(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂材料用のスクリュ、射出成形機および成形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/60 20060101AFI20220614BHJP
B29C 45/73 20060101ALI20220614BHJP
B29C 45/74 20060101ALI20220614BHJP
B29C 45/50 20060101ALI20220614BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20220614BHJP
B29K 101/10 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
B29C45/60
B29C45/73
B29C45/74
B29C45/50
B29C33/02
B29K101:10
(21)【出願番号】P 2018048677
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598103152
【氏名又は名称】大和合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】特許業務法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 玲
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 雅則
(72)【発明者】
【氏名】中島 真敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 謙
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-231825(JP,A)
【文献】特開平02-270512(JP,A)
【文献】特開2005-324483(JP,A)
【文献】実開昭55-031676(JP,U)
【文献】特開2016-107509(JP,A)
【文献】特開昭59-194821(JP,A)
【文献】国際公開第2017/096288(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204505776(CN,U)
【文献】中国実用新案第204505770(CN,U)
【文献】中国実用新案第204471820(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 48/00-48/96
B29C 33/00-33/76
B29B 7/00- 7/94
B22D 15/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の軸部と、前記軸部の外周面にらせん状に設けられたフライトと、を有する熱硬化性樹脂材料用のスクリュであって、
基端側から先端側に向けて順に、供給部、中間部および計量部を有し、
前記軸部と前記フライトとによって形成されるらせん溝が、
前記供給部において、深さおよび幅が一定の大きさであり、
前記中間部において、前記供給部のらせん溝と連なるとともに、先端側に向かうにしたがって深さが徐々に小さくなりかつ幅が徐々に大きくなり、
前記計量部において、前記中間部のらせん溝と連なるとともに、深さおよび幅が一定の大きさであ
り、
前記供給部におけるらせん溝の幅が、前記計量部におけるらせん溝の幅より小さく、
前記フライトが、全体にわたって厚さが一定の大きさになるように形成されていることを特徴とする熱硬化性樹脂材料用のスクリュ。
【請求項2】
前記供給部におけるらせん溝の1回転あたりの容積を1としたとき、前記中間部および前記計量部におけるらせん溝の1回転あたりの容積が0.9~1.1となることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂材料用のスクリュ。
【請求項3】
前記供給部におけるらせん溝の1回転あたりの容積を1としたとき、前記中間部および前記計量部におけるらせん溝の1回転あたりの容積が1となることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂材料用のスクリュ。
【請求項4】
前記供給部における前記軸部の横断面積を1としたとき、前記計量部における前記軸部の横断面積が1.1~2.0となることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂材料用のスクリュ。
