(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】帯鋸装置
(51)【国際特許分類】
B27B 13/00 20060101AFI20220614BHJP
B23D 55/00 20060101ALI20220614BHJP
B23D 55/06 20060101ALI20220614BHJP
B27B 13/14 20060101ALI20220614BHJP
B27B 13/16 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B27B13/00 D
B23D55/00 A
B23D55/06
B27B13/14
B27B13/16 Z
(21)【出願番号】P 2018045717
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(73)【特許権者】
【識別番号】501042569
【氏名又は名称】有限会社岩▲崎▼目立加工所
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】河村 進
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 義弘
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-073301(JP,U)
【文献】特開昭62-157717(JP,A)
【文献】特開2003-094289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0126549(US,A1)
【文献】米国特許第04437367(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 13/00
B23D 55/00
B23D 55/06
B27B 13/14
B27B 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータからの動力が動力伝達機構を介して伝えられる駆動側プーリと、従動側プーリと、前記駆動側プーリと前記従動側プーリとの間に巻き掛けられる環状の帯鋸刃とを有する帯鋸装置であって、
前記駆動側プーリの回転速度を検出するための駆動側プーリ用回転速度センサと、
前記帯鋸刃の速度を検出するための帯鋸刃速度センサと、
前記駆動側プーリ用回転速度センサによる検出結果に基づいて算出した第1帯鋸刃推定速度と、前記帯鋸刃速度センサで検出した実測帯鋸刃速度とを比較することで、帯鋸刃のスリップ量を算出するスリップ量算出部と
、
前記スリップ量算出部で算出したスリップ量の値が所定の閾値を超えた場合に異常状態であると判定する異常判定部と、
無負荷状態での前記速度センサの少なくとも1つについての検出結果を予め取得して基準値として記憶させた記憶部とを備え
、
前記異常判定部は、前記速度センサの少なくとも1つの検出結果を前記基準値と比較して、予め定めた所定の差分値以上の差分が生じている場合に異常状態であると判定するようにした
ことを特徴とする帯鋸装置。
【請求項2】
前記従動側プーリの回転速度を検出するための従動側プーリ用回転速度センサを備え、
前記スリップ量算出部は、前記従動側プーリ用回転速度センサによる検出結果に基づいて算出した第2帯鋸刃推定速度と、前記第1帯鋸刃推定速度及び/又は前記実測帯鋸刃速度との比較からも帯鋸刃のスリップ量を算出するようにした
請求項1記載の帯鋸装置。
【請求項3】
前記異常判定部において異常と判定された場合に、被削材の送り又は被削材を乗せた送材車の送りを減速又は停止させる制御を行う制御部を備える
請求項1
又は2の何れかに記載の帯鋸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリップ量を検出可能な帯鋸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータからの動力が動力伝達機構を介して伝えられる駆動側プーリと、従動側プーリと、駆動側プーリと従動側プーリとの間に巻き掛けられる環状の帯鋸刃とで構成され、駆動側プーリの駆動力によって回転する帯鋸刃によって対象ワークを切断する帯鋸装置が存在する。
【0003】
このような帯鋸装置は、スプロケットの歯と噛合して回転するチェーンソーの刃の場合とは異なり、2つのプーリの間での張力によって保持されている構成であるため、プーリと帯鋸刃との間でスリップが生じることがある。スリップが多発するとワークの切断に支障を来してしまうため、スリップの生じない駆動が理想的であるが、そのためにはスリップが生じる条件を正確に把握する必要がある。
【0004】
