IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-伝送線路 図1
  • 特許-伝送線路 図2
  • 特許-伝送線路 図3
  • 特許-伝送線路 図4
  • 特許-伝送線路 図5
  • 特許-伝送線路 図6
  • 特許-伝送線路 図7
  • 特許-伝送線路 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】伝送線路
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/08 20060101AFI20220614BHJP
   H01P 3/04 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H01P3/08 200
H01P3/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020559077
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046140
(87)【国際公開番号】W WO2020116237
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2018228633
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 智浩
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0174361(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/00- 3/20
H05K 1/02
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有し、所定方向に延びる形状の基体と、
前記基体の内部にそれぞれ形成された高周波信号伝送ライン、差動信号伝送ライン、および、電源ラインと、を備え、
前記電源ラインと前記高周波信号伝送ラインが並走し、前記電源ラインと前記高周波信号伝送ラインが最も近接する部分で、前記電源ラインと前記高周波信号伝送ラインとの間に、前記差動信号伝送ラインが配置されている、
伝送線路。
【請求項2】
前記電源ライン、前記差動信号伝送ライン、および、前記高周波信号伝送ラインは、前記基体の幅方向に並んで配置されている、
請求項1に記載の伝送線路。
【請求項3】
前記電源ライン、前記差動信号伝送ライン、および、前記高周波信号伝送ラインは、前記基体の厚み方向に並んで配置されている、
請求項1に記載の伝送線路。
【請求項4】
前記電源ラインと前記差動信号伝送ラインとの間、および、前記差動信号伝送ラインと前記高周波信号伝送ラインとの間の少なくとも一方に配置されたグランド導体を、備える、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の伝送線路。
【請求項5】
前記差動信号伝送ラインは、データ伝送ラインと制御信号伝送ラインとを備え、
前記データ伝送ラインは、前記制御信号伝送ラインよりも前記高周波信号伝送ライン側に配置されている、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の伝送線路。
【請求項6】
前記基体は、前記延びる方向の途中に湾曲部を有する、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の伝送線路。
【請求項7】
前記基体は、
前記高周波信号伝送ラインが形成される第1部分と、
前記電源ラインが形成される第2部分と、
前記差動信号伝送ラインが形成される第3部分と、を備え、
前記第1部分、前記第2部分、および、前記第3部分は、それぞれに異なる材料からなる、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の伝送線路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号伝送ライン、および、電源ラインを有する伝送線路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高周波信号伝送ライン、差動信号ライン、および、電源ラインが、1つの基体に内蔵された樹脂多層フレキケーブルが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の樹脂多層フレキケーブルは、絶縁性の基体を備える。基体は、幅方向において第1領域と第2領域とを有する。第1領域には、高周波信号伝送ラインおよび差動信号ラインが形成されている。第2領域には、電源ラインが形成されている。高周波信号伝送ラインと差動信号ラインとは、基体の厚み方向に並べて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/163436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、電源ラインと高周波信号伝送ラインとが隣接している。このため、電源ラインに流れるノイズが、高周波信号伝送ラインに伝搬され易い。