【請求項5】
前記供給部における前記軸部の横断面積を1としたとき、前記計量部における前記軸部の横断面積が1.7~1.8となることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂材料用のスクリュ。
【請求項6】
前記軸部の先端が、半球形状を有していることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂材料用のスクリュ。
【請求項7】
熱硬化性樹脂材料用の射出成形機であって、
金型の樹脂流路と連通される、先端が開口したシリンダと、
前記シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収容されたスクリュと、
前記シリンダの先端部
を加熱する加熱装置と、を有し、
前記スクリュが、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のスクリュで構成されていることを特徴とする射出成形機。
【請求項8】
前記加熱装置が、誘導加熱式ヒータを有していることを特徴とする請求項7に記載の射出成形機。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の射出成形機と、制御部と、を有する成形システムであって、
前記射出成形機が、前記シリンダの先端部より基端寄りの部分を冷却する冷却装置
と、スクリュ駆動部と、をさらに有し、
前記制御部が、前記スクリュ駆動部を制御して、前記熱硬化性樹脂材料を射出するよう前記金型に向けて
前記スクリュを前進さ
せた後、前記スクリュの先端が前記冷却装置に対応した位置
に来るまで
前記スクリュを後退さ
せ、
前記制御部が、前記冷却装置を制御して、常時または前記スクリュの先端が前記冷却装置に対応した位置に来るまで前記スクリュを後退させた後、前記シリンダを冷却させることを特徴とする
成形システム。
【請求項10】
前記射出成形機により射出された
前記熱硬化性樹脂材料が充填されるキャビティが設けられた
前記金
型をさらに有
し、
前記金型が、当該金型における前記シリンダの先端が当接される箇所を冷却する金型冷却装置を有していることを特徴とする
請求項9に記載の成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂材料用のスクリュ、このスクリュを有する射出成形機、および、この射出成形機を有する成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱硬化性樹脂材料用の射出成形機の一例が特許文献1に開示されている。この射出成形機は、加熱シリンダと、加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収容されたスクリュとを有し、スクリュを加熱シリンダ内で回転駆動することにより、熱硬化性樹脂の混練及び可塑化を行う。
【0003】
熱硬化性樹脂材料用の射出成形機では、加熱シリンダ内での熱硬化性樹脂材料の硬化反応を抑制するために、加熱シリンダ内で熱硬化性樹脂材料に必要以上の熱量が加わらないようにすることが重要である。そして、特許文献1に開示されている射出成形機では、スクリュにおける樹脂材料の凝集領域を、原料導入孔側から先端部側に至るほど体積圧縮比が低下するようにらせん溝を形成している。これにより、体積圧縮によって生じるスクリュの回転に伴う剪断発熱や摩擦発熱の増加を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の射出成形機では、スクリュのらせん溝の深さが全体にわたって一定または先端に向かうにしたがって深くなっている。そのため、加熱シリンダの先端部において熱硬化性樹脂材料の厚さが比較的大きくなる。これにより、熱硬化性樹脂材料が加熱シリンダから熱を受けた際に、厚さ方向に比較的大きな温度差が生じて、溶融状態が不均一になってしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、熱硬化性樹脂材料の溶融状態が不均一になることを抑制できるスクリュ、このスクリュを有する射出成形機およびこの射出成形機を有する成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る熱硬化性樹脂材料用のスクリュは、円柱状の軸部と、前記軸部の外周面にらせん状に設けられたフライトと、を有する熱硬化性樹脂材料用のスクリュであって、基端側から先端側に向けて順に、供給部、中間部および計量部を有し、前記軸部と前記フライトとによって形成されるらせん溝が、前記供給部において、深さおよび幅が一定の大きさであり、前記中間部において、前記供給部のらせん溝と連なるとともに、先端側に向かうにしたがって深さが徐々に小さくなりかつ幅が徐々に大きくなり、前記計量部において、前記中間部のらせん溝と連なるとともに、深さおよび幅が一定の大きさであり、前記供給部におけるらせん溝の幅が、前記計量部におけるらせん溝の幅より小さく、前記フライトが、全体にわたって厚さが一定の大きさになるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、軸部とフライトとによってらせん溝が形成されている。