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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20220614BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20220614BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01N30/02 Z
G01N30/74 E
G01N30/86 P
G01N30/86 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021505490
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 JP2019036792
(87)【国際公開番号】W WO2020183763
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2019045551
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米倉 拓弥
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-031177(JP,A)
【文献】特開2000-146831(JP,A)
【文献】特開平02-181649(JP,A)
【文献】特開平09-015048(JP,A)
【文献】特開2017-156093(JP,A)
【文献】特開2012-112975(JP,A)
【文献】米国特許第05638171(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラムから溶出した溶離液が流れるフローセルに光を照射して分光分析を行う分光分析部と、
前記分光分析部に設けられ、前記フローセルに取り付けられた記憶装置を読み取ることにより該フローセルの種類又は個体に固有の情報であるセル情報を取得するセル情報読取部と、
前記分光分析部に波長チェックを実行させる波長チェック制御部と、
前記波長チェックの結果が、該波長チェックの実行時に取得された前記セル情報と関連づけて記憶される波長チェック情報記憶部と、
前記波長チェック情報記憶部を参照することにより、前記波長チェックの結果と該波長チェックの実行時に取得された前記セル情報とを記載したシステムチェックレポートを作成するシステムチェックレポート作成部と、
を有する液体クロマトグラフ。
【請求項2】
移動相を送給する送液部と、
送られて来た前記移動相中に試料液を注入する試料注入部と、
前記試料液中の成分を分離するカラムを温調するカラムオーブンと、
前記送液部、前記試料注入部、前記カラムオーブン、及び前記分光分析部を統括的に制御する統括制御部と、
を更に有し、
前記送液部、前記試料注入部、前記カラムオーブン、前記分光分析部、及び前記統括制御部が、互いに独立した筐体を備えており、
前記波長チェック情報記憶部が前記分光分析部に設けられ、
前記システムチェックレポート作成部が前記統括制御部に設けられている請求項1に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項3】
前記統括制御部が、ユーザからの前記システムチェックレポートの作成指示を受け付ける指示受付部を更に有し、
前記システムチェックレポート作成部が、更に、前記指示受付部が前記システムチェックレポートの作成指示を受け付けた時点で前記セル情報読取部によって読み取られた前記セル情報を前記システムチェックレポートに記載する請求項2に記載の液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフでは、カラムから溶出した試料成分を検出するための検出器として分光光度計が広く用いられている。このような検出器は、例えば、フローセル、分光素子、及びフォトダイオードアレイ等を備えており、フローセルには、カラムからの溶離液が順次導入されると共に、光源からの光が照射される。フローセル内の溶離液と相互作用した後の光(透過光、蛍光、散乱光など)は、分光素子で波長分離された後に、フォトダイオードアレイに入射して検出され、波長毎の光量が測定される。
【0003】
ところで、液体クロマトグラフ等の分析装置では、当該分析装置による分析結果の信頼性を確保するために、その分析装置が正常に機能しているか否か、あるいは基本的性能が基準を満たしているか否か等を定期的(例えば1週間に1回等)に検査(バリデーション)してその結果を記録することが求められている(例えば特許文献1などを参照)。
