(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】グラビア印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 13/00 20060101AFI20220614BHJP
B41F 33/00 20060101ALI20220614BHJP
B41F 31/00 20060101ALI20220614BHJP
B41F 9/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B41F13/00 614
B41F33/00 630
B41F31/00 C
B41F9/00 B
(21)【出願番号】P 2018092738
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 亮
(72)【発明者】
【氏名】大宮 利信
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】篠原 博人
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-012721(JP,A)
【文献】特開昭60-054852(JP,A)
【文献】特開2013-202808(JP,A)
【文献】特開昭62-253450(JP,A)
【文献】米国特許第04186661(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102006026836(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0098382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00-13/70
B41F 31/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア印刷機であって、
インキを溜めるインキパンと、
前記インキパンに溜まるインキに下部が浸漬された状態で回転するファニッシャーロールと、
前記ファニッシャーロールの下部以外の部分で、前記ファニッシャーロールと互いの外周面が圧接された状態で回転する版胴と、
前記版胴と互いの外周面が圧接されるとともに、印刷対象であるウエブを挟持した状態で回転する圧胴と、
前記ファニッシャーロールとの圧接部位から前記圧胴との圧接部位に向かう前記版胴の外周面に先端が接するドクターブレードと、
前記版胴の周囲の空気を排気する局所排気構造と、
を備え、
前記局所排気構造が、
前記圧胴との圧接部位から前記ファニッシャーロールとの圧接部位に向かう前記版胴の外周面に先端が近接し、前記ファニッシャーロールと前記ウエブとの間を仕切るように
取付部材に取り付けられた上カバーと、
前記インキパンの下方に設置され、前記上カバーの下側に拡がる局所空間を仕切るように構成された下カバーと、
排気通路を介して前記局所空間と接続された排気装置と、
を有し、
前記局所排気構造は、前記上カバーを支持する支持装置を更に備え、
前記支持装置は、
所定の長さを有し、前記上カバーに接続される線状部材と、
前記線状部材を巻き取るとともに、手動操作によって前記線状部材が引き出し可能な巻取具と、
を有し、
前記上カバーが、前記取付部材から取り外された時に、前記巻取具に巻き取られた状態の前記線状部材に吊り下げられて、前記版胴の上方に離れて位置するように構成されている、グラビア印刷機。
【請求項2】
請求項1に記載のグラビア印刷機において、
前記下カバーは、
前記インキパンの下方に設置された下板と、
前記局所空間に沿って延びるように前記下板の下側に設けられ、前記排気通路が接続された緩衝ダクトと、
前記局所空間と前記緩衝ダクトとを連通させる吸気口と、
を有し、
前記吸気口が、前記局所空間に沿って延びるように、前記下板に細長く形成されている、グラビア印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、グラビア印刷機に関し、その中でも特に、有機溶剤に対する作業環境の改善や印刷品質の向上等を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、インキパンに溜まるインキを、ファニッシャーロールを介して版胴に付着させる一般的なグラビア印刷機の基本的な構造を示す。
【0003】
この種のグラビア印刷機の場合、印刷時には、インキが溜まったインキパン200の内部に、回転自在に支持されたファニッシャーロール201が、インキにその下部が浸漬するように配置される。そのファニッシャーロール201の上部の外周面が、版胴202の下部の外周面に圧接される。版胴202の外周面には、凹版202aが形成されている。
【0004】
版胴202の上部には、更に、回転自在に支持された圧胴203が配置されており、この圧胴203の外周面と版胴202の外周面とにより、印刷を行うウエブWが挟持される。ウエブWの挟持部位に向かう版胴202の外周面に先端が圧接するように、ドクターブレード204が配置される。
【0005】
印刷時には、版胴202が、所定方向(図例では時計回り)に回転駆動され、それに連動してウエブWも搬送される。そうすることにより、ファニッシャーロール201が、版胴202の回転に連動して、版胴202の回転速度に対応した所定の速度て回転し、その外周面に付着したインキが版胴202の外周面に乗り移る。版胴202の外周面に乗り移ったインキのうち、凹版202aからはみ出す余分なインキがドクターブレード204によって掻き取られ、凹版202aに残るインキが、搬送されるウエブWに連続して転写される。
【0006】
通常、インキはトルエン等の有機溶剤を含む。そのため、オペレータの健康に悪影響が及ばないよう、印刷時には、有機溶剤の拡散を抑制する必要がある。