帯鋸装置におけるスリップを検出するための技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。この特許文献1では、駆動側プーリと従動側プーリの両方の回転速度を検出することで、駆動モータの回転速度低下によるプーリの回転数低下をスリップと誤検出することを防止するようにした帯鋸刃のスリップ検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、駆動モータの回転速度低下によるプーリの回転数低下をスリップと誤検出することは防止することができるが、駆動側プーリと従動側プーリの両方で同時にスリップが発生した場合についてはスリップを検出することができない等、全てのスリップを検出することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、高精度に帯鋸刃のスリップを検出することが可能な帯鋸装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る帯鋸装置は、モータからの動力が動力伝達機構を介して伝えられる駆動側プーリと、従動側プーリと、前記駆動側プーリと前記従動側プーリとの間に巻き掛けられる環状の帯鋸刃とを有する帯鋸装置であって、前記駆動側プーリの回転速度を検出するための駆動側プーリ用回転速度センサと、前記帯鋸刃の速度を検出するための帯鋸刃速度センサと、前記駆動側プーリ用回転速度センサによる検出結果に基づいて算出した第1帯鋸刃推定速度と、前記帯鋸刃速度センサで検出した実測帯鋸刃速度とを比較することで、帯鋸刃のスリップ量を算出するスリップ量算出部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る帯鋸装置は、前記従動側プーリの回転速度を検出するための従動側プーリ用回転速度センサを備え、前記スリップ量算出部は、前記従動側プーリ用回転速度センサによる検出結果に基づいて算出した第2帯鋸刃推定速度と、前記第1帯鋸刃推定速度及び/又は前記実測帯鋸刃速度との比較からも帯鋸刃のスリップ量を算出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る帯鋸装置は、前記スリップ量算出部で算出したスリップ量の値が所定の閾値を超えた場合に異常状態であると判定する異常判定部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る帯鋸装置は、無負荷状態での前記速度センサの少なくとも1つについての検出結果を予め取得して基準値として記憶させた記憶部を備え、前記異常判定部は、前記速度センサの少なくとも1つの検出結果を前記基準値と比較して、予め定めた所定の差分値以上の差分が生じている場合に異常状態であると判定するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る帯鋸装置は、前記異常判定部において異常と判定された場合に、被削材の送り又は被削材を乗せた送材車の送りを,減速又は停止させる制御を行う制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動側プーリ用回転速度センサによる検出結果に基づいて算出した第1帯鋸刃推定速度と、帯鋸刃速度センサで検出した実測帯鋸刃速度とを比較することで、帯鋸刃のスリップ量を算出するようにしたので、高精度に帯鋸刃のスリップを検出することが可能となる。スリップの発生を正確に検出することにより、帯鋸刃のスクイ角及び帯鋸装置の張力などの設定事項に検出結果を利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る帯鋸装置10の構成を表した説明図である。
【
図2】本発明に係る帯鋸装置10の検出装置30の構成を表したブロック図である。
【
図3】帯鋸刃の仕様の一例及び実験条件を表した説明図である。
【
図4】実験時のモータの消費電力を表したグラフである。
【
図5】実験時の駆動側プーリ11の回転速度から推定した第1帯鋸刃推定速度を表したグラフである。
【
図6】実験時の従動側プーリ12の回転速度から推定した第2帯鋸刃推定速度を表したグラフである。
【
図7】実験時の帯鋸刃速度の実測値を表したグラフである。
【
図8】実験時の第1帯鋸刃推定速度と第2帯鋸刃推定速度から求めた延べスリップ量を表したグラフである。
【
図9】実験時の第1帯鋸刃推定速度と帯鋸刃速度の実測値から求めた延べスリップ量を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、第1の実施の形態に係る帯鋸装置の例について説明する。
図1は、本発明に係る帯鋸装置10の構成を表した説明図である。
図1に示すように、帯鋸装置10は、駆動側プーリ11(下プーリともいう)と、従動側プーリ12(上プーリともいう)と、駆動側プーリ11と従動側プーリ12との間に環状の帯鋸刃13が所定のテンションが掛かった状態で巻き掛けられている。駆動側プーリ11及び従動側プーリ12は円筒形状からなり、円筒箇所に対して帯鋸刃13が巻き掛けられる。駆動側プーリ11には、動力伝達機構14を介してモータ15からの動力が伝達されて回転動力を得る。
図1の例では、動力伝達機構としてVベルトを適用している。モータ15に供給される電源については、電流・電圧センサ16において電流値及び電圧値を検出する。
【0016】
また、
