IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-ベイパーチャンバー 図1
  • 特許-ベイパーチャンバー 図2
  • 特許-ベイパーチャンバー 図3
  • 特許-ベイパーチャンバー 図4
  • 特許-ベイパーチャンバー 図5
  • 特許-ベイパーチャンバー 図6
  • 特許-ベイパーチャンバー 図7
  • 特許-ベイパーチャンバー 図8
  • 特許-ベイパーチャンバー 図9
  • 特許-ベイパーチャンバー 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ベイパーチャンバー
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20220614BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
F28D15/04 Z
F28D15/02 101H
F28D15/02 L
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022504714
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2021014797
(87)【国際公開番号】W WO2021229961
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】16/874,782
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/874,749
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/874,801
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/874,853
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/874,878
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/874,898
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/874,937
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 朗人
(72)【発明者】
【氏名】椿 信人
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189349(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026907(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0103176(US,A1)
【文献】国際公開第2018/003957(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/199216(WO,A1)
【文献】特表2018-503058(JP,A)
【文献】特開2019-020001(JP,A)
【文献】特開2010-243035(JP,A)
【文献】米国特許第09835383(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226493(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/04
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外縁部で接合された対向する上部筐体シートと下部筐体シートとを含み、内部空間を有する筐体と、
前記内部空間に封入された作動液と、
前記下部筐体シートのうち前記内部空間に配置され、前記作動液の流路を構成するマイクロチャネルと、
前記筐体の前記内部空間に配置され、前記マイクロチャネルに接触して配置されたシート状のウィックと、
を備え、
前記マイクロチャネルは、前記流路を構成するための複数の凸状部を有し、
平面視して、前記ウィックと、前記マイクロチャネルの前記複数の凸状部が重なる第1部分の面積は、前記内部空間を平面視した面積に対して5%~40%であり、