【0007】
この種のグラビア印刷機では、ファニッシャーロール201が位置する側が、オペレータが切替等の作業を行うスペースとなっているのが一般的である。そのため、ドクターブレード204が位置する側は、作業の邪魔にならないため、プレート等の設置により、比較的容易に有機溶剤の拡散に対応できる。それに対し、ファニッシャーロール201が位置する側は、作業の邪魔になり易いため、対応が難しい。
【0008】
更に、この種のグラビア印刷機では、ファニッシャーロール201の上方に、印刷されたウエブWが位置している。そのため、印刷時にインキから発生する溶剤の蒸気は、印刷されたウエブWの移動に伴って、ファニッシャーロール201の斜め上方の空間に拡散する。
【0009】
それに対し、特許文献1には、インキパンの下方に設置した局所排気装置で排気する従来の方法では、有機溶剤の臭気が作業スペースに漏れる場合があったため、インキパンの上方に配置されている乾燥機にフィルム状のカーテンを吊すことが開示されている。それにより、カーテンで塗装空間と作業空間との間を遮断し、有機溶剤の臭気が作業空間に漏れ出すのを抑制している。
【0010】
また、この種のグラビア印刷機では、ファニッシャーロール201から滴下するインキが、空気を巻き込んで飛散する。そのため、飛散したインキが、印刷されたウエブWに付着し、印刷が汚損されるおそれもある。
【0011】
それに対し、特許文献2には、ドクターで掻き落とされたインキが、ドクター下方の周囲に跳ねてその周辺を汚すのを防止するドクター下部カバーが開示されている。具体的には、ドクター取付台と、その下方に位置するインキパンとの間に、フィルム状のドクター下部カバーが、その隙間を覆うように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平6-316059号公報
【文献】特開平9-141832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1のようにカーテンを吊す方法では、ファニッシャーロールから乾燥機までの大きな空間全体に溶剤の蒸気が拡散する。メンテナンスや切り替え時には、カーテンを取り除くかその内側に入らなければならないため、オペレータは、溶剤の悪影響を受ける。また、カーテンの側方が大きく開放されているため、そこから溶剤の蒸気が作業スペースに拡散するおそれがある。カーテンの外からでは、奥方に位置する印刷部位が視認し難いため、印刷状態の確認作業に支障が出るおそれもある。
【0014】
特許文献2のドクター下部カバーでは、印刷されたウエブWの汚損を防止することはできない。
【0015】
そこで、開示するグラビア印刷機は、排気性能及び印刷品質の向上が図れるグラビア印刷機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
開示する技術は、グラビア印刷機に関する。
【0017】
前記グラビア印刷機は、インキを溜めるインキパンと、前記インキパンに溜まるインキに下部が浸漬された状態で回転するファニッシャーロールと、前記ファニッシャーロールの下部以外の部分で、前記ファニッシャーロールと互いの外周面が圧接された状態で回転する版胴と、前記版胴と互いの外周面が圧接されるとともに、印刷対象であるウエブを挟持した状態で回転する圧胴と、前記ファニッシャーロールとの圧接部位から前記圧胴との圧接部位に向かう前記版胴の外周面に先端が接するドクターブレードと、前記版胴の周囲の空気を排気する局所排気構造と、を備える。
【0018】
そして、前記局所排気構造が、前記圧胴との圧接部位から前記ファニッシャーロールとの圧接部位に向かう前記版胴の外周面に先端が近接し、前記ファニッシャーロールと前記ウエブとの間を仕切るように配置された上カバーと、前記インキパンの下方に設置され、前記上カバーの下側に拡がる局所空間を仕切るように構成された下カバーと、排気通路を介して前記局所空間と接続された排気装置と、を有している。
【0019】
すなわち、このグラビア印刷機では、印刷時には、インキパンに溜まるインキに下部が浸漬された状態でファニッシャーロールが回転し、そのインキの液面よりも上方の、ファニッシャーロールの下部以外の部分で、ファニッシャーロールと互いの外周面が圧接された状態で版胴が回転する。版胴はまた、圧胴と互いの外周面が圧接されるとともに、印刷対象であるウエブを挟持した状態で回転する。そして、ファニッシャーロールとの圧接部位から圧胴との圧接部位に向かう版胴の外周面には、余分なインキを取り除くために、ドクターブレードの先端が接した状態となっている。
【0020】
このグラビア印刷機は更に、版胴の周囲の空気を排気する局所排気構造が設けられている。そして、その局所排気構造が、ファニッシャーロールとウエブとの間を仕切るように配置された上カバーと、インキパンの下方に設置されて、上カバーの下側に拡がる局所空間を仕切るように構成された下カバーと、排気通路を介して局所空間と接続された排気装置と、を有している。
【0021】
このグラビア印刷機によれば、ファニッシャーロールの直ぐ上方に、印刷されたウエブが位置していても、そのウエブとファニッシャーロールとの間を仕切るように上カバーが配置されている。従って、ファニッシャーロールから滴下するインキが、空気を巻き込んで飛散しても、そのインキでウエブが汚損するのを防止できる。
【0022】
そして、上カバーの下側に拡がる局所空間、すなわち印刷時にインキから溶剤が蒸発して拡散し易い場所が、上カバーと下カバーとでコンパクトに仕切られていて、排気通路を介して排気装置と接続されている。従って、印刷時にインキから蒸発した溶剤が拡散する空間を最小限に抑制でき、溶剤の蒸気を効率よく排気できる。更に、上カバーの上方の空間は作業スペースに開放されているので、印刷部位が容易に視認でき、印刷状態の確認も支障無く行える。
