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  • 特許-試験装置、及び試験装置の制御方法 図1
  • 特許-試験装置、及び試験装置の制御方法 図2
  • 特許-試験装置、及び試験装置の制御方法 図3
  • 特許-試験装置、及び試験装置の制御方法 図4
  • 特許-試験装置、及び試験装置の制御方法 図5
  • 特許-試験装置、及び試験装置の制御方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】試験装置、及び試験装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/06 20060101AFI20220614BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20220614BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01N3/06
G01B11/00 H
G01B11/16 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020552514
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2019024773
(87)【国際公開番号】W WO2020084833
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2018201454
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永島 知貴
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-351834(JP,A)
【文献】特開2014-154062(JP,A)
【文献】特開平11-295042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/06
G01B 11/00
G01B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に第1マーク及び第2マークが付された試験片を、所定位置にセットする冶具と、
前記冶具にセットされた前記試験片に試験力を付与する試験力付与部と、
前記冶具にセットされた前記試験片を、第1視野により撮影する第1カメラと、
前記冶具にセットされた前記試験片を、前記第1視野よりも広い第2視野により撮影する第2カメラと、
前記第1カメラにより撮影された第1撮影画像及び前記第2カメラにより撮影された第2撮影画像について、前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を検出することにより、前記試験力付与部により前記試験力が付与されたときの前記試験片の変位を測定する変位測定部と
を備えた試験装置であって、
前記第1撮影画像について、前記第1マークの画像部分と前記第2マークの画像部分とを含む第1領域を、第1領域テンプレート画像として設定するテンプレート画像設定部と、
前記第2撮影画像について、前記第1領域テンプレート画像を前記第1カメラと前記第2カメラとの視野の相違に合わせて縮小した第2領域テンプレート画像を用いたテンプレートマッチングを行って、前記第1領域に対応する第2領域を検出する領域検出部と、
前記第2領域における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を認識することにより、前記測定を開始する際の前記第2撮影画像における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の初期位置を設定する初期位置設定部と
を備えることを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記初期位置設定部は、前記第1領域における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を示す第1位置情報を、前記第1カメラと前記第2カメラとの視野の相違に合わせて補正した第2位置情報に基づいて、前記第2領域における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を認識する
ことを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
表面に第1マーク及び第2マークが付された試験片を、所定位置にセットする冶具と、
前記冶具にセットされた前記試験片に試験力を付与する試験力付与部と、
前記冶具にセットされた前記試験片を、第1視野により撮影する第1カメラと、
前記冶具にセットされた前記試験片を、前記第1視野よりも広い第2視野により撮影する第2カメラと
を備える試験装置の制御方法であって、
