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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】プロペラファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/38 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
F04D29/38 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020557691
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2019045879
(87)【国際公開番号】W WO2020110968
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018226037
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】船田 和也
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104047893(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸まわりに側面を有するハブと、前記ハブの前記側面に設けられた複数の翼と、を備え、
前記複数の翼は、前記ハブの前記側面に接続される基端から外縁まで延ばされた翼面部を有し、前記翼面部が、前記基端側に位置する内周部及び前記外縁側に位置する外周部を有し、
前記複数の翼の内周部には、前記翼面部の正圧面に、前記ハブの前記側面から前記外縁側へ向かって延びる内周翼がそれぞれ形成され、
前記内周翼は、前記翼面部の前記正圧面から正圧側へ向かって突出すると共に、前記翼の回転方向に並んで配置された複数の翼素を含み、
前記複数の翼素は、前記翼の回転方向における前縁側に配置された第1翼素と、前記翼の回転方向における後縁側において前記第1翼素に隣り合って配置された第2翼素と、を含み、
前記翼面部における、前記第1翼素と前記第2翼素との間には、前記翼面部を負圧側から前記正圧側に貫通する第1開口が形成され、
前記正圧面側で、前記側面から前記翼の前記外縁側に向かって延ばされた前記第1翼素の外縁と、前記側面から前記翼の前記外縁側に向かって延ばされた前記第2翼素の外縁との間が、前記負圧側から前記第1開口を通って前記正圧側へ向かう気流が、前記第1開口から前記正圧面に沿って前記翼の前記外縁側へ流れるように、前記側面から前記翼面部の径方向に対して開放されている、プロペラファン。
【請求項2】
前記第2翼素は、前記第1開口を介して前記翼面部の前記正圧面と負圧面とに跨って形成されている、請求項1に記載のプロペラファン。
【請求項3】
前記翼面部における、前記翼の回転方向における後縁と、前記第2翼素との間には、前記翼面部を前記負圧側から前記正圧側に貫通する第2開口が形成されている、請求項1または2に記載のプロペラファン。
【請求項4】
前記ハブの前記側面には、前記翼の回転方向における後縁と、当該後縁に隣り合う次の前記翼の前記前縁とを連結する補強部材が形成されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプロペラファン。
【請求項5】
前記複数の翼素は、前記翼面部の負圧面から前記負圧側へ向かって突出する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプロペラファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラファンに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室外機は、内部にプロペラファンを有する。近年、空気調和機の省エネルギー性能を向上するために、プロペラファンの風量の増大が図られている。プロペラファンは、翼の外周部の風速が速く、翼の回転中心である内周部に向かうにつれて風速が低下する傾向にある。翼の内周部における風速低下を補うものとして、特許文献1乃至4が提案されており、プロペラファンの風速を高めることによって風量を増やすために、プロペラファンの大径化、高速回転化などが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-101223号公報
【文献】国際公開第2011/001890号
【文献】特表2003-503643号公報
【文献】特開2004-116511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至4に記載のように、プロペラファンの大径化、高速回転化を行った場合には、翼の外周部と内周部との風速差が更に大きくなり、風速差に起因する問題が生じる。翼の内周部での風速(風量)の不足を補うためにプロペラファンの大径化や高速回転化をした結果、翼の外周部の風速が速くなることで、翼で発生する気流が、室外機における翼の周囲の構造体と干渉することによって異音が発生するおそれがある。また、翼の外周部に比べて内周部の風速が遅いことによって、内周部で生成された風が、遠心力で外周部へと流れて、外周部で生成された風の流れを乱す。翼の外周部の気流が内周部の気流によって乱された結果、外周部から送られる風量が低下する。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、翼の内周部の風速を高めることができるプロペラファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示するプロペラファンの一態様は、中心軸まわりに側面を有するハブと、ハブの側面に設けられた複数の翼と、を備える。複数の翼は、ハブの側面に接続される基端から外縁まで延ばされた翼面部を有し、翼面部が、基端側に位置する内周部及び外縁側に位置する外周部を有する。複数の翼の内周部には、翼面部の正圧面に、ハブの側面から外縁側へ向かって延びる内周翼がそれぞれ形成される。内周翼は、翼面部の正圧面から正圧側へ向かって突出すると共に、翼の回転方向に並んで配置された複数の翼素を含む。複数の翼素は、翼の回転方向における前縁側に配置された第1翼素と、翼の回転方向における後縁側において第1翼素に隣り合って配置された第2翼素と、を含む。翼面部における、第1翼素と第2翼素との間には、翼面部を負圧側から正圧側に貫通する第1開口が形成され、正圧面側で、側面から翼の外縁側に向かって延ばされた第1翼素の外縁と、側面から翼の外縁側に向かって延ばされた第2翼素の外縁との間が、負圧側から第1開口を通って正圧側へ向かう気流が、第1開口から正圧面に沿って翼の外縁側へ流れるように、側面から翼面部の径方向に対して開放されている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示するプロペラファンの一態様によれば、翼の内周部における風速を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1のプロペラファンを備える室外機の外観斜視図である。
