(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】活性光線硬化型インクジェットインクセット及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20220614BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20220614BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20220614BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220614BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C09D11/38
C09D11/40
C09D11/101
B41J2/01 501
B41J2/01 129
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 132
B41M5/00 134
(21)【出願番号】P 2019559925
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2017045700
(87)【国際公開番号】W WO2019123564
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
(72)【発明者】
【氏名】池田 征史
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-251935(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098678(WO,A1)
【文献】特開2008-075067(JP,A)
【文献】特開2009-263599(JP,A)
【文献】特開2011-218794(JP,A)
【文献】国際公開第2006/087930(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/156267(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する、白色インクと有色インクにより構成される活性光線硬化型インクジェットインクセットであって、
前記白色インクが、さらに酸化チタン
及びゲル化剤を含有し、
前記有色インクが、さらに色材を含有し、
前記有色インクに対する前記白色インクの前記光重合開始剤量の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)が、0.10~
0.80の範囲内であり、かつ、
前記白色インクの前記光重合開始剤の含有量が、インク全質量に対して、0.3~
2.4質量%の範囲内である
ことを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項2】
前記白色インクの前記ゲル化剤の含有量が、インク全質量に対し0.3~2.5質量%の範囲内であることを特徴とする請求項
1に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項3】
前記ゲル化剤が、下記一般式(G1)又は(G2)で表される構造を有する化合物を含有していることを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
一般式(G1):R
1-CO-R
2
一般式(G2):R
3-COO-R
4
〔一般式(G1)又は(G2)において、R
1~R
4は、それぞれ独立に、炭素数が9~25の範囲内である直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。〕
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットを用いるインクジェット記録方法であって、
記録媒体上に、前記白色インク及び有色インクを印字した後、当該白色インク及び有色インクに活性光線を照射して硬化させて画像記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項5】
記録媒体上に、前記白色インクを印字し、次いで前記有色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して画像記録する場合、
前記光重合開始剤の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)が、0.30~0.70の範囲内であることを特徴とする請求項
4に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
記録媒体上に、前記有色インクを印字し、次いで前記白色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して画像記録する場合、
前記光重合開始剤の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)が、0.20~0.60の範囲内であることを特徴とする請求項
4に記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線硬化型インクジェットインクセット及びそれを用いたインクジェット記録方法に関し、特に、形成画像の耐擦過性及び密着性に優れたインクジェット画像が得られる白色インクと有色インクより構成される活性光線硬化型インクジェットインクセットと、それを用いたインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット画像形成方法は、簡易かつ安価に画像を形成できることから、各種印刷分野で用いられている。インクジェット画像記録方法では、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインクから、形成すべき色に応じて好適なインクの組みあわせを選択し、選択されたインクを重ね打ちすることで、フルカラーの画像を形成することができる。
【0003】
現在、包装材料分野で軟包装材料として広く用いられている透明フィルムや蒸着紙にインクジェットインクを用いて画像記録する場合、記録媒体にはインク吸収層がないため、着弾時に液寄りや色にじみによる画質低下が問題となっている。
【0004】
上記問題に対する対策方法の一つとして活性光線硬化型インクジェットインクを用い、インク液滴を記録媒体に着弾させた後、活性光線、例えば、紫外線を照射して硬化させて画像を形成する活性光線硬化型インクジェット画像形成方法がある。活性光線硬化型インクジェット画像形成方法は、インク吸収性のない記録媒体においても、高い耐擦過性と密着性を有する画像を形成できることから、近年注目されつつある。
【0005】
一方、上記のような活性光線硬化型インクジェットインクを用いて、透明フィルムや蒸着紙等の非吸収性記録媒体上に画像記録する場合、一般的には、隠蔽性を有する白色インクを用いて、形成したカラー画像(有色画像)に対して白色画像で上塗り又は下塗りして、カラー画像の視認性を高める方法が採られている。このような方法において、白色インクに用いられる白色顔料としては、隠蔽性の高い酸化チタンが広く用いられている。
【0006】
上記のような白色インクと有色インクより構成される活性光線硬化型インクジェットインクセットにおいて、有色インク画像上に白色インク画像を形成する場合、有色インク画像を形成した後、酸化チタンを白色インクの白色顔料として用い、形成した白色インク層に活性光線を照射して硬化させる場合、層内の酸化チタン粒子の散乱により、活性光線、例えば、紫外線が十分に層内部まで到達するため、インク膜の硬化には十分であるが、照射される光量が過度になると、光重合性化合物の重合開始点が増加し、重合反応が分散された状態で急激に進行するため、低分子量の硬化物から構成される脆い膜となる。
【0007】
一方、白色インクで画像形成した上に、有色インクによるカラー画像を形成する場合には、上に位置するカラー画像を構成する色材(例えば、顔料粒子)が、活性光線照射時に、紫外線等を吸収してしまうため、白色インク層への活性光線の到達量が減少するため、照射光量を増大しないと、白色インク層の硬化が進行しないことになる。すなわち、表層側に白色インク層が配置されている構成と、白色インク層上にカラー画像が配置されている構成において、両者の塗膜物性を同時に満たすことが困難であった。
【0008】
上記のような様々な問題に対し、例えば、特許文献1には、白色インクと有色インクを用いた記録方法で、各インク液を被記録媒体上に吐出するごとに、弱いUV-LED光を照射して、半硬化させるピニングを行った後、最後に水銀ランプ等で本硬化を行う方法により、硬化層におけるブリーディングやハジキの発生を抑制し、インク密着性を改善した記録方法が開示されている。しかしながら、上記方法では、密着性は改良されているものの上記で記載したような各インクにおける膜強度(耐擦過性)と、形成画像と記録媒体との密着性、又は形成画像層間の密着性に関しては、十分ではなかった。
【0009】
一方、これら活性光線硬化型インクジェットインクセットを用いた画像形成方法において、ライン記録ヘッドを用いたシングルパス記録方式や、少数パスの高速シリアル方式といった高速記録方式を採用した場合には、隣り合うドット同士の合一を抑制できず、画質が劣る問題があった。また、カラー画像を記録する場合には、色間で色混じりが発生し、画質が低下する問題があった。
【0010】
上記問題に対し、インクジェット記録方式に用いられるインクジェットインクのピニングを高める方法として、ゲル化剤を添加することが検討されている。すなわち、高温で液体状態のインク液滴を吐出し、記録媒体に着弾させると同時にインク液滴を冷却してゲル化させることで、ドットの合一を抑制することが検討されている。ゲル化剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクは、冷却されることにより瞬時に相転移する特性を備えているため、液寄りや色混じりによる画質低下を防止することができ、その結果、特許文献1で記載したようなピニングが不要となり、全てのインク画像を印字した後、一括して活性光線を照射することにより、画像形成ができる利点を有している。
【0011】
このような方法として、例えば、特許文献2には、ゲル化剤、白色顔料及び光硬化性モノマーを照射硬化性相変化インクが開示されている。しかしながら、本発明者が詳細に検討を進めた結果、特許文献2で開示されているゲル化剤を含有する白色インクは、ゲル化剤を起点としてクラックが発生しやすく、耐擦過性が弱いことが判明した。
【0012】
更に、当該白色インクと有色インクをと用いて画像形成を行った場合には、上記で説明したような白色インク画像と有色インク画像との積層に伴う硬化性に起因した膜強度の低下を引き起こすとともに、白色インク画像と有色インク画像との界面領域にゲル化剤が存在するため、インク層間、又はインク層と記録媒体の界面で剥離しやすいことが判明した。すなわち、ゲル化剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクセットにおいては、さらに、膜強度と密着性を両立させることが困難であり、早急な対応が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2011-218794号公報
【文献】特開2009-041015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、形成画像の耐擦過性及び密着性に優れたインクジェット画像が得られる白色インクと有色インクより構成される活性光線硬化型インクジェットインクセットと、それを用いたインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を進めた結果、少なくとも光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する、白色インクと有色インクにより構成され、前記白色インクがさらに酸化チタン及びゲル化剤を含有し、前記有色インクがさらに色材を含有し、前記有色インクに対する前記白色インクの前記光重合開始剤量の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)を特定の範囲に制御し、かつ、前記白色インクの前記光重合開始剤の含有量が、インク全質量に対して、特定の範囲内とすることを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインクセットにより、耐擦過性及び密着性に優れたインクジェット画像が得られる白色インクと有色インクより構成される活性光線硬化型インクジェットインクセットを実現することができることを見いだし、本発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0017】