前記第1カメラにより撮影された第1撮影画像及び前記第2カメラにより撮影された第2撮影画像について、前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を検出することにより、前記試験力付与部により前記試験力が付与されたときの前記試験片の変位を測定する変位測定ステップと、
前記第1撮影画像について、前記第1マークの画像部分と前記第2マークの画像部分とを含む第1領域を、第1領域テンプレート画像として設定するテンプレート画像設定ステップと、
前記第2撮影画像について、前記第1領域テンプレート画像を前記第1カメラと前記第2カメラとの視野の相違に合わせて縮小した第2領域テンプレート画像を用いたテンプレートマッチングを行って、前記第1領域に対応する第2領域を検出する領域検出ステップと、
前記第2領域における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を認識することにより、前記測定を開始する際の前記第2撮影画像における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の初期位置を設定する初期位置設定ステップと
を含むことを特徴とする試験装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置、及び試験装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験力の付与に応じた試験片の変形をカメラによる撮影画像に基づいて測定する試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された試験装置においては、引張試験の開始から終了までの間、カメラにより試験片を繰り返し撮影する。そして、各撮影画像から試験片の表面の2箇所に付されたマークの画像部分を検出し、検出したマークの画像部分の位置の変化に基づいて試験片の伸び量を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-333157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、試験片の変形を撮影画像に基づいて測定する場合、試験を開始する際に、試験片に付されたマークの画像部分の初期位置を設定する必要がある。そして、この初期位置の設定は、試験装置の使用者が撮影画像を視認して行うこともできるが、マークのテンプレート画像を用いたパターンマッチングにより、撮影画像からマークの画像部分を検出することによって行うこともできる。
また、広範囲の変位測定と高精度の変位測定に対応するために、視野が異なる2台のカメラを備えた試験装置も知られている。そして、視野の広さが異なる2台のカメラの撮影画像について、試験片に付されたマークの画像部分の初期位置を、パターンマッチングにより行う場合、視野が広いカメラの撮影画像では、マークの画像部分が小さくなってマークの画像部分の情報量が少なくなる。そのため、テンプレートマッチングによりマークの画像部分を検出する際に誤検出が生じ易く、マークの初期位置が誤って設定されるおそれがある。
【0005】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、視野が異なる2台のカメラの撮影画像について、試験片に付されたマークの画像部分の初期位置が誤って設定されることを防止した試験装置、及び試験装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、表面に第1マーク及び第2マークが付された試験片を、所定位置にセットする冶具と、前記冶具にセットされた前記試験片に試験力を付与する試験力付与部と、前記冶具にセットされた前記試験片を、第1視野により撮影する第1カメラと、前記冶具にセットされた前記試験片を、前記第1視野よりも広い第2視野により撮影する第2カメラと、前記第1カメラにより撮影された第1撮影画像及び前記第2カメラにより撮影された第2撮影画像について、前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を検出することにより、前記試験力付与部により前記試験力が付与されたときの前記試験片の変位を測定する変位測定部とを備えた試験装置に関する。そして、第1の発明は、前記第1撮影画像について、前記第1マークの画像部分と前記第2マークの画像部分とを含む第1領域を、第1領域テンプレート画像として設定するテンプレート画像設定部と、前記第2撮影画像について、前記第1領域テンプレート画像を前記第1カメラと前記第2カメラとの視野の相違に合わせて縮小した第2領域テンプレート画像を用いたテンプレートマッチングを行って、前記第1領域に対応する第2領域を検出する領域検出部と、前記第2領域における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を認識することにより、前記測定を開始する際の前記第2撮影画像における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の初期位置を設定する初期位置設定部とを備えることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記初期位置設定部は、前記第1領域における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を示す第1位置情報を、前記第1カメラと前記第2カメラとの視野の相違に合わせて補正した第2位置情報に基づいて、前記第2領域における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を認識することを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、表面に第1マーク及び第2マークが付された試験片を、所定位置にセットする冶具と、前記冶具にセットされた前記試験片に試験力を付与する試験力付与部と、前記冶具にセットされた前記試験片を、第1視野により撮影する第1カメラと、前記冶具にセットされた前記試験片を、前記第1視野よりも広い第2視野により撮影する第2カメラとを備える試験装置の制御方法に関する。そして、第3の発明は、前記第1カメラにより撮影された第1撮影画像及び前記第2カメラにより撮影された第2撮影画像について、前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を検出することにより、前記試験力付与部により前記試験力が付与されたときの前記試験片の変位を測定する変位測定ステップと、前記第1撮影画像について、前記第1マークの画像部分と前記第2マークの画像部分とを含む第1領域を、第1領域テンプレート画像として設定するテンプレート画像設定ステップと、前記第2撮影画像について、前記第1領域テンプレート画像を前記第1カメラと前記第2カメラとの視野の相違に合わせて縮小した第2領域テンプレート画像を用いたテンプレートマッチングを行って、前記第1領域に対応する第2領域を検出する領域検出ステップと、前記第2領域における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の位置を認識することにより、前記測定を開始する際の前記第2撮影画像における前記第1マークの画像部分及び前記第2マークの画像部分の初期位置を設定する初期位置設定ステップとを含むことを特徴とする。
なお、この明細書には、2018年10月26日に出願された日本国特許出願・特願2018-201454号の全ての内容が含まれるものとする。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、テンプレート画像設定部により、視野が狭い第1カメラによる第1撮影画像について、第1マークの画像部分と第2マークの画像部分とを含む第1領域が、第1領域テンプレートとして設定される。第1領域テンプレートの画像情報は、第1マークの画像部分のみ、又は第2マークの画像部分のみをテンプレート画像とした場合よりも多くなる。そのため、領域検出部により、第1領域テンプレート画像を縮小した第2領域テンプレート画像を用いて、前記第2撮影画像における第2領域を、誤検出を防止して検出することができる。そして、初期位置設定部23により、第2領域における第1マークの画像部分及び第2マークの画像部分の位置を認識することにより、マークの画像部分の初期位置が誤って設定されることを防止することができる。
第2の発明によれば、初期位置設定部は、第1領域における第1マークの画像部分及び第2マークの画像部分の位置を示す第1位置情報を、第1カメラと第2カメラの視野の相違に合わせて補正した第2位置情報に基づいて、第2領域における第1マークの画像部分及び第2マークの画像部分の位置を認識する。そのため、簡易な演算処理により、第2領域における第1マークの画像部分及び第2マークの画像部分を認識することができる。
第3の発明によれば、第3の発明の方法を試験装置で実施することにより、第1の発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る材料試験機の構成を模式的に示す図である。
図2図2は、試験片に付されたマークの画像部分の初期位置を設定する処理のフローチャートである。
図3図3は、第2カメラによる撮影画像から、試験片に付されたマークの画像部分を検出する際の不都合の説明図である。
図4図4は、試験片に付された第1マーク及び第2マークの画像部分を含む領域をテンプレート画像としたテンプレートマッチングの説明図である。
図5図5は、第1撮影画像及び第2撮像画像における第1領域と第2領域の対応関係の説明図である。
図6図6は、第2撮影画像の第2領域について、パターンマッチングにより第1マークの画像部分及び第2マークの画像部分を抽出する処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.材料試験機の構成]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る試験装置1の構成を模式的に示す図である。試験装置1は、試験対象の材料である試験片TPに負荷としての試験力を付与して引張試験を行う試験機本体2と、試験機本体2の作動を制御する制御装置5とを備えている。試験片TPの表面には、試験片TPの変位を試験片TPの撮影画像によって測定するために、第1マークMK1及び第2マークMK2が付されている。