図2図2は、実施例1のプロペラファンを正圧側から見た斜視図である。
図3図3は、実施例1のプロペラファンを正圧側から見た平面図である。
図4図4は、実施例1のプロペラファンを負圧側から見た平面図である。
図5図5は、実施例1のプロペラファンの側面図である。
図6図6は、実施例1のプロペラファンの内周翼を正圧側から見た要部拡大図である。
図7図7は、実施例1のプロペラファンの第1開口を正圧側から見た要部拡大斜視図である。
図8図8は、実施例1のプロペラファンの第1開口を負圧側から見た要部拡大斜視図である。
図9図9は、実施例1のプロペラファンの第2翼素を説明するための要部拡大側面図である。
図10図10は、実施例1のプロペラファンの内周翼の第1翼素及び第2翼素の湾曲形状を説明するための模式図である。
図11図11は、実施例1のプロペラファンの第1翼素におけるH/Lと、プロペラファンの風量及び効率との関係を説明するためのグラフである。
図12図12は、実施例1のプロペラファンの第1翼素の翼角度を説明するための側面図である。
図13図13は、実施例1のプロペラファンの第1翼素の翼角度と、風量及び効率との関係を説明するためのグラフである。
図14図14は、実施例1のプロペラファンの第1翼素及び第2翼素の大きさを説明するための模式図である。
図15図15は、実施例1のプロペラファンにおける風量と入力との関係を示すグラフである。
図16図16は、実施例1のプロペラファンにおける風量と回転数との関係を示すグラフである。
図17図17は、実施例1のプロペラファンにおける風量と静圧との関係を示すグラフである。
図18図18は、実施例1のプロペラファンの翼のリブを説明するための要部拡大側面図である。
図19図19は、実施例2のプロペラファンを正圧側から見た平面図である。
図20図20は、実施例2のプロペラファンの第1翼素及び第2翼素を正圧側から見た斜視図である。
図21図21は、実施例2のプロペラファンの第1翼素及び第2翼素を負圧側から見た斜視図である。
図22図22は、実施例2のプロペラファンの第1翼素及び第2翼素が負圧面から負圧側に突出する形状を説明するための斜視図である。
図23図23は、実施例2のプロペラファンの第1翼素及び第2翼素が負圧面から負圧側に突出する形状を説明するための要部断面図である。
図24図24は、実施例2のプロペラファンの第1翼素及び第2翼素による空気の流れを説明するための側面図である。
図25図25は、実施例2のプロペラファンにおける風量と入力との関係を、実施例1と比較して示すグラフである。
図26図26は、実施例2のプロペラファンにおける風量と回転数との関係を、実施例1と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示するプロペラファンの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示するプロペラファンが限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
(室外機の構成)
図1は、実施例1のプロペラファンを備える室外機の外観斜視図である。図1において、室外機1の前後方向をX方向とし、室外機1の左右方向をY方向とし、室外機1の上下方向をZ方向とする。図1に示すように、実施例1の室外機1は、空気調和機の一部を構成するものであり、冷媒を圧縮する圧縮機3と、圧縮機3の駆動により流入した冷媒と外気を熱交換させる熱交換器4と、熱交換器4へ外気を送風するためのプロペラファン5と、これらの圧縮機3、熱交換器4及びプロペラファン5が内部に収容される筐体6と、を備える。
【0011】
室外機1の筐体6は、外気を取り込むための吸込み口7と、熱交換器4で冷媒と熱交換した外気を筐体6内から外部へ排出するための吹出し口8と、を有する。吸込み口7は、筐体6の側面6aと、筐体6の前面6bに対向する背面6cに設けられている。吹出し口8は、筐体6の前面6bに設けられている。熱交換器4は、背面6cから側面6aにわたって配置されている。プロペラファン5は、吹出し口8に対向して配置されており、ファンモータ(図示せず)によって回転される。室外機1は、プロペラファン5を回転させることにより、吸込み口7から吸い込まれた外気が熱交換器4を通過し、熱交換器4を通過した空気を吹き出し口8から排出する。このように外気が熱交換器4を通過するときに、熱交換器4で外気が冷媒と熱交換することで、熱交換器4を流れる冷媒を冷房運転時に冷却又は暖房運転時に加熱する。なお、実施例1のプロペラファン5は、室外機1への用途に限定されるものではない。
【0012】
以下、プロペラファン5において、プロペラファン5が回転したとき、プロペラファン5から吹出し口8へ向かう空気が流れる側を正圧側Pとし、その反対側である、熱交換器4からプロペラファン5へ向かう空気が流れる側を負圧側Nとする。
【0013】
(プロペラファンの構成)
図2は、実施例1のプロペラファン5を正圧側Pから見た斜視図である。図3は、実施例1のプロペラファン5を正圧側Pから見た平面図である。図4は、実施例1のプロペラファン5を負圧側Nから見た平面図である。図5は、実施例1のプロペラファン5の側面図である。図5は、図3におけるV方向から見た側面図である。
【0014】