【0023】
前記グラビア印刷機は更に、前記下カバーは、前記インキパンの下方に設置された下板と、前記局所空間に沿って延びるように前記下板の下側に設けられ、前記排気通路が接続された緩衝ダクトと、前記局所空間と前記緩衝ダクトとを連通させる吸気口と、を有し、前記吸気口が、前記局所空間に沿って延びるように、前記下板に細長く形成されている、としてもよい。
【0024】
局所空間は、ウエブの幅方向に細長く延びているため、緩衝ダクトへの排気通路の接続位置との関係で、排気が不均一になり易い。それに対し、このグラビア印刷機では、その局所空間に沿って延びるように、排気通路が接続された緩衝ダクトが設けられ、更に、局所空間と緩衝ダクトとを連通させる吸気口が、局所空間に沿って延びるように細長く形成されている。
【0025】
従って、緩衝ダクトと吸気口とで、長さ方向の吸引圧のばらつきを小さくできるので、排気の不均一を緩和できる。
【0026】
前記グラビア印刷機は更に、前記上カバーは、前記版胴の近傍に設けられた取付部材に取り外し可能に取り付けられている、としてもよい。
【0027】
そうすれば、必要に応じて上カバーを取り除くことができるので、版胴やインキの交換作業等が容易になり、印刷の切替時間が短縮できる。
【0028】
前記グラビア印刷機はまた、前記局所排気構造は、前記上カバーを支持する支持装置を更に備え、前記支持装置は、所定の長さを有し、前記上カバーに接続される線状部材と、前記線状部材を巻き取るとともに、手動操作によって前記線状部材が引き出し可能な巻取具と、を有し、前記上カバーが、前記取付部材から取り外された時に、前記巻取具に巻き取られた状態の前記線状部材に吊り下げられて、前記版胴の上方に離れて位置するように構成されている、としてもよい。
【0029】
そうすれば、印刷時には、上カバーを引き下げ、線状部材を巻取具から引き出しながら、上カバーを取付部材に取り付けることができる。そして、印刷の切替時等、上カバーを取付部材から取り外した時には、線状部材が巻取具に巻き取られて、上カバーが自動的に所定位置に吊り下げられた状態になる。
【0030】
すなわち、上カバーを持ち運ぶ必要が無く、弱い力で上カバーを取り扱うことができるので、オペレータの作業負担が軽減でき、安全かつ作業時間の短縮が図れる。
【発明の効果】
【0031】
開示するグラビア印刷機によれば、排気性能及び印刷品質の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】一般的なグラビア印刷機の基本的な構造を示す概略図である。
【
図2】本実施形態で開示するグラビア印刷機の構成を示す概略図(左側方から見た断面図)である。切替時等、印刷していない状態を示している。
【
図3】本実施形態で開示するグラビア印刷機の構成を示す概略図(前方から見た図)である。切替時等、印刷していない状態を示している。
【
図4】本実施形態で開示するグラビア印刷機の構成を示す概略図(左側方から見た断面図)である。印刷時の状態を示している。
【
図6A】プレート支持装置等の構成を示す概略図(左側から見た図)である。
【
図6B】プレート支持装置等の構成を示す概略図(前側から見た図)である。
【
図7】プレート取付部材の構成を示す、
図5における矢印X-X線での概略断面図である。
【
図8】印刷時における版胴の前方の状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0034】
<グラビア印刷機の構成>
図2及び
図3に、本実施形態で開示するグラビア印刷機1の構成を概略的に示す。
図2及び
図3は、印刷の間に行われる切替時におけるグラビア印刷機1の状態を示している。印刷時におけるグラビア印刷機1の状態は、
図4に示す。
【0035】
このグラビア印刷機1は、搬送されるウエブW(印刷対象)にインク(単色)を連続して印刷する装置である。複数のグラビア印刷機1を、ウエブWの搬送方向に沿って一列に配置してグラビア印刷システムを構成し、搬送されるウエブWに対し、これらグラビア印刷機1の各々で連続して色別に印刷を行えば、多色刷りも可能である。グラビア印刷機1に用いるインキや版胴40を交換することで、多種多様な印刷が行える。
【0036】
グラビア印刷機1は、上下方向に延びるように床面Fに設置され、例えば1m以上2m以下の、一定の間隔を隔てて左右方向に対向する一対の支持フレーム2,2を有している。これら支持フレーム2,2の間に、グラビア印刷機1を構成するインキパン4、ドライヤー10、ガイドロール20,21、圧胴30、版胴40、ファニッシャーロール50などの関連装置が、上下方向の所定位置に配置されている。
【0037】
そして、このグラビア印刷機1では、印刷時にインキから蒸発する有機溶剤を効率よく排気するために、版胴40の周囲、特に版胴40の回転方向における印刷部位の下流側に位置する空間(局所空間LS)の空気を排気する局所排気構造が設けられている。局所排気構造は、パンカバー100(下カバーの一例)、区画プレート70(上カバーの一例)、プレート取付部材80(取付部材の一例)、プレート支持装置90(支持装置の一例)、排気装置110などで構成されている。これらの詳細については後述する。
【0038】
図2における支持フレーム2の右側には、版胴40の交換や洗浄、インキの投入等、オペレータOPが作業を行う作業スペースSが存在している。便宜上、この作業スペースSが存在する側を「前」とする。
図3においては、紙面の手前側が「前」である。前後左右等の方向を各図において矢印で示す。
【0039】