前記上部筐体シートおよび下部筐体シートを外縁部で対向させて接合する接合部材を備え、
前記接合部材の厚みと前記ウィックの厚みの差が20μm以下である、
ベイパーチャンバー。
【請求項2】
前記第1部分の面積は、前記内部空間を平面視した面積に対して10%~20%である、
請求項1に記載のベイパーチャンバー。
【請求項3】
前記ウィックは、複数の孔が形成され、
前記孔のうち前記ウィックの第1面側の開口幅と第2面側の開口幅の比が、1:3~1:1である、
請求項1または請求項2に記載のベイパーチャンバー。
【請求項4】
前記ウィックの前記第1面側が前記作動液の気液界面側であり、前記ウィックの前記第2面側が前記マイクロチャネルに接触する側である、
請求項3に記載のベイパーチャンバー。
【請求項5】
前記ウィックの前記第2面側は、前記マイクロチャネルに接触しない箇所を有する、
請求項4に記載のベイパーチャンバー。
【請求項6】
前記比が1:3~1:1の条件を満たす孔は、前記複数の孔の全てに対して90%以上である、
請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のベイパーチャンバー。
【請求項7】
平面視して前記ウィックが前記下部筐体シートに重なる第2部分と前記第1部分とを合わせた面積が、前記内部空間を平面視した面積に対して5%~40%である、
請求項に記載のベイパーチャンバー。
【請求項8】
前記第1部分と前記第2部分を合わせた面積が、前記内部空間を平面視した面積に対して10%~20%である、
請求項に記載のベイパーチャンバー。
【請求項9】
前記マイクロチャネルは、平面視して前記マイクロチャネルの全体に対する前記凸状部の面積率が5%~40%であり、かつ前記凸状部の高さが5~50μmである、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のベイパーチャンバー。
【請求項10】
前記凸状部の高さ50μmである場合には前記面積率は40%である、
請求項に記載のベイパーチャンバー。
【請求項11】
面視して前記ウィックの全体の面積に対する前記孔の面積が5~50%であり、
前記ウィックの厚みが5~35μmであり、
前記凸状部の断面積が150~25000μm2であり、
前記凸状部のピッチP1が100~1000μmである、
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のベイパーチャンバー。
【請求項12】
前記ウィックの厚みが35μmである場合、平面視して前記ウィックの全体の面積に対する前記孔の面積が5%である、
請求項11に記載のベイパーチャンバー。
【請求項13】
前記接合部材の厚みと前記ウィックの厚みの差が10μm以下である、
請求項12に記載のベイパーチャンバー。
【請求項14】
前記接合部材の厚みが25μmであり、前記ウィックの厚みが15μmである、
請求項13に記載のベイパーチャンバー。
【請求項15】
平面視して前記ウィックの面積は、前記マイクロチャネルの配置されている領域の面積よりも広い、
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載のベイパーチャンバー。
【請求項16】
前記ウィックの辺縁部にはバリが形成され、
前記マイクロチャネルの辺縁部から前記ウィックの辺縁部までの長さは、前記バリの高さ以上である、
請求項15に記載のベイパーチャンバー。
【請求項17】
外縁部で接合された対向する上部筐体シートと下部筐体シートとを含み、内部空間を有する筐体と、
前記内部空間に封入された作動液と、
前記下部筐体シートのうち前記内部空間に配置され、前記作動液の流路を構成するマイクロチャネルと、
前記筐体の前記内部空間に配置され、前記マイクロチャネルに接触して配置されたシート状のウィックと、
を備え、
前記マイクロチャネルは、前記流路を構成するための複数の凸状部を有し、
平面視して、前記ウィックと、前記マイクロチャネルの前記複数の凸状部が重なる第1部分の面積は、前記内部空間を平面視した面積に対して5%~40%であり
前記ウィックの厚みが35μmである場合、平面視して前記ウィックの全体の面積に対する前記孔の面積が5%である、
ベイパーチャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、ベイパーチャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2019-20001号公報は、ベイパーチャンバーを開示している。特開2019-20001号公報に開示されたベイパーチャンバーは、柱3を有する上部筐体シート6と、凸部5を有する下部筐体シート7と、上部筐体シート6および下部筐体シート7の密閉空間内に配置され、凸部5および柱3に挟まれるウィック4と、を備える。上部筐体シート6および下部筐体シート7は、内部空間に水等の作動液を封入している。
【0003】
作動液は熱源からの熱で気化し、内部空間内を移動した後、外部に熱を放出して液体に戻る。液体に戻った作動液はウィック4の毛細管力により柱3の間を移動して再び熱源付近に戻り、再び気化する。これにより、ベイパーチャンバーは、外部動力を必要とせずに、作動液の蒸発潜熱および凝縮潜熱を利用して、高速に熱を拡散することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-20001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベイパーチャンバーの特性のためには、最大熱輸送量の低下を防止することが重要である。例えば、ウィックに伝わる熱量が低くなると最大熱輸送量が大きく低下する。また、ウィックの開口が小さくなると作動液の気化する量が足りず、やはり最大熱輸送量が大きく低下する。
【0006】
そこで、本発明の一実施形態は、最大熱輸送量の低下を防止することを特徴とするベイパーチャンバーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るベイパーチャンバーは、当該課題を解決するために以下の構成を備える。
【0008】
ベイパーチャンバーは、筐体と、作動液と、マイクロチャネルと、ウィックと、を備える。筐体は、外縁部で接合された対向する上部筐体シートと下部筐体シートとを含み、内部空間を有する。作動液は、前記内部空間に封入される。マイクロチャネルは、前記下部筐体シートのうち前記内部空間に配置され、前記作動液の流路を構成する。ウィックは、前記筐体の前記内部空間に配置され、前記マイクロチャネルに接触して配置されたシート状である。前記ウィックと前記マイクロチャネルの接触面積は、前記内部空間の平面視した面積に対して5%~40%である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のベイパーチャンバー1の断面図である。
図2】下部筐体シート7の平面図である。
図3】ウィック4の平面図である。
図4】ウィック4の一部を透過して、下部筐体シート7およびウィック4を重ねた平面図である。
図5】ベイパーチャンバー1の断面拡大図である。
図6】ベイパーチャンバー1の一部断面拡大図である。
図7】ウィック4の断面拡大図である。
図8】ウィック4の断面拡大図である。
図9】ウィック4の断面拡大図である。
図10】ウィック4の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態のベイパーチャンバー1の断面図である。図2は、下部筐体シート7の平面図である。図3は、ウィック4の平面図である。なお、本実施形態に示す図面は、全て説明を容易にするために模式的に表したものであり、実際の大きさを忠実に示した図ではない。
【0011】
ベイパーチャンバー1は、平板状の筐体10を備える。筐体10は、上部筐体シート6、下部筐体シート7、および接合部材8を有する。上部筐体シート6および下部筐体シート7は、外縁部で接合部材8により接合される。図2の平面図に示す様に、下部筐体シート7の外縁部に示す破線よりも外側は、接合部材8が配置される。接合部材8は、例えばりん銅ろうからなる。
【0012】
筐体10は、上部筐体シート6および下部筐体シート7で挟まれる内部空間を有する。内部空間には、水等の作動液20が封入されている。上部筐体シート6は、内部空間に配置される支柱3を有する。下部筐体シート7は、内部空間に配置されるマイクロチャネル5を有する。
【0013】
上部筐体シート6および下部筐体シート7は、銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄あるいは、これらを主成分とする合金等(例えばニッケル銅合金またはリン青銅等)からなり、高い熱伝導率を有する。本実施形態では、上部筐体シート6および下部筐体シート7は、平面視して矩形状である。ただし、上部筐体シート6および下部筐体シート7は、平面視して多角形状でも円形状でもよい。内部空間の形状もどの様なものであってもよい。
