(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】物質検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/39 20060101AFI20220614BHJP
H01S 5/062 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01N21/39
H01S5/062
(21)【出願番号】P 2018562432
(86)(22)【出願日】2018-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2018001428
(87)【国際公開番号】W WO2018135590
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2017007228
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今出 久一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮太
(72)【発明者】
【氏名】井手 義憲
(72)【発明者】
【氏名】川島 久典
(72)【発明者】
【氏名】椎名 達雄
【審査官】大河原 綾乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-268064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0201507(US,A1)
【文献】特開2001-235418(JP,A)
【文献】特開2012-150095(JP,A)
【文献】特開平01-254841(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014215848(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
H01S 5/00 - H01S 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物質を検出するための光を発光する発光部と、
前記発光部の発光を制御する制御部と、
前記発光部が発光し空間を経た光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した信号を処理する演算部と、を備えて前記空間における検出対象物質を検出する物質検出装置であって、
前記制御部は、前記発光部に
、急峻に変化する
一定の振幅の矩形波である電流を入力することで、
前記矩形波の立ち上がり後立下り前の区間において、前記発光部が発光する光の波長に前記検出対象物質の吸収波長及び非吸収波長に亘る変化を与え、前記電流を所定周波数に制御し、
前記演算部は、前記受光部が受光した信号の高調波成分に基づき、前記検出対象物質を検出する物質検出装置。
【請求項2】
検出対象物質を検出するための光を発光する発光部と、
前記発光部の発光を制御する制御部と、
前記発光部が発光し空間を経た光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した信号を処理する演算部と、を備えて前記空間における検出対象物質を検出する物質検出装置であって、
前記制御部は、前記発光部に急峻に変化する電流を入力することで、前記発光部が発光する光の波長に前記検出対象物質の吸収波長及び非吸収波長に亘る変化を与え、前記電流を所定周波数に制御し、
前記演算部は、前記受光部が受光した信号の高調波成分に基づき、前記検出対象物質を検出
し、
前記制御部は、前記発光部への入力電流に応じた前記受信部が受信する信号の立ち上がり後立下り前の区間の後半に前記発光部が発光する光の波長が前記吸収波長を通過する変化をするように前記電流を前記発光部へ入力する物質検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記発光部への入力電流に応じた前記受信部が受信する信号の立ち上がり後立下り前の区間に前記発光部が発光する光の波長が前記吸収波長を通過する変化をするように前記電流を前記発光部へ入力する請求項1に記載の物質検出装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記受光部が受光した信号の、前記所定周波数の奇数倍波信号成分と偶数倍波信号成分との信号成分比に基づき、前記物質の濃度厚み積を算出する請求項1から請求項
3のうちいずれか一に記載の物質検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記電流をデューティ比50%の矩形波とする請求項1から請求項