1.少なくとも光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する、白色インクと有色インクにより構成される活性光線硬化型インクジェットインクセットであって、
前記白色インクが、さらに酸化チタン及びゲル化剤を含有し、
前記有色インクが、さらに色材を含有し、
前記有色インクに対する前記白色インクの前記光重合開始剤量の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)が、0.10~0.80の範囲内であり、かつ、
前記白色インクの前記光重合開始剤の含有量が、インク全質量に対して、0.3~2.4質量%の範囲内である
ことを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0019】
2.前記白色インクの前記ゲル化剤の含有量が、インク全質量に対し0.3~2.5質量%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0020】
3.前記ゲル化剤が、下記一般式(G1)又は(G2)で表される構造を有する化合物を含有していることを特徴とする第1項又は第2項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0021】
一般式(G1):R1-CO-R2
一般式(G2):R3-COO-R4
〔一般式(G1)又は(G2)において、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素数が9~25の範囲内である直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。〕
4.第1項から第3項までのいずれか一項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットを用いるインクジェット記録方法であって、
記録媒体上に、前記白色インク及び有色インクを印字した後、当該白色インク及び有色インクに活性光線を照射して硬化させて画像記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0022】
5.記録媒体上に、前記白色インクを印字し、次いで前記有色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して画像記録する場合、
前記光重合開始剤の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)が、0.30~0.70の範囲内であることを特徴とする第4項に記載のインクジェット記録方法。
【0023】
6.記録媒体上に、前記有色インクを印字し、次いで前記白色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して画像記録する場合、
前記光重合開始剤の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)が、0.20~0.60の範囲内であることを特徴とする第4項に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、形成画像の耐擦過性及び密着性に優れたインクジェット画像が得られる白色インクと有色インクより構成される活性光線硬化型インクジェットインクセットと、それを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【0025】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0026】
前述のように、活性光線硬化型の白色インクと有色インクを用いて画像形成する際、特に、白色インクとして、白色顔料として酸化チタンを適用した場合、白色インク層を表面側(活性光線照射面側)に配置する構成の場合、酸化チタンの高い光散乱性に起因して、白色インク層の内部まで多くの活性光線が到達するため白色インク層に対する活性光線量が過多の状態となるため、光重合性化合物と光重合開始剤との反応開始点が増大する結果、重合性化合物の反応数は多くなるが、高分子化合物あたりの重合が相対的に低下するため、低分子量のインク膜となり、耐擦過性や折り曲げ耐性等が低下する。これを防止するため、活性光線の照射量を低減すると、下部に位置している有色インクによるカラー画像の硬化度が不十分となる。
【0027】
また、有色インク層を表面側(活性光線照射面側)に配置する構成の場合には、下部に位置する白色インク層への到達光量が低下する結果となる。
【0028】
本願発明では、上記問題を踏まえ、光重合反応を最も好ましいバランスで白色インクと有色インクとの光硬化を実現するため、白色インクと有色インクとの光重合開始剤の含有比率を、従来にない特定の条件に設定するとともに、白色インク中の光重合開始剤の含有量を特定の範囲に制御することにより、上記問題を解決することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】本発明のインクジェット記録方法に適用可能なピニングを採用したインクジェット記録装置の一例を示す概略側面図(実施態様1)
【
図1B】本発明のインクジェット記録方法に適用可能なピニングを採用したインクジェット記録装置の一例を示す概略上面図(実施態様1)
【
図2A】本発明のインクジェット記録方法に適用可能なゲル化剤を含有するインクを用いたインクジェット記録装置の一例を示す概略側面図(実施態様2)
【
図2B】本発明のインクジェット記録方法に適用可能なゲル化剤を含有するインクを用いたインクジェット記録装置の一例を示す概略上面図(実施態様2)
【
図3A】本発明のインクジェット記録方法に適用可能なゲル化剤を含有するインクを用いたインクジェット記録装置の他の一例を示す概略側面図(実施態様3)
【
図3B】本発明のインクジェット記録方法に適用可能なゲル化剤を含有するインクを用いたインクジェット記録装置の他の一例を示す概略上面図(実施態様3)
【
図4A】実施態様1により形成される積層インクジェット画像の構成の一例を示す概略断面図
【
図4B】実施態様2により形成される積層インクジェット画像の構成の一例を示す概略断面図
【
図4C】実施態様3により形成される積層インクジェット画像の構成の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクセットは、少なくとも光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する、白色インクと有色インクにより構成され、前記白色インクがさらに酸化チタン及びゲル化剤を含有し、前記有色インクがさらに色材を含有し、前記有色インクに対する前記白色インクの前記光重合開始剤量の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)が、0.10~0.80の範囲内であり、かつ、前記白色インクの前記光重合開始剤の含有量が、インク全質量に対して、0.3~2.4質量%の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0031】
白色インクがゲル化剤を含有していることにより、インクが記録媒体に着弾して冷却した時にゲル化剤の結晶化によってインクがゲル化するため、インクのピニング性が高くなり、形成画像の液寄りや色混じりによる画質低下を防止することができる。
【0032】
また、白色インクの前記ゲル化剤の含有量が、インク全質量に対し0.3~2.5質量%の範囲内とすることが、高品位の画像が得られるとともに、密着性に優れた画像を得るとこができる点で好ましい。
【0033】
白色インクに適用する酸化チタンでは、他の顔料に比較して表面親水性が高いため、疎水性のゲル化剤との相互作用が弱いため、形成した白色インク層内において、ゲル化剤が表面に析出しやすい環境にある。本発明では、ゲル化剤の含有量として2.5質量%以下とすることにより、耐擦過性評価や密着性の評価を行った際、白色インク層と有色インク層間、又は白色インク層と記録媒体間での密着性の低下による剥離の発生を防止することができる。また、ゲル化剤の含有量を0.3質量%以上とすることにより、密着性の向上と、インク液滴の混じりや色にじみの発生を防止し、高鮮鋭な画像を得ることができるめ、上記で規定するゲル化剤量に設定することが重要となる。
【0034】
また、本発明においては、ゲル化剤としては、特に制限はないが、特に、前記一般式(G1)又は(G2)で表される構造を有する化合物を適用することが、本発明の上記効果をより発現させることができる点で好ましい。
【0035】
また、本発明のインクジェット記録方法では、本発明の白色インクと有色インクにより構成される活性光線硬化型インクジェットインクセットを用い、記録媒体上に、前記白色インク及び有色インクを印字した後、当該白色インク及び有色インクに活性光線を照射して硬化させて画像記録することを特徴とする。
【0036】
更には、記録媒体上に、前記白色インクを印字し、次いで前記有色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して、画層形成面側から観察する画像の場合、前記光重合開始剤の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)を、0.30~0.70の範囲内とすることが、より本発明の目的効果を達成することができる点で好ましい。
【0037】
また、記録媒体上に、前記有色インクを印字し、次いで前記白色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して、画層形成面とは反対側の面から観察する画像の場合、前記光重合開始剤の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)を、0.20~0.60の範囲内とすることが、より本発明の目的効果を達成することができる点で好ましい。
【0038】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0039】
《活性光線硬化型インクジェットインクセット》
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクセット(以下、単に「インクセット」ともいう。)は、少なくとも光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する、白色インクと有色インクにより構成されている。
【0040】
本発明のインクセットを構成する有色インクとしては、具体的には、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクの他に、ブルーインク、グリーンインク、レッドインク等が挙げられる。
【0041】
ついて、本発明にインクの各構成要素の詳細について説明する。
【0042】
〔光重合性化合物〕
本発明のインクセットを構成するインクには、光重合性化合物を含有する。本発明に係る光重合性化合物は、活性光線により重合し、インクを硬化する作用を有する。
【0043】
光重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマー又はこれらの混合物のいずれであってもよい。光重合性化合物は、本発明に係るインク中に、1種のみが含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0044】
ここでいう活性光線とは、例えば、電子線、紫外線、α線、γ線、及びエックス線等のエネルギー線であり、好ましくは、紫外線及び電子線である。光重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物を挙げることができ、好ましくはラジカル重合性化合物である。
【0045】
光重合性化合物の含有量は、例えば、本発明に係るインクの全質量に対して1~97質量%の範囲内とすることが硬化性や柔軟性などの膜物性の観点で好ましく、30~95質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0046】
(ラジカル重合性化合物)
本発明に適用可能なラジカル重合性化合物としては、不飽和カルボン酸エステルであることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0047】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0048】