【0006】
これにより、ノイズが高周波信号に重畳してしまうという不具合が発生しやすくなってしまう。
【0007】
したがって、本発明の目的は、電源ラインのノイズが高周波信号伝送ラインに伝搬されることを抑制する伝送線路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の伝送線路は、絶縁性を有し、所定方向に延びる形状の基体と、この基体の内部にそれぞれ形成された高周波信号伝送ライン、差動信号伝送ライン、および、電源ラインを備える。差動信号伝送ラインは、電源ラインと高周波信号伝送ラインとの間に配置されている。
【0009】
この構成では、電源ラインと高周波信号伝送ラインとは、離間する。これにより、電源ラインのノイズは、高周波信号伝送ラインに伝搬し難い。また、電源ラインと高周波信号伝送ラインの間に、差動信号伝送ラインが存在することで、ノイズは高周波信号伝送ラインにさらに伝搬し難い。この際、差動信号伝送ラインは、高周波信号伝送ラインと比較してノイズの耐性が高い。したがって、差動信号伝送ラインは、ノイズの影響を受け難く、差動信号の伝送への影響は小さい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、電源ラインのノイズが高周波信号伝送ラインに伝搬されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100の構成を示す断面図である。
図2図2は本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100の一部を示す斜視図である。
図3図3(A)は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100が用いられる電子機器900の構成を平面図であり、図3(B)は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100が用いられる電子機器900の構成例を示す側面断面図である。
図4図4は本発明の第1の実施形態に係る伝送線路が用いられる電子機器900の回路構成例を示すブロック図である。
図5図5は本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100の製造方法を説明するための分解断面図である。
図6図6は本発明の第2の実施形態に係る伝送線路100Aの構成を示す断面図である。
図7図7は本発明の第3の実施形態に係る伝送線路100Bの構成を示す断面図である。
図8図8は本発明の第4の実施形態に係る伝送線路100Cの構成を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る伝送線路について、図を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100の構成を示す断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100の一部を示す斜視図である。図3(A)は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100が用いられる電子機器900の構成を平面図である。図3(B)は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100が用いられる電子機器900の構成例を示す側面断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路100が用いられる電子機器900の回路構成例を示すブロック図である。なお、各図において、構成を分かり易くするため、厚みは誇張して図示している。
【0013】
図1図2に示すように、伝送線路100は、基体101、高周波信号伝送ライン10、電源ライン20、および、差動信号伝送ライン30を備える。
【0014】
基体101は、所定方向(図のx方向)に延びる平板である。基体101における厚み方向(図のz方向)の一方端の面は、第1主面102であり、他方端の面は、第2主面103である。基体101における幅方向(図のy方向)に直交する一方端の面は、側面104であり、他方端の面は、側面105である。なお、基体101は、直線状に限らず、平面視において屈曲する部分や湾曲する部分を備えていてもよい。
【0015】
基体101は、絶縁性の樹脂からなり、第1主面102および第2主面103に直交する方向に湾曲、屈曲が可能な材料からなる。基体101は、例えば、液晶ポリマ等を主材料としてなる。
【0016】
