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特許7088478冷凍アブレーション装置及び冷凍アブレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】冷凍アブレーション装置及び冷凍アブレーション方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
A61B18/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021503722
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 CN2018097905
(87)【国際公開番号】W WO2020019362
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】201810812250.3
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520398157
【氏名又は名称】山前(珠海)医療科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】肖 家華
(72)【発明者】
【氏名】蘇 東波
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ ラマ、アラン
(72)【発明者】
【氏名】ハタ、ケリー クニヒコ
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-522621(JP,A)
【文献】特開2003-125555(JP,A)
【文献】実開昭50-130859(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0039476(US,A1)
【文献】米国特許第05275595(US,A)
【文献】特開昭62-294882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/02
F25D 9/00
F25D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷媒体が流通しており、人体組織を接触させて冷凍アブレーションするのに適する冷凍バルーン(8)と、
冷凍バルーン(8)に接続され、媒体供給端と媒体排出端を有し、冷凍バルーン(8)に保冷媒体を供給・排出するのに適するカテーテル(7)と、
保冷媒体を貯蔵する媒体貯蔵タンク(1)と、
一端が媒体貯蔵タンク(1)に連通し、他端がカテーテル(7)の媒体供給端に連通する媒体供給配管(2)と、
一端が媒体貯蔵タンク(1)に連通し、他端がカテーテル(7)の媒体排出端に連通する媒体回収配管(3)と
体供給配管(2)内の保冷媒体を冷凍するのに適し、第1の冷気交換手段(5)と、冷気発生装置(4)と、第2の冷気交換手段(6)と、蓄冷手段(11)と、を備える冷却ユニットと、
媒体供給配管(2)と媒体回収配管(3)に連通し、媒体供給配管(2)と媒体回収配管(3)を、媒体貯蔵タンク(1)と第1の冷気交換手段(5)を直列する予冷回路とするバイパスパイプ(9)と、を備え
前記第1の冷気交換手段(5)は、媒体供給配管(2)に取り付けられ、前記第1の冷気交換手段(5)の内部を流れる保冷媒体を冷凍するためであり、
前記冷気発生装置(4)は、冷気を発生させ、冷気を前記第1の冷気交換手段(5)に供給し、
第2の冷気交換手段(6)は、前記媒体供給配管(2)に配置される熱流体配管セグメントと、前記媒体回収配管(3)に配置される冷流体配管セグメントとを有し、前記熱流体配管セグメントと前記冷流体配管セグメントとの間で冷気交換が発生し、前記熱流体配管セグメント内を流れる保冷媒体を予冷し、
前記熱流体配管セグメントは、前記媒体貯蔵タンク(1)と前記第1の冷気交換手段(5)との間に配置され、
前記バイパスパイプ(9)と媒体供給配管(2)は、第1の三方弁(10)を介して連通し、
前記蓄冷手段(11)は、媒体回収配管(3)に取り付けられ、バイパスパイプ(9)を介して第1の冷気交換手段(5)に連通し、第1の冷気交換手段(5)から流出した保冷媒体によってもたらされた冷気を貯蔵するのに適することを特徴とする冷凍アブレーション装置。
【請求項2】
前記冷却ユニットは、
外部との熱量の伝導を低減又は遮断するのに適する断熱室(13)を有し、前記第1の冷気交換手段(5)、第2の冷気交換手段(6)、蓄冷手段(11)、及び冷気発生装置(4)の冷気出力端が断熱室(13)内に配置される断熱手段(12)をさらに備える、ことを特徴とする請求項に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項3】
前記断熱手段(12)はボックス体であり、断熱室(13)に連通している真空吸引手段(14)が装着されている、ことを特徴とする請求項に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項4】
前記断熱手段(12)はボックス体であり、内部に断熱材が充填されている、ことを特徴とする請求項に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項5】
前記媒体貯蔵タンク(1)中の保冷媒体を冷凍アブレーション装置のカテーテル(7)の媒体供給端に送るための復温回路をさらに備える、ことを特徴とする請求項に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項6】
前記復温回路は、
媒体供給端が第2の三方弁(17)を介して、媒体供給配管(2)の前記熱流体配管セグメントに対して媒体供給口の上流部に連結されている復温管(15)を備える、ことを特徴とする請求項に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項7】
冷媒体を加熱して加熱された保冷媒体を冷凍アブレーション装置のカテーテル(7)の媒体供給端に送るための復温回路をさらに備える、ことを特徴とする請求項に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項8】
