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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】穿刺用器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
A61M37/00 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019551895
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2018032197
(87)【国際公開番号】W WO2019092957
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2017214962
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邉 美浪
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-66730(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040697(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/139504(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺体を保持したカートリッジが装着される装着部と、
軸方向に駆動され、前記装着部に装着された前記カートリッジに保持された前記穿刺体を皮膚表面に適用する押圧ロッドとを備え、
前記装着部は、上下方向から前記カートリッジを保護するケースに収容された前記カートリッジを、前記上下方向を前記押圧ロッドの駆動方向と一致させて装着可能であると共に、装着された前記カートリッジから前記ケースを脱離させることが可能である、穿刺用器具。
【請求項2】
前記装着部は、前記カートリッジと共に装着された前記ケースを、前記押圧ロッドの駆動方向と交差するスライド方向にスライドさせることにより、前記カートリッジを残して前記ケースを脱離させることができる、請求項1に記載の穿刺用器具。
【請求項3】
前記装着部は、前記ケースに収容された前記カートリッジを、前記スライド方向に挿入することにより、装着することができる、請求項2に記載の穿刺用器具。
【請求項4】
前記装着部は、前記カートリッジを両側方から挟む係合側壁部を有し、
前記係合側壁部は、前記カートリッジの挿入方向に沿って間隔が次第に狭くなるように突出する側壁凸部を有する、請求項2又は3に記載の穿刺用器具。
【請求項5】
前記装着部は、前記スライド方向の長さが、前記ケースの前記スライド方向の長さよりも短い、請求項2~4のいずれか1項に記載の穿刺用器具。
【請求項6】
前記装着部は、前記スライド方向の動きを規制する規制部を有する、請求項2~5のいずれか1項に記載の穿刺用器具。
【請求項7】
前記装着部は、前記ケースの前記スライド方向の動きをガイドするガイド部を有する、請求項2~6のいずれか1項に記載の穿刺用器具。
【請求項8】
前記カートリッジを前記装着部に装着した状態において、前記穿刺用器具の先端部は前記カートリッジの先端部よりも基端側に位置する、請求項1~7のいずれか1項に記載の穿刺用器具。
【請求項9】
前記装着部は、前記押圧ロッドを囲む周壁部を有し、前記周壁部は、前記ケースを挿入する側に切り欠き部を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の穿刺用器具。
【請求項10】
前記装着部は、前記カートリッジの外面に設けられた被係合部に対応する形状のカートリッジ係合部を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の穿刺用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、穿刺用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の皮膚から薬剤を投与する経皮投与が検討されている。経皮投与として、軟膏やクリーム等を皮膚に塗り込んで浸透させる方法及びテープ製剤又はパッチ製剤等の薬剤が塗布された粘着性のフィルムを皮膚に貼り付ける方法が知られている。近年、マイクロニードルを用いた経皮投与が検討されている。マイクロニードルは長さが数μm程度の微小な針であり、表面又は内部に薬剤を保持していたり、薬剤そのものにより形成されていたりする。マイクロニードルが固定された貼付シートを皮膚に貼り付けると、マイクロニードルは、患者にほとんど痛みを感じさせることなく、角質層を越えて表皮に達することができる。このため、従来のテープ製剤やパッチ製剤と比べて、効率良く薬剤を投与することが可能となる。