(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸及びt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含む単官能のアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA構造を有するジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、並びに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、並びにこれらの変性物が含まれる。
【0049】
上記変性物の例には、エチレンオキサイド基を挿入したエチレンオキサイド変性(EO変性)アクリレート、及びプロピレンオキサイドを挿入したプロピレンオキサイド変性(PO変性)アクリレートが含まれる。
【0050】
光重合性化合物は、分子量が280~1500の範囲内であり、かつ、ClogP値が4.0~7.0の範囲内の(メタ)アクリレート化合物(以下、単に「(メタ)アクリレート化合物A」ともいう)を含むことが好ましい。
【0051】
(メタ)アクリレート化合物Aは、(メタ)アクリレート基を2以上有することがより好ましい。
【0052】
(メタ)アクリレート化合物Aの分子量は、上記のように280~1500の範囲内であり、300~800の範囲内であることがより好ましい。
【0053】
インクジェット記録ヘッドからインクを安定に吐出するためには、80℃でのインク粘度を3~20、好ましくは7~14mPa・sの間にすることができる。
【0054】
分子量が280以上の(メタ)アクリレート化合物とゲル化剤とをインク組成物に含ませることで、着弾後のインク粘度が高まり、記録媒体へのインクの浸透を抑制することができるので、硬化性の低下を抑える効果が期待できる。一方、分子量が1500以下の(メタ)アクリレート化合物を含ませることで、インクのゾル粘度の過剰な高まりを抑えることができ、塗膜の光沢均一性の向上が期待できる。
【0055】
ここで、(メタ)アクリレート化合物Aの分子量は、下記市販のソフトウェアパッケージ1又は2を用いて測定することができる。
【0056】
ソフトウェアパッケージ1:MedChem Software (Release 3.54,1991年8月、Medicinal Chemistry Project, Pomona College,Claremont,CA)、
ソフトウェアパッケージ2:Chem Draw Ultra ver.8.0.(2003年4月、CambridgeSoft Corporation,USA)
本発明においては、インクが光重合性化合物の少なくとも一部として(メタ)アクリレート化合物Aを含んでいると、ClogP値が4.0未満の(メタ)アクリレート化合物を光重合性化合物として使用したインクよりも光沢値が低下する傾向にある。よって、コロナ放電処理前の60°光沢値が比較的低い記録媒体に画像形成するためのインクに使用すると、印字部と非印字部と光沢差を小さくすることができるので好ましい。(メタ)アクリレート化合物AはClogP値が4.0未満の(メタ)アクリレート化合物よりも疎水性が高いため、より多くのゲル化剤が反発してインクの硬化膜表面に移動し、凹凸を増やすことによって、印字部の光沢値が低下すると考えられる。さらに、(メタ)アクリレート化合物AのClogP値は、4.5~6.0の範囲内であることがより好ましい。
【0057】
ここで「logP値」とは、水と1-オクタノールに対する有機化合物の親和性を示す係数である。
【0058】
1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の二液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPで示す。すなわち、「logP値」とは、1-オクタノール/水の分配係数の対数値であり、分子の親疎水性を表す重要なパラメータとして知られている。
【0059】
「ClogP値」とは、計算により算出したlogP値である。ClogP値は、フラグメント法や、原子アプローチ法等により算出されうる。より具体的に、ClogP値を算出するには、文献(C.Hansch及びA.Leo、“Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology”(John Wiley & Sons, New York, 1969))に記載のフラグメント法又は下記市販のソフトウェアパッケージ1又は2を用いればよい。
【0060】
ソフトウェアパッケージ1:MedChem Software (Release 3.54,1991年8月、Medicinal Chemistry Project, Pomona College,Claremont,CA)、
ソフトウェアパッケージ2:Chem Draw Ultra ver.8.0.(2003年4月、CambridgeSoft Corporation,USA)
本発明でいう「ClogP値」の数値は、ソフトウェアパッケージ2を用いて計算した「ClogP値」である。
【0061】
インクに含まれる(メタ)アクリレート化合物Aの量に特に限定はないが、インク全質量中、1~40質量%の範囲内であることが好ましく、5~30質量%の範囲内であることがより好ましい。(メタ)アクリレート化合物Aの量を1質量%以上とすることで、インクが親水的になりすぎず、ゲル化剤がインクに十分に溶解するため、インクがゾル-ゲル相転移しやすくなる。一方、(メタ)アクリレート化合物Aの量を40質量%以下とすることで、光重合開始剤をインクに十分に溶解させることができる。
【0062】
(メタ)アクリレート化合物Aのより好ましい例には、(1)分子内に(-C(CH3)H-CH2-O-)で表される構造を3~14個有する、三官能以上のメタクリレート又はアクリレート化合物、及び(2)分子内に環状構造を持つ二官能以上のメタクリレート又はアクリレート化合物が含まれる。これらの(メタ)アクリレート化合物は、光硬化性が高く、かつ硬化したときの収縮が少ない。さらに、ゾル-ゲル相転移の繰り返し再現性が高い。
【0063】
分子内に(-C(CH3)H-CH2-O-)で表される構造を3~14個有する、三官能以上のメタクリレート又はアクリレート化合物とは、例えば、3個以上のヒドロキシ基を有する化合物のヒドロキシ基をプロピレンオキシド変性し、得られた変性物を(メタ)アクリル酸でエステル化したものである。
【0064】
この化合物の具体例としては、
3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート Photomer 4072(分子量:471、ClogP:4.90、Cognis社製)、
3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート Miramer M360(分子量:471、ClogP:4.90、Miwon社製)
等が含まれる。
【0065】
分子内に環状構造を持つ二官能以上のメタクリレート又はアクリレート化合物とは、例えば、2以上のヒドロキシ基とトリシクロアルカンとを有する化合物のヒドロキシ基を、(メタ)アクリル酸でエステル化したものである。
【0066】
この化合物の具体例には、
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート NKエステルA-DCP(分子量:304、ClogP:4.69)、
トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート NKエステルDCP(分子量:332、ClogP:5.12)
等が含まれる。
【0067】
(メタ)アクリレート化合物Aの別の具体例としては、1,10-デカンジオールジメタクリレート NKエステルDOD-N(分子量:310、ClogP:5.75、新中村化学社製)なども含まれる。
【0068】
光重合性化合物には、(メタ)アクリレート化合物A以外の光重合性化合物がさらに含まれていてもよい。
【0069】
その他の光重合性化合物には、例えば、ClogP値が4.0未満である(メタ)アクリレートモノマー、又はオリゴマー、ClogP値が7.0を超える(メタ)アクリレートモノマー、又はオリゴマー、その他の重合性オリゴマー等がある。
【0070】
これらの(メタ)アクリレートモノマー、又はオリゴマーの例には、4EO変性ヘキサンジオールジアクリレート(CD561、Sartomer社製、分子量358);3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(SR454、Sartomer社製、分子量429);4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SR494、Sartomer社製、分子量528);6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(SR499、Sartomer社製、分子量560);カプロラクトンアクリレート(SR495B、Sartomer社製、分子量344);ポリエチレングリコールジアクリレート(NKエステルA-400、新中村化学社製、分子量508)、(NKエステルA-600、新中村化学社製、分子量708);ポリエチレングリコールジメタクリレート(NKエステル9G、新中村化学社製、分子量536)、(NKエステル14G、新中村化学社製);テトラエチレングリコールジアクリレート(V#335HP、大阪有機化学社製、分子量302);ステアリルアクリレート(STA、大阪有機化学社製);フェノールEO変性アクリレート(M144、Miwon社製);ノニルフェノールEO変性アクリレート(M166、Miwon社製)等が含まれる。
【0071】
その他の重合性オリゴマーの例には、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が含まれる。
【0072】
(カチオン重合性化合物)
本発明に適用可能なカチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物及びオキセタン化合物等を挙げることができる。
【0073】
カチオン重合性化合物は、インク中に、1種のみが含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0074】
エポキシ化合物は、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド又は脂肪族エポキシド等であり、硬化性を高めるためには、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましい。
【0075】
芳香族エポキシドは、多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジ又はポリグリシジルエーテルでありうる。
【0076】
反応させる多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体の例には、ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加体等が含まれる。
【0077】
アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等でありうる。
【0078】
脂環式エポキシドは、シクロアルカン含有化合物を、過酸化水素や過酸等の酸化剤でエポキシ化して得られるシクロアルカンオキサイド含有化合物でありうる。シクロアルカンオキサイド含有化合物におけるシクロアルカンは、シクロヘキセン又はシクロペンテンでありうる。
【0079】
脂肪族エポキシドは、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジ又はポリグリシジルエーテルでありうる。
【0080】
脂肪族多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコール等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等でありうる。
【0081】
ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物;
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物等が含まれる。これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性や密着性などを考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましい。
【0082】
オキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物であり、その例には、特開2001-220526号公報、特開2001-310937号公報、特開2005-255821号公報に記載のオキセタン化合物等が含まれる。中でも、特開2005-255821号公報の段落番号(0089)に記載の一般式(1)で表される化合物、同号公報の段落番号(0092)に記載の一般式(2)で表される化合物、段落番号(0107)の一般式(7)で表される化合物、段落番号(0109)の一般式(8)で表される化合物、段落番号(0116)の一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。特開2005-255821号公報に記載された一般式(1)、(2)、(7)、(8)及び(9)で表される構造を以下に示す。
【0083】
【0084】
上記一般式(1)、(2)、(7)~(9)におけるR1、R2、R3、R8、R9及びR11の詳細は、特開2005-255821号公報のそれぞれに記載されたとおりであり、ここでは省略する。
【0085】
〔光重合開始剤〕
本発明に係るインクでは、光重合開始剤を含有する。本発明に係る光重合開始剤としては、本発明に係るインクが、光重合性化合物としてラジカル重合性化合物を含有するときは光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてカチオン重合性化合物を含有するときは、光カチオン重合開始剤を適用することが好ましい。
【0086】
(光ラジカル重合開始剤)
ラジカル光重合開始剤には、分子内結合開裂型の光重合開始剤と分子内水素引き抜き型の光重合開始剤とがある。
【0087】
分子内結合開裂型の光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系;ベンジル及びメチルフェニルグリオキシエステル等を挙げることができる。
【0088】
また、分子内水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;ミヒラ-ケトン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等を挙げることができる。
【0089】
中でもアシルホスフィンオキシドやアシルホスフォナートは、反応性の面から、好ましく用いることができる。
【0090】
具体的には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0091】
(光カチオン重合開始剤)
本発明においては、光カチオン重合開始剤として、光酸発生剤を適用することが好ましい。
【0092】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187~192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0093】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-塩を挙げることができる。
【0094】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例としては、特開2005-255821号公報の段落番号(0132)に記載されている化合物を挙げることができる。
【0095】
第2に挙げられる、スルホン酸を発生するスルホン化物の具体的な化合物としては、特開2005-255821号公報の段落番号(0136)に記載されている化合物を挙げることができる。
【0096】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、その具体的な化合物としては、特開2005-255821号公報の段落番号(0138)に記載されている化合物を挙げることができる。
【0097】
第4に、特開2005-255821号公報の段落番号(0140)に記載されている鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0098】
(光重合開始剤の添加量)
本発明のインクセットにおいては、有色インクに対する前記白色インクの前記光重合開始剤量の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)が、0.10~0.80の範囲内であり、かつ、前記白色インクの前記光重合開始剤の含有量が、インク全質量に対して、0.3~2.4質量%の範囲内であることを特徴とする。
【0099】
更には、後述するインクジェット記録方法においては、記録媒体上に、白色インクを印字し、次いで有色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して画像記録する場合、光重合開始剤の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)として、0.30~0.70の範囲内に設定することが好ましい態様である。
【0100】
また、記録媒体上に有色インクを印字し、次いで色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して画像記録する場合、光重合開始剤の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)として、0.20~0.60の範囲内に設定することが好ましい。
【0101】
上記条件とすることにより、形成画像の耐擦過性及び密着性に優れたインクジェット画像を形成することができる。
【0102】
(光重合開始剤助剤及び重合禁止剤)
本発明に係るインクには、必要に応じて光重合開始剤助剤や重合禁止剤などをさらに含んでもよい。光重合開始剤助剤は、第3級アミン化合物であってよく、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミン及びN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。これらの化合物は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0103】
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が含まれる。
【0104】
〔色材〕
本発明のインクセットを構成するインクにおいては、インクを構成する色材としては、染料又は顔料を制限なく用いることができるが、インク成分に対し良好な分散安定性を有し、かつ耐候性に優れた顔料を用いることが好ましい。
【0105】
本発明のインクセットを構成するインクにおいては、白色インクでは白色顔料として酸化チタンを含有し、有色インクでは有色の色材を含有することを特徴とする。
【0106】
(白色インク)
本発明に係る白色インクにおいては、白色顔料として酸化チタンを用いることを一つの特徴とし、酸化チタンの50質量%以上がルチル型二酸化チタンであることが好ましい。本発明に適用する酸化チタンとしては、更には、アルミナ、シリカ、亜鉛、ジルコニア、有機物等により表面処理を施すことができる。
【0107】
本発明に係る酸化チタン粒子の平均粒径としては、50~500nmの範囲内であることが好ましく、100~300nmの範囲内であることがより好ましい。酸化チタン粒子の平均粒径を上記で規定する範囲に調整することで、本発明の効果が顕著に発現され、かつインクジェットヘッドでのノズル詰まりの抑制、インクジェット用白色インク組成物の保存安定性(特に、沈降の抑止)、プリント基材に対する隠蔽性を十分に発揮することができる点で好ましい。
【0108】
本発明に適用可能な酸化チタン粒子は、市販品としても入手することが可能であり、例えば、石原産業社製のCR-50、CR-57、CR-58、CR-67、CR-Super-70、CR-80、CR-90、CR-90-2、CR-93、CR-95、CR-EL、R-550、R-580、R-630、R-670、R-680、R-780、R-820、R-830、R-850、R-930、R-980、PF-736、PF-737、PF-742、堺化学工業社製のSR-41、R-5N、R-7E、R-11P、R-21、R-25、R-32、R-42、R-44、R-45M、R-62N、R-310、R-650、TCR-52、GTR-100、D-918、FTR-700などが挙げられる。
【0109】
本発明に係る白色インクにおける酸化チタンの添加量としては、インク全質量に対し5.0~35質量%の範囲内が好ましく、10~20質量%の範囲内がより好ましい。本発明に係る白色インクにおける酸化チタンの添加量を上記で規定する範囲に調整することにより、白色インクの保存安定性(特に沈降の抑制)とプリント基材に対する遮蔽性の両立に効果を発現させることができる。
【0110】
本発明に係る白色インクには、必要に応じて本発明に係る酸化チタン以外の公知の白色顔料を併用してもよい。本発明に適用可能な他の白色顔料としては、例えば、無機白色顔料や有機白色顔料、白色の中空ポリマー微粒子を用いることができる。
【0111】
無機白色顔料としては、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。
【0112】
(有色インク)
本発明に係る有色インクには、有色の色材を含有することを特徴とする。
【0113】
本発明において、有色インクの色材として、染料又は顔料を制限なく用いることができるが、顔料を適用することが、インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから好ましい。顔料は、特に限定されないが、例えば、カラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料又は無機顔料が挙げられる。
【0114】
赤又はマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
【0115】
青又はシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
【0116】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50から選ばれる顔料又はその混合物が含まれる。
【0117】
黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
【0118】
黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
【0119】
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF-1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS-3、5187、5108、5197、5085N、SR-5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN-EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G-550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA-1103、セイカファーストイエロー10GH、A-3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY-260、2700(B)、2770、セイカファーストレッド8040、C405(F)、CA120、LR-116、1531B、8060R、1547、ZAW-262、1537B、GY、4R-4016、3820、3891、ZA-215、セイカファーストカーミン6B1476T-7、1483LT、3840、3870、セイカファーストボルドー10B-430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファーストマルーン460N、セイカファーストレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN-EP、4940、4973(以上、大日精化工業社製);KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET
Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(以上、DIC社製);Colortex Yellow 301、314、315、316、P-624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA-414、U263、Finecol Yellow T-13、T-05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P-625、102、H-1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、ColortexBlue516、517、518、519、A818、P-908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(以上、山陽色素社製);Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP-S(以上、東洋インキ社製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG-02、Hostapeam BlueB2G(以上、ヘキストインダストリー社製);Novoperm P-HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(クラリアント製);カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(以上、三菱化学製)等が挙げられる。
【0120】
また、染料としては、従来公知のイエロー染料、マゼンタ染料、シアン染料、ブラック染料等を適用することができる。
【0121】
(顔料の分散方法)
白色インク、有色インクが色材として顔料を適用する際、インクの調製に用いる分散方法として、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等により行うことができる。
【0122】
顔料の分散条件としては、顔料粒子の体積平均粒子径が、好ましくは0.08~0.5μmの範囲内、最大粒子径が好ましくは0.3~10μmの範囲内、より好ましくは0.3~3μmの範囲内となるように行われることが好ましい。
【0123】
顔料の分散は、顔料、分散剤、及び分散媒体の選定、分散条件、及び濾過条件等によって、調整され、所望の粒子径の顔料分散液を得ることができる。
【0124】
(顔料の分散助剤)
本発明に係るインクには、顔料の分散性を高めるために、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びステアリルアミンアセテート等が挙げられる。分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ等が挙げられる。
【0125】
〔ゲル化剤〕
本発明のインクセットにおいては、少なくとも白色インクがゲル化剤を含有していることを特徴とする。さらには、白色インクにおけるゲル化剤の含有量が、インク全質量に対し0.3~2.5質量%の範囲内であることが好ましい。さらには、白色インク及び有色インクの全てがゲル化剤を含有する構成が好ましい態様である。
【0126】
本発明のインクセットでは、記録媒体に着弾したインク液滴の過剰な濡れ拡がりを抑制し、高精細な画像を得やすくする観点から、少なくとも白色インクがゲル化剤を含むことが好ましい態様である。
【0127】
ゲル化剤とは、常温で固体、加熱すると液体となる有機物であり、インクを温度により可逆的にゾル-ゲル相転移させる機能を有する添加剤である。
【0128】
ゲル化剤がインク中で結晶化するときに、ゲル化剤の結晶化物である結晶が三次元的に囲む空間を形成する。このように形成された構造を「カードハウス構造」いうことがある。カードハウス構造は、ビニルエーテル基を有しない未反応のラジカル重合性化合物や未反応の光重合開始剤を保持することができるので、インク液滴のピニング性を高めることができる。それにより、隣り合うインク滴同士の合一を抑制することができる。
【0129】
さらに、室温では、ゲル化剤を含む活性光線硬化型インクジェットインクは結晶化し、粘度が高くなっているため、光重合開始剤の分子運動が抑制されやすい。それにより、室温下でインクを長期間保存しても保存安定性が損なわれにくい。
【0130】
インクの液滴をインクジェット記録装置から安定に吐出するためには、ゾル状のインク(高温時、例えば、80℃程度)において、ラジカル重合性化合物とゲル化剤との相溶性が良好であることが必要である。
【0131】
カードハウス構造の形成に適したゲル化剤の例には、脂肪族ケトン化合物;脂肪族エステル;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、及びホホバエステル等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン及び鯨ロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、及び水素化ワックス等の鉱物系ワックス;硬化ヒマシ油又は硬化ヒマシ油誘導体;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体又はポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス;ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、及びエルカ酸等の高級脂肪酸;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸;12-ヒドロキシステアリン酸誘導体;ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド(例えば、日本化成社製 ニッカアマイドシリーズ、伊藤製油社製 ITOWAXシリーズ、花王社製 FATTYAMIDシリーズ等);N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等のN-置換脂肪酸アミド;N,N′-エチレンビスステアリルアミド、N,N′-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、及びN,N′-キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド;ドデシルアミン、テトラデシルアミン又はオクタデシルアミン等の高級アミン;ステアリルステアリン酸、オレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル(例えば、日本エマルジョン社製 EMALLEXシリーズ、理研ビタミン社製 リケマールシリーズ、理研ビタミン社製 ポエムシリーズ等);ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸のエステル(例えば、リョートーシュガーエステルシリーズ 三菱ケミカルフーズ社製);ポリエチレンワックス、α-オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス(Baker-Petrolite社製 UNILINシリーズ等);ダイマー酸;ダイマージオール(CRODA社製 PRIPORシリーズ等);ステアリン酸イヌリン等の脂肪酸イヌリン;パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン等の脂肪酸デキストリン(千葉製粉社製 レオパールシリーズ等);ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル;ベヘン酸エイコサンポリグリセリル(日清オイリオ社製 ノムコートシリーズ等);N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-(2-エチルヘキサノイル)-L-グルタミン酸ジブチルアミド等のアミド化合物(味の素ファインテクノより入手可能);1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール(ゲルオールD 新日本理化より入手可能)等のジベンジリデンソルビトール類;特開2005-126507号公報、特開2005-255821号公報及び特開2010-111790号公報に記載の低分子オイルゲル化剤等が含まれる。
【0132】
ゲル化剤は、前述の「カードハウス構造」を形成しやすい観点から、炭素数が9以上25以下の直鎖状又は分岐上の炭化水素基を含むことが好ましい。
【0133】
中でも、下記一般式(G1)で表される構造を有する脂肪族ケトン及び下記一般式(G2)で表される構造を有する脂肪族エステルが特に好ましい。
【0134】
一般式(G1):R1-CO-R2
一般式(G2):R3-COO-R4
上記一般式(G1)又は(G2)において、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素数が9~25の範囲内である直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。炭化水素基は、アルキル基であることが好ましい。
【0135】
一般式(G1)おいて、R1及びR2で表される炭化水素基は、特に制限されないが、炭素数が12~25の直鎖状又は分岐状の炭化水素基であることが好ましく、炭素数が12~25の直鎖部分又は分岐部分を含むアルキル基であることがより好ましい。
【0136】
上記一般式(G1)で表される脂肪族ケトン化合物の例には、18-ペンタトリアコンタノン(C17-C17)、ジリグノセリルケトン(C24-C24)、ジベヘニルケトン(C22-C22)、ジステアリルケトン(C18-C18)、ジエイコシルケトン(C20-C20)、ジパルミチルケトン(C16-C16)、ジミリスチルケトン(C14-C14)、ジラウリルケトン(C12-C12)、ラウリルミリスチルケトン(C12-C14)、ラウリルパルミチルケトン(C12-C16)、ミリスチルパルミチルケトン(C14-C16)、ミリスチルステアリルケトン(C14-C18)、ミリスチルベヘニルケトン(C14-C22)、パルミチルステアリルケトン(C16-C18)、バルミチルベヘニルケトン(C16-C22)、ステアリルベヘニルケトン(C18-C22)等が含まれる。
【0137】
一般式(G1)で表される化合物の市販品の例には、18-Pentatriacontanon(Alfa Aeser社製)、Hentriacontan-16-on(Alfa Aeser社製)、カオーワックスT1(花王株式会社製)等が含まれる。インクに含まれる脂肪族ケトン化合物は、1種類のみであってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0138】
一般式(G2)おいて、R3及びR4で表される炭化水素基は、特に制限されないが、炭素数12~25の直鎖状又は分岐状の炭化水素基であることが好ましく、炭素数12~25の直鎖部分又は分岐部分を含むアルキル基であることがより好ましい。
【0139】
一般式(G2)で表される脂肪族エステルの例には、ベヘニン酸ベヘニル(C21-C22)、イコサン酸イコシル(C19-C20)、ステアリン酸ステアリル(C17-C18)、ステアリン酸パルミチル(C17-C16)、ステアリン酸ラウリル(C17-C12)、パルミチン酸セチル(C15-C16)、パルミチン酸ステアリル(C15-C18)、ミリスチン酸ミリスチル(C13-C14)、ミリスチン酸セチル(C13-C16)、ミリスチン酸オクチルドデシル(C13-C20)、オレイン酸ステアリル(C17-C18)、エルカ酸ステアリル(C21-C18)、リノール酸ステアリル(C17-C18)、オレイン酸ベヘニル(C18-C22)、セロチン酸ミリシル(C25-C16)、リノール酸アラキジル(C17-C20)等が含まれる。
【0140】
一般式(G2)で表される脂肪族エステルの市販品の例には、ユニスターM-2222SL(日油社製)、ユニスターM-9796(日油社製)、エキセパールSS(花王社製)、EMALEX CC-18(日本エマルジョン社製)、アムレプスPC(高級アルコール工業社製)、エキセパール MY-M(花王社製)、スパームアセチ(日油社製)、EMALEX CC-10(日本エマルジョン社製)等が含まれる。これらの市販品は、2種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製してもよい。
【0141】
インクに含まれるゲル化剤は2種類以上の混合物であってもよい。
【0142】
ゲル化剤の含有量は、少なくとも白色インクにおいて、インクの全質量に対して0.3~2.5質量%以下の範囲内であることが好ましい。ゲル化剤の含有量が0.3質量%以上であると、インクのピニング性を十分に高め、より高精細な画像を形成することができる。ゲル化剤の含有量が2.5質量%以下であると、形成した画像の表面からのゲル化剤の析出を抑制でき、形成画像の密着性を向上させることができる。
【0143】
〔インクセット(インク)のその他の構成要素〕