【0014】
図2に示す様に、マイクロチャネル5は、複数の角柱形状の凸状部を有する凹凸形状の部分である。マイクロチャネル5の凹凸は、例えば下部筐体シート7の上面をエッチングすることにより形成される。ただし、マイクロチャネル5の凹凸形状は、角柱に限らない。マイクロチャネル5の凹凸形状は、例えば円柱であってもよい。
【0015】
なお、マイクロチャネル5の凹凸形状は、エッチングで形成される場合、厳密には角錐台形状になる。また、マイクロチャネル5の凹凸形状は、格子状に配列されていてもよいし、ハニカム状に配列されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。
【0016】
支柱3は、ベイパーチャンバー1を薄板状の形状に保つための柱である。支柱3も、上部筐体シート6のうち支柱3を除く部分をエッチングすることにより形成される。支柱3は、角柱形状からなる。ただし、支柱3の形状は、角柱に限らない。支柱3の形状は、例えば円柱であってもよい。なお、支柱3の断面積は、マイクロチャネル5の凸状部の断面積より大きく、隣り合う支柱3の間隔はマイクロチャネル5の凸状部のピッチよりも大きい。
【0017】
ウィック4は、下部筐体シート7および支柱3に挟まれる様に内部空間に配置される。ウィック4は、上部筐体シート6および下部筐体シート7よりも薄い金属材料からなる。ウィック4は、下部筐体シート7のマイクロチャネル5に接着(拡散接合)される。ウィック4は、上部筐体シート6および下部筐体シート7と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。図3に示す様に、ウィック4は、平面視して矩形状である。ただし、ウィック4は、平面視して多角形状でも円形状でもよい。ウィック4の形状は、内部空間の形状に合わせて適宜設定する。
【0018】
ウィック4は、複数の微細な孔41を有する。孔41は、例えばエッチングにより形成される。図3の例では、孔41は円形状であるが、矩形状でもよい。ただし、孔41が円形状であることで、気液界面は球面状になり、作動液20を均一に蒸発することができる。
【0019】
また、孔41は、ハニカム状に配列されている。図3の例では、ある任意の孔41と隣り合う二つの孔41のなす角度θは60°である。ただし、θは、例えば45°であってもよい。また、孔41は、格子状に配列されていてもよい。無論、孔41は、不規則に配列されていてもよい。作動液20は、下部筐体シート7に密着した熱源からの熱により、孔41において液体から気体に変化する。つまり、作動液20は、孔41において気液界面を構成する。気化した作動液20は、筐体10の内部空間で熱を放出して液体に戻る。液体に戻った作動液20は、ウィック4の孔41による毛細管力により、マイクロチャネル5を移動して、再び熱源の近くに運ばれる。これにより、ベイパーチャンバー1は、外部動力を必要とせずに、作動液20の蒸発潜熱および凝縮潜熱を利用して、高速に熱を拡散することができる。
【0020】
本実施形態のベイパーチャンバー1は、相対的に開口面積の小さいウィック4の孔41によって強い毛細管力を確保し、かつ相対的に開口面積の大きいマイクロチャネル5によって作動液20の透過断面積(作動液20の透過量)を確保している。
【0021】
さらに、本実施形態のベイパーチャンバー1は、以下の特徴を有する。
【0022】
(1)平面視してウィック4の面積は、マイクロチャネル5の配置されている領域の面積よりも広い。
【0023】
図4は、ウィック4の一部を透過して、下部筐体シート7およびウィック4を重ねた平面図である。ウィック4は、平面視して、マイクロチャネル5の配置されている領域の面積よりも広い。ウィック4は、下部筐体シート7および支柱3により挟まれているが、平面方向にずれる可能性がある。しかし、ウィック4は、平面視して、マイクロチャネル5の配置されている領域の面積よりも広い。したがって、ウィック4が仮に平面方向にずれたとしてもマイクロチャネル5の配置されている領域から外れるおそれは低くなる。
【0024】