前記復温回路は、昇温手段(16)が連結されている復温管(15)を備え、
前記復温管(15)の媒体供給端が、第2の三方弁(17)を介して、媒体供給配管(2)の前記熱流体配管セグメントに対して媒体供給口の上流部に連結されている、ことを特徴とする請求項に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項9】
前記復温回路は、前記冷凍アブレーション装置のカテーテル(7)の媒体排出端と媒体貯蔵タンク(1)とを連通させるための復温還流配管をさらに備える、ことを特徴とする請求項に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項10】
前記復温還流配管は、両端が媒体回収配管(3)に連通するとともに、第2の冷気交換手段(6)に並列された復温還流管(18)を備え、
前記復温還流管(18)の媒体供給端が、第3の三方弁(19)を介して、媒体回収配管(3)に連結されている、ことを特徴とする請求項に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項11】
前記冷却ユニットは、
外部との熱量の伝導を低減又は遮断するのに適する断熱室(13)を有し、前記第1の冷気交換手段(5)、第2の冷気交換手段(6)、蓄冷手段(11)、及び冷気発生装置(4)の冷気出力端が断熱室(13)内に配置される断熱手段(12)をさらに備え、
前記復温還流管(18)は断熱手段(12)の外部に配置される、ことを特徴とする請求項10に記載の冷凍アブレーション装置。
【請求項12】
前記媒体供給配管(2)又は前記媒体回収配管(3)には、保冷媒体の流動のための動力を供給するのに適するポンピング装置(20)が連結されている、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の冷凍アブレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、具体的には、冷凍アブレーション装置、及び冷凍アブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍アブレーション術は、冷凍によりターゲット組織を取り除く外科医療技術であり、腫瘍、心房細動などの疾患の治療に多用されている。その原理は、低温デバイスを用いてターゲット組織に対して低温、凍結、復温を施し、細胞に不可逆的な損傷や壊死を付与することである。冷凍アブレーションデバイスは、一般には、冷凍アブレーション発生器(本体)と冷凍バルーン部分とを備え、冷凍アブレーション発生器(本体)は冷凍バルーンに保冷媒体を供給し、使用するときに、冷凍バルーンはカテーテルの先端に装着されて人体の内部に挿入され、冷凍アブレーション発生器(本体)は保冷媒体をカテーテルから冷凍バルーンに導入して冷凍バルーンを降温することで、ターゲット組織に冷凍アブレーションを行う。
【0003】
従来技術における冷凍アブレーション発生器は、一般には、高圧気体絞りによる冷凍方式を使用しており、高圧気体が小孔を流れた後に断熱して絞りする場合、圧力の降下に伴い、温度が変化する場合が多く、気体の断熱絞り効果により冷凍アブレーションにおける降温による治療プロセスを完了できる。しかしながら、高圧気体絞りの方式では、実用時に一定の欠陥が存在する。まず、高圧気体の危険性が高い。冷凍アブレーションの末端バルーンが一般には人体内にあるので、気体の圧力が高すぎると、バルーンの破裂を引き起こす可能性があり、患者に大きなセキュリティ上の脅威を与える。また、高圧気体が消耗品であるため、補充する必要があり、簡便に使用できない。さらに、デバイスを使用する操作者への要件が高く、手術を行うときに専門技術者による操作が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、使用時の危険性が高く、作動媒体の消費量が大きく、簡便に使用できないという従来技術における冷凍アブレーション装置の欠陥を解決し、危険性が低く、作動媒体の消費量が少なく、簡便に使用できる冷凍アブレーション装置を提供することである。
【0005】
本発明が解決しようとする別の技術的課題は、操作時の危険性が高く、操作されにくいという従来技術における冷凍アブレーション方法の欠陥を克服し、危険性が低く、簡単に操作できる冷凍アブレーション方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、下記技術案を提供する。
【0007】
冷凍アブレーション装置であって、
保冷媒体が流通しており、人体組織を接触させて冷凍アブレーションするのに適する冷凍バルーンと、
冷凍バルーンに接続され、媒体供給端と媒体排出端を有し、冷凍バルーンに保冷媒体を供給・排出するのに適するカテーテルと、
保冷媒体を貯蔵する媒体貯蔵タンクと、
一端が媒体貯蔵タンクに連通し、他端がカテーテルの媒体供給端に連通する媒体供給配管と、
一端が媒体貯蔵タンクに連通し、他端がカテーテルの媒体排出端に連通する媒体回収配管と、
媒体供給配管に直列され、媒体供給配管内の保冷媒体を冷凍して熱交換するのに適する冷却ユニットと、を備える。
【0008】
好ましい技術案として、前記冷却ユニットは、
冷気を発生させる冷気発生装置と、
媒体供給配管に取り付けられ、前記冷気発生装置によって冷気を供給され、その内部を流れる保冷媒体を冷凍して熱交換するための第1の冷気交換手段と、を備える。
【0009】
好ましい技術案として、前記冷却ユニットは、
前記媒体供給配管に取り付けられた熱流体通路と前記媒体回収配管に取り付けられた冷流体通路とを有し、前記冷流体通路と前記熱流体通路との間で冷気交換が発生し、前記熱流体通路内を流れる保冷媒体を予冷する第2の冷気交換手段をさらに備え、
前記熱流体通路は、前記媒体貯蔵タンクと前記第1の冷気交換手段との間に接続される。
【0010】
好ましい技術案として、媒体供給配管と媒体回収配管に連通し、媒体供給配管と媒体回収配管を、媒体貯蔵タンクと第1の冷気交換手段を直列する予冷回路とするバイパス配管をさらに備え、
且つ、前記バイパス配管と媒体供給配管は、第1の三方弁を介して連通する。
【0011】
好ましい技術案として、前記冷却ユニットは、