図2図3及び図4に示すように、プロペラファン5は、回転中心部であるハブ11と、ハブ11に設けられた複数の翼12と、を備える。ハブ11は、中心軸Oまわりに側面11aを有しており、例えば、円筒状に形成されている。ハブ11は、プロペラファン5の負圧側Nの端部におけるハブ11の中心軸Oの位置に、図示しないファンモータのシャフトが固定されるボスが設けられる。ハブ11は、ファンモータの回転に伴ってハブ11の中心軸OまわりにR方向(図2における右回り)へ回転する。なお、ハブ11の形状は、円筒状に限定されず、複数の側面11aを有する多角形の筒状に形成されてもよい。
【0015】
翼12は、プロペラファン5の羽根である。ハブ11の側面11aには、図2図3及び図5に示すように、中心軸Oまわりに沿って所定の間隔をあけて複数の翼12(実施例1では5つの翼12)が一体に形成されている。複数の翼12は、ハブ11の側面11aに、ハブ11の中心軸Oから径方向へ延ばされている。複数の翼12は、ハブ11の側面11aに接続される基端12aから外縁12bまで延ばされた翼面部12cを有する。各翼12は、翼面部12cのうち、基端12a側に位置する内周部13a及び外縁12b側に位置する外周部13bを有する。翼面部12cは、基端12a側から外縁12b側に向かって、プロペラファン5の回転方向Rに沿う長さが徐々に大きくなるように形成されている。プロペラファン5の翼12において、正圧側Pに臨む翼面を正圧面12pとし、負圧側Nに臨む翼面を負圧面12nとする(図5参照)。これらハブ11と複数の翼12は、例えば、樹脂材料や金属材料等で形成されている。
【0016】
図2図3及び図4に示すように、翼12は、プロペラファン5の回転方向Rにおける前方である前縁12-Fと、翼12の回転方向Rにおける後方である後縁12-Rと、を有する。翼12の前縁12-Fの外周部13b側は、後縁12-R側へ向かって凹となるように湾曲して形成されている。ハブ11の中心軸Oに沿う方向において、翼12の前縁12-Fよりも後縁12-Rの方が正圧側Pに位置しており、翼12の翼面部12cが中心軸Oに対して傾斜している。
【0017】
また、翼12の後縁12-Rには、後縁12-Rを内周部13a側と外周部13b側とに分ける切り欠き部14が設けられている。切り欠き部14は、翼12の後縁12-Rから前縁12-F側へ向かって延びて形成されており、中心軸Oに沿う方向から見て、前縁12-F側に向かって先細りとなる略U字状に形成されている。
【0018】
(内周翼の形状)
図6は、実施例1のプロペラファン5の内周翼を正圧側Pから見た要部拡大図である。図6に示すように、複数の翼12の内周部13aには、翼面部12cの正圧面12pに、ハブ11の側面11aから外縁12b側に向かって延びる内周翼15がそれぞれ形成されている。内周翼15は、翼面部12cの正圧面12pから正圧側Pに向かって突出すると共に、翼12の回転方向Rに沿って並んで配置された第1翼素15a及び第2翼素15bを含む。
【0019】
第1翼素15aは、翼12の前縁12-F側に配置されており、ハブ11の側面11aと翼面部12cとに連結されている。第2翼素15bは、翼12の後縁12-R側において第1翼素15aに隣り合って配置されており、ハブ11の側面11aと翼面部12cとに接続されている。翼面部12cは、第1翼素15a及び第2翼素15bを有することで、翼12の内周部13aにおいて第1翼素15a及び第2翼素15bによって風速が高められる。
【0020】
図7は、実施例1のプロペラファン5の第1開口16を正圧側Pから見た要部拡大斜視図である。図8は、実施例1のプロペラファン5の第1開口16を負圧側Nから見た要部拡大斜視図である。図7に示すように、翼面部12cにおける第1翼素15aと第2翼素15bとの間には、翼面部12cを負圧側Nから正圧側Pに貫通する第1開口16が形成されている。つまり、第1開口16は、翼面部12cを貫通する貫通孔である。第1開口16は、ハブ11の側面11aから翼12の外縁12b側に向かって延ばされた第1翼素15aの外縁E1近傍まで延ばされている。図6に示すように、第1開口16は、中心軸Oに沿う方向から見て、互いに対向する第1翼素15aの翼面と第2翼素15bの翼面とにそれぞれ連続するように開口している。また、図8に示すように、翼12の負圧面12nは、正圧面12p上における第1開口16の開口縁に滑らかに連続する傾斜面19a、19b、19cを有する。
【0021】
また、図6に示すように、翼面部12cの正圧面12p側において、ハブ11の側面11aから翼12の外縁12b側に向かって延ばされた第1翼素15aの外縁E1と、ハブ11の側面11aから翼12の外縁12b側に向かって延ばされた第2翼素15bの外縁E2との間は、翼面部12cの負圧側Nから第1開口16を通って正圧側Pに向かう気流が、第1開口16から翼面部12cの正圧面12pに沿って翼12の外縁12b側へ(側面11aから翼面部12cの外縁12b側へ)流れるように、ハブ11の側面11aから翼面部12cの径方向に対して開放されている。言い換えると、図7に示すように、第1翼素15aの外縁E1と、第2翼素15bの外縁E2との間は、第1開口16に連続する空間Gが確保されており、外縁E1と外縁E2との間に、第1開口16から翼12の外縁12b側へ向かう気流を妨げる部分が正圧面12p上に存在しないように、第1翼素15a及び第2翼素15bが形成されている。
【0022】
図9は、実施例1のプロペラファン5の第2翼素15bを説明するための要部拡大側面図である。図9では、第2翼素15bと翼面部12cとの位置関係を示している。図9に示すように、第2翼素15bは、第1開口16を介して翼面部12cの正圧面12pと負圧面12nとに跨って形成されている。このため、翼面部12cの正圧面12pと負圧面12nは、第2翼素15bの前縁15b-F側の翼面上でつながっている。したがって、第2翼素15bの回転方向Rにおける、第2翼素15bの前縁15b-Fは、中心軸Oに沿う方向において負圧面12nから負圧側Nへ突出しており、負圧面12nよりも負圧側Nに位置している。また、第2翼素15bの前縁15b-F側の部分は、前縁15b-Fに向かって厚みが徐々に小さくなるように形成されている。
【0023】
このように第2翼素15bが形成されることにより、翼12の負圧面12nの内周部13aに到達した空気は、第1開口16を通り、第1翼素15aと第2翼素15bとの間に沿って流れることで、負圧側Nから正圧側Pにスムーズに抜けるので、翼12の内周部13aの風速が高められる。また、第2翼素15bは、翼面部12cの負圧面12n側へ突出する部分を有するので、負圧側Nから流れ込む空気を、第1開口16へ案内し、第2翼素15bに沿って正圧側Pに向かって風が流れ、翼12の内周部13aにおける風速が更に高められる。