インキパン4は、左右方向に長い、上面視矩形の底の浅いトレイ状容器である。インキパン4の上面は開放されている。印刷時には、インキ循環装置(不図示)により、所定の液位を保つように制御された状態で、インキがインキパン4に循環供給される。それにより、インキパン4にインキが溜められる。インキパン4の下方には、インキパン4の上方を開放した状態で、インキパン4の周囲を囲むパンカバー100が設置されている。
【0040】
インキパン4は、支持フレーム2,2の間の床面Fに設置された支持台3に、取り外し可能な状態で略水平に設置されている。パンカバー100も、支持台3に設置されている。詳細は省略するが、支持台3は、インキパン4及びパンカバー100を昇降するように構成されている。具体的には、
図2に示すように、インキパン4及びパンカバー100が版胴40から下方に離れて位置する待機位置と、
図4に示すように、インキパン4が版胴40の下部に近接し、パンカバー100が版胴40の周囲に位置する使用位置とに変位する。
【0041】
インキパン4はまた、
図5に簡略化して示すスライド装置120を介してパンカバー100の上に設置されており、前方に向かって引き出し可能な状態で設置されている。切替時に、スライド装置120でインキパン4を作業スペースSに引き出すことで、インキパン4の交換が容易にできる。インキパン4の後方には、予備のインキパンを設置するスペースが確保されている。
【0042】
インキパン4はまた、
図5に簡略化して示す傾動装置130により、インキパン4における横幅方向の一端側を持ち上げて、インキパン4を傾斜した状態にできるように構成されている。インキパン4の横幅方向の他端側の前隅部分には、樋状のインキ落し口4aが設けられている(
図8参照)。従って、切替時には、傾動装置130でインキパン4を傾斜させることで、インキ落とし口4aからインキを流下させることができる。なお、インキパン4の構造は例示であり、仕様に応じて変更できる。
【0043】
ファニッシャーロール50は、円柱状の細長い部材である。ファニッシャーロール50の外周部分は、ゴム等の弾性を有する素材で構成されている。ファニッシャーロール50の両端部の中心には、それぞれFR支持軸51が突出している。これらFR支持軸51,51が、脱着可能な状態で、軸支部52aを介して一対の揺動アーム52,52に支持されている。それにより、ファニッシャーロール50は、左右方向へ水平に延びる回転軸J1を中心に回転自在となっている。
【0044】
各揺動アーム52は、詳細は省略するが、左右の支持フレーム2,2の各々に、回動可能に支持されている。これら揺動アーム52,52が回動することにより、ファニッシャーロール50は、
図2に示すように、版胴40から下方に離れて位置する待機位置と、
図4に示すように、ファニッシャーロール50が版胴40に圧接する使用位置とに変位する。
【0045】
左右の揺動アーム52,52の間の距離よりもインキパン4の左右方向の長さは短く形成されており、インキパン4は、これら揺動アーム52,52の間を昇降する。ファニッシャーロール50の左右方向の長さは、インキパン4の左右方向の長さよりも短く、ファニッシャーロール50はインキパン4に収容可能となっている。
【0046】
それにより、
図5に示すように、印刷時には、ファニッシャーロール50は、インキパン4に収容され、ファニッシャーロール50の下部が、インキパン4に溜まるインキに浸漬された状態となるように構成されている。
【0047】
版胴40は、円柱状の長い部材である。版胴40の外周面には、その長手方向の両端部の一部を除き、印刷面を構成する凹版41が形成されている。版胴40の外径は、例えば120mm以上300mm以下の範囲の大きさであり、また、凹版41の横幅は、例えば800mm以上1400mm以下の範囲の大きさである。版胴40の外径及び横幅は、それぞれ印刷するウエブWに応じて適宜選択される。
図3に示すように、版胴40の両端部の中心には、それぞれGR支持軸42が突出している。
【0048】
これらGR支持軸42,42が、左右の支持フレーム2に設けられたGR軸支部43,44に、着脱可能な状態で支持されている。詳細は省略するが、一方のGR軸支部(駆動側GR軸支部43)は、サーボモータで制御される回転駆動部に連結されている。他方のGR軸支部(非駆動側GR軸支部44)は、エアシリンダーによって駆動側GR軸支部43に向かって進退するように構成されている。
【0049】
非駆動側GR軸支部44が進出することにより、版胴40は、左右方向へ水平に延びる回転軸J2を中心に回転可能な状態で支持される。そして、回転駆動部が駆動制御されることにより、版胴40は、所定方向(
図5では時計回り)に所定速度で回転駆動される。
【0050】
圧胴30もまた、円柱状の長い部材である。ファニッシャーロール50と同様に、圧胴30の外周部分も、ゴム等の弾性を有する素材で構成されている。ファニッシャーロール50及び圧胴30の各々は、版胴40以上の長さを有している。圧胴30の両端部の中心には、それぞれPR支持軸31が突出している。これらPR支持軸31,31は、軸支部32に支持されている。それにより、圧胴30は、左右方向へ水平に延びる回転軸J3を中心に回転自在となっている。
【0051】
詳細は省略するが、各軸支部32は一対の昇降アームの各々に設けられている。各昇降アームは、左右の支持フレーム2,2の各々に、上下方向にスライド可能に支持されている。これら昇降アームがスライドすることにより、圧胴30は、
図2に示すように、版胴40の上方に離れて位置する待機位置と、
図4に示すように、圧胴30が版胴40に圧接する使用位置とに変位する。
【0052】
図5に示すように、印刷時には、インキに浸漬されていないファニッシャーロール50の上部の外周面が、版胴40の前側の斜め下側で版胴40の外周面に圧接するように構成されている(このファニッシャーロール50と版胴40との圧接部位を第1圧接部位45ともいう)。更に、ウエブWが巻き掛けられている圧胴30の下端部が版胴40の上端部に圧接し、圧胴30の外周面と版胴40の外周面とでウエブWを挟持するように構成されている(この圧胴30と版胴40との圧接部位を第2圧接部位46ともいう)。