【0012】
[2.試験機本体の構成]
試験機本体2は、テーブル50と、テーブル50上に鉛直方向を向く状態で回転可能に立設された一対のねじ棹51、52と、これらのねじ棹51、52に沿って移動可能なクロスヘッド53と、このクロスヘッド53を移動させて試験片TPに負荷を与える負荷機構40と、ロードセル56と、試験片TPを撮影する第1カメラ61及び第2カメラ62とを備えている。ロードセル56は、試験片TPに付与されている引張荷重である試験力を測定し、測定された試験力を示す試験力測定信号A1を制御装置5に出力するセンサである。
【0013】
一対のねじ棹51、52はボールねじから成り、クロスヘッド53は、各ねじ棹51,52に対して図示を省略したナットを介して連結されている。負荷機構40は、各ねじ棹51、52の下端部に連結されるウォーム減速機41、42と、各ウォーム減速機41、42に連結されるサーボモータ43とを備えている。
【0014】
負荷機構40は、ウォーム減速機41、42を介して、一対のねじ棹51、52にサーボモータ43の回転を伝達し、各ねじ棹51、52が同期して回転することにより、クロスヘッド53がねじ棹51、52に沿って昇降する。負荷機構40は、本発明の試験力付与部に相当する。
【0015】
クロスヘッド53には、試験片TPの上端部を把持するための上つかみ具54が付設され、テーブル50には、試験片TPの下端部を把持するための下つかみ具55が付設されている。試験機本体2は、引張試験の際、試験片TPの上端部を上つかみ具54で把持すると共に、試験片TPの下端部を下つかみ具55で把持した状態で、制御装置5による制御により、クロスヘッド53を上昇させることによって、試験片TPに試験力を付与する。
【0016】
第1カメラ61は、上つかみ具54及び下つかみ具55により把持された試験片TPを第1視野により撮影する。第2カメラ62は、上つかみ具54及び下つかみ具55により把持された試験片TPを、第1視野よりも広い第2視野により撮影する。第1カメラ61の第1映像信号Vs1と第2カメラ62の第2映像信号Vs2は、制御装置5に入力される。上つかみ具54及び下つかみ具55は、本発明の試験片を所定位置にセットする冶具に相当する。
【0017】
[3.制御装置の構成]
制御装置5は、試験機本体2の作動の制御と引張試験による試験片TPの変位の測定を行う。制御装置5は、演算ユニット10と、表示器11と、入力部12と、センサアンプ13と、画像取込回路14と、画像メモリ15と、サーボアンプ16とを備えている。
【0018】
センサアンプ13は、ロードセル56から出力される試験力測定信号A1を増幅し、増幅信号Fsを演算ユニット10に入力する。画像取込回路14は、第1カメラ61から出力される第1映像信号Vs1を入力し、第1映像信号Vs1から生成した第1撮影画像IM1を画像メモリ15に保存する。また、画像取込回路14は、第2カメラ62から出力される第2映像信号Vs2を入力し、第2映像信号Vs2から生成した第2撮影画像IM2を画像メモリ15に保存する。サーボアンプ16は、演算ユニット10から出力されるモータ駆動信号に応じて、サーボモータ43に駆動電流を供給する。
【0019】
演算ユニット10は、CPU20、メモリ30、及び図示しないインターフェース回路等により構成された電子回路ユニットである。メモリ30には、試験装置1の制御用プログラム31が保存されている。また、メモリ30には、第1撮影画像IM1及び第2撮影画像IM2から、試験片TPに付された第1マークMK1及び第2マークMK2の画像部分を検出するためのテンプレート画像のデータ32が保存される。CPU20は、制御用プログラム31を実行することによって、テンプレート画像設定部21、領域検出部22、初期位置設定部23、及び変位測定部24として機能する。
【0020】
テンプレート画像設定部21は、第1撮影画像IM1について、試験片TPに付された第1マークMK1及び第2マークMK2の画像部分を含む領域を、領域テンプレートとして設定する。領域検出部22は、第2撮影画像IM2について、領域テンプレートを第1カメラ61と第2カメラ62の視野の相違に合わせて縮小したテンプレート画像によるテンプレートマッチングを行って、第2撮影画像IM2において対応する領域を検出する。
【0021】
初期位置設定部23は、第1撮影画像IM1及び第2撮影画像IM2について、第1マークMK1及び第2マークMK2の画像部分の位置を認識して、第1マークMK1及び第2マークMK2の画像部分の初期位置を設定する。変位測定部24は、第1撮影画像IM1及び第2撮影画像IM2について、第1マークMK1及び第2マークMK2の画像部分の初期位置からの変位を認識することによって、試験片TPの伸び量を測定する。
【0022】