【0024】
また、翼面部12cにおける、翼12の後縁12-Rと、第2翼素15bとの間には、翼面部12cを負圧側Nから正圧側Pに向けて貫通する第2開口17が形成されている。つまり、第2開口17は、翼面部12cを貫通する貫通孔である。第2開口17は、ハブ11の側面11aから、翼面部12cの外縁12b側に向かって第2翼素15bの外縁E2近傍まで延ばされている。図6に示すように、第2開口17は、中心軸Oに沿う方向から見て、第2翼素15bの翼面に連続するように開口している。また、図8に示すように、翼12の負圧面12nには、正圧面12p上における第2開口17の開口縁に滑らかに連続する傾斜面20が形成されている。このように第2開口17が翼面部12cに形成されることにより、負圧側Nから正圧側Pに流れる空気が第2開口17を通り、第2翼素15bに沿って流れるので、翼12の後縁12-R側における内周部13aの風速が高められる。
【0025】
この結果、第1翼素15a、第2翼素15b、第1開口16、及び、第2開口17を有する本実施形態のプロペラファン5は、第1翼素15a、第2翼素15b、第1開口16、及び、第2開口17をそれぞれ有さない場合と比べて、内周部13aにおける風速が高められる。なお、本実施例1の内周翼15は、2つの第1翼素15a及び第2翼素15bを有するが、3つ以上の翼素を有するように形成されてもよい。
【0026】
(第1翼素及び第2翼素の湾曲形状)
図10は、実施例1のプロペラファン5の内周翼15の第1翼素15a及び第2翼素15bの湾曲形状を説明するための模式図である。図6及び図10に示すように、第1翼素15aは、翼面部12cの正圧面12pから正圧側Pへ向かって突出すると共に、第1翼素15aの回転方向Rにおける前縁15a-Fが、翼12の前縁12-F側へ向かって凸となるように湾曲して形成されている。より具体的には、第1翼素15aの前縁15a-Fは、ハブ11の側面11aに接続された第1翼素15aの基端における正圧面12p上に位置する下端E3と、正圧面15p上に位置する第1翼素15aの外縁E1とを直線で結ぶ図10に示す第1基準線S1から、翼12の前縁12-F側へ離れるように湾曲して形成されている。
【0027】
第2翼素15bも、第1翼素15aと同様に、翼面部12cの正圧面12pから正圧側Pへ向かって突出すると共に、第2翼素15bの回転方向Rにおける前縁15b-Fが、翼12の前縁12-F側(第1翼素15a側)へ向かって凸となるように湾曲して形成されている。より具体的には、図10に示すように、第2翼素15bの前縁15b-Fは、ハブ11の側面11aに接続された第2翼素15bの基端において前縁15b-Fが位置する下端E4と、第2翼素15bの前縁15b-Fにおける外縁E2とを直線状に結ぶ第2基準線S2から、第1翼素15a側(翼12の前縁12-F側)へ離れるように湾曲して形成されている。
【0028】
また、第2翼素15bは、第1開口16を介して翼面部12cの正圧面12pと負圧面12nとに跨って形成されているので、図7に示すように、正圧面12p上において翼12の後縁12-R側へ向かって湾曲された外縁E2と、負圧面12n上において翼12の後縁12-R側へ向かって湾曲された外縁E2’と、を有する。したがって、第1開口16の縁部を形成する翼面部12cの一部12dは、第2翼素15bにおける、第1翼素15a側の翼面上に沿ってハブ11の側面11a側へ延びている。本実施例1における第2翼素15bは、正圧面12p上の外縁E2と、負圧面12n上の外縁E2’(図10参照)とが、中心軸Oの径方向において同じ位置に形成されている。
【0029】
なお、図示しないが、第2翼素15bの前縁15b-Fも、第1翼素15aの前縁15a-Fと同様に、前縁15b-Fが正圧面12p上に位置するように形成されてもよい。この場合には、ハブ11の側面11aに接続された第2翼素15bの基端における正圧面12p上に位置する下端E4と、正圧面15p上に位置する第2翼素15bの外縁E2とを結ぶ第2基準線S2から、第1翼素15a側へ離れるように湾曲して形成される。
【0030】
上述のように形成された第1翼素15aの湾曲形状は、上記の第1基準線S1の長さをL[mm]、第1基準線S1と第1翼素15aの前縁15a-Fとの距離(第1基準線S1に対する垂線における前縁15a-Fとの交点までの長さ)の最大値である最大離間距離をH[mm]としたとき、
H/L≧0.1 ・・・(式1)
を満たす。
【0031】
図11は、実施例1のプロペラファン5の第1翼素15aにおけるH/Lと、プロペラファン5の風量及び効率との関係を説明するためのグラフである。図11において、横軸が第1翼素15aにおけるH/Lの値であり、図11ではH/Lの値が0.1~0.2の範囲を示している。また、縦軸がプロペラファン5の風量[m/h]及び効率η(=風量Q/入力)[m/h/W]である。また、風量Q1と効率η1がプロペラファン5を空気調和機の定格負荷で回転させているときの風量と効率のそれぞれを示し、風量Q2と効率η2がプロペラファン5を空気調和機の定格負荷よりも高負荷で回転させているときの風量と効率のそれぞれを示す。定格負荷時及び高負荷時のいずれにおいても、効率η1、η2は、そのピーク値(それぞれH/Lの値が0.2であるときの値)から極端に下がらないことが好ましい。
【0032】
図11に示すように、実施例1のプロペラファン5の翼12は、第1翼素15aを有していない構造に比べて、翼12の内周部13aの風量を増やすことができるが、内周部13aの風量を増やす場合、H/Lの値が0.2以上であることが好ましい。また、H/Lの値が0.1以上、0.2未満であれば、風量Q1、Q2が減少するものの、風量Q1が10%の減少(定格負荷時)、風量Q2が20%の減少(高負荷時)に抑えられるので許容範囲である(H/Lの値が0.1未満では、風量Qが減少して第1翼素15aを設けない構造との風量の差が小さい)。
【0033】
(第1翼素の翼角度)