媒体回収配管に取り付けられ、バイパス配管を介して第1の冷気交換手段に連通し、第1の冷気交換手段から流出した冷気を貯蔵するのに適する蓄冷手段をさらに備える。
【0012】
好ましい技術案として、前記冷却ユニットは、
外部との熱量の伝導を低減又は遮断するのに適する断熱室を有し、前記第1の冷気交換手段、第2の冷気交換手段、蓄冷手段、及び冷気発生装置の冷気出力端が断熱室内に配置される断熱手段をさらに備える。
【0013】
好ましい技術案として、前記断熱手段はボックス体であり、断熱室に連通している真空吸引手段が装着されている。
【0014】
好ましい技術案として、前記断熱手段はボックス体であり、内部に断熱材が充填されている。
【0015】
好ましい技術案として、前記媒体貯蔵タンク中の保冷媒体を冷凍アブレーション装置のカテーテルの媒体供給端に送るための復温回路をさらに備える。
【0016】
好ましい技術案として、前記復温回路は、
媒体供給端が第2の三方弁を介して、媒体供給配管に取り付けられ前記第1の冷気交換手段に入られていない一側に連結されている復温管を備える。
【0017】
好ましい技術案として、前記媒体貯蔵タンク中の保冷媒体を加熱して冷凍アブレーション装置のカテーテルの媒体供給端に送るための復温回路をさらに備える。
【0018】
好ましい技術案として、前記復温回路は、昇温手段が直列されている復温管を備え、
前記復温管の媒体供給端が、第2の三方弁を介して、前記熱流体通路の媒体供給口に入った上流部に連結されている。
【0019】
好ましい技術案として、前記復温回路は、前記冷凍アブレーション装置のカテーテルの媒体排出端と媒体貯蔵タンクとを連通させるための復温還流配管をさらに備える。
【0020】
好ましい技術案として、前記復温還流配管は、両端が媒体回収配管に連通するとともに、第2の冷気交換手段に並列された復温還流管を備え、
前記復温還流管の媒体供給端が、第3の三方弁を介して、媒体供給配管に連結されている。
【0021】
好ましい技術案として、前記冷却ユニットは、
外部との熱量の伝導を低減又は遮断するのに適する断熱室を有し、前記第1の冷気交換手段、第2の冷気交換手段、蓄冷手段、及び冷気発生装置の冷気出力端が断熱室内に配置される断熱手段をさらに備え、
前記復温還流管は断熱手段の外部に配置される。
【0022】
好ましい技術案として、前記媒体供給配管又は前記媒体回収配管には、保冷媒体の流動のための動力を供給するのに適するポンピング装置が直列されている。
【0023】
冷凍アブレーション方法であって、
保冷媒体を冷やして循環させて冷気発生装置に導入して冷却する予冷ステップと、
予冷済みの保冷媒体を再度冷気発生装置に循環させて、再度降温し、次に、人体のターゲット組織に導入し、保冷媒体にターゲット組織と冷気を交換させ、ターゲット組織を降温した後、ターゲット組織に冷凍アブレーションを行うアブレーションステップと、
ターゲット組織と冷気を交換した保冷媒体を人体から排出し、媒体貯蔵タンクに送る回収ステップと、
人体への降温保冷媒体の導入を停止し、ターゲット組織を昇温する復温ステップと、を含む。
【0024】
好ましい技術案として、回収ステップでは、ターゲット組織と冷気を交換した保冷媒体を人体から排出し、第2の冷気交換手段において、保冷媒体に残存している冷気を利用して媒体貯蔵タンクから流出した保冷媒体と冷気を交換することで、第1の冷気交換手段に導入していない保冷媒体を降温して、第1の冷気交換手段に送る。
【0025】
好ましい技術案として、予冷段階では、冷気の一部を貯蔵し、この冷気をカテーテルから回収された保冷媒体に送り、第2の冷気交換手段において媒体貯蔵タンクから流出した保冷媒体と冷気を交換する。
【0026】
好ましい技術案として、復温ステップでは、保冷媒体を、循環させて昇温手段を通過させて、保冷媒体を昇温し、次に、昇温した保冷媒体を人体のターゲット組織に導入し、保冷媒体がターゲット組織と熱交換を行うようにすることで、降温したターゲット組織を昇温する。
【0027】
好ましい技術案として、復温ステップでは、冷凍されていない保冷媒体を人体に導入することで、ターゲット組織が冷凍されていない保冷媒体と熱交換して昇温するようにする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の技術案は、以下の利点を有する。
【0029】
1、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、保冷媒体が流通しており、人体組織を接触させて冷凍アブレーションするのに適する冷凍バルーンと、冷凍バルーンに接続され、媒体供給端と媒体排出端を有し、冷凍バルーンに保冷媒体を供給・排出するのに適するカテーテルと、低圧液体又は気体又は気液混合物である保冷媒体を貯蔵する媒体貯蔵タンクと、一端が媒体貯蔵タンクに連通し、他端がカテーテルの媒体供給端に連通する媒体供給配管と、一端が媒体貯蔵タンクに連通し、他端がカテーテルの媒体排出端に連通する媒体回収配管と、媒体供給配管に直列され、媒体供給配管内の保冷媒体に冷気を供給するのに適する冷却ユニットと、を備える。冷凍アブレーション術を行う過程において、保冷媒体は以下の経路に従って流動する。保冷媒体は、媒体供給配管に沿って媒体貯蔵タンクから流出した後、冷却ユニットを経て、温度が下がり、次に、カテーテルの媒体供給端に入り、冷凍バルーン内に流れてバルーンを介してターゲット組織と接触し、その後、カテーテルの媒体排出端から媒体回収配管に流れ、最後に、媒体貯蔵タンクに戻り、このように、1つのサイクルは完了する。上記過程では、従来の高圧気体を保冷媒体に変更して、保冷媒体を直接降温して冷凍することにより、冷凍アブレーションによる低温要件を満たす。保冷媒体が高圧気体に比べて爆発しにくいので、冷凍アブレーション装置の使用時の危険性を効果的に低下させ、また、保冷媒体を循環的に利用できるため、使用中に高圧気体を補充する必要がなく、それによって使用の利便性が高まる。また、低圧保冷媒体の降温方式が単一であり、冷却ユニットだけにより降温するので、その降温過程が高圧気体絞りによる降温方式よりも制御されやすくなり、このため、その操作し難さを効果的に低減させ、執刀医は専門技術者なしで手術全体を行うことができる。
【0030】