【0004】
例えば、上述のような分光光度計を備えた液体クロマトグラフでは、バリデーションにおける検査項目の1つとして当該分光光度計の波長チェック(すなわち波長正確さのバリデーション)が行われる。波長チェックでは、既知の波長に輝線を有する光源(例えば重水素ランプ又はハロゲンランプ)からの光がフローセルに照射され、その際のフォトダイオードアレイにおける検出結果に基づいて、横軸に波長を縦軸に受光強度を取ったスペクトルが作成される。そして、該スペクトル上における輝線のピーク位置と該輝線の真の波長値(理論値)とを比較することによって、設定波長と真の波長の誤差が算出される。この誤差が、当該液体クロマトグラフの検出器における波長の精度となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-29282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような液体クロマトグラフの検出器で使用されるフローセルには、標準セル、ミクロセル、セミミクロセル、高耐圧セル、高速セル、及び分取セルなど、様々な種類が存在し、使用するフローセルの種類によって波長チェックの結果が変化する。
【0007】
このため、1つの液体クロマトグラフにおいて、1種類のフローセル(例えば標準セル)のみが使用される場合には問題がないが、複数種類のセルが適宜使い分けられるような場合には、上記の定期的な波長チェックにいずれのセルを用いたのか分からなくなり、当該液体クロマトグラフによる分析結果の信頼性を確保できなくなるおそれがあった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、分析結果の信頼性を十分に確保可能な液体クロマトグラフを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る液体クロマトグラフは、
カラムから溶出した溶離液が流れるフローセルに光を照射して分光分析を行う分光分析部と、
前記分光分析部に設けられ、前記フローセルに取り付けられた記憶装置を読み取ることにより該フローセルの種類又は個体に固有の情報であるセル情報を取得するセル情報読取部と、
前記分光分析部に波長チェックを実行させる波長チェック制御部と、
前記波長チェックの結果が、該波長チェックの実行時に取得された前記セル情報と関連づけて記憶される波長チェック情報記憶部と、
前記波長チェック情報記憶部を参照することにより、前記波長チェックの結果と該波長チェックの実行時に取得された前記セル情報とを含むシステムチェックレポートを作成するシステムチェックレポート作成部と、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明によれば、分析結果の信頼性を十分に確保可能な液体クロマトグラフを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る液体クロマトグラフの一実施形態を示す概略構成図。
図2】前記液体クロマトグラフにおける波長チェック実行時の動作を示すフローチャート。
図3】前記液体クロマトグラフにおけるシステムチェックレポート作成時の動作を示すフローチャート。
図4】本実施形態におけるシステムレポートの一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る液体クロマトグラフの要部構成図である。この液体クロマトグラフは、動作ユニットとして、送液ユニット10(本発明における送液部に相当)、オートサンプラ20(本発明における試料注入部に相当)、カラムオーブン30、及び検出器ユニット40(本発明における分光分析部に相当)を有するとともに、これらの動作ユニットに接続され、各動作ユニットの動作を統括制御するシステムコントローラ60と、該システムコントローラ60に接続され、検出器ユニット40で取得されたデータを処理したり、ユーザの指示を入力したりするための外部コンピュータ70とを備えている。このシステムコントローラ60と外部コンピュータ70が本発明における統括制御部に相当する。なお、送液ユニット10、オートサンプラ20、カラムオーブン30、検出器ユニット40、システムコントローラ60、及び外部コンピュータ70は、各々独立した筐体101、102、103、104、106、107を備えている。
【0013】
送液ユニット10は、移動相(溶離液)を貯留する移動相容器11を収容すると共に、該移動相容器11から移動相を吸引して一定流量で送給する送液ポンプ12を備えている。オートサンプラ20は、予めセットされた複数の液体試料から1つの液体試料を選択して送液ポンプ12から送給される移動相中に注入するものである。カラムオーブン30は、移動相に注入された試料中の成分を分離するためのカラム31を収容すると共に、該カラム31を温調するためのヒータ32を備えている。