図12は、実施例1のプロペラファン5の第1翼素15aの翼角度を説明するための側面図である。図6及び図12に示すように、翼面部12cの正圧面12pから突出した第1翼素15aの頂点をA、中心軸Oから頂点Aまでの距離をr1、第1翼素15aの回転方向Rにおける前縁15a-Fにおいて中心軸Oから距離r1となる点をBとしたときに、頂点Aと点Bとを結ぶ方向に沿う第1翼素15aの全長を、第1翼素15aの翼弦長W1とする。このとき、図12に示すように、第1翼素15aの翼弦に沿う方向と、中心軸Oに直交する平面M(いわゆる回転面)とがなす、第1翼素15aの翼角度θが、所定の第1角度以上、第1角度よりも大きい第2角度以下の範囲になるように形成されている。なお、頂点Aは、第1翼素15aにおいて最も正圧側Pに位置する点であり、正圧面12pからの突出量が最大となる点である。
【0034】
図13は、実施例1のプロペラファン5の第1翼素15aの翼角度θと、プロペラファン5の風量及び効率との関係を説明するためのグラフである。図13において、横軸が第1翼素15aの翼角度θであり、縦軸がプロペラファン5の風量[m/h]及び効率η[m/h/W]である。また、風量Q11と効率η11がプロペラファン5を空気調和機の定格負荷で回転させているときの風量と効率のそれぞれを示し、風量Q12と効率η12がプロペラファン5を空気調和機の定格負荷よりも高負荷で回転させているときの風量と効率のそれぞれを示す。
【0035】
図13に示すように、第1翼素15aの翼角度θが87度のときに、定格負荷時の効率η11及び高負荷時の効率η12がそれぞれピーク値となる。また、定格負荷時においては、第1翼素15aの翼角度θが87度のときに、プロペラファン5の風量11がピーク値となる。また、定格負荷時において、翼角度θを、第1角度としての40度以上、第2角度としての90度以下の範囲としたとき、プロペラファン5の効率η11は、そのピーク値から10%程度の減少に抑えられる。また、高負荷時においては、第1翼素の翼角度が20度の場合であっても、プロペラファン5の効率η12は、そのピーク値から10%よりも少ない減少に抑えられる。
【0036】
したがって、実施例1のプロペラファン5の翼12は、第1翼素15aを有していない構造に比べて、翼12の内周部13aの風量を増やすことができるが、第1翼素15aの翼角度θを87度にすることにより、定格負荷時の風量Q11、効率η11及び高負荷時の効率η12をピーク値とすることができる。なお、本実施例1のプロペラファン5では、第1翼素15aの翼角度θが87度のときに風量Q11、効率η11及び効率η12がピーク値となるが、プロペラファンの寸法、形状等に応じて変化する固有の値である。
【0037】
第1翼素15aの翼角度θの範囲としては、第1角度としての20度以上、第2角度としての90度以下であれば、プロペラファン5の定格負荷時の風量Q11及び効率η11と、高負荷時の風量Q12及び効率η12をそれぞれ高める効果が得られる。プロペラファン5の定格負荷時及び高負荷時の両方において、効率η11、η12がそのピーク値から10%程度の減少に抑えることを考慮すると、第1翼素15aの翼角度θの範囲は、第1角度としての40度以上、第2角度としての90度以下が好ましい。なお、第2翼素15bの翼角度についても、第1翼素15aの翼角度θと同程度の範囲に形成すればよい。
【0038】
(第1翼素及び第2翼素の翼弦長)
第1翼素15aの翼弦長W1は、上述したように頂点Aと点Bとを結ぶ方向に沿う第1翼素15aの全長である。図6に示すように、第2翼素15bにおいても、第1翼素15aの翼弦長W1と同様に、翼面部12cの正圧面12pから突出した第2翼素15bの頂点をC、中心軸Oから頂点Cまでの距離をr2、第2翼素15bの回転方向Rにおける前縁15b-Fにおいて中心軸Oから距離r2となる点をDとしたときに、頂点Cと点Dとを結ぶ方向に沿う第2翼素15bの全長を、第2翼素15bの翼弦長W2とする。頂点Cは、第2翼素15bにおいて最も正圧側Pに位置する点であり、正圧面12pからの突出量が最大となる点である。そして、第1翼素15aの翼弦長W1は、第2翼素15bの翼弦長W2よりも長い寸法とされている。
【0039】
なお、上述したように第2翼素15bの前縁15b-Fが、負圧面12nから負圧側Nに突出しているので、第2翼素15bの翼弦長W2は、翼面部12cの負圧面12nから負圧側Nに延びる部分と、正圧面12pから正圧側Pへ延びる部分とを含む全長である。
【0040】
(第1翼素及び第2翼素の大きさ)
図14は、実施例1のプロペラファン5の第1翼素15a及び第2翼素15bの大きさを説明するための模式図である。図14に示すように、第1翼素15a及び第2翼素15bをハブ11の中心軸Oに沿う平面(図14の紙面)上、つまり、プロペラファン5の子午断面(プロペラファン5を中心軸Oに沿って切断した断面)上に投影したとき、子午断面上で第1翼素15aと第2翼素15bとが重なる部分の面積は、子午断面上における第1翼素15aの面積の75%以下である。
【0041】
また、ハブ11の中心軸Oに沿う方向において、第2翼素15bの頂点Cの位置は、第1翼素15aの頂点Aの位置よりも、正圧側Pに位置する。言い換えると、第2翼素15bの頂点Cの位置は、第1翼素15aの頂点Aの位置よりも、正圧側Pのハブ11の端面11bに近い。
【0042】
また、第1翼素15aは、図5図14に示すように、ハブ11の側面11aから徐々に正圧側Pへ向かいながら頂点Aまで延びる上縁15a-Uと、頂点Aから正圧面15p上における第1翼素15aの外縁E1まで延びる側縁15a-Sと、を有する。第2翼素15bも、第1翼素15aと同様に、ハブ11の側面11aから徐々に正圧側Pへ向かいながら頂点Cまで延びる上縁15b-Uと、頂点Cから正圧面15p上における第2翼素15bの外縁E2まで延びる側縁15b-Sと、を有する。
【0043】
(実施例1と比較例のプロペラファンの静圧の比較)
図15図17を参照して、実施例1と比較例のプロペラファンの静圧の変化を説明する。比較例のプロペラファンは、内周翼15を有していない点が、実施例1のプロペラファン5と異なる。図15は、実施例1のプロペラファン5における風量と入力との関係を示すグラフである。図16は、実施例1のプロペラファン5における風量と回転数との関係を示すグラフである。図17は、実施例1のプロペラファン5における風量と静圧との関係を示すグラフである。図15図17において、実施例1を実線で示し、比較例を点線で示す。図15及び図16は、実施例1と比較例とで、入力に対する風量や回転数に対する風量を比較する際に、静圧が同じ(一定)であることを前提としている。