【0003】
マイクロニードルは、通常の針のように触れただけで怪我をする可能性は小さい。しかし、触れてしまったことに気づかずに、マイクロニードルを破損したり、マイクロニードルを汚染したりするおそれがある。このため、マイクロニードルを固定した貼付シートをアプリケータに装着する際に、マイクロニードルを保護することが好ましい。このため、貼付シートにカバーが貼り付けられたマイクロニードルカートリッジが検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。マイクロニードルを覆うカバーが取り付けられているため、マイクロニードルカートリッジをアプリケータに装着する際に、操作者がマイクロニードルに触れることがない。
【0004】
また、アプリケータ本体に対して垂直方向にスライドさせることにより着脱可能なカートリッジを用いることも検討されている(例えば、特許文献2を参照。)。この場合、裁置されたカートリッジの上方からアプリケータ本体を押し込んでカートリッジを装着すれば、カートリッジをアプリケータに装着する際に、操作者がマイクロニードルに触れることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-66730号公報
【文献】特開2017-23404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のアプリケータには以下のような問題がある。まず、貼付シートにカバーを貼り付けた場合、装着後に貼付シートからカバーを剥離する際に、貼付シートに力が加わりシートが変形したり破れたりするという問題がある。また、貼付シートの粘着力が低下するという問題がある。さらに、貼付シートの裏面は保護されていないため、裏面側から力が加わり、貼付シートが変形したり破れたりするという問題もある。貼付シートの裏面側に硬質の保護板を貼り付けることも考えられるが、保護板はアプリケータに装着する前に取り外す必要があり、装着時には保護することができない。次に、先端部を垂直方向にスライドさせて装着する場合、手で支えて装着する場合には、マイクロニードルを保護できないという問題がある。
【0007】
マイクロニードルのアプリケータに限らず、皮膚に対して穿刺を行う何らかの穿刺体を装着する穿刺用器具において、これらの問題は発生し得る。
【0008】
本開示の課題は、穿刺体の装着が容易で、安全性が高い穿刺用器具を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の穿刺用器具の一態様は、穿刺体を保持したカートリッジが装着される装着部と、軸方向に駆動され、装着部に装着されたカートリッジに保持された穿刺体を皮膚表面に適用する押圧ロッドとを備え、装着部は、上下方向からカートリッジを保護するケースに収容されたカートリッジを、上下方向を押圧ロッドの駆動方向と一致させて装着可能であると共に、装着されたカートリッジからケースを脱離させることが可能である。
【0010】
このような構成とすることにより、穿刺用器具に装着する前のカートリッジ本体を上下両方向から保護することができ、装着時に穿刺体を汚染したり、破損したりしにくくできる。
【0011】
穿刺用器具の一態様において、装着部は、カートリッジと共に装着されたケースを、押圧ロッドの駆動方向と交差するスライド方向にスライドさせることにより、カートリッジを残してケースを脱離させることができる。このような構成とすることにより、カートリッジを上下両方向から保護すると共に、ケースを容易に取り外すことが可能となる。
【0012】
この場合において、装着部は、ケースに収容されたカートリッジを、スライド方向に挿入することにより、装着することができる。このような構成とすることにより、装着に要する力を小さくしても、軸方向に脱落しにくくすることができる。
【0013】
穿刺用器具の一態様において、装着部は、カートリッジを両側方から挟む係合側壁部を有し、係合側壁部は、カートリッジの挿入方向に沿って間隔が次第に狭くなるように突出する側壁凸部を有していてもよい。このような構成とすることにより、カートリッジの装着が容易となる。
【0014】
穿刺用器具の一態様において、装着部は、スライド方向の長さが、ケースのスライド方向の長さよりも短い。このような構成とすることにより、ケースの脱離が容易となる。
【0015】
穿刺用器具の一態様において、装着部は、スライド方向の動きを規制する規制部を有する。このような構成とすることにより、ケースの脱着が容易となる。
【0016】