らせん溝は、供給部において、深さおよび幅が一定の大きさである。らせん溝は、中間部において、供給部のらせん溝と連なるとともに、先端側に向かうにしたがって深さが徐々に小さくなりかつ幅が徐々に大きくなる。らせん溝は、計量部において、中間部のらせん溝と連なるとともに、深さおよび幅が一定の大きさである。このようにしたことから、計量部において、中間部および供給部よりもらせん溝の深さを小さくすることができる。そのため、計量部において、熱硬化性樹脂材料がシリンダから熱を受けた際の厚さ方向の温度差が小さくなり、溶融状態が不均一になってしまうことを効果的に抑制できる。したがって、均質な成形品を安定して得ることができる。また、らせん溝について、供給部、中間部および計量部における1回転あたりの容積の差異を小さくすることができ、体積圧縮による発熱を抑制できる。また、供給部において、らせん溝の深さを比較的大きくすることができるので、らせん溝における熱硬化性樹脂材料のペレットの食い込みがよくなる。そのため、先端側に移送されるペレットの量を安定させることができる。
【0009】
本発明において、前記供給部におけるらせん溝の1回転あたりの容積を1としたとき、前記中間部および前記計量部におけるらせん溝の1回転あたりの容積が0.9~1.1となることが好ましい。このようにすることで、供給部、中間部および計量部における1回転あたりの容積の差異をより小さくすることができ、体積圧縮による熱硬化性樹脂材料の発熱を効果的に抑制できる。
【0010】
本発明において、前記供給部におけるらせん溝の1回転あたりの容積を1としたとき、前記中間部および前記計量部におけるらせん溝の1回転あたりの容積が1となることが好ましい。このようにすることで、供給部、中間部および計量部における1回転あたりの容積を同一にすることができ、体積圧縮による熱硬化性樹脂材料の発熱をより効果的に抑制できる。
【0011】
本発明において、前記供給部における前記軸部の横断面積を1としたとき、前記計量部における前記軸部の横断面積が1.1~2.0となることが好ましい。このようにすることで、剪断による熱硬化性樹脂材料の発熱を適切なものとすることができる。
【0012】
本発明において、前記供給部における前記軸部の横断面積を1としたとき、前記計量部における前記軸部の横断面積が1.7~1.8となることが好ましい。このようにすることで、剪断による熱硬化性樹脂材料の発熱をより適切なものとすることができる。
【0013】
本発明において、前記軸部の先端が、半球形状を有していることが好ましい。このようにすることで、軸部の先端が金型に接する構成において、軸部による金型のかじり(損傷)を抑制できる。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る射出成形機は、熱硬化性樹脂材料用の射出成形機であって、金型の樹脂流路と連通される、先端が開口したシリンダと、前記シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収容されたスクリュと、前記シリンダの先端部を加熱する加熱装置と、を有し、スクリュが、上記スクリュで構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、シリンダの先端部を瞬時に加熱する加熱装置を有している。このようにしたことから、熱硬化性樹脂材料の粘度を下げる際に、瞬時に加熱することにより、シリンダ内の熱硬化性樹脂材料の加熱時間を短くすることができる。そのため、熱硬化性樹脂材料に加えられる熱量を少なくすることができ、粘度を下げつつ累積熱量の増加を抑制できる。また、シリンダの先端が開口されており、シリンダの先端が直接金型の樹脂流路に連通されるので、シリンダの先端にノズルを設けなくてもよい。そのため、ノズル内に残った熱硬化性樹脂材料の硬化反応を回避できる。
【0016】