また、ウィック4は、1つの銅板等のマザーシートから切り出されることで形成される。ウィック4は、切り出し工程において、辺縁部にバリが形成される可能性がある。したがって、図5に示す様に、ウィック4の辺縁部は、バリにより下部筐体シート7から離れて浮いてしまう可能性がある。ウィック4が下部筐体シート7から離れると、熱源の熱がウィック4に伝わり難くなる。しかし、ウィック4は、平面視して、マイクロチャネル5の配置されている領域の面積よりも広いため、辺縁部が浮いたとしても、マイクロチャネル5の配置されている領域においては下部筐体シート7から浮くことを抑制できる。したがって、ウィック4は、マイクロチャネル5からの適切な熱伝導を確保することができる。
【0025】
なお、好ましくは、マイクロチャネル5の辺縁部からウィック4の辺縁部までの長さh1は、バリの高さh2以上である。h1≧h2であれば、ウィック4の辺縁部が浮いたとしても、マイクロチャネル5の配置されている領域においては下部筐体シート7から浮く面積を十分に抑制することができ、適切な熱伝導を確保することができる。
【0026】
(2)ウィック4とマイクロチャネル5の接触面積は、内部空間を平面視した面積に対して5%~40%である。また、より好ましくは、ウィック4とマイクロチャネル5の接触面積は、内部空間を平面視した面積に対して10%~20%である。
【0027】
図4においては、マイクロチャネル5のうちウィック4に接触する凸状部をハッチングで示している。内部空間を平面視した面積とは、図中の一点破線で示す内側の領域の面積である。一点破線の外側は、接合部材8により接合される部分である。
【0028】
ベイパーチャンバー1は、ウィック4とマイクロチャネル5の接触面積が内部空間の平面視した面積に対して5%よりも低い場合、マイクロチャネル5からウィック4に伝わる熱量が低くなり、ウィック4の孔41に気液界面を形成できなくなる。この場合、最大熱輸送量が大きく低下する。また、ウィック4とマイクロチャネル5の接触面積が内部空間の平面視した面積に対して40%を超えると、作動液20がウィック4の孔41から気化する量が足りず、最大熱輸送量が大きく低下する。したがって、ウィック4とマイクロチャネル5の接触面積が内部空間を平面視した面積に対して5%~40%であることで、ベイパーチャンバー1は、所定の最大熱輸送量を確保することができる。
【0029】
なお、上記(1)の様にウィック4の面積がマイクロチャネル5の配置されている領域の面積よりも広い場合には、ウィック4が下部筐体シート7に接触する面積も含めた面積が、内部空間を平面視した面積に対して5%~40%であることが好ましい。
【0030】
(3)マイクロチャネル5の開口幅W1が50~200μmであり、ウィック4の厚みD2が5~35μmであり、D2:W1=5:200~30:50である。
【0031】
より好ましくは、ウィック4の厚みD2が15~20μmであり、マイクロチャネル5の開口幅W1が200μmである。
【0032】
図6は、ベイパーチャンバー1の一部断面拡大図である。図6は、マイクロチャネル5の高さD1、ウィック4の厚みD2、マイクロチャネル5の開口幅W1、マイクロチャネル5の凸出部の幅W2、マイクロチャネル5の開口ピッチP1、およびウィック4の開口ピッチP1を示している。
【0033】
ウィック4の厚みD2が薄く、かつマイクロチャネル5の開口幅W1が大きくなると、ウィック4がマイクロチャネル5の開口部分に沈み込み、ウィック4の孔41に作動液20の気液界面が形成されなくなる。したがって、ウィック4の厚みD2が5μm以上であり、開口幅W1が500μm以下である必要がある。一方で、ウィック4の厚みD2が厚すぎると、下部筐体シート7に接している熱源から熱が伝わり難くなる。したがって、ウィック4の厚みは35μm以下である必要がある。また、開口幅W1が小さすぎると作動液20の透過断面積が低下する。したがって、マイクロチャネル5の開口幅W1は50μm以上である必要がある。
【0034】
ウィック4の厚みD2が大きくなるほど熱源から熱が伝わり難くなるため、開口幅W1を小さくしてウィック4およびマイクロチャネル5の接触面積を増やし、熱伝導を確保する必要がある。したがって、ベイパーチャンバー1は、D2:W1=5:200~30:50とすることで、所定の最大熱輸送量を確保することができる。
【0035】
(4)平面視してマイクロチャネル5の全体に対するマイクロチャネル5の凸状部の面積率は、5%~40%である。
【0036】