穿刺用器具の一態様において、カートリッジを装着部に装着した状態において、穿刺用器具の先端部はカートリッジの先端部よりも基端側に位置する。このような構成とすることにより、穿刺用器具の部分が皮膚に触れないようにでき、安全性を向上させることができる。
【0017】
穿刺用器具の一態様において、装着部は、押圧ロッドを囲む周壁部を有し、周壁部は、ケースを挿入する側に切り欠き部を有していてもよい。このような構成とすることにより押圧ロッドを使用位置に押し込むことが容易となる。
【0018】
穿刺用器具の一態様において、装着部は、カートリッジの外面に設けられた被係合部に対応する形状のカートリッジ係合部を有していてもよい。このような構成とすることにより、カートリッジの保持力を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の穿刺用器具によれば、穿刺体の装着が容易となり、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、一実施形態に係るアプリケータにカートリッジを装着される前の状態を示す斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係るアプリケータにケースに収容されたカートリッジを装着した状態を示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態に係るアプリケータにおいて、ケースを脱離させた状態を示す斜視図である。
図4図4は、一実施形態に係るアプリケータに装着するカートリッジを示す斜視図である。
図5図5は、一実施形態に係るアプリケータに装着するカートリッジを示す平面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線における断面図である。
図7図7は、アプリケータの一変形例を示す斜視図である。
図8図8は、一変形例に係るアプリケータの装着部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~3に示すように、本実施形態の穿刺用器具は、マイクロニードルを皮膚に適用するアプリケータ200である。アプリケータ200は、筒状の本体部201を有しており、本体部201の一方の端部には、装着部203及び押圧ロッド202が設けられている。装着部203には、マイクロニードルを保持したカートリッジ101が装着される。押圧ロッド202は、本体部201の内部に収容された付勢部材により軸方向に駆動され、装着部203に装着されたカートリッジ101に保持されたマイクロニードルを皮膚表面に適用する。押圧ロッド202の駆動は、本体部201の側面に設けられたトリガボタン(図示せず)を操作することにより行われる。なお、押圧ロッド202の駆動機構は上記態様に限定されたものではなく、例えば押圧ロッド202を手指等で押圧することで駆動されてもよい。
【0022】
装着部203には、カートリッジ101を上下方向から保護するケース105に収容されたカートリッジ101を、カートリッジ101の上下方向が押圧ロッド202の駆動方向と一致するように装着できる。また、装着されたカートリッジ101からケース105を脱離させることができる。
【0023】
図4図6に示すように、本実施形態のアプリケータ200に装着できるカートリッジ101は、カートリッジ101を上下方向から保護するケース105に収容されている。カートリッジ101は、貼付シート103に固定されたマイクロニードルアレイ102と、貼付シート103を保持する保持部104とを含む。
【0024】
本実施形態において、保持部104は円筒形状の枠体141を有している。枠体141の底部には、外方向に拡がった鍔状の外周リング142と、内方向に拡がった鍔状の貼付シート保持部143とが設けられている。ケース105は、筒状の枠体141の上面を覆う天板151と、下面を覆う底板152と、天板151と底板152とを接続する側板153とを有する断面コ字状である。天板151と底板152との間の空間に、カートリッジ101が収容される。ケース105の天板151と底板152との間隔は、保持部104の高さと略一致しており、カートリッジ101は、ケース105の空間内をスライドして移動可能となっている。天板151だけでなく底板152を設けることにより、カートリッジ101を上下両方向から保護することができる。なお、枠体141、及び外周リング142は円筒形状、リング形状に限定されず、例えば平面多角形状であってもよい。また、ケース105の形状は上記に限定されたものではない。
【0025】