図1に示すように、駆動側プーリ用回転速度センサ17により、駆動側プーリ11の回転軸と平行な方向から駆動側プーリ11の回転速度を検出する。同様に、従動側プーリ用回転速度センサ18により、従動側プーリ12の回転軸と平行な方向から従動側プーリ12の回転速度を検出する。また、帯鋸刃速度センサ19により、帯鋸刃13の帯に対して垂直な方向から帯鋸刃13の速度を検出する。これらの駆動側プーリ用回転速度センサ17、従動側プーリ用回転速度センサ18、及び、帯鋸刃速度センサ19は、それぞれ速度を検出可能であればどのような構成であってもよいが、例えば、レーザセンサによって検出対象からのレーザ光の反射或いは通過を検出することで検出対象の回転速度を検出するロータリーエンコーダであってもよい。駆動側プーリ用回転速度センサ17及び従動側プーリ用回転速度センサ18は、駆動側プーリ11と従動側プーリ12のそれぞれに形成されているスポーク部分と、スポークとスポークの間の凹部とで反射光が異なることを利用して所定時間のパルス数に基づいて回転速度を検出する。帯鋸刃速度センサ19は、帯鋸刃13の帯部分に所定間隔で開けられた孔20部分にレーザ光を照射し、レーザ光が孔20を通過した場合に受信側で通過光を検出する。帯鋸刃の速度センサとして、帯鋸刃13の帯部分に設けた刻印をカウントする方法、帯鋸歯が通過したことを検出する方法であってもよい。これらの通過光を検出する時間間隔から帯鋸刃13の速度を検出する。
【0017】
帯鋸装置10で切削する場合、作業用テーブル21に送材長さの計測のためのスケール22を設け、作業用テーブル21の上に送材車23を介して送材テーブル24を載置し、その送材テーブル24の上に切削対象としての被削材25を載置する。被削材25が載置された送材テーブル24を押し棒26によって押し出して駆動されている帯鋸刃13に接触させて切削を行う。
【0018】
また、帯鋸装置10は、検出装置30を備えている。
図2は、本発明に係る帯鋸装置10の検出装置30の構成を表したブロック図である。この
図2に示すように、検出装置30は、電流情報取得部31と、電圧情報取得部32と、駆動側プーリ回転速度取得部33と、従動側プーリ回転速度取得部34と、帯鋸刃速度取得部35と、スリップ量算出部36と、異常判定部37と、記憶部38とを備えている。
【0019】
電流情報取得部31は、電流・電圧センサ16の検出結果としての電流値を取得する機能を有する。
【0020】
電圧情報取得部32は、電流・電圧センサ16の検出結果としての電圧値を取得する機能を有する。
【0021】
駆動側プーリ回転速度取得部33は、駆動側プーリ用回転速度センサ17の検出結果としての駆動側プーリの回転速度を取得する機能を有する。
【0022】
従動側プーリ回転速度取得部34は、従動側プーリ用回転速度センサ18の検出結果としての従動側プーリの回転速度を取得する機能を有する。
【0023】
帯鋸刃速度取得部35は、帯鋸刃速度センサ19の検出結果としての帯鋸刃速度を取得する機能を有する。
【0024】
スリップ量算出部36は、駆動側プーリ回転速度取得部33で取得した駆動側プーリ11の回転速度に基づいて算出した第1帯鋸刃推定速度と、帯鋸刃速度取得部35で取得した実測帯鋸刃速度とを比較することで、帯鋸刃13のスリップ量を算出する機能を有する。また、従動側プーリ回転速度取得部34で取得した従動側プーリ12の回転速度に基づいて算出した第2帯鋸刃推定速度と、実測帯鋸刃速度とを比較することで、帯鋸刃13のスリップ量を算出する機能も有している。また、第1帯鋸刃推定速度と第2帯鋸刃推定速度とを比較することで、帯鋸刃13のスリップ量を算出する機能も有している。
【0025】
異常判定部37は、スリップ量算出部36で算出したスリップ量の値が所定の閾値を超えた場合に異常状態であると判定する機能を有する。また、この異常判定部37は、無負荷状態での各速度センサの少なくとも1つについての検出結果を予め取得して基準値として後述する記憶部38に記憶させておき、速度センサの少なくとも1つの検出結果を基準値と比較して、予め定めた所定の差分値以上の差分が生じている場合に異常状態であると判定する機能も有している。
【0026】
記憶部38は、駆動側プーリ用回転速度センサ17、従動側プーリ用回転速度センサ18、及び、帯鋸刃速度センサ19についてそれぞれ予め取得した無負荷状態での検出結果を基準値として記憶させておく機能を有する。また、検出装置30において検出した各種のデータを記憶させておく機能も有している。
【0027】
以上の構成からなる帯鋸装置10について、実験を行った。
図3は、帯鋸刃の仕様の一例及び実験条件を表した説明図である。
図3(a)に示すように、実験を行う帯鋸刃の仕様は、のこ幅102mm、のこ厚0.8mm、ピッチ24.86mm(のこ長さを4550mmとして歯数179で制作)、歯端角55度、あさり幅1.6mm、歯の材質がステライト歯とした。
【0028】
図3(b)には、2つの実験における被削材と切削条件を表している。実験1は、ベイマツ集成材(密度0.56)を用い、長さ1000mm、ひき幅176mm、ひき厚さ25mmとし、送材方法として、作業テーブル21上に送材テーブル24を載せてスケール22に沿って送材する手法を採用した。また、実験2は、杉生材(密度0.50)を用い、長さ1000mm、ひき幅250mm、ひき厚さ25mmとし、送材方法として、作業テーブル21上で送材車23が走行できるようにして、送材車23に送材テーブル24を載せて送材する(スケールの添えなし)手法を採用した。
図4~