本発明において、前記加熱装置が、誘導加熱式ヒータを有していることが好ましい。このようにすることで、誘導加熱式ヒータは昇温速度が十分に速いため、シリンダの先端部を瞬時に加熱することができる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の他の一態様に係る成形システムは、上記射出成形機と、制御部と、を有する成形システムであって、前記射出成形機が、前記シリンダの先端部より基端寄りの部分を冷却する冷却装置と、スクリュ駆動部と、をさらに有し、前記制御部が、前記スクリュ駆動部を制御して、前記熱硬化性樹脂材料を射出するよう前記金型に向けて前記スクリュを前進させた後、前記スクリュの先端が前記冷却装置に対応した位置に来るまで前記スクリュを後退させ、前記制御部が、前記冷却装置を制御して、常時または前記スクリュの先端が前記冷却装置に対応した位置に来るまで前記スクリュを後退させた後、前記シリンダを冷却させる。このようにすることで、スクリュの後退とともに熱硬化性樹脂材料も冷却装置に対応した位置まで後退される。そのため、シリンダ内の熱硬化性樹脂材料に加えられる熱量をより少なくして、累積熱量の増加をさらに抑制できる。
【0018】
本発明において、前記成形システムは、前記射出成形機により射出された前記熱硬化性樹脂材料が充填されるキャビティが設けられた前記金型をさらに有し、前記金型が、当該金型における前記シリンダの先端が当接される箇所を冷却する金型冷却装置を有していることことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、上記射出成形機を有しているので、熱硬化性樹脂材料に加えられる熱量を少なくすることができ、粘度を下げつつ累積熱量の増加を抑制できる。また、ノズル内に残った熱硬化性樹脂材料の硬化反応を回避できる。さらに、金型が、当該金型におけるシリンダの先端が当接される箇所を冷却する金型冷却装置を有しているので、シリンダの熱が金型に伝わることを抑制でき、金型の樹脂流路内で熱硬化性樹脂材料の硬化反応が進むことを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱硬化性樹脂材料を適切に加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成形システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の成形システムの射出成形機が有するスクリュを説明する図である。
【
図4】
図1の成形システムにおける計量前動作を説明する図である。
【
図5】
図1の成形システムにおける計量動作を説明する図である。
【
図6】
図1の成形システムにおける射出動作を説明する図である。
【
図7】
図1の成形システムにおける硬化待ち動作を説明する図である。
【
図8】
図1の成形システムにおける製品取り出し動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂材料用の成形システムについて、
図1~
図8を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る成形システムの概略構成図である。
図2は、
図1の成形システムの射出成形機が有するスクリュの構成を模式的に示す図である。
図3は、
図1の成形システムの要部断面図である。
図4~
図8は、それぞれ
図1の成形システムにおける計量前動作、計量動作、射出動作、硬化待ち動作および製品取り出し動作を説明する図である。
【0024】
図1および
図3に示すように、本実施形態に係る成形システム1は、金型10と、射出成形機20と、を有している。この成形システム1では、金型10のキャビティ18に、射出成形機20により溶融された熱硬化性樹脂材料(以下、単に「樹脂材料P」という)を射出したのち硬化させて製品を成形する。
【0025】
金型10は、各図において右方から左方に順に配置された固定金型13および移動金型14を有している。固定金型13には、左右方向に貫通した樹脂流路16が形成されている。固定金型13と移動金型14との間にキャビティ18が形成されている。固定金型13の右側面には凹部19が形成されており、凹部19の中心部分に樹脂流路16が開口されている。固定金型13は、凹部19に対応して埋め込まれた金型冷却装置15を有している。金型冷却装置15は、例えば、水などの比較的低温の熱交換媒体が流動される管路を有しており、凹部19付近を冷却する。金型10には、キャビティ18に充填された樹脂材料Pを加熱して硬化させるための図示しないヒータが設けられている。
【0026】