側板153は、保持部104の枠体141の外径に対応した円弧状に形成されている。また、側板153の下端部には保持部104の外周リング142に対応した溝部が形成されている。これらの構成により、ケース105内に保持部104を安定して収容することができると共に、保持部104が側板153の延びる方向には移動しにくくしている。また、天板151の側板153と反対側の端部には下向きの凸部155が設けられており、ある程度以上の力が加わらなければ、保持部104は側板153と交差する方向にも移動しない。なお、側板153の形状は円弧状に限定されたものでなく、保持部104の形状に対応していなくてもよく、外周リング142に対応した溝部も必須の構成ではない。
【0026】
装着部203は、保持部104の枠体141を両側から挟み込めるように、端面から突出して設けられた2つの係合側壁部231と、係合側壁部231の基部に設けられ、ケース105の底板152の幅に一致するガイド部232を形成する台座部233とを有している。係合側壁部231の内側面には、カートリッジ101の形状に対応したカートリッジ係合部235が設けられている。カートリッジ係合部235は、第1係合部236と第2係合部237を有している。第1係合部236は枠体141の外周面に対応した形状となっており、第2係合部237は外周リング142に対応した形状となっている。なお、係合側壁部231の数は2つに限定されない。
【0027】
図1に示すように、カートリッジ101を収容したケース105をガイド部232に合わせて、押圧ロッド202の駆動方向(軸方向)と交差するスライド方向(横方向)からスライドさせて装着部203に挿入する。
【0028】
ケース105に収容されたカートリッジ101を一方の端部(挿入端)から装着部203に挿入すると、図2に示すように、ケース105は、ガイド部232の反対側の端部に設けられた抜け止め凸部234に当接し、カートリッジ係合部235は、カートリッジ101の被係合部145と係合する。本実施形態において、被係合部145は、ケース105の側方に露出した枠体141の側面である。ガイド部232の幅はケース105の底板152と略一致しており、ガイド部232の高さは底板152の厚さと略一致している。ガイド部232の形状は、底板152の形状に合わせて定めることができる。
【0029】
次に、ケース105を逆方向に移動させると、図3に示すように、カートリッジ101の被係合部145が係合側壁部231と係合しているため、ケース105はカートリッジ101から脱離する。装着及び脱離の際に、ガイド部232及び抜け止め凸部234、カートリッジ係合部235は、ケース105の装着及び脱離方向の動きを規制する規制部として機能する。
【0030】
本実施形態において、装着部203は、ケース105のスライド方向と一致した方向の長さが、ケース105のスライド方向の長さよりも短い。このため、ケース105に収容されたカートリッジ101を装着部203に装着すると、図2に示すように、ケース105の端部は装着部203よりも突出する。これにより、ケース105の脱離操作が容易となる。
【0031】
本実施形態において、図5に示すように、カートリッジ101の枠体141の外径は、ケース105のスライド方向と交差する方向の幅よりも大きく、カートリッジ101の被係合部145となる部分がケース105から露出している。このため、装着部203の係合側壁部231は、ケース105に収容されたカートリッジ101と容易に係合させることができる。但し、枠体141の外径がケース105の幅よりも小さい場合においても、係合側壁部231の形状を調整することにより、ケース105に収容されたカートリッジ101の被係合部145と係合側壁部231とを係合させることができる。
【0032】
本実施形態のアプリケータ200は、横方向からスライドさせてカートリッジ101を装着する。カートリッジ101の装着方向をアプリケータ200の軸方向(縦方向)とすると、装着方向が押圧ロッドの駆動方向と一致する。この場合、駆動時にカートリッジが脱落しないように、カートリッジ101を軸方向に取り外す力が駆動時にかかる力よりも大きくなるように装着部203を設計する必要がある。また、これに伴い装着部203及び装着されるカートリッジ101の機械的強度を大きくしなければならない。また、装着部203にカートリッジ101を装着しやすく且つ外れにくいように構成することで操作性に優れた穿刺用器具を実現することができる。
【0033】
一方、本実施形態のように、カートリッジの装着方向と押圧ロッド202の駆動方向とを異ならせた場合には、駆動方向の脱離を防ぐ機構と、装着方向の脱離を防ぐ機構とを分離することができる。このため、カートリッジの着脱に必要とする力が小さくなるように設計することが容易にできる。具体的に、本実施形態において、係合側壁部231の下端部に、カートリッジ101の外周リング142に対応した第2係合部237が設けられている。外周リング142と第2係合部237とを係合させることにより、押圧ロッド202により縦方向に大きな力が加わっても、カートリッジ101が縦方向に脱離しないようにできる。このため、第1係合部236と枠体141の側面とを係合させるために要する力が小さくなるように第1係合部236を設計することができる。枠体141の側面と第1係合部236とを係合させることにより、駆動時に押圧ロッド202によって軸方向に大きな力が加わっても、カートリッジ101が軸方向に脱離しないように構成することができる。