【0053】
それにより、印刷時には、ウエブWの搬送に連動して版胴40が回転駆動されることにより、その回転に連動してファニッシャーロール50及び圧胴30が回転する。
【0054】
版胴40の後側には、ドクター支持装置60が配置されている。ドクター支持装置60は、左右の支持フレーム2,2に支持されており、ドクターブレード61が固定できるように構成されている。ドクターブレード61は、版胴40の凹版41よりも左右方向に長く、厚みの薄い高剛性な帯板状の部材である。ドクター支持装置60に装着されたドクターブレード61は、
図5に示すように、印刷時には、その先端が、第2圧接部位46の近傍で、第1圧接部位45から第2圧接部位46に向かう版胴40の外周面に圧接するように位置決めされる。
【0055】
印刷時には、第1圧接部位45で、ファニッシャーロール50に付着したインキが、版胴40の外周面(凹版41)に付着する。版胴40に付着した余分なインキ、具体的には凹版41からはみ出たインキは、ドクターブレード61によって掻き落とされる。それにより、第2圧接部位46に至る前に、凹版41のインキが適量に調整され、第2圧接部位46で、そのインキがウエブWに転写されることにより、印刷が行われる(第2圧接部位46は印刷部位を構成)。
【0056】
版胴40の後側には、エプロン62が配置されている。エプロン62は、版胴40に沿って延びるように、ドクター支持装置60に取り付けられている。エプロン62により、ドクター支持装置60とインキパン4との間が区画されている。一方、版胴40の前側には、区画プレート70を固定するプレート取付部材80が配置されている。
【0057】
圧胴30の上方には、グラビア印刷機1で印刷を行うウエブWを支持しながら圧胴30に向けて下方に案内する複数の上流側ガイドロール20と、圧胴30から送り出される印刷されたウエブWを支持しながら上方に案内する複数の下流側ガイドロール21とが、所定位置に配置されている。
【0058】
上流側ガイドロール20の各々は、支持フレーム2の後側の側部に沿った上下方向の所定位置に配置されている。上流側ガイドロール20の各々は、左右方向に延びる水平な中心軸回りに回転自在な状態で、左右の支持フレーム2,2に支持されている。これら上流側ガイドロール20に支持されることにより、グラビア印刷機1の上部後方に搬入されるウエブWが、支持フレーム2の後側の側部に沿って下方に案内され、印刷面を下側に向けた状態で、圧胴30の下側に、回転軸J3が延びる方向から見て略V状に巻き掛けられるようになっている。
【0059】
下流側ガイドロール21の各々は、支持フレーム2の前側の側部に沿った上下方向の所定位置に配置されている。下流側ガイドロール21の一部は、グラビア印刷機1の上部に設置されたドライヤー10の内部に配置されている。
【0060】
ドライヤー10は、印刷されたウエブWのインキを、ウエブWを搬送しながら乾燥させる装置であり、略密閉された矩形箱型のドライヤーカバー11を有している。ドライヤーカバー11は、支持フレーム2の上部の前側の側部に沿って延びるように、左右の支持フレーム2,2の間に配置されている。ドライヤーカバー11の前側部分は、支持フレーム2よりも前方に突出している。
【0061】
ドライヤーカバー11の下端部には、ウエブWを受け入れる細長い導入口14が開口しており、ドライヤーカバー11の上端部には、ウエブWを送り出す細長い導出口15が開口している。ドライヤーカバー11の内部に、これら導入口14と導出口15との間を、上下方向に一列に並ぶような状態で、複数の下流側ガイドロール21が配置されている。
【0062】
下流側ガイドロール21の各々は、左右方向に延びる水平な中心軸回りに回転自在な状態で、左右の支持フレーム2,2及びドライヤーカバー11の左右の側壁に支持されている。これら下流側ガイドロール21に支持されることにより、印刷されたウエブWは、その印刷面を前側に向けた状態でドライヤー10の内部を通り、支持フレーム2の前側の側部に沿って上方に案内されるようになっている。
【0063】
詳細は省略するが、ドライヤー10は、ドライヤーカバー11の内部に乾燥した温風を循環供給するブロワや熱交換器等からなる関連装置も有しており、これら関連装置もドライヤーカバー11の周囲に付設されている。
【0064】
ドライヤー10は、版胴40やファニッシャーロール50の取り換え作業等が安全かつ容易にできるように、これらの上方に離れて配置されている。具体的には、ドライヤーカバー11の下端部11a(詳しくは、作業スペースSに臨む前側の下端部11a)が、作業スペースSの床面Fよりも1.7m以上2.2m以下の高さに位置するように配置されている。
【0065】
一般的な日本人の成人男性の平均身長は、約1.7mであることから、ドライヤーカバー11の下端部11aの高さを1.7m以上とすることで、ドライヤー10が作業を行うオペレータOPの邪魔になり難く、オペレータOPが安全に作業を行えるように設計されている。一方、ドライヤーカバー11の下端部11aの高さが2.2mを超えると、グラビア印刷機1の全高が大きくなり過ぎるため、グラビア印刷機1を設置できる施設が限られるなどの制約を受ける不利がある。
【0066】
ドライヤー10から出たウエブWを支持案内するために、グラビア印刷機1の上部に配置されている複数の下流側ガイドロール21には、冷却可能なクーリングロール21aが含まれている。印刷時には、クーリングロール21aの内部に、図外の冷媒循環供給装置から冷却された冷媒が循環供給され、クーリングロール21aが冷却されるように構成されている。ドライヤー10で加熱されたウエブWは、このクーリングロール21aの外周面に接することによって冷却される。