なお、制御装置5により本発明の試験装置の制御方法が実施され、テンプレート画像設定部21により実行される処理は、本発明の試験装置の制御方法におけるテンプレート画像設定ステップに相当する。また、領域検出部22により実行される処理は領域検出ステップに相当し、初期位置設定部23により実行される処理は初期位置設定ステップに相当し、変位測定部24により実行される処理は変位測定ステップに相当する。
【0023】
[4.マークの画像部分の初期位置の設定処理]
図3図5を参照しつつ、図2に示したフローチャートに従って、演算ユニット10により実行される第1撮影画像IM1及び第2撮影画像IM2における試験片TPに付された第1マークMK1及び第2マークMK2の画像部分の初期位置の設定処理について説明する。
【0024】
演算ユニット10は、図1に示したように、試験機本体2に試験片TPが取り付けられた状態で、使用者(引張試験の実施者)が入力部12を操作して引張試験の開始を指示したときに、図2に示したフローチャートによる処理を実行する。
【0025】
図2のステップS1で、初期位置設定部23は、第1カメラ61により撮影された第1撮影画像IM1、及び第2カメラ62により撮影された第2撮影画像IM2を取得する。ここで、図3は、第1カメラ61により撮影された第1撮影画像IM1と、第1カメラ61よりも視野が広い第2カメラ62により撮影された第2撮影画像IM2を示している。
【0026】
第1撮影画像IM1には、上つかみ具54の画像部分54i、下つかみ具55の画像部分55i、及び上つかみ具54と下つかみ具55により把持された試験片TPの画像部分TPiが写り込んでいる。また、試験片TPに付された第1マークMK1の画像部分である第1マーク画像部分MK1i、及び第2マークMK2の画像部分である第2マーク画像部分MK2iが写り込んでいる。また、第2撮影画像IM2には、第1撮影画像IM1よりも小さい第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diが写り込んでいる。
【0027】
続くステップS2で、初期位置設定部23は、第1撮影画像IM1に対して、メモリ30に保存されたマークテンプレート画像TMによるテンプレートマッチングを行って、第1マーク画像部分MK1iと第2マーク画像部分MK2iを抽出する。本実施形態では、試験片TPに付された第1マークMK1と第2マークMK2の仕様は同一であるため、1つのマークテンプレート画像TMによるパターンマッチングを行って、第1マーク画像部分MK1iと第2マーク画像部分MK2iを検出する。
【0028】
なお、マークテンプレート画像TMは、使用者がマニュアルによる登録操作によって、表示器11に表示された第1撮影画像IM1から、第1マーク画像部分MK1iの範囲を選択して設定してもよく、試験片の仕様データ等により設定してもよい。
【0029】
次のステップS3で、初期位置設定部23は、ステップS3で抽出した第1マーク画像部分MK1i及び第2マーク画像部分MK2iの位置を、第1撮影画像IM1の第1マーク画像部分MK1i及び第2マーク画像部分MK2iの初期位置として設定する。
【0030】
続くステップS4~S7は、第2撮影画像IM2についての第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diの初期位置の設定処理である。ここで、図3に示したように、第2撮影画像IM2について、マークテンプレート画像TMを縮小した縮小マークテンプレート画像DTMによるテンプレートマッチングを行って、第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diを抽出することも考えられる。
【0031】
しかしながら、第2撮影画像IM2では、第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diのサイズが小さく、画像の情報量が少ない。そのため、縮小マークテンプレート画像DTMによるテンプレートマッチングを行ったときに、第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2di以外の画像部分100、101等を、第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diであると誤検出する可能性が高くなる。
【0032】
そこで、このような誤検出を防止するために、テンプレート画像設定部21は、図2のステップS4で、図4に示したように、第1撮影画像IM1から抽出された第1マーク画像部分MK1i及び第2マーク画像部分MK2iを含む包含領域である第1領域AR1を、第1領域テンプレート画像TAとして設定する。
【0033】
続くステップS5で、領域検出部22は、第1領域テンプレート画像TAを、第1カメラ61と第2カメラ62の視野の相違に合わせて縮小した第2領域テンプレート画像DTAにより、第2撮影画像IM2に対するテンプレートマッチングを行って、第1領域AR1に対応する第2領域AR2を検出する。このように第2領域テンプレート画像DTAを用いることにより、第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diに近似する画像部分100、101等を誤検出することを防止することができる。