【0034】
但し、本実施形態のように、横方向のスライドのみによりカートリッジを装着する構成に限らず、例えば、アプリケータの駆動方向である縦方向にスライドさせた後、横方向にスライドさせてカートリッジを装着する構成とすることができる。また、縦方向の所定の位置までスライドさせた後、一定角度回転させるような着脱機構とすることもできる。
【0035】
本実施形態では、図5に示すように被係合部145である枠体141の外表面に滑り止めの複数の凸条部144が設けられている例を示したが、その形状は限定されたものではない。また、凸条部144は必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。さらに、凸条部144を被係合部145となる部分にのみ設けることもできる。凸条部144を設けることにより、第1係合部236と凸条部144との間の摩擦を大きくして、保持力を向上させることができる。また、第1係合部236に凸条部144と噛みあうような構成を設けることもできる。
【0036】
また、被係合部145に凸条部144を設けるのではなく、溝部を設けたり、係合用の凸部又は凹部等を設けたりすることができる。さらに、保持力が大きくなるように、被係合部145の部分を曲面ではなく平面とすることもできる。カートリッジ係合部235は、被係合部145の形状に対応する形状とすることができる。
【0037】
なお、本実施形態において、枠体141の外面に設けられた被係合部145が、アプリケータ200のカートリッジ係合部235と係合する構成としたが、カートリッジ係合部235及び被係合部145は、このような構成に限らず、カートリッジ101を装着部203に装着できる種々の構成とすることができる。例えば、外周リング142を側方から挟み込んだり、上下に挟み込んだりして、カートリッジ101をアプリケータ200に保持させることができる。また、カートリッジ101の外面ではなく、内面に被係合部が設けられた構成とすることもできる。
【0038】
本実施形態において、アプリケータ200の装着部203に、ガイド部232を設けた。ガイド部232を設けることにより、ケース105の装着部203への挿入が容易となる。しかし、ガイド部232は設けなくてもよい。また、ガイド部232の一方の端部に、ケース105の挿入位置を限定する抜け止め凸部234を設けたが、抜け止め凸部234は設けなくてもよい。また、係合側壁部231を2ヶ所に設ける例を示したが、アプリケータ200の端面の半周程度を囲むような係合側壁部を1つ設けることもできる。この場合には、係合側壁部と干渉しないようにケース105の底板152の形状を調整すればよい。
【0039】
第2係合部237の高さは、外周リング142の厚さと略一致するか僅かに大きく設けられている。このような構成とすることで、カートリッジ101と装着部203とを十分な強度で嵌合させることができる。また、カートリッジ101が装着部203に装着された状態において、外周リング142の駆動方向側の面と、第2係合部237が駆動方向において外周リング142の駆動方向側の面とが対向することにより、押圧ロッド202が駆動された場合であってもカートリッジ101が装着部203から外れにくくできる。
【0040】
但し、第1係合部236により枠体141が十分な強度で保持されている場合には、第2係合部237及び外周リング142を設けなくてもよい。また、第2係合部237に代えて又は第2係合部237に加えて、係合側壁部231の上端部が枠体141の天面側の面と対向するようなカバー部を有していてもよい。カバー部を設けることにより、係合側壁部231と枠体141の側面とを係合させるために要する力が小さくなるように係合側壁部231を設計することができ、押圧ロッド202により縦方向に大きな力が加わっても、カートリッジ101が縦方向に脱離しないように構成することができる。
【0041】
カートリッジ係合部235に代えて、図7及び図8に示すようなカートリッジ係合部245を係合側壁部231の内側面に設けることもできる。カートリッジ係合部245は、係合側壁部231の内側面に設けられた側壁凸部246を有している。側壁凸部246は、対向する2つの係合側壁部231にそれぞれ設けられており、2つの側壁凸部246の最小間隔は、枠体141の最大幅と同じか僅かに小さくなっている。このため、2つの側壁凸部246はカートリッジ101の枠体141を挟んで保持する第1係合部として機能する。側壁凸部246は、挿入端側から中央部付近に向かって突出高さが次第に大きくなる傾斜面242を有しており、対向する2つ係合側壁部231の間隔は挿入方向に沿って次第に狭くなる。このため、カートリッジ101を挿入端側からスライドさせて挿入することにより、枠体141と側壁凸部246とを容易に係合させることができる。なお、側壁凸部246は、一方の係合側壁部231のみに設けることもできる。