射出成形機20は、シリンダ21と、加熱装置23と、冷却装置24と、ホッパ25と、ホッパブロック26と、トグルリンク機構27と、可動ダイプレート28と、固定ダイプレート29と、を有している。また、射出成形機20は、スクリュ30と、スクリュ駆動部40と、図示しないシリンダ駆動部と、図示しない型締駆動部と、を有している。
【0027】
シリンダ21は、先端21aが開口された円筒状に形成されており、先端21aを金型10に向けて配置されている。すなわち、シリンダ21の先端21aにはノズルが設けられておらず、ノズルレス構造となっている。本実施形態において、シリンダ21は、先端21aの開口を含む全体の内径が一定である。先端21aは、金型10の凹部19に嵌合可能な形状を有している。シリンダ21は、図示しないシリンダ駆動部により軸方向(各図において左右方向)に移動される。シリンダ21の先端21aは、スクリュ30の先端30aが突出可能な大きさに開口されていればよい。
【0028】
加熱装置23は、シリンダ21の先端部21bに設けられている。加熱装置23は、シリンダ21を内側に収容するようにらせん状に巻かれたコイルを備えた誘導加熱式ヒータ(Induction Heating;IH)を有している。誘導加熱式ヒータは昇温速度が比較的速く、電磁誘導によりシリンダ21の先端部21bを瞬時に加熱することができる。本実施形態において、シリンダ21は誘導加熱可能な材料(強磁性体)で構成されている。加熱装置23は、誘導加熱式ヒータ以外にも、抵抗発熱体や加熱された熱交換媒体が流動される管路などの他の種類のヒータを有する構成でもよいが、昇温速度が速くシリンダ21を瞬時に加熱するヒータが好ましい。一般的に用いられるバンドヒータは昇温速度が0.28℃/秒程度であるが、誘導加熱式ヒータを用いることで8.8℃/秒を実現することができる。本明細書において「瞬時に加熱する」とは、昇温速度が8℃/秒以上のことをいう。
【0029】
冷却装置24は、シリンダ21における先端部21bより基端(先端21aの反対側の端)寄りの部分に設けられている。冷却装置24は、例えば、水などの比較的低温の熱交換媒体が流動される管路を有している。冷却装置24は、シリンダ21を冷却することができる。冷却装置24によってシリンダ21を冷却することで、樹脂材料Pが溶融されず固体の状態で先端側に移送される。
【0030】
ホッパ25は、ホッパブロック26に設けられている。ホッパ25は、その供給口25aがホッパブロック26内でシリンダ21の基端部と連通されている。ホッパ25には、熱硬化性樹脂材料のペレットが投入される。
【0031】
トグルリンク機構27は、図示しない型締駆動部により曲げ伸ばし作動される。トグルリンク機構27は、曲げ伸ばし作動されることにより、固定ダイプレート29に対して可動ダイプレート28を進退させる。これにより、可動ダイプレート28に取付けられた移動金型14を固定ダイプレート29に取付けられた固定金型13に対して型閉および型開する。
【0032】
スクリュ30は、シリンダ21内に回転可能かつ前後進可能に収容されている。スクリュ30は、スクリュ駆動部40によりシリンダ21内で回転されるとともに、軸方向(各図において左右方向)に移動される。
【0033】
スクリュ30は、
図2に示すように、軸部31と、フライト33と、を有している。また、スクリュ30は、基端側(
図2の右側)から先端側(
図2の左側)に向けて順に供給部A、中間部Bおよび計量部Cを有している。
【0034】
軸部31は、全体的に円柱状に形成されており、先端32が半球形状(略半球形状を含む)に形成されている。軸部31における供給部Aに対応する部分31aは、径kaが一定の大きさになるように形成されている。軸部31における中間部Bに対応する部分31bは、部分31aに滑らかに(段差無く)連なるとともに基端側から先端側に向かうにしたがって徐々に径kbが大きくなるように形成されている。軸部31における計量部Cに対応する部分31cは、部分31bに滑らかに(段差無く)連なるとともに径kcが一定の大きさになるように形成されている。
【0035】
フライト33は、軸部31の外周面にらせん状に設けられている。フライト33は、全体にわたって厚さtが一定の大きさになるように形成されている。フライト33における供給部Aに対応する部分33aは、フライト33の間隔waが一定の大きさになるように形成されている。フライト33における中間部Bに対応する部分33bは、部分33aに滑らかに(段差無く)連なるとともに基端側から先端側に向かうにしたがって徐々にフライト33の間隔wbが大きくなるように形成されている。フライト33における計量部Cに対応する部分33cは、部分33bに滑らかに(段差無く)連なるとともにフライト33の間隔wcが一定の大きさになるように形成されている。
【0036】