2、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、前記冷却ユニットは、前記媒体供給配管に取り付けられた熱流体通路と前記媒体回収配管に取り付けられた冷流体通路とを有し、前記冷流体通路と前記熱流体通路との間で冷気交換が発生し、前記熱流体通路内を流れる保冷媒体を予冷する第2の冷気交換手段をさらに備え、前記熱流体通路は、前記媒体貯蔵タンクと前記第1の冷気交換手段との間に接続される。冷凍アブレーションを行う際に、媒体供給配管、媒体回収配管、冷凍アブレーションシステムのカテーテル、及び冷凍バルーンを利用して保冷媒体を循環的に流動させ、流動中、冷気発生装置で生じた冷気が第1の冷気交換手段によって媒体供給配管に送られ、カテーテルを介して人体に送られてターゲット組織を冷凍アブレーションし、ターゲット組織と冷気交換を行った保冷媒体が、次に、カテーテルから媒体回収配管に流れ、このとき、保冷媒体には冷気の一部が残存しており、保冷媒体が媒体回収配管を流れるときに、第2の冷気交換手段の存在により、保冷媒体に残存している冷気が、第2の冷気交換手段によって媒体供給配管内の保冷媒体に伝導され、ここでの保冷媒体を予め降温しておく。上記過程において、第2の冷気交換手段が、媒体供給配管において第1の冷気交換手段よりも上流部にあるので、ここでの媒体供給配管内の保冷媒体の温度が媒体回収配管内の温度よりも高く、このため、冷気が媒体回収配管から媒体供給配管に伝達できる。上記過程により、媒体回収配管内の保冷媒体に残存している冷気で保冷媒体が予め降温しており、第1の冷気交換手段に供給される時の保冷媒体の初期温度が下がり、このように、冷気交換量が同じ場合、このように予め降温された保冷媒体の方はより低温になり、このように低圧媒体を直接冷凍する冷凍アブレーション方式は、冷凍アブレーションに必要な温度を満たす可能性が高く、また、冷気の利用効率が高まる。
【0031】
3、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、媒体供給配管と媒体回収配管に連通し、媒体供給配管と媒体回収配管を、媒体貯蔵タンクと第1の冷気交換手段を直列する予冷回路とするバイパス配管をさらに備え、且つ、前記バイパス配管と媒体供給配管は、第1の三方弁を介して連通する。バイパス配管を利用して、保冷剤を、人体に導入して冷凍アブレーションに用いる前に予冷することができ、予冷段階では、保冷媒体が、媒体貯蔵タンクから流出した後、媒体供給配管、第1の冷気交換手段、バイパス配管、及び媒体回収配管を順次流れ、最後に媒体貯蔵タンクに戻る。予冷した保冷媒体は、温度が下がり、冷凍アブレーション段階に入るときの初期温度がさらに低下し、次に、第1の冷気交換手段により降温されると、より容易に冷凍アブレーションに必要な低温になる。したがって、このようにすると、この冷凍アブレーション装置の保冷媒体が冷凍アブレーションに必要な温度になる可能性をさらに高める。
【0032】
4、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、媒体回収配管に取り付けられ、バイパス配管を介して第1の冷気交換手段に連通し、第1の冷気交換手段から流出した冷気を貯蔵するのに適する蓄冷手段をさらに備える。予冷段階では、蓄冷手段は保冷媒体からの冷気の一部を貯蔵し、このように貯蔵した冷気が、冷凍アブレーション段階の開始後に、人体から流出した保冷媒体を予め降温することで、第2の冷気交換手段において冷流体通路と熱流体通路とでの温度の差を増大し、第2の冷気交換手段での冷気交換速度を高め、媒体供給配管内の保冷媒体の温度をさらに低下させ、このように予め降温された保冷媒体が、第1の冷気交換手段により最終的に降温すると、より低い温度になる。したがって、このようにすると、本冷凍アブレーション装置が冷凍アブレーションに必要な低温になることをさらに確保でき、また、冷気の利用効率をさらに向上させ、冷気の無駄を減少させることができる。
【0033】
5、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、外部との熱量の伝導を低減又は遮断するのに適する断熱室を有し、前記第1の冷気交換手段、第2の冷気交換手段、蓄冷手段及び冷気発生装置の冷気出力端が断熱室内に配置される断熱手段をさらに備える。断熱手段によれば、冷気交換中の冷気の損失を回避するとともに、蓄冷手段の保温効果がより良好であり、蓄冷手段の冷気貯蔵過程における冷気の損失を回避する。
【0034】
6、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、前記断熱手段はボックス体であり、断熱室に連通している真空吸引手段が装着されている。真空状態に近い断熱室は、冷気の損失速度をさらに低下させることができ、冷凍アブレーション装置の冷気の利用効率をさらに向上させる。
【0035】
7、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、前記貯蔵タンク中の保冷媒体を加熱して冷凍アブレーション装置のカテーテルの媒体供給端に送るための復温回路をさらに備える。冷凍アブレーション術では、冷凍させたターゲット組織を復温する必要があり、理想的な復温によれば冷凍アブレーション術の手術効果を高めることができ、そして、術後の合併症の発生の確率を下げる。本発明に係る復温回路は、保冷媒体を加熱して、カテーテルを介してターゲット組織に送ることができ、このように個別に設けられた復温回路は、冷凍アブレーション術における復温に対応できるだけでなく、復温の温度、進度及び時間をより正確に制御することに非常に役に立ち、それにより、手術の治癒率を向上させ、術後の合併症を減らす。
【0036】
8、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、前記復温回路は、昇温手段が直列されており、媒体供給端が第2の三方弁を介して前記熱流体通路の入り口に入った上流部に連結されている復温管を備える。復温管と媒体供給配管の第2の冷気交換手段の上流部とを連結すると、復温管、第1の冷気交換手段及び第2の冷気交換手段が並列され、このとき、保冷剤の加熱用配管と降温用配管がそれぞれ独立している。したがって、第1の冷気交換手段と第2の冷気交換手段に残留している冷気が、復温段階で保冷剤の昇温への干渉を回避し、復温過程に対する干渉の要素を減らし、復温過程をより容易に制御することができる。