【0014】
検出器ユニット40は、分光光度計から成るものであって、重水素ランプ41、タングステンランプ42、光源切替ミラー43、レンズ44、セル装着部45、スリット46、回折格子47、及びフォトダイオードアレイ48を備える。重水素ランプ41は主に紫外域の波長の光を生成し、タングステンランプ42は主に可視域の波長の光を生成する。光源切替ミラー43は、重水素ランプ41又はタングステンランプ42からの光(以下、単に「光源からの光」とよぶ)を反射させて択一的にレンズ44に送るためのものである。レンズ44は、光源からの光をセル装着部45に装着されたフローセル90に集光する。フローセル90には、カラム31から移動相と共に導入される試料が通過すると共に、光源からの光が透過する。このとき、フローセル90内では、光源からの光が試料に照射され、該試料の成分により定まる波長の光が吸収される。フローセル90を通過した光は、スリット46を通過した後、回折格子47により波長分散される。フォトダイオードアレイ48は、多数の検出素子が1次元アレイ状に並べられたものであり、検出素子毎に、回折格子47で波長分散された光のうち特定の波長の光を検出する。こうして、フォトダイオードアレイ48において、波長毎の検出強度が得られる。
【0015】
なお、本実施形態において用いられるフローセル90には、該フローセル90の情報(以下「セル情報」とよぶ)が記録された不揮発性メモリを含む無線タグ91(本発明における記憶装置に相当)が取り付けられており、検出器ユニット40の内部には、セル装着部45の近傍に、近距離無線通信によって無線タグ91の記録内容を読み取るためのセル情報読取部49が配設されている。前記セル情報には、フローセル90の種類(標準セル、ミクロセル、セミミクロセル、分取セル、又は高耐圧セルなどの別)を表す文字列、フローセル90の個体毎に固有の文字列(例えば、シリアル番号)、又はその両方が含まれる。なお、無線タグ91としては、いわゆるRFID(Radio Frequency IDentification)等の非接触型のICタグを用いることができる。
【0016】
更に、検出器ユニット40は、CPU、メモリ、及び外部周辺機器などと通信するための入出力回路を備えたマイクロコントローラ(マイコン50d)を備えている。このマイコン50dは、機能ブロックとして、各部の動作を制御する制御部51(本発明における波長チェック制御部に相当)と、フォトダイオードアレイ48又はセル情報読取部49で取得されたデータを処理するデータ処理部52と、データ処理部52で処理されたデータが記憶される記憶部53(本発明における波長チェック情報記憶部に相当)と、システムコントローラ60との通信を行う通信部54とを備えている。これらの機能ブロックは、前記マイコン50dに搭載されたプログラムをマイコン50dのプロセッサが実行することによって実現されるものである。
【0017】
なお、検出器ユニット40以外の動作ユニットも、それぞれマイコン50a、50b、50cを備えており、これらのマイコン50a、50b、50cによって各動作ユニットの動作制御、各動作ユニットで取得されたデータの処理及び記憶、並びに各動作ユニットとシステムコントローラ60との通信等の機能が実現される。
【0018】
外部コンピュータ70の実体は、パーソナルコンピュータなどの汎用のコンピュータである。外部コンピュータ70は、ハードディスクドライブ又はフラッシュメモリ等から成る大容量記憶装置を備えており、該大容量記憶装置には液体クロマトグラフによる分析を各動作ユニットに実行させるための専用のプログラム(以下「LC制御プログラム71」とよぶ)がインストールされている。図1においてはLC制御プログラム71に係るように、LC制御部72、LC構成取得部73、バリデーション結果取得部74、レポート作成部75(本発明におけるシステムチェックレポート作成部に相当)、表示制御部76、印刷制御部77、及び指示受付部78が示されている。これらはいずれも外部コンピュータ70のプロセッサがLC制御プログラム71を実行することによってソフトウェア的に実現される機能ブロックである(各機能ブロックの詳細は後述する)。なお、外部コンピュータ70の大容量記憶装置には、更に、レポート作成部75で作成されたシステムチェックレポートが記憶されるレポート記憶部79が設けられている(詳細は後述する)。また、外部コンピュータ70には、液晶ディスプレイ等の表示装置から成る表示部81と、プリンタから成る印刷部82と、キーボードやマウス等から成る入力部83が接続されている。
【0019】