軸部31およびフライト33によってらせん溝34が形成される。らせん溝34における供給部Aに対応する部分34aは、深さdaおよび幅wa(フライト33の部分33aの幅waと同じ)が一定の大きさである。らせん溝34における中間部Bに対応する部分34bは、部分34aと滑らかに(段差無く)連なるとともに、先端側に向かうにしたがって深さdbが徐々に小さくなりかつ幅wb(フライト33の部分33bの幅wbと同じ)が徐々に大きくなる。らせん溝34における計量部Cに対応する部分34cは、部分34bと滑らかに(段差無く)連なるとともに、深さdcおよび幅wc(フライト33の部分33cの間隔wcと同じ)が一定の大きさである。
【0037】
なお、
図2において、スクリュ30は、上記径ka、kb、kc、上記幅wa、wb、wcおよび上記深さda、db、dcの大きさの違いがわかりやすいように、形状を強調して記載している。
【0038】
供給部Aにおけるらせん溝34(部分34a)の1回転あたりの容積を1としたとき、中間部Bおよび計量部Cにおけるらせん溝34(部分34b、34c)の1回転あたりの容積が0.9~1.1となることが好ましく、0.95~1.05がより好ましい。さらには、供給部Aにおけるらせん溝34(部分34a)の1回転あたりの容積を1としたとき、中間部Bおよび計量部Cにおけるらせん溝34(部分34b、34c)の1回転あたりの容積が1となることがより好ましい。このようにすることで、供給部、中間部および計量部における1回転あたりの容積の差異をより小さくすることができ、体積圧縮による発熱を効果的に抑制できる。なお、らせん溝34の1回転あたりの容積とは、らせん溝34におけるらせん1回転分の容積であり、換言すると、スクリュ30が1回転したときに移送可能な熱硬化性樹脂材料の体積でもある。
【0039】
また、供給部Aにおける軸部31(部分31a)の横断面積(軸心Lに直交する断面の面積)を1としたとき、計量部Cにおける軸部31(部分31c)の横断面積が1.1~2.0となることが好ましい。さらには、供給部Aにおける軸部31(部分31a)の横断面積を1としたとき、計量部Cにおける軸部31(部分31c)の横断面積が1.7~1.8となることがより好ましい。このようにすることで、剪断による熱硬化性樹脂材料の発熱をより適切なものとすることができる。
【0040】
また、成形システム1は、全体の動作を司る図示しない制御部を有している。制御部は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、各種I/Oインタフェースなどを有する組み込み機器用のマイクロコンピュータを有して構成されている。制御部は、型閉動作、計量前動作、計量動作、射出動作、硬化待ち動作、型開動作および製品取り出し動作などの各種動作において、成形システム1の各駆動部等を制御する。
【0041】
次に、上述した本実施形態の成形システム1における本発明に係る動作の一例について説明する。
【0042】
成形システム1の制御部は、図示しない型締駆動部を制御して、固定金型13および移動金型14を重ねて型締めする(型閉動作)。また、シリンダ21の先端部21b内の樹脂材料Pがスクリュ30により混練されている。
【0043】
制御部はシリンダ駆動部を制御して、
図4に示すように、シリンダ21を金型10に近づくように移動(すなわち前進)させ、先端21aを凹部19に嵌合させる。この状態において、シリンダ21の内部と金型10の樹脂流路16とが連通される。そして、制御部はスクリュ駆動部40を制御して、スクリュ30を所定位置まで前進させる(計量前動作)。また、制御部は、金型冷却装置15を制御して、金型10におけるシリンダ21の先端が当接される箇所である凹部19を冷却する。
【0044】
次に、制御部は加熱装置23を制御して、シリンダ21を瞬時に加熱する。これにより、樹脂材料Pの粘度を下げる。瞬時に加熱することにより、シリンダ21内の樹脂材料Pの加熱時間を短くして、樹脂材料Pに加えられる熱量を少なくすることができ、粘度を下げつつ累積熱量の増加を抑制する。本実施形態においては、樹脂材料Pが150℃~160℃となる程度までシリンダ21を加熱する。さらに、制御部はスクリュ駆動部40を制御して、
図5に示すように、スクリュ30を回転させながら後退させ、1回の射出に必要となる量の樹脂材料Pをシリンダ21の先端部21bに供給する(計量動作)。計量が終わると、制御部は加熱装置23を制御して、シリンダ21の加熱を停止する。
【0045】
次に、制御部はスクリュ駆動部40を制御して、
図6に示すように、スクリュ30を前進させる。これにより、シリンダ21の先端部21bの樹脂材料Pが樹脂流路16を通じてキャビティ18に押し込まれる(射出動作)。