【0037】
9、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、前記復温回路は、前記冷凍アブレーション装置のカテーテルの媒体排出端と媒体貯蔵タンクとを連通させるための復温還流配管をさらに備える。個別に設けられた復温還流配管は、復温過程を、媒体貯蔵タンク、復温管、冷凍アブレーション装置、復温還流配管からなる単独した復温回路とすることができ、それにより、復温過程における干渉の要素をさらに減らし、復温プロセスをより正確に制御できるようにする。
【0038】
10、本発明に係る冷凍アブレーション装置では、外部との熱量の伝導を低減又は遮断するのに適する断熱室を有し、前記第1の冷気交換手段、第2の冷気交換手段、蓄冷手段、及び冷気発生装置の冷気出力端が断熱室内に配置される断熱手段をさらに備え、前記復温還流管は断熱手段の外部に配置される。復温還流管を断熱手段の外部に設けることにより、復温還流管が、復温済みの保冷媒体を送るときに蓄冷手段若しくは第2の冷気交換手段内の冷気を同伴させて放出することを回避し、冷気の利用率を高めることができる。
【0039】
11、本発明に係る技術案では、また、低圧保冷媒体を冷やして循環させて冷気発生装置に導入して冷却する予冷ステップと、予冷済みの保冷媒体を冷気発生装置に循環させて、次に人体のターゲット組織に導入し、保冷媒体にターゲット組織と冷気を交換させ、ターゲット組織を降温して冷凍アブレーションするアブレーションステップと、ターゲット組織と冷気を交換した保冷媒体を人体から排出し、貯蔵タンクに送る回収ステップと、人体への降温保冷媒体の導入を停止し、ターゲット組織を昇温する復温ステップと、を含む冷凍アブレーション方法を含む。上記ステップでは、予冷ステップを有するため、保冷媒体が予冷されてより低温になり、このように、アブレーション段階の冷凍過程において初期温度がさらに低くなり、このため、最終温度がより低くなる。保冷媒体を直接冷凍して人体に導入するという従来技術の方式に比べて、本方法における保冷媒体は、冷凍アブレーションに必要な低温に到達するのがより簡単である。
【0040】
12、本発明に係る冷凍アブレーション方法では、回収ステップにおいて、ターゲット組織と冷気を交換した保冷媒体を人体から排出し、保冷媒体に残存している冷気を冷気発生装置に導入していない保冷媒体と冷気を交換させることにより、冷気発生装置に導入していない保冷媒体を冷気発生装置に送る前に降温する。上記ステップでは、媒体回収配管内の保冷媒体に残存している冷気を再利用することができ、冷気の利用効率を高め、冷気発生装置の電力負荷を低減させることができる。
【0041】
13、本発明に係る冷凍アブレーション方法では、予冷段階において一部の冷気を貯蔵し、この部分の冷気を人体から排出した保冷媒体に送り、このような人体から排出した保冷媒体を降温する。上記ステップによれば、予め貯蔵していたこの冷気を媒体回収配管に送ると、保冷媒体の温度を低下させることができ、さらに回収ステップで排出した保冷媒体に残存している冷気を用いて、供給されていない保冷媒体を降温する過程における温度差を大きくし、両方の冷気交換速度を高め、人体に供給されていない保冷媒体の温度をより低くし、冷気発生装置による冷凍で冷凍アブレーションに必要な温度に到達することを容易にする。
【0042】
以上のように、本発明に係る冷凍アブレーション装置及び冷凍アブレーション方法は、危険性が低く、簡便に操作でき、簡便に使用でき、また、冷気の利用効率が高く、温度制御精度が高いなどの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、具体的な実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明するが、勿論、以下の説明における図面は本発明の実施形態の一部に過ぎず、当業者にとって、創造的な努力をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】本発明の実施例1に係る冷凍アブレーション装置の構造模式図である。
図2図1に示す冷凍アブレーション装置の予冷段階の保冷媒体の流動方向の模式図である。
図3図1に示す冷凍アブレーション装置の冷凍アブレーション段階の保冷媒体の流動方向の模式図である。
図4図1に示す冷凍アブレーション装置の復温段階の保冷媒体の流動方向の模式図である。
図5】本発明の実施例3に係る冷凍アブレーション方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照しながら本発明の技術案を明確かつ完全に説明するが、勿論、説明する実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な努力をせずに得るすべてのほかの実施例は、本発明の特許範囲に属する。
【0045】
なお、本発明の説明において、用語「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内」、「外」などにより示される方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本発明の説明し易さ、及び説明の簡素化のために過ぎず、係る装置又は構成要素が必ず特定の方位を有したり、特定の方位で構造又は操作されたりすることを指示又は示唆するものではなく、したがって、本発明を制限するものとして理解できない。さらに、用語「第1」、「第2」、「第3」は説明の目的のみで使用されており、相対重要性を指示又は示唆するものとして理解できない。
【0046】
なお、本発明の説明において、特に明確な規定や限定がない限り、用語「取り付け」、「連結」、「接続」は広義に理解すべきであり、たとえば、固定して接続してもよく、取り外し可能に接続してもよく、一体に接続してもよい。機械的に接続してもよく、電気的に接続してもよい。直接連結してもよく、中間部材を介して間接的に連結してもよく、2つの構成要素の内部が連通してもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本発明での上記用語の具体的な意味を理解できる。
【0047】