高周波信号伝送ライン10は、基体101における側面104側の部分に形成されている。高周波信号伝送ライン10は、信号導体11、グランド導体12、および、グランド導体13を備える。信号導体11、グランド導体12、および、グランド導体13は、基体101の延びる方向に沿って延びる形状である。
【0017】
信号導体11は、基体101の厚み方向における略中央の位置に形成されている。グランド導体12は、基体101の第1主面102に形成されており、グランド導体13は、基体101の第2主面103に形成されている。信号導体11は、グランド導体12およびグランド導体13に対向している。信号導体11の幅は、グランド導体12の幅およびグランド導体13の幅よりも小さい。
【0018】
この構成によって、高周波信号伝送ライン10は、ストリップラインを形成し、基体101の延びる方向に沿って高周波信号を伝送する。
【0019】
電源ライン20は、基体101における側面105側の部分に形成されている。電源ライン20は、主導体21、グランド導体22、および、グランド導体23を備える。主導体21、グランド導体22、および、グランド導体23は、基体101の延びる方向に沿って延びる形状である。
【0020】
主導体21は、基体101の厚み方向における略中央の位置に形成されている。グランド導体22は、基体101の第1主面102に形成されており、グランド導体23は、基体101の第2主面103に形成されている。主導体21は、グランド導体22およびグランド導体23に対向している。主導体21の幅は、グランド導体22の幅およびグランド導体23の幅よりも小さい。ただし、主導体21の幅は、大きい方が好ましく、グランド導体22およびグランド導体23の幅に近い方が好ましい。
【0021】
この構成によって、電源ライン20は、基体101の延びる方向に沿って、直流の電力信号を伝送する。
【0022】
差動信号伝送ライン30は、基体101の幅方向において、略中央部分に形成されている。言い換えれば、差動信号伝送ライン30は、高周波信号伝送ライン10と電源ライン20との間に形成されている。
【0023】
差動信号伝送ライン30は、第1信号導体31、第2信号導体32、グランド導体33、および、グランド導体34を備える。第1信号導体31、第2信号導体32、グランド導体33、および、グランド導体34は、基体101の延びる方向に沿って延びる形状である。
【0024】
第1信号導体31は、基体101の厚み方向における中央よりも第1主面102側の位置に形成されている。第2信号導体32は、基体101の厚み方向における中央よりも第2主面103側の位置に形成されている。すなわち、第1信号導体31と第2信号導体32とは、基体101の厚み方向に所定間隔を空けて、基体101の延びる方向に沿って並走している。
【0025】
グランド導体33は、基体101の第1主面102に形成されており、グランド導体34は、基体101の第2主面103に形成されている。第1信号導体31は、グランド導体33に対向しており、第2信号導体32は、グランド導体34に対向している。第1信号導体31の幅と第2信号導体32の幅とは、同じであり、第1信号導体31の幅と第2信号導体32の幅とは、グランド導体33の幅およびグランド導体34の幅よりも小さい。
【0026】
この構成によって、差動信号伝送ライン30は、第1信号導体31と第2信号導体32とを差動線路として、基体101の延びる方向に沿って差動信号を伝送する。
【0027】
このような構成において、上述のように、伝送線路100では、高周波信号伝送ライン10と電源ライン20との間に、差動信号伝送ライン30が配置されている。
【0028】
これにより、高周波信号伝送ライン10と電源ライン20との距離は、差動信号伝送ライン30の分だけ離間する。したがって、電源ライン20の電力信号に重畳するスイッチングノイズ等のノイズは、高周波信号伝送ライン10に伝搬され難い。
【0029】
なお、第1主面102における、グランド導体12、グランド導体22、グランド導体33は、y軸方向に沿って所定の間隔を空けて形成されている。同様に、第2主面103における、グランド導体13、グランド導体23、グランド導体34は、y軸方向に沿って所定の間隔を空けて形成されている。このことによって、それぞれのグランド導体を介した結合を抑制することができる。
【0030】
さらに、高周波信号伝送ライン10と電源ライン20との間に差動信号伝送ライン30を構成する第1信号導体31および第2信号導体32が存在する。これにより、電源ライン20のノイズは、差動信号伝送ライン30で相殺され、高周波信号伝送ライン10にさらに伝搬され難い。
【0031】
この際、上述のように、第1信号導体31および第2信号導体32によって差動線路が構成されている。したがって、差動信号伝送ライン30の電源ライン20からのノイズに対する耐性は高い。すなわち、電源ライン20からのノイズが伝搬しても、差動信号伝送ライン30には、差動信号の伝送に対する悪影響は小さい。
【0032】