4のうちいずれか一に記載の物質検出装置。
【請求項6】
前記所定周波数を基準に前記高調波成分を同期検出する位相検波器を備え、
前記位相検波器から前記演算部に前記高調波成分の信号が入力される請求項1から請求項
5のうちいずれか一に記載の物質検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の濃度厚み積を算出するガス測定装置としては、吸収波長と非吸収波長の2波長の受光信号強度の差分を取り濃度厚み積を求める差分吸収法(DIAL,DOAS)によるものと、ガス吸収線を中心に基本波fで変調し、2倍波2fとの受光信号比により濃度厚み積を求める2f検波方式によるものとが挙げられる。
前者は、直接差分による演算で、濃度厚み積を算出する演算処理自体は簡易であり、距離の測定も可能だが、2波長を出射するために、発光周期を遅くする、レーザーダイオードを2個用いるなど複雑な処理、装置構成が必要である。
後者は、微小な信号変化を特定周波数の出力を取り出し演算することにより、高感度に測定が可能で、非常にコンパクトな設計が可能な技術である。しかし濃度厚み積の演算、発光部の駆動制御が難しくなる。
また、両者とも波長を測定対象の吸収波長位置に一定に保つことが非常に難しいほか、レーザーダイオードの出力に依存し、波長が変わるため、測定中のレーザーパワーを一定にすることも難しい。波長は温度と入力電流により決まるため、ハイパワーで所望の波長を出力することにも制限が生じる。
【0003】
特許文献1には、一つのレーザー光源と、OPO(光パラメトリック発振)と、エタロン板とを用いてガスの吸収波長、非吸収波長の2波長のレーザー光を外部へ照射し、反射光をダイクロイックミラーで分光し、それぞれの波長に対応した検出器の出力より測定対象の濃度厚み積を算出する発明が記載さている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明にあっては、レーザー光源が一つで済むものの、OPO、さらにはダイクロイックミラー、エタロンフィルタ、2種類の検出器を用いるなど、全体としては必要な構成部品も多く複雑化する。
【0006】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、比較的簡単な構成で発光、受光が可能であり、発光の出力を一定に保った状態で吸収波長及び非吸収波長に亘り波長を変えて物質を容易に精度よく検出することができる物質検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、検出対象物質を検出するための光を発光する発光部と、
前記発光部の発光を制御する制御部と、
前記発光部が発光し空間を経た光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した信号を処理する演算部と、を備えて前記空間における検出対象物質を検出する物質検出装置であって、
前記制御部は、前記発光部に、急峻に変化する一定の振幅の矩形波である電流を入力することで、前記矩形波の立ち上がり後立下り前の区間において、前記発光部が発光する光の波長に前記検出対象物質の吸収波長及び非吸収波長に亘る変化を与え、前記電流を所定周波数に制御し、
前記演算部は、前記受光部が受光した信号の高調波成分に基づき、前記検出対象物質を検出する物質検出装置である。
請求項2記載の発明は、検出対象物質を検出するための光を発光する発光部と、
前記発光部の発光を制御する制御部と、
前記発光部が発光し空間を経た光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した信号を処理する演算部と、を備えて前記空間における検出対象物質を検出する物質検出装置であって、
前記制御部は、前記発光部に急峻に変化する電流を入力することで、前記発光部が発光す
る光の波長に前記検出対象物質の吸収波長及び非吸収波長に亘る変化を与え、前記電流を所定周波数に制御し、
前記演算部は、前記受光部が受光した信号の高調波成分に基づき、前記検出対象物質を検出し、
前記制御部は、前記発光部への入力電流に応じた前記受信部が受信する信号の立ち上がり後立下り前の区間の後半に前記発光部が発光する光の波長が前記吸収波長を通過する変化をするように前記電流を前記発光部へ入力する物質検出装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記制御部は、前記電流の立ち上がり立下りに応じた前記受信部が受信する信号の立ち上がり後立下り前の区間に前記発光部が発光する光の波長が前記吸収波長を通過する変化をするように前記電流を入力する請求項1に記載の物質検出装置である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記演算部は、前記受光部が受光した信号の、前記所定周波数の奇数倍波信号成分と偶数倍波信号成分との信号成分比に基づき、前記物質の濃度厚み積を算出する請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の物質検出装置である。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記制御部は、前記電流をデューティ比50%の矩形波とする請求項1から請求項4のうちいずれか一に記載の物質検出装置である。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記所定周波数を基準に前記高調波成分を同期検出する位相検波器を備え、