さらに、以下で説明する本発明のさまざまな実施形態に係る技術的特徴は、互いに矛盾しない限り、相互に組み合わせることができる。
【0048】
実施例1
図1図4は、本発明の実施例1を示しており、本実施例は、冷凍アブレーション装置を提供し、保冷媒体が流通しており、人体組織を接触させて冷凍アブレーションするのに適する冷凍バルーン8と、冷凍バルーン8に接続され、媒体供給端と媒体排出端を有し、冷凍バルーン8に保冷媒体を供給・排出するのに適するカテーテル7と、低圧媒体である保冷媒体を貯蔵する媒体貯蔵タンク1と、一端が媒体貯蔵タンク1に連通し、他端がカテーテル7の給液端に連通する媒体供給配管2と、一端が媒体貯蔵タンク1に連通し、他端がカテーテル7の排液端に連通する媒体回収配管3と、媒体供給配管2に直列され、媒体供給配管2内の保冷媒体を冷凍して熱交換するのに適する冷却ユニットと、を備える。
【0049】
冷凍アブレーション術を行う過程において、保冷媒体は以下の経路に従って流動する。保冷媒体は、媒体供給配管2に沿って媒体貯蔵タンク1から流出した後、冷却ユニットを経て、温度が下がり、次に、カテーテル7の媒体供給端に入り、冷凍バルーン8内に流れてバルーンを介してターゲット組織と接触し、その後、カテーテル7の媒体排出端から媒体回収配管3に流れ、最後に、媒体貯蔵タンク1に戻り、このように、1つのサイクルは完了する。上記過程では、従来の高圧気体を保冷媒体に変更して、保冷媒体を直接降温して冷凍することにより、高圧気体に比べて爆発しにくいので、冷凍アブレーション装置の使用時の危険性を効果的に低下させることができ、また、低圧保冷媒体を循環的に利用できるため、使用中に高圧気体を補充する必要がなく、それによって使用の利便性が高まる。また、低圧保冷媒体の降温方式が単一であり、冷却ユニットだけにより降温するので、その降温過程が高圧気体絞りによる降温方式よりも制御されやすくなり、このため、その操作し難さを効果的に低減させ、執刀医は専門技術者なしで手術全体を行うことができる。
【0050】
冷却ユニットの特定の実施形態として、冷却ユニットは、冷気発生装置4、第1の冷気交換手段5、及び第2の冷気交換手段6を備える。冷気発生装置4は冷気を供給することに用いられ、第1の冷気交換手段5は、媒体供給配管2に取り付けられ、前記冷気発生装置4によって冷気を供給され、その内部を流れる保冷媒体を冷凍して熱交換を行い、第2の冷気交換手段6は、前記媒体供給配管2に取り付けられた熱流体通路と前記媒体回収配管3に取り付けられた冷流体通路とを有し、前記冷流体通路と前記熱流体通路との間で冷気交換が発生し、前記熱流体通路内を流れる保冷媒体を予冷し、前記熱流体通路は前記媒体貯蔵タンク1と前記第1の冷気交換手段5との間に接続される。
【0051】
上記冷却ユニットが冷凍アブレーションに関与するときに、媒体供給配管2、媒体回収配管3、冷凍アブレーションシステムのカテーテル7、及び冷凍バルーン8を利用して保冷媒体を循環的に流動させ、流動中、冷気発生装置4で生じた冷気が第1の冷気交換手段5によって媒体供給配管2に送られ、カテーテル7を介して人体に送られてターゲット組織を冷凍アブレーションし、ターゲット組織と冷気交換を行った保冷媒体が、次に、カテーテル7から媒体回収配管3に流れ、このとき、保冷媒体には冷気の一部が残存しており、次いで、保冷媒体が媒体回収配管3を流れるときに、第2の冷気交換手段6の存在により、保冷媒体に残存している冷気が、第2の冷気交換手段6によって媒体供給配管2内の保冷媒体に伝導され、ここでの保冷媒体を予め降温しておく。
【0052】
上記過程において、第2の冷気交換手段6が、媒体供給配管2において第1の冷気交換手段5よりも上流部にあるので、ここでの媒体供給配管2内の保冷媒体の温度が媒体回収配管3内の温度よりも高く、このため、冷気が媒体回収配管3から媒体供給配管2に伝達できる。上記過程により、媒体回収配管3内の保冷媒体に残存している冷気で保冷媒体が予め降温しており、第1の冷気交換手段5に供給されるときの保冷媒体の初期温度が下がり、このように、冷気交換量が同じ場合、このように予め降温された保冷媒体の方はより低温になり、このように低圧媒体を直接冷凍する冷凍アブレーション方式は、冷凍アブレーションに必要な温度を満たす可能性が高く、また、冷気の利用効率が高まる。
【0053】
具体的には、本実施例における冷気発生装置4は、-120℃以下の冷源を供給し得るミニ超低温冷凍機であり、パルス管、スターリング、混合作動媒体絞り、熱音響などの形態としてもよく、その数量が1台以上であり、複数台を組み合わせて作動する場合、組み合わせ方式として直列又は並列としてもよい。本実施例における保冷媒体は、低凝固点の媒体、たとえば無水エタノールである。
【0054】
保冷媒体が実現し得る最低温度をさらに低下させるために、媒体供給配管2と媒体回収配管3に連通し、媒体供給配管2と媒体回収配管3を、媒体貯蔵タンク1と第1の冷気交換手段5を直列する予冷回路とするバイパス配管9をさらに備え、且つ、前記バイパス配管9と媒体供給配管2は第1の三方弁10を介して連通する。
【0055】
バイパス配管9を利用して、保冷剤を、人体に導入して冷凍アブレーションに用いる前に予冷することができ、予冷段階では、保冷媒体が、媒体貯蔵タンク1から流出した後、媒体供給配管2、第1の冷気交換手段5、バイパス配管9、及び媒体回収配管3を順次流れ、最後に媒体貯蔵タンク1に戻る。予冷した保冷媒体は、温度が下がり、冷凍アブレーション段階に入るときの初期温度がさらに低下し、次に、第1の冷気交換手段5により降温されると、より容易に冷凍アブレーションに必要な低温になる。したがって、このようにすると、この冷凍アブレーション装置の保冷媒体が冷凍アブレーションに必要な温度になる可能性をさらに高める。
【0056】
冷凍アブレーション装置の1つの改良実施形態として、媒体回収配管3に取り付けられ、バイパス配管9を介して第1の冷気交換手段5に連通し、第1の冷気交換手段5から流出した冷気を貯蔵するのに適する蓄冷手段11をさらに備える。本実施例では、蓄冷手段11は、具体的には、高比熱容の蓄冷媒体が充填されているボックス体であり、媒体回収配管3は蓄冷手段11を貫通しており、配管の側壁をもって蓄冷手段11内の蓄冷媒体と冷気交換を行う。
【0057】