このような構成によって、伝送線路100は、高周波信号、差動信号、および、電力信号の伝送経路を、1つの基体101に備えても、相互の干渉による不具合は、抑制され、それぞれの信号に対する伝送特性の実施的な低下は抑制できる。
【0033】
また、この構成によって、高周波信号、差動信号、および、電力信号の伝送する伝送線路100を薄型に形成できる。
【0034】
図3(A)、図3(B)に示すように、電子機器900は、伝送線路100、筐体901、回路基板902、回路基板903、および、バッテリ904を備える。電子機器900としては、例えば、携帯型情報通信端末が適用できる。
【0035】
伝送線路100、回路基板902、回路基板903、および、バッテリ904は、筐体901の内部に収容されている。回路基板902と回路基板903とは、離間して配置されている。バッテリ904は、回路基板902と回路基板903との間に配置されている。
【0036】
伝送線路100は、上述の構成を有し、延びる方向の両端E100に外部接続端子(図1図2では図示を省略している。)を備える。この際、外部接続端子は、高周波信号伝送ライン10、電源ライン20、および、差動信号伝送ライン30のそれぞれに個別で備えられている。伝送線路100は、両端E100の外部接続端子を用いて、図3に示すように回路基板902と回路基板903を接続する。
【0037】
回路基板902には、例えば、図4に示す、メイン制御部91、電源回路92が形成されている。回路基板903には、例えば、図4に示すRF送受波部93が形成されている。RF送受波部93は、図3に図示していないアンテナ930に接続されている。
【0038】
このような回路構成では、メイン制御部91および電源回路92と、RF送受波部93との間で、高周波信号、差動信号、および、電力信号を伝送する。このため、回路的には、図4に示すように、メイン制御部91とRF送受波部93とは、高周波信号伝送ライン10および差動信号伝送ライン30によって接続される。また、電源回路92とRF送受波部93とは、電源ライン20によって接続される。
【0039】
これを構造的に置き換えると、メイン制御部91および電源回路92を備える回路基板902と、RF送受波部93を備える回路基板903とを、高周波信号伝送ライン10、差動信号伝送ライン30、および、電源ライン20で接続すればよい。すなわち、上述のように伝送線路100によって、回路基板902と回路基板903とを接続する構成を採用すればよい。
【0040】
このように、本実施形態の伝送線路100を用いれば、高周波信号伝送ライン10、差動信号伝送ライン30、および、電源ライン20は、1つの伝送線路100によって、まとめて配線される。したがって、電子機器900の配線が容易になる。
【0041】
さらに、伝送線路100は、薄型であり、第1主面102および第2主面103に直交する方向に湾曲可能である。このため、図3に示すように、伝送線路100は、湾曲部CVを形成することができ、バッテリ904の外形に沿って配置できる。これにより、電子機器900における配線の自由度が向上する。
【0042】
なお、伝送線路100では、グランド導体12とグランド導体13とを接続していない構成を示したが、グランド導体12とグランド導体13とは、伝送線路100の厚み方向に延びるグランド導体(層間接続導体)で接続してもよい(第2実施形態の構造参照)。同様に、グランド導体22とグランド導体23とは、伝送線路100の厚み方向に延びるグランド導体(層間接続導体)で接続してもよく、グランド導体33とグランド導体34とは、伝送線路100の厚み方向に延びるグランド導体(層間接続導体)で接続してもよい。
【0043】
上述の構成の伝送線路100は、例えば、次に示す方法によって製造することができる。図5は、本発明の第1の実施形態に係る伝送線路の製造方法を説明するための分解断面図である。
【0044】
それぞれが所定の厚みからなる複数の絶縁性樹脂1011-1015を用意する。
【0045】
図5に示すように、絶縁性樹脂1011の一方主面に、グランド導体12、グランド導体22、および、グランド導体33を形成する。絶縁性樹脂1012の一方主面に、第1信号導体31を形成する。絶縁性樹脂1013の一方主面に、信号導体11、主導体21を形成する。絶縁性樹脂1014の一方主面に、第2信号導体32を形成する。絶縁性樹脂1015の他方主面に、グランド導体13、グランド導体23、および、グランド導体34を形成する。
【0046】
それぞれに導体が形成された複数の絶縁性樹脂1011-1015を積層する。この積層体を加熱プレスする。
【0047】
この方法によって、伝送線路100は、容易に形成される。
【0048】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る伝送線路100Aの構成を示す断面図である。図6に示すように、第2の実施形態に係る伝送線路100Aは、第1の実施形態に係る伝送線路100に対して、第1主面102、第2主面103のグランドを共通化した点、厚み方向に延びるグランド導体を追加する点で異なる。伝送線路100Aの他の構成は、伝送線路100と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0049】