【0044】
図15は、プロペラファンの風量がQ21[m/h]のとき入力(投入電力)がW1[W]であり、プロペラファンの風量がQ22[m/h]のとき入力(投入電力)がW2[W]であることを示す。ここで、風量Q22は、風量Q21よりも大きい。図16は、プロペラファンの風量がQ21[m/h]のとき回転数がRF1[min-1]であり、プロペラファンの風量がQ22[m/h]のとき回転数がRF2[min-1]であることを示す。ここで、回転数RF2は、回転数RF1よりも高い。すなわち、実施例1及び比較例では、風量が同一であれば、入力(投入電力)と回転数が同一であることを示す。なお、図15及び図16では、同一である実施例1の実線と比較例の点線とをずらして示すことで、各入力-風量特性や各回転数-風量特性を見やすくしている。
【0045】
一方、図17に示すように、プロペラファンの風量は、静圧がPa1[Pa]の場合、比較例がQ21[m/h]、実施例1がQ31[m/h]となり、実施例1の風量Q31が比較例の風量Q21よりも高い値になる。また、プロペラファンの風量は、静圧がPa2[Pa]の場合、比較例がQ22[m/h]、実施例1がQ32[m/h]となり、実施例1の風量Q32が比較例の風量Q22よりも高い値になる。
【0046】
すなわち、静圧がPa1[Pa]で同一であれば、比較例に比べて実施例1では、風量がQ21[m/h]からQ31[m/h]へ増大する。また、静圧がPa2[Pa]で同一であれば、比較例に比べて実施例1では、風量がQ22[m/h]からQ32[m/h]へ増大する。言い換えると、実施例1では、比較例よりも静圧が高い場合であっても、比較例と同じ風量を確保することができる。すなわち、図17に示すように、実施例1によれば、プロペラファン5の風量の増大を図ることができる。図17においても、実施例1と比較例とで、入力に対する風量や回転数に対する風量を比較する際に、静圧が同じ(一定)であることを前提としている。
【0047】
したがって、実施例1のプロペラファン5が備える内周翼15は、上述のような、内周翼15の形状や、翼角度θを有する形状とし、また複数の内周翼15を有する場合には内周翼15同士の間に第1開口16を設けると共に、各内周翼15の形状の相対関係が所定の関係を満たすことにより、プロペラファン5の内周部13aにおける風量の増大が図られている。つまり、上述の各特徴のそれぞれが、プロペラファン5の内周部13aにおける風速を高めて、内周部13aの風量の増大に寄与している。
【0048】
図18は、実施例1のプロペラファン5の翼12のリブを説明するための要部拡大側面図である。図18に示すように、ハブ11の側面11aには、翼12の後縁12-Rと、この後縁12-Rに隣り合う次の翼12の前縁12-Fとを連結する補強部材としてのリブ18が形成されている。リブ18は、複数の翼12の各々の後縁12-Rと前縁12-Fとの間にそれぞれ形成されており、後縁12-Rと前縁12-Fとを連結する板状に形成されている。第2翼素15bに対向するリブ18の前面は、第2開口17に連続して形成されている。
【0049】
例えば、翼12の数が増えることに伴って翼12全体の大きさが小さくなり、かつ、翼面部12cに第2開口17が形成されることにより、翼12における、第2開口17と翼12の後縁12-Rとの間の部分の機械的強度が低下するおそれがある。このような場合であっても、隣り合う翼12同士の間にリブ18が形成されることで、リブ18によって翼12の後縁12-Rを適正に補強することができる。言い換えると、リブ18が設けられることで、翼面部12cに第2開口17を大きく確保することが可能になる。
【0050】
(実施例1の効果)
上述したように実施例1のプロペラファンの翼面部12cにおける、第1翼素15aと第2翼素15bとの間には、図7を用いて説明したように、翼面部12cを負圧側Nから正圧側Pに貫通する第1開口16が形成され、翼面部12cの正圧面12p側で、側面11aから翼12の外縁12b側に向かって延ばされた第1翼素15aの外縁P1と、側面11aから翼12の外縁12b側に向かって延ばされた第2翼素15bの外縁P2との間が、翼12の負圧側Nから第1開口16を通って正圧側Pへ向かう気流が、第1開口16から翼面部12cの正圧面12pに沿って、翼12の外縁12b側へ流れるように、側面11aから翼面部12cの径方向に対して開放されている。これにより、翼12の内周部13aにおける風速を高めることが可能になり、翼12の内周部13aでの風量を増大させることができるので、プロペラファン5全体での風量を増やすことができる。プロペラファン5は、内周翼15を有していないプロペラファンと比べて、同じ回転数における風量が増えるので、内周翼15を有していないプロペラファンと同じ風量を得るための回転数を下げることができる。したがって、プロペラファン5の効率が高められ、空気調和機の省エネルギー性能を向上することができる。
【0051】
また、実施例1のプロペラファン5における第2翼素15bは、図7及び図9を用いて説明したように、第1開口16を介して翼面部12cの正圧面12pと負圧面12nとに跨って形成されている。翼12に第2翼素15bを設ける場合、第1開口16と第2翼素15bとが構造の一部を共有することになる。しかし、単に第2翼素15bを翼12に配置した場合、第2翼素15bの一部が第1開口16を塞ぐような形状になるおそれがある。このため、第2翼素15bは、第1開口16を介して翼面部12cの正圧面12pと負圧面12nとに跨って形成されることで、空気が負圧側Nから正圧側Pへ滑らかに流すことが可能になる。これにより、負圧側Nから第2翼素15bによって空気が第1開口16を通って正圧側Pへ流れ易くなるので、翼12の内周部13aにおける風速を更に高めることができる。
【0052】
また、実施例1のプロペラファン5の翼12の翼面部12cにおいて、翼12の回転方向Rにおける後縁12-Rと、第2翼素15bとの間には、図6を用いて説明したように、翼面部12cを負圧側Nから正圧側Pに貫通する第2開口17が形成されている。これにより、翼12の内周部13aにおいて負圧側Nから正圧側Pへ空気が流れ易くなるので、内周部13aにおける風速を高めることができる。
【0053】