【0046】
次に、制御部は金型10のヒータを制御して、キャビティ18内の樹脂材料Pが硬化するように加熱する(硬化待ち動作)。これと並行して、制御部はスクリュ駆動部40を制御して、
図7に示すように、スクリュ30を先端30aが冷却装置24に対応する位置に来るまで後退させる。また、制御部は冷却装置24を制御して、シリンダ21を冷却する。これにより、シリンダ21内の樹脂材料Pに加えられる熱量をより少なくして、累積熱量の増加をさらに抑制する。冷却装置24によりシリンダ21を常時冷却していてもよい。
【0047】
なお、硬化待ち動作と並行してスクリュ30を後退させる前に、固定金型13の樹脂流路16の開口を塞ぐようにスクリュ30の先端30a(すなわち軸部31の先端32)を固定金型13に接触させてもよい。これにより、樹脂流路16の開口の全周にわたり樹脂材料Pの厚さが小さくなり、他の部分より脆弱な部分になる。そのため、製品Sを金型から取り出す際に脆弱な部分が他の部分と分離して、製品Sを容易に取り出すことができる。このとき、スクリュ30の軸部31の先端32が、半球形状を有しているので、軸部31による固定金型13のかじりを抑制できる。
【0048】
次に、制御部はシリンダ駆動部を制御して、
図8に示すように、シリンダ21を金型10から離れるように移動(すなわち後退)させ、先端21aと凹部19との嵌合を解除する。さらに、制御部は型締駆動部を制御して、固定金型13および移動金型14を左右方向に開き(型開動作)、図示しないエジェクトピンによりキャビティ18から製品Sを取り出す(製品取り出し動作)。
【0049】
以降、上記型閉動作~上記製品取り出し動作を繰り返して製品Sの成形を行う。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の成形システム1によれば、スクリュ30は、軸部31とフライト33とによってらせん溝34が形成されている。らせん溝34は、供給部Aにおいて深さdaおよび幅waが一定の大きさである。らせん溝34は、中間部Bにおいて供給部Aのらせん溝34と連なるとともに、先端側に向かうにしたがって深さdbが徐々に小さくなりかつ幅wbが徐々に大きくなる。らせん溝34は、計量部Cにおいて中間部Bのらせん溝34と連なるとともに、深さdcおよび幅wcが一定の大きさである。このようにしたことから、計量部Cにおいて、中間部Bおよび供給部Aよりもらせん溝34の深さを小さくすることができる。そのため、計量部Cにおいて、熱硬化性樹脂材料がシリンダ21から熱を受けた際の厚さ方向の温度差が小さくなり、溶融状態が不均一になってしまうことを効果的に抑制できる。したがって、均質な成形品を安定して得ることができる。また、らせん溝34について、供給部A、中間部Bおよび計量部Cにおける1回転あたりの容積の差異を小さくすることができ、体積圧縮による発熱を抑制できる。また、供給部Aにおいて、らせん溝34の深さを比較的大きくすることができるので、らせん溝34における熱硬化性樹脂材料のペレットの食い込みがよくなる。そのため、先端側に移送されるペレットの量を安定させることができる。
【0051】
また、成形システム1は、シリンダ21の先端部21bを瞬時に加熱する加熱装置23を有している。このようにしたことから、樹脂材料Pの粘度を下げる際に、瞬時に加熱することにより、シリンダ21内の樹脂材料Pの加熱時間を短くすることができる。そのため、樹脂材料Pに加えられる熱量を少なくすることができ、粘度を下げつつ累積熱量の増加を抑制できる。また、シリンダ21の先端21aが開口されており、シリンダ21の先端21aが直接金型10の樹脂流路16に連通されるので、シリンダ21の先端21aにノズルを設けなくてもよい。そのため、ノズル内に残った樹脂材料Pの硬化反応を回避できる。
【0052】
また、加熱装置23が、誘導加熱式ヒータを有している。このようにすることで、誘導加熱式ヒータは昇温速度が十分に速いため、シリンダ21の先端部21bを瞬時に加熱することができる。
【0053】
また、シリンダ21の先端部21bより基端寄りの部分を冷却する冷却装置24をさらに有し、スクリュ30が、樹脂材料Pを射出するよう金型10に向けて前進された後、スクリュ30の先端30aが冷却装置24に対応した位置まで後退される。このようにすることで、スクリュ30の後退とともに樹脂材料Pも冷却装置24に対応した位置、つまり、シリンダ21における冷却装置24によって冷却されている箇所まで後退される。そのため、シリンダ21内の樹脂材料Pに加えられる熱量をより少なくして、累積熱量の増加をさらに抑制できる。
【0054】