前記位相検波器から前記演算部に前記高調波成分の信号が入力される請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の物質検出装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光部に、矩形波電流等の落差のある2つの値の間で急峻に変化する電流を入力することで、分布帰還型レーザーダイオード(DFB-LD)など発光素子の応答特性を利用して、発光部が発光する光の波長に測定対象ガスの吸収波長及び非吸収波長に亘る変化を与えるので、比較的簡単な構成で発光、受光が可能であり、所定周波数を基準とした高調波成分に基づき物質を容易に精度よく検出することができ、入力電流を一定にすることで発光の出力を一定に保つことができ、これにより発光の出力を一定に保った状態で吸収波長及び非吸収波長に亘り波長を変えて物質を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態においてDFB-LDに入力する矩形波電流の波形図である。
【
図2A】DFB-LDの矩形波電流の入力に対する波長の時間変化を示す一例のグラフであり、入力電流信号の周波数が10kHzのときを示す。
【
図2B】DFB-LDの矩形波電流の入力に対する波長の時間変化を示す一例のグラフであり、入力電流信号の周波数が30kHzのときを示す。
【
図2C】DFB-LDの矩形波電流の入力に対する波長の時間変化を示す一例のグラフであり、入力電流信号の周波数が50kHzのときを示す。
【
図2D】DFB-LDの矩形波電流の入力に対する波長の時間変化を示す一例のグラフであり、入力電流信号の周波数が100kHzのときを示す。
【
図3A】本発明の一実施形態において受光信号を表すグラフで、非検出時の例を示す。
【
図3B】本発明の一実施形態において受光信号を表すグラフで、検出時の例を示す。
【
図4】発光素子の入力電流の変化に対する波長の変化の温度特性を示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態に係るガス測定装置の構成ブロック図である。
【
図6】
図5のガス測定装置における処理フローを示すフローチャートである。
【
図7】本発明の他の一実施形態に係るガス測定装置の構成ブロック図である。
【
図8】
図7のガス測定装置における処理フローを示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態において検出対象ガスの濃度厚み積の信号成分比2f/fに対する特性を示すグラフである。
【
図10A】本発明の一実施形態における入力電流信号の波形と、これに応じた受光部での受光信号の波形を示すグラフであり、温度T1のときを示す。
【
図10B】本発明の一実施形態における入力電流信号の波形と、これに応じた受光部での受光信号の波形を示すグラフであり、温度T2のときを示す。
【
図10C】本発明の一実施形態における入力電流信号の波形と、これに応じた受光部での受光信号の波形を示すグラフであり、温度T3のときを示す。
【
図11A】本発明の一実施形態における入力電流信号の波形と、これに応じた受光部での受光信号の波形を示すグラフであり、入力電流信号の周波数が10kHzのときを示す。
【
図11B】本発明の一実施形態における入力電流信号の波形と、これに応じた受光部での受光信号の波形を示すグラフであり、入力電流信号の周波数が100kHzのときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。本実施形態では、検出対象物質をガスと想定し、濃度厚み積の測定値まで得る。
【0017】
分布帰還型レーザーダイオード(DFB-LD)に急峻な電流変化を加えた際に、発熱量の増加に伴い活性層の屈折率が上昇し、波長が長波長側にμsからmsオーダーで非線形的に変化することが知られている。本発明はその波長変化により、検出対象ガスの吸収波長及び非吸収波長に亘る変化を与える。DFB-LDに急峻な電流変化を加えるため、