また、実施例1のプロペラファン5のハブ11の側面11aには、図18を用いて説明したように、翼12の回転方向Rにおける後縁12-Rと、この後縁12-Rに隣り合う次の翼12の前縁12-Fとを連結するリブ18が形成されている。これにより、翼面部12cに第2開口17が形成されることに伴う、翼12の後縁12-Rの機械的強度の低下を抑えることができる。
【0054】
以下、他の実施例について図面を参照して説明する。実施例2において、上述の実施例1と同様の構成部材には、実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0055】
実施例2のプロペラファン25の翼12は、後述する内周翼35の第1翼素35a及び第2翼素35bが、負圧面12nから負圧側Nに突出する点を特徴に含む。なお、実施例1のプロペラファン5においても、第1翼素15aの前縁15a-F及び第2翼素15bの前縁15b-Fは、負圧面12nから負圧側Nに僅かに突出している(図12)。しかし、実施例2における第1翼素35a及び第2翼素35bは、負圧面12nから負圧側Nに突出する突出量が、実施例1と比べて大きく確保されている点で実施例1と異なる。
【0056】
(内周翼の形状)
図19は、実施例2のプロペラファン25を正圧側Pから見た平面図である。図20は、実施例2のプロペラファン25の第1翼素35a及び第2翼素35bを正圧側Pから見た斜視図である。図21は、実施例2のプロペラファン25の第1翼素35a及び第2翼素35bを負圧側Nから見た斜視図である。
【0057】
図19図20及び図21に示すように、実施例2のプロペラファン25における内周翼35は、翼面部12cの正圧面12pから正圧側Pに向かって突出すると共に、翼12の回転方向Rに沿って並んで配置された第1翼素35a及び第2翼素35bを含む。
【0058】
図19及び図20に示すように、翼面部12cにおける第1翼素35aと第2翼素35bとの間には、翼面部12cを負圧側Nから正圧側Pに貫通する第1開口36が形成されている。また、翼面部12cにおける、翼12の後縁12-Rと、第2翼素35bとの間には、翼面部12cを負圧側Nから正圧側Pに向けて貫通する第2開口37が形成されている。
【0059】
第1翼素35aは、翼面部12cの負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出すると共に、翼面部12cの正圧面12pから正圧側Pへ向かって突出している(図23参照)。第1翼素35aは、図19に示すように、第1翼素35aの回転方向Rにおける前縁35a-Fが、翼12の前縁12-F側へ向かって凸となるように湾曲して形成されている。また、図19及び図20に示すように、第1翼素35aの前縁における外周部13b側と、翼面部12cの前縁12-Fの内周部13a側は、連続して形成されており、第1翼素35aと前縁35a-Fと翼面部12cの前縁12-Fとの境界部分に、翼12の後縁12-R側へ向かって窪んだ凹部39が形成されている。
【0060】
第2翼素35bも、第1翼素35aと同様に、翼面部12cの負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出すると共に、翼面部12cの正圧面12pから正圧側Pへ向かって突出している(図23参照)。第2翼素35bは、図19に示すように、第2翼素35bの回転方向Rにおける前縁35b-Fが、翼12の前縁12-F側(第1翼素35a側)へ向かって凸となるように湾曲して形成されている。また、実施例2の第1翼素35a及び第2翼素35bの他の形状は、上述した実施例1の第1翼素15a及び第2翼素15bの各形状と同様に形成されている。
【0061】
(実施例2の要部)
図22は、実施例2のプロペラファン25の第1翼素35a及び第2翼素35bが負圧面12nから負圧側Nに突出する形状を説明するための斜視図である。図23は、実施例2のプロペラファン25の第1翼素35a及び第2翼素35bが負圧面12nから負圧側Nに突出する形状を説明するための要部断面図である。
【0062】
図22及び図23に示すように、第1翼素35a及び第2翼素35bは、翼面部12cの負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出している。言い換えると、第1翼素35aの前縁35a-F及び第2翼素35bの前縁35b-Fは、負圧側Nに位置するように形成されている。
【0063】
なお、実施例2では、第1翼素35a及び第2翼素35bの両方が、翼面部12cの負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出するが、例えば、第2翼素35bのみであってもよく、内周翼35の全ての翼素が、翼面部12cの負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出する構造に限定するものではない。
【0064】
ここで、図23に示す翼面部12cの断面の定義について、図19を参照して説明する。図19に示すように、ハブ11の径方向における第1開口36の外縁E5を通り、ハブ11の周方向に沿う円Jを基準として、円Jと外縁E5で接する接線Kに沿って翼12を切断する断面が、図23に示す断面である。
【0065】
(第1翼素及び第2翼素の作用)
図24は、実施例2のプロペラファン25の第1翼素35a及び第2翼素35bによる空気の流れを説明するための側面図である。実施例2では、図24に示すように、負圧側Nから正圧側Pへ向かって流れる空気の流れT1、T2が生じるが、空気の流れT2が、実施例1と異なる。実施例1では、第1開口16を通る空気が、第1翼素15a及び第2翼素15bの各正圧面に沿って流れる。これに対して、実施例2では、負圧面12nから負圧側Nに突出する第1翼素35a及び第2翼素35bの突出量が適正に確保されることにより、空気の流れT2のように、負圧面12n上に沿って流れる空気を第1開口36に導き易くなる。実施例2では、負圧面12n上に沿って第1開口36に導かれた空気を、第2翼素35bの正圧面12pで受けるので、第2翼素35bに沿って負圧側Nから正圧側Pに引き込まれる風量が増える。したがって、翼12の内周部13aにおける風速が高められる。
【0066】