システムコントローラ60は、外部コンピュータ70と各動作ユニットとの間に介在してコマンド又はデータの送受信を行うものであり、CPU、メモリ、及び外部周辺機器などと通信するための入出力回路を備えたマイコン(図示略)を含んでいる。該マイコンには、外部コンピュータ70からの指示に応じて各動作ユニットの動作を制御したり、各動作ユニットから情報を取得したりするためのプログラムがインストールされている。
【0020】
以下、本実施形態の液体クロマトグラフにおいて検出器ユニット40の波長チェックを行う際の動作について図2のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の工程は、検出器ユニット40のセル装着部45にフローセル90を装着し、該フローセル90に所定の液体(例えば水)を収容した状態で実行される。
【0021】
まず、ユーザが入力部83で所定の操作を行うことにより、検出器ユニット40における波長チェックの実行を指示すると、該指示が指示受付部78によって受け付けられる(ステップS11)。該指示はLC制御部72に送られ、これによりLC制御部72にて波長チェックの実行を指示するコマンドが生成されてシステムコントローラ60に送出される。前記コマンドはシステムコントローラ60を介して検出器ユニット40の通信部54に送られる。
【0022】
前記コマンドを受け取った検出器ユニット40では、まず、フローセル90に取り付けられている無線タグ91をセル情報読取部49が読み取ることによって該フローセル90のセル情報が取得され(ステップS12)、その後、制御部51の制御の下に波長チェックが実行される(ステップS13)。なお、セル情報の取得(ステップS12)と波長チェック(ステップS13)は逆の順番で行ってもよい。あるいは、波長チェックの実行中にセル情報の取得を行ってもよい。
【0023】
ステップS13の波長チェックにおいては、まず、光源切替ミラー43によって重水素ランプ41からの光をフローセル90に入射させた状態で、フローセル90を通過して回折格子47で分光された光をフォトダイオードアレイ48によって検出する。そして、このときのフォトダイオードアレイ48からの検出信号に基づいて、データ処理部52が横軸に波長を縦軸に受光強度を取ったスペクトルを作成する。
【0024】
その後、光源切替ミラー43の向きを切り替えてタングステンランプ42からの光をフローセル90に入射させ、このときのフォトダイオードアレイ48からの検出信号に基づいて前記同様のスペクトルを作成する。なお、重水素ランプ41からの光とタングステンランプ42からの光は上記とは逆の順でフローセル90に照射するようにしてもよい。
【0025】
続いて、以上で得られたスペクトルの各々における各輝線のピーク位置の波長(以下、これを「輝線波長の測定値」とよぶ)が特定され、該輝線波長の測定値と、記憶部53に予め記憶されている当該輝線の波長の理論値とが比較される。更に、前記輝線の測定値と理論値との誤差が算出され、当該誤差が各輝線について予め定められた閾値以下であるか否かが判定される。このとき、前記誤差が閾値以下であった場合には当該輝線に関する波長正確さについては合格と判定され、前記誤差が閾値以上であった場合には当該輝線に関する波長正確さについては不合格と判定される。
【0026】
以上により得られた波長チェック結果(すなわち、各輝線の測定値、各輝線の測定値と理論値との誤差、及び各輝線の合格/不合格の別)は、ステップS12で読み取られたセル情報と関連づけて検出器ユニット40の記憶部53に記憶される(ステップS14)。また、前記波長チェック結果は、システムコントローラ60を介して外部コンピュータ70に送られ、表示制御部76の制御の下に表示部81の画面上に表示される(ステップS15)。
【0027】
次に、本実施形態の液体クロマトグラフにおけるシステムチェックレポート作成時の動作について図3のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、システムチェックレポートは、定期的に(例えば1日1回)、又は非定期的に(例えば、本実施形態の液体クロマトグラフによる試料分析を行う前、又は液体クロマトグラフを構成する部品を交換した際など)、その時点における該液体クロマトグラフの状態をユーザが確認し、記録しておくために作成される。
【0028】