伝送線路100Aは、グランド導体12A、グランド導体13A、層間接続導体511、層間接続導体521、層間接続導体531、層間接続導体541、補助導体512、補助導体522、補助導体532、および、補助導体542を備える。
【0050】
グランド導体12Aは、基体101の第1主面102に形成されている。グランド導体13Aは、基体101の第2主面103に形成されている。
【0051】
高周波信号伝送ライン10Aは、信号導体11、グランド導体12A、および、グランド導体13Aによって構成される。電源ライン20Aは、主導体21、グランド導体12A、および、グランド導体13Aによって構成される。差動信号伝送ライン30Aは、第1信号導体31、第2信号導体32、グランド導体12A、および、グランド導体13Aによって構成される。
【0052】
層間接続導体511は、基体101における厚み方向の途中位置の補助導体512を介して、グランド導体12Aとグランド導体13Aとに接続している。これにより、層間接続導体511および補助導体512は、厚み方向に延びるグランド導体として機能する。
【0053】
層間接続導体511および補助導体512は、基体101の幅方向における基体101の側面104と信号導体11と間に配置されている。言い換えれば、層間接続導体511および補助導体512は、高周波信号伝送ライン10Aにおける側面104側の端に配置されている。
【0054】
層間接続導体521は、基体101における厚み方向の途中位置の補助導体522を介して、グランド導体12Aとグランド導体13Aとに接続している。これにより、層間接続導体521および補助導体522は、厚み方向に延びるグランド導体として機能する。
【0055】
層間接続導体521および補助導体522は、基体101の幅方向における信号導体11と第1信号導体31および第2信号導体32と間に配置されている。言い換えれば、層間接続導体521および補助導体522は、基体101の幅方向における、高周波信号伝送ライン10Aと差動信号伝送ライン30Aとの境界に配置されている。
【0056】
層間接続導体531は、基体101における厚み方向の途中位置の補助導体532を介して、グランド導体12Aとグランド導体13Aとに接続している。これにより、層間接続導体531および補助導体532は、厚み方向に延びるグランド導体として機能する。
【0057】
層間接続導体531および補助導体532は、基体101の幅方向における第1信号導体31および第2信号導体32と主導体21との間に配置されている。言い換えれば、層間接続導体531および補助導体532は、基体101の幅方向における、差動信号伝送ライン30Aと電源ライン20Aとの境界に配置されている。
【0058】
層間接続導体541は、基体101における厚み方向の途中位置の補助導体542を介して、グランド導体12Aとグランド導体13Aとに接続している。これにより、層間接続導体541および補助導体542は、厚み方向に延びるグランド導体として機能する。
【0059】
層間接続導体541および補助導体542は、基体101の幅方向における基体101の側面105と主導体21と間に配置されている。言い換えれば、層間接続導体541および補助導体542は、電源ライン20Aにおける側面105側の端に配置されている。
【0060】
このように、伝送線路100Aでは、高周波信号伝送ライン10Aと差動信号伝送ライン30Aとの境界、および、差動信号伝送ライン30Aと電源ライン20Aとの境界に、厚み方向に延びるグランド導体が配置される。これにより、電源ライン20Aの主導体21からのノイズは、厚み方向に延びるグランド導体に遮蔽される。したがって、このノイズが高周波信号伝送ライン10Aに伝搬されることは、抑制される。
【0061】
また、第2実施形態においては、第1実施形態と異なり、第1主面102においてグランド導体12Aを共通化し、第2主面103においてグランド導体13Aを共通化している。グランド面積を大きくした面状の共通化グランド導体としたことで、伝送線路100Aにおける高周波信号伝送ライン10A、電源ライン20A、差動信号伝送ライン30Aから外部へ漏洩する不要な輻射を抑制することができる。
【0062】
なお、高周波信号伝送ライン10Aと差動信号伝送ライン30Aとの境界、および、差動信号伝送ライン30Aと電源ライン20Aとの境界の少なくともいずれか一方に、厚み方向に延びるグランド導体を配置することによって、ノイズの遮蔽効果は得られる。ただ、これらの両方に配置することによって、ノイズの遮蔽効果は向上する。
【0063】
