモルファスカーボン粒子30の表面に、WO
3粒子32が設けられていることが確認された。SEM写真によると、実施例2の負極材料には、アモルファスカーボン粒子30の表面に、WO
3粒子32が設けられていることが確認された。XRDにおいては、実施例1、2においては、アモルファスカーボンのピークと三酸化タングステンのピークが確認された。
【0069】
図5は、本実施例における負極材料を撮像した図である。
図5は、実施例3から実施例5の負極材料を、SEMで撮像した写真を示している。
図5に示すように、SEM写真によると、実施例3の負極材料には、アモルファスカーボン粒子30の表面に、WO
3粒子32が設けられていることが確認された。SEM写真によると、実施例4の負極材料には、アモルファスカーボン粒子30の表面のWO
3粒子32が設けられることが、顕著に観察されなかった。SEM写真によると、実施例5の負極材料には、アモルファスカーボン粒子30の表面に、WO
3粒子32が設けられていることが確認された。XRDにおいては、実施例3、5においては、アモルファスカーボンのピークと三酸化タングステンのピークが確認され、実施例4においては、アモルファスカーボンのピークが確認されて、三酸化タングステンの明確なピークは確認されなかった。ただし、TEM写真によると、実施例4の負極材料には、アモルファスカーボン粒子30の表面に、非晶質の三酸化タングステンの層が設けられていることが確認された。
【0070】
図6は、比較例における負極材料を撮像した図である。
図6は比較例の負極材料を、SEMで撮像した写真を示している。
図6に示すように、SEM写真によると、比較例の負極材料は、黒鉛の表面に、比較的大きいサイズのWO
3粒子32が設けられていることが確認された。
【0071】
次に、実施例及び比較例の負極材料を用いた負極に対して、充放電を繰り返した際の容量の測定結果について説明する。
図7から
図14は、本実施形態の負極材料を用いた負極の容量の測定結果を示す図である。
図7は、実施例1から実施例2について、所定サイクル数毎にCレートを変化させた際の、それぞれのサイクル毎の負極の容量の測定結果を示したグラフである。Cレートとは、電池容量(ここでは負極の容量)に対する放電(充電)電流値の比率である。例えば、サイクル数が0回の場合における容量が10Ahの負極を、1CのCレートで放電する場合は、10Aの電流で放電させることを意味する。ここでの1サイクルは、設定したCレートで容量がゼロとなるまで放電した後、最大容量まで充電することを指す。
図7の横軸は、サイクル数(充放電の回数)であり、縦軸は、放電した後に最大容量まで充電した際の、1g当たりの負極の容量(mAh/g)を指す。
図7では、0.2Cでの放電及び充電を30回繰り返し、0.4Cでの放電及び充電を5回繰り返し、0.8Cでの放電及び充電を5回繰り返し、1.6Cでの放電及び充電を5回繰り返し、3.2Cでの放電及び充電を5回繰り返し、0.2Cでの放電及び充電を5回繰り返した場合の、各サイクルにおける容量を示している。
【0072】
図7では、実施例1から実施例2の負極材料を用いた場合の試験結果、アモルファスカーボンのみ、すなわち三酸化タングステンを含まない負極材料を用いた場合の試験結果も示している。
図7に示すように、実施例1から実施例2のようにアモルファスカーボンの表面に三酸化タングステンを設けた場合、三酸化タングステンを設けない場合よりも、容量を高く保つことができる傾向にあることが分かる。また、3.2Cの高電流での充放電を行う際には、実施例1、すなわちWO
3原料割合を5%とした場合に、最も容量を高く保持できることが分かる。
【0073】
図8は、実施例1から実施例2について、Cレートを0.8Cで固定して充放電を繰り返した際の、サイクル毎の容量を示したグラフである。
図8に示すように、実施例1、すなわちWO
3原料割合を5%とした場合に、サイクル数を重ねても、最も容量を高く保持できることが分かる。
【0074】
図9は、実施例3の負極材料を用いた場合の、所定回数のサイクル毎にCレートを変化させた際の、それぞれのサイクル毎の負極の容量の測定結果を示したグラフである。Cレートの変化条件は、
図7と同様である。
図7及び
図9に示すように、実施例3においては、3.2Cにおける容量を、三酸化タングステンを含まない場合よりも、高く保持できることが分かる。
【0075】
図10は、実施例3の負極材料を用いた場合の、Cレートを0.8Cで固定して充放電を繰り返した際の、サイクル毎の容量を示したグラフである。
図8及び
図10に示すように、実施例3においては、サイクル数を重ねた場合の容量は、三酸化タングステンを含まない場合と比べて低くなっていないことが分かる。
【0076】
図11は、実施例4の負極材料を用いた場合の、所定回数のサイクル毎にCレートを変化させた際の、それぞれのサイクル毎の負極の容量の測定結果を示したグラフである。Cレートの変化条件は、
図7と同様である。
図7及び
図11に示すように、実施例4においては、3.2Cにおける容量を、三酸化タングステンを含まない場合よりも、高く保持できることが分かる。
【0077】
図12は、実施例4の負極材料を用いた場合の、Cレートを0.8Cで固定して充放電を繰り返した際の、サイクル毎の容量を示したグラフである。
図8及び
図12に示すように、実施例4においては、サイクル数を重ねた場合の容量は、三酸化タングステンを含まない場合と比べて低くなっていないことが分かる。
【0078】
図13は、実施例5の負極材料を用いた場合の、所定回数のサイクル毎にCレートを変化させた際の、それぞれのサイクル毎の負極の容量の測定結果を示したグラフである。Cレートの変化条件は、
図7と同様である。
図7及び
図13に示すように、実施例5においては、3.2Cにおける容量は、三酸化タングステンを含まない場合と比べて低くなっていないことが分かる。
【0079】
図14は、実施例5の負極材料を用いた場合の、Cレートを0.8Cで固定して充放電を繰り返した際の、サイクル毎の容量を示したグラフである。
図8及び
図14に示すように、実施例5においては、サイクル数を重ねた場合の容量は、三酸化タングステンを含まない場合と比べて低くなっていないことが分かる。
【0080】
図15は、比較例の負極材料を用いた場合の、所定回数のサイクル毎に、Cレートを変化させた際の、それぞれのサイクル毎の負極の容量の測定結果を示したグラフである。Cレートの変化条件は、
図7と同様である。
図15に示すように、比較例においては、3.2Cにおける容量は、黒鉛を含んで三酸化タングステンを含まない場合と比べて低くなることが分かる。また、
図7、9、11、13、15に示すように、比較例においては、各実施例よりも、3.2Cにおける容量が低くなることが分かる。従って、比較例では、本実施形態と比較して、カーボンの表面に三酸化タングステンを適切に保持できず、高電流での充放電の際の容量を高くできないことが分かる。言い換えれば、本実施例のようにアモルファスカーボンを用いると、アモルファスカーボンの表面に三酸化タングステンを適切に保持して、特に高電流での充放電の際の容量を高く出来ることが分かる。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
1 電池
14 負極
22 負極材料層
30 アモルファスカーボン粒子
32 WO3粒子