【0067】
これら下流側ガイドロール21によって支持案内されることにより、グラビア印刷機1で印刷されたウエブWは、温風による乾燥、及び冷却が行われた後、グラビア印刷機1の上部からその前方へと搬出されていく。
【0068】
(区画プレート70、プレート取付部材80)
図2、
図3に示すように、このグラビア印刷機1の区画プレート70は、プレート支持装置90に支持された状態で、ドライヤー10に取り付けられている。
【0069】
具体的には、区画プレート70は、アルミニウム合金等の、アルミニウムを主成分とする金属の薄板をプレス加工して形成された長尺の帯板状の部材からなる。区画プレート70の長辺の長さは、少なくとも版胴40よりも大きく形成されている。そして、区画プレート70の短辺の長さは、少なくともファニッシャーロール50の直径よりも大きく形成されている。区画プレート70の厚みは、例えば3mm等、数mm程度である。
【0070】
区画プレート70の一方の長辺には、横断面が略L状の支持側縁部71が、その長辺に沿って細長く設けられている(
図5参照)。区画プレート70の他方の長辺には、緩やかに屈曲した差込側縁部72が、その長辺に沿って細長く設けられている。支持側縁部71及び差込側縁部72の各々は、区画プレート70の長辺の縁部を折り曲げることによって形成されている。
【0071】
プレート支持装置90は、ドライヤーカバー11の左右の各側面に取り付けられた一対の巻取具91,91を有している。区画プレート70は、これら巻取具91,91に装備されている巻取ワイヤ91aに連結された中継ワイヤ92の突端に接続されている(
図6A参照)。具体的には、支持側縁部71の各端部には、貫通孔が形成されていて、これら貫通孔に取り付けられたリング93に中継ワイヤ92の先端部が接続されている(
図5参照)。
【0072】
そして、その中継ワイヤ92の基端部は、巻取ワイヤ91aの先端に設けられたフック金具94に取り付けられている。巻取ワイヤ91aは、所定の長さを有しており、その全長が巻取具91の内部に自動的に巻き取られるように構成されている。詳細は省略するが、巻取具91の内部には、コイルバネ等の弾性部材によって所定方向に回転するように付勢された巻取軸が内蔵されている。その弾性部材の弾性力で巻取ワイヤ91aが巻取軸に巻き付けられることにより、巻取ワイヤ91aの全体が巻取具91に収容されている。
【0073】
なお、このグラビア印刷機1では、巻取ワイヤ91a及び中継ワイヤ92が線状部材を構成しているが、それに限るものではない。例えば、巻取ワイヤ91aを長くして、巻取ワイヤ91aが巻取具91に巻き取られた時に、その先端側の一部が巻取具91の外に残るようにすることで、中継ワイヤ92を省略してもよい。
【0074】
弾性部材の巻取力に抗して巻取ワイヤ91aを引き出すことで、巻取ワイヤ91aの大部分を巻取具91から引き出すことができる。弾性部材の巻取力は、手動操作によって巻取ワイヤ91aを容易に引き出せるように設定されている。この巻取具91の場合、区画プレート70の重量よりも一対の巻取具91,91の巻取力の方が大きく、区画プレート70を吊り下げた時には、各巻取具91の巻取ワイヤ91aは、その全長が巻き取られるようになっている。
【0075】
中継ワイヤ92の長さは、区画プレート70が、ドライヤーカバー11の下端部11aの近傍に位置するように調整されている。具体的には、区画プレート70の上側の一部がドライヤーカバー11の下端部11aよりも上方に位置し、区画プレート70の下側の一部がドライヤーカバー11の下端部11aよりも下方に位置するように、中継ワイヤ92の長さが調整されている。
【0076】
それにより、区画プレート70は、
図2の実線や
図3に示すように、これら中継ワイヤ92,92に吊り下げられることにより、略水平方向に延びるような状態で、版胴40から上方に離れたドライヤーカバー11の下端部11aの近傍に位置するように構成されている。
【0077】
巻取具91は、ドライヤーカバー11のスライド支持部12に取り付けられている。
【0078】
図6A及び
図6Bに示すように、ドライヤーカバー11は、その内部のクリーニングやメンテナンス等の作業を容易にするために、その後側の半身部分を構成するリアカバー11Rと、その前側の半身部分を構成するフロントカバー11Fとを有している。リアカバー11Rは、左右の支持フレーム2,2に固定されており、フロントカバー11Fは、スライド支持部12を介して左右の支持フレーム2,2に前方に向かって進出可能な状態で支持されている。
【0079】
左右の支持フレーム2,2には、その前縁から前方に向かって略水平に延びる横梁部材2aが設けられている。これら横梁部材2a,2aの上部には、スライド支持部12を構成するガイド部材12aが設けられていて、これら横梁部材2a,2aと対向するフロントカバー11Fの側面には、ガイド部材12aによって前後方向にスライド可能に支持された補強板12b(スライド支持部12を構成)が取り付けられている。
【0080】
各補強板12bには、各支持フレーム2に取り付けられたシリンダ12c(スライド支持部12を構成)のロッドの先端部分が取り付けられており、ロッドが出退することで、
図6Aに実線及び仮想線で示すように、フロントカバー11Fが前後にスライドするようになっている。巻取具91は、これら補強板12bに設けた掛止部13に着脱可能に取り付けられている。
【0081】
プレート取付部材80は、
図3に示すように、版胴40の左右の各端部の近傍に左右対称状に2つ配置されている。各プレート取付部材80は、
図5に示すように、版胴40の前側に、略水平に配置されている。
【0082】
各プレート取付部材80は、前後方向を略水平に延びるように構成されており、