また、厚み方向に延びるグランド導体は、高周波信号伝送ライン10Aの側面104(積層体の外壁面)、電源ライン20Aの側面105(積層体の外壁面)に配置する構成であっても良い。この構成を備えることによって、伝送線路100Aにおける高周波信号伝送ライン10A、電源ライン20A、差動信号伝送ライン30Aから発生し伝送線路100Aの側面方向から外部へ漏洩する不要な輻射は抑制される。
【0064】
なお、高周波信号伝送ライン10Aの側面104側、電源ライン20Aの側面105側に配置される厚み方向に延びるグランド導体は、省略することも可能である。このことによって、伝送線路100Aの全体的な幅を狭く、小型化することができる。
【0065】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る伝送線路100Bの構成を示す断面図である。図7に示すように、第3の実施形態に係る伝送線路100Bは、第1の実施形態に係る伝送線路100に対して、差動信号伝送ライン30Bの構造、電源ライン20Bの構造において異なる。伝送線路100Bの他の構成は、伝送線路100と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0066】
図7に示すように、伝送線路100Bは、電源ライン20B、および、差動信号伝送ライン30Bを備える。
【0067】
電源ライン20Bは、主導体21B、グランド導体22、および、グランド導体23を備える。主導体21Bは、複数の平板導体211と複数の接続導体212とを備える。複数の平板導体211は、基体101の厚み方向に沿って配列されている。複数の接続導体212は、複数の平板導体211を厚み方向に接続している。このような構成によって、電源ライン20Bでは、主導体21Bの断面積(電源電流が流れる断面積)は大きくなる。したがって、電源ライン20Bは、電力の伝送損失を小さくできる。
【0068】
差動信号伝送ライン30Bは、制御信号伝送ライン30C、および、データ伝送ライン30Dを備える。制御信号伝送ライン30Cは、第1信号導体31C、第2信号導体32C、グランド導体33C、グランド導体34Cを備える。第1信号導体31Cと第2信号導体32Cとは、基体101の厚み方向の略中央に配置され、基体101の幅方向に間隔を空けて配置されている。データ伝送ライン30Dは、第1信号導体31D、第2信号導体32D、グランド導体33D、グランド導体34Dを備える。第1信号導体31Dと第2信号導体32Dとは、基体101の厚み方向の略中央に配置され、基体101の幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0069】
データ伝送ライン30Dは、制御信号伝送ライン30Cよりも、高周波信号伝送ライン10側に配置されている。言い換えれば、制御信号伝送ライン30Cは、データ伝送ライン30Dよりも電源ライン20B側に配置されている。
【0070】
データ伝送ライン30Dには、例えば、二値化されたデータが伝送される。このデータのクロック周波数は、高周波信号伝送ライン10を伝送する高周波信号の周波数よりも低い。
【0071】
制御信号伝送ライン30Cには、例えば、RF送受波部93のスイッチ素子の制御信号等が伝送される。制御信号の周波数は、データのクロック周波数よりも低い。
【0072】
このような構成によって、伝送線路100Bでは、高周波信号伝送ライン10は、電源ライン20Bから、さらに離間して配置される。これにより、電源ライン20Bのノイズが高周波信号伝送ライン10に伝搬されることは、さらに抑制される。
【0073】
また、この構成では、相対的にノイズに強い低周波数の制御信号を伝送する制御信号伝送ライン30Cが、相対的にノイズに弱い高周波数のクロック周波数からなるデータを伝送するデータ伝送ライン30Dよりも電源ライン20B側に配置される。これにより、差動信号伝送ライン30Bのようにデータ伝送ライン30Dを備える場合に、電源ライン20Bのノイズがデータ伝送ライン30Dに伝搬されることも、抑制される。
【0074】
これにより、伝送線路100Bは、さらに多種の信号、データの伝送ラインを1つの基体101内に備えていても、それぞれの伝送特性の低下を抑制できる。また、この構成では、伝送線路100Bを容易に湾曲させて配置できる。したがって、多種の信号、データの伝送ラインを備える伝送線路100Bの配置の自由度は、向上する。
【0075】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態に係る伝送線路100Cの構成を示す断面図である。図8に示すように、第4の実施形態に係る伝送線路100Cは、第1の実施形態に係る伝送線路100に対して、高周波信号伝送ライン10、差動信号伝送ライン30、電源ライン20の配列方向において異なる。伝送線路100Cの他の構成は、伝送線路100と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0076】