図9に示すグラフは、それぞれ実験1及び実験2の結果を表したものである。
【0029】
図4は、実験時のモータの消費電力を表したグラフである。これらは、検出装置30における電流情報取得部31及び電圧情報取得部32で取得した電流値及び電圧値に基づいて算出した電力値を用いている。この
図4からも分かるように、実験1と実験2の何れの場合においても、帯鋸刃13による被削材25の切削が開始されて負荷が加わると消費電力が上昇していることが分かる。また、送材速度が増加するほど消費電力も増加する傾向が見られた。
【0030】
図5は、実験時の駆動側プーリ11の回転速度から推定した第1帯鋸刃推定速度を表したグラフである。
図6は、実験時の従動側プーリ12の回転速度から推定した第2帯鋸刃推定速度を表したグラフである。
図7は、実験時の帯鋸刃速度の実測値を表したグラフである。これら
図5乃至
図7に示すように、帯鋸刃13の実測帯鋸刃速度と、駆動側プーリ11の回転速度から推定した第1帯鋸刃推定速度と、従動側プーリ12の回転速度から推定した第2帯鋸刃推定速度とを得ることができる。
【0031】
図8は、実験時の第1帯鋸刃推定速度と第2帯鋸刃推定速度から求めた延べスリップ量を表したグラフである。この
図8に示す延べスリップ量は、駆動側プーリ11の回転速度と従動側プーリ12の回転速度とに基づいて求めたスリップ量であり、この実験1及び実験2においては、大きなスリップ量は検出しなかった。
【0032】
図9は、実験時の第1帯鋸刃推定速度と実測帯鋸刃速度とから求めた延べスリップ量を表したグラフである。この
図9に示す延べスリップ量は、実測帯鋸刃速度と駆動側プーリ11の回転速度とに基づいて求めたスリップ量であり、実験1の切削長さ300mm~600mmのときにスリップが発生したことが分かる。
図8に示す駆動側プーリ11の回転速度と従動側プーリ12の回転速度とに基づくスリップの検出では発見できなかったスリップの発生を、実測帯鋸刃速度と駆動側プーリ11の回転速度とに基づく検出では発見することができたことが分かる。
【0033】
図9のように、検出装置30のスリップ量算出部36でスリップの発生が確認された場合、そのスリップ量が所定の閾値を超えた場合には、検出装置30の異常判定部37において異常状態であると判定する。異常状態と判定された場合には、アラーム、LEDの点灯など何等かの通知手段によって通知を行うようにしてもよい。
【0034】
また、電流・電圧センサ16、駆動側プーリ用回転速度センサ17、従動側プーリ用回転速度センサ18、及び、帯鋸刃速度センサ19の各センサについて、無負荷状態での検出結果を予め取得して基準値として記憶部38に記憶させておき、異常判定部37において、各センサの検出結果を基準値と比較して、予め定めた所定の差分値以上の差分が生じている場合に異常状態であると判定するようにすることで、スリップが発生していない状況においても異常を検出することができる。この場合にも、アラーム、LEDの点灯など何等かの通知手段によって通知を行うようにしてもよい。
【0035】
以上のように、本発明に係る帯鋸装置10によれば、少なくとも、駆動側プーリ用回転速度センサ17による検出結果に基づいて算出した第1帯鋸刃推定速度と、帯鋸刃速度センサ19で検出した実測帯鋸刃速度とを比較することで、高精度に帯鋸刃13のスリップを検出することが可能となる。スリップの発生を正確に検出することにより、帯鋸刃13のスクイ角及び帯鋸装置10の張力などの設定事項に検出結果を利用することが可能となる。
【0036】
前記第1の実施の形態においては、帯鋸装置10が備える検出装置30のスリップ量算出部36においてスリップの発生を検出して、算出されたスリップ量が所定の閾値を超えていた場合には検出装置30の異常判定部37において異常状態であると判定する構成としていたが、さらに、異常判定部37において異常状態であると判定された場合には、モータ15の出力を低下させる又はモータ15を停止させる制御を行う制御部を備えるようにしてもよい。また、被削材25の送り又は送材車23の送りを電子制御可能な構成とすることも可能であり、そのような構成を採用した状況において、異常判定部37において異常状態であると判定された場合には、被削材25の送り又は送材車23の送りを、減速又は停止させる制御を行う制御部を備えるようにしてもよい。スリップの発生している状況は、摩擦が大きく、摩擦によって熱が生じ、その熱で帯鋸刃13に歪みが生じて挽き曲がりの原因にもなるので、被削材25の送り又は送材車23の送りを,減速又は停止させることで、歪みの発生を防止して曲がりを抑制する効果も得られる。
【符号の説明】
【0037】
10 帯鋸装置
11 駆動側プーリ
12 従動側プーリ
13 帯鋸刃
14 動力伝達機構
15 モータ
16 電流・電圧センサ
17 駆動側プーリ用回転速度センサ
18 従動側プーリ用回転速度センサ
19 帯鋸刃速度センサ
20 孔
21 作業用テーブル
22 スケール
23 送材車
24 送材テーブル
25 被削材
26 押し棒
30 検出装置
31 電流情報取得部
32 電圧情報取得部
33 駆動側プーリ回転速度取得部
34 従動側プーリ回転速度取得部
35 帯鋸刃速度取得部
36 スリップ量算出部
37 異常判定部
38 記憶部