作動液20は、気体から液体に戻り、マイクロチャネル5の開口部を透過する。したがって、作動液20の流路を構成する凸状部は、できるだけ少ないほうが作動液20の透過断面積が大きくなる。しかし、マイクロチャネル5の開口部の面積が大きすぎると、ウィック4がマイクロチャネル5の開口部分に沈み込み、ウィック4の孔41に作動液20の気液界面が形成されなくなる。したがって、平面視してマイクロチャネル5全体に対する凸状部の面積比は、最低でも5%以上であることが好ましい。
【0037】
一方で、マイクロチャネル5の開口部の面積が小さ過ぎると、作動液20の透過断面積が小さくなり、最大熱輸送量が低下する。したがって、平面視してマイクロチャネル5全体に対する凸状部の面積比は、最大でも40%以下であることが好ましい。
【0038】
なお、より好ましくは、平面視してマイクロチャネル5全体に対する凸状部の面積比は、18~30%である。
【0039】
(5)平面視してマイクロチャネル5の全体に対するマイクロチャネル5の凸状部の面積率が5%~40%であり、かつマイクロチャネル5の凸状部の高さD1が5~50μmである。ただし、D1が50μmである場合には前記面積率は40%である。
【0040】
上述の様に、マイクロチャネル5の開口部の面積が大き過ぎると、ウィック4がマイクロチャネル5の開口部分に沈み込み、ウィック4の孔41に作動液20の気液界面が形成されなくなる。一方で、マイクロチャネル5の開口部の面積が小さ過ぎると、作動液20の透過断面積が小さくなり、最大熱輸送量が低下する。
【0041】
また、マイクロチャネル5の凸状部の高さD1が低過ぎる場合も、作動液20の透過断面積が小さくなり、最大熱輸送量が低下する。一方でマイクロチャネル5の凸状部の高さD1が高過ぎると、熱源からウィック4までの距離が長くなるため、熱源から熱が伝わり難くなる。
【0042】
そこで、ベイパーチャンバー1は、熱伝導および作動液の透過断面積を確保しつつ、ウィック4の沈み込みを防止するため、平面視してマイクロチャネル5の全体に対するマイクロチャネル5の凸状部の面積率が5%~40%であり、かつマイクロチャネル5の凸状部の高さD1が5~50μmとする。ただし、D1が50μmである場合には熱源から熱が最もウィック4に伝わり難くなるため、凸状部の面積率は最も高い40%程度にし、熱伝導を確保する。
【0043】
(6)ウィックの孔の開口率(ウィック4の全体の面積に対する孔41の面積)が5~50%であり、ウィックの厚みD2が5~35μmであり、マイクロチャネル5の凸状部の断面積(D1×W2)=150~25000μmであり、マイクロチャネル5の凸状部のピッチP1(W1+W2)=100~1000μmである。より好ましくは、ピッチP1は、100~500μmである。
【0044】
ウィック4の厚みが厚過ぎると、熱源から熱が伝わり難くなる。一方で、ウィック4の厚みが薄すぎるとウィック4がマイクロチャネル5の開口部分に沈み込む。ウィック4の開口率が高過ぎると、熱源から熱が伝わり難くなる。一方で、ウィック4の開口率が低過ぎると、作動液20の蒸発量が低下し、最大熱輸送量が低下する。ただし、D2が35μmである場合には熱源から熱が最もウィック4に伝わり難くなるため、開口率は最も低い5%程度にし、熱伝導を確保する。
【0045】
また、マイクロチャネル5の凸状部の断面積が小さ過ぎ、かつピッチが大き過ぎると、ウィック4がマイクロチャネル5の開口部分に沈み込む。マイクロチャネル5の凸状部の断面積が大き過ぎ、かつピッチが小さ過ぎると作動液20の透過断面積が小さくなり、最大熱輸送量が低下する。
【0046】
したがって、ベイパーチャンバー1は、熱伝導および作動液の透過断面積を確保しつつ、ウィック4の沈み込みを防止するため、ウィックの孔の開口率(ウィック4の全体の面積に対する孔41の面積)が5~50%であり、ウィックの厚みD2が5~35μmであり、マイクロチャネル5の凸状部の断面積(D1×W2)=150~25000μm2であり、マイクロチャネル5の凸状部のピッチP1(W1+W2)=100~1000μmとした。
【0047】
(7)ウィック4の孔41の第1面(上面)側開口幅L1と第2面(下面)側開口幅L2の比が1:3~1:1である。
【0048】
図7は、ウィック4の断面拡大図である。ウィック4の孔41は、エッチングにより形成される。エッチングが理想的な状態の場合、ウィック4の孔41の上面側開口幅L1と下面側開口幅L2の比が1:1になる。
【0049】
孔41の形成時にテーパーが形成される場合、あるいは意図的にテーパーを生じさせる場合、上面側開口幅L1と下面側開口幅L2の比が大きすぎると、毛細管力が低下する。そのため、ベイパーチャンバー1は、上面側開口幅L1と下面側開口幅L2の比が1:3以下であることが好ましい。