図1に示すような矩形波電流を入力する。なお、この矩形波電流の振幅を一定にすることで、発光の出力を一定に保つことができる。この矩形波電流を所定周波数fに制御する。
DFB-LDに
図1の矩形波電流を入力すると、
図2A-2Dに示すようにDFB-LDの出射光の波長が変化する。この波長変化範囲に検出対象ガスの吸収波長λ1があるようにする。
【0018】
このように波長変化するDFB-LDの出射光を、検出対象空間を経て受光すると、
図3A,
図3Bに示すような受光信号が得られる。
図3Aは、検出対象空間に検出対象ガスが無かった場合であり略矩形状の波形となるが、検出対象空間に検出対象ガスがあるとその濃度厚み積に応じて吸収波長の光が吸収されるので
図3Bに示すように1つの矩形部aの天面のそれぞれに負のピークa1が生じる。
負のピークa1に隣接する正のピークa2,a3は、非吸収波長の受光信号であるので、負のピークa1と、正のピークa2又はa3との相対性により検出対象ガスの濃度厚み積を算出可能である。本実施形態では、受光信号の奇数倍波信号成分1fと偶数倍波信号成分2fとの信号成分比2f/fに基づき検出対象ガスの濃度厚み積を算出する。
【0019】
以上のような発光素子の入力電流に急峻な電流変化を加えたときの波長変化の応答特性は、
図4に示すように温度にも依存する。
図4に示すように吸収波長λ1を横切るタイミングが温度によって異なってしまうため、発光素子の温度を一定に保つことが好ましい。
【0020】
図5に本発明による物質検出装置の一例の構成図を示す。
図5に示すように物質検出装置100Aは、検出対象ガスG1を検出するための光(測定光101)を発光する発光部102と、発光部102の発光を制御する制御部103と、発光部102が発光し検出対象空間S1を経た光(反射物R1で反射)を受光する受光部104と、受光部104が受光した信号V1を処理する演算部105と、を備える。
また、物質検出装置100Aは、受光部104の検出値を増幅する増幅器110、増幅器110の出力信号をAD変換するAD変換器112等を備える。
発光部102の発光素子として分布帰還型レーザーダイオード(DFB-LD)を備える。
演算部105は、AD変換器112から、受光部104が受光したガスG1の吸収波長及び非吸収波長に亘る受光信号時系列データを得る。
【0021】
制御部103は、電流制御部113を制御して発光部102に周波数fの矩形波電流を入力することで、発光部102が発光する光の波長に検出対象ガスG1の吸収波長及び非吸収波長に亘る変化を与える。また制御部103は、周波数fの矩形波電流のデューティ比を50%に制御する。矩形波電流のデューティ比を50%にすることで、理論上駆動周期fの奇数波成分のみを信号成分として持つ波形となり、ガス吸収による波形変化は全数波成分を持つため、変化を捉えやすい。
その間、制御部103は温度制御部114を制御して発光部102の温度を一定に保つ。温度制御部114にペルチェ素子などの温調素子が含まれる。制御部103および演算部105は、ハードディスク等の記憶媒体に記憶されたプログラムをCPU等のプロセッサーが実行することによって実現される。
【0022】
図6のフローチャートに示すように物質検出装置100Aにおいて演算部105は、AD変換器112から所定サンプリングレートで所定数の受光信号時系列データを得る。(S11)。
次に、演算部105は、受光信号時系列データを高速フーリエ変換処理して(S12)、1f信号成分と、2f信号成分を得て(S13)、その信号成分比2f/fに基づき濃度厚み積を算出する(S14)。
【0023】
また、
図7に示す物質検出装置100Bにあっては、1f信号成分と、2f信号成分の取得は、位相検波器111によって行われる。すなわち、
図8のフローチャートに示すように位相検波器111が周波数fを基準に高調波成分(1f、2f)を同期検出し(S21)、位相検波器111から演算部105に高調波成分(1f、2f)の信号が入力され(S22)、その信号成分比2f/fに基づき演算部105が濃度厚み積を算出する(S23)。
【0024】
濃度厚み積の算出(S14,S23)は、例えば次のように行う。
検出対象ガスの濃度厚み積の信号成分比2f/fに対する特性は、実験等により
図9に示すように得られる。
図9に示すように線形的な変化を示す。そこで、濃度換算式を作成し、これに信号成分比2f/fを入力して濃度厚み積を算出する。
ここでは、
図9のグラフ(実線)を一次関数(破線)で近似する。
図7の一次関数(破線)の傾きa、縦軸のオフセットbとして、(濃度厚み積)=(2f/f)×a+b を濃度換算式とする。
【0025】
図10A-10C及び
図11A-11Bに、発光部102への入力電流信号の波形と、これに応じた受光部104での受光信号の波形を示す。
図10A-10C及び