図7に示すように、支持腕部81を介して左右の各支持フレーム2に支持されている。各プレート取付部材80は、その上縁部分に沿って突出する上鍔部82と、上鍔部82の下側に一定の隙間を隔てて対向する下鍔部83とを有している。各プレート取付部材80のこれら上鍔部82及び下鍔部83が、互いに向かい合うように配置されている。
【0083】
各上鍔部82には、上下方向に貫通するネジ孔が形成されており、これらネジ孔に螺合するネジ部を有する固定具84がねじ込まれている。区画プレート70の両端部は、左右のプレート取付部材80の上鍔部82と下鍔部83との間に、差込側縁部72の側から差し込み可能となっている。
【0084】
印刷時には、区画プレート70の両端部を、左右のプレート取付部材80の上鍔部82と下鍔部83との間に差し込み、固定具84をねじ込むことにより、区画プレート70は、プレート取付部材80によって取り外し可能な状態で略水平に支持固定される。なお、区画プレート70は、固定せず、プレート取付部材80に差し込むだけであってもよい。
【0085】
そうすることにより、区画プレート70は、
図5に示すように、第2圧接部位46から第1圧接部位45に向かう版胴40の外周面にその先端が近接し、ファニッシャーロール50と印刷されたウエブWとの間を仕切るように配置される。すなわち、版胴40の前方に位置する、版胴40の回転方向における印刷部位の下流側に拡がる空間(区画プレート70の下側に拡がる空間:局所空間LS)が、区画プレート70によって仕切られる。
【0086】
図8に、印刷時における版胴40の前方の状態を示す。印刷時には、局所空間LSは、更に、パンカバー100によってその周囲が仕切られ、作業スペースSから簡略的に区画されるようになっている。
【0087】
(パンカバー100)
図9A~
図9Cに、パンカバー100の構造を示す。パンカバー100は、下板101、前板102、一対の側板103,103、緩衝ダクト104などで構成されている。
図3に示すように、パンカバー100は、版胴40、ファニッシャーロール50、及びインキパン4の各々よりも全長が十分に長い容器状カバーからなる。なお、パンカバー100の構造は一例であり、仕様に応じて適宜変更できる。
【0088】
下板101は、
図9Aに示すように、インキパン4よりも大きな左右に長い矩形の平板からなる。下板101は、略水平に拡がった状態で、インキパン4の下方に設置されている。
図8に示すように、前板102は、下板101の長辺と略同じ長さの帯板からなり、下板101の前縁にヒンジを介して揺動可能に取り付けられている。
【0089】
図8、
図9Bに示すように、各側板103は、下板101の短辺と略同じ長さの板からなり、下板101の各側縁に立設されている。各側板103は、版胴40やファニッシャーロール50と接触しないように形成されている。インキ落し口4aは、パンカバー100の外方に突出しており、前板102は、インキ落し口4aと干渉しないように、一方の側板103の側に偏って配置されている。前板102の端部は、磁石などによって側板103の前端に接した状態で保持されている。前板102を揺動させることで、局所空間LSの前方を開放できる。
【0090】
緩衝ダクト104は、矩形箱状の中空構造であり、下板101の下方に設けられている。緩衝ダクト104は、局所空間LSの下方に配置されていて、局所空間LSに沿って左右に延びている。緩衝ダクト104の前面部104aの複数箇所には、メンテナンス用の開口104cが形成されており、これら開口104cは、蓋板104bをネジ止めすることにより、封止されている。
【0091】
具体的には、
図9Bに示すように、開口104cの下縁は、緩衝ダクト104の下面部104eの上面によって段差無く形成されている。蓋板104bは、断面L形状をしており、前方に臨む前板部104b1と、下方に臨む下板部104b2とを有している。その前板部104b1が前面部104aに前方からネジ止めされ、下板部104b2が下面部104eに下方からネジ止めされている。
【0092】
それにより、蓋板104bを緩衝ダクト104から取り外すことで、緩衝ダクト104の内部にインキが流下しても、開口104cを通じて、容易に排除できる。従って、緩衝ダクト104の清浄性が向上する。
【0093】
図9Cに示すように、緩衝ダクト104の後面部104dには、2つの連通孔105,105が間隔を隔てて形成されている。連通孔105の一方は、緩衝ダクト104の長手方向の一端側の位置に、他方の連通孔105は、緩衝ダクト104の長手方向の中間の位置に、それぞれ配置されている。緩衝ダクト104の後面部104dの外側には、各連通孔105に対応して2つのジョイント106,106が設けられている。これらジョイント106,106には、排気管107(排気通路の一例)が接続されており、排気管107と緩衝ダクト104の内部とが連通孔105を通じて連通している。排気管107は、グラビア印刷機1から離れた位置に設置された排気装置110に接続されている。
【0094】
また、
図9Aに示すように、緩衝ダクト104の長手方向の他端側の側面には、箱状の中継ダクト109が取り付けられている。中継ダクト109の内部は、緩衝ダクト104の内部に連通している。中継ダクト109の前面には、連通孔105aとこの連通孔105aに対応したジョイント106aが設けられている。このジョイント106aにも排気管107が接続されている。このような中継ダクト109を設けて排気することで、緩衝ダクト104のみの場合に比べて、より効果的に排気が行える。
【0095】
図9A、
図9Bに示すように、下板101には、局所空間LSと緩衝ダクト104の内部とを連通させる吸気口108が形成されている。吸気口108は、下板101の局所空間LSの下方に細長く形成されていて、局所空間LSに沿って左右に延びている。
【0096】