伝送線路100Cでは、高周波信号伝送ライン10、差動信号伝送ライン30、および、電源ライン20は、基体101Cの厚み方向に順に並んで配置されている。より具体的には、基体101Cの第1主面102側から第2主面103に向けて、高周波信号伝送ライン10、差動信号伝送ライン30、電源ライン20の順に配置されている。
【0077】
高周波信号伝送ライン10は、信号導体11、第1主面102のグランド導体12、および、グランド導体13Cを備える。信号導体11は、グランド導体12とグランド導体13Cとの間に配置されている。
【0078】
差動信号伝送ライン30は、第1信号導体31、第2信号導体32、グランド導体13C、グランド導体14Cを備える。グランド導体13Cは、高周波信号伝送ライン10と共用である。第1信号導体31および第2信号導体32は、基体101Cの幅方向に並んでいる。第1信号導体31および第2信号導体32は、グランド導体13Cとグランド導体14Cとの間に配置されている。
【0079】
電源ライン20は、主導体21、グランド導体14C、および、第2主面103のグランド導体15Cを備える。グランド導体14Cは、差動信号伝送ライン30と共用である。主導体21は、グランド導体14Cとグランド導体15Cとの間に配置されている。
【0080】
このような構成でも、上述の各実施形態と同様に、電源ライン20のノイズが高周波信号伝送ライン10に伝搬することを抑制できる。さらに、この構成では、伝送線路100Cの幅を狭くできる。
【0081】
なお、図8では、厚みを強調して記載しているが、実際の伝送線路100Cは、厚みを幅よりも小さくできる。これにより、伝送線路100Cも、上述の各実施形態の伝送線路と同様に、湾曲させることができる。
【0082】
さらに、伝送線路100Cでは、基体101Cは、第1部分1011C、第2部分1012C、および、第3部分1013Cを有する。第1部分1011Cには、高周波信号伝送ライン10が形成されている。第2部分1012Cには、電源ライン20が形成されている。第3部分1013Cには、差動信号伝送ライン30が形成されている。
【0083】
第1部分1011Cの材料と、第2部分1012Cの材料と、第3部分1013Cの材料が異なる。ここで、材料が異なるとは、主材料が同じであり、主材料に対する他の材料の含有量が異なる場合も含む。
【0084】
例えば、第1部分1011Cの材料を絶縁性樹脂として、第3部分1013Cの材料は、当該絶縁性樹脂に磁性体をフィラーとして含ませたものとする。これにより、高周波信号伝送ライン10の伝送特性に影響を与えることなく、差動信号伝送ライン30の結合度を向上できる。
【0085】
また、第2部分1012Cの材料に、第1部分1011Cの材料に対して耐熱性や放熱性を向上させた材料を用いる。これにより、高周波信号伝送ライン10の伝送特性に影響を与えることなく、電源ライン20の耐熱性、放熱性を向上し、伝送線路100Cの信頼性は向上する。
【0086】
このように、各部分での基体101の材料を選択することによって、高周波信号伝送ライン10、差動信号伝送ライン30、電源ライン20のそれぞれの特性や信頼性を向上できる。
【0087】
また、基体101Cを複数の絶縁性樹脂による積層体で形成することによって、第1部分1011C、第2部分1012C、第3部分1013Cの積層構造を容易に実現できる。
【0088】
なお、伝送線路100Cでは、第1部分1011Cの材料と、第2部分1012Cの材料と、第3部分1013Cの材料の全てが異なる場合を示した。しかしながら、伝送線路100Cの所望とする特性等に応じて、2つの部分の材料を同じにし、他の1つの部分の材料のみを異ならせてもよい。
【0089】
また、上述の各実施形態の構成は、適宜組み合わせることができ、それぞれの組合せに応じた作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0090】
10、10A:高周波信号伝送ライン
11:信号導体
12、12A、13、13A、13C、14C、15C、22、23、33、33C、33D、34、34C、34D:グランド導体
20、20A、20B:電源ライン
21、21B:主導体
30、30A、30B:差動信号伝送ライン
30C:制御信号伝送ライン
30D:データ伝送ライン
31、31C、31D:第1信号導体
32、32C、32D:第2信号導体
91:メイン制御部
92:電源回路
93:RF送受波部
93:送受波部
100:基体
100、100A、100B、100C:伝送線路
101、101C:基体
102:第1主面
103:第2主面
104、105:側面
211:平板導体
212:接続導体
511、521、531、541:層間接続導体
512、522、532、542:補助導体
900:電子機器
901:筐体
902、903:回路基板
904:バッテリ
930:アンテナ
1011、1012、1013、1014、1015:絶縁性樹脂
1011C、1012C、1013C:第3部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8