本発明のインクセットを構成する各インクには、必要に応じて他の成分をさらに含んでもよい。他の成分は、各種添加剤や他の樹脂等であってよい。添加剤の例には、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物等も含まれる。塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが含まれる。他の樹脂の例には、硬化膜の物性を調整するための樹脂などが含まれ、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、及びゴム系樹脂等が含まれる。
【0144】
(インクの物性)
インクジェットヘッドからの吐出性をより高める観点からは、本発明に係るインクの80℃における粘度は、3~20mPa・sの範囲内であることが好ましく、7~9mPa・sの範囲内であることがより好ましい。また、着弾して常温に降温した際にインクを十分にゲル化させる観点からは、本発明のインクの25℃における粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。
【0145】
また、ゲル化剤を含有するインクにおいては、40~90℃の範囲内において脱ゲル化及び再ゲル化することが、インクジェットヘッドの耐久性の観点と、着弾時にゲル状態となって、色混じりや滲み等が生じることを防止できる点で好ましい。
【0146】
すなわち、本発明に係るインクにおいて、ゲル化剤を含むインクは、温度により可逆的にゾル-ゲル相転移することができる。ゾル-ゲル相転移型の活性光線硬化型インクは、高温(例えば80℃程度)ではゾルであるため、インク吐出用記録ヘッドから吐出することができるが、記録媒体に着弾した後、自然冷却されてゲル化する。これにより、隣り合うインク滴同士の合一を抑制し、画質を高めることができる。
【0147】
本発明に係るインクの80℃における粘度、25℃における粘度及びゲル化温度は、レオメーターにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。
【0148】
《インクジェット記録方法》
本発明のインクジェット記録方法は、上記した本発明のインクセットを用い、白色インク及び有色インクのインク液滴をインクジェット法により記録媒体上に着弾させる工程と、記録媒体上に着弾した白色インク及び有色インクの各インク液滴に活性光線を照射して画像を硬化させて画像記録する工程と、を含む。
【0149】
各インクを記録媒体上に着弾させる工程では、白色インク及び有色インクのインク液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体上に着弾させる。この時、インク液滴は、記録媒体上の形成すべき画像に応じた位置に着弾させることが必須となる。
【0150】
インク液滴は、加熱した状態でインクジェットヘッドから吐出することで、吐出安定性を高めることができる。吐出される際のインクの温度は、35~100℃の範囲内であるが好ましく、吐出安定性をより高める観点からは、35~80℃の範囲内であることがより好ましい。吐出安定性をさらに高める観点からは、インクの粘度が7~15mPa・sの範囲内、より好ましくは8~13mPa・sの範囲内となるようなインク温度において出射を行うことが好ましい。
【0151】
インクジェットインクを所定の温度に加熱する方法の例には、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ及びヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系、フィルター付き配管及びピエゾヘッド等の少なくともいずれかを、パネルヒーター、リボンヒーター及び保温水等のうちいずれかによって所定の温度に加熱する方法が含まれる。
【0152】
記録速度を速くし、かつ、画質を高める観点から、吐出される際のインクジェットインクの液滴量は2~20pLの範囲内であることが好ましい。
【0153】
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式及びコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドの例は、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型及びシェアードウォール型を含む電気-機械変換方式、並びにサーマルインクジェット型及びバブルジェット(登録商標)型を含む電気-熱変換方式等が含まれる。
【0154】
次の工程では、記録媒体上に着弾した各色インクに活性光線を照射して硬化した画像を形成する。
【0155】
この工程では、前の工程で着弾させたインクに活性光線を照射して、画像を構成する硬化膜を形成する。インクに活性光線を照射することで、インクが硬化し、硬化膜が形成される。
【0156】
インクに照射できる活性光線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線、及びエックス線が含まれる。これらのうち、取り扱いの容易さ及び人体への影響の少なさの観点から、紫外線を照射することが好ましい。光源の輻射熱によってインクジェットインクが溶けることによるインクの硬化不良の発生を抑制する観点から、光源は発光ダイオード(LED)であることが好ましい。硬化膜を形成するための紫外線を照射することができるLED光源の例には、395nm、水冷LED、Phoseon Technology社製が含まれる。
【0157】
インクへの輻射熱の照射をより抑制する観点から、LED光源は、370~410nm範囲内の紫外線を画像表面におけるピーク照度が0.5~10W/cm2の範囲内となるように設置され、1~5W/cm2の範囲内となるように設置されることがより好ましく、又は、画像に照射される光量が350mJ/cm2未満となるように設置されることが好ましい。
【0158】
記録媒体の搬送速度は、高速記録の観点から、30~120m/minの範囲内であることが好ましい。
【0159】
(記録媒体)
本発明のインクジェット画像形成方法に用いる記録媒体は、本発明のインクによって画像を形成することができればよく、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート及びポリブタジエンテレフタレートを含むプラスチックで構成される非吸収性の記録媒体、金属類及びガラス等の非吸収性の無機記録媒体、及び紙類等(例えば、印刷用コート紙及び印刷用コート紙B等)とすることができる。その中でも、オーバーコート液によるコーティングが求められている紙類のOKトップコートやマリコート等に好ましく用いることができる。
【0160】
インクジェット記録ヘッドからインク液滴を吐出することによって、記録媒体上にインク液滴が付着する。繰り返し再現性良く高画質を形成するためにインク液滴が着弾する際の記録媒体の温度は、20~50℃の範囲内に設定されていることが好ましい。
【0161】
〔インクジェット記録装置〕
本発明のインクセットが用いられる、活性光線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置について説明する。
【0162】
活性光線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置には、ライン記録方式(シングルパス記録方式、ラインヘッド方式)のものと、シリアル記録方式のものとがある。求められる画像の解像度や記録速度に応じて選択されればよいが、高速記録の観点では、ライン記録方式(シングルパス記録方式、ラインヘッド方式)が好ましい。
【0163】
次いで、本発明のインクセットを用いたインクジェット記録方法の代表例(実施態様2及び実施態様3)について、図を交えて説明する。なお、実施態様1については、参考例とする。
【0164】
〔実施態様1〕
本発明のインクジェット記録方法の第1の方法(実施態様1)は、本発明で規定する構成を満たし、ゲル化剤を含有しない白色インク及び有色インクを用い、インク液滴により形成されるインク画像の液寄りや色にじみ、混色等による画質低下を防止するため各色インクを記録媒体に着弾させるごとに、インクを半硬化させて、流動性を低下させるため、弱い活性光線(例えば、LED)を照射するピニングを施す方法である。
【0165】
図1A及び
図1Bは、本発明のインクジェット記録方法に適用可能なピニングを採用したライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す全体構成図である。
【0166】
図1Aは、インクジェット記録装置(10)の概略側面図であり、
図1Bはその上面図である。
【0167】
図1A及び
図1Bで示されるように、記録媒体(1)の搬送方向(矢印)に対し、上流側より、ゲル化剤を含有しない白色インク(W)をインクヘッド(5)より吐出する白色ヘッドキャリッジ(2W)、イエローインク(Y)をインクヘッド(5)より吐出するイエローヘッドキャリッジ(2Y)、マゼンタインク(M)をインクヘッド(5)より吐出するマゼンタヘッドキャリッジ(2M)、シアンインク(C)をインクヘッド(5)より吐出するシアンヘッドキャリッジ(2C)、及びブラックインク(K)をインクヘッド(5)より吐出するブラックヘッドキャリッジ(2K)が配列されている。2W、2Y、2M、2Cの各色ヘッドキャリッジの下流側には、それぞれ記録媒体(1)上に着弾した各インク液滴を半硬化させるための低出力の活性光線照射光源(3a~3d)が配置され、ピニングを行う。次いで、ブラックインク(K)を吐出して、
図4Aで示すような記録媒体(51)上に白色インク層(52)と有色インク層(54)とが積層されているインクジェット記録画像(50)を形成する。
図4Aにおいて、53は白色顔料である酸化チタン粒子であり、55は有色の顔料粒子である。
【0168】
最後に、高出力の活性光線照射光源(4)が配置され、本硬化を行う。
【0169】
図1Bで示すインクジェット記録装置(10)のように、複数のインクヘッド(5)を収容するヘッドキャリッジ(2W~2K)は、記録媒体(1)の全幅を覆うように固定配置されており、インクごとに設けられた複数のインク吐出用のインクヘッド(5)を収容する。吐出用のインクヘッド(5)には各色インクが供給されるようになっている。例えば、インクジェット記録装置(10)に着脱自在に装着された不図示のインクカートリッジ等から、直接又は不図示のインク供給手段によりインクが供給されるようになっていてもよい。
【0170】
活性光線が紫外線である場合、低出力の活性光線照射光源(3a~3d)及び高出力の活性光線照射光源(4)の例には、蛍光管(低圧水銀ランプ、殺菌灯)、冷陰極管、紫外レーザー、数100Pa以上1MPa以下までの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ及びLED等が含まれる。硬化性の観点から、照度100mW/cm2以上の紫外線を照射する紫外線照射手段;具体的には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ及びLED等が好ましく、消費電力、輻射熱の少ない観点から、LEDがより好ましい。
【0171】
活性光線が電子線である場合、活性光線照射部18(電子線照射手段)の例には、スキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式等の電子線照射手段が含まれるが、処理能力の観点から、カーテンビーム方式の電子線照射手段が好ましい。電子線照射手段の例には、日新ハイボルテージ(株)製の「キュアトロンEBC-200-20-30」、AIT(株)製の「Min-EB」等が含まれる。
【0172】
実施態様1に示すインクジェット記録方法では、インクの硬化性を高める観点から、ピニング用の低出力の活性光線は、インク着弾後0.001~1.0秒の範囲内に照射されることが好ましく、より高精細な画像を形成する観点から、0.001~0.5秒の範囲内に照射されることがより好ましい。また、高出力の活性光線は、全てのインク滴が記録媒体上に付着した後、0.001~1.0秒の範囲内に照射されることが好ましく、より高精細な画像を形成する観点から、0.001~0.5秒の範囲内に照射されることがより好ましい。
【0173】
〈実施態様1における効果〉
実施態様1においては、画像形成に使用する有色インクに対する色材として酸化チタンを含有する白色インクの光重合開始剤量の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)を0.10~0.80の範囲内とし、かつ、白色インクにおける光重合開始剤の含有量を白色インク全質量の0.3~2.4質量%の範囲内とすることにより、十分な表面強度を得ることができ、耐擦過性及び層間又は白色インク層(52)と記録媒体(51)間の密着性を向上させることができる。
【0174】
〔実施態様2〕