なお、吸気口108は全体として細長く形成されていれば、複数の孔で構成したり一部が塞がっていたりしてもよい。また、吸気口108は、緩衝ダクト104の幅方向の中間部位に配置するのではなく、後面部104dに沿って延びるように、奥方に配置してもよい。そうすれば、より効果的に、インキパン4に沿って流下する溶剤の蒸気を吸気口108に導入できる。
【0097】
印刷時には、排気装置110が作動し、所定の吸引圧で排気する。それにより、局所空間LSの空気は、吸気口108、緩衝ダクト104、及び排気管107を通じて排気される。局所空間LSは、版胴40に沿って細長く延びているため、排気の吸引圧が偏って作用し、排気不良を招くおそれがある。
【0098】
それに対し、このグラビア印刷機1では、緩衝ダクト104及び吸気口108が局所空間LSに沿って延びるように設けられているので、局所空間LSに作用する吸引圧の偏りを軽減できる。それにより、局所空間LSが細長く狭い形状でもバランスよく排気できるので、必要かつ最小限のスペースで溶剤の蒸気を効率よく排気できる。
【0099】
パンカバー100は、ファニッシャーロール50やインキパン4よりも全長が十分に長く形成されている。それにより、ファニッシャーロール50の各端部及びインキパン4の各側部の各々と、パンカバー100の各側板103との間には、一定の空間が存在する(側方空間SS:
図8参照)。
【0100】
パンカバー100の内部の両側部も、局所空間LSと連なっているため、溶剤の蒸気濃度は濃くなり易い。それに対し、このグラビア印刷機1では、その両側部に側方空間SSが設けられているので、溶剤の蒸気を、更に効率よく排気できる。
【0101】
区画プレート70の上方の広い空間が作業スペースSに開放されるので、印刷部位が容易に視認でき、印刷状態の確認も支障無く行える。
【0102】
しかも、区画プレート70をこのように配置することで、印刷されたウエブWが、ファニッシャーロール50から飛散するインキによって汚れるのを防止することもできる。
【0103】
区画プレート70の短手方向の大きさは、ファニッシャーロール50の直径よりも大きくなっているので、ファニッシャーロール50から飛散するインキのほとんどを区画プレート70で受け止めることができる。
【0104】
区画プレート70は、プレート取付部材80に取り外し可能に固定されているので、版胴40やインキの交換作業等が容易になり、印刷の切替時間が短縮できる。
【0105】
区画プレート70が、アルミニウムを主成分とする金属の薄板で形成されているので、サイズが大きな区画プレート70であっても、3kg等に軽量化が図れ、区画プレート70の脱着等の作業時に、オペレータOPの作業負担が軽減できる。
【0106】
アルミニウムを主成分とする金属の薄板で、長尺でサイズの大きいプレート部材を形成すると、剛性が低下して容易に変形する恐れがある。それに対し、この区画プレート70では、支持側縁部71及び差込側縁部72が設けられているので、構造的に剛性が強化されている。従って、区画プレート70の剛性の低下を抑制しながら、その軽量化が実現可能となっている。
【0107】
しかも、このグラビア印刷機11の区画プレート70は、
図2に示すように、プレート支持装置90により、作業スペースSの上方に吊り下げられた状態で支持されている。従って、区画プレート70を、プレート取付部材80に固定する際には、区画プレート70を引き下げ、巻取ワイヤ91aを巻取具91から引き出しながら、
図4に示すように、区画プレート70をプレート取付部材80に取り付ければよい。弱い力で区画プレート70を取り扱うことができるので、オペレータOPの作業負担が軽減でき、安全かつ作業時間の短縮が図れる。
【0108】
そして、印刷の切替時等、区画プレート70をプレート取付部材80から取り外した時には、巻取ワイヤ91aが巻取具91に巻き取られて、区画プレート70が自動的に所定位置に吊り下げられた状態になる。従って、区画プレート70を、作業スペースSから搬出したり搬入したりする必要がなく、オペレータOPの作業負担の軽減及び作業時間の短縮が更に図れる。
【0109】
各巻取具91を、フロントカバー11Fの側面に設けた補強板12bに取り付けることで、フロントカバー11Fと共に、各巻取具91及び区画プレート70が前後方向にスライドする。従って、ドライヤー10の内部のメンテナンス作業等の際にも、区画プレート70が邪魔にならない。
【0110】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。区画プレート70の素材は、アルミニウム合金等に限らない。プラスチック製であってもよいし、ステンレス等、他の金属製であってもよい。
【0111】
巻取具91は、常に巻取ワイヤ91aの全体を巻き取るのではなく、必要に応じて巻取ワイヤ91aが巻き取られるようにするとよい。例えば、巻取ワイヤ91aを小さく強く引き出すなど、所定の操作を行うことで、引き出された巻取ワイヤ91aの巻き取りが開始するようにするとよい。
【符号の説明】
【0112】
1 グラビア印刷機1
2 支持フレーム
4 インキパン4
10 ドライヤー
11 ドライヤーカバー
11a 下端部
20 上流側ガイドロール
21 下流側ガイドロール
21a クーリングロール
30 圧胴
40 版胴40
41 凹版
45 第1圧接部位
46 第2圧接部位
50 ファニッシャーロール
60 ドクター支持装置
61 ドクターブレード
70 区画プレート70(上カバー)
71 支持側縁部
80 プレート取付部材80(取付部材)
90 プレート支持装置90(支持装置)
91 巻取具
91a 巻取ワイヤ
92 中継ワイヤ
100 パンカバー(下カバー)
101 下板
104 緩衝ダクト
108 吸気口
110 排気装置
J1、J2、J3 回転軸
F 床面
OP オペレータ
S 作業スペース
LS 局所空間
W ウエブ