まず、ユーザが入力部83で所定の操作を行うことにより、システムチェックレポートの作成を指示すると、該指示が指示受付部78によって受け付けられ(ステップS21)、LC構成取得部73及びバリデーション結果取得部74に送られる。指示受付部78から前記指示を受け取ったLC構成取得部73は、システムコントローラ60を介して各動作ユニットを制御することにより、現在の液体クロマトグラフの構成に関する情報(以下、「LC構成情報」とよぶ)を取得する(ステップS22)。また、指示受付部78から前記指示を受け取ったバリデーション結果取得部74は、システムコントローラ60を介して各動作ユニットを制御することにより、各動作ユニットにおけるバリデーションに関する情報(以下、「バリデーション関連情報」とよぶ)を取得する(ステップS23)。なお、ステップS22とステップS23は逆の順番で行ってもよい。
【0029】
前記LC構成情報は、液体クロマトグラフを構成する各動作ユニットの種類又は個体を識別するための情報、及び各動作ユニットに含まれる部品の種類又は個体を識別するための情報であり、具体的には、前記各動作ユニット及び前記各部品の種類毎又は個体毎に固有の番号又は符号(例えば、製品名、型番、又は製造番号(シリアル番号)など)を含んでいる。なお、このLC構成情報には、検出器ユニット40に現在装着されているフローセル90のセル情報も含まれている。すなわち、上述のステップS22では、LC制御部72からの指示にしたがって、検出器ユニット40のセル情報読取部49によるセル情報の読み取りが行われ、該セル情報がシステムコントローラ60を介して外部コンピュータ70に送出される。
【0030】
また、前記バリデーション関連情報とは、各動作ユニットで一番最近に行われたバリデーションの日時、条件、及び結果に関する情報である。該バリデーション関連情報は、液体クロマトグラフのユニット構成が変化する(すなわちいずれかの動作ユニットが交換される)可能性を考慮して、各動作ユニットのマイコン50a、50b、50c、50dに記憶されている。
【0031】
続いて、ステップS22で取得されたLC構成情報及びステップS23で取得されたバリデーション関連情報に基づいて、レポート作成部75がシステムチェックレポートを作成する(ステップS24)。作成されたシステムチェックレポートは、レポート記憶部79に記憶されると共に、表示制御部76の制御の下に表示部81の画面上に表示される(ステップS25)。
【0032】
前記システムチェックレポートの一例を図4に示す。このシステムチェックレポートでは、冒頭に前記LC構成情報(ステップS22で取得された情報)が記載されており、該LC構成情報には、検出器ユニット40に現在装着されているフローセル90のセル情報(図中では「セルID」と表記)も含まれている。また、LC構成情報の後には、各動作ユニットについてのバリデーション関連情報(ステップS23で取得された情報)が記載されている。このうち検出器ユニット40におけるバリデーション関連情報には、少なくとも前記波長チェックに関する情報が含まれている。前記波長チェックに関する情報としては、前記波長チェック結果(すなわち、各輝線の測定値、各輝線の測定値と理論値との誤差、及び各輝線の合格/不合格の別)に加えて、該波長チェック結果に関連づけて検出器ユニット40の記憶部53に記憶されていたセル情報、すなわち該波長チェックの実行時に検出器ユニット40に装着されていたフローセル90のセル情報(図中では「セルID」と表記)が記載される。なお、システムチェックレポートに記載される前記セル情報は、フローセル90の種類を表す文字列、フローセル90の個体毎に固有の文字列、又はその両方のいずれであってもよい。
【0033】
なお、ユーザは入力部83から所定の操作を行うことによって前記システムチェックレポートの印刷を指示することもできる。これにより、印刷制御部77の制御の下に、印刷部82にてシステムチェックレポートが印刷される。
【0034】
以上の通り、本実施形態に係る液体クロマトグラフによれば、検出器ユニット40の波長チェックに使用されたフローセル90のセル情報が、該波長チェックの結果と共にシステムチェックレポートに記載されるため、波長チェックにいずれのフローセル90を用いたのかを明確に特定することができる。また、システムチェックレポートには、波長チェックに使用されたフローセル90のセル情報に加えて、検出器ユニット40に現在装着されているフローセル90のセル情報も記載されるため、両者を比較することにより、これから試料の分析に用いようとする(あるいは、既に試料の分析に使用した)フローセル90が、波長チェックに使用したフローセル90と同じ種類(又は同じ個体)であるか否かを確認することができる。これにより、本実施形態に係る液体クロマトグラフによれば、当該液体クロマトグラフを用いた分析結果の信頼性を十分に確保することが可能となる。
【0035】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0036】
(第1態様)
本発明の第1態様に係る液体クロマトグラフは、