【0042】
側壁凸部246の中央部には、係合凹部243が設けられている。係合凹部243は、カートリッジ101の被装着部と係合するように設けている。本実施形態では、枠体141の外表面の被係合部145に設けられた凸条部144と噛みあうように設けられている。係合凹部243と凸条部144とを噛み合わせることにより、側壁凸部246による枠体141を保持する力を大きくすることができる。但し、係合凹部243は必要に応じて設ければよく充分な保持力が得られる場合には設けなくてもよい。また、枠体141の外表面の被係合部145を構成に応じて保持力を向上させるような種々の構成を設けることができる。
【0043】
係合側壁部231の側壁凸部246よりも下方(台座部233側)には、側壁開口部247が設けられている。側壁開口部247は、外周リング142と係合する第2係合部として機能する。外周リング142と係合する部分は、貫通していない凹部とすることもできるが、側壁開口部247とすることにより外周リング142の係合を目視により確認することが可能となる。
【0044】
図7において、装着部203は、押圧ロッド202を囲む周壁部249の先端部にカートリッジ係合部245が設けられている。また、周壁部249は、挿入端の部分に大きく切り欠かれた切り欠き部251を有している。切り欠き部251を設けることにより、切り欠き部がない場合と比較して押圧ロッド202を押し込み易くすることができる。さらに、カートリッジ101を収容したケース105を上下方向から指で挟んだ状態でスライドさせてカートリッジ101を装着部203に装着し、ケース105だけを逆にスライドさせて抜き取ることもできる。但し、図1に示すような切り欠き部が設けられていない構成とすることもできる。また、図1等に示す構成のアプリケータにおいても切り欠き部を設けることができる。
【0045】
カートリッジ101に保持されるマイクロニードルアレイ102は、特に限定されない。例えば、直径が5mm~20mm程度の基板の上に、薬剤を保持した長さが20μm~1000μm程度のマイクロニードルが、100本/cm2~10000本/cm2程度の密度で配置されたものを用いることができる。マイクロニードル122の表面に保持する薬剤は特に限定されない。また、マイクロニードルは生分解性のものであってもよい。
【0046】
貼付シート103は、皮膚表面にマイクロニードルアレイ102を所定の時間固定した後、剥離することができればよく、例えば粘着剤層が設けられた樹脂フィルムとすることができる。
【0047】
装着部203にカートリッジ101を装着した際に、アプリケータ200の先端部は、カートリッジ101の先端部よりも基端側になることが好ましい。このような構成とすることにより、使い捨てのカートリッジ101だけが皮膚と接触し、繰り返し使用されるアプリケータ200の先端部は皮膚に接触しないようにすることができ、安全性を向上させることができる。
【0048】
穿刺体がマイクロニードルアレイである例を示したが、マイクロニードルアレイに限らず、通常のニードルを含む皮膚に穿刺する穿刺体を保持するカートリッジが装着されるあらゆる穿刺用器具において、同様の構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示の穿刺用器具は、穿刺体の装着が容易で、安全性が高く、種々の薬剤の投与等に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
101 カートリッジ
102 マイクロニードルアレイ
103 貼付シート
104 保持部
105 ケース
122 マイクロニードル
141 枠体
142 外周リング
143 貼付シート保持部
144 凸条部
145 被係合部
151 天板
152 底板
153 側板
155 凸部
200 アプリケータ
201 本体部
202 押圧ロッド
203 装着部
231 係合側壁部
232 ガイド部
233 台座部
234 抜け止め凸部
235 カートリッジ係合部
236 第1係合部
237 第2係合部
242 傾斜面
243 係合凹部
245 カートリッジ係合部
246 側壁凸部
247 側壁開口部
249 周壁部
251 切り欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8