本発明のインクジェット記録方法の第2の方法(実施態様2)は、本発明で規定する構成を満たし、ゲル化剤を含有する白色インク及び有色インクを用い、初めに記録媒体上に白色インクを吐出して白色インク層を形成した後、その上に有色インクを吐出して有色インク層を形成する方法であり、形成されるインク画像の液寄りや色にじみ、混色等による画質低下を防止し、耐擦過性、インク層間又は白色インク層と記録媒体間の密着性を向上させる方法である。
【0175】
図2A及び
図2Bでは、本発明のインクジェット記録方法に適用可能なゲル化剤を含有する白色インク及び有色インクを用いたライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す全体構成図で、記録媒体上に、先に白色インク層を形成した後、その上に、有色インク層を形成する方法である。
【0176】
図2Aは、インクジェット記録装置(20)の概略側面図であり、
図2Bはその上面図である。
【0177】
図2A及び
図2Bで示されるように、実施態様2においては、記録媒体(1)の搬送方向(矢印)に対し、上流側より、それぞれゲル化剤を含有する白色インク(W)をインクヘッド(5)より吐出する白色ヘッドキャリッジ(2W)、イエローインク(Y)をインクヘッド(5)より吐出するイエローヘッドキャリッジ(2Y)、マゼンタインク(M)をインクヘッド(5)より吐出するマゼンタヘッドキャリッジ(2M)、シアンインク(C)をインクヘッド(5)より吐出するシアンヘッドキャリッジ(2C)、及びブラックインク(K)をインクヘッド(5)より吐出するブラックヘッドキャリッジ(2K)が配列されている。最も下流側に、高出力の活性光線照射光源(4)が配置され、光硬化を行って、
図4Bで示すように、記録媒体(51)上にゲル化剤を含有する白色インク層(52)と有色インク層(54)とが積層されているインクジェット記録画像(60)を形成する。
【0178】
実施態様2に示すインクジェット記録方法では、インクの硬化性を高める観点から、活性光線の照射は、全てのインク滴が記録媒体上に付着した後10秒以内、好ましくは0.001~5秒以内、より好ましくは0.01~2秒以内に行うことが好ましい。活性光線の照射は、ヘッドキャリッジに収容された全てのインクヘッドからインクを吐出した後に行われることが好ましい。
【0179】
〈実施態様2による効果〉
実施態様2で示すようなゲル化剤を含有するインクを用い、白色インク層を形成した後、有色インク層を形成するインクジェット記録方法においては、
図4Bで示すように、表面部に位置する有色顔料(55)を有する有色インク層(54)では、有色顔料(55)とゲル化剤との相互作用が強く、顔料粒子(55)表面にゲル化剤(G)がより吸着され、表面領域でゲル化剤を多く含む結晶化領域(54A、54B)は薄い構成となっている。
【0180】
これに対し、白色インクを構成する酸化チタン(53)は、他の有色顔料(イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、ブラック顔料)に比較し、粒子表面がより親水的であるため、共存しているゲル化剤との相互作用が弱い。そのため、有色インク層(54)に対し、ゲル化剤がより白色インク層(52)の表面領域(52A、52B)に析出しやすくなる。
【0181】
その結果、耐擦過性試験やテープ剥離法による密着性の評価を行うと、記録媒体(51)と有色インク層(54)間に配置する白色インク層(52)では、下部に位置する記録媒体(51)間、又は上部に位置する有色インク層(54)界面で剥離を起こしやすくなる。
【0182】
上記のような状況を踏まえ、本発明のインクセットにおいては、ゲル化剤を含有する白色インクを印字し、次いで前記ゲル化剤を含有する有色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して画像記録する実施態様2で示すインクジェット記録方法においては、有色インクに対する白色インクの光重合開始剤量の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)を0.30~0.70の範囲内とし、かつ白色インクのゲル化剤の含有量を、白色インク全質量に対し0.3~2.5質量%の範囲内とすることにより、十分な表面強度を得ることができ、耐擦過性及び層間又は白色インク層(52)と記録媒体(51)間の密着性を向上させることができる。
【0183】
〔実施態様3〕
本発明のインクジェット記録方法の第3の方法(実施態様3)は、本発明で規定する構成を満たし、ゲル化剤を含有する白色インク及び有色インクを用い、初めに記録媒体上に有色インクを吐出して有色インク層を形成した後、白色インクを吐出して白色インク層を形成する方法であり、形成されるインク画像の液寄りや色にじみ、混色等による画質低下を防止し、耐擦過性、インク層間又は白色インク層と記録媒体間の密着性を向上させる方法である。
【0184】
図3A及び
図3Bは、本発明のインクジェット記録方法に適用可能なゲル化剤を含有する白色インク及び有色インクを用いたライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す全体構成図で、記録媒体上に、先に有色インク層を形成した後、その上に、白色インク層を形成する方法である。
【0185】
図3Aは、インクジェット記録装置(30)の概略側面図であり、
図3Bはその上面図である。
【0186】
図3A及び
図3Bで示されるように、実施態様3においては、光透過性を有する記録媒体(1)の搬送方向(矢印)に対し、上流側より、それぞれゲル化剤を含有するイエローインク(Y)をインクヘッド(5)より吐出するイエローヘッドキャリッジ(2Y)、マゼンタインク(M)をインクヘッド(5)より吐出するマゼンタヘッドキャリッジ(2M)、シアンインク(C)をインクヘッド(5)より吐出するシアンヘッドキャリッジ(2C)、ブラックインク(K)をインクヘッド(5)より吐出するブラックヘッドキャリッジ(2K)、及び白色インク(W)をインクヘッド(5)より吐出する白色ヘッドキャリッジ(2W)が配列されている。最も下流側に、高出力の活性光線照射光源(4)が配置され、光硬化を行って、
図4Cで示すように、光透過性記録媒体(51C)上にゲル化剤を含有する有色インク層(54)と白色インク層(52)とが積層されているインクジェット記録画像(70)を形成する。
【0187】
実施態様3に示すインクジェット記録方法では、インクの硬化性を高める観点から、活性光線の照射は、全てのインク滴が記録媒体上に付着した後10秒以内、好ましくは0.001~5秒以内、より好ましくは0.01~2秒以内に行うことが好ましい。活性光線の照射は、ヘッドキャリッジに収容された全てのインクヘッドからインクを吐出した後に行われることが好ましい。
【0188】
〈実施態様3による効果〉
実施態様3で示すようなゲル化剤を含有するインクを用い、先に有色インク層(54)を形成した後、白色インク層(52)を形成するインクジェット記録方法においては、
図4Cで示すように、表面部に位置する白色インクでは、実施態様2と同様に、酸化チタン(53)の粒子表面がより親水的であるため、共存しているゲル化剤との相互作用が弱い。そのため、ゲル化剤がより白色インク層(52)の表面領域(52A、52B)に析出しやすくなる。
【0189】
その結果、耐擦過性試験やテープ剥離法による密着性の評価を行うと、光透過性記録媒体(51C)の有色インク層(54)上に配置する白色インク層(52)では、有色インク層(54)界面で剥離を起こしやすくなる。
【0190】
上記のような状況を踏まえ、本発明のインクセットにおいては、有色インクを印字し、次いで白色インクを印字した後、一括して活性光線を照射して画像記録する実施態様3で示すインクジェット記録方法においては、有色インクに対する白色インクの光重合開始剤量の含有量(質量)比の値(白色インク/有色インク)を0.20~0.60の範囲内とし、かつ白色インクのゲル化剤の含有量を、白色インク全質量に対し0.3~2.5質量%の範囲内とすることにより、十分な表面強度を得ることができ、耐擦過性及び白色インク層(52)と有色インク層(54)間の密着性を向上させることができる。
【0191】
〔ゲル化剤を含有する白色インク及び有色インクの画像記録条件〕
インクヘッドからインクを吐出する際の、インクヘッド内のインクの温度は、インクの吐出性を高めるためには、インクのゲル化温度よりも10~30℃の範囲内の高い温度に設定されることが好ましい。
【0192】
インクヘッドの各ノズルから吐出される1滴あたりの液滴量は、インクの粘度等にもよるが、0.5~10pLの範囲内であることが好ましく、所望の領域のみに吐出するためには、0.5~4.0pLの範囲内であることがより好ましく、1.5~4.0pLの範囲内であることがさらに好ましい。このような量のインクを塗布しても、本発明に係るインクではゾル-ゲル相転移が行われるため、インクが過剰に濡れ広がらず、所望の箇所にのみ吐出することができる。
【0193】
記録媒体上に付着したインクの液滴は冷却されてゾル-ゲル相転移により速やかにゲル化する。これにより、インクの液滴が過剰に濡れ広がらずに、ピニングすることができる。さらに、液滴が速やかにゲル化し、粘度が上昇するため、記録媒体上に付着したインク表面中に酸素が入り込みにくく、インク表面の硬化が酸素によって阻害されにくい。
【0194】
ここで、インクヘッドからインクの液滴を吐出することによって、記録媒体上にインクの液滴が付着する。インクの液滴が付着する際の記録媒体の温度は、インクのゲル化温度よりも10~20℃の範囲内の低い温度に設定されていることが好ましい。
【0195】
活性光線が電子線である場合、電子線照射の加速電圧は、十分な硬化を行うために、30~250kVの範囲内であることが好ましく、30~100kVの範囲内であることがより好ましい。加速電圧が100~250kVの範囲内である場合、電子線照射量は30~100kGyの範囲内であることが好ましく、30~60kGyの範囲内であることがより好ましい。
【0196】
硬化後の総インク膜厚は、2~25μmの範囲内であることが好ましい。「総インク膜厚」とは、記録媒体に描画されたインク膜厚の最大値である。
【0197】
上記
図1A~
図4Cで示した実施態様1~3においては、ライン記録方式のインクジェット記録装置について、そのインクジェット記録方法について説明したが、本発明で規定する条件を満たす範囲においては、シリアル記録方式のインクジェット記録装置を適用することもできる。本発明においては、シリアル記録方式のインクジェット記録装置に関する説明は省略する。
【実施例】
【0198】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行った。
【0199】
実施例1(参考例)
下記の方法に従って、実施態様1に対応するゲル化剤を含まず、ピニングを施して、画像1~5を形成した。
【0200】
《顔料分散液の調製》
(黒色分散液の調製)
トリプロピレングリコールジアクリレートの71質量部及び分散剤としてアジスパーPB824(味の素ファインテクノ株式会社)の9質量部をステンレス鋼製のビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間撹拌して前記分散剤を溶解させた。
【0201】
次いで、得られた分散剤溶液を室温まで冷却した後、黒色顔料としてPigment Black 7(#52;三菱化学株式会社)の20質量部を加えて混合液を調製した。
【0202】
次いで、当該混合液を直径0.5mmのジルコニアビーズ200gとともにガラス瓶に入れて密栓し、ペイントシェーカーにて5時間分散処理した。分散液からジルコニアビーズを除去して、黒色(K)顔料分散液を調製した。
【0203】
(白色分散液の調製)
上記黒色分散液の調製において、黒色顔料に代えて、白色顔料として酸化チタン(TCR-52;堺化学工業株式会社)を用い、その添加量を60質量部に変更した以外は同様にして、白色(W)顔料分散液を調製した。
【0204】
《各インクの調製》
表Iに記載の組成(単位は質量%)で、白色分散液又は黒色分散液、光重合性化合物、光重合開始剤1、界面活性剤1、重合禁止剤1を混合し、80℃に加熱した状態で撹拌した。次いで、加熱した状態で、混合液をテフロン(登録商標)製の3μmメンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社)を用いて濾過して、表Iに記載の構成からなる有色インクである黒色インクK1、白色インクW1~W5を調製した。
【0205】
【0206】
表Iに略称で記載した各添加剤の詳細は、以下のとおりである。
【0207】
〈光重合性化合物〉
化合物1:N-ビニルカプロラクタム(BASF社製)
化合物2:トリプロパングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製)
〈光重合開始剤〉
光重合開始剤1:IRGACURE TPO(BASF社製)
〈その他〉