また、金型10が、金型10におけるシリンダ21の先端が当接される凹部19を冷却する金型冷却装置15を有している。そのため、シリンダ21の熱が金型10に伝わることを抑制でき、金型10の樹脂流路16内で樹脂材料Pの硬化反応が進むことを抑制できる。
【0055】
本実施形態では、ノズルレス構造のシリンダ21を有する射出成形機20に上述したスクリュ30を組み込んだ構成について説明したが、例えば、スクリュ30を、従来の構成を有する射出成形機(例えば、特許文献1)に組み込んでもよい。
【0056】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0057】
本発明者らは、本発明に係るスクリュの効果を確認するために、以下に示す実施例1、実施例2および比較例1を作製し、これらを用いて検証を行った。
【0058】
(実施例1)
上述したスクリュ30において、供給部Aにおけるらせん溝34(部分34a)の1回転あたりの容積を1としたとき、中間部Bおよび計量部Cにおけるらせん溝34(部分34b、34c)の1回転あたりの容積が1となるようにした。また、供給部Aにおける軸部31(部分31a)の横断面積を1としたとき、計量部Cにおける軸部31(部分31c)の横断面積が1.14となるようにした。
【0059】
(実施例2)
上述したスクリュ30において、供給部Aにおけるらせん溝34(部分34a)の1回転あたりの容積を1としたとき、中間部Bおよび計量部Cにおけるらせん溝34(部分34b、34c)の1回転あたりの容積が1となるようにした。また、供給部Aにおける軸部31(部分31a)の横断面積を1としたとき、計量部Cにおける軸部31(部分31c)の横断面積が1.78となるようにした。実施例2において、らせん溝34の一回転あたりの容積は、実施例1とおなじ大きさである。
【0060】
(比較例1)
円柱形の軸部と、軸部の外周面にらせん状に設けられたフライトと、を有するスクリュにおいて、軸部の径が全体にわたって一定の大きさであり、フライトの間隔が全体にわたって一定の大きさとなるようにした。比較例1のスクリュでは、らせん溝の深さおよび幅が全体にわたって一定の大きさである。つまり、らせん溝の1回転あたりの容積が全体にわたって一定の大きさであり、軸部の横断面積も全体にわたって一定の大きさである。比較例1において、らせん溝34の一回転あたりの容積は、実施例1とおなじ大きさである。
【0061】
これら、実施例1および実施例2ならびに比較例1を上述した射出成形機20に組み込み、成形品を作製した。
【0062】
実施例1を用いることで、寸法公差の小さい良好な成形品を安定して得ることができた。また、実施例2を用いることで、寸法公差の小さい良好な成形品をさらに安定して得ることができた。一方、比較例1を用いた場合、寸法公差の範囲内であるものの、寸法のバラツキが比較的大きく、寸法公差の小さい良好な成形品を安定して得ることができなかった。このことからも、本発明の効果は明らかである。また、上記数値の近傍においても、同様の効果が得られることは明らかである。
【符号の説明】
【0063】
1…成形システム
10…金型
13…固定金型
14…移動金型
15…金型冷却装置
16…樹脂流路
18…キャビティ
19…凹部
20…射出成形機
21…シリンダ
21a…シリンダの先端
21b…シリンダの先端部
23…加熱装置
24…冷却装置
25…ホッパ
25a…供給口
26…ホッパブロック
27…トグルリンク機構
28…可動ダイプレート
29…固定ダイプレート
30…スクリュ
30a…スクリュの先端
31…軸部
31a…軸部における供給部に対応する部分
31b…軸部における中間部に対応する部分
31c…軸部における計量部に対応する部分
32…軸部の先端
33…フライト
33a…フライトにおける供給部に対応する部分
33b…フライトにおける中間部に対応する部分
33c…フライトにおける計量部に対応する部分
34…らせん溝
34a…らせん溝における供給部に対応する部分
34b…らせん溝における中間部に対応する部分
34c…らせん溝における計量部に対応する部分
ka…軸部における供給部に対応する部分の径
kb…軸部における中間部に対応する部分の径
kc…軸部における計量部に対応する部分の径
da…らせん溝における供給部に対応する部分の深さ
db…らせん溝における中間部に対応する部分の深さ
dc…らせん溝における計量部に対応する部分の深さ
wa…らせん溝における供給部に対応する部分の幅
wb…らせん溝における中間部に対応する部分の幅
wc…らせん溝における計量部に対応する部分の幅
A…供給部
B…中間部
C…計量部
P…熱硬化性樹脂材料
S…製品