カラムから溶出した溶離液が流れるフローセルに光を照射して分光分析を行う分光分析部と、
前記分光分析部に設けられ、前記フローセルに取り付けられた記憶装置を読み取ることにより該フローセルの種類又は個体に固有の情報であるセル情報を取得するセル情報読取部と、
前記分光分析部に波長チェックを実行させる波長チェック制御部と、
前記波長チェックの結果が、該波長チェックの実行時に取得された前記セル情報と関連づけて記憶される波長チェック情報記憶部と、
前記波長チェック情報記憶部を参照することにより、前記波長チェックの結果と該波長チェックの実行時に取得された前記セル情報とを記載したシステムチェックレポートを作成するシステムチェックレポート作成部と、
を備える。
【0037】
なお、前記「波長チェックの実行時」とは、該波長チェックの実行中に限らず、該波長チェックの実行直前又は実行直後であってもよい。また、前記分光分析部は、前記分光分析として、前記フローセルを通過した光を検出することによる透過率又は吸光度の測定を行うものであってもよく、前記光の照射によってフローセルから出る蛍光又は散乱光の測定を行うものであってもよい。
第1態様の液体クロマトグラフでは、分光分析部の波長チェックに使用されたフローセルのセル情報が、該波長チェックの結果と共にシステムチェックレポートに記載されるため、波長チェックにいずれのフローセルを用いたのかを明確に特定することができる。そのため、第1態様の液体クロマトグラフによれば、該液体クロマトグラフを用いた分析結果の信頼性を十分に確保することが可能となる。
【0038】
(第2態様)
本発明の第2態様に係る液体クロマトグラフは、上記第1態様の液体クロマトグラフにおいて、
移動相を送給する送液部と、
送られて来た前記移動相中に試料液を注入する試料注入部と、
前記試料液中の成分を分離するカラムを温調するカラムオーブンと、
前記送液部、前記試料注入部、前記カラムオーブン、及び前記分光分析部を統括的に制御する統括制御部と、
を更に有し、
前記送液部、前記試料注入部、前記カラムオーブン、前記分光分析部、及び前記統括制御部が、互いに独立した筐体を備えており、
前記波長チェック情報記憶部が前記分光分析部に設けられ、
前記システムチェックレポート作成部が前記統括制御部に設けられている。
【0039】
本発明の第2態様に係る液体クロマトグラフは、各々が独立した筐体を有する複数の動作ユニットを組み合わせて成るユニット型の液体クロマトグラフであり、前記波長チェック情報記憶部が分光分析部に(すなわち分光分析部の筐体内に)設けられているため、動作ユニットの組み替えが行われた場合でも、前記分光分析部と、該分光分析部に関する前記波長チェックの情報(波長チェック結果とセル情報)とを確実に対応付けることができる。
【0040】
(第3態様)
本発明の第3態様に係る液体クロマトグラフは、上記第1態様又は第2態様の液体クロマトグラフにおいて、前記統括制御部が、ユーザからの前記システムチェックレポートの作成指示を受け付ける指示受付部を更に有し、
前記システムチェックレポート作成部が、更に、前記指示受付部が前記システムチェックレポートの作成指示を受け付けた時点で前記セル情報読取部によって読み取られた前記セル情報を前記システムチェックレポートに記載する。
【0041】
第3態様の液体クロマトグラフでは、波長チェックに使用されたフローセルのセル情報に加えて、検出器ユニットに現在装着されているフローセルのセル情報もシステムチェックレポートに記載されるため、両者を比較することにより、これから試料の分析に用いようとする(あるいは、既に試料の分析に使用した)フローセルが、波長チェックに使用したフローセルと同じ種類(又は同じ個体)であるか否かを確認することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…送液ユニット
11…移動相容器
12…送液ポンプ
20…オートサンプラ
30…カラムオーブン
31…カラム
32…ヒータ
40…検出器ユニット
41…重水素ランプ
42…タングステンランプ
43…光源切替ミラー
44…レンズ
45…セル装着部
46…スリット
47…回折格子
48…フォトダイオードアレイ
49…セル情報読取部
50a~50d…マイコン
51…制御部
52…データ処理部
53…記憶部
54…通信部
60…システムコントローラ
70…外部コンピュータ
71…LC制御プログラム
72…LC制御部
73…LC構成取得部
74…バリデーション結果取得部
75…レポート作成部
76…表示制御部
77…印刷制御部
78…指示受付部
79…レポート記憶部
81…表示部
82…印刷部
83…入力部
90…フローセル
91…無線タグ
図1
図2
図3
図4