図11A-11Bに示すように制御部103は、発光部102への入力電流に応じて受信部104が受信する信号の立ち上がり後立下り前の区間Taに発光部102が発光する光の波長が検出対象ガスの吸収波長λ1を通過する変化をするように電流を入力する。すなわち、発光部102が発光する光の波長が吸収波長λ1となった時点t(λ1)が区間Taにあるようにする。発光部102が発光する光の波長が吸収波長λ1と等しくなった時点t(λ1)が区間Taにあれば、矩形部aの天面にボトムピークが生じ、検出対象ガスの影響が大きく受光信号に反映され、高感度に検出することができるからである。また、測定光101のパワー一定の状態(矩形部aの天面の部分)で検出対象ガスの有無により受光信号の変化を得ることができるため、高精度に検出することができる。
【0026】
図4に示したようにDFB-LDは温度(LD温度)が高いほど、発光波長が長波長側にシフトする。そのため、発光波長が吸収波長λ1と等しくなるタイミングは、温度が高いほど早くなる。
図4のLD温度T1,T2,T3(T1>T2>T3)の場合、LD温度がT1のときに最も早く、対応する受光信号波形は
図10Aに示すようになり、発光部102の発光波長が吸収波長λ1と等しくなる時点t(λ1)が区間Ta内で序盤であるため受光信号に対する検出対象ガスの影響が少ない。すなわち、
図3Aに示す検出対象ガスが無い場合の波形に対する欠けが小さい。
これに対し、制御部103が温度制御部114を介してLD温度をT2へと低く制御することで、
図10Bに示すように、
図3Aに示す検出対象ガスが無い場合の波形に対する欠けが大きくなり、検出対象ガスを高感度に検出することができる。
しかし、発光部102の発光波長が吸収波長λ1と等しくなる時点t(λ1)が
図10Bに示すように区間Taの前半にあると、時点t(λ1)後の受光信号の盛り返しが大きい。
【0027】
そこで、制御部103が温度制御部114を介してLD温度をT3へとさらに低く制御することで、
図10Cに示すように、
図3Aに示す検出対象ガスが無い場合の波形に対するさらに欠けが大きくなり、検出対象ガスを高感度に検出できる。
図10Cに示すように、制御部103は、区間Taの後半に時点t(λ1)があるように、すなわち、区間Taの後半に測定光101の波長が吸収波長を通過する変化をするように電流を入力する。これにより、検出対象ガスの影響がさらに大きく受光信号に反映され、高感度に検出することができる。
【0028】
また、発光部102に入力する電流の周波数fの設定により、高感度化が可能である。
図2A-2Dに示したように周波数fが変わっても、測定光101の波長の時間変化特性は変わらない。ただ、短波長ほど時間的に短く終了する。
そこで、
図11Aに示すように、f=10kHzで、時点t(λ1)が区間Ta内で早期過ぎる場合は、
図11Bに示すようにf=100kHzと、周波数を高く設定し、
図3Aに示す検出対象ガスが無い場合の波形に対する欠けを相対的に大きくすることで、高感度に検出することができる。
【0029】
以上の説明した本発明の実施形態によれば、矩形波による入力電流の急峻な変化に対する発光波長のシフト現象を利用し、検出対象物質を検知し、濃度測定などを行うことができる。
測定光101のパワー一定の状態(矩形部aの天面の部分)で
図2A-2Dに示すように測定光101の波長を変化させることができる、すなわち、波長変化させても測定光101の強度変化が抑えられており、吸収波長の時と非吸収波長の時とで発光強度が一定しているから高精度に検出対象ガスを検出することができる。
図5や
図7に示すように装置構成も従来の2f検波方式と同等以上に簡易である。
さらに測定光101の飛行時間により背景までの距離も測定でき、距離と濃度厚み積から濃度(平均濃度)を算出することができる。なお、距離測定原理は、TOF法(Time OfFlight:飛行時間測定法)による。
【0030】
また本実施形態によれば、従来技術に対してレーザー光源の駆動制御のみで吸収波長と非吸収波長とが発振可能、検出器も一つで測定ができるため、非常に簡易な構成で、ガス濃度演算が実現できる。
以上のように本実施形態によれば、比較的簡単な構成で発光、受光が可能であり、発光の出力を一定に保った状態で吸収波長及び非吸収波長に亘り波長を変えて物質を容易に精度よく検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ガス等の物質の検出に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
100A 物質検出装置
100B 物質検出装置
101 測定光
102 発光部
103 制御部104 受光部
105 演算部
110 増幅器
111 位相検波器
112 AD変換器
113 電流制御部
114 温度制御部
G1 検出対象ガス
R1 反射物
S1 検出対象空間
V1 受信信号
λ1 吸収波長