【0034】
ここで、図5は、第1撮影画像IM1の第1領域AR1における第1マーク画像部分MK1i及び第2マーク画像部分MK2iの位置を示す第1位置情報RP1、及び第2撮影画像IM2の第2領域AR2における第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diの位置を示した第2位置情報RP2を示している。
【0035】
第1位置情報RP1は、第1領域AR1の左上端P10(0,0)を基準として、第1マーク画像部分MK1iの位置P11(X1,Y1)、及び第2マーク画像部分MK2iの位置P12(X2,Y2)の情報を有している。第2位置情報RP2は、第1位置情報RP1により示される位置関係を、第2カメラ62の視野に合わせて縦及び横方向に倍率Dwで縮小する補正を行ったものである。
【0036】
初期位置設定部23は、ステップS6で、第2位置情報RP2を用いることにより、第2領域AR2の検出位置から、第2撮影画像IM2における第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diの位置を算出する。すなわち、初期位置設定部23は、以下の式(1)~式(4)により、第1マーク画像部分MK1diの位置P21(x1,y1)及び第2マーク画像部分MK2diの位置P22(x2,y2)を算出する。
【0037】
x1=x0+X1×Dw ・・・・・(1)
y1=y0+Y1×Dw ・・・・・(2)
x2=x0+X2×Dw ・・・・・(3)
y2=y0+Y2×Dw ・・・・・(4)
但し、(x0,y0):第2撮影画像IM2における第1マーク画像部分MK1iと第2マーク画像部分MK2iを含む包含領域である第2領域AR2の抽出位置、(X1,Y1):第1位置情報RP1による第1マーク画像部分MK1iの位置、(X2,Y2):第1位置情報RP1による第2マーク画像部分MK2iの位置、Dw:第1カメラ61と第2カメラ62の視野の相違に合わせた第1領域AR1に対する第2領域AR2の横方向及び縦方向の縮小率。
【0038】
続くステップS7で、初期位置設定部23は、第2撮影画像IM2に対して、第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diの算出位置を、第1マークMK1及び第2マークMK2の画像部分の初期位置に設定する。変位測定部24は、初期位置設定部23により決定された第1撮影画像IM1及び第2撮影画像IM2における第1マークMK1の画像部分及び第2マークMK2の画像部分の初期位置からの変位を検出することにより、試験片TPの伸び量を測定する。
【0039】
[5.他の実施形態]
上記実施形態では、図2のステップS6で、初期位置設定部23は、第1位置情報RP1を用いて、上記式(1)~式(4)により第2撮影画像IM2における第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diの位置を算出した。他の構成として、図6に示したように、マークテンプレート画像TMを、第1カメラ61と第2カメラ62の視差の相違に合わせて縮小した縮小マークテンプレート画像DTMにより、第2撮影画像IM2に対するテンプレートマッチングを行って、第1マーク画像部分MK1di及び第2マーク画像部分MK2diの初期位置を設定してもよい。この構成による場合にも、パターンマッチングによる検出範囲を第2領域AR2に限定することにより、第2領域AR2以外の箇所の画像部分100、101等を、第1マーク画像部分MK1di又は第2マーク画像部分MK2diであると誤検出することを防止することができる。
【0040】
上述実施形態において、図1に示した機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0041】
上記実施形態では、本発明の試験装置として、引張試験を行う試験装置を示したが、本発明は、試験片に試験力を付与して、試験片に生じる変位を、視野が異なる2台のカメラの撮影画像から試験片のマークを認識して測定する試験装置に対して広く適用することができる。例えば、圧縮試験、曲げ試験、引き剥がし試験等を行う試験装置に対して、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 試験装置
2 試験機本体
5 制御装置
10 演算ユニット
11 表示器
12 入力部
14 画像取込回路
15 画像メモリ
20 CPU
21 テンプレート画像設定部
22 領域検出部
23 初期位置設定部
24 変位測定部
30 メモリ
54 上つかみ具(冶具)
55 下つかみ具(冶具)
61 第1カメラ
62 第2カメラ
TP 試験片
MK1 第1マーク
MK2 第2マーク
AR1 第1撮影画像における包含領域
AR2 第2撮影画像における包含領域
TM マークテンプレート画像
TA 第1領域テンプレート画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6