予冷段階では、蓄冷手段11は保冷媒体からの冷気の一部を貯蔵し、このように貯蔵した冷気が、冷凍アブレーション段階の開始後に、人体から流出した保冷媒体を予め降温することで、第2の冷気交換手段6において冷流体通路と熱流体通路とでの温度の差を増大し、第2の冷気交換手段6での冷気交換速度を高め、媒体供給配管2内の保冷媒体の温度をさらに低下させ、このように予め降温された保冷媒体が、第1の冷気交換手段5により最終的に降温すると、より低い温度になる。したがって、このようにすると、本冷凍アブレーション装置が冷凍アブレーションに必要な低温になることをさらに確保し、また、冷気の利用効率をさらに向上させ、冷気の無駄を減少させる。
【0058】
冷気損失を低減させるために、外部との熱量の伝導を低減又は遮断するのに適する断熱室13を有し、前記第1の冷気交換手段5、第2の冷気交換手段6、蓄冷手段11、及び冷気発生装置4の冷気出力端が断熱室13内に配置される断熱手段12をさらに備える。断熱手段12によれば、冷気交換中の冷気の損失を回避するとともに、蓄冷手段11の保温効果がより良好であり、蓄冷手段11の冷気貯蔵過程における冷気の損失を回避する。
【0059】
具体的には、前記断熱手段12はボックス体であり、断熱室13に連通している真空吸引手段14が装着されている。真空状態に近い断熱室13は、冷気の損失速度をさらに低下させ、冷凍アブレーション装置の冷気の利用効率をさらに向上させる。真空吸引手段14は、具体的には、小型真空ポンプである。
【0060】
断熱手段の別の代替実施形態として、前記断熱手段12はボックス体であり、前記断熱室13内には断熱材が充填されており、ここで、断熱材はポリウレタン発泡材やエアロゲルなどの断熱材を用いることができる。
【0061】
冷凍させたターゲット組織を復温する必要があるという冷凍アブレーション術のニーズを満たすために、本実施例では、前記貯蔵タンク中の保冷媒体を加熱して冷凍アブレーション装置のカテーテル7の媒体供給端に送るための復温回路をさらに備える。冷凍アブレーション術では、冷凍させたターゲット組織を復温する必要があり、理想的な復温プロセスは冷凍アブレーション術の手術効果を高めることができ、そして、術後の合併症の発生の確率を下げる。本発明に係る復温回路は、保冷媒体を加熱して、カテーテル7を介してターゲット組織に送ることができ、このように個別に設けられた復温回路は、冷凍アブレーション術における復温に対応できるだけでなく、復温の温度、進度及び時間をより正確に制御することに非常に役に立ち、それにより、手術の治癒率を向上させ、術後の合併症を減らす。
【0062】
具体的には、前記復温回路は、昇温手段16が直列されており、媒体供給端が第2の三方弁17を介して前記熱流体通路の入り口に入った上流部に連結されている復温管15を備える。復温管15と媒体供給配管2の第2の冷気交換手段6の上流部とを連結させると、復温管15、第1の冷気交換手段5及び第2の冷気交換手段6が並列され、このとき、保冷剤の加熱用配管と降温用配管がそれぞれ独立している。したがって、第1の冷気交換手段5と第2の冷気交換手段6に残留している冷気が、復温段階で保冷剤の昇温への干渉を回避し、復温過程に対する干渉の要素を減らし、復温過程をより容易に制御することができる。
【0063】
上記復温回路の1つの代替実施形態として、前記復温回路は、媒体供給端が第2の三方弁17を介して、媒体供給配管2に取り付けられ前記第1の冷気交換手段5に入っていない一側に連結されている復温管15を備える。この代替実施形態では、復温回路には昇温手段が直列されておらず、冷却されない保冷媒体のみをカテーテルに導入して復温過程に用い、人体自体の熱を利用して復温する。このようにすると、ターゲット組織の昇温をより優しくし、冷凍アブレーション術による健康な組織への損傷を低減させる。
【0064】
復温回路のさらなる改良として、前記復温回路は、前記冷凍アブレーション装置のカテーテル7の媒体排出端と媒体貯蔵タンク1に連通している回収口とを連通させるための復温還流配管をさらに備える。個別に設けられた復温還流配管は、復温過程を、媒体貯蔵タンク1、復温管15、冷凍アブレーション装置、復温還流配管からなる単独した復温回路とすることができ、それにより、復温過程における干渉の要素をさらに減らし、復温プロセスをより正確に制御できるようにする。
【0065】
具体的には、復温還流配管は、両端が媒体回収配管3に連通し、第2の冷気交換手段6に並列され、媒体供給端が第3の三方弁19を介して媒体供給配管2に連結されている復温還流管18を備える。さらに、前記復温還流管18は断熱手段12の外部に配置される。復温還流管18を断熱手段12の外部に設けることにより、復温還流管18が、復温済みの保冷媒体を送るときに蓄冷手段11若しくは第2の冷気交換手段6内の冷気を持ち去ることを回避し、冷気の利用率を高めることができる。
【0066】
保冷媒体を順調に循環できるように、前記媒体供給配管2又は前記媒体回収配管3には、保冷媒体の流動のための動力を供給するのに適するポンピング装置20が直列されている。
【0067】
本実施例に係る冷凍アブレーション装置は操作手段をさらに備える。操作手段は、手柄と至動器を備え、カテーテル7を操作してアブレーション対象組織に送達することに用いられる。冷凍アブレーション術を行うときに、カテーテル7は、低温保冷媒体を送る管路であり、一定の靭性を有し、熱伝導率が小さく、生体適合性を有する材料で製造され、その内部には、それぞれ保冷媒体の供給排出チャンネル、機能通路及び隔離キャビティである複数のチャンネルを有する。保冷媒体の供給排出チャンネルは、供給排出する流体を断熱して、熱短絡を避けるように、両側に分布している。機能通路は、カテーテル7の中心にあり、センサやガイドワイヤーなどの機能部材を配線することに用いられ、隔離キャビティは、保冷媒体チャンネルの両端に分布しており、供給排出流体の熱交換をさらに減らすことに用いられる。カテーテル7の外部には断熱材料が被覆され、それにより、カテーテル7内の保冷媒体と外部の人体組織との熱伝導を低減させ、一方では、保冷媒体からの熱放散を低下させ、他方では、カテーテル7の外壁面の温度が低すぎることによる組織の凍結を防止する。冷凍バルーン8は、ターゲット組織を冷凍アブレーションすることに用いられ、その内部には媒体入口と媒体出口を有し、媒体入口がカテーテル7の供給チャンネルに連結され、媒体出口がカテーテル7の排出チャンネルに連結されている。バルーンが組織と接触すると、保冷媒体はバルーンの壁を介して組織と熱交換を行う。