界面活性剤1:BYK UV3500(ビックケミー・ジャパン社製)
重合禁止剤1:Irgatab UV10(BASF社製)
《インクジェット画像記録》
(インクジェット記録装置)
調製した有色インクである黒色インクK1と、白色インクW1~W5からそれぞれ組み合わせて構成される各インクセットを、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するライン方式のインクジェット記録装置に装填した。
【0208】
インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、インクタンクからヘッド部分までは40℃、記録媒体の搬送台は40℃になるように加温した。
【0209】
(インクジェット画像記録)
〈画像1の形成〉
A4サイズのアルミ蒸着紙(ハイピカEF2 特種東海紙社製)の上に、白色インクW1を用いて3cm×3cmのサイズの100%白色ベタ画像を形成した。次いで、形成した白色画像に、紫外線照射ユニット(Phoseon Technology社製LEDランプ)から100mJ/cm2の光量で仮露光(ピニング)した。
【0210】
次いで、半硬化させた白色インクW1で形成されたベタ画像と重なるように、黒色インクK1を用いて3cm×3cmのサイズの100%ベタ画像を形成し、その後、紫外線照射ユニット(Phoseon Technology社製LEDランプ)から光を照射して(395nm、4W/cm2、water cooled unit)硬化させて、画像1を形成した。
【0211】
なお、インクヘッドは、6~42pLのマルチドロップ、360dpiの解像度のヘッドを各色1個ずつ用いて、360×360dpiの解像度で吐出し、黒色インクK1の付量が9.5g/m2、白色インクW1の付量が10.0g/m2となるように、適宜、駆動波形、電圧を調整した。
【0212】
積算光量は、500mJ/cm2となるように記録媒体の搬送速度を可変することで適宜調整し、浜松ホトニクス社製 紫外線積算光量計C9536、H9958を用いて測定した。
【0213】
なお、上記画像1の形成においては、Yインク、Mインク及びCインクは、インクジェットヘッドから吐出しなかった。
【0214】
〈画像2~5の形成〉
上記画像1の形成において、白色インクW1を、それぞれ白色インクW2~W5に変更した以外は同様にして、画像2~5を形成した。
【0215】
《形成画像の評価》
上記形成した画像1~5について、下記の評価を行った。
【0216】
(耐擦過性の評価)
形成した各インク画像(3cm×3cm)の上辺から下辺までを爪で3回擦り、画像表面への傷の発生の有無及び白抜け故障の大きさを目視観察し、以下の基準に従って耐擦過性の評価を行った。
【0217】
◎:擦り傷又は白抜け故障の発生が認められない
○:画像表面に僅かに傷の発生は認められるが、白抜け故障の発生はない
△:長さ0.5cm未満の白抜け故障の発生が認められる
×:長さ0.5cm以上の白抜け故障の発生が認められる
上記評価ランクにおいて、△以上であれば実用上許容範囲にあると判断した。
【0218】
(密着性の評価:テープ剥離試験)
形成した各インク画像(3cm×3cm)にセロハン密着テープを2cm貼り付け、上面から消しゴムでこすり、セロハン密着テープの接着剤とインク画像形成面との密着を充分に行った後、90°でテープを剥離した後、画像表面状態を目視観察し、下記の基準に従って密着性を評価した。
【0219】
◎:インク画像に全く変化が認められない
○:インク画像に僅かにテープ跡が残る
△:インク画像の一部に僅かな画像剥がれが発生し一部濃度の低下が認められる
×:インク画像の大部分がはがれて、記録媒体の白地や下層のインク画像が認められる
上記評価ランクにおいて、△以上であれば実用上許容範囲にあると判断した。
【0220】
以上により得られた結果を、表IIに示す。
【0221】
【0222】
表IIに記載の結果より明らかなように、白色インクと有色インク(黒色インク)を用いて形成した画像(参考例)は、比較例に対し、耐擦過性及び密着性に優れた画像であることが分かる。
【0223】
実施例2
下記の方法に従って、実施態様2に対応するゲル化剤を含有し、白色インク画像を形成したのち、その上に有色インク画像(黒色インク画像)を積層した、画像11~20を形成した。
【0224】
《各インクの調製》
表IIIに記載の組成(単位は質量%)で、実施例1で調製した白色分散液又は黒色分散液、光重合性化合物の化合物1~3、光重合開始剤2、界面活性剤1、重合禁止剤1、ゲル化剤G1及びG2を混合し、80℃に加熱した状態で撹拌した。次いで、加熱した状態で、混合液をテフロン(登録商標)製の3μmメンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社)を用いて濾過して、表IIIに記載の構成からなる有色インクである黒色インクK2、白色インクW11~W20を調製した。
【0225】
【0226】
表IIIに略称で記載した各添加剤で、実施例1で記載した以外の添加剤の詳細は、以下のとおりである。
【0227】
光重合性化合物3:3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート Miramer M360(MIWON社製)
光重合開始剤2:IRGACURE 819(BASF社製)
ゲル化剤G1:WEP2(日油社製)
ゲル化剤G2:EMALEX EG-di-S(日本エマルジョン社製)
《インクジェット画像記録》
(インクジェット記録装置)
調製した有色インクである黒色インクK2と、白色インクW11~W20からそれぞれ組み合わせて構成される各インクセットを、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するライン方式のインクジェット記録装置に装填した。
【0228】
インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、インクタンクからヘッド部分までは100℃、記録媒体の搬送台は40℃になるように加温した。
【0229】
(インクジェット画像記録)
〈画像11の形成〉
A4サイズのアルミ蒸着紙(ハイピカEF2 特種東海紙社製)の上に、白色インクW11を用いて3×3cmのサイズの100%白色ベタ画像を形成した後、白色インクW11で形成されたベタ画像と重なるように、黒色インクK2を用いて3×3cmのサイズの100%ベタ画像を形成し、その後、5秒以内に、下記の紫外線照射ユニットを用いて硬化させて、画像11を形成した。
【0230】
なお、インクヘッドは、6~42pLのマルチドロップ、360dpiの解像度のヘッドを各色1個ずつ用いて、360×360dpiの解像度で吐出し、黒色インクK2の付量が9.5g/m2、白色インクW11の付量が10.0g/m2となるように、適宜、駆動波形、電圧を調整した。
【0231】
各インクは、紫外線照射ユニット(Phoseon Technology社製LEDランプ)から光を照射して(395nm、4W/cm2、water cooled unit)硬化させた。積算光量は、500mJ/cm2となるように記録媒体の搬送速度を可変することで適宜調整し、浜松ホトニクス社製 紫外線積算光量計C9536、H9958を用いて測定した。
【0232】
なお、上記画像11の形成においては、Yインク、Mインク及びCインクは、インクジェットヘッドから吐出しなかった。
【0233】
〈画像12~20の形成〉
上記画像11の形成において、白色インクW11を、それぞれ白色インクW12~W20に変更した以外は同様にして、画像12~20を形成した。
【0234】
《形成画像の評価》
上記形成した画像11~20について、実施例1に記載の方法と同様にして、耐擦過性及び密着性の評価を行い、得られた結果を表IVに示す。
【0235】
【0236】
表IVに記載の結果より明らかなように、本発明で規定する条件を満たすゲル化剤を含有する白色インクと有色インク(黒色インク)を用いて形成した画像は、比較例に対し、耐擦過性及び密着性に優れた画像であることが分かる。
【0237】
実施例3
下記の方法に従って、実施態様3に対応するゲル化剤を含有し、光透過性の記録媒体上に有色インク画像(黒色インク画像)を形成したのち、その上に白色インク画像を積層した、画像21~30を形成した。
【0238】
《各インクの調製》
表V記載の組成(単位は質量%)で、実施例1で調製した白色分散液又は黒色分散液、光重合性化合物の化合物1~3、光重合開始剤2、界面活性剤1、重合禁止剤1、ゲル化剤G1及びG2を混合し、80℃に加熱した状態で撹拌した。次いで、加熱した状態で、混合液をテフロン(登録商標)製の3μmメンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社)を用いて濾過して、表Vに記載の構成からなる有色インクである黒色インクK3、白色インクW21~W30を調製した。
【0239】
【0240】
表Vに略称で記載した各添加剤の詳細は、実施例1及び実施例2でその詳細を記載した内容と同じである。
【0241】
《インクジェット画像記録》
(インクジェット記録装置)
調製した有色インクである黒色インクK3と、白色インクW21~W30からそれぞれ組み合わせて構成される各インクセットを、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するライン方式のインクジェット記録装置に装填した。
【0242】
インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、インクタンクからヘッド部分までは100℃、記録媒体の搬送台は40℃になるように加温した。
【0243】
(インクジェット画像記録)
〈画像21の形成〉
A4サイズのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:150μm)上に、黒色インクK3を用いて3cm×3cmのサイズの100%ベタ画像を形成し、次いで、黒色インクK3で形成されたベタ画像と重なるように、白色インクW21を用いて3cm×3cmのサイズの100%ベタ画像を形成し、その後、5秒以内に、下記の紫外線照射ユニットを用いて硬化させて、画像21を形成した。
【0244】
なお、インクヘッドは、6~42pLのマルチドロップ、360dpiの解像度のヘッドを各色1個ずつ用いて、360×360dpiの解像度で吐出し、黒色インクK3の付量が9.5g/m2、白色インクW21の付量が10.0g/m2となるように、適宜、駆動波形及び電圧を調整した。
【0245】
各インクは、紫外線照射ユニット(Phoseon Technology社製LEDランプ)から光を照射して(395nm、4W/cm2、water cooled unit)硬化させた。積算光量は、500mJ/cm2となるように記録媒体の搬送速度を可変することで適宜調整し、浜松ホトニクス社製 紫外線積算光量計C9536、H9958を用いて測定した。
【0246】
なお、上記画像21の形成においては、Yインク、Mインク及びCインクは、インクジェットヘッドから吐出しなかった。
【0247】
〈画像22~30の形成〉
上記画像21の形成において、白色インクW21を、それぞれ白色インクW22~W30に変更した以外は同様にして、画像22~30を形成した。
【0248】
《形成画像の評価》
上記形成した画像21~30について、実施例1に記載の方法と同様にして、耐擦過性及び密着性の評価を行い、得られた結果を表VIに示す。
【0249】
【0250】
表VIに記載の結果より明らかなように、本発明で規定する条件を満たすゲル化剤を含有する白色インクと有色インク(黒色インク)を用いて形成した画像は、比較例に対し、耐擦過性及び密着性に優れた画像であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0251】
本発明のインクジェットインクセットは、形成画像の耐擦過性及び密着性に優れたインクジェット画像が得られ、包装材料分野で軟包装材料として広く用いられている透明フィルムや蒸着紙にインクジェットインクを用いて画像記録する分野に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0252】
1、51 記録媒体
2、2W、2Y、2M、2C、2K ヘッドキャリッジ
3a、3b、3c,3d 低出力の活性光線照射光源(ピニング用)
4 高出力の活性光線照射光源
5 インクヘッド
10、20、30 インクジェット記録装置
50、60、70 インクジェット記録画像
51C 光透過性記録媒体
52 白色インク層
52A、52B 白色インク層中のゲル化剤の局在領域
53 酸化チタン
54 有色インク層
54A、54B 有色インク層中のゲル化剤の局在領域
55 顔料粒子
G ゲル化剤
W、Y、M、C、K インク液滴
UV 活性光線