【0050】
図7では、一例として、L1=40μm、L2=55μmである。他にも、L1=30μm、L2=100μmであってもよい。また、L1=40μm、L2=40μmであってもよい。
【0051】
図7の例では、孔の径の小さい側が上面側である気液界面側に配置され、孔の径の大きい方が下面側であるマイクロチャネル側に配置されている。しかし、孔の径の小さい側が下面側に配置され、孔の径の大きい方が上面側に配置されていてもよい。
【0052】
なお、全ての孔41において、上面側開口幅L1と下面側開口幅L2の比が1:3~1:1である必要はない。当該比を満たす孔41が全体の90%以上であればよい。なお、図8に示す様に、エッチングの量が大きくなると、ウィック4の下面側も削られて、マイクロチャネル5に接触しない部分が生じる可能性もある。この場合、接触しない部分については熱伝導量が低下するが、隙間を作動液20が透過するため、作動液20の透過量が向上する。
【0053】
(8)接合部材8の厚みとウィック4の厚みの差が20μm以下である。
【0054】
より好ましくは、接合部材8の厚みとウィック4の厚みの差が10μm以下である。例えば本実施形態の接合部材8の厚みは25μmであり、ウィック4の厚みは15μmである。これにより、筐体10の平滑性が向上する。したがって、接合部材8による封止性能が向上する。なお、接合部材8は、作動液20を注入するための注入口(不図示)を有する。当該注入口の上下方向の位置がウィック4と同じ程度の位置である場合、ベイパーチャンバー1は、当該注入口からウィック4に対して直接、作動液20を注入することができ、容易に作動液20を注入できる。
【0055】
(9)マイクロチャネル5の凸状部のピッチP1およびウィック4の孔41のピッチP2は、整数倍にならない。
【0056】
例えば、ピッチP1=350μm、ピッチP2=60μmである。この場合、孔41の端部と、凸状部の端部が平面視して重なり難い。したがって、ウィック4がマイクロチャネル5の開口部に沈み込み難くなる。
【0057】
(10)ウィック4は、平面視して孔41の形成されていない領域を有し、当該領域を構成する部分の幅W3は0.1~10mmであり、かつ平面視して当該領域の面積がウィック4の面積の90%以下である。
【0058】
なお、当該領域を構成する部分が規則的に配列されている場合、ピッチP3は0.1~10mmである。
【0059】
図9は、ウィック4の平面図である。図9においては、説明のために図3よりも孔41の数を多く表示し、かつ小さく表示している。この例では、孔41の形成されていない領域は、格子状に配列された直線状の部分からなる。当該格子を構成する各直線部分の幅W3は、0.1mmである。また、ピッチP3は、0.26mmである。
【0060】
この様に、ウィック4は、孔41の形成されていない領域を有し、該領域を構成する部分のうち最も幅の狭い部分の幅W3は0.1~10mmであり、かつ平面視して当該領域の面積がウィック4の面積の90%以下であることで、マイクロチャネル5との接着性が向上し、かつ当該接着が均一になされる。したがって、仮にベイパーチャンバー1に落下等の衝撃が加わったり、曲げ時に応力が生じたとしても、ウィック4はマイクロチャネル5から浮き上がり難い。そのため、ベイパーチャンバー1は、最大熱輸送量の変化を抑えることができる。
【0061】
なお、上記領域を構成する部分は、図9の例に限らない。例えば、図10に示す様に、上記領域を構成する部分は、斜めに配列されていてもよい。また、領域を構成する部分は、規則的に配列されている必要もない。領域を構成する部分は、ランダムな形状で、ランダムに配列されていてもよい。
【0062】
本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば上述した(1)~(10)の特徴は全てを組み合わせた構成とすることもできるし、一部を組み合わせた構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1…ベイパーチャンバー
3…支柱
4…ウィック
5…マイクロチャネル
6…上部筐体シート
7…下部筐体シート
8…接合部材
10…筐体
20…作動液
41…孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10