【0068】
実施例2
図5は、本発明に係る実施例2を示し、本実施例は、冷凍アブレーション方法を提供し、本方法では、低圧媒体である保冷媒体を冷凍して人体に直接導入し、人体のターゲット組織を冷凍アブレーションし、具体的には、
低圧保冷媒体を冷やして循環させて冷気発生装置4に導入して冷却する予冷ステップと、
予冷済みの保冷媒体を冷気発生装置4に循環させて、次に、人体のターゲット組織に導入し、保冷媒体にターゲット組織と冷気を交換させ、ターゲット組織を降温するした後、ターゲット組織に冷凍アブレーションを行うアブレーションステップと、
ターゲット組織と冷気を交換した保冷媒体を人体から排出し、媒体貯蔵タンクに送る回収ステップと、
人体への降温保冷媒体の導入を停止し、ターゲット組織を昇温する復温ステップと、を含む。
【0069】
上記ステップでは、予冷ステップを有するため、保冷媒体が予冷されてより低温になり、このように、アブレーション段階の冷凍過程において初期温度がさらに低くなり、このため、最終温度がより低くなる。保冷媒体を直接冷凍して人体に導入するという従来技術の方式に比べて、本方法における保冷媒体は、冷凍アブレーションに必要な低温に到達するのがより簡単である。
【0070】
回収ステップにおいて、ターゲット組織と冷気を交換した保冷媒体を人体から排出し、保冷媒体に残存している冷気を冷気発生装置4に導入していない保冷媒体と冷気を交換させることにより、冷気発生装置4に導入していない保冷媒体を冷気発生装置4に送る前に降温する。上記ステップでは、媒体回収配管3内の保冷媒体に残存している冷気を再利用することができ、冷気の利用効率を高め、冷気発生装置4の電力負荷を低減させることができる。
【0071】
予冷段階において一部の冷気を貯蔵し、この部分の冷気を人体から排出した保冷媒体に送り、このような人体から排出した保冷媒体を降温する。上記ステップによれば、予め貯蔵していたこの冷気を媒体回収配管3に送ると、保冷媒体の温度を低下させることができ、さらに回収ステップで排出した保冷媒体に残存している冷気を用いて、供給されていない保冷媒体を降温する過程における温度差を大きくし、両方の冷気交換速度を高め、人体に供給されていない保冷媒体の温度をより低くし、冷気発生装置4による冷凍で冷凍アブレーションに必要な温度に到達することを容易にする。
【0072】
復温ステップの一特定実施形態として、復温ステップでは、保冷媒体を、循環させて昇温手段(16)を通過させ、保冷媒体を昇温し、次に、昇温した保冷媒体を人体のターゲット組織に導入し、保冷媒体がターゲット組織と熱交換を行うようにすることで、降温したターゲット組織を昇温する。
【0073】
上記復温ステップの代替実施形態として、復温ステップでは、冷凍されていない保冷媒体を人体に導入することで、ターゲット組織が冷凍されていない保冷媒体と熱交換して昇温するようにしてもよい。
【0074】
実施例1に記載の冷凍アブレーション装置と組み合わせると、本実施例の冷凍アブレーション方法の具体的な過程は、以下のとおりである。
【0075】
予冷段階
図2に示すように、冷気発生装置4とポンピング装置20を起動させ、保冷媒体が以下の手順に従って流動するように、3つの三方弁を調整する。常温保冷媒体が媒体貯蔵タンク1から流出した後、流量計、ポンピング装置20、流量調整弁を経て断熱手段12に入り、第2の冷気交換手段6を経て還流している保冷媒体と熱交換して予冷された後、第1の冷気交換手段5に入り冷却され、バイパス配管9を流れて蓄冷手段11に入り、冷気の一部を蓄冷手段11に保存し、次に、第2の冷気交換手段6に還流して媒体貯蔵タンク1から流出した保冷媒体を予冷し、最後に断熱手段12から流出し、最終的には、媒体貯蔵タンク1に戻る。
【0076】
予冷循環を約20分間行うと、保冷媒体は-80~-100℃に降温する。
【0077】
アブレーション段階
図3に示すように、予冷完了後、保冷媒体が下記過程に従って流動するように、3つの三方弁を調整する。保冷媒体が、流量計、ポンピング装置20、流量調整弁を経て断熱手段12に入り、第2の冷気交換手段6を経て還流している保冷媒体と熱交換した後、第1の冷気交換手段5に入って冷却され、第1の冷気交換手段5により冷却された後、断熱手段12から流出してカテーテル7に入り、次に、冷凍バルーン8に入ってアブレーションを行い、その後、カテーテル7から流出して、断熱手段12に戻り、蓄冷手段11を流れ、このとき、保冷媒体の温度が蓄冷手段11内の蓄熱媒体の温度よりも高いので、保冷媒体は、蓄熱媒体に放熱して温度が下がり、次に、第2の冷気交換手段6に入り、媒体貯蔵タンク1から流出した保冷媒体に対して冷気交換を行い、その後、断熱手段12から流出して媒体貯蔵タンク1に戻る。
【0078】
復温段階
図4に示すように、冷凍アブレーション完了後、保冷媒体が下記手順に従って流動するように、3つの三方弁を調整する。保冷媒体が、まず、媒体貯蔵タンク1から流出し、流量計、ポンピング装置20、及び流量調整弁を経て昇温手段16に入り、昇温手段16により37℃に加熱され、次に、復温管15を介してカテーテル7に入り、アブレーション済みの組織を加熱して復温し、カテーテル7から流出した後、第3の三方弁10を経て、復温還流管18を流れた後、媒体貯蔵タンク1に戻る。
【0079】
勿論、上記実施例は、明確に説明するための例示に過ぎず、実施形態を限定するものではない。当業者にとって、上記の説明に基づいてさまざまな形態の変化や変更を行うことができる。ここで、すべての実施形態を挙げることは必要ではなく、また、不可能である。これに由来する明らかな変化や変更も本発明の特許範囲に属する。
【符号の説明】
【0080】
1-媒体貯蔵タンク、2-媒体供給配管、3-媒体回収配管、4-冷気発生装置、5-第1の冷気交換手段、6-第2の冷気交換手段、7-カテーテル、8-冷凍バルーン、9-バイパス配管、10-第1の三方弁、11-蓄冷手段、12-断熱手段、13-断熱室、14-真空吸引手段、15-復温管、16-昇温手段、17-第2の三方弁、18-復温還流管、19-第3の三方弁、20-ポンピング装置、21-流量計、22-温度計、23-逆止め弁、24-散熱器。
図1
図2
図3
図4
図5