実施例2における第1翼素35a及び第2翼素35bは、翼面部12cの正圧面12pから正圧側Pに突出し、かつ、負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出するが、特に、負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出する形状が、プロペラファン5の風量の増大に支配的に作用する。加えて、第1翼素35a及び第2翼素35bにおいて、正圧面12pから正圧側Pに突出する形状は、第1翼素35a及び第2翼素35bの各翼弦長を長くして適正に確保することにより、翼12の内周部13aの風速を高め、内周部13aの風量を増やすように作用する。
【0067】
このため、プロペラファン25において第1翼素35a及び第2翼素35bの各翼弦長が一定の条件では、翼面部12cに対して第1翼素35a及び第2翼素35bを、負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出する突出量がより大きくなるように、負圧側Nに寄せて配置することで、翼12の内周部13aにおける風量を更に増やして風速を更に高めることが可能になる。加えて、第1翼素35a及び第2翼素35bが、翼面部12cの負圧側Nに寄せて配置されることにより、ファンモータの回転軸の周囲の空きスペースを有効利用することができる。このため、ファンモータとプロペラファン25が室外機1の内部に占める空間を減らすことができるので、室外機1をコンパクトに構成し、室外機1の小型化を図ることが可能になる。
【0068】
(実施例2と実施例1との比較)
図25及び図26を参照して、実施例2のプロペラファン25と実施例1のプロペラファン5とを比較する。実施例1のプロペラファン5は、第1翼素15a及び第2翼素15bが負圧面12nから負圧側Nに突出する突出量が、実施例2のプロペラファン25と比べて小さい点で、実施例2と異なる。図25は、実施例2のプロペラファン25における風量と入力との関係を、実施例1と比較して示すグラフである。図26は、実施例2のプロペラファン25における風量と回転数との関係を、実施例1と比較して示すグラフである。図25及び図26において、実施例2を実線で示し、実施例1を点線で示す。図25及び図26は、実施例2と実施例1とで、入力に対する風量や回転数に対する風量を比較する際に、静圧が同じ(一定)であることを前提としている。
【0069】
図25に示すように、ファンモータの入力[W]が同一値の場合、実施例2のプロペラファン25は、実施例1のプロペラファン5よりも、風量[m/h]が大きくなる。また、図26に示すように、ファンモータの回転数[min-1]が同一値の場合、実施例2のプロペラファン25は、実施例1のプロペラファン5よりも、風量[m/h]が大きくなる。したがって、図25及び図26によれば、実施例2のように第1翼素35a及び第2翼素35bが負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出する突出量を適正に確保することにより、翼12の内周部13aにおける風速が高められることが明らかである。
【0070】
(実施例2の効果)
実施例2のプロペラファン25の内周翼35は、翼面部12cの負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出すると共に、翼12の回転方向Rに並んで配置された複数の翼素を含む。複数の翼素は、翼12の前縁12-F側に配置された第1翼素35aと、翼12の後縁12-R側において第1翼素35aに隣り合って配置された第2翼素35bと、を有しており、翼面部12cにおける、第1翼素35aと、第2翼素35bとの間に、翼面部12cを負圧側Nから正圧側Pに貫通する第1開口36が形成されている。これにより、翼12の内周部13aにおける風速を高めることが可能になり、翼12の内周部13aでの風量を向上することができるので、プロペラファン5全体での風量を増やすことができる。したがって、プロペラファン5の効率が高められ、空気調和機の省エネルギー性能を向上することができる。
【0071】
また、プロペラファン25において、翼面部12cに対して第1翼素35a及び第2翼素35bを、負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出する突出量がより大きくなるように、負圧側Nに寄せて配置することで、翼12の内周部13aにおける風量を更に増やして風速を更に高めることが可能になる。加えて、第1翼素35a及び第2翼素35bが、翼面部12cの負圧側Nに寄せて配置されることにより、ファンモータの回転軸の周囲の空きスペースを有効利用することができる。このため、ファンモータとプロペラファン25が室外機1の内部に占める空間を減らすことができるので、室外機をコンパクトに構成し、室外機1の小型化を図ることが可能になる。
【0072】
更に、実施例2における第1翼素35a及び第2翼素35bは、実施例1における第1翼素15a及び第2翼素15bと同様に、正圧面12pから正圧側Pへ向かって突出する。これにより、第1翼素35a及び第2翼素35bの各翼弦長が長くなり、各翼弦長が適正に確保されることで、第1翼素35a及び第2翼素35bに沿って流れる空気の風速を高め、翼12の内周部13aにおける風量を増やすことが可能になる。しかし、第1翼素35a及び第2翼素35bは、正圧面12pから正圧側Pへ向かって突出する形状よりも、翼面部12cの負圧面12nから負圧側Nへ向かって突出する形状が重要であり、負圧側Nへ突出する突出量を適正に確保することが風量の増大に寄与する。
【符号の説明】
【0073】
5、25 プロペラファン
11 ハブ
11a 側面
12 翼
12-F 前縁
12-R 後縁
12a 基端
12b 外縁
12c 翼面部
12p 正圧面
12n 負圧面
13a 内周部
13b 外周部
15、35 内周翼
15a、35a 第1翼素
15a-F、35a-F 前縁
15b,35b 第2翼素
15b-F、35b-F 前縁
16、36 第1開口
17、37 第2開口
18 リブ(補強部材)
O 中心軸
R 回転方向
N 負圧側
P 正圧側
θ 翼角度
A、C 頂点
E1、E2、E2’ 外縁
E3、E4 下端
r1、r2 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26